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特開2024-114223診断装置、診断プログラム、診断方法及び診断システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114223
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】診断装置、診断プログラム、診断方法及び診断システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
G05B23/02 T
G05B23/02 302R
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019852
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】臼井 志帆
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA01
3C223BA03
3C223BB06
3C223CC02
3C223DD03
3C223FF02
3C223FF12
3C223FF13
3C223FF14
3C223FF22
3C223FF26
3C223FF35
3C223FF42
3C223FF45
3C223FF52
3C223GG01
3C223HH02
3C223HH03
3C223HH29
(57)【要約】
【課題】フィールド機器の異常予兆状態の診断を可能にする。
【解決手段】診断装置は、フィールド機器のパラメータと、診断モデルとを用いて、フィールド機器を診断する診断部、を備える。診断モデルは、フィールド機器のパラメータに対応するデータが入力されると、フィールド機器の状態を示すデータを出力するように機械学習された学習済みモデルである。フィールド機器の状態は、正常状態、異常予兆状態及び異常状態を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィールド機器のパラメータと、診断モデルとを用いて、前記フィールド機器を診断する診断部、
を備え、
前記診断モデルは、フィールド機器のパラメータに対応するデータが入力されると、フィールド機器の状態を示すデータを出力するように機械学習された学習済みモデルであり、
前記フィールド機器の状態は、正常状態、異常予兆状態及び異常状態を含む、
診断装置。
【請求項2】
前記フィールド機器のパラメータは、センサ値、測定値、設定情報、自己診断情報又はアラーム履歴情報の少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の診断装置。
【請求項3】
前記診断部は、前記フィールド機器の状態が前記異常予兆状態であることをユーザに知らせるための診断情報を生成する、
請求項1又は2に記載の診断装置。
【請求項4】
前記診断モデルは、前記フィールド機器の状態が前記異常予兆状態である場合には、前記フィールド機器が異常状態になると予測される時期又は異常状態になると予測される箇所の少なくとも一方を示すデータも出力する、
請求項1又は2に記載の診断装置。
【請求項5】
前記フィールド機器は、パイプラインに接続された導圧管の圧力を計測する圧力伝送器を含み、
前記フィールド機器のパラメータは、前記導圧管の圧力値を示す測定値を含み、
前記フィールド機器の異常予兆状態は、前記導圧管の詰まり予兆状態を含む、
請求項1又は2に記載の診断装置。
【請求項6】
前記導圧管は、高圧側導圧管及び低圧側導圧管を含み、
前記フィールド機器のパラメータは、前記高圧側導圧管の圧力値を示す測定値、前記低圧側導圧管の圧力値を示す測定値、及び、それらの差圧値を示す測定値を含む、
請求項5に記載の診断装置。
【請求項7】
コンピュータに、
フィールド機器のパラメータと、診断モデルとを用いて、前記フィールド機器を診断する処理、
を実行させる診断プログラムであって、
前記診断モデルは、フィールド機器のパラメータに対応するデータが入力されると、フィールド機器の状態を示すデータを出力するように機械学習された学習済みモデルであり、
前記フィールド機器の状態は、正常状態、異常予兆状態及び異常状態を含む、
診断プログラム。
【請求項8】
フィールド機器のパラメータと、診断モデルとを用いて、前記フィールド機器を診断すること、
を含む診断方法であって、
前記診断モデルは、フィールド機器のパラメータに対応するデータが入力されると、フィールド機器の状態を示すデータを出力するように機械学習された学習済みモデルであり、
前記フィールド機器の状態は、正常状態、異常予兆状態及び異常状態を含む、
診断方法。
【請求項9】
フィールド機器と、
前記フィールド機器のパラメータを収集するユーザシステムと、
前記ユーザシステムによって収集されたフィールド機器のパラメータと、診断モデルとを用いて、前記フィールド機器を診断する診断部と、
を備える診断システムであって、
前記診断モデルは、フィールド機器のパラメータに対応するデータが入力されると、フィールド機器の状態を示すデータを出力するように機械学習された学習済みモデルであり、
前記フィールド機器の状態は、正常状態、異常予兆状態及び異常状態を含む、
診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断装置、診断プログラム、診断方法及び診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に示されるように、フィールド機器の診断技術についてさまざまな検討が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-308101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまでの診断技術は、フィールド機器の故障の有無、すなわちフィールド機器の状態が正常状態及び異常状態のいずれであるのかを示すものに限られていた。この場合、フィールド機器が異常状態になったことが分かった後ではじめて故障対応することになるので、その分、コスト負担、作業負担等が増加する。
【0005】
本開示の一側面は、フィールド機器の異常予兆状態の診断を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一側面に係る診断装置は、フィールド機器のパラメータと、診断モデルとを用いて、フィールド機器を診断する診断部、を備え、診断モデルは、フィールド機器のパラメータに対応するデータが入力されると、フィールド機器の状態を示すデータを出力するように機械学習された学習済みモデルであり、フィールド機器の状態は、正常状態、異常予兆状態及び異常状態を含む。
【0007】
一側面に係る診断プログラムは、コンピュータに、フィールド機器のパラメータと、診断モデルとを用いて、フィールド機器を診断する処理、を実行させる診断プログラムであって、診断モデルは、フィールド機器のパラメータに対応するデータが入力されると、フィールド機器の状態を示すデータを出力するように機械学習された学習済みモデルであり、フィールド機器の状態は、正常状態、異常予兆状態及び異常状態を含む。
【0008】
一側面に係る診断方法は、フィールド機器のパラメータと、診断モデルとを用いて、フィールド機器を診断すること、を含む診断方法であって、診断モデルは、フィールド機器のパラメータに対応するデータが入力されると、フィールド機器の状態を示すデータを出力するように機械学習された学習済みモデルであり、フィールド機器の状態は、正常状態、異常予兆状態及び異常状態を含む。
【0009】
一側面に係る診断システムは、フィールド機器と、フィールド機器のパラメータを収集するユーザシステムと、フィールド機器のパラメータと、診断モデルとを用いて、フィールド機器を診断する診断部と、を備える診断システムであって、診断モデルは、フィールド機器のパラメータに対応するデータが入力されると、フィールド機器の状態を示すデータを出力するように機械学習された学習済みモデルであり、フィールド機器の状態は、正常状態、異常予兆状態及び異常状態を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、フィールド機器の異常予兆状態の診断が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係る診断システムの概略構成の例を示す図である。
図2】フィールド機器の機能ブロックの例を示す図である。
図3】フィールド機器のパラメータの例を示す図である。
図4】診断装置の機能ブロックの例を示す図である。
図5】圧力伝送器であるフィールド機器の診断の例を示す図である。
図6】圧力伝送器であるフィールド機器の診断の例を示す図である。
図7】圧力伝送器であるフィールド機器の診断の例を示す図である。
図8】診断システムにおいて実行される処理(診断方法)の例を示す図である。
図9】診断システムにおいて実行される処理(診断方法)の例を示す図である。
図10】診断システムにおいて実行される処理(診断方法)の例を示す図である。
図11】診断システムにおいて実行される処理(診断方法)の例を示す図である。
図12】変形例を示す図である。
図13】変形例を示す図である。
図14】ハードウェア構成の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ実施形態について説明する。同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0013】
<序>
プラント等に配置されたフィールド機器の診断に関して、例えば自己診断機能を有するフィールド機器が存在する。例えば、CPU異常、ハードウェア異常、プロセス異常、設定異常、測定レンジ外入力等の異常状態が検知される。自己診断結果は、フィールド機器自身が表示したり、フィールド機器から上位システムに送信され上位システムが表示したりする。ユーザは、自己診断結果を確認し、対応マニュアルに沿って異常原因を探し、フィールド機器の状態(故障等)を確認する。
【0014】
上記の手順では、フィールド機器が実際に故障した後にユーザ(点検員、作業者、オペレータ等)に知らされるので、部品劣化の見落とし等に起因するフィールド機器の突発的な異常や故障に至ることを予防することができない。プラントの停止につながる場合もあり、コスト負担が増加する。異常原因の究明にも時間と手間を要する。あらゆるフィールド機器の故障に備えて多くの予備部品の在庫を持っておくことも、コスト負担になる。また、部品交換の判断が属人化されるので、判断がばらつく。適切な部品交換のタイミングが掴めず、部品の劣化に気づかないままフィールド機器が異常や故障に至る事態も起こり得る。
【0015】
そこで以下に説明する実施形態によれば、フィールド機器の異常状態に至る前の異常予兆状態の診断が可能になり、従って、フィールド機器の異常や故障を未然に防ぐことができる。適切な部品の発注、プラントの停止期間の削減、部品交換判断の精度向上等により、コスト負担を軽減したり、作業負担を軽減したりすることができる。
【0016】
<実施形態>
図1は、実施形態に係る診断システムの概略構成の例を示す図である。診断システム1は、フィールド機器2と、フィールド機器コントローラ3と、ユーザシステム4と、診断装置5とを含む。診断システム1においては、各種の機能が、フィールド機器コントローラ3、ユーザシステム4及び診断装置5にわたって分散して設けられる。このような診断システム1、また、診断システム1を構成するユーザシステム4は、分散制御システム(DCS:Distributed Control System)とも呼べる。
【0017】
複数のフィールド機器2が診断システム1に含まれてよく、図1には、3つのフィールド機器2が例示される。複数のフィールド機器2をとくに区別しない場合は、単にフィールド機器2と呼ぶこともある。同様に、複数のユーザシステム4が診断システム1に含まれてよく、図1には、2つのユーザシステム4が例示される。一方のユーザシステム4をユーザシステム4-1と称し、他方のユーザシステム4をユーザシステム4-2と称しそれぞれ図示する。なお、ユーザシステム4-1及びユーザシステム4-2をとくに区別しない場合は、単にユーザシステム4と呼ぶ。
【0018】
フィールド機器2は、フィールドF内に設置されて用いられる計測器であり、より具体的にはその計測結果を示す信号を伝送する伝送器である。フィールドFの例は、プラント、工場等である。例えば、フィールド機器2がプラント内に配置されている場合、そのフィールド機器2は、プラントを安全に稼働させるためのさまざまな計測、制御等を行う。フィールド機器2の例は、圧力伝送器、温度伝送器、流量伝送器等である。圧力伝送器は差圧伝送器であってもよく、これについては後に図5を参照して改めて説明する。フィールド機器2は、他の装置、この例ではフィールド機器コントローラ3及びユーザシステム4-2それぞれと通信可能である。通信は、有線通信であってもよいし、無線通信であってもよい。
【0019】
図2は、フィールド機器の機能ブロックの例を示す図である。フィールド機器2は、センサ部21と、演算部22と、設定部23と、自己診断部24と、メモリ管理部25と、表示部26と、通信IF部27と、アラーム管理部28とを含む。
【0020】
センサ部21は、フィールドF内に配置された図示しないセンサから、センサ値を取得する。センサは、フィールド機器2の外部に設けられてもよいし、フィールド機器2に組み入れられてもよい。フィールド機器2が圧力伝送器、温度伝送器及び流量伝送器の場合のセンサの例は、圧力センサ、温度センサ及び流量センサである。本開示におけるセンサ値は、フィールド機器2の計測目的の物理量である圧力、温度、流量等を示す周波数値、電圧値又は電流値であり、センサ生値と呼ぶこともできる。センサ部21によるセンサ値の取得は、周期的に行われてもよいし、指定された任意のタイミングで行われてもよい。
【0021】
演算部22は、センサ部21が取得したセンサ値を、測定値に変換する。測定値は、上述の計測目的の物理量、すなわち圧力値、差圧値、温度値、流量値等である。演算部22による演算は、周期的に行われてもよいし、指定された任意のタイミングで行われてもよい。
【0022】
設定部23は、フィールド機器2に関する各種の設定を行う。設定の例は、機器名の設定、測定周期の設定、表示単位の設定、調整の設定等である。なお、測定周期の設定は、上述のセンサ部21によるセンサ値の取得の周期の設定、演算部22による測定値の演算の周期の設定等を含み得る。調整の設定は、フィールド機器2の校正等を含み得る。
【0023】
自己診断部24は、フィールド機器2を自己診断する。自己診断部24は、先の演算部22によって得られた測定値等に基づいて、フィールド機器2が正常であるか異常であるかを診断する。例えば、測定値が得られない状態が続いたり、測定値が予め定められた範囲から外れていたりした場合に、フィールド機器2が異常であると自己診断される。
【0024】
上述のセンサ部21、演算部22、設定部23及び自己診断部24において扱われるさまざまな情報、また、後述のアラーム管理部28において扱われる情報が、フィールド機器2のパラメータとなり得る。図3も参照して説明する。
【0025】
図3は、フィールド機器のパラメータの例を示す図である。フィールド機器2のパラメータとして、センサ値、測定値、設定情報、自己診断情報及びアラーム履歴情報が例示される。先に述べたように、センサ値は、センサ部21(図1)によって取得される。センサ値として、電圧値及び電流値が例示される。測定値は、演算部22によって取得される。測定値として、圧力値、差圧値、温度値、流量値が例示される。設定情報は、設定部23によって設定される。設定情報として、機器名、測定周期、表示単位及び調整(校正等)が例示される。自己診断情報は、自己診断部24によって取得される。自己診断情報として、正常及び異常が例示される。アラーム履歴情報は、過去に発生したアラームの発生時刻及びアラームの内容等を対応付ける情報である。後述するようにアラーム管理部28は、発生したアラームに基づいてアラーム履歴情報を生成し、メモリ管理部25がアラーム履歴情報を保管する。
【0026】
図2に戻り、メモリ管理部25は、各種の情報を記憶するメモリを管理する。例えば、メモリ管理部25は、フィールド機器2のパラメータをメモリに記憶したり、DB(データベース)として管理したりする。また、後述の診断情報も、メモリに記憶されたりDBとして管理されたりする。
【0027】
表示部26は、フィールド機器2に関する各種の情報を表示する。例えば、表示部26は、演算部22によって得られた測定値を表示したり、他のパラメータを表示したりする。また、表示部26は、後述の診断情報を表示する。フィールド機器2の異常等を示すアラームも、表示部26によって表示されてよい。このようなアラームの履歴は、先に説明した図3に示されるアラーム履歴情報に含まれる。
【0028】
通信IF部27は、上位システムと通信する。上位システムの例は、図1のユーザシステム4である。フィールド機器2がフィールド機器コントローラ3を介してユーザシステム4と通信する場合には、フィールド機器コントローラ3も上位システムとなり得る。通信は、有線通信であってもよいし、無線通信であってもよい。通信手順の詳細は後述する。通信プロトコルの例は、HART(Highway Addressable Remote Transducer)、FF(FOUNDATION Fieldbus)、PROFIBUS、ISA100等である。
【0029】
アラーム管理部28は、アラームを管理する。アラームの例は、センサ部21や演算部22においてセンサ値や測定値が得られない状態が続いたり、それらの値が予め定められた範囲から外れていたりすることを示すアラームである。アラームは、自己診断部24の自己診断結果が異常である場合にそのことを示すものであってもよい。アラーム管理部28は、例えば、表示部26を制御してアラームの内容を表示させることにより、アラームを発生させる。他にも、アラームに対応する発光制御が行われたり、アラーム音出力が行われたりしてもよく、これらは図示しないランプ、スピーカ等を制御することによって行われる。また、アラーム管理部28は、アラーム履歴情報を生成する。先にも述べたように、アラーム履歴情報は、発生したアラームの時刻、アラームの内容等を対応付ける情報であり、フィールド機器2のパラメータとなり得る。生成されたアラーム履歴情報は、例えばメモリ管理部25が保管する。
【0030】
図1に戻り、フィールド機器コントローラ3は、フィールド機器2及びユーザシステム4-1の間の通信を制御する。例えば、フィールド機器コントローラ3は、複数のフィールド機器2それぞれのパラメータを、ユーザシステム4-1に送信する。また、フィールド機器コントローラ3は、後述の診断情報を、対応するフィールド機器2に送信する。なお、フィールド機器2及びユーザシステム4-1は、フィールド機器コントローラ3を介さずに通信してもよく、その場合、フィールド機器コントローラ3は無くてもよい。
【0031】
ユーザシステム4は、フィールド機器2のパラメータを収集する。ユーザシステム4は、収集したフィールド機器2のパラメータをユーザが確認できるように表示したり、フィールド機器2のパラメータを設定(変更等)するためのユーザ操作を受け付けたりする。パラメータ設定の際は、例えばパラメータの設定を指示する情報がユーザシステム4からフィールド機器2に送信され、フィールド機器2において設定部23がその指示に従ってパラメータを設定する。ユーザシステム4においてフィールド機器2のパラメータを表示したり、フィールド機器2のパラメータを設定したりすることで、フィールド機器2さらにはフィールドF全体を監視したり制御したりすることができる。
【0032】
先にも述べたように、図1に示される例では、ユーザシステム4-1及びユーザシステム4-2の2つのユーザシステム4が存在する。ユーザシステム4-1は、例えばオペレータのいる計器室に設置される。ユーザシステム4-2は、例えばハンドヘルドコミュニケータ(タブレット端末等)等であり、図1に示される例ではフィールドF内で用いられる。ユーザシステム4-1及びユーザシステム4-2のいずれにおいても、フィールド機器2のパラメータを収集したり、パラメータを表示したりすることができる。ユーザシステム4は、収集したパラメータを診断装置5に送信する。
【0033】
診断装置5は、ユーザシステム4とは別に設けられた装置であり、例えばインターネット等の通信ネットワークを介してユーザシステム4と通信可能なサーバ装置(クラウド装置)である。診断装置5は、フィールド機器2のパラメータに基づいてフィールド機器2を診断し、診断結果を示す診断情報をユーザシステム4に送信する。ユーザシステム4は、受信した診断結果を表示し、また、フィールド機器2に送信する。診断装置5について、図4を参照してさらに説明する。
【0034】
図4は、診断装置の機能ブロックの例を示す図である。診断装置5は、通信IF部51と、診断部52と、メモリ管理部53とを含む。
【0035】
通信IF部51は、フィールド機器2の上位システム、すなわちユーザシステム4と通信する。例えば、通信IF部51は、フィールド機器2のパラメータをユーザシステム4から受信したり、後述の診断情報をユーザシステム4に送信したりする。
【0036】
診断部52は、通信IF部51が受信したフィールド機器2のパラメータと、後述の診断モデル521aとを用いて、フィールド機器2を診断する。診断部52は、演算部521と、診断情報生成部522とを含む。
【0037】
演算部521は、フィールド機器2の診断に必要な演算を行う。演算部521による演算は統計演算を含む。この例では、演算に診断モデル521aが用いられる。診断モデル521aは、機械学習によって生成された学習済みモデルである。演算部521が診断モデル521aを生成してよい。例えば、演算部521は、通信IF部51を介して入力されたさまざまなフィールド機器の過去のパラメータの統計演算に基づく機械学習を行うことにより、フィールド機器2の入力パラメータに対応するデータ(入力データ)が入力されるとフィールド機器2の状態を示すデータ(出力データ)を出力する診断モデル521aを生成する。例えば、パラメータの平均値や分散等が機械学習される。入力データは、例えば、フィールド機器2のパラメータを診断モデル521aへの入力に適したフォーマットに変換したり、種々の公知の前処理を施したりして得られたデータであってよい。
【0038】
診断モデル521aの出力データが示すフィールド機器2の状態は、正常状態、異常予兆状態及び異常状態を含む。このうちの異常予兆状態は、フィールド機器2が将来、より具体的には例えば数か月以内、数週間以内、数日以内といった近い将来に異常や故障する可能性がある状態である。このような出力データを得ることで、フィールド機器2の異常や故障予知診断(故障予測)が可能になる。
【0039】
また、フィールド機器2が異常予兆状態であることを示す診断モデル521aの出力データは、さらに、そのフィールド機器2が異常状態になると予測される時期(異常や故障の発生時期)、異常状態になると予測される箇所(異常や故障の発生箇所)等を示すデータを含んでよい。異常や故障の発生箇所を示すデータは、フィールド機器2を構成する部品を示すデータを含んでよい。そのような出力データを出力する診断モデル521aは、例えば、フィールド機器2のパラメータに示される測定値及びその揺動(例えば後述の圧力伝送器の測定値のゆらぎ)を一定期間サンプリングしたデータを用いて生成される。サンプリングした時間及びフィールド機器2のパラメータの値から、異常や故障の発生時期、発生箇所が特定される。演算部521はフィールド機器2の異常や故障の発生時期を算出してよく、その場合の演算部521は、サンプリングした時間及びフィールド機器2のパラメータ(測定値を含む)を診断モデル521aに入力することによって得られた診断モデル521aの出力データに示される上述の時期を、そのフィールド機器2の異常や故障の発生時期として算出する。また、演算部521はフィールド機器2の異常や故障発生箇所を特定してよく、その場合の演算部521は、サンプリングした時間及びフィールド機器2のパラメータを診断モデル521aに入力することによって得られた診断モデル521aの出力データに示される上述の箇所を、そのフィールド機器2の異常や故障の発生箇所として特定する。なお、診断モデル521aは、実際にフィールド機器2が配置される現場の環境に応じて学習されてもよい。例えば標準的な診断モデルを予め事前に準備したうえで、現場の環境に応じた追加の機械学習を行うことによって、最適な診断モデル521aを得ることができる。
【0040】
フィールド機器2のより具体的な診断について、フィールド機器2が圧力伝送器の場合を例に挙げて述べる。この場合のフィールド機器2の状態は、圧力伝送器の導圧管の状態であってよい。フィールド機器2の正常状態は、導圧管の非詰まり状態に対応してよい。フィールド機器2の異常予兆状態は、導圧管の詰まり予兆状態に対応してよい。フィールド機器2の異常状態は、導圧管の詰まり状態に対応してよい。具体的に、図5図7を参照して説明する。
【0041】
図5図7は、圧力伝送器であるフィールド機器の診断の例を示す図である。図5には、フィールドF内を延在するパイプライン6の一部が示され、また、パイプライン6中の流体の流れの向きが黒塗り矢印で模式的に示される。パイプライン6には、オリフィス7が取り付けられるとともに、オリフィス7を挟んで互いに反対側に位置する部分、すなわち上流側及び下流側それぞれに導圧管8が接続される。上流側の導圧管8を、高圧側導圧管8―Hと称し図示する。下流側の導圧管8を、低圧側導圧管8-Lと称し図示する。これらをとくに区別しない場合は単に導圧管8と呼ぶ。
【0042】
フィールド機器2は、導圧管8の圧力を計測する圧力伝送器であり、より具体的には差圧伝送器である。フィールド機器2内のセンサによって、高圧側導圧管8―H及び低圧側導圧管8-Lそれぞれの圧力(例えば静圧)、また、それらの差圧が検出される。フィールド機器2は、高圧側導圧管8―H及び低圧側導圧管8-Lそれぞれのセンサ値から圧力値を示す測定値を演算し、またそれぞれの圧力値から差圧値を演算する。
【0043】
高圧側導圧管8―Hの圧力値を示す測定値を、測定値SP-Hと称する。低圧側導圧管8-Lの圧力値を示す測定値を、測定値SP-Lと称する。それらの差圧値を示す測定値を、測定値DPと称し図示する。とくにこれらを区別しない場合は、単に測定値と呼ぶ。
【0044】
図6には、測定値の例が模式的に示される。グラフの横軸は時刻tを示す。グラフの縦軸は測定値を示す。破線VIで囲んだ部分は、ある一定期間内のグラフ線の拡大図を模式的に示す。揺動が存在し、測定値がゆらいでいる。このゆらぎの大きさ(ゆれ幅の大きさ)と、導圧管8の非詰まり状態及び詰まり状態との間に相関関係が存在する。
【0045】
図7には、相関関係の例が示される。高圧側導圧管8―H及び低圧側導圧管8-Lがいずれも非詰まり状態の場合、測定値DP(差圧値)のゆらぎ、測定値SP-Hのゆらぎ及び測定値SP-Lのゆらぎはいずれも大きくなる。高圧側導圧管8―Hが詰まり状態で低圧側導圧管8-Lが非詰まり状態の場合、測定値DPのゆらぎ及び測定値SP-Lのゆらぎは大きくなり、測定値SP-Hのゆらぎは小さくなる。高圧側導圧管8―Hが非詰まり状態で低圧側導圧管8-Lが詰まり状態の場合、測定値DPのゆらぎ及び測定値SP-Hのゆらぎは大きくなり、測定値SP-Lのゆらぎは小さくなる。高圧側導圧管8―H及び低圧側導圧管8-Lがいずれも詰まり状態の場合、測定値DPのゆらぎ、測定値SP-Hのゆらぎ及び測定値SP-Lのゆらぎはいずれも小さくなる。図7には表れないが、導圧管8が詰まり予兆状態の場合には、例えば測定値DP、測定値SP-H又は測定値SP-Lの少なくとも1つの値のゆらぎの大きさ(ゆらぎ幅)の変化率が、過去の変化率と比較して所定の偏差状態になっている。このようなゆらぎ幅の変化率の比較に基づいて、詰まり予兆状態であるか否かを判断することができる。
【0046】
上記のことから、測定値に基づいて、導圧管8の状態が、詰まり状態、詰まり予兆状態及び非詰まり状態のいずれの状態であるのかという診断を行うことができる。その場合の診断モデル521a(図4)は、導圧管8の圧力値を示す測定値に対応するデータが入力されると、導圧管8の状態を示すデータを出力する。より具体的に、診断モデル521aは、高圧側導圧管8ーHの圧力値を示す測定値SP-H、低圧側導圧管8-Lの圧力値を示す測定値SP-L及びそれらの測定値DP差圧値(の時系列データ)又はこれに基づくゆらぎに対応するデータが入力されると、高圧側導圧管8ーH及び低圧側導圧管8-Lそれぞれの状態が詰まり状態、詰まり予兆状態及び非詰まり状態のいずれであるのかを示すデータを出力する。導圧管8が詰まり予兆状態を示す出力データは、導圧管8が詰まり状態となると予測される時期(異常や故障の発生時期)、詰まり状態になると予測される箇所すなわち高圧側導圧管8―H及び低圧側導圧管8-Lのどの導圧管であるのか(異常や故障の発生箇所)等を示すデータを含んでもよい。
【0047】
診断モデル521aの機械学習は、フィールド機器2として用い得るさまざまな圧力伝送器の過去の測定値の統計情報に基づいて行われてよい。機械学習における入力データには、導圧管が非詰まり状態のときの測定値に対応するデータ、導圧管が詰まり予兆状態のときの測定値に対応するデータ、及び、導圧管が詰まり状態のときの測定値に対応するデータが用いられる。導圧管が非詰まり状態のときの測定値は、例えば導圧管の校正時の測定値であってよい。なお、機械学習のもととなる統計情報として、測定値の統計情報とともに或いはこれに代えて、他のパラメータの統計情報が用いられてもよい。
【0048】
機械学習における出力データには、導圧管が非詰まり状態、詰まり予兆状態及び詰まり状態のいずれであるのかを示すデータ(例えば各状態の確率を示すデータ)が用いられる。例えば、一定時間内の測定値のゆらぎの大きさが校正時と同様に大きい場合に、導圧管が非詰まり状態であること(例えばその確率が高いこと)を示すデータを出力するように、診断モデル521aが機械学習される。ゆらぎの大きさが校正時と比較して小さい場合に、導圧管が詰まり状態であることを示すデータを出力するように、診断モデル521aが機械学習される。ゆらぎの大きさがそれらの中間に位置する場合に、導圧管が詰まり予兆状態であることを示すデータを出力するように、診断モデル521aが機械学習される。先にも述べたように、出力データは、異常や故障の発生時期、異常や故障の発生箇所等を示すデータを含んでよい。そのようなデータを出力する診断モデル521aは、例えば、実際に詰まり状態に至ったさまざまな導圧管の過去のパラメータの統計演算、より具体的には、パラメータとその後に詰まり状態に至るまでに要した期間や詰まり状態になった箇所の統計情報を用いた機械学習を行うことで得られる。学習用のデータは、先にも述べたような測定値及びその揺動を一定期間サンプリングしたデータを保存することによって得られる。なお、異常や故障の発生箇所についてさらに述べると、例えば、センサ値が過大になりつつあり異常予兆状態であると診断された場合は、センサ自体が異常や故障の発生箇所として特定されてよい。また、前述の圧力伝送器の例でいうと、ゆらぎ幅の変化率に基づいてつまり予兆状態と診断された場合は、圧力伝送器に接続された周辺設備、例えば導圧管8が故障や異常の発生箇所として特定されてよい。
【0049】
診断モデル521aは、適時アップデートされてよく、そのための追加の機械学習が適時行われてよい。例えば稼働中のフィールド機器2について実際に確認されたそのフィールド機器2の状態と、そのときのフィールド機器2のパラメータとを対応付けて診断装置5に保存することで、診断モデル521aの機械学習用のデータが蓄積される。蓄積されたデータを用いて診断モデル521aをさらに機械学習することで、診断精度を向上することができる。
【0050】
図4に戻り、演算部521は、通信IF部51が受信したフィールド機器2のパラメータに対応するデータを、診断モデル521aに入力する。診断モデル521aは、フィールド機器2の状態が正常状態、異常予兆状態及び異常状態のいずれであるのかを示すデータを出力する。これまでも述べたように、フィールド機器2異常や故障の発生時期、異常や故障の発生箇所等を示すデータも出力され得る。演算部521は、診断モデル521aの出力データを、演算結果として取得する。
【0051】
診断情報生成部522は、演算部521の演算結果、より具体的には診断モデル521aの出力データに基づいて、フィールド機器2の診断情報を生成する。診断情報は、フィールド機器2の状態が正常状態、異常予兆状態及び異常状態のいずれであるのかを示す情報を含む。異常予兆状態を示す情報(異常予知診断情報とも呼べる)は、フィールド機器2の異常や故障の発生時期、異常や故障の発生箇所等を示す情報も含み得る。
【0052】
メモリ管理部53は、各種の情報を記憶するメモリを管理する。例えば、メモリ管理部53は、通信IF部51が受信したフィールド機器2のパラメータをメモリに記憶したり、DBとして管理したりする。また、メモリ管理部53は、診断情報生成部522が生成した診断情報をメモリに記憶する。これら以外にも、診断モデル521aの追加の機械学習用のデータ等のさまざまな情報がメモリに記憶されてよい。
【0053】
図1に戻り、診断装置5において生成された診断情報は、ユーザシステム4に送信される。ユーザシステム4は、診断情報をユーザに知らせる(表示等する)。これにより、フィールド機器2の状態が正常状態、異常予兆状態及び異常状態のいずれであるのかがユーザに知らされる。また、ユーザシステム4は、診断情報をフィールド機器2に送信してもよい。フィールド機器2においても診断情報を表示してユーザに知らせることができる。
【0054】
なお、ユーザシステム4は、フィールド機器2が設置されたフィールドF内での作業に関するレポートを作成、保存等する作業記録ツールの機能を備えていてもよい。その場合のレポートに、上述の診断情報が含まれてもよい。効率的な作業記録が可能になる。
【0055】
以上で説明した診断システム1によれば、フィールド機器2のパラメータが収集され、診断装置5の演算部521による統計演算、より具体的には診断モデル521aを用いて、フィールド機器2が診断される。診断結果を示す診断情報は、フィールド機器2の状態が異常予兆状態であるか否かを含む異常予知診断情報であり、さらには、フィールド機器2が異常状態になると予測される時期、異常状態になると予測されるフィールド機器2の箇所等を示す情報も含み得る。このような診断情報が、ユーザシステム4又はフィールド機器2を介してユーザに知らされる。ユーザは、診断情報を確認して、フィールド機器2の異常や故障に予め対処することができる。例えば、適切なタイミングで部品を準備したり、部品交換を行ったりすることができる。フィールド機器2の異常や故障等に起因するプラントの停止を回避することができ、また、フィールド機器2をより安全に稼働させることができる。ユーザシステム4が診断情報を表示するため、ユーザは、フィールド機器2に直接触れることなく、遠隔地からフィールド機器2の状態を確認することができる。ユーザの安全面においても効果的である。
【0056】
フィールド機器2の診断精度の向上も期待できる。従来は、ユーザがフィールド機器2の異常を判断していたので、属人性が高く、精度ばらつきの問題があった。診断システム1によれば、いずれのフィールド機器2の診断にも、演算部521による統計演算、より具体的には診断モデル521aが共通に用いられるので、属人性の問題が解消される。診断モデル521aの機械学習が進むにつれて診断精度が向上するというメリットもある。
【0057】
また、従来は、例えば、フィールド機器2の異常発生後に自己診断機能により故障の原因を探知していた。この場合、解決に時間がかかり、プラントの停止時間が長期化してしまい、プラントの稼働に負担がかかるという問題があった。また、フィールド機器2内の部品確認の際に、フィールド機器2のカバーを外す等の手作業が発生し、危険区域においては、けが等の人的リスクも生じうる問題もあった。これらの問題も、実施形態に係る診断システム1よって対処される。
【0058】
図8図11は、診断システムにおいて実行される処理(診断方法)の例を示す図である。これまでと重複する内容については説明を適宜省略する。フィールド機器2、ユーザシステム4及び診断装置5の間のリクエスト及びレスポンスの送受信はすべて正常に行われるものとする。
【0059】
図8には、診断シーケンスの例が示される。ユーザシステム4は、パラメータReadリクエストをフィールド機器2に送信する(ステップS1)。フィールド機器2は、リクエストされたパラメータと一緒にパラメータReadレスポンスをユーザシステム4に送信する(ステップS2)。ユーザシステム4は、受信したパラメータと一緒にパラメータWriteリクエストを診断装置5に送信する(ステップS3)。診断装置5は、受信したパラメータを書き込んで保存し(ステップS4)、ユーザシステム4にACKすなわちWriteレスポンスを送信する(ステップS5)。また、診断装置5は、フィールド機器2を診断し、診断結果を示す診断情報を生成する(ステップS6)。ユーザシステム4は、診断情報Readリクエストを診断装置5に送信する(ステップS7)。診断装置5は、診断情報と一緒に診断情報Readレスポンスをユーザシステム4に送信する(ステップS8)。ユーザシステム4は、受信した診断情報を表示する(ステップS9)。また、ユーザシステム4は、診断情報と一緒に診断情報Writeリクエストをフィールド機器2に送信する(ステップS10)。フィールド機器2は、受信した診断情報を書き込んで保存し(ステップS11)、ACKすなわち診断情報Writeレスポンスをユーザシステム4に送信する(ステップS12)。
【0060】
例えば以上のようにして、フィールド機器2のパラメータが、ユーザシステム4によって収集され、診断装置5に送信される。診断装置5においてフィールド機器2が診断され、診断結果を示す診断情報が、診断装置5からユーザシステム4、さらにはフィールド機器2に送信される。ユーザシステム4さらにはフィールド機器2において診断情報を確認することができる。
【0061】
図9には、図8で説明したフィールド機器2におけるパラメータのR/W(読み書き)シーケンスの例が示される。ユーザシステム4は、パラメータR/Wリクエストをフィールド機器2に送信する(ステップS21)。フィールド機器2の通信IF部27は、受信したパラメータR/Wリクエストのメッセージを解読し、解読した内容をメモリ管理部25に送る(ステップS22)。メモリ管理部25は、リクエストされたパラメータをDBから読み出したりDBに書き込んだりし(ステップS23)、パラメータR/Wレスポンスを通信IF部27に送る(ステップS24)。通信IF部27は、パラメータR/Wレスポンスの内容をユーザシステム4への送信に適したメッセージに変換し、ユーザシステム4に送信する(ステップS25)。
【0062】
例えば以上のようにして、ユーザシステム4から、フィールド機器2のパラメータを読み出したりフィールド機器2にパラメータを書き込んだりすることができる。
【0063】
図10には、図8で説明したユーザシステム4において実行される処理の例が示される。ユーザシステム4は、フィールド機器2のパラメータの読み書きのために、フィールド機器2又は診断装置5にR/Wリクエストを送信する(ステップS31)。設定時間内にR/Wレスポンスがある場合(ステップS32:Yes)、ユーザシステム4は、R/Wレスポンスを受信し(ステップS33)、フィールド機器2(診断装置5でもよい)のステータスが正常であるすなわちこの例ではレスポンス可能であると判定する(ステップS34)。設定時間内にR/Wレスポンスが無い場合(ステップS32:No)、ユーザシステム4は、リトライ数が上限値に達していなければ再びR/Wリクエスト送信を行い(ステップS35:No、ステップS31)、リトライ数に達した場合にはタイムアウトの判定を行い(ステップS36)、フィールド機器2(診断装置5でもよい)のステータスが異常であるすなわちこの例ではレスポンス不可であると判定する(ステップS37)。これらの処理が、ユーザシステム4の電源がOFFでない間、繰り返し実行される(ステップS38:No、ステップS31)。
【0064】
例えば以上のようにして、ユーザシステム4と、フィールド機器2及び診断装置5との間でリクエスト及びレスポンスの送受信を行うことができる。
【0065】
図11には、図8で説明した診断装置5において実行される処理の例が示される。診断装置5は、ユーザシステム4からのパラメータWriteリクエストの受信を待機している(ステップS41:No、ステップS42)。パラメータWriteリクエストを受信すると(ステップS41:Yes)、診断装置5は、パラメータを書き込み(ステップS43)、パラメータに基づいてフィールド機器2を診断する(ステップS44)。先にも述べたように、診断装置5の演算部521が、フィールド機器2のパラメータに対応するデータを診断モデル521aに入力する。診断モデル521aは、フィールド機器2の状態が正常状態、異常予兆状態及び異常状態のいずれの状態であるのかを例えば統計的に示して識別するデータを出力する。繰り返しになるが、異常予兆状態を示すデータは、異常状態になると予測される時期、異常状態になると予測される箇所等を示すデータを含んでもよい。診断モデル521aの出力データに基づいて、診断情報生成部522が、フィールド機器2の診断結果を示す診断情報を生成する。その後、診断装置5は、ユーザシステム4からの診断情報Readリクエストの受信を待機する(ステップS45:No、ステップS46)。診断情報Readリクエストを受信すると(ステップS45:Yes)、診断装置5は、診断情報をユーザシステム4に送信する(ステップS47)。
【0066】
例えば以上のようにして、診断装置5において、ユーザシステム4からのパラメータを受信てフィールド機器2を診断し、また、診断結果を示す診断情報をユーザシステム4に送信することができる。
【0067】
<変形例>
上記実施形態では、診断装置5が、ユーザシステム4とは別に設けられたサーバ装置(クラウド装置)等である場合を例に挙げて説明した。ただし、診断装置5による診断機能がユーザシステム4に組み入れられてもよい。その場合は、ユーザシステム4が診断装置としても機能する。図12及び図13を参照して説明する。
【0068】
図12及び図13は、変形例を示す図である。図12に示される診断システム1は、先に説明した図1の構成と比較して、診断装置5を含まない一方で、ユーザシステム4が診断部52を含む点において相違する。ユーザシステム4の診断部52が、フィールド機器2のパラメータに基づいてフィールド機器2を診断し、診断結果を示す診断情報を生成する。生成された診断情報は、ユーザシステム4において表示されたり、また、フィールド機器2に送信され、フィールド機器2において表示されたりする。
【0069】
図13には、診断システム1において実行される処理(診断方法)の例が示される。ユーザシステム4は、パラメータReadリクエストをフィールド機器2に送信する(ステップS51)。フィールド機器2は、リクエストされたパラメータと一緒にパラメータReadレスポンスをユーザシステム4に送信する(ステップS52)。ユーザシステム4は、受信したパラメータに基づいてフィールド機器2を診断し、診断結果を示す診断情報を生成する(ステップS53)。また、ユーザシステム4は、診断情報を表示し(ステップS54)、診断情報と一緒に診断情報Writeリクエストをフィールド機器2に送信する(ステップS55)。フィールド機器2は、受信した診断情報を書き込んで保存し(ステップS56)、ACKすなわち診断情報Writeレスポンスをユーザシステム4に送信する(ステップS57)。
【0070】
例えば以上のようにして、フィールド機器2のパラメータが、ユーザシステム4によって収集され、ユーザシステム4においてフィールド機器2が診断され、診断結果を示す診断情報が、ユーザシステム4からフィールド機器2に送信される。先に説明した実施形態と同様に、ユーザシステム4及びフィールド機器2において診断情報を確認することができる。
【0071】
また、診断部52を、クラウド領域(診断装置5(図1)側)ではなくエッジ領域(ユーザシステム4側)に設けることで、外部ネットワークへの接続が不要になり、通信処理・速度等に起因するデータ処理、パフォーマンス低下等を回避することができる。よりリアルタイムなフィールド機器2のパラメータ収集、診断、診断情報の表示等が行えるようになる。外部ネットワーク接続に要する通信コストを抑制することもできる。外部ネットワーク接続を行わない分、セキュリティも強化される。
【0072】
<ハードウェア構成の例>
図14は、ハードウェア構成の例を示す図である。例示されるようなコンピュータ9を含んで構成された装置等が、これまで説明したフィールド機器2、フィールド機器コントローラ3、ユーザシステム4又は診断装置5として機能する。コンピュータ9のハードウェア構成として、バス等で相互に接続される通信装置91、表示装置92、記憶装置93、メモリ94及びプロセッサ95が例示される。
【0073】
通信装置91は、ネットワークインタフェースカード等であり、他の装置との通信を可能にする。通信装置91は、例えばこれまで説明した通信IF部27、通信IF部51等に相当し得る。表示装置92は、例えばこれまで説明した表示部26等に相当し得る。
【0074】
記憶装置93及びメモリ94には、各種の情報(データ等)が記憶される。記憶装置93の具体例は、HDD(Hard Disk Drive)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等である。メモリ94は、記憶装置93の一部であってもよい。記憶装置93に記憶される情報として、プログラム931が例示される。プログラム931は、コンピュータ9を、フィールド機器2、フィールド機器コントローラ3、ユーザシステム4又は診断装置5として機能させるためのプログラム(ソフトウェア)である。より具体的に、例えば、プログラム931は、コンピュータ9に、これまで説明した診断部52による処理をコンピュータ9に実行させる。このようなプログラム931は、診断プログラムとも呼べる。
【0075】
プロセッサ95は、各種の処理を実行する。例えば、プロセッサ95は、記憶装置93からプログラム931を読み込んで(読み出して)メモリ94に展開することで、フィールド機器2、フィールド機器コントローラ3、ユーザシステム4又は診断装置5において実行される各種の処理をコンピュータ9に実行させる。
【0076】
プログラム931は、インターネット等のネットワークを介してまとめて又は別々に配布することができる。また、プログラム931は、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体にまとめて又は別々に記録され、コンピュータ9によって記録媒体から読み込まれることによって実行することができる。
【0077】
以上で説明した技術は、例えば次のように特定される。開示される技術の1つは、診断装置である。図1図7及び図12等を参照して説明したように、診断装置5(図12の場合はユーザシステム4)は、フィールド機器2のパラメータと、診断モデル521aとを用いて、フィールド機器2を診断する診断部52、を備える。診断モデル521aは、フィールド機器2のパラメータに対応するデータが入力されると、フィールド機器2の状態を示すデータを出力するように機械学習された学習済みモデルである。フィールド機器2の状態は、正常状態、異常予兆状態及び異常状態を含む。例えば、フィールド機器2のパラメータは、センサ値、測定値、設定情報、自己診断情報又はアラーム履歴情報の少なくとも1つを含んでよい。
【0078】
上記の診断装置5(図12の場合はユーザシステム4)によれば、診断モデル521aを用いて、フィールド機器2の状態が異常予兆状態であるか否かの診断を行うことができる。従って、フィールド機器2の異常予兆の診断が可能になり、ひいてはフィールド機器2の異常や故障予測が可能になる。
【0079】
図1及び図4等を参照して説明したように、診断部52は、フィールド機器2の状態が異常予兆状態であることをユーザに知らせるための診断情報を生成してよい。ユーザは、知らされた診断情報に基づいて、フィールド機器2の異常や故障に予め対処することができる。
【0080】
図4等を参照して説明したように、診断モデル521aは、フィールド機器2の状態が異常予兆状態である場合には、フィールド機器2が異常状態になると予測される時期又は異常状態になると予測される箇所の少なくとも一方を示すデータも出力してよい。これにより、適切なタイミングで対応する部品を準備したりその交換作業を行ったりすることもできるようになる。
【0081】
図5図7等を参照して説明したように、フィールド機器2は、パイプライン6に接続された導圧管8の圧力を計測する圧力伝送器を含み、フィールド機器2のパラメータは、導圧管8の圧力値を示す測定値を含み、フィールド機器2の異常予兆状態は、導圧管8の詰まり予兆状態を含んでよい。これにより、導圧管8の異常や故障予測を行うことができる。例えば、導圧管8は、高圧側導圧管8-H及び低圧側導圧管8-Lを含み、フィールド機器2のパラメータは、高圧側導圧管8-Hの圧力値を示す測定値、低圧側導圧管8-Lの圧力値を示す測定値、及び、それらの差圧値を示す測定値DPを含んでよい。例えばこのようなパラメータに基づいて、導圧管8を診断することができる。
【0082】
図1図14を参照して説明したプログラム931も、開示される技術の1つである。プログラム931は、コンピュータ9に、フィールド機器2のパラメータと、診断モデル521aとを用いて、フィールド機器2を診断する処理、を実行させる診断プログラムである。このようなプログラム931によっても、これまで説明したように、フィールド機器2の故障予測が可能になる。
【0083】
図1図13等を参照して説明した診断方法も、開示される技術の1つである。診断方法は、フィールド機器2のパラメータと、診断モデル521aとを用いて、フィールド機器2を診断すること(ステップS6、ステップS44、ステップS53)、を含む。このような診断方法によっても、これまで説明したように、フィールド機器2の異常や故障予測が可能になる。
【0084】
図1図7及び図12等を参照して説明した診断システム1も、開示される技術の1つである。診断システム1は、フィールド機器2と、フィールド機器2のパラメータを収集するユーザシステム4と、ユーザシステム4によって収集されたフィールド機器2のパラメータと、診断モデル521aとを用いて、フィールド機器2を診断する診断部52と、を備える。このような診断システム1によっても、これまで説明したように、フィールド機器2の異常や故障予測が可能になる。
【0085】
開示される技術特徴の組合せのいくつかの例を以下に記載する。
(1)
フィールド機器のパラメータと、診断モデルとを用いて、前記フィールド機器を診断する診断部、
を備え、
前記診断モデルは、フィールド機器のパラメータに対応するデータが入力されると、フィールド機器の状態を示すデータを出力するように機械学習された学習済みモデルであり、
前記フィールド機器の状態は、正常状態、異常予兆状態及び異常状態を含む、
診断装置。
(2)
前記フィールド機器のパラメータは、センサ値、測定値、設定情報、自己診断情報又はアラーム履歴情報の少なくとも1つを含む、
(1)に記載の診断装置。
(3)
前記診断部は、前記フィールド機器の状態が前記異常予兆状態であることをユーザに知らせるための診断情報を生成する、
(1)又は(2)に記載の診断装置。
(4)
前記診断モデルは、前記フィールド機器の状態が前記異常予兆状態である場合には、前記フィールド機器が異常状態になると予測される時期又は異常状態になると予測される箇所の少なくとも一方を示すデータも出力する、
(1)~(3)のいずれかに記載の診断装置。
(5)
前記フィールド機器は、パイプラインに接続された導圧管の圧力を計測する圧力伝送器を含み、
前記フィールド機器のパラメータは、前記導圧管の圧力値を示す測定値を含み、
前記フィールド機器の異常予兆状態は、前記導圧管の詰まり予兆状態を含む、
(1)~(4)のいずれかに記載の診断装置。
(6)
前記導圧管は、高圧側導圧管及び低圧側導圧管を含み、
前記フィールド機器のパラメータは、前記高圧側導圧管の圧力値を示す測定値、前記低圧側導圧管の圧力値を示す測定値、及び、それらの差圧値を示す測定値を含む、
(5)に記載の診断装置。
(7)
コンピュータに、
フィールド機器のパラメータと、診断モデルとを用いて、前記フィールド機器を診断する処理、
を実行させる診断プログラムであって、
前記診断モデルは、フィールド機器のパラメータに対応するデータが入力されると、フィールド機器の状態を示すデータを出力するように機械学習された学習済みモデルであり、
前記フィールド機器の状態は、正常状態、異常予兆状態及び異常状態を含む、
診断プログラム。
(8)
フィールド機器のパラメータと、診断モデルとを用いて、前記フィールド機器を診断すること、
を含む診断方法であって、
前記診断モデルは、フィールド機器のパラメータに対応するデータが入力されると、フィールド機器の状態を示すデータを出力するように機械学習された学習済みモデルであり、
前記フィールド機器の状態は、正常状態、異常予兆状態及び異常状態を含む、
診断方法。
(9)
フィールド機器と、
前記フィールド機器のパラメータを収集するユーザシステムと、
前記ユーザシステムによって収集されたフィールド機器のパラメータと、診断モデルとを用いて、前記フィールド機器を診断する診断部と、
を備える診断システムであって、
前記診断モデルは、フィールド機器のパラメータに対応するデータが入力されると、フィールド機器の状態を示すデータを出力するように機械学習された学習済みモデルであり、
前記フィールド機器の状態は、正常状態、異常予兆状態及び異常状態を含む、
診断システム。
【符号の説明】
【0086】
1 診断システム
2 フィールド機器
21 センサ部
22 演算部
23 設定部
24 自己診断部
25 メモリ管理部
26 表示部
27 通信IF部
3 フィールド機器コントローラ
4 ユーザシステム
4-1 ユーザシステム
4-2 ユーザシステム
5 診断装置
51 通信IF部
52 診断部
521 演算部
521a 診断モデル
522 診断情報生成部
53 メモリ管理部
6 パイプライン
7 オリフィス
8 導圧管
8-H 高圧側導圧管
8-L 低圧側導圧管
9 コンピュータ
91 通信装置
92 表示装置
93 記憶装置
931 プログラム
94 メモリ
95 プロセッサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14