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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114204
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】被験者の異常検知システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20240816BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20240816BHJP
   G08B 25/04 20060101ALI20240816BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240816BHJP
   G08B 21/04 20060101ALI20240816BHJP
   G06T 7/20 20170101ALI20240816BHJP
【FI】
H04N7/18 K
G08B25/00 510M
G08B25/04 K
G06T7/00 350C
G08B21/04
G06T7/20 300Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019812
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
(74)【代理人】
【識別番号】100085291
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 実
(74)【代理人】
【識別番号】100117798
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 慎一
(74)【代理人】
【識別番号】100166899
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 慶太
(74)【代理人】
【識別番号】100221006
【弁理士】
【氏名又は名称】金澤 一磨
(72)【発明者】
【氏名】竹田 史章
【テーマコード(参考)】
5C054
5C086
5C087
5L096
【Fターム(参考)】
5C054CA04
5C054CA05
5C054CC02
5C054FC12
5C054FC13
5C054FE14
5C054FE17
5C054HA19
5C086AA22
5C086BA04
5C086CA28
5C086CB36
5C086DA08
5C086FA17
5C087AA10
5C087DD03
5C087EE08
5C087FF01
5C087FF04
5C087GG02
5C087GG09
5L096AA03
5L096AA06
5L096BA02
5L096CA04
5L096DA02
5L096FA32
5L096GA19
5L096GA51
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】 本発明は、浴室内での高齢者の事故検知、乳幼児自動見守り、独居老人の状況確認、不審者の侵入検知などの環境下で、挙動の有無を判別し異常検知が可能となる。
【解決手段】 可視画像又は近赤外線画像、さらには、超音波など各種センサ信号を検知対象に照射した場合の反射信号を用いて対象が動いているか否かを有色ノイズ環境下でもニューラルネットワークの非線形識別能力により高度に検知できるシステムに関する発明である。具体的には、時間的にセンシング時差のある2つの反射信号の強弱の変動(画像では濃淡変動)をニューラルネットワークにて高精度に挙動があるか否かを判定する。これにより、検知環境が学習時と異なる場合においても、わずかな対象の挙動に対して検知が可能となる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の挙動の有無を検知する被験者の異常検知システムであって、
前記被験者を含む所定領域を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段よりの信号を受け、前記所定領域について、所定の時間内で、所定の時間間隔で、複数の静止画像を取り込み、前記被験者に挙動があるか否かを判別する挙動判別手段と、を備えることを特徴とする、被験者の異常検知システム。
【請求項2】
前記挙動判別手段は、挙動があるか否かの判別において、前記複数の静止画像の濃淡変動に基づいて行うものである、
請求項1記載の被験者の異常検知システム。
【請求項3】
前記挙動判別手段は、挙動があるか否かの判別において、前記複数の静止画像のうち、少なくともいずれか1の静止画像と、余りの静止画像との濃淡変動の有無に基づいて行うものである、
請求項2記載の被験者の異常検知システム。
【請求項4】
前記挙動判別手段は、
1の静止画像と、余りの内の1の静止画像とを、それぞれ複数のブロックに分割する手段と、
それぞれの静止画像の対応するブロック毎の濃淡の差分を算出する手段Aと、
計算された各ブロックの濃淡の差分に基づいて、1の静止画像と余りの内の1の静止画像の濃淡の差分を算出する手段Bと、
算出された1の静止画像と余りの内の1の静止画像の濃淡の差分が、所定の閾値を超えているか否かにより、濃淡変動の有無を判別する手段Cと、を有する、
請求項3記載の被験者の異常検知システム。
【請求項5】
前記手段Aは、それぞれの静止画像の対応するブロック毎の濃淡の加算平均値の差分を算出する手段である、
請求項4記載の被験者の異常検知システム。
【請求項6】
前記手段Bは、前記各ブロックの濃淡の差分をニューラルネットワークの入力値として用い、非線形識別である高次識別曲線を、1の静止画像と余りの内の1の静止画像の濃淡の差分情報として算出する手段であり、
前記手段Cは、前記高次識別曲線が所定の閾値を超えている部分があるか否かにより、濃淡変動の有無を判別する手段である、
請求項5記載の被験者の異常検知システム。
【請求項7】
前記挙動判別手段は、
前記手段A乃至Cにおいて、静止画像において被験者の輪郭などの抽出を行うことなく判別する手段である、
請求項4記載の被験者の異常検知システム。
【請求項8】
前記挙動判別手段は、
前記手段A乃至Cを1の静止画像と余りの他の静止画像とで複数回実行する手段Dを有する、
請求項4記載の被験者の異常検知システム。
【請求項9】
前記挙動判別手段は、
前記複数の静止画像の全ての静止画像について、前記手段A乃至Dを実行する手段Eを有し、
全ての静止画像において濃淡変動が無い場合を、異常検知と判別する、
請求項8記載の被験者の異常検知システム。
【請求項10】
前記ニューラルネットワークは、挙動がある場合と、挙動のない場合の複数の静止画像からなる学習データを用いて学習されている、
請求項6記載の被験者の異常検知システム。
【請求項11】
前記挙動判別手段は、
所定の時間内で所定の時間間隔における静止画像の判別を、異なる時間において複数回行うものである、
請求項1記載の被験者の異常検知システム。
【請求項12】
前記撮像手段により得られる画像が、可視画像又は近赤外線画像である、
請求項1記載の被験者の異常検知システム。
【請求項13】
前記撮像手段が浴室の上方に配置され、
前記所定領域が、浴槽全体または浴室全体であり、
所定の時間内における、濃淡変動がないと判別された場合に、
入浴者に動きがないとして異常と検知する、
請求項1記載の被験者の異常検知システム。
【請求項14】
前記被験者を含む所定領域を撮像する撮像手段にかえて、前記被験者を含む所定領域に超音波などのセンサ信号を照射するセンサ照射手段と、
前記センサ照射手段よりの反射信号を受け、前記所定領域について、所定の時間内で、所定の時間間隔で、複数の反射信号を取り込み、前記被験者に挙動があるか否かを判別する挙動判別手段と、を備え、
静止画像にかえて、所定の時間間隔ごとの所定領域における複数の反射信号情報を用いて挙動判別を行う、
請求項1乃至11、13のいずれか1項記載の被験者の異常検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の異常検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅内のセキュリティや高齢者の見守り等のニーズが近年高まっており、例えば、高齢者の浴室における溺没等による事故などを防止したいとの要望がある。この種の従来技術として、例えば日々湯沸かしポットを操作することで被験者(高齢者)の健在を遠隔地に通信する技術が存在する。また、ペットや乳幼児の挙動を無線カメラで撮像し遠隔地に配信する技術などが存在する。
【0003】
しかし、前者は被験者の無意識的な能動動作を確認者に送信しているだけで、被験者の不測の事態を自動で送信するものではない。さらに、後者は動作のモニタリングであり、被験者の状態を判断する機能は全く付随していない。
【0004】
したがって、浴槽などの環境における不測の事態に対する、被験者が健在か否かを判断する技術は未だ存在していない。特に、浴室や種々の場所において、画像処理では外来光や反射光、霧による散乱光など多種類の画像ノイズが発生する環境下での検知は検知精度が不十分で検知技術としては未だ不十分である。
【0005】
例えば、特許文献1では、室内の対象物を監視し、対象物に異常がある場合はその旨を報知する監視装置に関する発明が開示されている。特許文献1の発明は、空内を撮影する撮像装置と、撮像装置で撮影した画像から室内の対象物を認識しその対象物が一定時間静止したことを検知すると警報信号出力する画像認識装置と、を備える監視装置の発明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9-276237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の監視装置では、輝度情報、色情報等に基づいて異常動作を検出するので、外来光や反射光、霧による散乱光等多種類の画像ノイズが発生する環境下での検知は、検知精度が不十分であるという問題がある。
【0008】
例えば、浴槽などの環境下では、水面や霧による反射光、さらに壁からの反射光が通常の可視画像に対し大きなノイズとなり含まれることになる。それ故、画像処理で被験者の挙動の輪郭を抽出するなど、被験者の特徴量となる重心位置、面積、周囲長を正確に算出することは非常に難しい。さらに、検知装置開発時点では撮像環境では採光色、壁面色、浴槽内の入浴剤の有無やその色合いの違いなど多種多様で撮像環境を確定することができない。
【0009】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みなされたもので、検知する施設や場所などの環境や被験者が多種多様な状況下においても被験者に挙動があるか否かを高精度に判定することができる、被験者の異常検知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一の態様にかかる異常検知システムは、被験者の挙動の有無を検知する被験者の異常検知システムであって、前記被験者を含む所定領域を撮像する撮像手段と、前記撮像手段よりの信号を受け、前記所定領域について、所定の時間内で、所定の時間間隔で、複数の静止画像を取り込み、前記被験者に挙動があるか否かを判別する挙動判別手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
ここで、「静止画像を取り込み」とは、撮像手段にてまず動画として撮像し、その動画の中から時間間隔を開けて複数の静止画像を選択して取り込む場合と、時間間隔を開けて複数の静止画像を順に撮像して取り込む場合とを含む。
【0012】
この構成によれば、被験者について、所定の時間内で、所定の時間間隔で、複数の静止画像を取り込み、それら静止画像により被験者に挙動があるか否かを判別するので、被験者を確認する確認者が常時被験者を監視することなく、介護者などが常に付き添う必要はなく、被験者に挙動があるか否かを判別し異常状態にあるか否かを判別することができる。
【0013】
また、この異常検知システムは、前記挙動判別手段は、挙動があるか否かの判別において、前記複数の静止画像の濃淡変動に基づいて行うものであることを特徴とする。この構成によれば、例えば浴槽などの環境下において浴槽形状や壁面色といった検知する環境の特徴や、被験者の輪郭など被験者の特徴は多種多様であるところ、複数の静止画像の濃淡の変動に基づいて判別することで、どのような検知環境や被験者であっても、被験者に挙動があるか否かについて精度良く判別することができる。
【0014】
前記挙動判別手段は、挙動があるか否かの判別において、前記複数の静止画像のうち、少なくともいずれか1の静止画像と、余りの静止画像との濃淡変動の有無に基づいて行うものであることを特徴とする。この構成によれば、どのような検知環境や被験者であっても、被験者に挙動があるか否かについてより精度良く判別することができる。
【0015】
前記挙動判別手段は、1の静止画像と、余りの内の1の静止画像とを、それぞれ複数のブロックに分割する手段と、それぞれの静止画像の対応するブロック毎の濃淡の差分を算出する手段Aと、計算された各ブロックの濃淡の差分に基づいて、1の静止画像と余りの内の1の静止画像の濃淡の差分を算出する手段Bと、算出された1の静止画像と余りの内の1の静止画像の濃淡の差分が、所定の閾値を超えているか否かにより、濃淡変動の有無を判別する手段Cと、を有することを特徴とする。この構成によれば、挙動の有無の判別精度が向上する。
【0016】
前記手段Aは、それぞれの静止画像の対応するブロック毎の濃淡の加算平均値の差分を算出する手段であることを特徴とする。この構成によれば、手段Aで算出された加算平均値の差分をニューラルネットワークに入力することで、被験者が異常状態にあるか否かについて精度良く判別することができる。
【0017】
前記手段Bは、前記各ブロックの濃淡の差分をニューラルネットワークの入力値として用い、非線形識別である高次識別曲線を、1の静止画像と余りの内の1の静止画像の濃淡の差分情報として算出する手段であり、前記手段Cは、前記高次識別曲線が所定の閾値を超えている部分があるか否かにより、濃淡変動の有無を判別する手段であることを特徴とする。この構成によれば、被験者が異常状態にあるか否かについて精度良く判別することができる。また、検知する環境や被験者の特徴に無関係な挙動を検知をすることができ、厳密かつ柔軟に判別することができる。
【0018】
前記挙動判別手段は、前記手段A乃至Cにおいて、静止画像において被験者の輪郭などの抽出を行うことなく判別する手段であることを特徴とする。この構成によれば、水面や霧による反射光、さらに、壁からの反射光が通常の可視画像に対し大きなノイズとなり含まれることになる浴槽などの環境下での検知精度の低下を抑制することができる。
【0019】
前記挙動判別手段は、前記手段A乃至Cを1の静止画像と余りの他の静止画像とで複数回実行する手段Dを有することを特徴とする。この構成によれば、複数回実行する手段Dを有することで、被験者が異常状態にあるか否かについてより精度良く判別することができる。
【0020】
前記挙動判別手段は、前記複数の静止画像の全ての静止画像について、前記手段A乃至Dを実行する手段Eを有し、全ての静止画像において濃淡変動が無い場合を、異常検知と判別することを特徴とする。
【0021】
前記ニューラルネットワークは、挙動がある場合と、挙動のない場合の複数の静止画像からなる学習データを用いて学習されていることを特徴とする。この構成によれば、検知環境での学習は不要で効率的に精度良く判別することができる。
【0022】
前記挙動判別手段は、所定の時間内で所定の時間間隔における静止画像の判別を、異なる時間において複数回行うものであることを特徴とする。この構成によれば、静止画像の判別を、異なる時間において複数回行うことで、被験者が異常状態にあるか否かについて精度良く判別することができる。
【0023】
前記撮像手段により得られる画像が、可視画像又は近赤外線画像であることを特徴とする。この構成によれば、可視画像又は近赤外線画像の情報を用いた信号処理により、様々な用途に活用できる異常検知システムを実現できる。
【0024】
前記撮像手段が浴室の上方に配置され、前記所定領域が、浴槽全体または浴室全体であり、所定の時間内における、濃淡変動がないと判別された場合に、入浴者に動きがないとして異常と検知することが好ましい。
【0025】
前記被験者を含む所定領域を撮像する撮像手段にかえて、前記被験者を含む所定領域に超音波などのセンサ信号を照射するセンサ照射手段と、前記センサ照射手段よりの反射信号を受け、前記所定領域について、所定の時間内で、所定の時間間隔で、複数の反射信号を取り込み、前記被験者に挙動があるか否かを判別する挙動判別手段と、を備え、静止画像にかえて、所定の時間間隔ごとの所定領域における複数の反射信号情報を用いて挙動判別を行うことを特徴とする。この構成によれば、プライバシーや快適性の観点から映像画像による監視が難しい場合にも、撮像手段にかえて超音波などのセンサ信号を照射するセンサ照射手段によって、被験者が異常状態にあるか否かについて精度良く判別することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、検知する施設や場所などの環境や被験者が多種多様な状況下においても被験者に挙動があるか否かを高精度に判定することができる被験者の異常検知システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本実施形態にかかる被験者の異常検知システムの構成図である。
図2】被験者の異常検知システムの動作画面を示す図で、(a)は挙動を検知しない場合、(b)は挙動を検知した場合の図である。
図3】被験者の挙動の有無を判定するオプティカルフロー図である。
図4】動く前と動いた後の差分算出模式図である。
図5】(a)は挙動がない場合の学習データ、(b)は挙動がある場合の学習データを示す図である。
図6】(a)(b)は動きとニューラルネットワークへの入力値ベクトルとの関係を示す図である。
図7】種々のノイズがある環境下でのニューラルネットワークによる高次分離曲線での判定模式図である。
図8】単純なノイズがない環境下での閾値判定(従来技術)模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態について、図面に基づき詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。例えば、以下の実施形態では、異常検知を行う対象が浴室内における高齢者の例を用いて説明するが、本発明は浴室内における高齢者に限らず、例えば乳幼児や独居老人、留守宅へ侵入した不審者、屋外での挙動不審者にも適用可能と考えられる。
【0029】
<実施形態>
本実施形態の異常検知システム1は、浴槽内の高齢者に緊急事態が発生した場合の早期検知を前提とする被験者異常検知システムである。図1に示すように、この異常検知システム1は、撮像手段2と、挙動判別手段3とを備える。
【0030】
撮像手段2は、浴槽内の高齢者を含む所定領域を撮像する撮像装置である。撮像装置は、例えば可視画像が得られるwebカメラである。そして、このwebカメラは無線通信可能なカメラであり、webカメラの画像データや動画データがPC等に送信可能に構成されている。
【0031】
なお、本実施形態においては、撮像手段にwebカメラを用いているが、工業用カメラ、ネットワークカメラ、一眼カメラ、コンパクトデジタルカメラ、監視カメラ、スマートフォン(携帯電話)、タブレット端末等であってもよい。また、撮像装置は、近赤外線画像が得られる近赤外線カメラ等であってもよい。
【0032】
撮像手段2は、浴室の上方に配置され、浴槽全体または浴室全体を撮像可能な位置、例えば浴室の天井などに設置する。なお、被験者を含む所定領域を撮像できれば、その位置は制限されない。撮像手段2は、ズームイン、ズームアウトや角度を調整することができ、撮像領域の位置を変更可能であることが好ましい。また、撮像手段2の台数は1台に限定されず、複数台であってもよい。
【0033】
そして、この撮像手段2によるwebカメラ画像を用いて、一定時間時間内(例えば3秒)に一定間隔(例えば0.1秒)で撮像と検知を繰り返し(例えば12回判定)、被験者の挙動がない、すなわち各画像の濃淡変動がないと判定されたものがあれば異常と統合判定する。
【0034】
挙動判別手段3は、図1に示すように、1の静止画像と、余りの内の1の静止画像とを、それぞれ複数のブロックに分割する手段と、手段A乃至手段Eとを有する。
【0035】
手段Aは、それぞれの静止画像の対応するブロック毎の濃淡の加算平均値の差分を算出手段である。手段Aにより算出された加算平均値の差分を、ニューラルネットワークに入力することで、被験者が異常状態にあるか否かについてより精度良く判別することができる。
【0036】
手段Bは、各ブロックの濃淡の差分をニューラルネットワークの入力値として用い、非線形識別である高次識別曲線を、1の静止画像と余りの内の1の静止画像の濃淡の差分情報として算出する手段である。
【0037】
また、手段Cは、非線形識別である高次識別曲線が所定の閾値を超えている部分があるか否かにより、濃淡変動の有無を判別する手段である。
【0038】
手段B及びCにより、被験者が異常状態にあるか否かについて精度良く判別することができる。また、検知する環境や被験者の特徴に無関係な挙動検知をすることができ、厳密かつ柔軟に判別することができる。
【0039】
手段Dは、手段A乃至Cを1の静止画像と余りの他の静止画像とで複数回実行する手段である。これにより、複数回実行する手段Dを有することで、被験者が異常状態にあるか否かについてより精度良く判別することができる。
【0040】
手段Eは、複数の静止画像の全ての静止画像について、手段A乃至Dを実行する手段であり、全ての静止画像において濃淡変動がない場合に異常検知と判別する。
【0041】
本実施形態の異常検知システム1は、まず被験者である高齢者が、入口から浴室内に入る。そして、高齢者は、浴室内で身体を洗ったり、浴槽内でお湯に浸かったりする。浴槽は浴室内に設置されていて、浴室は使用者が入浴を行う部屋である。
【0042】
次に、浴室の上方に配置され、浴槽全体を撮像可能な位置に設置された撮像手段2が、浴槽内で入浴している高齢者を含む所定領域を撮像し、挙動判別手段3に信号を送る。
【0043】
図2は、被験者異常検知システム1の動作画面の一例を示すもので、図2(a)は12回の判定において挙動が検知できなかった場合の異常検知システム1の動作画面で、図2(b)は12回の判定において挙動が4回検知された異常検知システム1の動作画面である。
【0044】
なお、図2は、パーソナルコンピュータに内蔵されたwebカメラを用いて、テスト者を撮像した例であり、一定時間内(3秒)に一定間隔(0.1秒)で撮像と検知を繰り返し(12回判定)行ったものである。
【0045】
そして、撮像手段2よりの信号を受けた挙動判別手段3は、その撮像された動画から、所定の時間内で、所定の時間間隔で複数の静止画像を取り込み、浴槽内の被験者に挙動があるか否かを判定する。
【0046】
本実施形態においては、一定時間内(例えば3秒間)に一定間隔(例えば0.1秒)で撮像と検知を繰り返す(例えば12回判定)。
【0047】
そして、動画より取得した静止画を2枚取り込み、その濃淡変化で挙動を検知して、一定時間内に挙動がない場合は、被験者が異常状態にあると判定する。また、これら2つ静止画像を、静止画1と静止画2として、これらをそれぞれブロック分割したブロック内加算平均値を、静止画1(動く前)と静止画2(動いた後)でそれぞれ作成し、これらの差分をニューラルネットワークへ入力して、濃淡変動の有無を判定する(図3参照)。
【0048】
詳しくは、図4に示すように、被験者を含む所定領域が撮像された動画から静止画像2枚を抽出し、それをブロック分割し、ブロック内画素の加算平均値の濃淡変動の差分を入力することで、ニューラルネットワークで高次識別曲線が所定の閾値を超えている部分があるか否かにより、濃淡変動の有無を判別し、判定する。本実施形態において、ブロック分割は32×32分割であるが、これに制限されるものではない。
【0049】
ニューラルネットワークは、挙動がある場合と、挙動がない場合の複数の静止画像からなる学習データをあらかじめ学習しておく。図5(a)は、挙動がない場合の学習データであり、図5(b)は挙動がある場合の学習データを示す図である。
【0050】
図5に示すように、本実施形態における挙動を検知する検知する学習データは撮像環境の色、形、大きさに無関係な2つの採取情報に対し、濃淡の変化がない画像(図5(a))と、変化がある画像(図5(b))を与えるだけでよく、検知環境における学習データの蓄積は必須でない。これは、本実施形態が環境によらず濃淡変動で挙動を検知可能なためである。なお、学習データを蓄積する構成としてもよく、さらなる検知精度の向上が図れる可能性はある。
【0051】
そして、被験者に挙動がない場合は、図6(a)に示すように、ニューラルネットワークの入力データは全て0になる。一方、被験者に挙動がある場合は、図6(b)に示すように、時間差の情報の差分は、時間的に変化があった部分の差分情報が0以上となる。
【0052】
以上により静止画像より得られた濃淡変動のデータをニューラルネットワークに入力することで、図7に示す非線形識別の高次分離曲線が得られる。この曲線が所定の閾値を超えるか否かによって、濃淡変動の有無、すなわち被験者に挙動があったか否かを判定する。なお、閾値を超える場合は被験者の挙動あり、異常なしと判定し、閾値を超えない場合は被験者の挙動なし、異常ありと判定する。
【0053】
なお、図8は、従来技術のニューラルネットワークを用いない単純なノイズを考慮しない環境下での閾値判定模式図であって、このような方法では環境に応じた正確な判定が難しい。一方、図7に示す本実施形態のニューラルネットワークを用いた判定とすることで、図8に示すように挙動判定をオプティカルフローのような単純な閾値で判定するのではなく、非線形識別の高次識別曲線をニューラルネットワークで形成して挙動判定するので、種々のノイズの有無に関わらず厳密かつ柔軟に判別することが可能となる。
【0054】
また、本実施形態においては、12回判定しており、このうちの1つの判定でもニューラルネットワークで、濃淡変動がないと判別した場合、その被験者が異常状態にあるいうことになる。ここで、判定のためにニューラルネットワークは12回起動することになるが、判定回数の変更は適宜可能である。
【0055】
<その他の実施形態>
以上の通り、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されないことは勿論である、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例または修正例についても、本発明の技術範囲に属するものである。例えば、前記実施形態の異常検知システムには、挙動判別手段3が異常検知した場合に、外部に通報する手段を備えてもよい。
【0056】
また、上記の実施形態は浴室での挙動検知に関するものであるが、これに限られず、乳幼児自動見守り、独居老人状況確認、不審者侵入検知、屋外挙動不審検知、養殖業分野における給餌の充足度自動検知などに適用することも可能と考えられる。
【0057】
また、上記の実施形態は、カメラによる動画や静止画像を用いて挙動を判定するものであるが、被験者を含む所定領域を撮像する撮像手段2にかえて、被験者を含む所定領域にセンサ信号を照射するセンサ照射手段と、センサ照射手段よりの反射信号を受け、所定領域について、所定の時間内で、所定の時間間隔で、複数の反射信号を取り込み、被験者に挙動があるか否かを判別する挙動判別手段とを備え、静止画像にかえて、所定の時間間隔ごとの所定領域における複数の反射信号情報を用いて挙動判別を行う構成に適用することも可能と考えられる。
【0058】
これによれば、カメラなどの撮像手段による監視を行うことがプライバシーなどの観点から難しい場合に、入浴環境や快適性を妨げず、入浴者にストレスを与えることなく入浴者の異常を検知することができる。また、画像処理の必要がないので、単純な構成とすることができる。使用するセンサは、例えば超音波センサや静電センサなどの非接触式のセンサなどで構成される。
【符号の説明】
【0059】
1 異常検知システム
2 撮像手段
3 挙動判別手段
4 分割手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8