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特開2024-114206負荷特定方法、負荷特定装置、および、コンピュータープログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114206
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】負荷特定方法、負荷特定装置、および、コンピュータープログラム
(51)【国際特許分類】
   A63B 24/00 20060101AFI20240816BHJP
   A61B 8/08 20060101ALI20240816BHJP
   A63B 69/00 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
A63B24/00
A61B8/08
A63B69/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019818
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 亮基
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DD01
4C601GB04
4C601GC01
(57)【要約】
【課題】様々な使用者のそれぞれに対して適切な負荷を設定できる技術を提供する。
【解決手段】筋力トレーニング機器の負荷特定方法は、既知特徴スペクトルを前記複数の時系列波形データごとに取得する工程と、対象時系列波形データを取得する工程と、対象特徴スペクトルを前記複数の対象時系列波形データごとに取得する工程と、予め定めた抽出条件を満たす前記スペクトル類似度を特定し、特定したスペクトル類似度の算出元となった対象時系列波形データに対応する候補負荷を特定する工程と、を備える。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筋力トレーニング機器の負荷特定方法であって、
(a)被験者の単位時間当たりの筋肉の増加量が予め定めた条件を満たす基準負荷が設定された筋力トレーニングが前記被験者によって行われた場合における、前記被験者の筋膜に関する時系列波形データを複数の前記被験者ごとに準備する工程と、
(b)複数のベクトルニューロン層を有するベクトルニューラルネットワーク型の学習済み機械学習モデルに対して複数の前記時系列波形データを入力して、前記学習済み機械学習モデルの特定層の出力から特徴スペクトルとしての既知特徴スペクトルを前記複数の時系列波形データごとに取得する工程と、
(c)異なる候補負荷が設定された複数の筋力トレーニングを使用者が実行した場合における、前記異なる候補負荷ごとの前記時系列波形データである対象時系列波形データを取得する工程と、
(d)複数の前記対象時系列波形データを前記学習済み機械学習モデルに入力して、前記特定層の出力から前記特徴スペクトルとしての対象特徴スペクトルを前記複数の対象時系列波形データごとに取得する工程と、
(e)複数の前記既知特徴スペクトルのそれぞれと、複数の前記対象特徴スペクトルのそれぞれとの類似度であるスペクトル類似度を算出し、算出した複数の前記スペクトル類似度のうちで、予め定めた抽出条件を満たす前記スペクトル類似度を特定し、特定した前記スペクトル類似度の算出元となった前記対象時系列波形データに対応する前記候補負荷を特定する工程と、を備える、負荷特定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の負荷特定方法であって、
前記工程(a)において、前記予め定めた条件は、前記単位時間当たりの筋肉の増加量が増加基準量以上であるという条件であり、
前記工程(e)において、前記抽出条件は、前記スペクトル類似度が閾値以上であるという条件である、負荷特定方法。
【請求項3】
請求項1に記載の負荷特定方法であって、
前記工程(a)において、前記予め定めた条件は、前記単位時間当たりの筋肉の増加量が最大であるという条件であり、
前記工程(e)において、前記抽出条件は、前記複数のスペクトル類似度のうちで、前記スペクトル類似度が最も高いという条件である、負荷特定方法。
【請求項4】
請求項1に記載の負荷特定方法であって、
前記工程(e)は、特定した前記候補負荷を、前記使用者が前記筋力トレーニングを行うときの負荷として設定する工程を含む、負荷特定方法。
【請求項5】
請求項1に記載の負荷特定方法であって、
前記工程(c)において、前記異なる候補負荷は、一定間隔ごとに前記負荷の大きさが異なる、負荷特定方法。
【請求項6】
筋力トレーニング機器の負荷特定装置であって、
複数のベクトルニューロン層を有するベクトルニューラルネットワーク型の学習済み機械学習モデルを記憶する記憶装置と、
被験者の単位時間当たりの筋肉の増加量が予め定めた条件を満たす基準負荷が設定された筋力トレーニングが前記被験者によって行われた場合における、複数の前記被験者ごとに応じた筋膜に関する時系列波形データを、前記学習済み機械学習モデルに対して入力して、前記学習済み機械学習モデルの特定層の出力から特徴スペクトルとしての既知特徴スペクトルを前記複数の時系列波形データごとに取得する第1スペクトル取得部と、
異なる候補負荷が設定された複数の筋力トレーニングを使用者が実行した場合における、前記異なる候補負荷ごとの前記時系列波形データである対象時系列波形データを取得する波形取得部と、
複数の前記対象時系列波形データを前記学習済み機械学習モデルに入力して、前記特定層の出力から前記特徴スペクトルとしての対象特徴スペクトルを前記複数の対象時系列波形データごとに取得する第2スペクトル取得部と、
複数の前記既知特徴スペクトルのそれぞれと、複数の前記対象特徴スペクトルのそれぞれとの類似度であるスペクトル類似度を算出し、算出した複数の前記スペクトル類似度のうちで、予め定めた抽出条件を満たす前記スペクトル類似度を特定し、特定した前記スペクトル類似度の算出元となった前記対象時系列波形データに対応する前記候補負荷を特定する特定部と、を備える、負荷特定装置。
【請求項7】
筋力トレーニング機器の負荷特定をコンピューターに実行させるためのコンピュータープログラムであって、
(a)複数のベクトルニューロン層を有するベクトルニューラルネットワーク型の学習済み機械学習モデルを記憶する機能と、
(b)被験者の単位時間当たりの筋肉の増加量が予め定めた条件を満たす基準負荷が設定された筋力トレーニングが前記被験者によって行われた場合における、複数の前記被験者ごとに応じた筋膜に関する時系列波形データを、前記学習済み機械学習モデルに対して入力して、前記学習済み機械学習モデルの特定層の出力から特徴スペクトルとしての既知特徴スペクトルを前記複数の時系列波形データごとに取得する機能と、
(c)異なる候補負荷が設定された複数の筋力トレーニングを使用者が実行した場合における、前記異なる候補負荷ごとの前記時系列波形データである対象時系列波形データを取得する機能と、
(d)複数の前記対象時系列波形データを前記学習済み機械学習モデルに入力して、前記特定層の出力から前記特徴スペクトルとしての対象特徴スペクトルを前記複数の対象時系列波形データごとに取得する機能と、
(e)複数の前記既知特徴スペクトルのそれぞれと、複数の前記対象特徴スペクトルのそれぞれとの類似度であるスペクトル類似度を算出し、算出した複数の前記スペクトル類似度のうちで、予め定めた抽出条件を満たす前記スペクトル類似度を特定し、特定した前記スペクトル類似度の算出元となった前記対象時系列波形データに対応する前記候補負荷を特定する機能と、を備える、コンピュータープログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、筋力トレーニング機器の負荷特定の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波画像を元に使用者の筋肉量指標値を算出し、算出した筋肉量指標値に基づいて、筋力トレーニング機器を用いたトレーニングの負荷や回数などについての指針情報を生成する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-142619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、例えば、トレーニングのスタート時に、設定した目標値と、算出した筋肉量指標値とを結ぶ外挿線を求め、この外挿線に沿うように、トレーニングの負荷や回数が決定される。しからしながら、従来の技術では、トレーニングスタート時の筋肉量指標値と目標値とが同じような複数の使用者に対して、同じようなトレーニングの負荷が設定される場合がある。負荷に対する筋肉の成長度合いは、使用者によって様々であるため、従来の技術では、様々な使用者のそれぞれに対して適切な負荷を設定することができない場合が生じ得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の形態によれば、筋力トレーニング機器の負荷特定方法が提供される。この負荷特定方法は、(a)被験者の単位時間当たりの筋肉の増加量が予め定めた条件を満たす基準負荷が設定された筋力トレーニングが前記被験者によって行われた場合における、前記被験者の筋膜に関する時系列波形データを複数の前記被験者ごとに準備する工程と、(b)複数のベクトルニューロン層を有するベクトルニューラルネットワーク型の学習済み機械学習モデルに対して複数の前記時系列波形データを入力して、前記学習済み機械学習モデルの特定層の出力から特徴スペクトルとしての既知特徴スペクトルを前記複数の時系列波形データごとに取得する工程と、(c)異なる候補負荷が設定された複数の筋力トレーニングを使用者が実行した場合における、前記異なる候補負荷ごとの前記時系列波形データである対象時系列波形データを取得する工程と、(d)複数の前記対象時系列波形データを前記学習済み機械学習モデルに入力して、前記特定層の出力から前記特徴スペクトルとしての対象特徴スペクトルを前記複数の対象時系列波形データを取得する工程と、(e)複数の前記既知特徴スペクトルのそれぞれと、複数の前記対象特徴スペクトルのそれぞれとの類似度であるスペクトル類似度を算出し、算出した複数の前記スペクトル類似度のうちで、予め定めた抽出条件を満たす前記スペクトル類似度を特定し、特定した前記スペクトル類似度の算出元となった前記対象時系列波形データに対応する前記候補負荷を特定する工程と、を備える。
【0006】
本開示の第2の形態によれば、筋力トレーニング機器の負荷特定装置が提供される。この負荷特定装置は、複数のベクトルニューロン層を有するベクトルニューラルネットワーク型の学習済み機械学習モデルを記憶する記憶装置と、被験者の単位時間当たりの筋肉の増加量が予め定めた条件を満たす基準負荷が設定された筋力トレーニングが前記被験者によって行われた場合における、複数の前記被験者ごとに応じた筋膜に関する時系列波形データを、前記学習済み機械学習モデルに対して入力して、前記学習済み機械学習モデルの特定層の出力から特徴スペクトルとしての既知特徴スペクトルを前記複数の時系列波形データごとに取得する第1スペクトル取得部と、異なる候補負荷が設定された複数の筋力トレーニングを使用者が実行した場合における、前記異なる候補負荷ごとの前記時系列波形データである対象時系列波形データを取得する波形取得部と、複数の前記対象時系列波形データを前記学習済み機械学習モデルに入力して、前記特定層の出力から前記特徴スペクトルとしての対象特徴スペクトルを前記複数の対象時系列波形データを取得する第2スペクトル取得部と、複数の前記既知特徴スペクトルのそれぞれと、複数の前記対象特徴スペクトルのそれぞれとの類似度であるスペクトル類似度を算出し、算出した複数の前記スペクトル類似度のうちで、予め定めた抽出条件を満たす前記スペクトル類似度を特定し、特定した前記スペクトル類似度の算出元となった前記対象時系列波形データに対応する前記候補負荷を特定する特定部と、を備える。
【0007】
本開示の第3の形態によれば、筋力トレーニング機器の負荷特定をコンピューターに実行させるためのコンピュータープログラムが提供される。このコンピュータープログラムは、(a)複数のベクトルニューロン層を有するベクトルニューラルネットワーク型の学習済み機械学習モデルを記憶する機能と、(b)被験者の単位時間当たりの筋肉の増加量が予め定めた条件を満たす基準負荷が設定された筋力トレーニングが前記被験者によって行われた場合における、複数の前記被験者ごとに応じた筋膜に関する時系列波形データを、前記学習済み機械学習モデルに対して入力して、前記学習済み機械学習モデルの特定層の出力から特徴スペクトルとしての既知特徴スペクトルを前記複数の時系列波形データごとに取得する機能と、(c)異なる候補負荷が設定された複数の筋力トレーニングを使用者が実行した場合における、前記異なる候補負荷ごとの前記時系列波形データである対象時系列波形データを取得する機能と、(d)複数の前記対象時系列波形データを前記学習済み機械学習モデルに入力して、前記特定層の出力から前記特徴スペクトルとしての対象特徴スペクトルを前記複数の対象時系列波形データを取得する機能と、(e)複数の前記既知特徴スペクトルのそれぞれと、複数の前記対象特徴スペクトルのそれぞれとの類似度であるスペクトル類似度を算出し、算出した複数の前記スペクトル類似度のうちで、予め定めた抽出条件を満たす前記スペクトル類似度を特定し、特定した前記スペクトル類似度の算出元となった前記対象時系列波形データに対応する前記候補負荷を特定する機能と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態における負荷特定システムを示す図。
図2】センサー装置を説明するための図。
図3】機械学習モデルの構成を示す説明図。
図4】学習済み機械学習モデルの他の構成を示す説明図。
図5】学習済み機械学習モデルの生成工程を示す図。
図6】複数の学習セットを説明するための図。
図7】特徴スペクトルを示す説明図。
図8】既知特徴スペクトル群の構成を示す説明図。
図9】負荷特定システムが実行する負荷特定処理のフローチャート。
図10】スペクトル類似度の第1の算出方法を示す説明図。
図11】スペクトル類似度の第2の算出方法を示す図。
図12】スペクトル類似度の第3の算出方法を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.実施形態:
図1は、実施形態における負荷特定システム5を示す図である。この負荷特定システム5は、筋力トレーニング機器による筋力トレーニングが行われることによって複数の被験者から取得した筋膜に関する時系列波形データを用いて、筋力トレーニングを行う対象者である使用者に筋力トレーニング機器の適切な負荷を特定するシステムである。負荷特定システム5は、負荷特定装置100と、センサー装置400と、筋力トレーニング機器としての負荷装置300とを備える。負荷特定装置100とセンサー装置400、および、負荷特定装置100と負荷装置300は、有線や無線によって互いにデータ通信できる。
【0010】
負荷装置300は、物理的な負荷を発生させる筋力トレーニング機器であり、例えば、ケーブルマシン、トレッドミル、エアロバイク(登録商標)が挙げられる。負荷装置300は、負荷制御部310と、負荷発生部320と、入力部330とを有する。負荷制御部310は、負荷装置300の動作を制御する。例えば、負荷制御部310は、負荷発生部320の負荷を調整する。負荷装置300が、電磁負荷方式のエアロバイクである場合、負荷制御部310は、回転ホイールの中に組み込まれた電磁石に加える電圧を制御することで、電磁石に流れる電流を調整する。これにより、回転ホイールの回転のしやすさが変更されることで、負荷発生部320であるペダルの負荷が変更される。負荷発生部320は、負荷を発生させる要素である。負荷装置300がエアロバイクである場合には、負荷発生部320は、ペダルである。入力部330は、例えば、設定する負荷の値の入力を受け付ける。入力部330は、例えばタッチパネルである。
【0011】
図1を用いて負荷特定装置100の説明を行う前に、図2を用いてセンサー装置400の詳細を説明する。図2は、センサー装置400を説明するための図である。センサー装置400は、負荷装置300を用いて筋力トレーニングが行われた場合に、被験者や使用者などの人の筋肉に関するデータを取得する装置である。本実施形態のセンサー装置400は、超音波発生装置であり、人の筋膜に関する時系列波形データを取得する。
【0012】
センサー装置400は、超音波を発信および受信する超音波素子を有する超音波プローブ410と、超音波プローブ410の機能の制御および信号処理を行う制御部460とを備える。超音波プローブ410と制御部460とは、配線430によって電気的に接続されている。
【0013】
超音波プローブ410は、8つの超音波素子81~88を備えている。図1では、超音波素子81と超音波素子88以外の6つの超音波素子82~87の図示は省略されている。超音波素子81は、超音波の送信素子811と、超音波の受信素子812とを有する。また、超音波素子88は、超音波の送信素子881と、超音波の受信素子882とを有する。また超音波素子81と超音波素子88と同じように、6つの超音波素子82~87もそれぞれ、超音波の送信素子と超音波の受信素子とを有する。ここで、「超音波の送信素子と、超音波の受信素子とを有する」とは、機能的に説明したものであり、構造的には、一つの超音波素子が「送信素子」としての機能と「受信素子」としての機能を有している。8つの超音波素子81~88は、例えば平板状のベース部材に1列に等間隔で配置されている。超音波素子81~88は、人の筋膜に関する時系列波形データを取得する測定対象部位上に粘着パッドやベルトなどの固定部材を介して取り付けられる。なお、超音波素子81~88の数はこれに限定されるものではなく、1つ以上であればよい。
【0014】
制御部260は、各超音波素子81~88の各受信素子812~882から順次受信した受信信号に基づいて人の筋膜に関する時系列波形データを生成する。送信素子811~881から人の測定対象部位に向かって送信された超音波は、測定対象部位の筋膜によって反射する。この反射波の強度は筋膜の厚さに応じて変化する。この反射波の強度を受信素子812~882によって受信することで、制御部260は、筋膜に関する時系列波形データを生成する。つまり、時系列波形データは、筋力トレーニング時における測定対象部位における筋肉の収縮動作である筋膜運動を表すデータである。本実施形態では、制御部260は、人が負荷装置300によって筋力トレーニングを行っている期間の少なくとも一部の測定期間に、受信素子812~882から受信した反射波である受信信号を時系列に並べることで時系列波形データを生成する。
【0015】
制御部260は、駆動パルス発生回路465と、送信回路466と、信号処理回路467と、受信回路468と、マルチプレクサ469と、マイコン470と、通信部471とを備える。駆動パルス発生回路465は、超音波の送信時に、所定の駆動周波数と波数のパターンを生成する。送信回路466は、生成されたパターンに応じて所定の駆動電圧の送信波形を出力する。各送信素子811~881は、送信回路466から出力された送信波形を超音波として測定対象部位に向けて送信する。超音波の反射波を受信する場合には、各受信素子812~882が反射波を受信信号として受信する。受信回路468は、受信素子812~882が受信した受信信号を増幅する。信号処理回路17は、受信回路468によって増幅された受信信号に対して包絡線処理などの時系列波形データを生成するためのデータ処理を行う。マイコン470は、各超音波素子81~88の送信および受信の各送受信動作を、マルチプレクサ19で順次切り替えるように構成されている。マイコン470は、通信部471を介して負荷特定装置100に生成した時系列波形データを送信する。本実施形態では、マイコン470は、各超音波素子81~88の受信素子812~882から受信して生成した8つの時系列波形データを、受信素子812~882の順に並べて、負荷特定装置100で用いる一つの時系列波形データとして生成する。なお、他の実施形態では、マイコン470は、各超音波素子81~88の受信素子812~882から受信して生成した8つの時系列波形データを合成して、例えば平均化して負荷特定装置100で用いる一つの時系列波形データとして生成してもよい。また他の実施形態では、マイコン470は、各超音波素子81~88の受信素子812~882から受信して生成した8つの時系列波形データのうち、特定の一つの受信素子から受信して生成した時系列波形データを負荷特定装置100で用いる一つの時系列波形データとしてもよい。
【0016】
ここで、人の脂肪層と筋肉層との境界部分である筋膜では、超音波が多く反射され、脂肪層中や筋肉層中でほとんど反射されない。この超音波の性質を利用して、超音波プローブ410が配置された測定対象部位上から測定対象部位に向かう深さ方向において、筋肉層の一方の面が脂肪層とが接する境界部分である一方の筋膜と、筋肉層の他方の面と脂肪層とが接する境界部分である他方の筋膜のそれぞれの位置を反射波によって求めることができる。センサー装置400のマイコン470は、求めた一方の筋膜と他方の筋膜との距離を筋肉層の厚みとして算出できる。この筋肉層の厚みは、筋肉量と正の相関を有するため、本実施形態では筋肉量として取り扱われる。本実施形態では、8つの受信素子812~882が受信した時系列波形データから算出された筋肉層の厚みの平均値を、特定対象部位の筋肉層の厚みとして用いてもよい。なお、他の実施形態では、8つの受信素子812~882の特定の一つから受信した時系列波形データから算出された筋肉層の厚みを特定対象部位の筋肉層の厚みとして用いてもよい。
【0017】
次に図1を用いて負荷特定装置100の説明を行う。負荷特定装置100は、プロセッサー110と、記憶装置120と、インターフェイス回路130と、インターフェイス回路130に接続された入力デバイス140及び表示部150と、を有している。負荷特定装置100は、例えば、パーソナルコンピューターである。負荷特定装置100は、記憶装置120に記憶された学習済みの機械学習モデル122を用いて、負荷装置300を用いて筋力トレーニングを行う使用者に対する適切な負荷を特定する装置である。
【0018】
プロセッサー110は、記憶装置120に記憶された各種プログラムを実行することで、学習実行部112と、スペクトル処理部113と、波形取得部116と、特定部118とを備える。学習実行部112は、学習セットSMの集合でもある基準データ群TDGを用いて機械学習モデル122の学習処理を実行する。
【0019】
波形取得部116は、センサー装置400が生成した筋膜に関する時系列波形データを取得して、記憶装置120に記憶させる。時系列波形データが、複数の被験者ごとの時系列波形データである場合には、基準データ群TDGの要素として記憶装置120に記憶される。また、時系列波形データが、使用者の時系列波形データである場合には、評価用データ群EDGとして記憶装置120に記憶される。使用者は、複数の被験者ごとの時系列波形データを元に最適な負荷を決定して筋力トレーニングを行う。
【0020】
基準データ群TDGの各時系列波形データは、被験者の単位時間当たりの筋肉の増加量が予め定めた条件を満たす基準負荷を負荷装置300に設定して筋力トレーニングを被験者が行った場合における、センサー装置400によって被験者ごとに生成された筋膜に関するデータである。基準データ群TDGの各時系列波形データは、被験者が筋力トレーニングを行っている期間に測定される。予め定めた条件は、単位時間当たり、例えば1時間あたりの測定対象部位における筋肉の増加量が増加基準量以上であるという条件であり、本実施形態では、予め定めた条件は、単位時間当たりの筋肉の増加量が最大であるという条件である。特定対象部位の筋肉の増加量は、例えば、被験者ごとに段階的に複数の負荷で筋力トレーニングを所定時間行った前後の、センサー装置400を用いて算出された筋肉量の差分である。基準データ群TDGの各時系列波形データには、時系列波形データを生成するための元となった負荷装置300の負荷の値を示す負荷データLDが関連付けられている。
【0021】
評価用データ群EDGの各時系列波形データは、負荷装置300に対して異なる候補負荷が設定された複数の筋力トレーニングを使用者が実行した場合における、異なる候補負荷ごとの時系列波形データである。評価用データ群EDGを構成する時系列波形データを対象時系列波形データとも呼ぶ。以上のように、使用者は、所定範囲の負荷範囲の中から段階的に候補負荷を変化させて筋力トレーニングを行う。そして、候補負荷ごとにセンサー装置400によって生成された対象時系列波形データが波形取得部116によって取得されて評価用データ群EDGとして記憶装置120に記憶される。また、評価用データ群EDGの各対象時系列波形データには、対象時系列波形データが生成された生成条件が関連付けられている。本実施形態において、生成条件は、負荷発生部320による負荷の大きさを特定するための負荷データLDを少なくとも含む。なお、生成条件は、超音波プローブ410による人の測定対象部位を識別するための部位識別子と、負荷装置300を特定するための負荷装置識別子とのいずれかを含んでいてもよい。
【0022】
なお、評価用データ群EDGの各時系列波形データ、および、基準データ群TDGの各時系列波形データの生成元となる人の特定対象部位は、同じ部位である。
【0023】
スペクトル処理部113は、学習済みの機械学習モデル122に時系列波形データを入力することで、機械学習モデル122の特定層の出力から特徴スペクトルSpを取得する。特徴スペクトルSpの詳細は後述する。スペクトル処理部113は、第1スペクトル取得部114と、第2スペクトル取得部115とを有する。
【0024】
第1スペクトル取得部114は、基準データ群TDGの時系列波形データ、すなわち複数の被験者ごとに応じた筋膜に関する複数の時系列波形データを、1つずつ学習済み機械学習モデル122に対して入力する。そして第1スペクトル取得部114は、学習済み機械学習モデル122の特定層の出力から特徴スペクトルSpとしての既知特徴スペクトルKSpを、基準データ群TDGが有する複数の時系列波形データごとに取得する。取得された複数の既知特徴スペクトルKSpは、既知特徴スペクトル群KSpGの要素として記憶装置120に記憶される。
【0025】
第2スペクトル取得部115は、評価用データ群EDGが有する複数の対象時系列波形データを1つずつ順次学習済み機械学習モデル122に入力する。そして第2スペクトル取得部115は、学習済み機械学習モデル122の特定層の出力から特徴スペクトルSpとしての対象特徴スペクトルESpを、評価用データ群EDGが有する複数の対象時系列波形データごとに取得する。取得された複数の対象特徴スペクトルESpは、対象特徴スペクトル群ESpGの要素として記憶装置120に記憶される。
【0026】
特定部118は、算出部117と、特定処理部119とを有する。算出部117は、既知特徴スペクトル群KSpGが有する複数の既知特徴スペクトルKSpのそれぞれと、対象特徴スペクトル群ESpGが有する複数の対象特徴スペクトルESpのそれぞれの類似度であるスペクトル類似度RSpを算出する。スペクトル類似度RSpの具体的な算出方法は後述する。
【0027】
特定処理部119は、算出部117によって算出した複数のスペクトル類似度RSpのうちで、予め定めた抽出条件を満たすスペクトル類似度RSpを特定する。また特定処理部119は、特定したスペクトル類似度RSpの算出元となった対象時系列波形データに対応する候補負荷を特定する。本実施形態では、予め定めた抽出条件は、複数のスペクトル類似度RSpのうちでスペクトル類似度RSpが最も高いという条件である。特定処理部119は、特定した候補負荷を表す特定負荷情報を負荷装置300に送信してもよい。負荷制御部310は、特定負荷情報が表す負荷の値となるように負荷発生部320の負荷を設定してもよい。なお、他の実施形態では、予め定めた抽出条件は、スペクトル類似度RSpが閾値以上であるという条件を含んでもよい。
【0028】
上記において、学習実行部112やスペクトル処理部113などのプロセッサー110の各機能部の少なくとも一部の機能をハードウェア回路で実現してもよい。本明細書のプロセッサー110は、このようなハードウェア回路も含む用語である。
【0029】
入力デバイス140は、被験者や使用者などの人が負荷特定装置100に情報を入力するためのデバイスである。入力デバイス140は、例えば、キーボードであったりマウスであったりタッチパネルであったりする。表示部150は、各種情報を表示する。表示部150は、例えば液晶モニターである。インターフェイス回路130は、表示部150および入力デバイス140と、プロセッサー110や記憶装置120との間で情報をやり取りするためのインターフェイスである。
【0030】
記憶装置120は、学習済みの機械学習モデル122と、基準データ群TDGと、評価用データ群EDGと、既知特徴スペクトル群KSpGと、対象特徴スペクトル群ESpGとを記憶する。
【0031】
学習済みの機械学習モデル122は、複数のベクトルニューロン層を有するベクトルニューラルネットワーク型の機械学習モデルである。学習済み機械学習モデル122は、例えば、基準データ群TDGを用いてパラメーター等が調整されることで学習されている。学習済み機械学習モデル122の構成例や動作については後述する。なお、他の実施形態では、学習済み機械学習モデル122は、汎用的に機械学習モデルの学習に用いられる学習データを用いて学習されていてもよい。
【0032】
基準データ群TDGは、被験者の筋力トレーニングによって生成された時系列波形データと、時系列波形データに関連付けられた筋力トレーニング時の基準負荷を示す負荷データLDとを有する。なお、基準データ群TDGは、負荷データLDを有していなくてもよい。
【0033】
評価用データ群EDGは、使用者の筋力トレーニングによって生成された対象時系列波形データと、対象時系列波形データに関連付けられた筋力トレーニング時の候補負荷を示す負荷データLDとを有する。
【0034】
なお、既知特徴スペクトル群KSpGと対象特徴スペクトル群ESpGとは、既に説明済みであるためここでは説明を省略する。
【0035】
図3は、機械学習モデル122の構成を示す説明図である。機械学習モデル122は、入力されるデータIMの側から順に、畳み込み層210と、プライマリーベクトルニューロン層220と、第1畳み込みベクトルニューロン層230と、第2畳み込みベクトルニューロン層240と、出力層である分類ベクトルニューロン層250とを備える。これらの5つの層210~250のうち、畳み込み層210が最も下位の層であり、分類ベクトルニューロン層250が最も上位の層である。以下の説明では、層210~250を、それぞれ「Conv層210」、「PrimeVN層220」、「ConvVN1層230」、「ConvVN2層240」、及び「classVN層250」とも呼ぶ。
【0036】
本実施形態において、入力されるデータIMは時系列波形データなので、1次元配列のデータである。例えば、入力されるデータIMは、時間ごとの受信素子812~882によって受信された反射波の強度を示すデータである。
【0037】
図3の例では2つの畳み込みベクトルニューロン層230,240を用いているが、畳み込みベクトルニューロン層の数は任意であり、畳み込みベクトルニューロン層を省略してもよい。但し、1つ以上の畳み込みベクトルニューロン層を用いることが好ましい。
【0038】
図3の各層210~250の構成は、以下のように記述できる。
<機械学習モデル122の構成の記述>
・Conv層210:Conv[32,6,2]
・PrimeVN層220:PrimeVN[26,1,1]
・ConvVN1層230:ConvVN1[20,5,2]
・ConvVN2層240:ConvVN2[16,4,1]
・classVN層250:classVN[Nm,3,1]
・ベクトル次元VD:VD=16
これらの各層210~250の記述において、括弧前の文字列はレイヤー名であり、括弧内の数字は、順に、チャンネル数、カーネルの表面サイズ、及び、ストライドである。例えば、Conv層210のレイヤー名は「Conv」であり、チャンネル数は32、カーネルの表面サイズは1×6、ストライドは2である。図3では、各層の下にこれらの記述が示されている。各層の中に描かれているハッチングを付した矩形は、隣接する上位層の出力ベクトルを算出する際に使用されるカーネルの表面サイズを表している。本実施形態では、データIMが1次元配列のデータなので、カーネルの表面サイズも1次元である。なお、各層210~250の記述で用いたパラメーターの値は例示であり、任意に変更可能である。
【0039】
Conv層210は、スカラーニューロンで構成された層である。他の4つの層220~250は、ベクトルニューロンで構成された層である。ベクトルニューロンは、ベクトルを入出力とするニューロンである。上記の記述では、個々のベクトルニューロンの出力ベクトルの次元は16で一定である。以下では、スカラーニューロン及びベクトルニューロンの上位概念として「ノード」という語句を使用する。
【0040】
図3では、Conv層210について、ノード配列の平面座標を規定する第1軸x及び第2軸yと、奥行きを表す第3軸zとが示されている。また、Conv層210のx,y,z方向のサイズが1,16,32であることが示されている。x方向のサイズとy方向のサイズを「解像度」と呼ぶ。本実施形態では、x方向の解像度は常に1である。z方向のサイズは、チャンネル数である。これらの3つの軸x,y,zは、他の層においても各ノードの位置を示す座標軸として使用する。但し、図3では、Conv層210以外の層では、これらの軸x,y,zの図示が省略されている。
【0041】
畳み込み後のy方向の解像度W1は、次式で与えられる。
W1=Ceil{(W0-Wk+1)/S} (1)
ここで、W0は畳み込み前の解像度、Wkはカーネルの表面サイズ、Sはストライド、Ceil{X}はXの小数点以下を切り上げる演算を行う関数である。
図3に示した各層の解像度は、データIMのy方向の解像度を36とした場合の例であり、実際の各層の解像度はデータIMのサイズに応じて適宜変更される。
【0042】
classVN層250は、Nm個のチャンネルを有している。図3の例ではNm=2である。一般に、Nmは2以上の整数であり、機械学習モデル122を用いて判別可能な既知のクラスの数である。判別可能なクラス数Nmは、機械学習モデル122毎に異なる値を設定可能である。classVN層250の2つのチャンネルからは、2つの既知のクラスに対する判定値class1~class2が出力される。通常は、これらの判定値class1~class2のうちで最も大きな値を有するクラスが、データIMのクラス判別結果として使用される。
【0043】
図3では、更に、各層210,220,230,240,250における部分領域Rnが描かれている。部分領域Rnの添え字「n」は、各層の符号である。例えば、部分領域R210は、Conv層210における部分領域を示す。「部分領域Rn」とは、各層において、第1軸xの位置と第2軸yとの位置で規定される平面位置(x,y)で特定され、第3軸zに沿った複数のチャンネルを含む領域である。部分領域Rnは、第1軸x、第2軸y、および第3軸zに対応する「Width」×「Height」×「Depth」の次元を有する。本実施形態では、1つの「部分領域Rn」に含まれるノードの数は「1×1×デプス数」、すなわち「1×1×チャンネル数」である。
【0044】
図3に示すように、学習済み機械学習モデル122の特定層であるConvVN2層240の出力から特徴スペクトルSpがスペクトル処理部113によって算出されて取得される。取得された特徴スペクトルSpは、入力データIMが基準データ群TDGの時系列波形データである場合には、既知特徴スペクトル群KSpGに記憶される。また取得された特徴スペクトルSpは、入力データIMが評価用データ群EDGの時系列波形データである場合には、対象特徴スペクトル群ESpGに記憶される。なお、学習済み機械学習モデル122の特定層は、ConvVN1層230、ConvVN2層240、classVN層250の少なくともいずれか一つの層であればよい。
【0045】
図4は、学習済み機械学習モデル122の他の構成を示す説明図である。この学習済み機械学習モデル122は、入力されるデータIMが画像データなどの2次元配列のデータである点で、1次元配列のデータIMを用いる図3の学習済み機械学習モデル122と異なっている。図4の各層210~250の構成は、以下のように記述できる。
<各層の構成の記述>
・Conv層210:Conv[32,5,2]
・PrimeVN層220:PrimeVN[16,1,1]
・ConvVN1層230:ConvVN1[12,3,2]
・ConvVN2層240:ConvVN2[6,3,1]
・classVN層250:classVN[Nm,4,1]
・ベクトル次元VD:VD=16
【0046】
図4に示した学習済み機械学習モデル122は、例えば、被判別画像のクラス判別を行う判別システムに使用できる。但し、以下の説明では、図3に示した学習済み機械学習モデル122を使用する。
【0047】
図5は、学習済み機械学習モデル122の生成工程を示す図である。図5を用いて、未学習の機械学習モデルを学習して学習済み機械学習モデル122を生成する工程を説明する。まず、ステップS10において、複数の学習セットSMが準備される。
【0048】
図6は、複数の学習セットSMを説明するための図である。本実施形態における学習セットSMは、学習データTDと、学習データTDに関連付けられた事前ラベルLBと、学習データTDに関連付けられた負荷データLDと、を有する。複数の学習セットSM1~SMXを区別することなく用いる場合には、学習セットSMと呼ぶ。また、複数の学習セットSM1~SMXをまとめて学習セット群SMGとも呼ぶ。本実施形態では、各学習データTDには、基準データ群TDGの各時系列波形データが用いられる。上述のごとく、時系列波形データは、筋力トレーニングを行った所定時間において、時間tごとに反射強度WIを並べたデータである。また、事前ラベルLBは、筋力トレーニングとして「最適」を示すラベル「0」が各学習データTDに関連付けられている。負荷データLDは、上述の基準データ群TDGで説明したように、学習データTDを生成するための元となった負荷装置300の負荷の値を示すデータである。学習セット群SMGは、記憶装置120に記憶されてもよく、この場合、学習セット群SMGの各時系列波形データおよび負荷データLDの集合が基準データ群TDGを構成する。以上のように、ステップS10は、被験者の単位時間当たりの筋肉の増加量が予め定めた条件を満たす基準負荷が設定された筋力トレーニングが、被験者によって行われた場合における、被験者の筋膜に関する時系列波形データを複数の被験者ごとに準備する工程である。
【0049】
図5に示すように、ステップS10の次にステップS12において、学習実行部112は、学習セット群SMGを構成する複数の学習セットSM1~SMXを学習前の機械学習モデルに入力して学習を実行する。具体的には、学習実行部112は、データIMとしての学習データTDと、学習データTDに関連付けられた事前ラベルLBとの対応を再現するように機械学習モデルの学習を実行する。機械学習モデルの学習が終了すると、学習済みの機械学習モデル122が記憶装置120に記憶される。
【0050】
次に、ステップS14において、第1スペクトル取得部114は、学習済みの機械学習モデル122に対して、基準データ群TDGを構成する時系列波形データを入力することで、特定層であるConvVN2層240の出力から既知特徴スペクトルKSpを、複数の時系列波形データごとに生成することで取得する。
【0051】
図7は、学習済みの機械学習モデル122にデータIMとしての時系列波形データを入力することによって得られる特徴スペクトルSpを示す説明図である。図3に示したように、本実施形態では、特徴スペクトルSpがConvVN2層240の出力から生成されることで取得される。図7の横軸は、ConvVN2層240の1つの部分領域R240に含まれる複数のノードの出力ベクトルに関するベクトル要素の位置である。このベクトル要素の位置は、各ノードにおける出力ベクトルの要素番号NDと、チャンネル番号NCとの組み合わせで表される。本実施形態では、ベクトル次元が16、すなわち各ノードが出力する出力ベクトルの要素の数が16なので、出力ベクトルの要素番号NDは0から15までの16個である。また、ConvVN2層240のチャンネル数は16なので、チャンネル番号NCは0から15までの16個である。換言すれば、この特徴スペクトルSpは、1つの部分領域R240に含まれる各ベクトルニューロンの出力ベクトルの複数の要素値を、第3軸zに沿った複数のチャンネルにわたって配列したものである。
【0052】
図7の縦軸は、各スペクトル位置での特徴値Cを示す。この例では、特徴値Cは、出力ベクトルの各要素の値VNDである。特徴値Cについては、平均値0へセンタリングするなどの統計処理を行ってもよい。なお、特徴値Cとしては、出力ベクトルの各要素の値VNDと、正規化係数とを乗算した値を使用してもよく、或いは、正規化係数をそのまま使用してもよい。後者の場合には、特徴スペクトルSpに含まれる特徴値Cの数はチャンネル数に等しく、16個である。なお、正規化係数は、そのノードの出力ベクトルのベクトル長さに相当する値である。
【0053】
1つのデータIMに対してConvVN2層250の出力から得られる特徴スペクトルSpの数は、ConvVN2層240の平面位置(x,y)の数、すなわち、部分領域R240の数に等しいので、3個である。
【0054】
図8は、既知特徴スペクトル群KSpGの構成を示す説明図である。この例では、ConvVN2層240の出力から得られた既知特徴スペクトルKSpを構成要素とする既知特徴スペクトル群KSpGが示されている。
【0055】
既知特徴スペクトル群KSpGの個々のレコードは、層内の部分領域Rnの順序を示すパラメーターkと、負荷データLDと、入力されるデータIMを識別するためのデータ番号を示すパラメーターqと、既知特徴スペクトルKSpとを含んでいる。既知特徴スペクトルKSpは、図7の特徴スペクトルSpと同じものである。
【0056】
部分領域Rnのパラメーターkは、特定層に含まれる複数の部分領域Rnのいずれであるか、すなわち、平面位置(x,y)のいずれであるかを示す値を取る。ConvVN2層240については部分領域R240の数が3個なので、k=1~3である。負荷データLDは、既知特徴スペクトルKSpの生成元の時系列波形データを取得した時の、負荷制御部310によって設定された負荷の大きさを示す。データ番号のパラメーターqは、既知特徴スペクトルKSpを取得するための入力データIMとしての時系列波形データを識別するための番号であり、基準データ群TDGの時系列波形データ数が最大の番号max1をとる。本実施形態では、パラメーターqは、1~max1までの値を取る。なお、既知特徴スペクトル群KSpGは、さらに、事前ラベルLBであるクラスを識別するためのクラスパラメーターを、既知特徴スペクトルKSpごとに有していてもよい。
【0057】
図9は、負荷特定システム5が実行する負荷特定処理のフローチャートである。負荷特定処理では、使用者が負荷装置300を用いて筋力トレーニングを行う場合における、筋肉の増加量が最大となる最適な負荷を特定する。負荷特定処理を実行する前において、対象特徴スペクトルESpを取得するための筋力トレーニング時における候補負荷条件が負荷特定装置100に設定される。本実施形態では、候補負荷条件は、候補負荷の下限値および上限値と、下限値から上限値へ一定間隔ごとに段階的に負荷をあげていく場合における上昇値とが定められている。また他の実施形態では、候補負荷条件は、候補負荷の下限値および上限値と、上限値から下限値へ段階的に負荷を一定間隔ごとにさげる場合における減少値とが定められている。また他の実施形態では、候補負荷条件は、複数の候補負荷の集合であってもよい。
【0058】
ステップS20において、負荷制御部310は、一つの候補負荷を設定する。具体的には、図1に示す入力部330を介して外部より候補負荷の設定指示を受け付けることで、負荷制御部310は、候補負荷を負荷として設定する。
【0059】
次に、図9に示すステップS22において、波形取得部116は、ステップS20において設定された候補負荷により使用者が所定時間だけ筋力トレーニングを負荷装置300によって実行した場合における、測定対象部位の筋膜に関する対象時系列波形データをセンサー装置400から取得する。使用者の筋力トレーニング時間である所定時間は、被験者の時系列波形データを取得するために行った被験者の筋力トレーニングの時間である所定時間と同じ時間である。また、測定対象部位についても、被験者と使用者とでは同じである。ステップS22において取得された対象時系列波形データは、評価用データ群EDGの要素として記憶装置120に記憶される。
【0060】
次にステップS24において、第2スペクトル取得部115は、対象時系列波形データを学習済みの機械学習モデル122に入力して、特定層であるConvVN2層240の出力から対象特徴スペクトルESpを取得する。取得した対象特徴スペクトルESpは、負荷データLDと関連付けられて対象特徴スペクトル群ESpGに記憶される。対象特徴スペクトル群ESpGのデータ構成が、既知特徴スペクトルKSpが対象特徴スペクトルESpに置き換わった点を除き、図8に示す既知特徴スペクトル群KSpGのデータ構成と同じである。
【0061】
次にステップS26において、算出部117は、既知特徴スペクトル群KSpGを構成する複数の既知特徴スペクトルKSpのそれぞれと、ステップS24で取得した対象特徴スペクトルESpとのスペクトル類似度RSpを算出する。算出したスペクトル類似度RSpは、対象特徴スペクトルESpに関連付けられた負荷データLDと共に、記憶装置120に記憶される。
【0062】
次にステップS28において、特定部118は、候補負荷条件が表す全ての候補負荷に応じた全ての対象特徴スペクトルESpに対して、スペクトル類似度RSpを算出したか否かを判定する。
【0063】
ステップS28において、全ての候補負荷に応じた全ての対象特徴スペクトルESpに対してスペクトル類似度RSpが算出されていない場合には、負荷制御部310は、ステップS20において残りの候補負荷のうちの一つを設定する。本実施形態では、全ての対象特徴スペクトルESpに対してスペクトル類似度RSpが算出されるまで、負荷制御部310は、候補負荷条件に基づいて一定間隔ごとに負荷の大きさを段階的にあげる。つまり、ステップS20に設定される異なる候補負荷は、一定間隔ごとに負荷の大きさが異なる。ステップS20~ステップS26までの処理は、全ての対象特徴スペクトルESpに対してスペクトル類似度RSpが算出されるまで繰り返し実行される。
【0064】
ステップS28において、全ての対象特徴スペクトルESpに対してスペクトル類似度RSpが算出された場合には、特定処理部119によってステップS30が実行される。ステップS30において、特定処理部119は、繰り返しステップS20~ステップS26が実行されることで算出された複数のスペクトル類似度RSpのうちで、予め定めた抽出条件を満たすスペクトル類似度RSpを特定し、特定したスペクトル類似度RSpの算出元となった対象時系列波形データに対応する候補負荷を特定する。具体的には、特定処理部119は、図1に示す対象特徴スペクトル群ESpGを参照して、算出元の対象時系列波形データに関連付けられた負荷データLDを特定することで、負荷データLDが示す候補負荷を特定する。本実施形態では、予め定めた抽出条件は、複数のスペクトル類似度RSpのうちでスペクトル類似度RSpが最も高いという条件である。よって、特定処理部119は、最も高いスペクトル類似度RSpに対応した1つの候補負荷を特定する。特定した候補負荷を示す負荷データLDは、負荷装置300に有線や無線によって送信されてもよいし、表示部150に表示されてもよい。
【0065】
次にステップS32において、負荷制御部310は、特定された候補負荷を負荷発生部320の負荷として設定する。例えば、負荷制御部310は、ステップS30によって特定された候補負荷を示す負荷データLDを有線や無線に負荷特定装置100から受信した場合に、負荷データLDが示す負荷の値に負荷発生部320の負荷を設定することでステップS32を実行してもよい。また、例えば、表示部150に表示された負荷データLDを、使用者やトレーナーが参照して負荷装置300に負荷データLDが示す負荷の値を入力することで、負荷制御部310が入力された負荷の値に応じた負荷を負荷発生部320に設定することでステップS32が実行されてもよい。なお、他の実施形態では、負荷特定処理は、ステップS32を省略してもよい。
【0066】
また、例えば、ステップS28における予め定めた抽出条件が、スペクトル類似度RSpが閾値以上であるという条件である場合等において、ステップS30において特定された候補負荷が複数ある場合には、特定処理部119は特定した複数の候補負荷を表示部150に表示してもよい。この場合、例えば、特定処理部119は、複数の候補負荷の値を示す候補負荷情報と、候補負荷情報ごとに対応付けられたスペクトル類似度RSpを示す類似度情報とを表示部150に表示してもよい。こうすることで、使用者は、自身の筋力トレーニングに適切な負荷をスペクトル類似度RSpを参照することで容易に選択できる。
【0067】
以上のように、負荷決定処理は、全ての対象特徴スペクトルESpに対してスペクトル類似度RSpが算出されるまで、ステップS20~ステップS26の処理ルーチンが繰り返し実行されることで、例えば以下の工程1、2が実行される。
工程1:ステップS22が繰り返し実行される工程であり、異なる候補負荷が設定された複数の筋力トレーニングを使用者が実行した場合における、異なる候補負荷ごとの対象時系列波形データを取得する工程。
工程2:ステップS24が繰り返し実行される工程であり、複数の対象時系列波形データを学習済みの機械学習モデル122に入力して、特定層であるConvVN2層240の出力から複数の対象特徴スペクトルESpを取得する工程。
【0068】
次に、図10図12を用いてスペクトル類似度RSpの算出方法について説明する。図10は、スペクトル類似度RSpの第1の算出方法M1を示す説明図である。第1の算出方法M1では、まず、特定層であるConvVN2層240の出力から、部分領域Rn毎に局所スペクトル類似度S(j,k)が算出される。
【0069】
第1の算出方法M1において、局所スペクトル類似度S(j,k)は次式を用いて算出される。
S(j,k)=G{ESp(j,k), KSp(j,k,q)} (c1)
ここで、
jは、特定層を示すパラメーター、
kは、部分領域Rnを示すパラメーター、
qは、データ番号を示すパラメーター、
G{a,b}は、aとbのスペクトル類似度を求める関数、
ESp(j,k)は、特定層jの特定の部分領域Rnの出力から得られる対象特徴スペクトル、
KSp(j,k,q)は、既知特徴スペクトル群KSpGのうち、特定層jの特定の部分領域Rnの出力から得られるデータ番号qの既知特徴スペクトルである。
なお、局所スペクトル類似度を求める関数G{a,b}としては、例えば、コサイン類似度を求める式や、距離に応じた類似度を求める式を使用できる。
【0070】
図10の右側に示す3種類のスペクトル類似度RSpは、複数の部分領域Rnについての局所スペクトル類似度S(j,k)を統計処理することで代表類似度として算出される。統計処理としては、複数の局所スペクトル類似度S(j,k)の最大値、平均値、又は、最小値を取ることによって得られたものである。なお、図示は省略しているが、最大値、平均値、または、最小値のいずれの演算を使用するかは、実験的または経験的に使用者によって予め設定される。
【0071】
以上のように、スペクトル類似度RSpの第1の算出方法M1では、以下の方法でスペクトル類似度RSpが算出される。
(1)一つの対象時系列波形データにおいて特定層jの特定の部分領域Rnの出力から得られる対象特徴スペクトルESpと、その特定層jの特定の部分領域Rnの出力から得られる既知特徴スペクトルKSpとのスペクトル類似度である局所スペクトル類似度S(j,k)を求め、
(2)複数の部分領域Rnについての局所スペクトル類似度S(j,k)の最大値、平均値、または、最小値を取ることによってスペクトル類似度RSpを求める。
【0072】
図11は、スペクトル類似度RSpの第2の算出方法M2を示す図である。算出部117は、上述した(c1)式の代わりに次式を用いて局所スペクトル類似度S(i,j,k)を算出する。
S(j,k)=max[G{ESp(j,k), KSp(j,k=all,q)}] (c2)
ここで、
KSp(j,k=all,q)は、既知特徴スペクトル群KSpGのうち、特定層jの部分領域Rnごとの出力から得られるデータ番号qの既知特徴スペクトルKSpである。Max[G(a,b)]は、算出したスペクトル類似度のうちの最大値を示す。
【0073】
上述した第1の算出方法M1では、対象特徴スペクトルESpと既知特徴スペクトルKSpとの比較対象は、同じ部分領域Rnであったが、第2の算出方法M2では、一つの部分領域Rnの対象特徴スペクトルESpと、全ての部分領域Rnにおける既知特徴スペクトルKSpとが算出対象である。第2の算出方法M2における他の方法は、第1の算出方法M1と同じである。
【0074】
以上のように、スペクトル類似度の第2の算出方法M2では、以下の方法でスペクトル類似度RSpが算出される。
(1)一つの対象時系列波形データにおいて特定層jの特定の部分領域Rnの出力から得られる対象特徴スペクトルESpと、その特定層jの全ての部分領域Rnの既知特徴スペクトルKSpとのスペクトル類似度を複数求めて、複数のスペクトル類似度のうちの最大値を部分領域Rnの局所スペクトル類似度S(j,k)として求め、
(2)複数の部分領域Rnについての局所スペクトル類似度S(j,k)の最大値、平均値、または、最小値を取ることによってスペクトル類似度RSpを求める。
【0075】
図12は、スペクトル類似度の第3の算出方法M3を示す説明図である。第3の算出方法M3では、局所スペクトル類似度S(j,k)を求めることなく、特定層であるConvVN2層240の出力からスペクトル類似度RSpが算出される。
【0076】
第3の算出方法M3で得られるスペクトル類似度RSp(j)は、次式を用いて算出される。
RSp(j)=max[G{ESp(j,k=all), KSp(j,k=all,q)}] (c3)
ここで、
Sp(j,k=all)は、特定層jのすべての部分領域Rnの出力から得られる特徴スペクトルである。
【0077】
以上のように、スペクトル類似度RSpの第3の算出方法M3では、以下の方法でスペクトル類似度RSpが算出される。
(1)一つの対象時系列波形データにおいて特定層jの出力から得られる全ての部分領域に応じた対象特徴スペクトルESpと、その特定層jに関連付けられたすべてのデータ番号の全ての部分領域Rnに応じた既知特徴スペクトルKSpとの類似度である個別スペクトル類似度をそれぞれ求め、
(2)複数の個別スペクトル類似度のうちで最大値をスペクトル類似度RSpとする。
【0078】
上記実施形態によれば、図9に示すように、複数の既知特徴スペクトルKSpのそれぞれと、異なる候補負荷ごとの複数の対象特徴スペクトルESpのそれぞれのスペクトル類似度RSpのうちで、抽出条件を満たすスペクトル類似度RSpを特定している。また、負荷特定装置100は、特定したスペクトル類似度RSpの算出元となった対象時系列波形データに対応する候補負荷を特定する。これにより、様々な使用者のそれぞれに対して適切な負荷を特定できるので、特定した適切な負荷を筋力トレーニングの負荷として設定できる。
【0079】
また、上記実施形態によれば、対象特徴スペクトルESpとの比較対象となる既知特徴スペクトルKSpは、被験者の単位時間当たりの筋肉の増加量が予め定めた条件を満たす基準負荷が負荷装置300に設定された筋力トレーニングが被験者によって行われた場合における時系列波形データをもとに取得されている。これにより、負荷特定装置100は、スペクトル類似度RSpを元に、使用者の単位時間当たりの筋肉の増加量が基準増加量以上となる候補負荷を精度良く特定できる。これにより、負荷装置300は、候補負荷を使用者の筋力トレーニングの負荷として設定することで、単位時間当たりの筋肉の増加量が基準増加量以上となる筋力トレーニングをより確実に実行できる。特に本実施形態では、予め定めた条件は、単位時間当たりの筋肉の増加量が最大であるという条件であるので、使用者の単位時間当たりの筋肉の増加量が最大となる候補負荷を精度良く特定できる。これにより、候補負荷を使用者の筋力トレーニングの負荷として設定することで、単位時間当たりの筋肉の増加量が最大となる筋力トレーニングをより確実に実行できる。また、上記実施形態によれば、図9のステップS32によって、負荷制御部310は、特定された候補負荷を負荷発生部320の負荷として設定することで、使用者に対して適切な筋力トレーニングの負荷を容易に設定できる。また上記実施形態によれば、繰り返し実行される図9のステップS20において設定される異なる候補負荷は、一定間隔ごとに負荷の大きさが異なる。これにより、候補負荷を段階的に変化させることができるので、使用者に対して適切な負荷をより精度良く特定しやすくできる。
【0080】
B.他の実施形態:
上記実施形態において、時系列波形データの測定対象部位は、1か所であってもよく、複数箇所であってもよい。複数箇所の測定対象部位を対象に時系列波形データが取得される場合には、時系列波形データや、時系列波形データから取得される特徴スペクトルSpに対して、測定対象部位を示す部位情報が関連付けられて、記憶装置120に記憶されてもよい。この場合、スペクトル類似度RSpは、部位情報が同じ既知特徴スペクトルKSpと対象特徴スペクトルESpとを比較して算出される。このようにすることで、使用者の腹筋や上腕二頭筋などの筋肉の部位ごとに、適切な筋力トレーニングの負荷を容易に特定できる。
【0081】
C.他の形態:
本開示は、上述した実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実現することができる。例えば、本開示は、以下の形態(aspect)によっても実現可能である。以下に記載した各形態中の技術的特徴に対応する上記実施形態中の技術的特徴は、本開示の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、本開示の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0082】
(1)本開示の第1の形態によれば、筋力トレーニング機器の負荷特定方法が提供される。この負荷特定方法は、(a)被験者の単位時間当たりの筋肉の増加量が予め定めた条件を満たす基準負荷が設定された筋力トレーニングが前記被験者によって行われた場合における、前記被験者の筋膜に関する時系列波形データを複数の前記被験者ごとに準備する工程と、(b)複数のベクトルニューロン層を有するベクトルニューラルネットワーク型の学習済み機械学習モデルに対して複数の前記時系列波形データを入力して、前記学習済み機械学習モデルの特定層の出力から特徴スペクトルとしての既知特徴スペクトルを前記複数の時系列波形データごとに取得する工程と、(c)異なる候補負荷が設定された複数の筋力トレーニングを使用者が実行した場合における、前記異なる候補負荷ごとの前記時系列波形データである対象時系列波形データを取得する工程と、(d)複数の前記対象時系列波形データを前記学習済み機械学習モデルに入力して、前記特定層の出力から前記特徴スペクトルとしての対象特徴スペクトルを前記複数の対象時系列波形データを取得する工程と、(e)複数の前記既知特徴スペクトルのそれぞれと、複数の前記対象特徴スペクトルのそれぞれとの類似度であるスペクトル類似度を算出し、算出した複数の前記スペクトル類似度のうちで、予め定めた抽出条件を満たす前記スペクトル類似度を特定し、特定した前記スペクトル類似度の算出元となった前記対象時系列波形データに対応する前記候補負荷を特定する工程と、を備える。この形態によれば、複数の既知特徴スペクトルのそれぞれと、異なる候補負荷ごとの複数の対象特徴スペクトルのそれぞれのスペクトル類似度のうちで、抽出条件を満たすスペクトル類似度を特定し、特定したスペクトル類似度の算出元となった対象時系列波形データに対応する候補負荷を特定している。これにより、様々な使用者のそれぞれに対して適切な負荷を特定できるので、特定した適切な負荷を筋力トレーニングの負荷として設定できる。
【0083】
(2)上記形態において、前記工程(a)において、前記予め定めた条件は、前記単位時間当たりの筋肉の増加量が増加基準量以上であるという条件であり、前記工程(e)において、前記抽出条件は、前記スペクトル類似度が閾値以上であるという条件であってもよい。この形態によれば、使用者の単位時間当たりの筋肉の増加量が基準増加量以上となる候補負荷を精度良く特定できる。これにより、候補負荷を使用者の筋力トレーニングの負荷として設定することで、単位時間当たりの筋肉の増加量が基準増加量以上となる筋力トレーニングをより確実に実行できる。
【0084】
(3)上記形態において、前記工程(a)において、前記予め定めた条件は、前記単位時間当たりの筋肉の増加量が最大であるという条件であり、前記工程(e)において、前記抽出条件は、前記複数のスペクトル類似度のうちで、前記スペクトル類似度が最も高いという条件であってもよい。この形態によれば、使用者の単位時間当たりの筋肉の増加量が最大となる候補負荷を精度良く特定できる。これにより、候補負荷を使用者の筋力トレーニングの負荷として設定することで、単位時間当たりの筋肉の増加量が最大となる筋力トレーニングをより確実に実行できる。
【0085】
(4)上記形態において、前記工程(e)は、特定した前記候補負荷を、前記使用者が前記筋力トレーニングを行うときの負荷として設定する工程を含んでもよい。この形態によれば、使用者に対して適切な筋力トレーニングの負荷を容易に設定できる。
【0086】
(5)上記形態において、前記工程(c)において、前記異なる候補負荷は、一定間隔ごとに前記負荷の大きさが異なっていてもよい。この形態によれば、異なる候補負荷が一定間隔ごとに負荷の大きさが異なることで、使用者に対する適切な負荷をより精度良く特定しやすくできる。
【0087】
(6)本開示の第2の形態によれば、筋力トレーニング機器の負荷特定装置が提供される。この負荷特定装置は、複数のベクトルニューロン層を有するベクトルニューラルネットワーク型の学習済み機械学習モデルを記憶する記憶装置と、被験者の単位時間当たりの筋肉の増加量が予め定めた条件を満たす基準負荷が設定された筋力トレーニングが前記被験者によって行われた場合における、複数の前記被験者ごとに応じた筋膜に関する時系列波形データを、前記学習済み機械学習モデルに対して入力して、前記学習済み機械学習モデルの特定層の出力から特徴スペクトルとしての既知特徴スペクトルを前記複数の時系列波形データごとに取得する第1スペクトル取得部と、異なる候補負荷が設定された複数の筋力トレーニングを使用者が実行した場合における、前記異なる候補負荷ごとの前記時系列波形データである対象時系列波形データを取得する波形取得部と、複数の前記対象時系列波形データを前記学習済み機械学習モデルに入力して、前記特定層の出力から前記特徴スペクトルとしての対象特徴スペクトルを前記複数の対象時系列波形データを取得する第2スペクトル取得部と、複数の前記既知特徴スペクトルのそれぞれと、複数の前記対象特徴スペクトルのそれぞれとの類似度であるスペクトル類似度を算出し、算出した複数の前記スペクトル類似度のうちで、予め定めた抽出条件を満たす前記スペクトル類似度を特定し、特定した前記スペクトル類似度の算出元となった前記対象時系列波形データに対応する前記候補負荷を特定する特定部と、を備える。この形態によれば、複数の既知特徴スペクトルのそれぞれと、異なる候補負荷ごとの複数の対象特徴スペクトルのそれぞれのスペクトル類似度のうちで、抽出条件を満たすスペクトル類似度を特定し、特定したスペクトル類似度の算出元となった対象時系列波形データに対応する候補負荷を特定している。これにより、様々な使用者のそれぞれに対して適切な負荷を特定できるので、特定した適切な負荷を筋力トレーニングの負荷として設定できる。
【0088】
(7)本開示の第3の形態によれば、筋力トレーニング機器の負荷特定をコンピューターに実行させるためのコンピュータープログラムが提供される。このコンピュータープログラムは、(a)複数のベクトルニューロン層を有するベクトルニューラルネットワーク型の学習済み機械学習モデルを記憶する機能と、(b)被験者の単位時間当たりの筋肉の増加量が予め定めた条件を満たす基準負荷が設定された筋力トレーニングが前記被験者によって行われた場合における、複数の前記被験者ごとに応じた筋膜に関する時系列波形データを、前記学習済み機械学習モデルに対して入力して、前記学習済み機械学習モデルの特定層の出力から特徴スペクトルとしての既知特徴スペクトルを前記複数の時系列波形データごとに取得する機能と、(c)異なる候補負荷が設定された複数の筋力トレーニングを使用者が実行した場合における、前記異なる候補負荷ごとの前記時系列波形データである対象時系列波形データを取得する機能と、(d)複数の前記対象時系列波形データを前記学習済み機械学習モデルに入力して、前記特定層の出力から前記特徴スペクトルとしての対象特徴スペクトルを前記複数の対象時系列波形データを取得する機能と、(e)複数の前記既知特徴スペクトルのそれぞれと、複数の前記対象特徴スペクトルのそれぞれとの類似度であるスペクトル類似度を算出し、算出した複数の前記スペクトル類似度のうちで、予め定めた抽出条件を満たす前記スペクトル類似度を特定し、特定した前記スペクトル類似度の算出元となった前記対象時系列波形データに対応する前記候補負荷を特定する機能と、を備える。この形態によれば、複数の既知特徴スペクトルのそれぞれと、異なる候補負荷ごとの複数の対象特徴スペクトルのそれぞれのスペクトル類似度のうちで、抽出条件を満たすスペクトル類似度を特定し、特定したスペクトル類似度の算出元となった対象時系列波形データに対応する候補負荷を特定している。これにより、様々な使用者のそれぞれに対して適切な負荷を特定できるので、特定した適切な負荷を筋力トレーニングの負荷として設定できる。
【0089】
本開示は、上記以外の種々の形態で実現することも可能である。例えば、コンピュータープログラムを記録した一時的でない記録媒体(non-transitory storage medium)等の形態で実現することができる。
【符号の説明】
【0090】
SM、SM1~SMX…学習セット、SMG…学習セット群、TD…学習データ、TDG…基準データ群、WI…反射強度、5…負荷特定システム、17…信号処理回路、19…マルチプレクサ、81~88…超音波素子、100…負荷特定装置、110…プロセッサー、112…学習実行部、113…スペクトル処理部、114…第1スペクトル取得部、115…第2スペクトル取得部、116…波形取得部、117…算出部、118…特定部、119…特定処理部、120…記憶装置、122…学習済み機械学習モデル、130…インターフェイス回路、140…入力デバイス、150…表示部、210…畳み込み層、220…プライマリーベクトルニューロン層,230…第1畳み込みベクトルニューロン層、240…第2畳み込みベクトルニューロン層,250…分類ベクトルニューロン層,300…負荷装置、310…負荷制御部、320…負荷発生部、330…入力部、400…センサー装置、410…超音波プローブ、430…配線、460…制御部、465…駆動パルス発生回路、466…送信回路、467…信号処理回路、468…受信回路、469…マルチプレクサ、470…マイコン、471…通信部、811,881…送信素子、812,882…受信素子、ESp…対象特徴スペクトル、ESpG…対象特徴スペクトル群、IM…データ、KSp…既知特徴スペクトル、KSpG…既知特徴スペクトル群、LD…負荷データ、NC…チャンネル番号、ND…要素番号、Nm…クラス数、Rn…部分領域、RSp…スペクトル類似度
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