(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114225
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】配線基板用接着シート、配線基板用積層体および配線基板
(51)【国際特許分類】
C09J 7/35 20180101AFI20240816BHJP
C09J 123/00 20060101ALI20240816BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240816BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240816BHJP
C09J 123/06 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
C09J7/35
C09J123/00
B32B27/32 E
H05K1/03 610H
C09J123/06
H05K1/03 610J
H05K1/03 630D
H05K1/03 630E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019859
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】小峯 和也
(72)【発明者】
【氏名】續木 淳朗
(72)【発明者】
【氏名】加藤 萩真
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AB01E
4F100AB33E
4F100AK03
4F100AK03A
4F100AK03B
4F100AK03C
4F100AK04A
4F100AK04C
4F100AK63
4F100AL08
4F100AL08A
4F100AL08C
4F100BA02
4F100BA03
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4F100BA07
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4F100JA04
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4F100JA04C
4F100JA06
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4F100JA06B
4F100JA06C
4F100JA13
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4J004AA07
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4J040DA021
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4J040JB01
4J040LA02
4J040LA06
4J040MA02
4J040MA10
4J040MB03
4J040NA19
(57)【要約】 (修正有)
【課題】配線に対する密着性が良好であり、樹脂の染み出しを抑制できる配線基板用接着シートを提供する。
【解決手段】絶縁基材と配線との間に配置される配線基板用接着シートであって、上記配線基板用接着シートが、第1層および第2層を有し、上記第1層が、ポリエチレン樹脂およびシラン変性ポリオレフィン樹脂を含有し、上記第1層の融点が120℃以下であり、上記第2層が、ポリオレフィン樹脂を含有し、上記配線基板用接着シートのメルトマスフローレート(MFR)が2.0g/10分以下である、配線基板用接着シートとする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基材と配線との間に配置される配線基板用接着シートであって、
前記配線基板用接着シートが、第1層および第2層を有し、
前記第1層が、ポリエチレン樹脂およびシラン変性ポリオレフィン樹脂を含有し、
前記第1層の融点が120℃以下であり、
前記第2層が、ポリオレフィン樹脂を含有し、
前記配線基板用接着シートのメルトマスフローレート(MFR)が2.0g/10分以下である、配線基板用接着シート。
【請求項2】
前記配線基板用接着シートが、前記第1層と前記第2層と第3層とをこの順に有し、
前記第3層が、ポリエチレン樹脂およびシラン変性ポリオレフィン樹脂を含有し、
前記第3層の融点が120℃以下である、請求項1に記載の配線基板用接着シート。
【請求項3】
前記配線基板用接着シートの160℃における溶融粘度が2000Pa・s以上である、請求項1に記載の配線基板用接着シート。
【請求項4】
前記第2層のメルトマスフローレート(MFR)が2.0g/10分以下である、請求項1に記載の配線基板用接着シート。
【請求項5】
絶縁基材と、請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の配線基板用接着シートと、金属箔とをこの順に有する配線基板用積層体であって、
前記配線基板用接着シートが、前記金属箔側から順に第1層および第2層を有する、配線基板用積層体。
【請求項6】
第1絶縁基材と、第1接着層と、配線と、第2接着層と、第2絶縁基材とをこの順に有する配線基板であって、
前記第1接着層および前記第2接着層の少なくとも一方が、請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の配線基板用接着シートであり、
前記配線基板用接着シートが、前記配線側から順に第1層および第2層を有する、配線基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線基板用接着シートならびにそれを用いた配線基板用積層体および配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種機器に動力となる電力と機器制御のための電気信号を伝達する役割を有するワイヤーハーネスが、自動車、電子電気機器や機械装置等の様々な分野で広く使用されている。
【0003】
従来、ワイヤーハーネスとしては、複数の電線が束ねられており、端部に多芯コネクタが取り付けられたものが多く用いられている。しかし、最近では、軽量化の要請に応じ、電線を、フレキシブルフラットケーブル(FFC)やフレキブル基板(FPC)等に置き換えることが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
FFCやFPC等においては、例えば、絶縁基材上に接着層を介して金属箔を積層し、金属箔をパターニングして配線を形成する。接着層は、配線に対する密着性が高いことが望まれる。しかし、本開示の発明者らが検討したところ、接着層の配線に対する密着性が高いと、接着層からの樹脂の染み出しが生じやすくなる場合があることが判明した。
【0006】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、配線に対する密着性が良好であり、樹脂の染み出しを抑制できる配線基板用接着シートを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態は、絶縁基材と配線との間に配置される配線基板用接着シートであって、上記配線基板用接着シートが、第1層および第2層を有し、上記第1層が、ポリエチレン樹脂およびシラン変性ポリオレフィン樹脂を含有し、上記第1層の融点が120℃以下であり、上記第2層が、ポリオレフィン樹脂を含有し、上記配線基板用接着シートのメルトマスフローレート(MFR)が2.0g/10分以下である、配線基板用接着シートを提供する。
【0008】
本開示の他の実施形態は、絶縁基材と、上述の配線基板用接着シートと、金属箔とをこの順に有する配線基板用積層体であって、上記配線基板用接着シートが、上記金属箔側から順に第1層および第2層を有する、配線基板用積層体を提供する。
【0009】
本開示の他の実施形態は、第1絶縁基材と、第1接着層と、配線と、第2接着層と、第2絶縁基材とをこの順に有する配線基板であって、上記第1接着層および上記第2接着層の少なくとも一方が、上述の配線基板用接着シートであり、上記配線基板用接着シートが、上記配線側から順に第1層および第2層を有する、配線基板を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本開示は、配線に対する密着性が良好であり、樹脂の染み出しを抑制できる配線基板用接着シートを提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示における配線基板用接着シートを例示する概略断面図である。
【
図2】本開示における配線基板用接着シートを例示する概略断面図である。
【
図3】本開示における配線基板用積層体を例示する概略断面図である。
【
図4】本開示における配線基板用積層体を例示する概略断面図である。
【
図5】本開示における配線基板を例示する概略断面図である。
【
図6】本開示における配線基板を例示する概略断面図である。
【
図7】本開示における配線基板を例示する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
下記に、図面等を参照しながら本開示の実施の形態を説明する。但し、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の態様の記載内容に限定して解釈されない。また、図面は説明をより明確にするため、実施の態様に比べ、各部材の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定しない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0013】
本明細書において、ある部材の上に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「面側に」または「面に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。
【0014】
また、本明細書において、「シート」、「フィルム」、「板」等の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されない。例えば、「シート」は、フィルムや板とも呼ばれるような部材も含む意味で用いられる。
【0015】
以下、本開示の配線基板用接着シートならびにそれを用いた配線基板用積層体および配線基板について、詳細に説明する。
【0016】
A.配線基板用接着シート
本開示における配線基板用接着シートは、絶縁基材と配線との間に配置される配線基板用接着シートであって、上記配線基板用接着シートが、第1層および第2層を有し、上記第1層が、ポリエチレン樹脂およびシラン変性ポリオレフィン樹脂を含有し、上記第1層の融点が120℃以下であり、上記第2層が、ポリオレフィン樹脂を含有し、上記配線基板用接着シートのメルトマスフローレート(MFR)が2.0g/10分以下である。
【0017】
図1および
図2は、本開示における配線基板用接着シートを例示する概略断面図である。
図1における配線基板用接着シート10は、第1層1と第2層2とを有する。
図2における配線基板用接着シート10は、第1層1と第2層2と第3層3とをこの順に有する。第1層1は、ポリエチレン樹脂およびシラン変性ポリオレフィン樹脂を含有し、第1層1の融点は所定の範囲である。第2層2は、ポリオレフィン樹脂を含有する。配線基板用接着シート10のMFRは所定の範囲内である。後述するように、第3層3は、ポリエチレン樹脂およびシラン変性ポリオレフィン樹脂を含有し、第3層3の融点は所定の範囲である。
【0018】
本開示においては、第1層の融点が所定の範囲であることにより、第1層に含有される樹脂の流動性を良くすることができる。また、第1層は、ポリエチレン樹脂に加えてシラン変性ポリオレフィン樹脂を含有する。よって、第1層の配線に対する密着性を向上できる。
【0019】
また、本開示においては、配線基板用接着シートのMFRが所定の範囲であることにより、絶縁基材と配線基板用接着シートと金属箔とのラミネート加工時や、配線基板の使用時において、樹脂の染み出しを抑制できる。よって、配線基板の接続信頼性を高めることができる。また、樹脂の染み出しによるべたつきの発生も抑制できる。
【0020】
このように本開示における配線基板用接着シートは、少なくとも第1層および第2層を有し、第1層が所定の組成および物性を有し、配線基板用接着シートが所定の物性を有することにより、配線基板に用いた場合に、配線に対する密着性と、樹脂の染み出しの抑制とを両立することが可能である。
【0021】
以下、本開示における配線基板用接着シートについて、構成毎に説明する。
【0022】
1.第1層
本開示における第1層は、ポリエチレン樹脂およびシラン変性ポリオレフィン樹脂を含有し、第1層の融点は所定の範囲内である。絶縁基材と配線との間に配線基板用接着シートを配置する場合、第1層が配線に接するように配置される。
【0023】
(1)第1層の材料
本開示における第1層は、ポリエチレン樹脂およびシラン変性ポリオレフィン樹脂を含有する。
【0024】
(a)ポリエチレン樹脂
第1層において、ポリエチレン樹脂は、ベース樹脂として含まれる。ベース樹脂とは、第1層に含まれる全樹脂成分のうち含有量の最も多い樹脂をいう。
【0025】
ポリエチレン樹脂には、エチレンを重合して得られる通常のポリエチレンのみならず、エチレンとα-オレフィンとの共重合体が含まれる。
【0026】
α-オレフィンとしては、例えば、炭素数3以上12以下のα-オレフィンが挙げられる。具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ヘプテン、4-メチル-ペンテン-1、4-メチル-ヘキセン-1、4,4-ジメチルペンテン-1が挙げられる。α-オレフィンは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
エチレンとα-オレフィンとの共重合体の具体例としては、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体、エチレン-4-メチル-ペンテン-1共重合体が挙げられる。
【0028】
ポリエチレン樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(M-LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)が挙げられる。ポリエチレン樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
中でも、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(M-LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)が好ましく、メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(M-LLDPE)がより好ましい。メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(M-LLDPE)は、シングルサイト触媒であるメタロセン触媒を用いて合成される。このようなメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンは、側鎖の分岐が少なく、コモノマーの分布が均一である。このため、分子量分布が狭く、低密度にすることが可能であり、柔軟性を付与できる。その結果、配線に対する密着性を良くすることができる。また、ポリエチレン樹脂は、密度が低いと、結晶化度が低くなる傾向にある。そのため、これらのポリエチレン樹脂であれば、第1層の透明性を良くすることができる。
【0030】
ポリエチレン樹脂の密度は、第2層に含まれるポリエチレン樹脂の密度よりも低いことが好ましい。第1層に含まれるポリエチレン樹脂の密度が、第2層に含まれるポリエチレン樹脂の密度よりも低いことにより、第1層に含まれるポリエチレン樹脂の流動性を、第2層に含まれるポリエチレン樹脂の流動性よりも高くすることができる。すなわち、第2層に含まれるポリエチレン樹脂の流動性を、第1層に含まれるポリエチレン樹脂の流動性よりも低くすることができる。よって、第1層と配線との密着性を向上しつつ、配線基板用接着シートを用いて配線基板を製造する過程や、配線基板の使用時において、樹脂の染み出しを抑制できる。具体的には、ポリエチレン樹脂の密度は、0.915g/cm3以下が好ましく、0.910g/cm3以下がより好ましく、0.905g/cm3以下がさらに好ましい。また、ポリエチレン樹脂の密度は、0.870g/cm3以上が好ましく、0.875g/cm3以上がより好ましい。すなわち、ポリエチレン樹脂の密度は、0.870g/cm3以上0.915g/cm3以下が好ましく、0.875g/cm3以上0.910g/cm3以下がより好ましく、0.875g/cm3以上0.905g/cm3以下がさらに好ましい。
【0031】
ここで、ポリエチレン樹脂の密度は、JIS K7112:1999に準拠するピクノメーター法により測定する。
【0032】
ポリエチレン樹脂のMFRは、第2層に含まれるポリエチレン樹脂のMFRよりも高いことが好ましい。第1層に含まれるポリエチレン樹脂のMFRが、第2層に含まれるポリエチレン樹脂のMFRよりも高いことにより、第1層に含まれるポリエチレン樹脂の流動性を、第2層に含まれるポリエチレン樹脂の流動性よりも高くすることができる。すなわち、第2層に含まれるポリエチレン樹脂の流動性を、第1層に含まれるポリエチレン樹脂の流動性よりも低くすることができる。よって、第1層と配線との密着性を向上しつつ、配線基板用接着シートを用いて配線基板を製造する過程や、配線基板の使用時において、樹脂の染み出しを抑制できる。具体的には、ポリエチレン樹脂のMFRは、0.7g/10分以上が好ましく、0.9g/10分以上がより好ましく、1.0g/10分以上がさらに好ましい。ポリエチレン樹脂のMFRが上記範囲であることにより、流動性が良好になり、配線に対する密着性を向上できる。一方、ポリエチレン樹脂のMFRは、例えば、7.0g/10分以下であり、6.0g/10分以下であってもよく、5.0g/10分以下であってもよい。ポリエチレン樹脂のMFRが大きすぎると、配線基板用接着シートを用いて配線基板を製造する過程や、配線基板の使用時において、樹脂の染み出しが生じやすくなる可能性がある。すなわち、ポリエチレン樹脂のMFRは、0.7g/10分以上7.0g/10分以下が好ましく、0.9g/10分以上6.0g/10分以下がより好ましく、1.0g/10分以上5.0g/10分以下がさらに好ましい。
【0033】
ここで、ポリエチレン樹脂のMFRは、JIS K7210-1:2014のA法に準拠して測定する。測定条件は、温度190℃、荷重2.16kgとする。
【0034】
第1層中の全樹脂成分に対するポリエチレン樹脂の割合は、例えば、50質量%以上であり、60質量%以上であってもよく、70質量%以上であってもよい。また、上記ポリエチレン樹脂の割合は、例えば、99質量%以下であり、95質量%以下であってもよく、90質量%以下であってもよい。すなわち、上記ポリエチレン樹脂の割合は、例えば、50質量%以上99質量%以下であり、60質量%以上95質量%以下であってもよく、70質量%以上95質量%以下であってもよい。
【0035】
(b)シラン変性ポリオレフィン樹脂
シラン変性ポリオレフィン樹脂は、α-オレフィンとエチレン性不飽和シラン化合物との共重合体である。上記共重合体は、例えば、ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、およびグラフト共重合体のいずれであってもよい。中でも、上記共重合体は、グラフト共重合体であることが好ましく、ポリオレフィンを主鎖とし、エチレン性不飽和シラン化合物が側鎖として重合したグラフト共重合体であることが好ましい。このようなグラフト共重合体は、密着性に寄与するシラノール基の自由度が高くなるため、配線に対する密着性を向上できる。
【0036】
シラン変性ポリオレフィン樹脂を構成するα-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセンが挙げられる。α-オレフィンは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、ポリエチレンが好ましい。すなわち、シラン変性ポリオレフィン樹脂は、シラン変性ポリエチレン樹脂であることが好ましい。上記ポリエチレン樹脂とシラン変性ポリエチレン樹脂との相溶性が良いからである。
【0037】
また、シラン変性ポリエチレン樹脂は、主鎖として直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)にエチレン性不飽和シラン化合物を側鎖としてグラフト重合させた樹脂であることが好ましい。
【0038】
上記エチレン性不飽和シラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルトリペンチロキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、ビニルトリベンジルオキシシラン、ビニルトリメチレンジオキシシラン、ビニルトリエチレンジオキシシラン、ビニルプロピオニルオキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリカルボキシシランを挙げることができる。エチレン性不飽和シラン化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
シラン変性ポリオレフィン樹脂は、例えば、特開2003-46105号公報に記載されている製造方法により得ることができる。
【0040】
シラン変性ポリオレフィン樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
第1層中のシラン変性ポリオレフィン樹脂の含有量は、例えば、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。また、上記シラン変性ポリオレフィン樹脂の含有量は、例えば、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。すなわち、上記シラン変性ポリオレフィン樹脂の含有量は、例えば、1質量%以上50質量%以下が好ましく、3質量%以上40質量%以下がより好ましく、5質量%以上30質量%以下がさらに好ましい。シラン変性ポリオレフィン樹脂の含有量が少なすぎると、シラン変性ポリオレフィン樹脂による密着性向上の効果が十分に得られない可能性がある。一方、シラン変性ポリオレフィン樹脂の含有量が多すぎると、熱溶着性に劣る傾向がある。
【0042】
(c)他の成分
第1層は、ベース樹脂として上記ポリエチレン樹脂を含有し、さらに上記シラン変性ポリオレフィン樹脂を含有していればよく、上記ポリエチレン樹脂および上記シラン変性ポリオレフィン樹脂以外の他の樹脂を含有していてもよい。
【0043】
第1層は、必要に応じて、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤、アンチブロッキング剤、滑剤、核剤、分散剤、レベリング剤、可塑剤、消泡剤、難燃剤、フィラー等の添加剤を含有していてもよい。
【0044】
(2)第1層の物性
第1層の融点は、120℃以下であり、115℃以下が好ましく、110℃以下がより好ましい。第1層の融点が上記範囲であることにより、流動性が良好になり、配線に対する密着性を向上できる。一方、第1層の融点は、例えば、40℃以上であり、45℃以上であってもよく、50℃以上であってもよい。第1層の融点が低すぎると、配線基板用接着シートを用いて配線基板を製造する過程や、配線基板の使用時において、樹脂の染み出しが生じやすくなる可能性や、配線基板の使用環境において融解する可能性がある。すなわち、第1層の融点は、40℃以上120℃以下が好ましく、45℃以上115℃以下がより好ましく、50℃以上110℃以下がさらに好ましい。
【0045】
ここで、第1層の融点は、JIS K7121:2012のプラスチックの転移温度測定方法に準拠し、示差走査熱量分析(DSC)により測定する。なお、第1層にはポリエチレン樹脂およびシラン変性ポリオレフィン樹脂が含まれるため、DSC曲線においては融解ピークが2つ以上存在することがある。この場合、吸熱量が最も多い融解ピークの温度を、第1層の融点とする。第1層は、ベース樹脂としてポリエチレン樹脂を含有するため、第1層の融点は、ポリエチレン樹脂の融点と同じになることが多い。
【0046】
2.第2層
本開示における第2層は、ポリオレフィン樹脂を含有する。
【0047】
(1)第2層の材料
(a)ポリオレフィン樹脂
第2層において、ポリオレフィン樹脂は、ベース樹脂として含まれる。ベース樹脂とは、第2層に含まれる全樹脂成分のうち含有量の最も多い樹脂をいう。
【0048】
オレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂が挙げられる。中でも、ポリエチレン樹脂が好ましい。
【0049】
ポリエチレン樹脂については、上記第1層に用いられるポリエチレン樹脂と同様である。
【0050】
ポリエチレン樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(M-LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)が挙げられる。ポリエチレン樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
中でも、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(M-LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)が好ましく、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)がより好ましい。また、上述したように、ポリエチレン樹脂は、密度が低いと、結晶化度が低くなる傾向にある。そのため、これらのポリエチレン樹脂であれば、第2層の透明性を良くすることができる。
【0052】
ポリエチレン樹脂の密度は、上述したように、第1層に含まれるポリエチレン樹脂の密度よりも高いことが好ましい。具体的には、ポリエチレン樹脂の密度は、0.895g/cm3以上が好ましく、0.900g/cm3以上がより好ましく、0.905g/cm3以上がさらに好ましい。また、ポリエチレン樹脂の密度は、0.940g/cm3以下が好ましく、0.935g/cm3以下がより好ましく、0.930g/cm3以下がさらに好ましい。すなわち、ポリエチレン樹脂の密度は、0.895g/cm3以上0.940g/cm3以下が好ましく、0.900g/cm3以上0.935g/cm3以下がより好ましく、0.905g/cm3以上0.930g/cm3以下がさらに好ましい。
【0053】
ポリエチレン樹脂のMFRは、上述したように、第1層に含まれるポリエチレン樹脂のMFRよりも低いことが好ましい。具体的には、ポリエチレン樹脂のMFRは、2.0g/10分以下が好ましく、1.9g/10分以下がより好ましく、1.8g/10分以下がさらに好ましい。また、ポリエチレン樹脂のMFRは、2.0g/10分以下が好ましく、1.9g/10分以下がより好ましく、1.8g/10分以下がさらに好ましい。すなわち、ポリエチレン樹脂のMFRは、0.5g/10分以上2.0g/10分以下が好ましく、0.6g/10分以上1.9g/10分以下がより好ましく、0.7g/10分以上1.8g/10分以下がさらに好ましい。ポリエチレン樹脂のMFRが上記範囲内であることにより、配線基板用接着シートを用いて配線基板を製造する過程や、配線基板の使用時において、樹脂の染み出しを抑制できる。
【0054】
第2層中の全樹脂成分に対するポリオレフィン樹脂の割合は、例えば、50質量%以上であり、60質量%以上であってもよく、70質量%以上であってもよい。また、上記ポリエチレン樹脂の割合は、例えば、99質量%以下であり、95質量%以下であってもよく、90質量%以下であってもよい。上記ポリオレフィン樹脂の割合は、100質量%であってもよい。すなわち、上記ポリオレフィン樹脂の割合は、例えば、50質量%以上99質量%以下であり、60質量%以上95質量%以下であってもよく、70質量%以上90質量%以下であってもよい。
【0055】
(b)他の成分
第2層は、ベース樹脂として上記ポリオレフィン樹脂を含有していればよく、上記ポリオレフィン樹脂以外の他の樹脂を含有していてもよい。例えば、第2層は、シラン変性ポリオレフィン樹脂を含有していてもよく、含有していなくてもよい。
【0056】
第2層は、必要に応じて、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤、アンチブロッキング剤、滑剤、核剤、分散剤、レベリング剤、可塑剤、消泡剤、難燃剤、フィラー等の添加剤を含有していてもよい。
【0057】
(2)第2層の物性
第2層の融点は、第1層の融点よりも高いことが好ましい。第2層の融点が、第1層の融点よりも高いことにより、第2層に含まれる樹脂の流動性を、第1層に含まれる樹脂の流動性よりも低くすることができる。すなわち、第1層に含まれる樹脂の流動性を、第2層に含まれる樹脂の流動性よりも高くすることができる。よって、第1層と配線との密着性を向上しつつ、配線基板用接着シートを用いて配線基板を製造する過程や、配線基板の使用時において、樹脂の染み出しを抑制できる。具体的には、第2層の融点は、90℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、110℃以上がさらにより好ましい。また、第2層の融点は、140℃以下が好ましく、135℃以下がより好ましく、130℃以下がさらに好ましい。すなわち、第2層の融点は、90℃以上140℃以下が好ましく、100℃以上135℃以下がより好ましく、110℃以上130℃以下がさらに好ましい。
【0058】
ここで、第2層の融点の測定方法は、上記第1層の融点の測定方法と同様である。なお、DSC曲線において、融解ピークが2つ以上存在する場合、吸熱量が最も多い融解ピークの温度を、第2層の融点とする。第2層は、ベース樹脂としてポリオレフィン樹脂を含有するため、第2層の融点は、ポリオレフィン樹脂の融点と同じになることが多い。
【0059】
第2層のMFRは、上述したように、第1層に含まれるポリエチレン樹脂のMFRよりも低いことが好ましい。具体的には、第2層のMFRは、2.0g/10分以下が好ましく、1.9g/10分以下がより好ましく、1.8g/10分以下がさらに好ましい。また、第2層のMFRは、2.0g/10分以下が好ましく、1.9g/10分以下がより好ましく、1.8g/10分以下がさらに好ましい。すなわち、第2層のMFRは、0.5g/10分以上2.0g/10分以下が好ましく、0.6g/10分以上1.9g/10分以下がより好ましく、0.7g/10分以上1.8g/10分以下がさらに好ましい。第2層のMFRが上記範囲内であることにより、配線基板用接着シートを用いて配線基板を製造する過程や、配線基板の使用時において、樹脂の染み出しを抑制できる。
【0060】
ここで、第2層のMFRは、JIS K7210-1:2014のA法に準拠して測定する。測定条件は、温度190℃、荷重2.16kgとする。
【0061】
3.第3層
本開示における配線基板用接着シートは、第1層と第2層と第3層とをこの順に有することが好ましい。第3層は、ポリエチレン樹脂およびシラン変性ポリオレフィン樹脂を含有し、第3層の融点は所定の範囲内である。第1層と第2層と第3層とが順に配置されていることにより、絶縁基材に対する密着性も向上できる。
【0062】
ポリエチレン樹脂およびシラン変性ポリオレフィン樹脂については、上記第1層に用いられるポリエチレン樹脂およびシラン変性ポリオレフィン樹脂と同様である。
【0063】
第3層に含まれるポリエチレン樹脂は、上記第1層に含まれるポリエチレン樹脂と同じであってもよく、異なっていてもよい。同様に、第3層に含まれるシラン変性ポリオレフィン樹脂は、上記第1層に含まれるシラン変性ポリオレフィン樹脂と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0064】
第3層の融点については、上記第1層の融点と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0065】
4.配線基板用接着シートの物性
(1)MFR
本開示における配線基板用接着シートのMFRは、2.0g/10分以下であり、1.7g/10分以下が好ましく、1.5g/10分以下がより好ましい。上記MFRが上記範囲であることにより、配線基板用接着シートを用いて配線基板を製造する過程や、配線基板の使用時において、樹脂の染み出しを抑制できる。一方、配線基板用接着シートのMFRは、例えば、0.3g/10分以上であり、0.4g/10分以上であってもよく、0.5g/10分以上であってもよい。上記MFRが小さすぎると、配線に対する密着性が低下する可能性がある。すなわち、配線基板用接着シートのMFRは、0.3g/10分以上2.0g/10分以下であり、0.4g/10分以上1.7g/10分以下が好ましく、0.5g/10分以上1.5g/10分以下がより好ましい。
【0066】
ここで、配線基板用接着シートのMFRは、JIS K7210-1:2014のA法に準拠して測定する。測定条件は、温度190℃、荷重2.16kgとする。なお、配線基板用接着シートは、第1層および第2層を少なくとも有する積層体である。MFRを測定する際には、積層体の状態のままで測定を行う。
【0067】
(2)160℃における溶融粘度
本開示における配線基板用接着シートの160℃における溶融粘度は、例えば、2000Pa・s以上が好ましく、3000Pa・s以上がより好ましく、4000Pa・s以上がさらに好ましい。上記溶融粘度が上記範囲であることにより、配線基板用接着シートを用いて配線基板を製造する過程や、配線基板の使用時において、樹脂の染み出しを抑制できる。一方、配線基板用接着シートの160℃における溶融粘度、例えば、10000Pa・s以下であり、9000Pa・s以下であってもよく、8000Pa・s以下であってもよい。上記溶融粘度が大きすぎると、配線に対する密着性が低下する可能性がある。すなわち、配線基板用接着シートの160℃における溶融粘度は、2000Pa・s以上10000Pa・s以下が好ましく、3000Pa・s以上9000Pa・s以下がより好ましく、4000Pa・s以上8000Pa・s以下がさらに好ましい。
【0068】
ここで、配線基板用接着シートの溶融粘度は、JIS K7199:1999に準拠して測定する。測定条件は、温度160℃、せん断速度2.43×10sec-1とする。また、測定は、D=1mm、L/D=10のキャピラリーを用いて行う。キャピラリーレオメータは、例えば東洋精機製作所製のキャピログラフ1-Bを用いることができる。
【0069】
なお、絶縁基材と配線基板用接着シートと金属箔とをラミネート加工する場合、ラミネート加工時の加熱温度は、例えば160℃前後に設定される。そこで、ラミネート加工時の樹脂の流動性に着目し、160℃における溶融粘度を所定の範囲とした。
【0070】
(3)全光線透過率
本開示における配線基板用接着シートの全光線透過率は、特に限定されないが、例えば、65%以上であり、70%以上であってもよく、75%以上であってもよい。例えば、配線基板用接着シートを用いて配線基板を作製した後、配線を束ねてワイヤーハーネスとする場合、配線基板用接着シートの全光線透過率が上記範囲であれば、配線を視認でき、配線の本数を確認できる。全光線透過率は、JIS K7361-1:1997に準拠して測定する。装置としては、例えば、村上色彩技術研究所社製のヘーズメーター「HM-150」を使用できる。
【0071】
(4)ヘーズ
本開示における配線基板用接着シートのヘーズは、特に限定されないが、例えば、40%以下であり、30%以下であってもよく、25%以下であってもよい。上述したように、例えば、配線基板用接着シートを用いて配線基板を作製した後、配線を束ねてワイヤーハーネスとする場合、配線基板用接着シートのヘーズが上記範囲であれば、配線を視認でき、配線の本数を確認できる。ヘーズは、JIS K7136:2000に準拠して測定する。装置としては、例えば、村上色彩技術研究所社製のヘーズメーター「HM-150」を使用できる。
【0072】
(5)密着強度
本開示における配線基板用接着シートの銅板に対する密着強度は、例えば、10N/50mm以上が好ましく、15N/50mm以上がより好ましく、20N/50mm以上がさらに好ましい。上記密着強度が上記範囲であれば、配線に対する密着性が良好である。上記密着強度は大きいほど好ましく、上限は特に限定されないが、例えば、300N/50mm以下である。
【0073】
ここで、配線基板用接着シートの銅板に対する密着強度は、下記方法により測定する。まず、配線基板用接着シートを50mm幅にカットする。この配線基板用接着シートの第1層の面を、厚さ0.15mm、大きさ75mm×50mmの銅板の一方の面に密着させて、下記真空加熱ラミネート条件にて、真空加熱ラミネータ処理を行い、サンプルを得る。銅板については、ニラコ社製の厚さ0.20mmの純銅からなる銅板を準備し、上記銅板の配線基板用接着シートを配置する面をエタノールで脱脂して用いる。このサンプルについて、剥離試験機(エー・アンド・デイ社製のテンシロン万能試験機「RTF-1150-H」)を用いて、剥離速度50mm/minにて垂直剥離試験を行い、配線基板用接着シートの銅板に対する密着強度を測定する。
<真空加熱ラミネート条件>
(a)真空引き:4.0分
(b)加圧:0kPaから100kPaに1.5分かけて圧力を上昇
(c)圧力保持(100kPa):11.0分
(d)温度:160℃
【0074】
また、配線基板用接着シートのアルミニウム板に対する密着強度は、例えば、10N/50mm以上が好ましく、15N/50mm以上がより好ましく、20N/50mm以上がさらに好ましい。上記密着強度が上記範囲であれば、配線に対する密着性が良好である。上記密着強度は大きいほど好ましく、上限は特に限定されないが、例えば、300N/50mm以下である。
【0075】
ここで、配線基板用接着シートのアルミニウム板に対する密着強度の測定方法は、銅板に替えてアルミニウム板を用いること以外は、上記の配線基板用接着シートの銅板に対する密着強度の測定方法と同様である。アルミニウム板については、日本タクト社製の厚さ0.15mmのアルミニウム板を準備し、上記アルミニウム板の配線基板用接着シートを配置する面をエタノールで脱脂して用いる。
【0076】
5.配線基板用接着シートの厚さ
本開示における配線基板用接着シートが、第1層および第2層を有し、第3層を有さない場合、第1層の厚さに対する第2層の厚さの比(第2層の厚さ/第1層の厚さ)は、例えば、0.1以上100以下であり、0.1以上50以下であってもよく、1以上100以下であってもよく、1以上50以下であってもよい。
【0077】
また、本開示における配線基板用接着シートが、第1層と第2層と第3層とをこの順に有する場合、第1層の厚さと第3層の厚さとは同じであることが好ましい。また、この場合、第1層の厚さに対する第2層の厚さの比(第2層の厚さ/第1層の厚さ)は、例えば、0.1以上100以下であり、0.1以上50以下であってもよく、1以上100以下であってもよく、1以上50以下であってもよい。
【0078】
第2層の厚さが相対的に厚い場合には、配線基板用接着シートを用いて配線基板を製造する過程や、配線基板の使用時において、配線基板用接着シートの厚さを維持しやすく、配線基板の接続信頼性を高めることができる。また、第1の厚さが相対的に薄すぎると、配線に対する密着性が低下する可能性がある。
【0079】
第1層の厚さは、例えば、1μm以上であり、5μm以上であってもよく、10μm以上であってもよい。また、第1層の厚さは、例えば、500μm以下であり、400μm以下であってもよく、300μm以下であってもよい。すなわち、第1層の厚さは、例えば、1μm以上500μm以下であり、5μm以上400μm以下であってもよく、10μm以上300μm以下であってもよい。第1層の厚さが上記範囲内であれば、配線に対する密着性を向上できる。
【0080】
また、第2層の厚さは、例えば、10μm以上であり、50μm以上であってもよく、70μm以上であってもよい。また、第2層の厚さは、例えば、700μm以下であり、600μm以下であってもよく、500μm以下であってもよい。すなわち、第2層の厚さは、例えば、10μm以上700μm以下であり、50μm以上600μm以下であってもよく、70μm以上500μm以下であってもよい。第2層の厚さが上記範囲内であれば、配線基板用接着シートを用いて配線基板を製造する過程や、配線基板の使用時において、配線基板用接着シートの厚さを維持しやすく、配線基板の接続信頼性を高めることができる。
【0081】
なお、本明細書における「厚さ」は、マイクロメートルオーダーのサイズを測定可能な公知の測定方法を用いて測定する。例えば、配線基板用接着シートの断面サンプルを作製し、断面の光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡(SEM)による観察像を用いて、厚さを測定できる。接触式膜厚測定装置を使用することもできる。接触式膜厚測定装置としては、例えば、ミツトヨ社製シックネスゲージ547-301が挙げられる。
【0082】
6.配線基板用接着シート
本開示における配線基板用接着シートは、第1層、第2層および第3層以外に他の層を有していてもよい。
【0083】
本開示における配線基板用接着シートの製造方法としては、特に限定されず、例えば、各層を一体に多層として成形する方法が挙げられる。多層の成形方法としては、一例として、2種以上の溶融混練押出機による共押出により成形する方法が挙げられる。また、各層を接着層を介して積層することもできる。
【0084】
本開示における配線基板用接着シートは、絶縁基材と配線との接合に用いられる。本開示における配線基板用接着シートの用途としては、例えば、フレキシブルフラットケーブル(FFC)、フレキシブル基板(FPC)を挙げることができ、より具体的には、ワイヤーハーネスが挙げられる。絶縁基材および配線については、後述する。
【0085】
B.配線基板用積層体
本開示における配線基板用積層体は、絶縁基材と、上述の配線基板用接着シートと、金属箔とをこの順に有する配線基板用積層体であって、上記配線基板用接着シートが、上記金属箔側から順に第1層および第2層を有する。
【0086】
図3および
図4は、本開示における配線基板用積層体を例示する概略断面図である。
図3および
図4に例示するように、配線基板用積層体20は、絶縁基材11と、配線基板用接着シート10と、金属箔12とをこの順に有する。
図3における配線基板用接着シート10は、金属箔12側から順に第1層1および第2層2を有する。
図4における配線基板用接着シート10は、金属箔12側から順に第1層1と第2層2と第3層3とを有する。
【0087】
以下、本開示における配線基板用積層体について、構成毎に説明する。
【0088】
1.配線基板用接着シート
本開示における配線基板用接着シートは、金属箔側から順に第1層および第2層を有する。中でも、配線基板用接着シートは、金属箔側から順に第1層と第2層と第3層とを有することが好ましい。
【0089】
配線基板用接着シートについては、上述の配線基板用接着シートと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0090】
2.絶縁基材
本開示における絶縁基材は、一般に配線基板に用いられる絶縁基材であれば特に限定されない。絶縁基材の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)が挙げられる。
【0091】
3.金属箔
本開示における金属箔は、上記接着シートの第1層と接していることが好ましい。
【0092】
金属箔の金属材料としては、例えば、銅、アルミニウム、金、銀、ステンレス、チタン、ニッケルが挙げられる。中でも、銅、アルミニウムが好ましい。特に、加工性やコストの観点から、銅が好ましく、すなわち、銅箔が好ましい。また、銅箔は、圧延銅箔であってもよく、電解銅箔であってもよい。
【0093】
金属箔の厚さは、例えば、1μm以上であり、5μm以上であってもよく、10μm以上であってもよい。一方、金属箔の厚さは、例えば、200μm以下であり、100μm以下であってもよく、50μm以下であってもよい。
【0094】
4.配線基板用積層体
本開示における配線基板用積層体の製造方法は、特に限定されないが、絶縁基材と配線基板用接着シートと金属箔とを積層した後、積層体を真空熱プレスや真空ラミネート等により一体化する工程を有する製造方法が挙げられる。
【0095】
本開示における配線基板用積層体は、後述の配線基板を製造するための積層体として好適に用いられる。
【0096】
C.配線基板
本開示における配線基板は、第1絶縁基材と、第1接着層と、配線と、第2接着層と、第2絶縁基材とをこの順に有する配線基板であって、上記第1接着層および上記第2接着層の少なくとも一方が上述の接配線基板用着シートであり、上記接配線基板用着シートが、上記配線側から順に第1層および第2層を有する。
【0097】
図5~7は、本開示における配線基板を例示する概略断面図である。
図5~7に例示するように、配線基板30は、第1絶縁基材31と、第1接着層32と、配線33と、第2接着層34と、第2絶縁基材35とをこの順に有する。
図5および
図6において、第1接着層31および第2接着層34は、配線基板用接着シート10である。
図7において、第2接着層34は、配線基板用接着シート10である。
図5および
図7における配線基板用接着シート10は、配線33側から順に第1層1および第2層2を有する。
図6における配線基板用接着シート10は、配線33側から順に第1層1と第2層2と第3層3とを有する。
【0098】
以下、本開示における配線基板について、構成毎に説明する。
【0099】
1.第1接着層および第2接着層
本開示において、第1接着層および第2接着層の少なくとも一方は、上述の配線基板用接着シートである。第1接着層および第2接着層の両方が、上記配線基板用接着シートであってもよく、第1接着層のみが上記配線基板用接着シートであってもよく、第2接着層のみが上記配線基板用接着シートであってもよい。
【0100】
上記配線基板用接着シートは、配線側から順に第1層および第2層を有する。中でも、上記配線基板用接着シートは、配線側から順に第1層と第2層と第3層とを有することが好ましい。
【0101】
配線基板用接着シートについては、上述の配線基板用接着シートと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0102】
配線基板は、例えば、第1絶縁基材と第1接着層と配線とを有する積層体を作製した後、上記積層体の配線を覆うように、第2接着層および第2絶縁基材を積層することにより製造できる。この場合、少なくとも第2接着層が上記配線基板用接着シートであることが好ましい。上記配線基板用接着シートの第1層は、樹脂の流動性が良好であるため、配線による凹凸への追従性を向上できる。
【0103】
第1接着層および第2接着層の一方が上記配線基板用接着シートではない場合、一般に配線基板に用いられる接着層を適用できる。接着層は、接着剤を塗布して形成してもよく、接着シートを用いてもよい。
【0104】
2.第1絶縁基材および第2絶縁基材
絶縁基材については、上述の配線基板用積層体に用いられる絶縁基材と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0105】
3.配線
配線は、例えば、金属箔をパターニングすることにより形成できる。金属箔については、上述の配線基板用積層体に用いられる金属箔と同様であるので、ここでの説明は省略する。金属箔のパターニング方法としては、例えば、エッチング加工、打ち抜き加工が挙げられる。
【0106】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示の技術的範囲に包含される。
【実施例0107】
以下、実施例および比較例を示し、本開示をさらに詳細に説明する。
【0108】
[材料]
配線基板用接着シートの各層を形成するための樹脂組成物に用いた樹脂成分および添加剤を下記に示す。
【0109】
・ポリエチレン樹脂A
メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(M-LLDPE)、密度0.901g/cm3、融点93℃、MFR2.0g/10分(190℃、2.16kg、A法))
・ポリエチレン樹脂B
メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(M-LLDPE)、密度0.880g/cm3、融点60℃、MFR3.5g/10分(190℃、2.16kg、A法)
・ポリエチレン樹脂C
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、密度0.921g/cm3、融点121℃、MFR1.0g/10分(190℃、2.16kg、A法)
・ポリエチレン樹脂D
低密度ポリエチレン(LDPE)、密度0.928g/cm3、融点116℃、MFR0.9g/10分(190℃、2.16kg、A法)
・ポリエチレン樹脂E
直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、密度0.920g/cm3、融点123℃、MFR2.1g/10分(190℃、2.16kg、A法)
・シラン変性ポリオレフィン樹脂A
密度0.902g/cm3、融点90℃、MFR1.0g/10分(190℃、2.16kg、A法)
・シラン変性ポリオレフィン樹脂B
密度0.930g/cm3、融点125℃、MFR0.4g/10分(190℃、2.16kg、A法)
【0110】
[比較例1]
上記の樹脂成分および添加剤を用い、下記表1に示す組成にて、樹脂組成物を調製した。φ30mm押出機、300mm幅のTダイを有するフィルム成形機を用いて、樹脂組成物を押出し温度210℃で溶融し、配線基板用接着シートの厚さが125μmとなるように調整して、押出しすることにより、単層の配線基板用接着シートを得た。
【0111】
[実施例1~4および比較例2~3]
上記の樹脂成分および添加剤を用い、下記表1に示す組成にて、第1層、第2層、第3層の各層を形成するための樹脂組成物を調製した。φ30mm押出機、300mm幅のTダイを有するフィルム成形機を用いて、各樹脂組成物を押出し温度210℃で溶融し、各層の厚さの比が表1に示す比、配線基板用接着シートの厚さが125μmとなるように調整して、3層共押出しすることにより、第1層と第2層と第3層とがこの順に積層された配線基板用接着シートを得た。
【0112】
[評価]
(1)160℃における溶融粘度
JIS K7199:1999に準拠して、東洋精機製作所製のキャピログラフ1-Bを用い、温度:160℃、せん断速度:2.43×10sec-1にて、D=1mm、L/D=10のキャピラリーを用いて、配線基板用接着シートの160℃における溶融粘度を測定した。
【0113】
(2)Alに対する密着強度
上記の「A.配線基板用接着シート 4.配線基板用接着シートの物性 (5)密着強度に記載の方法により、配線基板用接着シートのAl板に対する密着強度を測定した。
【0114】
(3)Cuに対する密着強度
上記の「A.配線基板用接着シート 4.配線基板用接着シートの物性 (5)密着強度に記載の方法により、配線基板用接着シートのCu板に対する密着強度を測定した。
【0115】
(4)染み出し量
配線基板用接着シートの中心部を50mm×75mmの長方形に型抜きした。200mm角のアルミニウム板と、配線基板用接着シートと、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムとをこの順に重ねて、下記真空加熱ラミネート条件にて、真空加熱ラミネータ処理を行い、染み出し量用サンプルを得た。染み出し量用サンプルについて、型抜きした部分から染み出し量を、大山光学社製のガラススケール「PL-301」を用いて評価した。
<真空加熱ラミネート条件>
(a)真空引き:4.0分
(b)加圧:0kPaから100kPaに1.5分かけて圧力を上昇
(c)圧力保持(100kPa):11.0分
(d)温度:160℃
【0116】
(5)全光線透過率
配線基板用接着シートの全光線透過率を、JIS K7361-1:1997に準拠して、村上色彩技術研究所社製のヘーズメーターHM150を用いて測定した。
【0117】
(6)ヘーズ
配線基板用接着シートのヘーズを、JIS K7136:2000に準拠して、村上色彩技術研究所社製のヘーズメーターHM150を用いて測定した。
【0118】
【0119】
【0120】
表1~2より、本開示における配線基板用接着シートにおいては、配線に対する密着性に優れており、樹脂の染み出しが抑制されていた。
【0121】
本開示においては、例えば、以下の発明が提供される。
[1]
絶縁基材と配線との間に配置される配線基板用接着シートであって、
上記配線基板用接着シートが、第1層および第2層を有し、
上記第1層が、ポリエチレン樹脂およびシラン変性ポリオレフィン樹脂を含有し、
上記第1層の融点が120℃以下であり、
上記第2層が、ポリオレフィン樹脂を含有し、
上記配線基板用接着シートのメルトマスフローレート(MFR)が2.0g/10分以下である、配線基板用接着シート。
[2]
上記配線基板用接着シートが、上記第1層と上記第2層と第3層とをこの順に有し、
上記第3層が、ポリエチレン樹脂およびシラン変性ポリオレフィン樹脂を含有し、
上記第3層の融点が120℃以下である、[1]に記載の配線基板用接着シート。
[3]
上記配線基板用接着シートの160℃における溶融粘度が2000Pa・s以上である、[1]または[2]に記載の配線基板用接着シート。
[4]
上記第2層のメルトマスフローレート(MFR)が2.0g/10分以下である、[1]から[3]までのいずれかに記載の配線基板用接着シート。
[5]
絶縁基材と、[1]から[4]までのいずれかに記載の配線基板用接着シートと、金属箔とをこの順に有する配線基板用積層体であって、
上記配線基板用接着シートが、上記金属箔側から順に第1層および第2層を有する、配線基板用積層体。
[6]
第1絶縁基材と、第1接着層と、配線と、第2接着層と、第2絶縁基材とをこの順に有する配線基板であって、
上記第1接着層および上記第2接着層の少なくとも一方が、[1]から[4]までのいずれかに記載の配線基板用接着シートであり、
上記配線基板用接着シートが、上記配線側から順に第1層および第2層を有する、配線基板。