(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114229
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】ゴルフクラブ非接触自動測定方法とその装置
(51)【国際特許分類】
A63B 53/00 20150101AFI20240816BHJP
G01B 11/25 20060101ALI20240816BHJP
G06T 7/60 20170101ALI20240816BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20240816BHJP
【FI】
A63B53/00 D
G01B11/25 H
G06T7/60 150Z
A63B102:32
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019868
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】591002382
【氏名又は名称】株式会社遠藤製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100093687
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 元成
(74)【代理人】
【識別番号】100168468
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 曜
(74)【代理人】
【識別番号】110001759
【氏名又は名称】弁理士法人よつ葉国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】郡司 翔平
(72)【発明者】
【氏名】天野 淳一
(72)【発明者】
【氏名】岡田 誠
(72)【発明者】
【氏名】落合 孝志
【テーマコード(参考)】
2C002
2F065
5L096
【Fターム(参考)】
2C002AA01
2C002AA05
2C002ZZ05
2F065AA32
2F065AA35
2F065AA53
2F065BB05
2F065DD03
2F065FF01
2F065FF02
2F065FF04
2F065FF07
2F065FF09
2F065GG04
2F065GG16
2F065HH05
2F065HH11
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065MM07
2F065PP22
2F065QQ21
2F065QQ31
5L096CA17
5L096FA67
5L096FA69
(57)【要約】
【課題】非熟練の作業者でもゴルフクラブの諸元の測定ができ、かつ簡素な装置で早く正確に実現するものである。
【解決手段】サーボモータ20を起動してその主軸を回転させると、移動台16は、レール15に沿って移動する(x軸線方向)。移動台16には、レーザー光を照射するレーザー光照射器25、及びデジタルカメラ27が配置されている。レーザー光照射器25からスリット光26を、ゴルフクラブ5のシャフト6の上方から照射する。デジタルカメラ27は、この反射光を撮像し、その半楕円を撮影し、その形状からシャフト6の中心線7を算出する。スコアライン11も検知し、ライ角、ロフト角、及びフェースプログレッションを算出して求める。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルクラブにスリット光であるレーザー光を照射するレーザー光照射器と、
前記照射された前記レーザー光の反射光を画像として取り込むデジタルカメラと
を有するゴルフクラブ非接触自動測定装置において、
前記ゴルクラブのシャフトを載置して保持するシャフト保持工程と、
前記シャフトの外形からシャフト画像を取り込むシャフト画像取込工程と、
前記シャフト画像から前記シャフトのシャフト中心線を求めるシャフト中心線計算工程と、
前記ゴルクラブのヘッドのヘッド画像を取り込むヘッド画像取込工程と、
前記ヘッド画像から前記ゴルフクラブのスコアラインを求めるスコアライン計算工程と、
前記ヘッド画像から基準フェース面を求める基準フェース面計算工程と、
前記シャフト中心線、前記スコアライン、及び前記基準フェース面から、ライ角、ロフト角、及びフェースプログレッションから選択される一つ以上を求める
ことを特徴とするゴルフクラブ非接触自動測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載のゴルフクラブ非接触自動測定方法において、
前記シャフト画像取込工程、及び前記ヘッド画像取込工程は、前記レーザー光照射器及び前記デジタルカメラ、又は前記ゴルフクラブを前記シャフト中心線方向に移動させて、前記スリット光を照射するものである
ことを特徴とするゴルフクラブ非接触自動測定方法。
【請求項3】
請求項2に記載のゴルフクラブ非接触自動測定方法において、
前記レーザー光の前記照射の方向は、前記シャフト中心線の直角方向であり、
前記デジタルカメラの撮影方向は、前記レーザー光の照射方向と角度を成している
ことを特徴とするゴルフクラブ非接触自動測定方法。
【請求項4】
ゴルクラブにスリット光であるレーザー光を照射するレーザー光照射器と、
前記照射された前記レーザー光の反射光を画像として取り込むデジタルカメラと、
前記ゴルクラブのシャフトを水平方向に載置して保持するための複数の位置決めブロックと、
前記レーザー光照射器及び前記デジタルカメラと、前記位置決めブロックに載置された前記シャフトの中心であるシャフト中心線に沿って、相対移動させる相対移動手段と
を有するゴルフクラブ非接触自動測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載のゴルフクラブ非接触自動測定装置において、
前記相対移動手段は、前記レーザー光照射装置及び前記デジタルカメラ、又は前記ゴルフクラブを移動台に搭載して案内レール上をねじ駆動により移動するものである
ことを特徴とするゴルフクラブ非接触自動測定装置。
【請求項6】
請求項6に記載のゴルフクラブ非接触自動測定装置において、
前記レーザー光照射器は、前記シャフト中心線の直角方向から照射する角度位置になるように設置されており、
前記デジタルカメラは、前記レーザー光の照射方向と角度を成している撮影方向である
ことを特徴とするゴルフクラブ非接触自動測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロフト角、ライ角、フェースプログレッション(FP)等を非接触で測定するゴルフクラブ非接触自動測定方法とその装置に関する。更に詳しくは、生産工程等で使用されるもので、ゴルフクラブのロフト角、ライ角、フェースプログレッション(FP)等を測定し、設計通りに生産されているか等を短時間でかつ非接触で測定できる、ゴルフクラブ非接触自動測定方法とその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブは、設計した通りの寸法等に保たれているか等が重要であり、ロフト角、ライ角、FP等は球の弾道に大きく影響する。また、ゴルフクラブの品質は、生産工程等での管理が重要であり、ロフト角、ライ角、FP等を正確で迅速な測定が求められている。これらの諸元の測定は、生産工程、出荷段階等で卓越した熟練者によって、測定用の測定器具を用いて全数検査されている。一方、従来からこの測定を自動化するためにCCDカメラで撮影し、その画像から角度を自動的に測定する方法も提案されている(特許文献1)。また、測定をスリット光であるレーザー光を照射して自動化した測定装置も提案されている(特許文献2)。この測定装置は、2台のデジタルカメラ、レーザスリット投光器、2台の照明装置を使用するものである。また、測定するとき、ゴルフクラブのシャフトの中心軸は、デジタルカメラの光軸と鉛直平面内で重なるように設置する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3-198876号公報
【特許文献2】特開平10-337344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に記載された測定装置は、CCDカメラの画像では正確な角度等の測定はできない。また、特許文献2に記載された測定装置は、2台のカメラ、レーザスリット投光器、2台の照明装置が必要であり装置が大きくなる。また、測定時にゴルフクラブのシャフトを鉛直に設置する必要があるので、測定装置の操作に熟練と時間がかかり、生産工程で使用するものとしては適さない。
本発明の目的は、非熟練の操作者でもゴルフクラブの諸元の測定ができる、ゴルフクラブ非接触自動測定方法とその装置を提供することにある。
本発明の他の目的は、簡素な装置で早く正確にゴルフクラブの諸元の測定ができる、ゴルフクラブ非接触自動測定方法とその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明1のゴルフクラブ非接触自動測定方法は、
ゴルクラブにスリット光であるレーザー光を照射するレーザー光照射器と、
前記照射された前記レーザー光の反射光を画像として取り込むデジタルカメラと
を有するゴルフクラブ非接触自動測定装置において、
前記ゴルクラブのシャフトを載置して保持するシャフト保持工程と、
前記シャフトの外形からシャフト画像を取り込むシャフト画像取込工程と、
前記シャフト画像から前記シャフトのシャフト中心線を求めるシャフト中心線計算工程と、
前記ゴルクラブのヘッドのヘッド画像を取り込むヘッド画像取込工程と、
前記ヘッド画像から前記ゴルフクラブのスコアラインを求めるスコアライン計算工程と、
前記ヘッド画像から基準フェース面を求める基準フェース面計算工程と、
前記シャフト中心線、前記スコアライン、及び前記基準フェース面から、ライ角、ロフト角、及びフェースプログレッションから選択される一つ以上を求めることを特徴とする。
【0006】
本発明2のゴルフクラブ非接触自動測定方法は、本発明1のゴルフクラブ非接触自動測定方法において、前記シャフト画像取込工程、及び前記ヘッド画像取込工程は、前記レーザー光照射器及び前記デジタルカメラ、又は前記ゴルフクラブを前記シャフト中心線方向に移動させて、前記スリット光を照射するものであることを特徴とする。
本発明3のゴルフクラブ非接触自動測定方法は、本発明2において、前記レーザー光の前記照射の方向は、前記シャフト中心線の直角方向であり、前記デジタルカメラの撮影方向は、前記レーザー光の照射方向と角度を成していることを特徴とする。
【0007】
本発明1のゴルフクラブ非接触自動測定装置は、
ゴルクラブにスリット光であるレーザー光を照射するレーザー光照射器と、
前記照射された前記レーザー光の反射光を画像として取り込むデジタルカメラと、
前記ゴルクラブのシャフトを水平方向に載置して保持するための複数の位置決めブロックと、
前記レーザー光照射器及び前記デジタルカメラと、前記位置決めブロックに載置された前記シャフトの中心であるシャフト中心線に沿って、相対移動させる相対移動手段とを有する。
【0008】
本発明2のゴルフクラブ非接触自動測定装置は、本発明1のゴルフクラブ非接触自動測定装置において、前記相対移動手段は、前記レーザー光照射装置及び前記デジタルカメラ、又は前記ゴルフクラブを移動台に搭載して案内レール上をねじ駆動により移動するものであることを特徴とする。
【0009】
本発明3のゴルフクラブ非接触自動測定装置は、本発明2のゴルフクラブ非接触自動測定装置において、前記レーザー光照射器は、前記シャフト中心線の直角方向から照射する角度位置になるように設置されており、
前記デジタルカメラは、前記レーザー光の照射方向と角度を成している撮影方向であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のゴルフクラブ非接触自動測定方法とその装置は、非熟練の操作者でもゴルフクラブの諸元を測定ができる、簡素な装置で早く正確にゴルフクラブの諸元の測定ができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施の形態であるゴルフクラブ非接触自動測定装置1の測定原理の概要を示す説明図である。
【
図2】
図2は、シャフトの外形である円形からシャフト中心線の位置を求めるときの原理を説明する説明図であり、
図2(a)はシャフトのスリット光を撮像した撮像写真の例、
図2(b)はシャフトの撮像写真からシャフト中心を算出した図、
図2(c)は一定間隔でシャフトを撮像した例を示す実際の撮像写真の例である。
【
図3】
図3は、スコアラインにスリット光を照射したときのスコアラインの断面を示す説明図であって、
図3(a)は拡大断面図、
図3(b)はスコアラインの位置を説明する断面図である。
【
図4】
図4は、フェース面を測定してスコアラインを測定し、その位置を特定した図であり、
図4(a)は測定したときの位置(黒点)をフェース面上に描画したものであり、
図4(b)は長いスコアラインを基準とする説明図である。
【
図5】
図5は、基準となるフェース面の算出方法を示す説明図であり、
図5(a)は基準として採用する測定データの区画方法を説明する図、
図5(b)は基準フェース面を説明する図である。
【
図6】
図6は、FPの測定の原理を説明する説明図である。
【
図7】
図7は、ゴルフクラブ非接触自動測定装置を制御するための制御システムの概要を示すブロック図である。
【
図8】
図8は、クラブヘッドの諸元の説明図であり、
図8(a)は正面図、
図8(b)は左側面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第2の実施の形態のゴルフクラブ非接触自動測定装置50の外観を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の第1の実施の形態のゴルフクラブ非接触自動測定装置1をを図面に基づいて説明する。
図1は、ゴルフクラブ非接触自動測定装置1の測定原理の概要を示す説明図である。ゴルフクラブ非接触自動測定装置1の測定装置本体2上には、間隔を置いて、二つの取付ブロック3が固定されており、この取付ブロック3の上には、Vブロック4が固定されている。Vブロック4は、一般的なものであり、本例では角度90度のV溝をもつ鋼製の直方体の台である。2個のVブロック4は、V溝が直線状に互いに同一平面になるように配置され固定されている。この2個のVブロック4に、円筒形のゴルフクラブ5のシャフト6を載置して、V溝でシャフト6を位置決めして支承する。シャフト6は、V溝に載せられるので、シャフト中心線7は移動することはなく、V溝の幅方向の所定の位置に常に位置決めされる。
【0013】
また、測定装置本体2上に固定された取付ブロック3を介して、Vブロック4が取り付けられているので、このVブロック4上にシャフト6を載置したとき、隙間Dを有してシャフト6が略水平方向に載置される。なお、シャフト6は、円筒とは限らずテーパを成している場合、水平に載置されるとは限らないので、本発明でいう水平とは、略水平方向も含む概念である。シャフト6の先端のクラブヘッド8は他の部分より重いので、その自重によりシャフト中心線7を中心に揺動し、シャフト6の載置位置より常に下方に位置することになる。クラブヘッド8のフェース面9は、移動、揺動することなく安定した状態で所定角度で保持される。この結果、クラブヘッド8に照射したレーザー光であるスリット光26の乱反射が生じ難いので、測定の妨げとなる乱反射を防ぐことができる。
【0014】
測定装置本体2には、2個のVブロック4の上部位置で、シャフト中心線7に平行にレール15が配置固定されている。レール15上には、箱状の移動台16がリニアベアリング(図示せず)により移動自在に搭載されている。レール15の端部には、サーボモータ20が配置されている。サーボモータ20の出力軸には、ボールねじである送りねじ21が連結されている。送りねじ21は、回転運動を直線運動に変換して移動台16を駆動するためのねじである。移動台16には、送りねじ21と螺合するボールナット22が固定配置されている。従って、サーボモータ20を起動してその主軸を回転させると、移動台16は、レール15に沿って移動する(x軸方向)。移動台16には、レーザー光を照射するレーザー光照射器25が配置されている。このレーザー光照射器25は、スリット光26と呼ばれている測定用の線状のレーザー光をY軸方向に出力するものである。スリット光26は、シャフト6の上方から、そのシャフト中心線7と略直角方向から照射される。なお、この略直角方向とは、厳密に角度90度を成すものでなくても、計算により補正できるので、本発明でいう略直角とは、直角方向の前後の角度を含む概念である。
【0015】
スリット光26は、円筒状のシャフト6のシャフト中心線7と直角方向の上部から照射されるので、その形状は線状の半円形となってシャフト6の表面に表れる。移動台16には、この半円形を撮影するデジタルカメラ27が搭載されている。デジタルカメラ27のレンズの光軸である中心線28は、スリット光26と角度θ(鋭角)を成す角度位置に設置されている。レーザー光照射器25のスリット光26の中心線、及びデジタルカメラ27のレンズの中心線28は、シャフト中心線6に沿って移動する。この移動は、サーボモータ20を起動して回転させ、移動台16に搭載されているレーザー光照射器25とデジタルカメラ27も、シャフト中心線7に沿って共に移動させて行う。レーザー光照射器25から発せられるスリット光26は、シャフト6に照射され、そのスリット光26は線状の半円形となってシャフト6の表面に表れる。この半円形の照射光は、デジタルカメラ27で撮影され、スリット光26と角度θ方向から撮影されているので、その形状は半楕円(正確には、楕円の弧となる。)として捉えられる(
図2(a)参照)。この半楕円から計算して、後述する算出方法でシャフト中心線7の位置を求める。
【0016】
[ゴルフクラブヘッド8の諸元]
図8は、クラブヘッドの諸元の説明図であり、
図8(a)は正面図、
図8(b)は左側面図である。ライ角βはシャフト中心線7とスコアライン11が成す角度である。クラブヘッド8の略平面であるフェース面9と、シャフト中心線7を含む面(スコアライン11と平行な面でもある。)が成す角度がロフト角αである。スコアライン11が形成されているフェース面9は全面が平面とは限らないので、本実施の形態でいうフェース面9は、後述する方法で測定し計算した面とする。
図8に図示しているように、フェースプログレッション(FP)は、シャフト中心線7を含む面(スコアライン11と平行な面でもある。)と、この面と平行で、リーディングエッジ14の最先端側(フエース面9の最前方側)を含む面との間隔(距離)をいう。
【0017】
[シャフト中心線7の測定]
以下、前述したゴルフクラブ非接触自動測定装置1による形状測定の原理、画像処理、計算処理の概要を説明する。
図2(a)~(c)は、シャフト6の円形からシャフト中心線7の位置を求めるときの原理を説明する説明図であり、
図2(a)はシャフトのスリット光を撮像し撮像写真の例、
図2(b)はシャフトの撮像写真からシャフト中心線を算出した図、
図2(c)はシャフトの軸線方向に一定間隔で撮像した例を示す撮像写真の例である。レーザー光照射器25から照射されたスリット光26は、円筒状のシャフト6のシャフト中心線7と直角方向の上部から照射されるので、理論的にはその形状は線状の半円形となって表れる。スリット光26の照射光は、円筒状のシャフト6の下半分は死角となり表れない。
【0018】
これをデジタルカメラ27が角度θの位置から撮影するので(
図1参照)、
図2(a)に示すように、撮影される撮像画面は半楕円状となる。この二次元データ(ピクセル)である半楕円状の円弧を、3次元データ(x,y,z軸の空間)に変換する(mm単位)。このデータ変換は、事前に行ったキャリブレーションのデータを基に変換するものである。このキャリブレーションとは、シャフト6の外径の3次元位置(x,y,z軸の空間)と、撮像画面である二次元データの半楕円状の円弧データとを幾何学的に関連付けるものである。この3次元に変換された半円孤から最小二乗法により円を求めて、この円の中心をシャフト6の中心7とする。この計算をシャフト6の設定された長さ方向で複数回行い(
図2(c)参照)、その円形の中心点を計算する。そして、その中心点から最小二乗法で直線(3次元)を求めて、これをシャフト中心線7とする。これで、ゴルフクラブ5のシャフト6の中心であるシャフト中心線7のベクトルと位置が確定する。
【0019】
[スコアライン11の測定]
フェース面9に形成されたスコアライン11は、「溝の仕様」として、R&A等で種々規定されている。規定によると、溝の縁は、その断面形状は実質的に円形状でなければならず、その有効半径の寸法も規定されている。
図3は、スコアラインにスリット光を照射するときの説明図であって、スコアラインの断面図であり、
図3(a)は拡大断面図、
図3(b)はスコアラインの位置を説明する断面図である。
図3(a)に示すように、スリット光26と角度γを成して載置されているフェース面9のスコアライン11に、スリット光26が連続的に照射される。このとき、反射してくるスリット光26の反射光から、各測定点である各位置(3次元空間位置)が特定される。
【0020】
図3(a)に示すように、このときのフェース面9の測定点(図示上の黒点)は、直前の測定点と近いので連続的に特定されるが、スコアライン11の側壁12は死角となり、この側壁12から反射せず溝底13から反射することになる。即ち、スリット光26をx軸方向(
図3)に移動させながら照射し、その反射光を一定間隔で測定する。スリット光26がスコアライン11の位置になると、側壁12から反射せず溝底13から反射する。このときの測定値は、y軸方向にその段差分(y軸方向)が数値上も段差となるので、この測定位置(図示上の黒点)をスコアライン11の溝底13の位置と判定する(
図3(b))。この測定をフェース面9の全面に行う。測定位置がスコアライン11の段差位置と判断する基準は、その大きさ(y軸方向)で判定する。この大きさは、設計上設定されている寸法、公差から数値を設定して、微分値、しきい値、実際の生産品の測定データ等で決める。
【0021】
上記スコアライン11の検知方法により、
図4は、フェース面を測定してスコアライン位置であると判定した図で、
図4(a)は判定した位置(黒点)をフェース面上に描画したものであり、
図4(b)は長いスコアラインを基準とする説明図である。
図4(a)の各点(黒点)は、前述したアルゴリズムにより、特定したスコアライン11である。スコアライン11は、平行する複数の溝として形成されており、
図4(a)の点描画のように検知される。この各測定点(黒点)から最小二乗法で直線を求めて、この直線をスコアライン11とする。このとき直線の中から長い直線のみをスコアライン11として採用する。なお、設計値と異なり、測定されるスコアライン11の長さは同一とは限らないので、ここでは複数のスコアライン11のベクトルの平均値を、スコアライン11の傾きとする。またスコアライン11の中から最も長いと計算された直線の両端の座標(x、y、z軸の位置)をスコアライン11の両端とする。
【0022】
[ロフト角αの算出]
図5に示すように、この平均化されたスコアライン11の長さ方向の中央位置を求めて、この中央位置を中心にして、スコアライン11と直交し、一定幅間隔を有する面である二つの区画面30でフェース面9を区画する(
図5(a)参照)。言い換えると、スコアライン11は区画面30の面法線とも言える。そして、後述する方法で帯状の基準フェース面31を決める(
図5(b)参照)。二つの区画面30で区画された帯状のフェース面9から、微分値等により、その形状変化量が予め設定された閾値未満と判断された点群のみを抽出する。これにより、フェース面9の上下の曲面、スコアライン11内の凹凸等を排除できる。この抽出された点群から最小二乗法により平面を計算して基準フェース面31とする。基準フェース面31が確定すると、前述したシャフト中心線12と成すロフト角αが計算できるので確定する。
【0023】
[フェースプログレッション(FP)の測定]
図8(b)で説明したように、フェースプログレッション(FP)は、クラブヘッド8のリーディングエッジ14がシャフト中心線7に対して、どの程度離れているかを示す数値(間隔)である。
図6は、FPの測定の原理を説明する説明図である。前述したスコアライン11と平行な平面で、シャフト中心線7を含むシャフト中心線平面32を定義する。シャフト中心線平面32から、測定されたリーディングエッジ14の各測定点33の法線距離を算出する。各各測定点33から最も遠い法線距離にある測定点をFP点として、これフェースプログレッション(FP)とする(
図8参照)。
【0024】
[ゴルフクラブ非接触自動測定装置の制御装置40]
図7は、ゴルフクラブ非接触自動測定装置1を制御するための制御システム40の概要を示すブロック図である。制御システム40の制御装置41は、CPU(中央処理装置)、RAM、ROM、補助記憶装置、表示手段、入力手段、各種出力手段等からなる公知のシーケンス制御手段である。制御装置41には、インターフェイス(I/F)42を介して、位置検知センサー43から位置信号が送られてくる。位置検知センサー43は、移動台16のx軸方向の位置を検知するためのものである。具体的には、サーボモータ20の回転を検知するロータリエンコーダである。また、制御装置41には、インターフェイス(I/F)42を介して、サーボモータ20、レーザー照射器25,デジタルカメラ27が接続されており、これらのON、OFF等を制御する。前述した画像処理、計算処理は、制御装置41は、CPU(中央処理装置)、RAM、ROM、補助記憶装置等に記憶されているソフトウエアにより行う、これらの具体的な処理は公知技術であり、説明は省略する。
【0025】
[第2の実施の形態]
前述した第1の実施の形態のゴルフクラブ非接触自動測定装置1は、レーザー光照射器25及びデジタルカメラ27を移動台16に搭載して、案内レール15上をねじ駆動により移動させるものである。しかし、レーザー光照射器25及びデジタルカメラ27を固定し、ゴルフクラブ5を移動させる方法でも良い。
図9は、本発明の第2の実施の形態のゴルフクラブ非接触自動測定装置50の外観を示す外観図である。ゴルフクラブ非接触自動測定装置50は、ゴルフクラブ5を移動させるタイプの構造例である。筐体である測定装置本体51は、内部が空洞の長方体の箱状のものであり、前面が開口されている。このために、測定時に、測定の妨げになる外部からの光、塵芥等を防ぎ、かつ前面からゴルフクラブ5の載置、取り出しが容易である。測定装置本体51の底板には、ゴルフクラブ5を移動させるユニットである自動ステージ機構52が配置されている。ユニット化された自動ステージ機構52は、その移動制御装置を含めて公知であり市販されている。この台53上にレール(図示せず)が配置固定されている。このレール上には、移動台56がリニアベアリング(図示せず)により移動自在に搭載されている。
【0026】
移動台56上には、2個のVブロック55が搭載され固定されている。レールの端部には、サーボモータ54が配置されている。サーボモータ54の出力軸には、ボールねじである送りねじ(図示せず)が連結されている。送りねじは、回転運動を直線運動に変換して移動台56を駆動するためのねじである。移動台56には、送りねじと螺合するボールナット(図示せず)が固定配置されている。従って、サーボモータ54を起動してその主軸を回転させると、移動台56は、レールに沿って移動する(x軸方向)。自動ステージ機構52の上部の測定装置本体51には、レーザー光を照射するレーザー光照射器58、及びデジタルカメラ59が固定配置されている。レーザー光照射器58、及びデジタルカメラ59は、第1の実施の形態のレーザー光照射25及びデジタルカメラ27と同様の構造、機能を有するものであり、その説明は省略する。測定装置本体51には、自動ステージ機構52、レーザー光照射器58、及びデジタルカメラ59を制御するための制御装置57が配置されている。第2の実施の形態のゴルフクラブ非接触自動測定装置50は、長いシャフトを有するゴルフクラブ5の測定用に使用すると良い。なお、移動台56を送る送りねじは1本であったが、移動台56の上に他の移動台を搭載し、この他の移動台に送りねじを設けて、2段の移動台とする構造でも良い。
【0027】
[他の実施の形態]
前述したスコアライン11、正確には基準フェース面31は、溝底13の位置で判定していた。他の判定方法として、
図3(a)に示すように、スコアライン11の一方の角部11bの位置をスコアラインと判定しても良い。この判定によると、溝底13を挟んで他方の角部11aと対で検出されるので、検出が正確にできる利点がある。即ち、角部11aのY軸方向の微分値と、角部11bの側壁12の微分値により、スコアライン11の測定値により判断できるので、正確であるという利点がある。前述した基準フェース面31は、帯状であったが、スイートスポット34(
図5(b)参照)を含むように円形を基準フェース面31としても良い。また、前述したように、ライ角βは、スコアライン11を接地面に平行に置き、かつシャフト中心線7を含む面を鉛直に配置したときのシャフト中心線7の接地面と成す角度である。従って、シャフト中心線7、スコアライン11は、その位置を測定できたので、ライ角βも測定できる。
【0028】
前述したデジタルカメラ27の撮影方向は、スリット光26の照射方向と角度θを成している。この角度θは、乱反射等が生じない角度であれば、何度でも良い。同様に、レーザー光照射器25が照射するスリット光26は、シャフト中心線7の直角方向から照射するものである。この直角方向に限定されることはなく、乱反射等が生じない角度であれば照射方向は何度でも良い。なお、前述したゴルフクラブ非接触自動測定装置1は、主にゴルフクラブの生産工程での測定を想定して説明したが、使用されている、又は販売中のゴルフクラブのものをゴルフ場、ゴルフ練習場、ゴルフ用品ショップ等で使うものに用いても良い。
【符号の説明】
【0029】
1,50…ゴルフクラブ非接触自動測定装置
2,51…測定装置本体
3…取付ブロック
4,55…Vブロック
5…ゴルフクラブ
6…シャフト
7…シャフト中心線
8…クラブヘッド
9…フェース面
11…スコアライン(フェースライン)
12…側壁
13…溝底
14…リーディングエッジ
15…レール
16,56…移動台
20,54…サーボモータ
21…送りねじ
22…ボールナット
25,58…レーザー光照射器
26…スリット光
27,59…デジタルカメラ
30…区画面
31…基準フェース面
32…シャフト中心線平面
33…測定点(リーディングエッジ)
34…スイートスポット
52…自動ステージ機構
θ…スリット光とデジタルカメラの光軸の中心線との角度
α…ロフト角
β…ライ角
γ…スリット光とフェース面の角度