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特開2024-114197条件探索用マイクロリアクタシステム、プロセス条件の最適化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114197
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】条件探索用マイクロリアクタシステム、プロセス条件の最適化方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/00 20060101AFI20240816BHJP
   B81B 1/00 20060101ALI20240816BHJP
   G01N 37/00 20060101ALN20240816BHJP
【FI】
B01J19/00 321
B81B1/00
G01N37/00 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019798
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】595145050
【氏名又は名称】株式会社日立プラントサービス
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】浅野 由花子
(72)【発明者】
【氏名】田上 将史
(72)【発明者】
【氏名】千葉 武寛
【テーマコード(参考)】
3C081
4G075
【Fターム(参考)】
3C081AA01
3C081AA18
3C081BA23
3C081BA24
3C081BA25
3C081BA33
3C081DA06
3C081DA07
3C081DA10
3C081DA11
3C081DA22
3C081EA27
3C081EA28
4G075AA02
4G075AA27
4G075AA39
4G075AA61
4G075AA63
4G075AA65
4G075AA67
4G075BA10
4G075BB05
4G075DA02
4G075EB01
4G075EB50
4G075FB02
4G075FB04
4G075FB06
4G075FB12
4G075FC09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】プロセス条件の最適化に必要な実験数を減らし、実験していない因子や測定できない因子の値を予測する条件探索用マイクロリアクタシステムを提供する。
【解決手段】条件探索用マイクロリアクタシステム1は、第1原料容器102に用意され第1接続部110から導入される第1原料及び第2原料容器103に用意され第2接続部111から導入される第2原料を混合するマイクロリアクタ101と、混合した生成物を回収する生成物回収容器104と、第1原料容器内の第1原料を送る第1送液ポンプ105と、第2原料容器内の第2原料を送る第2送液ポンプ106と、各ポンプを制御する制御部107と、生成物を分析する分析部109と、制御部と分析部へ信号を入出力し、プロセス条件の最適化の解析を行う操作・解析部108とを備え、前記混合した生成物のプロセスモデルでのプロセス速度定数からの時系列データに基づき、次の実験条件を決定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が導入される2つの入口と前記流体を合流させる流路を有し、前記2つの入口の一方から導入される第1原料と前記2つの入口の他方から導入される第2原料とを前記流路で混合するマイクロリアクタと、
前記第1原料が用意された第1原料容器と、
前記第2原料が用意された第2原料容器と、
前記第1原料と前記第2原料を前記マイクロリアクタで混合して得られた生成物を回収する生成物回収容器と、
前記第1原料容器内の前記第1原料を前記一方の入口に送る第1送液ポンプと、
前記第2原料容器内の前記第2原料を前記他方の入口に送る第2送液ポンプと、
前記第1送液ポンプおよび前記第2送液ポンプを動作する制御部と、
前記生成物を分析する分析部と、
前記制御部および前記分析部への信号を入出力するとともに、プロセス条件の最適化の解析を行う操作・解析部と、を備え、
前記第1原料と前記第2原料から前記生成物が生成するプロセスに対するプロセスモデルを構築し、
前記プロセスモデルにおけるプロセス速度定数を算出し、
前記プロセス速度定数から算出された時系列データに基づいて、次の実験条件を決定することを特徴とする条件探索用マイクロリアクタシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の条件探索用マイクロリアクタシステムであって、
前記操作・解析部に表示された変更指示に従い、前記第1送液ポンプおよび前記第2送液ポンプの後段側のシステム構成を変更することを特徴とする条件探索用マイクロリアクタシステム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の条件探索用マイクロリアクタシステムであって、
前記生成物が内部に物質を包含したナノ粒子であることを特徴とする条件探索用マイクロリアクタシステム。
【請求項4】
請求項1または2に記載の条件探索用マイクロリアクタシステムであって、
前記生成物が化学修飾されたものであることを特徴とする条件探索用マイクロリアクタシステム。
【請求項5】
請求項1または2に記載の条件探索用マイクロリアクタシステムであって、
前記生成物が縮合による繰り返し構造をもつことを特徴とする条件探索用マイクロリアクタシステム。
【請求項6】
請求項1または2に記載の条件探索用マイクロリアクタシステムであって、
前記制御部を複数備え、
前記複数の制御部により、各送液ポンプを個別に動作することを特徴とする条件探索用マイクロリアクタシステム。
【請求項7】
マイクロリアクタでのプロセス条件を最適化するプロセス条件の最適化方法であって、
(a)第1原料と第2原料から生成物が生成するプロセスに対するプロセスモデルを構築するステップと、
(b)所定の条件で前記第1原料と前記第2原料から前記生成物が生成するプロセスを実施するステップと、
(c)前記(b)ステップで生成した生成物を分析して実験データを取得するステップと、
(d)前記(c)ステップで取得した実験データを用いて、前記(a)ステップで構築したプロセスモデルにおけるプロセス速度定数を算出するステップと、
(e)前記(d)ステップで算出したプロセス速度定数から時系列データを算出するステップと、
(f)前記(e)ステップで算出した時系列データに基づいて、次の実験条件を決定するステップと、
を有することを特徴とするプロセス条件の最適化方法。
【請求項8】
請求項7に記載のプロセス条件の最適化方法であって、
さらに、(g)前記(f)ステップで決定した実験条件に基づき変更指示を表示するステップを有し、
前記変更指示に従い、前記マイクロリアクタが組み込まれたシステム構成を変更することを特徴とするプロセス条件の最適化方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載のプロセス条件の最適化方法であって、
前記生成物は、内部に物質を包含したナノ粒子であることを特徴とするプロセス条件の最適化方法。
【請求項10】
請求項7または8に記載のプロセス条件の最適化方法であって、
前記生成物が化学修飾されたものであることを特徴とするプロセス条件の最適化方法。
【請求項11】
請求項7または8に記載のプロセス条件の最適化方法であって、
前記生成物が縮合による繰り返し構造をもつことを特徴とするプロセス条件の最適化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料を混合させるためのマイクロリアクタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バイオ関連や、医薬品、化成品等の製造の分野において、マイクロリアクタの利用が進められている。マイクロリアクタは、μmオーダーの微小流路を有するフロー型の反応器であり、流体同士の混合や反応に用いられている。マイクロリアクタは、一般に、モールド成形、リソグラフィ等のマイクロ加工技術を利用して作製されており、交換可能な着脱式や、使い捨てを想定したシングルユース式も検討されている。
【0003】
マイクロリアクタでは、微小流路を反応場とするため、分子拡散による流体の混合を迅速に行うことができる。また、従来の大型の反応器を使用したバッチ法と比較して、流体の体積に対する表面積の効果が相対的に大きくなるため、熱伝達、熱伝導、化学反応等の効率が高くなる特長を有する。従って、通常のバッチ反応では発熱により暴走してしまう危険性のある反応、精密な温度制御を必要とする反応、急速な加熱あるいは冷却を必要とする反応でも、マイクロリアクタでは容易に行うことができる可能性がある。
【0004】
さらに、微小流路では、バッチ法と比較して送液流量に対する流路幅の効果が相対的に大きくなるため、バッチ法と同じレイノルズ数でもせん断速度が大きくなる。また、流路のサイズに加え、流体の流速等の操作条件によって液滴サイズは決定される。従って、均一かつ粒子径制御を必要とする乳化や、均一かつ粒子径制御を必要とするナノ粒子生成や貧溶媒晶析等でも、マイクロリアクタでは容易に行うことができる可能性がある。
【0005】
このような特性から、種々の分野で、マイクロリアクタの適用による反応時間の短縮や反応収率(生成効率)の向上が期待されている。
【0006】
一方で、マイクロリアクタを反応に適用した場合には、バッチ法と同様に、反応温度や反応時間等の反応条件の最適化を行う必要がある。反応条件の最適化方法として、因子と水準から検討する実験条件を決め、最適反応条件を探索する実験計画法や、反応を素反応に分解し、それぞれに対する反応速度定数を求めて、最適反応条件を予測する反応速度解析が知られている。バッチ法による実験結果を利用した反応速度解析に関しては、これまでいろいろな検討がなされている。
【0007】
例えば、特許文献1では、排ガスの成分濃度が触媒との接触によって変化する反応モデルの設定として、このモデルの拡散、化学反応の速度式を作成し、これらの方程式を解いて、成分濃度の変化を表す特性式を求める。所定の条件でリグテストを行って成分濃度の変化を求め、特性式中の活性化エネルギー、頻度因子、拡散係数の値を変化させて、リグテスト結果を再現することができる値を探索し、リグテスト結果を再現することができたときに、反応モデルが妥当であると判定され、温度・濃度特性の係数を決定することが記載されている。
【0008】
また、特許文献2では、回分式反応槽を用いて重合反応を行うプロセスにおいて、プロセスから計測されるプロセスデータとプロセスモデルを用いて、シミュレーション部は製品品質を一定品質でシミュレーションし、かつプロセスモデルを修正する。予測判断部は、この予測された製品品質が品質許容範囲から外れるか否かを判断し、外れる場合には、修正操作部はプロセスに行う修正操作とこの最適操作量を、シミュレーションにより修正操作の実行結果を予測して決定する。そして、決定された修正操作と最適操作量とを汎用システムへ出力し、プロセスの重合反応が制御されることが記載されている。
【0009】
また、特許文献3では、排気ガスを処理する触媒コンバータを評価する方法と装置が記載されている。反応装置を形成する反応部材を流通路に充填した流通反応部により、流体の組成および流量と温度および圧力の下で反応部材の反応効率を測定して、反応モデル化部により、反応効率のデータを用いて反応部材の反応モデルを形成し、かつ温度およびガス成分濃度に対する依存性を表す反応速度定数を抽出する。効率予測検出部により、反応モデルと反応部材および反応装置材料の物性、反応装置の諸元を用い、反応装置としての効率を算出して予測するとともに、この効率予測結果と反応装置の本来の各使用条件との対応関係から、最適化評価部により最適な反応装置諸元と、最適な反応部材および反応装置を選択する。
【0010】
また、特許文献4では、マイクロリアクタによる実験結果を利用した反応速度解析が開示されており、複数の流体を合流させて各流体に含まれる異種の物質を反応させるマイクロ流路を備えたマイクロリアクタと、マイクロリアクタの反応で生成した反応生成物を定量する分析手段とを有する反応速度定数測定装置が記載されている。マイクロリアクタは、マイクロ流路の拡散距離を互いに異ならせて複数設けられ、分析手段では、各マイクロリアクタで生成されたそれぞれの反応生成物を定量して定量結果を出力し、分析手段から送られた複数の定量結果に基づいて異種の物質の反応速度定数を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004-8908号公報
【特許文献2】特開2001-106703号公報
【特許文献3】特許第3376843号公報
【特許文献4】特許第4701190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、実験計画法に基づく反応条件の最適化においては、直交表を用いて、因子と水準の全パターンの組み合わせから、因子間の相互作用の大小を考慮して実験数を減らして、各因子の効果を得ることは可能ではある。
【0013】
しかし、因子間の相互作用の大小の判断には経験が必要であり、基本的には水準数Nのべき乗(N)に相当する実験数が必要である。また、直交表による実験では、因子の連続性がないため、実験をしていない因子での値は予測できないという問題がある。反応条件の最適化に必要な実験数が多くなるほど、実験に時間がかかり、使用する試薬量が増え、コスト増や廃棄物増につながる。
【0014】
また、反応の種類によっては、分析装置では測定できない中間体が生成する場合や、分析装置で測定できるものの、中間体の寿命が短いために分析速度が追い付かず、事実上測定できない場合がある。さらに、複数の原料や生成物を考慮する場合、複数の種類の分析装置を用いるために、分析のタイミングにバラつきが生じてしまい、実験結果に影響を与える可能性がある。従って、反応速度解析において正しく評価できない可能性がある。
【0015】
上記特許文献1から特許文献4の技術では、このような課題に対して十分な検討がなされておらず、解析のコスト面や信頼性の点で改善の余地がある。
【0016】
そこで、本発明の目的は、反応等のプロセス条件の最適化に必要な実験数をできるだけ減らしつつ、実験をしていない因子や測定できない因子での値を予測することが可能な、コスト面及び信頼性に優れた条件探索用マイクロリアクタシステム及びプロセス条件の最適化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明は、流体が導入される2つの入口と前記流体を合流させる流路を有し、前記2つの入口の一方から導入される第1原料と前記2つの入口の他方から導入される第2原料とを前記流路で混合するマイクロリアクタと、前記第1原料が用意された第1原料容器と、前記第2原料が用意された第2原料容器と、前記第1原料と前記第2原料を前記マイクロリアクタで混合して得られた生成物を回収する生成物回収容器と、前記第1原料容器内の前記第1原料を前記一方の入口に送る第1送液ポンプと、前記第2原料容器内の前記第2原料を前記他方の入口に送る第2送液ポンプと、前記第1送液ポンプおよび前記第2送液ポンプを動作する制御部と、前記生成物を分析する分析部と、前記制御部および前記分析部への信号を入出力するとともに、プロセス条件の最適化の解析を行う操作・解析部と、を備え、前記第1原料と前記第2原料から前記生成物が生成するプロセスに対するプロセスモデルを構築し、前記プロセスモデルにおけるプロセス速度定数を算出し、前記プロセス速度定数から算出された時系列データに基づいて、次の実験条件を決定することを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、マイクロリアクタでのプロセス条件を最適化するプロセス条件の最適化方法であって、(a)第1原料と第2原料から生成物が生成するプロセスに対するプロセスモデルを構築するステップと、(b)所定の条件で前記第1原料と前記第2原料から前記生成物が生成するプロセスを実施するステップと、(c)前記(b)ステップで生成した生成物を分析して実験データを取得するステップと、(d)前記(c)ステップで取得した実験データを用いて、前記(a)ステップで構築したプロセスモデルにおけるプロセス速度定数を算出するステップと、(e)前記(d)ステップで算出したプロセス速度定数から時系列データを算出するステップと、(f)前記(e)ステップで算出した時系列データに基づいて、次の実験条件を決定するステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、反応等のプロセス条件の最適化に必要な実験数をできるだけ減らしつつ、実験をしていない因子や測定できない因子での値を予測することが可能な、コスト面及び信頼性に優れた条件探索用マイクロリアクタシステム及びプロセス条件の最適化方法を実現することができる。
【0020】
これにより、実験にかかる時間や必要な試薬量(廃棄物)を減らすことができる。
【0021】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施例1に係る条件探索用マイクロリアクタシステムの模式図である。
図2】マイクロリアクタの一例を示す図である。
図3】本発明の実施例1に係るプロセス条件の最適化方法を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施例2に係る条件探索用マイクロリアクタシステムの模式図である。
図5】本発明の実施例3に係る条件探索用マイクロリアクタシステムの模式図である。
図6】本発明の実施例4に係る条件探索用マイクロリアクタシステムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【実施例0024】
図1から図3を参照して、本発明の実施例1に係る条件探索用マイクロリアクタシステム及びプロセス条件の最適化方法について説明する。
【0025】
図1は、本実施例の条件探索用マイクロリアクタシステム1の模式図である。
【0026】
図1に示すように、本実施例の条件探索用マイクロリアクタシステム1は、主要な構成として、マイクロリアクタ101と、第1原料容器102と、第2原料容器103と、生成物回収容器104と、第1送液ポンプ105と、第2送液ポンプ106と、制御部107と、操作・解析部108と、分析部109と、第1接続部110と、第2接続部111と、滞留部112と、信号線113と、分析用サンプリング114と、温度調節装置115と、温度調節装置116と、温度調節装置117と、温度調節装置118とを備えている。
【0027】
また、図示していないが、滞留部112は、チューブと、チューブとマイクロリアクタ101を接続するフィッティングから構成されても良いし、滞留用流路が形成されたデバイスと、デバイスとマイクロリアクタ101を接続するフィッティングから構成されても良いし、チューブと、チューブとマイクロリアクタ101を接続するフィッティングと、チューブと生成物回収容器104を接続するフィッティングから構成されても良いし、滞留用流路が形成されたデバイスと、デバイスとマイクロリアクタ101を接続するフィッティングと、デバイスと生成物回収容器104を接続するフィッティングから構成されても良いし、生成物回収容器104とマイクロリアクタ101を直接接続するフィッティング等で構成されても良い。
【0028】
なお、滞留部112の機能を必要としない場合、例えば、マイクロリアクタ101でのプロセスが瞬時に終了する場合は、フィッティング等を介さずに、マイクロリアクタ101から直接、生成物を生成物回収容器104に回収する構成としても良い。特に、マイクロリアクタ101でのプロセスが粒子生成の場合、滞留部が長くなりすぎると、滞留部が閉塞するリスクが高まるため、滞留部112を設けずに、マイクロリアクタ101と生成物回収容器104を直接接続する構成とするのが好ましい。
【0029】
第1接続部110は、チューブと、チューブと第1原料容器102を接続するフィッティングと、チューブとマイクロリアクタ101を接続するフィッティングから構成されても良いし、第1原料容器102とマイクロリアクタ101を直接接続するフィッティング等で構成されても良い。また、第2接続部111は、チューブと、チューブと第2原料容器103を接続するフィッティングと、チューブとマイクロリアクタ101を接続するフィッティングから構成されても良いし、第2原料容器103とマイクロリアクタ101を直接接続するフィッティング等で構成されても良い。
【0030】
温度調節装置115、温度調節装置116、温度調節装置117、及び温度調節装置118は、図中に破線で示すように、システム内の所定の領域を、所定の温度に調節するように設けられる。第1原料容器102は、温度調節装置115による調節範囲に含まれる。第2原料容器103は、温度調節装置116による調節範囲に含まれる。第1接続部110や、第2接続部111や、マイクロリアクタ101や、滞留部112は、温度調節装置117による調節範囲に含まれる。生成物回収容器104は、温度調節装置118による調節範囲に含まれる。
【0031】
マイクロリアクタ101は、フロー型の反応器であり、個々の流体が外部から導入される二つの入口と、導入された流体同士を合流させる微小流路と、合流によって生成された生成流体を外部に流出させる出口と、を有している。マイクロリアクタ101は、一方の入口から導入される流体と、他方の入口から導入される流体とを、微小流路内において混合する。流体同士の混合によって、所定のプロセスを開始した生成流体が生成される。
【0032】
第1原料容器102には、第1原料が用意される。マイクロリアクタ101の一方の入口には、第1原料容器102が、第1接続部110を介して接続される。第1送液ポンプ105は、第1原料を第1原料容器102からマイクロリアクタ101の一方の入口に送る。
【0033】
第2原料容器103には、第2原料が用意される。マイクロリアクタ101の他方の入口には、第2原料容器103が、第2接続部111を介して接続される。第2送液ポンプ106は、第2原料を第2原料容器103からマイクロリアクタ101の他方の入口に送る。
【0034】
マイクロリアクタ101の出口には、生成物回収容器104が滞留部112を介して接続される。生成物回収容器104は、マイクロリアクタ101、及び、その後に続く滞留部112内で生成された生成流体を回収するための容器である。なお、生成物回収容器104には、必要に応じて、生成流体を希釈したり、中和したりするために、必要な流体を貯留しておくことができる。また、滞留部112は、必要に応じて、使用する原料を最小限にするために、マイクロリアクタ101で生成された生成流体を生成物回収容器104に取り出すための最低限の長さとすることができる。
【0035】
第1送液ポンプ105や、第2送液ポンプ106としては、例えば、シリンジポンプ、チューブポンプ、プランジャポンプ、ダイヤフラムポンプ、スクリューポンプや、シリンジによる手動の送液や、水頭差を利用した送液等を用いることができる。なお、第1送液ポンプ105もしくは第2送液ポンプ106としてシリンジポンプを用いた場合は、第1原料容器102もしくは第2原料容器103は、使用する原料を最小限にするために、第1原料もしくは第2原料が用意されたシリンジを用いることができる。
【0036】
マイクロリアクタ101、第1原料容器102、第2原料容器103、生成物回収容器104、第1接続部110、第2接続部111、滞留部112、ポンプの接液部、シリンジ、ダイヤフラム、フィッティング等の材料としては、第1原料、第2原料、生成流体に対する悪影響を生じず、これらによる劣化を生じ難い限り、流体の種類に応じて、適宜の材料を用いることができる。
【0037】
これらの材料は、システム内における設置箇所毎に、互いに同一であっても良いし、互いに異なっていても良い。加工性や柔軟性等に応じて、適宜に選定することができる。
【0038】
マイクロリアクタ101の材料としては、ステンレス鋼、金、ガラス、ハステロイ、セラミック、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、TPX(ポリメチルペンテン)、PDMS(ポリジメチルシロキサン)、PC(ポリカーボネート)や、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)等のフッ素系樹脂等が挙げられる。
【0039】
マイクロリアクタ101の材料は、耐食性、耐薬品性等の向上のために、ガラス等によるライニングや、ニッケル、金等によるコーティングや、シリコンの酸化で形成されるような酸化皮膜が形成されても良い。
【0040】
温度調節装置115,116,117,118としては、熱媒体を用いた熱交換器、熱媒体を用いた恒温水槽、ペルチェ式調温装置、マントルヒータ等の適宜の装置を用いることができる。熱媒体としては、水、エチレングリコール、水/エチレングリコール混合溶媒、ドライアイスと水/エタノール混合溶媒、ドライアイスと水/メタノール混合溶媒等を用いることができる。
【0041】
温度調節装置115と、温度調節装置116、温度調節装置117、温度調節装置118とは、互いに同じ温度範囲に調節されても良いし、互いに異なる温度範囲に調節されても良い。温度調節装置115,116,117,118による温度は、プロセスの速度、化合物の安定性等に応じて調節できる。なお、プロセスを室温で行う場合等には、温度調節装置115,116,117,118を備えなくても良い。
【0042】
図2は、マイクロリアクタの一例を示す図である。
【0043】
図2に示すように、条件探索用マイクロリアクタシステム1に用いるマイクロリアクタ101としては、互いに異なる流量で流体同士を混合可能なマイクロリアクタ2を用いることもできる。
【0044】
互いに異なる流量で流体同士を混合可能なマイクロリアクタ2は、個々の流体が外部から導入される2つの入口(207,208)と、導入された流体同士を合流させる微小流路(203,204,205)と、合流点206で合流によって生成された生成流体を外部に流出させる流体出口209と、を有している。
【0045】
マイクロリアクタ2は、上側プレート201及び下側プレート202によって形成されている。上側プレート201には、溝加工が施されており、溝を蓋するように下側プレート202が重ねられて、微小流路(203,204,205)が形成されている。このような溝は、上側プレート201及び下側プレート202のいずれかに形成することもできる。
【0046】
下側プレート202には、微小流路(203,204,205)の各末端に重なる位置に貫通孔(207,208,209)が設けられている。貫通孔(207,208,209)としては、高流量側流体入口207、低流量側流体入口208及び流体出口209が、微小流路(203,204,205)側から下側プレート202の微小流路(203,204,205)と反対側の面に貫通している。
【0047】
貫通孔(207,208,209)には、図示しない螺子溝を形成することができる。第1接続部110、第2接続部111、滞留部112の各チューブは、その螺子溝に螺合可能なフィッティングを介して接続することができる。或いは、各チューブを、フィッティングを介さずに、貫通孔(207,208,209)に対して直接的に接続する構成としても良い。また、第1接続部110、第2接続部111、滞留部112の各フィッティングを、その螺子溝に螺合して接続する構成としても良い。
【0048】
微小流路(203,204,205)は、高流量側流体入口207から合流点206に至る高流量側流路203と、低流量側流体入口208から合流点206に至る低流量側流路204と、合流点206から流体出口209に至る混合流路205によって構成されている。
【0049】
高流量側流路203は、マイクロリアクタ2で混合される流体のうち、混合比が高く、相対的に高い流量に設定される流体を流すために用いられる。一方、低流量側流路204は、マイクロリアクタ2で混合される流体のうち、混合比が低く、相対的に低い流量に設定される流体を流すために用いられる。
【0050】
マイクロリアクタ2において、高流量側の流体は、高流量側流体入口207から導入され、高流量側流路203を経由して、合流点206に到達する。低流量側の流体は、低流量側流体入口208から導入され、低流量側流路204を経由して、合流点206に到達する。高流量側の流体と低流量側の流体とは、合流点206で合流して混合及び反応を開始する。これらの流体は、混合流路205を経由して、流体出口209から外部に排出される。
【0051】
高流量側流路203は、低流量側流路204よりも総流路体積が大きく設けられる。例えば、高流量側流路203の流路長さは、同等の流路幅及び流路深さに設けられた低流量側流路204よりも長く設けられる。このような構造によると、混合比が一方の流体の側に偏っており、流体同士が互いに大きく異なる流量に制御される場合において、合流点206に各流体が到達するタイミングのずれを小さくすることができる。
【0052】
高流量側流路203は、中間部で2本の対称な分岐流路203a,203bに分岐し、合流点206で互いに合流している。低流量側流路204は、2本の分岐流路203a,203bの間から合流点206に接続している。合流点206では、上流側から流入する低流量側の流体と高流量側の流体とが、下流側にある混合流路205に流れる。このような構造によると、低流量側の流体が高流量側の流体に挟まれた状態で合流して混合を開始する。低流量側の流体が高流量側の流体に挟まれることにより、流体間の界面の面積が拡大するため、混合の効率を向上させることができる。
【0053】
高流量側流路203、低流量側流路204及び混合流路205は、流路径ないし流路幅や流路深さを、2mm以下に設けることが好ましい。このような流路であると、表面効果や熱伝達率の向上等、マイクロ反応場による効果を十分に得ることができる。特に、合流点206の直前の高流量側流路203および低流量側流路204や、合流点206や、混合流路205は、流路径ないし流路幅や流路深さを、10μm以上1mm以下に設けることが好ましい。このような流路であると、流体同士を分子拡散によって均一且つ迅速に混合できる。
【0054】
なお、互いに異なる流量で流体同士を混合可能なマイクロリアクタ2は、流体同士の流量比を1:1とする場合にも使用できる。流体同士の混合は、流体同士が均一に混ざり合う形態であっても良いし、流体同士が不均一に混ざり合う形態、例えば、乳化状態等の複数相が形成される形態であっても良い。
【0055】
図2において、マイクロリアクタ2は、所定の形状の高流量側流路203や低流量側流路204を備えている。但し、条件探索用マイクロリアクタシステム1に用いるマイクロリアクタは、少なくとも二流体を混合する微小流路を有する限り、適宜の形状に設けることができる。例えば、微小流路は、Y字型、T字型、多層流を形成して合流させる形状等に設けることもできる。
【0056】
条件探索用マイクロリアクタシステム1に用いるマイクロリアクタは、二流体が合流するまでの流路体積が、互いに異なっていても良いし、互いに同等であっても良い。条件探索用マイクロリアクタシステム1に用いるマイクロリアクタの流路は、必ずしも全てが微小流路である必要はない。条件探索用マイクロリアクタシステム1に用いるマイクロリアクタの流路は、反応の種類等に応じて、流路径ないし流路幅や流路深さを変更できる。
【0057】
次に、条件探索用マイクロリアクタシステム1を用いたプロセス条件の最適化方法について説明する。
【0058】
図3は、プロセス条件の最適化の一例を示すフローチャートである。
【0059】
条件探索用マイクロリアクタシステム1では、第1原料と第2原料との混合に、マイクロリアクタを用いる。マイクロリアクタでは、第1原料と第2原料とをマイクロ反応場である微小流路に導入し、これらを微小流路内で混合して第1原料と第2原料から生成流体が生成するプロセスを開始させる。
【0060】
マイクロリアクタを用いると、第1原料と第2原料の流量比や、プロセスの開始時期や、プロセスの終了時期を厳密に制御することができる。従って、第1原料と第2原料の混合比の精密な制御や、プロセス時間の精密な制御が可能である。そのため、所望の生成物を高収率で生成することができる。そこで、条件探索用マイクロリアクタシステム1に適用する、プロセス条件を最適化したいプロセス系を決定する(ステップS301)。
【0061】
次に、条件探索用マイクロリアクタシステム1において、操作・解析部108において、適用するプロセスを素プロセスに分解して、それぞれの素プロセスに対するプロセス速度式からなる、プロセスモデルを構築する(ステップS302)。
【0062】
ここで、第1原料容器102には、第1原料を用意し、第2原料容器103には、第2原料を用意する。
【0063】
はじめに、操作・解析部108に表示される指示に従い、第1送液ポンプ105及び第2送液ポンプ106の後段側のシステム構成を設定して、そのシステム構成を反映したプロセス条件を入力するか、表示されるプロセス条件に従い、第1送液ポンプ105及び第2送液ポンプ106の後段側のシステム構成を設定する。
【0064】
第1原料容器102に用意された第1原料を、第1送液ポンプ105によって、第1原料容器102からマイクロリアクタ101の一方の入口に送る。また、第2原料容器103に用意された第2原料を、第2送液ポンプ106によって、第2原料容器103からマイクロリアクタ101の他方の入口に送る。
【0065】
次いで、第1原料と第2原料とをマイクロリアクタ101で混合する。混合によって、第1原料と第2原料とのプロセスを開始する。第1原料と第2原料とのプロセスは、マイクロリアクタ101で生成された生成流体が、下流に向けてその後に続く滞留部112内を流れる間にさらに進行する。
【0066】
続いて、マイクロリアクタ101、及びその後に続く滞留部112から排出された生成流体を、生成物回収容器104に回収する。マイクロリアクタ101の微小流路内でプロセスを開始し、その後に続く滞留部112を経由する。
【0067】
生成物回収容器104に回収された生成流体のうち、分析部109で分析を行うのに必要な量が、分析用サンプリング114により分析部109に送られる。分析部109では、第1原料の構成成分や第2原料の構成成分、及び第1原料の構成成分と第2原料の構成成分とのプロセスに応じた値が測定される。
【0068】
分析部109で得られたデータは、信号線113を経由して、操作・解析部108に送られ、あるプロセス条件での実験結果が取得される(ステップS303)。
【0069】
ここで、構築したプロセスモデルに基づき、得られている実験データの数から、プロセス速度定数が計算可能かどうかを判断する(ステップS304)。プロセスモデルは連立微分方程式になるため、一般的には、少なくとも「求めたいプロセス速度定数の数+1」の数の実験条件でのデータが必要である。得られている実験データの数が、求めたいプロセス速度定数の数に比べて明らかに少ない場合は、プロセス速度定数が一義に定まらない虞がある。
【0070】
得られているデータの数が、プロセス速度定数を計算可能な数に達していない場合(No)には、さらに実験結果の取得を続ける(ステップS303)。得られているデータの数が、プロセス速度定数を計算可能な数に達している場合(Yes)は、得られたデータを再現するように逆問題を解くことにより、プロセスモデルにおけるプロセス速度定数を計算する(ステップS305)。
【0071】
求めたプロセス速度定数から、第1原料と第2原料とのプロセスの生成物の生成効率の時系列データを算出し、生成物のプロセス時間依存性から、目的生成物の生成効率が最大となる最適プロセス条件を予測する(ステップS306)。
【0072】
ここで、プロセスモデルに含まれる物質の時系列データが得られるため、プロセスモデルの範囲内で因子の連続性を担保することができ、実験をしていない因子(プロセス時間、プロセス温度、原料の濃度等)での値であっても予測することができる。また、分析装置では測定できない中間体が生成する場合や、分析装置で測定できるものの、中間体の寿命が短いために分析速度が追い付かず、事実上測定できない場合であっても、プロセスモデルに含まれる物質であれば、最適プロセス条件を予測することができる。
【0073】
目的生成物の生成効率が最大となると予測されたプロセス条件は、次の実験条件となり、次の実験条件は、操作・解析部108に変更指示として表示される。表示された変更指示に従い、第1送液ポンプ105及び第2送液ポンプ106の後段側のシステム構成を変更する(ステップS307)。操作・解析部108に表示される変更指示の項目としては、プロセスの種類によって異なるが、第1溶液及び第2溶液の流量、各温度調節装置115,116,117,118の温度、滞留部112の内径及び長さ、第1原料及び第2原料の種類、第1原料及び第2原料の濃度(組成割合)、第1原料及び第2原料の溶媒等、またはこれらの一部が挙げられる。
【0074】
予測最適プロセスでのプロセス条件に従い、第1原料容器102に用意された第1原料を、第1送液ポンプ105によって、第1原料容器102からマイクロリアクタ101の一方の入口に送る。また、第2原料容器103に用意された第2原料を、第2送液ポンプ106によって、第2原料容器103からマイクロリアクタ101の他方の入口に送る。
【0075】
次いで、第1原料と第2原料とをマイクロリアクタ101で混合する。混合によって、第1原料と第2原料とのプロセスを開始する。第1原料と第2原料とのプロセスは、マイクロリアクタ101で生成された生成流体が、下流に向けてその後に続く滞留部112内を流れる間にさらに進行する。
【0076】
続いて、マイクロリアクタ101、及びその後に続く滞留部112から排出された生成流体を、生成物回収容器104に回収する。マイクロリアクタ101の微小流路内でプロセスを開始し、その後に続く滞留部112を経由する。
【0077】
生成物回収容器104に回収された生成流体のうち、分析部109で分析を行うのに必要な量が、分析用サンプリング114により分析部109に送られる。分析部109では、第1原料の構成成分や第2原料の構成成分、及び第1原料の構成成分と第2原料の構成成分とのプロセスに応じた値が測定される。
【0078】
分析部109で得られたデータは、信号線113を経由して、操作・解析部108に送られ、予測最適プロセス条件での実験結果が取得される(ステップS308)。
【0079】
ここで、得られた実験結果が、所望の目的生成物の生成効率の範囲に収まっているかどうかを判断し、予測最適プロセス条件であったかどうかを判断する(ステップS309)。
【0080】
所望の目的生成物の生成効率の範囲に収まっていなかった場合(No)は、さらに実験結果の取得を続ける(ステップS303)。所望の目的生成物の生成効率の範囲に収まっていた場合(Yes)は、プロセス条件が最適化されたと判断する(ステップS310)。
【0081】
以下では、具体的な例を用いて、条件探索用マイクロリアクタシステム1を用いたプロセス条件の最適化方法について説明する。
【0082】
≪具体例1≫
■脂質ナノ粒子(Lipid NanoParticle:LNP)生成プロセスの条件最適化
LNP生成プロセスは、核酸(RNA(Ribonucleic Acid:リボ核酸)、DNA(Deoxyribonucleic Acid:デオキシリボ核酸))や、低分子化合物等を含む水溶液と、例えば、イオン化脂質、PEG(Polyethylene glycol:ポリエチレングリコール)脂質、リン脂質、及びコレステロールを含むエタノール溶液を用意し、急速に混合することで、核酸等を含む水溶液を閉じ込めたイオン化脂質とコレステロールからなる逆ミセルを、イオン化脂質、PEG試薬、リン脂質、及びコレステロールが包含してカプセル化した、LNPが生成するプロセスである。
【0083】
条件探索用マイクロリアクタシステム1では、水溶液とエタノール溶液との混合に、マイクロリアクタを用いる。マイクロリアクタでは、水溶液とエタノール溶液とをマイクロ反応場である微小流路に導入し、これらを微小流路内で混合してLNP生成プロセスを開始させる。
【0084】
マイクロリアクタを用いると、水溶液とエタノール溶液の流量比や、LNP生成プロセスの開始時期や、LNP生成プロセスの終了時期を厳密に制御することができる。従って、水溶液の構成成分である核酸等と、エタノール溶液の構成成分であるイオン化脂質、PEG脂質、リン脂質、及びコレステロールの混合比の精密な制御や、プロセス時間の精密な制御が可能である。そのため、所望の粒子径を有し、核酸等の包含率が高いLNPを、高収率で生成することができる。
【0085】
条件探索用マイクロリアクタシステム1では、操作・解析部108において、逆ミセル化プロセスに対するプロセス速度定数を含むプロセス速度式と、LNPカプセル化プロセスに対するプロセス速度定数を含むプロセス速度式からなる、LNP生成プロセスモデルを構築する。
【0086】
第1原料容器102には、核酸等を含む水溶液を用意する。第2原料容器103には、イオン化脂質、PEG脂質、リン脂質、及びコレステロールを含むエタノール溶液を用意する。
【0087】
はじめに、第1原料容器102に用意された水溶液を、第1送液ポンプ105によって、第1原料容器102からマイクロリアクタ101の一方の入口に送る。また、第2原料容器103に用意されたエタノール溶液を、第2送液ポンプ106によって、第2原料容器103からマイクロリアクタ101の他方の入口に送る。
【0088】
次いで、水溶液とエタノール溶液とをマイクロリアクタ101で混合する。混合によって、水溶液とエタノール溶液とのLNP生成プロセスを開始する。先ず、イオン化脂質とコレステロールからなる逆ミセルで、核酸等を含む水溶液を閉じ込めた逆ミセル化プロセスを開始する。
【0089】
続いて、イオン化脂質、PEG試薬、リン脂質、及びコレステロールが逆ミセルを包含する、LNPカプセル化プロセスを開始する。逆ミセル化プロセス及びLNPカプセル化プロセスは、マイクロリアクタ101で生成された生成流体が、下流に向けてその後に続く滞留部112内を流れる間にさらに進行する。
【0090】
次いで、マイクロリアクタ101及びその後に続く滞留部112から排出された生成流体を、生成物回収容器104に回収する。マイクロリアクタ101の微小流路内でプロセスを開始し、その後に続く滞留部112を経由すると、LNPを含む溶液である生成流体が得られる。
【0091】
生成物回収容器104に回収された生成流体のうち、分析部109で分析を行うのに必要な量が、分析用サンプリング114により分析部109に送られる。分析部109では、LNPの平均粒子径や、LNPの粒子径のばらつき、核酸等のLNPへの包含率等の、水溶液の構成成分やエタノール溶液の構成成分、及び水溶液の構成成分とエタノール溶液の構成成分とのプロセスに応じた値が測定される。
【0092】
分析部109で得られたデータは、信号線113を経由して、操作・解析部108に送られる。得られたデータを再現するように逆問題を解くことにより、LNP生成プロセスモデルにおける、逆ミセル化プロセスに対するプロセス速度定数と、LNP生成プロセスに対するプロセス速度定数を計算する。求めたプロセス速度定数から、逆ミセル及びLNPの生成効率の時系列データを算出し、目的とするLNPの生成効率が最大となる最適プロセス条件を予測する。
【0093】
目的とするLNPの生成効率が最大となると予測されたプロセス条件は、次の実験条件となり、次の実験条件は、操作・解析部108に変更指示として表示される。表示された変更指示に従い、第1送液ポンプ105及び第2送液ポンプ106の後段側のシステム構成を変更する。操作・解析部108に表示される変更指示の項目としては、水溶液(第1溶液)及びエタノール溶液(第2溶液)の流量、各温度調節装置115,116,117,118の温度、滞留部112の内径及び長さ、各脂質の濃度(組成割合)及び核酸等の濃度、脂質溶液の溶媒等、またはこれらの一部が挙げられる。
【0094】
≪具体例2≫
■化学修飾プロセスの条件最適化
化学修飾プロセスは、特定の機能を有する粒子や分子である機能性物質に対し、さらに特定の分子を付加させることにより、その分子による機能を付加するために行われる化学反応プロセスである。例えば、標的を認識する抗体やペプチド等の生体関連物質にリンカー分子を介して低分子医薬品を結合させて、抗体薬物複合体(ADC:Antibody Drug Conjugate)やペプチド薬物複合体(PDC:Peptide Drug Conjugate)等を生成する生体共役反応プロセスや、LNP等の脂質ナノ粒子や、ペプチドや核酸分子等の生体関連物質等の機能性物質にPEGを付加させるPEG化反応プロセスが知られている。
【0095】
PEG化反応プロセスは、機能性物質を含む溶液と、PEG化試薬を含む溶液を用意し、混合することで、機能性物質にPEGが付加されたPEG化物質が生成するプロセスである。ここで、機能性物質に対しPEG化試薬が作用できる点が複数ある場合は、複数種類のPEG化機能性物質が生成物として生成し得るため、そのすべてが目的とするPEG化機能性物質とは限らず、その一部が目的生成物となり、残りが副生成物となり得る。
【0096】
条件探索用マイクロリアクタシステム1では、機能性物質を含む溶液と、PEG化試薬を含む溶液との混合に、マイクロリアクタを用いる。マイクロリアクタでは、機能性物質を含む溶液と、PEG化試薬を含む溶液とをマイクロ反応場である微小流路に導入し、これらを微小流路内で混合してPEG化反応プロセスを開始させる。
【0097】
マイクロリアクタを用いると、機能性物質を含む溶液とPEG化試薬を含む溶液の流量比や、PEG化反応プロセスの開始時期や、PEG化反応プロセスの終了時期を厳密に制御することができる。従って、機能性物質溶液の構成成分である機能性物質と、PEG化試薬溶液の構成成分であるPEG化試薬の混合比の精密な制御や、プロセス時間の精密な制御が可能である。そのため、機能性物質の所望の位置に、所望の数のPEGが付加した物質を、高収率で生成することができる。
【0098】
条件探索用マイクロリアクタシステム1では、操作・解析部108において、目的とするPEG化物質を生成する反応に対するプロセス速度定数を含むプロセス速度式と、副反応に対するプロセス速度定数を含むプロセス速度式からなる、化学修飾プロセスモデルを構築する。
【0099】
第1原料容器102には、機能性物質を含む溶液を用意する。第2原料容器103には、PEG化試薬を含む溶液を用意する。
【0100】
はじめに、第1原料容器102に用意されたPEG化試薬を含む溶液を第1送液ポンプ105によって、第1原料容器102からマイクロリアクタ101の一方の入口に送る。また、第2原料容器103に用意された機能性物質を含む溶液を、第2送液ポンプ106によって、第2原料容器103からマイクロリアクタ101の他方の入口に送る。
【0101】
次いで、PEG化試薬を含む溶液と機能性物質を含む溶液とをマイクロリアクタ101で混合する。混合によって、PEG化試薬を含む溶液と機能性物質を含む溶液とのPEG化反応プロセスを開始する。PEG化反応プロセスは、マイクロリアクタ101で生成された生成流体が、下流に向けてその後に続く滞留部112内を流れる間にさらに進行する。
【0102】
続いて、マイクロリアクタ101及びその後に続く滞留部112から排出された生成流体を、生成物回収容器104に回収する。マイクロリアクタ101の微小流路内でプロセスを開始し、その後に続く滞留部112を経由すると、PEG化機能性物質を含む溶液である生成流体が得られる。
【0103】
生成物回収容器104に回収された生成流体のうち、分析部109で分析を行うのに必要な量が、分析用サンプリング114により分析部109に送られる。分析部109では、PEG化しなかった機能性物質の割合や、複数のPEG化機能性物質の生成割合等の、機能性物質を含む溶液の構成成分やPEG化物質を含む溶液の構成成分、及び機能性物質を含む溶液の構成成分とPEG化物質を含む溶液の構成成分とのプロセスに応じた値が測定される。
【0104】
分析部109で得られたデータは、信号線113を経由して、操作・解析部108に送られる。得られたデータを再現するように逆問題を解くことにより、目的生成物を生成するPEG化反応に対するプロセス速度定数を含むプロセス速度式と、副生成物を生成するPEG化反応に対するプロセス速度定数を含むプロセス速度式を計算する。求めたプロセス速度定数から、PEG化機能性物質の生成効率の時系列データを算出し、目的とするPEG化機能性物質の生成効率が最大となる最適プロセス条件を予測する。
【0105】
目的とするPEG化機能性物質の生成効率が最大となると予測されたプロセス条件は、次の実験条件となり、次の実験条件は、操作・解析部108に変更指示として表示される。表示された変更指示に従い、第1送液ポンプ105及び第2送液ポンプ106の後段側のシステム構成を変更する。操作・解析部108に表示される変更指示の項目としては、機能性物質を含む溶液(第1溶液)及びPEG化試薬を含む溶液(第2溶液)の流量、各温度調節装置115,116,117,118の温度、滞留部112の内径及び長さ、機能性物質及びPEG化試薬の濃度、機能性物質を含む溶液及びPEG化試薬を含む溶液の溶媒等、またはこれらの一部が挙げられる。
【0106】
≪具体例3≫
■伸長反応プロセスの条件最適化
伸長反応プロセスは、順番に分子を付加させることにより、分子鎖を伸長させるために行われる化学反応プロセスである。例えば、アミノ酸を脱水縮合により順番に付加させるペプチド鎖の伸長反応プロセスや、DNAもしくはRNAを、脱水縮合等の縮合により順番に付加させる核酸鎖の伸長反応プロセスが知られている。
【0107】
伸長反応プロセスでは、被付加物質を含む溶液と、付加物質を含む溶液を用意し、混合することで、被付加物質に付加物質が縮合する。ここで、被付加物質に対し付加物質が作用できる点が複数ある場合は、複数の物質が生成物として生成し得るため、そのすべてが目的とする物質とは限らず、その一部が目的生成物となり、その一部が副生成物となり得る。
【0108】
条件探索用マイクロリアクタシステム1では、被付加物質を含む溶液と付加物質を含む溶液との混合に、マイクロリアクタを用いる。マイクロリアクタでは、被付加物質を含む溶液と付加物質を含む溶液とをマイクロ反応場である微小流路に導入し、これらを微小流路内で混合して伸長反応プロセスを開始させる。
【0109】
マイクロリアクタを用いると、被付加物質を含む溶液と付加物質を含む溶液の流量比や、伸長反応プロセスの開始時期や、伸長反応プロセスの終了時期を厳密に制御することができる。従って、被付加物質を含む溶液の構成成分である被付加物質と、付加物質を含む溶液の構成成分である付加物質の混合比の精密な制御や、プロセス時間の精密な制御が可能である。そのため、被付加物質の所望の位置に付加物質が付加した物質を、高収率で生成することができる。
【0110】
条件探索用マイクロリアクタシステム1では、操作・解析部108において、目的とする物質を生成する反応に対するプロセス速度定数を含むプロセス速度式と、副反応に対するプロセス速度定数を含むプロセス速度式からなる、伸長反応プロセスモデルを構築する。
【0111】
第1原料容器102には、被付加物質を含む溶液を用意する。第2原料容器103には、付加物質を含む溶液を用意する。
【0112】
はじめに、第1原料容器102に用意された被付加物質を含む溶液を、第1送液ポンプ105によって、第1原料容器102からマイクロリアクタ101の一方の入口に送る。また、第2原料容器103に用意された付加物質を含む溶液を、第2送液ポンプ106によって、第2原料容器103からマイクロリアクタ101の他方の入口に送る。
【0113】
次いで、被付加物質を含む溶液と付加物質を含む溶液とをマイクロリアクタ101で混合する。混合によって、被付加物質を含む溶液と付加物質を含む溶液との伸長反応プロセスを開始する。伸長反応プロセスは、マイクロリアクタ101で生成された生成流体が、下流に向けてその後に続く滞留部112内を流れる間にさらに進行する。
【0114】
続いて、マイクロリアクタ101及びその後に続く滞留部112から排出された生成流体を、生成物回収容器104に回収する。マイクロリアクタ101の微小流路内でプロセスを開始し、その後に続く滞留部112を経由すると、付加物質が付加された物質を含む溶液である生成流体が得られる。
【0115】
生成物回収容器104に回収された生成流体のうち、分析部109で分析を行うのに必要な量が、分析用サンプリング114により分析部109に送られる。分析部109では、付加されなかった物質の割合や、複数の付加された物質の生成割合等の、被付加物質を含む溶液の構成成分や付加物質を含む溶液の構成成分、及び被付加物質を含む溶液の構成成分と付加物質を含む溶液の構成成分とのプロセスに応じた値が測定される。
【0116】
分析部109で得られたデータは、信号線113を経由して、操作・解析部108に送られる。得られたデータを再現するように逆問題を解くことにより、目的生成物を生成する反応プロセスに対するプロセス速度定数を含むプロセス速度式と、副反応プロセスに対するプロセス速度定数を含むプロセス速度式を計算する。求めたプロセス速度定数から、付加された物質の生成効率の時系列データを算出し、目的とする付加された物質の生成効率が最大となる最適プロセス条件を予測する。
【0117】
目的とする付加された物質の生成効率が最大となると予測されたプロセス条件は、次の実験条件となり、次の実験条件は、操作・解析部108に変更指示として表示される。表示された変更指示に従い、第1送液ポンプ105及び第2送液ポンプ106の後段側のシステム構成を変更する。操作・解析部108に表示される変更指示の項目としては、被付加物質を含む溶液(第1溶液)及び付加物質を含む溶液(第2溶液)の流量、各温度調節装置115,116,117,118の温度、滞留部112の内径及び長さ、被付加物質及び付加物質の濃度、被付加物質を含む溶液及び付加物質を含む溶液の溶媒等、またはこれらの一部が挙げられる。
【0118】
以上の条件探索用マイクロリアクタシステム1、及びそれを用いたプロセス条件の最適化方法により、反応等のプロセス条件の最適化に必要な実験数をできるだけ減らすことができるとともに、実験をしていない因子や測定できない因子での値を予測することができ、実験にかかる時間や必要な試薬量(廃棄物)をできるだけ減らすことができる。
【実施例0119】
図4を参照して、本発明の実施例2に係る条件探索用マイクロリアクタシステム及びプロセス条件の最適化方法について説明する。
【0120】
図4は、本実施例の条件探索用マイクロリアクタシステム4の模式図である。
【0121】
図4に示すように、本実施例の条件探索用マイクロリアクタシステム4は、主要な構成として、マイクロリアクタ101と、マイクロリアクタ401と、第1原料容器102と、第2原料容器103と、第3原料容器402と、生成物回収容器104と、第1送液ポンプ105と、第2送液ポンプ106と、第3送液ポンプ403と、制御部107と、操作・解析部108と、分析部109と、第1接続部110と、第2接続部111と、第3接続部404と、滞留部112と、滞留部405と、信号線113と、分析用サンプリング114と、温度調節装置115と、温度調節装置116と、温度調節装置117と、温度調節装置118と、温度調節装置406と、温度調節装置407とを備えている。
【0122】
また、図示していないが、滞留部112は、チューブと、チューブとマイクロリアクタ101を接続するフィッティングと、チューブとマイクロリアクタ401を接続するフィッティングから構成されていても良いし、滞留量流路が形成されたデバイスと、デバイスとマイクロリアクタ101を接続するフィッティングと、デバイスとマイクロリアクタ401を接続するフィッティングから構成されても良いし、マイクロリアクタ101とマイクロリアクタ401を直接接続するフィッティング等で構成されても良い。滞留部405は、チューブと、チューブとマイクロリアクタ401を接続するフィッティングから構成されても良いし、滞留用流路が形成されたデバイスと、デバイスとマイクロリアクタ401を接続するフィッティングから構成されても良いし、チューブと、チューブとマイクロリアクタ401を接続するフィッティングと、チューブと生成物回収容器104を接続するフィッティングから構成されても良いし、滞留用流路が形成されたデバイスと、デバイスとマイクロリアクタ401を接続するフィッティングと、デバイスと生成物回収容器104を接続するフィッティングから構成されても良いし、生成物回収容器104とマイクロリアクタ401を直接接続するフィッティング等で構成されても良い。
【0123】
なお、滞留部112,405の機能を必要としない場合、例えば、マイクロリアクタ101,401でのプロセスが瞬時に終了する場合は、フィッティング等を介さずに、マイクロリアクタ101とマイクロリアクタ401を直接接続し、さらにマイクロリアクタ401から直接、生成物を生成物回収容器104に回収する構成としても良い。特に、マイクロリアクタ101やマイクロリアクタ401でのプロセスが粒子生成の場合、滞留部が長くなりすぎると、滞留部が閉塞するリスクが高まるため、滞留部112,405を設けずに、マイクロリアクタ101とマイクロリアクタ401を直接接続し、マイクロリアクタ401と生成物回収容器104を直接接続する構成とするのが好ましい。
【0124】
第1接続部110は、チューブと、チューブと第1原料容器102を接続するフィッティングと、チューブとマイクロリアクタ101を接続するフィッティングから構成されても良いし、第1原料容器102とマイクロリアクタ101を直接接続するフィッティング等で構成されても良い。また、第2接続部111は、チューブと、チューブと第2原料容器103を接続するフィッティングと、チューブとマイクロリアクタ101を接続するフィッティングから構成されても良いし、第2原料容器103とマイクロリアクタ101を直接接続するフィッティング等で構成されても良い。さらに、第3接続部404は、チューブと、チューブと第3原料容器402を接続するフィッティングと、チューブとマイクロリアクタ401を接続するフィッティングから構成されても良いし、第3原料容器402とマイクロリアクタ401を直接接続するフィッティング等で構成されても良い。
【0125】
温度調節装置115、温度調節装置116、温度調節装置117、温度調節装置118、温度調節装置406、及び温度調節装置407は、図中に破線で示すように、システム内の所定の領域を、所定の温度に調節するように設けられる。第1原料容器102は、温度調節装置115による調節範囲に含まれる。第2原料容器103は、温度調節装置116による調節範囲に含まれる。第3原料容器402は、温度調節装置406による調節範囲に含まれる。第1接続部110や、第2接続部111や、マイクロリアクタ101や、滞留部112の一部は、温度調節装置117による調節範囲に含まれる。第3接続部404や、マイクロリアクタ401や、滞留部405、滞留部112の一部は、温度調節装置407による調節範囲に含まれる。生成物回収容器104は、温度調節装置118による調節範囲に含まれる。
【0126】
マイクロリアクタ101及びマイクロリアクタ401は、フロー型の反応器であり、個々の流体が外部から導入される二つの入口と、導入された流体同士を合流させる微小流路と、合流によって生成された生成流体を外部に流出させる出口と、を有している。マイクロリアクタ101及びマイクロリアクタ401は、一方の入口から導入される流体と、他方の入口から導入される流体とを、微小流路内において混合する。流体同士の混合によって、所定のプロセスを開始した生成流体が生成される。
【0127】
第1原料容器102には、第1原料が用意される。マイクロリアクタ101の一方の入口には、第1原料容器102が、第1接続部110を介して接続される。第1送液ポンプ105は、第1原料を第1原料容器102からマイクロリアクタ101の一方の入口に送る。
【0128】
第2原料容器103には、第2原料が用意される。マイクロリアクタ101の他方の入口には、第2原料容器103が、第2接続部111を介して接続される。第2送液ポンプ106は、第2原料を第2原料容器103からマイクロリアクタ101の他方の入口に送る。
【0129】
第3原料容器402には、第3原料が用意される。マイクロリアクタ401の他方の入口には、第3原料容器402が、第3接続部404を介して接続される。第3送液ポンプ403は、第3原料を第3原料容器402からマイクロリアクタ401の他方の入口に送る。
【0130】
マイクロリアクタ101の出口には、マイクロリアクタ401の一方の入口が滞留部112を介して接続される。
【0131】
マイクロリアクタ401の出口には、生成物回収容器104が滞留部405を介して接続される。生成物回収容器104は、マイクロリアクタ101、及びその後に続く滞留部112、マイクロリアクタ401、及びその後に続く滞留部405内で生成された生成流体を回収するための容器である。なお、生成物回収容器104には、必要に応じて、生成流体を希釈したり、中和したりするために、必要な流体を貯留しておくことができる。また、滞留部405は、必要に応じて、使用する原料を最小限にするために、マイクロリアクタ401で生成された生成流体を生成物回収容器104に取り出すための最低限の長さとすることができる。
【0132】
第1送液ポンプ105や、第2送液ポンプ106や、第3送液ポンプ403としては、例えば、シリンジポンプ、チューブポンプ、プランジャポンプ、ダイヤフラムポンプ、スクリューポンプや、シリンジによる手動の送液や、水頭差を利用した送液等を用いることができる。なお、第1送液ポンプ105、もしくは第2送液ポンプ106、もしくは第3送液ポンプ403としてシリンジポンプを用いた場合は、第1原料容器102、もしくは第2原料容器103、もしくは第3原料容器402は、使用する原料を最小限にするために、第1原料、もしくは第2原料、もしくは第3原料が用意されたシリンジを用いることができる。
【0133】
マイクロリアクタ101、マイクロリアクタ401、第1原料容器102、第2原料容器103、第3原料容器402、生成物回収容器104、第1接続部110、第2接続部111、第3接続部404、滞留部112、滞留部405、ポンプの接液部、シリンジ、ダイヤフラム、フィッティング等の材料としては、第1原料、第2原料、第3原料、生成流体に対する悪影響を生じず、これらによる劣化を生じ難い限り、流体の種類に応じて、適宜の材料を用いることができる。
【0134】
これらの材料は、システム内における設置箇所毎に、互いに同一であっても良いし、互いに異なっていても良い。加工性や柔軟性等に応じて、適宜に選定することができる。
【0135】
マイクロリアクタ101及びマイクロリアクタ401の材料としては、ステンレス鋼、金、ガラス、ハステロイ、セラミック、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、TPX(ポリメチルペンテン)、PDMS(ポリジメチルシロキサン)、PC(ポリカーボネート)や、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)等のフッ素系樹脂等が挙げられる。
【0136】
マイクロリアクタ101及びマイクロリアクタ401の材料は、耐食性、耐薬品性等の向上のために、ガラス等によるライニングや、ニッケル、金等によるコーティングや、シリコンの酸化で形成されるような酸化皮膜が形成されても良い。
【0137】
温度調節装置115,116,117,118,406,407としては、熱媒体を用いた熱交換器、熱媒体を用いた恒温水槽、ペルチェ式調温装置、マントルヒータ等の適宜の装置を用いることができる。熱媒体としては、水、エチレングリコール、水/エチレングリコール混合溶媒、ドライアイスと水/エタノール混合溶媒、ドライアイスと水/メタノール混合溶媒等を用いることができる。
【0138】
温度調節装置115と、温度調節装置116、温度調節装置117、温度調節装置118、温度調節装置406、温度調節装置407とは、互いに同じ温度範囲に調節されても良いし、互いに異なる温度範囲に調節されても良い。温度調節装置115,116,117,118,406,407による温度は、プロセスの速度、化合物の安定性等に応じて調節できる。なお、プロセスを室温で行う場合等には、温度調節装置115,116,117,118,406,407を備えなくても良い。
【0139】
条件探索用マイクロリアクタシステム4に用いるマイクロリアクタ101及びマイクロリアクタ401としては、互いに異なる流量で流体同士を混合可能なマイクロリアクタ2を用いることもできる。但し、条件探索用マイクロリアクタシステム4に用いるマイクロリアクタは、少なくとも二流体を混合する微小流路を有する限り、適宜の形状に設けることができる。例えば、微小流路は、Y字型、T字型、多層流を形成して合流させる形状等に設けることもできる。
【0140】
条件探索用マイクロリアクタシステム4に用いるマイクロリアクタは、二流体が合流するまでの流路体積が、互いに異なっていても良いし、互いに同等であっても良い。条件探索用マイクロリアクタシステム4に用いるマイクロリアクタの流路は、必ずしも全てが微小流路である必要はない。条件探索用マイクロリアクタシステム4に用いるマイクロリアクタの流路は、反応の種類等に応じて、流路径ないし流路幅や流路深さを変更できる。
【0141】
以下では、具体的な例を用いて、条件探索用マイクロリアクタシステム4を用いたプロセス条件の最適化方法について説明する。
【0142】
≪具体例4≫
■脂質ナノ粒子(Lipid nanoParticle:LNP)生成プロセスの条件最適化
条件探索用マイクロリアクタシステム4では、核酸等を含む水溶液と、例えば、イオン化脂質、PEG脂質、リン脂質、及びコレステロールを含むエタノール溶液との混合に、マイクロリアクタを用いる。さらに、得られた流体と核酸等を含まない水溶液との混合にも、マイクロリアクタを用いる。
【0143】
1つめのマイクロリアクタでは、核酸等を含む水溶液とエタノール溶液とをマイクロ反応場である微小流路に導入し、これらを微小流路内で混合してLNP生成プロセスを開始させる。さらに、2つめのマイクロリアクタでは、得られた流体と核酸等を含まない水溶液とをマイクロ反応場である微小流路に導入し、これらを微小流路内で混合してLNP生成プロセスを進行させる。
【0144】
マイクロリアクタを用いると、核酸等を含む水溶液とエタノール溶液の流量比や、1つめのマイクロリアクタで得られた流体と核酸等を含まない水溶液の流量比や、LNP生成プロセスの開始時期や、LNP生成プロセスの終了時期を厳密に制御することができる。従って、核酸等を含む水溶液の構成成分である核酸等と、エタノール溶液の構成成分であるイオン化脂質、PEG脂質、リン脂質、及びコレステロールの混合比の精密な制御や、核酸等を含まない水溶液の構成成分である水と、エタノール溶液の構成成分であるエタノールの混合比の精密な制御や、プロセス時間の精密な制御が可能である。そのため、所望の粒子径を有し、核酸等の包含率が高いLNPを、高収率で生成することができる。
【0145】
条件探索用マイクロリアクタシステム4では、操作・解析部108において、逆ミセル化プロセスに対するプロセス速度定数を含むプロセス速度式と、LNPカプセル化プロセスに対するプロセス速度定数を含むプロセス速度式からなる、LNP生成プロセスモデルを構築する。
【0146】
第1原料容器102には、核酸等を含む水溶液を用意する。第2原料容器103には、イオン化脂質、PEG脂質、リン脂質、及びコレステロールを含むエタノール溶液を用意する。第3原料容器402には、核酸等を含まない水溶液を用意する。
【0147】
はじめに、第1原料容器102に用意された核酸等を含む水溶液を、第1送液ポンプ105によって、第1原料容器102からマイクロリアクタ101の一方の入口に送る。また、第2原料容器103に用意されたエタノール溶液を、第2送液ポンプ106によって、第2原料容器103からマイクロリアクタ101の他方の入口に送る。さらに、第3原料容器402に用意された核酸等を含まない水溶液を、第3送液ポンプ403によって、第3原料容器402からマイクロリアクタ401の一方の入口に送る。
【0148】
次いで、核酸等を含む水溶液とエタノール溶液とをマイクロリアクタ101で混合する。混合によって、核酸等を含む水溶液とエタノール溶液との脂質ナノ粒子生成プロセスを開始する。まず、イオン化脂質とコレステロールからなる逆ミセルで、核酸等を含む水溶液を閉じ込めた逆ミセル化プロセスを開始する。
【0149】
続いて、イオン化脂質、PEG試薬、リン脂質、及びコレステロールが逆ミセルを包含する、LNPカプセル化プロセスを開始する。逆ミセル化プロセス及びLNPカプセル化プロセスは、マイクロリアクタ101で生成された生成流体が、下流に向けてその後に続く滞留部112内を流れる間にさらに進行する。
【0150】
次いで、核酸等を含まない水溶液と、マイクロリアクタ101での混合で得られた流体とをマイクロリアクタ401で混合する。この混合によって、LNPカプセル化プロセスが促進される。LNPカプセル化プロセスは、マイクロリアクタ401で生成された生成流体が、下流に向けてその後に続く滞留部405内を流れる間にさらに進行する。
【0151】
続いて、マイクロリアクタ401及びその後に続く滞留部405から排出された生成流体を、生成物回収容器104に回収する。マイクロリアクタ101の微小流路内でプロセスを開始し、その後に続く滞留部112を経由し、マイクロリアクタ401の微小流路を経由し、その後に続く滞留部405を経由すると、LNPを含む溶液である生成流体が得られる。
【0152】
生成物回収容器104に回収された生成流体のうち、分析部109で分析を行うのに必要な量が、分析用サンプリング114により分析部109に送られる。分析部109では、LNPの平均粒子径や、LNPの粒子径のばらつき、核酸等のLNPへの包含率等の、核酸等を含む水溶液の構成成分や、エタノール溶液の構成成分や、核酸等を含まない水溶液の構成成分、核酸等を含む水溶液の構成成分とエタノール溶液の構成成分とのプロセス、及び核酸等を含まない水溶液の構成成分とマイクロリアクタ101での混合で得られた流体の構成成分とのプロセスに応じた値が測定される。
【0153】
分析部109で得られたデータは、信号線113を経由して、操作・解析部108に送られる。得られたデータを再現するように逆問題を解くことにより、LNP生成プロセスモデルにおける、逆ミセル化プロセスに対するプロセス速度定数と、LNP生成プロセスに対するプロセス速度定数を計算する。求めたプロセス速度定数から、逆ミセルおよびLNPの生成効率の時系列データを算出し、目的とするLNPの生成効率が最大となる最適プロセス条件を予測する。
【0154】
目的とするLNPの生成効率が最大となると予測されたプロセス条件は、次の実験条件となり、次の実験条件は、操作・解析部108に変更指示として表示される。表示された変更指示に従い、第1送液ポンプ105、第2送液ポンプ106、第3送液ポンプ403の後段側のシステム構成を変更する。操作・解析部108に表示される変更指示の項目としては、核酸等を含む水溶液(第1溶液)、エタノール溶液(第2溶液)、及び核酸等を含まない水溶液(第3溶液)の流量、各温度調節装置115,116,117,118,406,407の温度、滞留部112の内径及び長さ、滞留部405の内径及び長さ、各脂質の濃度(組成割合)及び核酸等の濃度、脂質溶液の溶媒等、またはこれらの一部が挙げられる。
【0155】
≪具体例5≫
■化学修飾プロセスの条件最適化
化学修飾プロセスの一つである生体共役反応プロセスは、抗体やペプチド等の生体関連物質を含む溶液と、リンカー分子を含む溶液と、低分子医薬品を含む溶液を用意し、混合することで、生体関連物質にリンカー分子を介して低分子医薬品が結合した薬物複合体が生成するプロセスである。ここで、生体関連物質に対しリンカー分子が作用できる点が複数ある場合は、複数種類のリンカー分子を介した薬物複合体が生成物として生成し得るため、そのすべてが目的とする薬物複合体とは限らず、その一部が目的生成物となり、残りが副生成物となり得る。
【0156】
条件探索用マイクロリアクタシステム4では、生体関連物質を含む溶液と、リンカー分子を含む溶液との混合に、マイクロリアクタを用いる。さらに、得られた流体と低分子医薬品を含む溶液との混合にも、マイクロリアクタを用いる。
【0157】
1つめのマイクロリアクタでは、生体関連物質を含む溶液と、リンカー分子を含む溶液とをマイクロ反応場である微小流路に導入し、これらを微小流路内で混合してリンカー分子の結合反応プロセスを開始させる。さらに、2つめのマイクロリアクタでは、得られた流体と低分子医薬品を含む溶液とをマイクロ反応場である微小流路に導入し、これらを微小流路内で混合して低分子医薬品の結合反応プロセスを進行させる。
【0158】
マイクロリアクタを用いると、生体関連物質を含む溶液とリンカー分子を含む溶液の流量比や、低分子医薬品を含む溶液と得られた流体の流量比や、リンカー分子の結合反応プロセス時間や、低分子医薬品の結合反応プロセス時間を厳密に制御することができる。従って、生体関連物質とリンカー分子の混合比の精密な制御や、1つめのマイクロリアクタで得られた物質と低分子医薬品の混合比の精密な制御や、リンカー分子の結合反応プロセス時間の精密な制御や、低分子医薬品の結合反応プロセス時間の精密な制御が可能である。そのため、生体関連物質の所望の位置にリンカー分子を介して低分子医薬品が結合した薬物複合体を、高収率で生成することができる。
【0159】
条件探索用マイクロリアクタシステム4では、操作・解析部108において、リンカー分子の結合反応プロセスに対するプロセス速度定数を含むプロセス速度式と、低分子医薬品の結合反応プロセスに対するプロセス速度定数を含むプロセス速度式からなる、化学修飾プロセスモデルを構築する。
【0160】
第1原料容器102には、生体関連物質を含む溶液を用意する。第2原料容器103には、リンカー分子を含む溶液を用意する。第3原料容器402には、低分子医薬品を含む溶液を用意する。
【0161】
はじめに、第1原料容器102に用意された生体関連物質を含む溶液を、第1送液ポンプ105によって、第1原料容器102からマイクロリアクタ101の一方の入口に送る。また、第2原料容器103に用意されたリンカー分子を含む溶液を、第2ポンプ106によって、第2原料容器103からマイクロリアクタ101の他方の入口に送る。さらに、第3原料容器402に用意された低分子医薬品を含む溶液を、第3送液ポンプ403によって、第3原料容器402からマイクロリアクタ401の一方の入口に送る。
【0162】
次いで、生体関連物質を含む溶液とリンカー分子を含む溶液とをマイクロリアクタ101で混合する。混合によって、生体関連物質を含む溶液とリンカー分子を含む溶液とのリンカー分子の結合反応プロセスを開始する。リンカー分子の結合反応プロセスは、マイクロリアクタ101で生成された生成流体が、下流に向けてその後に続く滞留部112内を流れる間にさらに進行する。
【0163】
続いて、低分子医薬品を含む溶液と、マイクロリアクタ101での混合で得られた流体とをマイクロリアクタ401で混合する。この混合によって、低分子医薬品を含む溶液と、マイクロリアクタ101での混合で得られた流体との低分子医薬品の結合反応プロセスを開始する。低分子医薬品の結合反応プロセスは、マイクロリアクタ101で生成された生成流体が、下流に向けてその後に続く滞留部405内を流れる間にさらに進行する。
【0164】
続いて、マイクロリアクタ401及びその後に続く滞留部405から排出された生成流体を、生成物回収容器104に回収する。マイクロリアクタ101の微小流路内でプロセスを開始し、その後に続く滞留部112を経由し、マイクロリアクタ401の微小流路を経由し、その後に続く滞留部405を経由すると、生体関連物質にリンカー分子を介して低分子医薬品が結合した薬物複合体を含む溶液である生成流体が得られる。
【0165】
生成物回収容器104に回収された生成流体のうち、分析部109で分析を行うのに必要な量が、分析用サンプリング114により分析部109に送られる。分析部109では、結合されなかった物質の割合や、複数の結合された物質の生成割合等の、生体関連物質を含む溶液の構成成分や、リンカー分子を含む溶液の構成成分や、低分子医薬品を含む溶液の構成成分、生体関連物質を含む溶液の構成成分とリンカー分子を含む溶液の構成成分とのプロセス、及び低分子医薬品を含む溶液の構成成分とマイクロリアクタ101での混合で得られた流体の構成成分とのプロセスに応じた値が測定される。
【0166】
分析部109で得られたデータは、信号線113を経由して、操作・解析部108に送られる。得られたデータを再現するように逆問題を解くことにより、生体共役反応プロセスにおける、リンカー分子の結合反応プロセスに対するプロセス速度定数を含むプロセス速度式と、低分子医薬品の結合反応プロセスに対するプロセス速度定数を含むプロセス速度式を計算する。求めたプロセス速度定数から、薬物複合体の生成効率の時系列データを算出し、目的とする薬物複合体の生成効率が最大となる最適プロセス条件を予測する。
【0167】
目的とする薬物複合体の生成効率が最大となると予測されたプロセス条件は次の実験条件となり、次の実験条件は、操作・解析部108に変更指示として表示される。表示された変更指示に従い、第1送液ポンプ105、第2送液ポンプ106、第3送液ポンプ403の後段側のシステム構成を変更する。操作・解析部108に表示される変更指示の項目としては、生体関連物質を含む溶液(第1溶液)、リンカー分子を含む溶液(第2溶液)、及び低分子医薬品を含む溶液(第3溶液)の流量、各温度調節装置115,116,117,118,406,407の温度、滞留部112の内径及び長さ、滞留部405の内径及び長さ、生体関連物質、リンカー分子、及び低分子医薬品の濃度、生体関連物質を含む溶液、リンカー分子を含む溶液、及び低分子医薬品を含む溶液の溶媒等、またはこれらの一部が挙げられる。
【0168】
≪具体例6≫
■伸長反応プロセスの条件最適化
条件探索用マイクロリアクタシステム4では、被付加物質を含む溶液と付加物質を含む溶液との混合に、マイクロリアクタを用いる。さらに、得られた流体と付加物質を含む溶液との混合にも、マイクロリアクタを用いる。ここで、被付加物質を含む溶液を混合する付加物質を含む溶液と、得られた流体と混合する付加物質を含む溶液は、同一であっても良く、濃度が異なっても良く、溶媒の種類を変更したり、付加物質の種類を変更することもできる。
【0169】
1つめのマイクロリアクタでは、被付加物質を含む溶液と付加物質を含む溶液とをマイクロ反応場である微小流路に導入し、これらを微小流路内で混合して伸長反応プロセスを開始させる。さらに、2つめのマイクロリアクタでは、得られた流体と付加物質を含む溶液とをマイクロ反応場である微小流路に導入し、これらを微小流路内で混合して伸長反応プロセスを進行させる。
【0170】
マイクロリアクタを用いると、被付加物質を含む溶液と2種類の付加物質を含む溶液の流量比や、伸長反応プロセスの開始時期や、伸長反応プロセスの終了時期を厳密に制御することができる。従って、被付加物質を含む溶液の構成成分である被付加物質と、付加物質を含む溶液の構成成分である付加物質の混合比の精密な制御や、プロセス時間の精密な制御が可能である。そのため、被付加物質の所望の位置に付加物質が付加した物質を、高収率で生成することができる。
【0171】
条件探索用マイクロリアクタシステム4では、操作・解析部108において、目的とする物質を生成する反応に対するプロセス速度定数を含むプロセス速度式と、副反応に対するプロセス速度定数を含むプロセス速度式からなる、伸長反応プロセスモデルを構築する。
【0172】
第1原料容器102には、被付加物質を含む溶液を用意する。第2原料容器103には、付加物質を含む溶液を用意する。第3原料容器402には、付加物質を含む溶液を用意する。
【0173】
はじめに、第1原料容器102に用意された被付加物質を含む溶液を、第1送液ポンプ105によって、第1原料容器102からマイクロリアクタ101の一方の入口に送る。また、第2原料容器103に用意された付加物質を含む溶液を、第2ポンプ106によって、第2原料容器103からマイクロリアクタ101の他方の入口に送る。さらに、第3原料容器402に用意された付加物質を含む溶液を、第3送液ポンプ403によって、第3原料容器402からマイクロリアクタ401の一方の入口に送る。
【0174】
次いで、被付加物質を含む溶液と付加物質を含む溶液とをマイクロリアクタ101で混合する。混合によって、被付加物質を含む溶液と付加物質を含む溶液との伸長反応プロセスを開始する。伸長反応プロセスは、マイクロリアクタ101で生成された生成流体が、下流に向けてその後に続く滞留部112内を流れる間にさらに進行する。
【0175】
続いて、付加物質を含む溶液と、マイクロリアクタ101での混合で得られた流体とをマイクロリアクタ401で混合する。この混合によって、付加物質を含む溶液と、マイクロリアクタ101での混合で得られた流体との伸長反応プロセスを開始する。伸長反応プロセスは、マイクロリアクタ101で生成された生成流体が、下流に向けてその後に続く滞留部405内を流れる間にさらに進行する。
【0176】
続いて、マイクロリアクタ401及びその後に続く滞留部405から排出された生成流体を、生成物回収容器104に回収する。マイクロリアクタ101の微小流路内でプロセスを開始し、その後に続く滞留部112を経由し、マイクロリアクタ401の微小流路を経由し、その後に続く滞留部405を経由すると、付加物質が付加された物質を含む溶液である生成流体が得られる。
【0177】
生成物回収容器104に回収された生成流体のうち、分析部109で分析を行うのに必要な量が、分析用サンプリング114により分析部109に送られる。分析部109では、付加されなかった物質の割合や、複数の付加された物質の生成割合等の、被付加物質を含む溶液の構成成分や、2種類の付加物質を含む溶液の構成成分、被付加物質を含む溶液の構成成分と付加物質を含む溶液の構成成分とのプロセス、及び付加物質を含む溶液の構成成分とマイクロリアクタ101での混合で得られた流体の構成成分とのプロセスに応じた値が測定される。
【0178】
分析部109で得られたデータは、信号線113を経由して、操作・解析部108に送られる。得られたデータを再現するように逆問題を解くことにより、目的生成物を生成する反応プロセスに対するプロセス速度定数を含むプロセス速度式と、副反応プロセスに対するプロセス速度定数を含むプロセス速度式を計算する。求めたプロセス速度定数から、付加された物質の生成効率の時系列データを算出し、目的とする付加された物質の生成効率が最大となる最適プロセス条件を予測する。
【0179】
目的とする付加された物質の生成効率が最大となると予測されたプロセス条件は次の実験条件となり、次の実験条件は、操作・解析部108に変更指示として表示される。表示された変更指示に従い、第1送液ポンプ105、第2送液ポンプ106、第3送液ポンプ403の後段側のシステム構成を変更する。操作・解析部108に表示される変更指示の項目としては、被付加物質を含む溶液(第1溶液)、付加物質を含む溶液(第2溶液)、及び付加物質を含む溶液(第3溶液)の流量、各温度調節装置115,116,117,118,406,407の温度、滞留部112の内径及び長さ、滞留部405の内径及び長さ、被付加物質及び2種類の付加物質の濃度、被付加物質を含む溶液及び2種類の付加物質を含む溶液の溶媒等、またはこれらの一部が挙げられる。
【0180】
以上の条件探索用マイクロリアクタシステム4、及びそれを用いたプロセス条件の最適化方法により、反応等のプロセス条件の最適化に必要な実験数をできるだけ減らすことができるとともに、実験をしていない因子や測定できない因子での値を予測することができ、実験にかかる時間や必要な試薬量(廃棄物)をできるだけ減らすことができる。
【実施例0181】
図5を参照して、本発明の実施例3に係る条件探索用マイクロリアクタシステムについて説明する。
【0182】
図5は、本実施例の条件探索用マイクロリアクタシステム1の模式図であり、実施例1(図1)の変形例に相当する。
【0183】
図5に示すように、本実施例の条件探索用マイクロリアクタシステム1は、制御部107を複数備えており(ここでは2つの制御部107a,107b)、複数の制御部107a,107bにより、各送液ポンプ105,106を個別に動作するように構成されている。
【0184】
制御部107aは、信号線113aにより操作・解析部108及び第1送液ポンプ105とそれぞれ接続されている。また、制御部107bは、信号線113bにより操作・解析部108及び第2送液ポンプ106とそれぞれ接続されている。
【0185】
本実施例のように、制御部107と各送液ポンプを1対1の構成とすることで、システム内のマイクロリアクタの数を増やす場合に、マイクロリアクタの数に合わせて制御部及び送液ポンプの組み合わせを増設すれば良く、システムの拡張性が向上する。
【実施例0186】
図6を参照して、本発明の実施例4に係る条件探索用マイクロリアクタシステムについて説明する。
【0187】
図6は、本実施例の条件探索用マイクロリアクタシステム4の模式図であり、実施例2(図4)の変形例に相当する。
【0188】
図6に示すように、本実施例の条件探索用マイクロリアクタシステム4は、制御部107を複数備えており(ここでは3つの制御部107a,107b,107c)、複数の制御部107a,107b,107cにより、各送液ポンプ105,106,403を個別に動作するように構成されている。
【0189】
制御部107aは、信号線113aにより操作・解析部108及び第1送液ポンプ105とそれぞれ接続されている。また、制御部107bは、信号線113bにより操作・解析部108及び第2送液ポンプ106とそれぞれ接続されている。また、制御部107cは、信号線113cにより操作・解析部108及び第3送液ポンプ403とそれぞれ接続されている。
【0190】
本実施例のように、制御部107と各送液ポンプを1対1の構成とすることで、システム内のマイクロリアクタの数を増やす場合に、マイクロリアクタの数に合わせて制御部及び送液ポンプの組み合わせを増設すれば良く、システムの拡張性が向上する。
【0191】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0192】
例えば、条件探索用マイクロリアクタシステムは、3台以上のマイクロリアクタを直列に接続した構成としても良い。上記の条件探索用マイクロリアクタシステム1もしくは条件探索用マイクロリアクタシステム4の構成を、プロセスの種類毎に、繰り返し直接に接続することもできる。前段のマイクロリアクタで生成された混合流体と、容器に用意された被混合流体とを混合する第n台目(nは、2以上の整数)のマイクロリアクタを、1台目のマイクロリアクタよりも後段側に直列に接続し、最後に生成物回収容器を設けることができる。
【符号の説明】
【0193】
1…条件探索用マイクロリアクタシステム
101…マイクロリアクタ
102…第1原料容器
103…第2原料容器
104…生成物回収容器
105…第1送液ポンプ
106…第2送液ポンプ
107,107a,107b,107c…制御部
108…操作・解析部
109…分析部
110…第1接続部
111…第2接続部
112…滞留部
113,113a,113b,113c…信号線
114…分析用サンプリング
115,116,117,118…温度調節装置
2…マイクロリアクタ
201…上側プレート
202…下側プレート
203…高流量側流路(微小流路)
203a,203b…分岐流路
204…低流量側流路(微小流路)
205…混合流路(微小流路)
206…合流点
207…高流量側流体入口(貫通孔)
208…低流量側流体入口(貫通孔)
209…流体出口(貫通孔)
4…条件探索用マイクロリアクタシステム
401…マイクロリアクタ
402…第3原料容器
403…第3送液ポンプ
404…第3接続部
405…滞留部
406,407…温度調節装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6