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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114231
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】電動駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/10 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
H02K5/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019871
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕人
(72)【発明者】
【氏名】林 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】柘植 智也
【テーマコード(参考)】
5H605
【Fターム(参考)】
5H605AA02
5H605BB05
5H605CC02
5H605CC04
5H605CC08
(57)【要約】
【課題】粉塵などの異物が、軸受の内部に侵入することを抑制することができる電動駆動装置を提供する。
【解決手段】電動駆動装置は、モータ31と、モータ31の駆動力を駆動対象に伝達する伝動機構とを備える。モータ31は、モータケース41、出力軸44、第1の軸受46、オイルシール49を有する。モータケース41は、第1の貫通孔41Bを有する端壁を含む。出力軸44は、第1の貫通孔41Bを貫通する。第1の軸受46は、出力軸44をモータケース41に対して回転可能に支持する。オイルシール49は、出力軸44の外周面と第1の貫通孔41Bの内周面との間を密封する。オイルシール49は、第1の軸受46に対して軸方向外側に位置する一方、モータケース41の端壁の外面に対して軸方向内側に位置する。モータケース41は、第1の貫通孔41Bの周囲に配置される複数の突部41Cを有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動対象を駆動させるための駆動力を発生するように構成されるモータと、
前記モータの駆動力を前記駆動対象に伝達するように構成される伝動機構と、を備え、
前記モータは、
軸方向に貫通する貫通孔を有する端壁を含むモータケースと、
前記貫通孔の内周面に非接触状態で前記貫通孔を軸方向に貫通する出力軸と、
前記端壁に装着される軸受であって、前記出力軸を前記モータケースの内周面に対して回転可能に支持する軸受と、
前記貫通孔に装着されるオイルシールであって、前記出力軸の外周面と前記貫通孔の内周面との間を密封するオイルシールと、を有し、
前記オイルシールは、前記軸受に対して軸方向外側に位置する一方、前記端壁の外面に対して軸方向内側に位置し、
前記モータケースは、前記端壁の外面において、前記貫通孔の周囲に配置される複数の突部を有する電動駆動装置。
【請求項2】
前記伝動機構は、前記モータケースの外側において、前記出力軸に対して一体的に回転可能に連結される筒状の動力伝達部材を有し、
前記動力伝達部材は、
前記突部に近い側の軸方向の端面と、
前記端面と前記動力伝達部材の外周面との間の外側角部の全周にわたって設けられる外側傾斜面と、を有し、
複数の前記突部は、各々、軸方向からみて、同一の内側仮想円上に位置する内側面を有し、
前記内側仮想円の直径は、前記動力伝達部材の外径と同じであり、
前記突部の前記内側面と前記突部の先端面とが交わる内側角部は、前記外側傾斜面と前記動力伝達部材の外周面とが交わる外側角部に対して、軸方向に定められた距離だけ離隔している請求項1に記載の電動駆動装置。
【請求項3】
前記伝動機構は、前記モータケースの外側において、前記出力軸に対して一体的に回転可能に連結される筒状の動力伝達部材を有し、
複数の前記突部は、各々、軸方向からみて、同一の内側仮想円上に位置する内側面を有し、
前記内側仮想円の直径は、前記動力伝達部材の外径よりも大きく、
前記動力伝達部材の前記突部に近い側の軸方向の端部は、前記モータケースにおける複数の前記突部の内側の領域に挿入された状態に維持され、
前記突部の前記内側面は、前記動力伝達部材の外周面に対して、径方向に定められた距離だけ離隔している請求項1に記載の電動駆動装置。
【請求項4】
前記伝動機構は、前記モータケースの外側において、前記出力軸に対して一体的に回転可能に連結される筒状の動力伝達部材を有し、
複数の前記突部は、各々、軸方向からみて、同一の内側仮想円上に位置する内側面を有し、
前記内側仮想円の直径は、前記動力伝達部材の外径よりも小さく、
前記突部の先端面は、前記動力伝達部材の前記突部に近い側の軸方向の端面に対して、軸方向に定められた距離だけ離隔している請求項1に記載の電動駆動装置。
【請求項5】
複数の前記突部は、前記貫通孔の周囲に等間隔で配置されている請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の電動駆動装置。
【請求項6】
複数の前記突部は、各々、軸方向からみて、同一の外側仮想円上に位置する外側面を有し、
前記外側仮想円は、前記出力軸と同軸である請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の電動駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特許文献1の操舵装置は、ベルト伝動機構を有する。ベルト伝動機構は、モータのトルクを、転舵シャフトに伝達するように構成される。転舵シャフトは、ボールナットを有する。ベルト伝動機構は、モータの出力軸に設けられる駆動プーリと、転舵シャフトのボールナットに設けられる従動プーリと、駆動プーリと従動プーリとに巻き掛けられるベルトと、を有する。
【0003】
転舵シャフトおよびベルト伝動機構は、ハウジングに収容されている。モータは、ハウジングの外部に取り付けられている。モータの出力軸は、駆動軸を介して駆動プーリに連結されている。駆動軸は、軸受を介して、ハウジングに対して回転可能に支持されている。軸受は、軸方向において、駆動プーリとモータの出力軸との間に位置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-154965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ベルト伝動機構を有する操舵装置には、つぎのような懸念がある。すなわち、ベルト伝動機構の長期の使用に伴い、たとえばベルトが摩耗することにより、摩耗粉が発生することがある。摩耗粉がモータの出力軸を支持する軸受の内部に侵入することにより、軸受の円滑な動作が阻害されるおそれがある。これは、モータおよび伝動機構を有する機械装置の全般についていえることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決し得る電動駆動装置は、駆動対象を駆動させるための駆動力を発生するように構成されるモータと、前記モータの駆動力を前記駆動対象に伝達するように構成される伝動機構と、を備える。前記モータは、軸方向に貫通する貫通孔を有する端壁を含むモータケースと、前記貫通孔の内周面に非接触状態で前記貫通孔を軸方向に貫通する出力軸と、前記端壁に装着される軸受であって、前記出力軸を前記モータケースの内周面に対して回転可能に支持する軸受と、前記貫通孔に装着されるオイルシールであって、前記出力軸の外周面と前記貫通孔の内周面との間を密封するオイルシールと、を有する。前記オイルシールは、前記軸受に対して軸方向外側に位置する一方、前記端壁の外面に対して軸方向内側に位置する。前記モータケースは、前記端壁の外面において、前記貫通孔の周囲に配置される複数の突部を有する。
【0007】
この構成によれば、オイルシールは、モータケースの端壁に装着される軸受に対して、軸方向外側に位置している。オイルシールは、出力軸の外周面と、貫通孔の内周面との間を密封する。このため、オイルシールによって、粉塵などの異物が、軸受の内部に侵入することを抑制することができる。
【0008】
また、オイルシールは、モータケースの端壁の外面に対して、軸方向内側に位置している。すなわち、オイルシールは、その全体が貫通孔の内部に位置している。オイルシールの外周面の全体が、貫通孔の内周面に接触した状態に維持される。このため、オイルシールを安定して保持することができる。
【0009】
複数の突部は、たとえば、モータの基本特性試験を行う際、モータ試験機の所定位置にモータの出力軸を位置決めするために使用することができる。複数の突部は、モータケースの端壁の外面において、貫通孔の周囲に配置される。このため、仮に粉塵などの異物がモータケースにおける各突部の内側の領域に侵入したとしても、侵入した異物は各突部の間の隙間から容易に排出される。したがって、モータケースにおける各突部の内側の領域に粉塵などの異物が溜まりにくい。
【0010】
上記の電動駆動装置において、前記伝動機構は、前記モータケースの外側において、前記出力軸に対して一体的に回転可能に連結される筒状の動力伝達部材を有していてもよい。前記動力伝達部材は、前記突部に近い側の軸方向の端面と、前記端面と前記動力伝達部材の外周面との間の外側角部の全周にわたって設けられる外側傾斜面と、を有していてもよい。複数の前記突部は、各々、軸方向からみて、同一の内側仮想円上に位置する内側面を有していてもよい。前記内側仮想円の直径は、前記動力伝達部材の外径と同じであってもよい。前記突部の前記内側面と前記突部の先端面とが交わる内側角部は、前記外側傾斜面と前記動力伝達部材の外周面とが交わる外側角部に対して、軸方向に定められた距離だけ離隔していてもよい。
【0011】
この構成によれば、出力軸に動力伝達部材を組み合わせる際、軸方向の組立公差のばらつきに起因して、突部の内側角部と、動力伝達部材の外側角部とが軸方向に接触することを抑制することができる。定められた距離は、たとえば、出力軸に対する動力伝達部材の軸方向の組立公差を吸収する観点から定められた軸方向長さを有する。
【0012】
上記の電動駆動装置において、前記伝動機構は、前記モータケースの外側において、前記出力軸に対して一体的に回転可能に連結される筒状の動力伝達部材を有していてもよい。複数の前記突部は、各々、軸方向からみて、同一の内側仮想円上に位置する内側面を有し、前記内側仮想円の直径は、前記動力伝達部材の外径よりも大きくてもよい。前記動力伝達部材の前記突部に近い側の軸方向の端部は、前記モータケースにおける複数の前記突部の内側の領域に挿入された状態に維持されてもよい。前記突部の前記内側面は、前記動力伝達部材の外周面に対して、径方向に定められた距離だけ離隔していてもよい。
【0013】
この構成によれば、内側仮想円の直径が動力伝達部材の外径よりも大きい。また、動力伝達部材の端部をモータケースにおける複数の突部の内側の領域に挿入可能である。このため、出力軸に動力伝達部材を組み合わせる際、軸方向の組立公差のばらつきに起因して、突部の先端面と、動力伝達部材とが、互いに軸方向に接触することを抑制することができる。
【0014】
上記の電動駆動装置において、前記伝動機構は、前記モータケースの外側において、前記出力軸に対して一体的に回転可能に連結される筒状の動力伝達部材を有していてもよい。複数の前記突部は、各々、軸方向からみて、同一の内側仮想円上に位置する内側面を有していてもよい。前記内側仮想円の直径は、前記動力伝達部材の外径よりも小さくてもよい。前記突部の先端面は、前記動力伝達部材の前記突部に近い側の軸方向の端面に対して、軸方向に定められた距離だけ離隔していてもよい。
【0015】
この構成によれば、出力軸に動力伝達部材を組み合わせる際、軸方向の組立公差のばらつきに起因して、突部の先端面と、動力伝達部材の端面とが軸方向に接触することを抑制することができる。定められた距離は、たとえば、出力軸に対する動力伝達部材の軸方向の組立公差を吸収する観点から定められた軸方向長さを有する。
【0016】
上記の電動駆動装置において、複数の前記突部は、前記貫通孔の周囲に等間隔で配置されていてもよい。
この構成によれば、たとえば、モータの基本特性試験を行う際、モータの出力軸をモータ試験機の所定位置に安定的に配置することができる。
【0017】
上記の電動駆動装置において、複数の前記突部は、各々、軸方向からみて、同一の外側仮想円上に位置する外側面を有していてもよい。前記外側仮想円は、前記出力軸と同軸であってもよい。
【0018】
この構成によれば、たとえば、モータの基本特性試験を行う際、モータの出力軸をモータ試験機の所定位置に容易に配置することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の電動駆動装置によれば、粉塵などの異物が、軸受の内部に侵入することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】電動駆動装置の一実施の形態にかかる転舵機構の構成図である。
図2】一実施の形態にかかるモータの断面図である。
図3】一実施の形態にかかるモータの出力軸と駆動プーリとの連結部分の断面図である。
図4】一実施の形態にかかるモータの要部を示す斜視図である。
図5】一実施の形態にかかるモータを軸方向からみた側面図である。
図6】一実施の形態にかかるモータの位置決め部の第1の構成パターンを示す断面図である。
図7】一実施の形態にかかるモータの位置決め部の第2の構成パターンを示す断面図である。
図8】他の実施の形態にかかるモータを軸方向からみた側面図である。
図9】他の実施の形態にかかるモータを軸方向からみた側面図である。
図10】他の実施の形態にかかるモータの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
一実施の形態に係る電動駆動装置を説明する。
図1に示すように、車両の操舵装置は、転舵機構11を有している。転舵機構11は、ステアリングホイールの操舵に応じて、車両の転舵輪12を転舵させる機構部分である。
【0022】
転舵機構11は、ピニオンシャフト21と、転舵シャフト22と、ハウジング23と、を有している。ハウジング23は、ピニオンシャフト21を回転可能に支持している。また、ハウジング23は、転舵シャフト22を軸方向に往復動可能に収容している。ピニオンシャフト21は、転舵シャフト22に対して交わるように設けられている。ピニオンシャフト21のピニオン歯21aは、転舵シャフト22のラック歯22aと噛み合っている。転舵シャフト22の両端は、ラックエンド24およびタイロッド25を介して、転舵輪12に連結されている。
【0023】
操舵装置は、ステアバイワイヤ式の操舵装置、または電動パワーステアリング装置である。操舵装置がステアバイワイヤ式の操舵装置である場合、ピニオンシャフト21は、ステアリングホイールに対して機械的に連結されない。操舵装置が電動パワーステアリング装置である場合、ピニオンシャフト21は、ステアリングシャフトを介して、ステアリングホイールに対して機械的に連結される。
【0024】
転舵機構11は、モータ31と、伝動機構32と、変換機構33とを備えている。モータ31は、電動機であって、転舵シャフト22に付与される転舵力の発生源である。転舵力は、転舵輪12を転舵させるための力である。モータ31は、たとえば三相のブラシレスモータである。伝動機構32は、たとえばベルト伝動機構である。伝動機構32は、モータ31の回転を変換機構33に伝達する。変換機構33は、たとえばボールねじ機構である。変換機構33は、伝動機構32を介して伝達される回転を、転舵シャフト22の軸方向の運動に変換する。転舵シャフト22が軸方向に移動することによって、転舵輪12の転舵角θが変更される。転舵シャフト22は、モータ31の駆動対象である。
【0025】
操舵装置がステアバイワイヤ式の操舵装置である場合、モータ31は、転舵モータとして機能する。転舵モータは、転舵輪12を転舵させるための力である転舵力を発生する。操舵装置が電動パワーステアリング装置である場合、モータ31は、アシストモータとして機能する。アシストモータは、ステアリングホイールの操作を補助するための力であるアシスト力を発生する。転舵力、およびアシスト力は、転舵シャフト22に付与される駆動力である。
【0026】
なお、転舵機構11は、電動駆動装置に相当する。電動駆動装置は、電気エネルギを力学的エネルギに変換する電動機の駆動力によって、駆動対象を駆動させる装置である。
<モータ31の構成>
つぎに、モータ31の構成について詳細に説明する。
【0027】
図2に示すように、モータ31は、モータ本体40と、制御装置50とを有している。モータ本体40と制御装置50とは一体化されている。
モータ本体40は、モータケース41を有している。モータケース41は、円形の断面形状を有する筒状である。モータケース41の第1の端部は、端壁によって塞がれている。モータケース41の第2の端部は、軸方向に開口している。モータケース41は、第1の軸受支持部41Aを有している。第1の軸受支持部41Aは、モータケース41の端壁の内面に設けられた穴であって、円形の断面形状を有している。第1の軸受支持部41Aは、第1の貫通孔41Bを介して、モータケース41の外側に軸方向に開口している。
【0028】
モータ本体40は、蓋42を有している。蓋42は、モータケース41の第2の端部に嵌め込まれることによって、第2の端部の開口を塞いでいる。蓋42は、第2の軸受支持部42Aと、磁石収容部42Bとを有している。第2の軸受支持部42Aは、モータケース41の内側に軸方向に開口する穴であって、円形の断面形状を有している。磁石収容部42Bは、蓋42の外側に軸方向に開口する穴であって、円形の断面形状を有している。第2の軸受支持部42Aの内部と磁石収容部42Bの内部とは、第2の貫通孔42Cを介して、互いに軸方向に連通している。
【0029】
モータ本体40は、ステータ43と、出力軸44と、ロータ45と、第1の軸受46と、第2の軸受と、磁束発生体48とを有している。ステータ43は、ステータコア43Aと、ステータコア43Aに設けられたステータコイル43Bとを有している。ステータコア43Aは、円形の断面形状を有する筒状である。ステータコア43Aは、モータケース41の内周面に対して嵌められた状態で固定されている。
【0030】
出力軸44は、第1の軸受46と第2の軸受47とを介して、モータケース41に対して回転可能に支持されている。第1の軸受46は、モータケース41の第1の軸受支持部41Aに装着されている。第2の軸受47は、蓋42の第2の軸受支持部42Aに装着されている。出力軸44は、モータケース41を軸方向に貫通している。出力軸44の第1の端部は、モータケース41の第1の貫通孔41Bを介して、モータケース41の外側に軸方向に突出している。出力軸44の第2の端部は、蓋42の第2の貫通孔42Cを介して、磁石収容部42Bの内部に位置している。
【0031】
ロータ45は、ステータ43の内側に位置している。ロータ45は、ロータコア45Aと、永久磁石45Bとを有している。ロータコア45Aは、円形の断面形状を有する筒状であって、出力軸44の外周面に固定されている。永久磁石45Bは、円形の断面形状を有する筒状であって、ロータコア45Aの外周面に固定されている。ロータ45は、ステータ43の内周面に対して、非接触状態で回転可能である。
【0032】
磁束発生体48は、出力軸44の第2の端部に設けられている。磁束発生体48は、磁石48Aと、ホルダ48Bと、スペーサ48Cとを有している。磁石48Aは、円柱状である。磁石48Aは、いわゆる2極磁石である。磁石48Aの直径方向の半分がN極に、残りの半分がS極に着磁されている。磁石48Aは、ホルダ48Bを介して、出力軸44に取り付けられている。
【0033】
ホルダ48Bは、非磁性材料製である。非磁性材料は、合成樹脂であってもよいし、アルミニウム合金または亜鉛合金であってもよい。ホルダ48Bは、円形の断面形状を有する筒状である。ホルダ48Bの第1の端部は、軸方向に開口している。ホルダ48Bの第2の端部は、端壁により塞がれている。第2の端部は、第1の端部と軸方向に反対側のホルダ48Bの端部である。ホルダ48Bは、径方向外側に張り出すフランジ部を有する。フランジ部は、ホルダ48Bの第2の端部の外周面に設けられている。ホルダ48Bのフランジ部を含む第2の端面は、軸方向に対して直交する平面である。
【0034】
磁石48Aは、ホルダ48Bの内部に嵌め込まれている。磁石48Aとホルダ48Bの端壁とは、互いに軸方向に接触した状態に維持されている。ホルダ48Bの第1の端部は、出力軸44の第2の端部の外周面に嵌った状態で固定されている。スペーサ48Cは、ホルダ48Bと同様に、非磁性材料製である。スペーサ48Cは、円柱状であって、磁石48Aと出力軸44の第2の端部との間に介在されている。
【0035】
制御装置50は、カバー51と、基板52とを有している。カバー51は、たとえば、円形の断面形状を有する筒状である。カバー51の第1の端部は、軸方向に開口している。カバー51の第2の端部は、端壁により塞がれている。第2の端部は、第1の端部と軸方向に反対側のカバー51の端部である。カバー51は、開口をモータケース41へ向けた状態で、モータケース41の第2の端部に固定されている。
【0036】
基板52は、カバー51の内部に収容されている。基板52は、出力軸44の軸方向に対して直交するように、カバー51に固定されている。基板52は、磁束発生体48と軸方向に対向している。基板52は、MPU(micro processing unit)52Aと、インバータ回路52Bと、回転角センサ52Cとを有している。
【0037】
MPU52Aおよび回転角センサ52Cは、たとえば、基板52の第1の面に設けられている。第1の面は、モータ本体40に軸方向に対向する基板52の面である。回転角センサ52Cは、磁束発生体48に軸方向に対向している。磁束発生体48が発生する磁界は、回転角センサ52Cに付与される。インバータ回路52Bは、たとえば、基板52の第2の面に設けられている。第2の面は、第1の面と反対側の基板52の面である。
【0038】
インバータ回路52Bは、複数のスイッチング素子を有する。MPU52Aにより生成されるスイッチング指令に基づき、スイッチング素子がスイッチング動作を行うことにより三相の交流電力が生成される。交流電力は、図示しない給電経路を介して、三相各相のステータコイル43Bに供給される。
【0039】
回転角センサ52Cは、磁気センサであって、たとえばMRセンサ(磁気抵抗効果センサ)である。回転角センサ52Cに付与される磁界の方向は、ロータ45の回転角に応じて変化する。ロータ45の回転角は、出力軸44の回転角でもある。回転角センサ52Cは、磁界の方向の変化に応じた電気信号を生成する。磁束発生体48は、回転角センサ52Cの検出対象である。
【0040】
MPU52Aは、回転角センサ52Cが生成する電気信号に基づき、ロータ45の回転角を演算する。MPU52Aは、ロータ45の回転角に基づき、インバータ回路52Bに対するスイッチング指令を生成する。スイッチング指令は、モータ本体40の駆動を制御するためのモータ制御信号である。
【0041】
<伝動機構32の構成>
つぎに、伝動機構32の構成について説明する。
図3に示すように、伝動機構32は、駆動プーリ32A、ベルト32B、および従動プーリ(図示略)を有している。出力軸44の第1の端部は、モータケース41の外部に突出している。駆動プーリ32Aは、円形の断面形状を有する筒状である。駆動プーリ32Aは、出力軸44に対して一体的に回転可能に連結されている。すなわち、駆動プーリ32Aは、出力軸44の第1の端部の外周面に嵌った状態で固定されている。駆動プーリ32Aは、第1の端部と、第2の端部とを有している。第1の端部は、軸方向においてモータケース41に近い側の駆動プーリ32Aの端部である。第2の端部は、軸方向においてモータケース41に近い側の駆動プーリ32Aの端部である。従動プーリは、変換機構33のボールナットの外周面に装着される。ベルト32Bは、たとえば、ゴム製である。ベルト32Bは、無端状であって、駆動プーリ32Aと従動プーリとの間に巻き掛けられる。駆動プーリ32Aに巻かれているベルト32Bの部分の外周面は、たとえば、第1の貫通孔41Bの径方向外側に位置している。モータ31のトルクは、駆動プーリ32A、ベルト32B、および従動プーリを介して、変換機構33のボールナットに伝達される。駆動プーリ32Aは、動力伝達部材である。
【0042】
なお、駆動プーリ32Aおよび従動プーリは、外周面に歯が設けられたタイミングプーリであってもよい。ベルト32Bは、内周面に歯が設けられたタイミングベルトであってもよい。この場合、駆動プーリ32Aは、フランジ部32Cを有していてもよい。フランジ部32Cは、ベルト32Bの軸方向への移動を規制するための駆動プーリ32Aの部分である。フランジ部32Cは、たとえば、駆動プーリ32Aの第2の端部の外周面の全周にわたって設けられている。フランジ部32Cの外周面は、たとえば、駆動プーリ32Aに巻かれているベルト32Bの部分の外周面に対して径方向内側に位置する。また、フランジ部32Cの外周面は、たとえば、駆動プーリ32Aに巻かれているベルト32Bの部分の内周面に対して径方向外側に位置する。フランジ部32Cは、駆動プーリ32Aの第1の端部から第2の端部へ向かう方向のベルト32Bの移動を規制する。
【0043】
<ベルト32Bの摩耗について>
伝動機構32がベルト伝動機構である場合、つぎのような懸念がある。すなわち、伝動機構32の長期の使用に伴い、たとえば、ベルト32Bが摩耗する。この摩耗によって発生する摩耗粉が、モータ31の出力軸44を支持する第1の軸受46の内部に侵入することにより、第1の軸受46の円滑な動作が阻害されることが懸念される。そこで、本実施の形態では、摩耗粉などの異物が第1の軸受46の内部に侵入することを抑制するために、つぎのような構成を採用している。
【0044】
<異物の侵入抑制構造>
図2に示すように、モータ本体40は、オイルシール49を有している。オイルシール49は、出力軸44の外周面と、第1の貫通孔41Bの内周面との間に装着されている。オイルシール49は、円筒の断面形状を有する筒状である。オイルシール49の外周面は、第1の貫通孔41Bの内周面に嵌められている。オイルシール49の内周面は、リップ部を有している。リップ部は、出力軸44の外周面に対して摺動可能に接触している。オイルシール49は、出力軸44の外周面と、第1の貫通孔41Bの内周面との間を密封している。
【0045】
オイルシール49は、第1の軸受46に対して、軸方向外側に位置している。オイルシール49は、第1の面と、第2の面とを有している。第1の面は、軸方向外側に位置するオイルシール49の面である。オイルシール49の第1の面は、モータケース41の第1の端面に対して、軸方向内側に位置している。第1の端面は、モータケース41の端壁の外面である。第2の面は、軸方向内側に位置するオイルシール49の面である。第2の面は、軸方向において、第1の面よりも第1の軸受46に近い。第2の面は、第1の軸受46と軸方向に対向している。
【0046】
<異物の排出促進構造>
図2に示すように、モータケース41は、位置決め部61を有している。位置決め部61は、モータケース41の第1の端部に設けられている。位置決め部61は、たとえば、モータ31の基本特性試験を行う際、モータ試験機の治具62に装着されるモータケース41の部分である。
【0047】
位置決め部61の比較例として、つぎのような構成が考えられる。すなわち、位置決め部61の比較例としては、たとえば、円形の断面形状を有し、第1の貫通孔41Bを囲む筒状突部が挙げられる。筒状突部は、モータケース41の第1の端面から軸方向外側に延びる。第1の端面は、モータケース41の端壁の外面である。モータ31の基本特性試験を行う際、筒状突部は、治具62の穴62Aに嵌め込まれる。これにより、治具62、ひいてはモータ試験機に対する出力軸44の位置が決まる。
【0048】
しかし、位置決め部61が筒状突部である場合、つぎのような懸念がある。すなわち、ベルト32Bの摩耗粉などの異物が、筒状突部の内部に侵入するおそれがある。筒状突部が第1の貫通孔41Bを囲んでいるため、筒状突部の内部に侵入した異物が、筒状突部の外部に排出されにくい。したがって、筒状突部の内部に異物が経時的に蓄積するおそれがある。そこで、本実施の形態では、位置決め部61として、つぎのような構成を採用している。
【0049】
図4に示すように、位置決め部61は、複数の突部41Cを含む。本実施の形態では、突部41Cの数は、4つである。各突部41Cは、第1の貫通孔41Bの周囲において、周方向に間隔をあけて配置されている。突部41Cは、第1の貫通孔41Bに沿って湾曲する円弧壁である。突部41Cは、モータケース41の第1の端面から軸方向外側に延びている。第1の端面は、モータケース41の端壁の外面である。突部41Cは、先端面を有している。先端面は、モータケース41の第1の端面と反対側の突部41Cの端面である。先端面は、軸方向に直交する方向に広がる平面である。
【0050】
モータ31の基本特性試験を行う際、4つの突部41Cの外側面が、治具62の穴62Aの内周面に嵌め込まれる。これにより、治具62、ひいてはモータ試験機に対する出力軸44の位置が決まる。
【0051】
図5に示すように、出力軸44の軸方向からみて、各突部41Cは、出力軸44の周方向に等間隔、すなわち90°ごとに配置されている。出力軸44の周方向において互いに隣り合う2つの突部41Cの間には、隙間が形成されている。軸方向からみて、出力軸44の周方向における1つの隙間の長さは、出力軸44の周方向における1つの突部41Cの長さよりも長い。軸方向からみて、12時位置の突部41Cと、6時位置の突部41Cとは、駆動プーリ32Aを挟んで互いに対向している。軸方向からみて、3時位置の突部41Cと、9時位置の突部41Cとは、駆動プーリ32Aを挟んで互いに対向している。
【0052】
突部41Cは、外側面を有している。外側面は、出力軸44の径方向外側に位置する突部41Cの面であって、第1の貫通孔41Bに沿って湾曲する円弧面である。軸方向からみて、各突部41Cの外側面は、同一の第1の仮想円C1上に位置している。第1の仮想円C1は、外側仮想円である。軸方向からみて、第1の仮想円C1は、出力軸44と同軸である。
【0053】
突部41Cは、内側面を有している。内側面は、出力軸44の径方向内側に位置する突部41Cの面であって、第1の貫通孔41Bに沿って湾曲する円弧面である。軸方向からみて、各突部41Cの内側面は、同一の第2の仮想円C2上に位置している。第2の仮想円C2は、内側仮想円である。軸方向からみて、第2の仮想円C2は、出力軸44と同軸である。
【0054】
第2の仮想円C2の直径は、径方向に互いに対向する2つの突部41Cの内側面間の距離に等しい。第2の仮想円C2の直径は、いわば、位置決め部61の内径である。
ベルト32Bの摩耗粉などの異物は、図3に示される軸方向隙間L1、および図5に示される周方向隙間L2を介して、位置決め部61の内部に侵入するおそれがある。位置決め部61の内部は、モータケース41における各突部41Cの内側の領域である。軸方向隙間L1は、各突部41Cの先端面と、駆動プーリ32Aの第2の端面との間の隙間である。周方向隙間L2は、出力軸44の周方向において互いに隣り合う2つの突部41Cの間の隙間である。軸方向隙間L1と、周方向隙間L2とは、異物の侵入経路である。位置決め部61の内部に侵入した異物は、周方向隙間L2を介して、各突部41Cの外側に排出されやすい。周方向隙間L2は、異物の排出経路でもある。
【0055】
位置決め部61の構成パターンとして、3つの構成パターンが考えられる。
<第1の構成パターン>
図6に示すように、第1の構成パターンは、位置決め部61の内径D1と、駆動プーリ32Aの外径D2とが、つぎの関係式(1)を満たすときの態様である。内径D1は、図5に示される第2の仮想円C2の直径、すなわち径方向に互いに対向する2つの突部41Cの内側面間の距離である。外径D2は、駆動プーリ32Aの最外径である。駆動プーリ32Aがフランジ部32Cを有する場合、駆動プーリ32Aの最外径は、フランジ部32Cの外径である。
【0056】
D1<D2 …(1)
ただし、関係式(1)は、突部41Cの先端面が、駆動プーリ32Aの第2の端面に対して軸方向に対向する程度に、位置決め部61の内径D1が駆動プーリ32Aの外径D2よりも小さくなる関係を示す。
【0057】
図6に示すように、突部41Cは、第1の外側傾斜面41Dを有している。第1の外側傾斜面41Dは、突部41Cの外周面と突部41Cの先端面との間の外側角部の全周にわたって設けられている。第1の外側傾斜面41Dは、突部41Cの先端に向かうにつれて外径が小さくなるように傾斜している。
【0058】
駆動プーリ32Aは、第2の外側傾斜面32Dを有している。第2の外側傾斜面32Dは、駆動プーリ32Aの第2の端面と、フランジ部32Cの外周面との間の外側角部の全周にわたって設けられている。第2の外側傾斜面32Dは、駆動プーリ32Aの第2の端部に向かうにつれて外径が小さくなるように傾斜している。
【0059】
軸方向隙間L1は、第1の内側隙間L11と、第1の外側隙間L12とを含む。第1の内側隙間L11は、径方向内側の軸方向隙間L1の領域であって、突部41Cの先端面と駆動プーリ32Aの第2の端面との間の軸方向隙間L1の領域である。第1の外側隙間L12は、径方向外側の軸方向隙間L1の領域であって、突部41Cの先端面と駆動プーリ32Aの第2の外側傾斜面32Dとの間の軸方向隙間L1の領域である。第1の外側隙間L12は、径方向外側に向かうにつれて、軸方向長さが長くなる。第1の外側隙間L12の軸方向長さは、突部41Cの先端面と、第2の外側傾斜面32Dとフランジ部32Cの外周面とが交わる外側角部との間において最大となる。第1の外側隙間L12の軸方向長さは、第1の内側隙間L11の軸方向長さよりも長い。
【0060】
突部41Cの先端面は、駆動プーリ32Aの第2の端面に対して軸方向に対向している。このため、出力軸44に駆動プーリ32Aを組み合わせる際、軸方向の組立公差のばらつきに起因して、突部41Cの先端面と、駆動プーリ32Aの第2の端面とが、互いに軸方向に接触するおそれがある。したがって、第1の内側隙間L11には、出力軸44に対する駆動プーリ32Aの軸方向の組立公差を吸収するために、定められた軸方向長さだけ確保することが要求されることがある。
【0061】
<第2の構成パターン>
第2の構成パターンは、位置決め部61の内径D1と、駆動プーリ32Aの外径D2とが、つぎの関係式(2)を満たすときの態様である。外径D2は、駆動プーリ32Aの最外径である。駆動プーリ32Aがフランジ部32Cを有する場合、駆動プーリ32Aの最外径は、フランジ部32Cの外径である。
【0062】
D1=D2 …(2)
ただし、関係式(2)は、位置決め部61の内径D1と、駆動プーリ32Aの外径D2とが同じであること、および位置決め部61の内径D1が駆動プーリ32Aの外径D2よりも若干小さいことを含む。若干小さいとは、たとえば、突部41Cの先端面が、駆動プーリ32Aの第2の外側傾斜面32Dに対して軸方向に対向する程度であることをいう。
【0063】
図7に示すように、たとえば、位置決め部61の内径D1が、理想的には、駆動プーリ32Aの外径D2と同じに設定されている。駆動プーリ32Aは、先の第1の構成パターンと同様に、第2の外側傾斜面32Dを有している。
【0064】
軸方向隙間L1は、第2の内側隙間L21と、第2の外側隙間L22とを含む。第2の内側隙間L21は、径方向内側の軸方向隙間L1の領域であって、突部41Cの先端面と、駆動プーリ32Aの第2の端面との間の軸方向隙間L1の領域である。第2の外側隙間L22は、径方向外側の軸方向隙間L1の領域であって、突部41Cの先端面と、第2の外側傾斜面32Dとフランジ部32Cの外周面とが交わる外側角部との間の軸方向隙間L1の領域である。第2の外側隙間L22の軸方向長さは、第2の内側隙間L21の軸方向長さよりも長い。
【0065】
突部41Cの内周面と突部41Cの先端面とが交わる内側角部は、第2の外側傾斜面32Dとフランジ部32Cの外周面とが交わる駆動プーリ32Aの外側角部に対して軸方向に対向する。このため、出力軸44と駆動プーリ32Aとを組み立てる際、軸方向の組立公差のばらつきに起因して、突部41Cの内側角部が、駆動プーリ32Aの外側角部に対して軸方向に接触するおそれがある。このため、第2の外側隙間L22には、出力軸44に対する駆動プーリ32Aの軸方向の組立公差を吸収するために、定められた軸方向長さだけ確保することが要求されることがある。
【0066】
第2の外側隙間L22の軸方向長さは、たとえば、第1の構成パターンにおける第1の内側隙間L11の軸方向長さと同じ長さに設定される。このため、第2の外側隙間L22の軸方向長さは、第1の構成パターンにおける第1の外側隙間L12の軸方向長さよりも短くなる。すなわち、図6に示される第1の構成パターンと比較して、突部41Cの先端面は、第1の外側隙間L12と第2の外側隙間L22の軸方向長さとの差の分だけ、駆動プーリ32Aの第2の端面に軸方向に近接している。このため、第2の内側隙間L21の軸方向長さは、先の第1の構成パターンにおける第1の内側隙間L11の軸方向長さよりも短くなる。
【0067】
なお、第2の構成パターンは、位置決め部61の内径D1が駆動プーリ32Aの外径D2よりも若干小さい場合を含む。この場合、突部41Cの内側角部が、駆動プーリ32Aの第2の外側傾斜面32Dに対して軸方向に対向する。突部41Cの内側角部と、駆動プーリ32Aの第2の外側傾斜面32Dとの間の軸方向長さは、たとえば、図7に示される第2の外側隙間L22の軸方向長さと同様の長さに設定される。
【0068】
<第3の構成パターン>
第3の構成パターンは、位置決め部61の内径D1と、駆動プーリ32Aの外径D2とが、つぎの関係式(3)を満たすときの態様である。外径D2は、駆動プーリ32Aの最外径である。駆動プーリ32Aがフランジ部32Cを有する場合、駆動プーリ32Aの最外径は、フランジ部32Cの外径である。
【0069】
D1>D2 …(3)
位置決め部61の内径D1が駆動プーリ32Aの外径D2よりも大きいため、駆動プーリ32Aの第2の端部を位置決め部61の内部に挿入可能である。位置決め部61の内部は、モータケース41における各突部41Cの内側の領域である。このため、出力軸44と駆動プーリ32Aとを組み立てる際、軸方向の組立公差のばらつきに起因して、突部41Cの先端面と、駆動プーリ32Aとが、互いに軸方向に接触することが抑制される。
【0070】
出力軸44と駆動プーリ32Aとは、たとえば、位置決め部61の内部に駆動プーリ32Aの第2の端部が挿入された状態に維持されるように組み合わせられる。この場合、突部41Cの内側面と駆動プーリ32Aの外周面とは、互いに径方向に対向する。すなわち、突部41Cの内側面と駆動プーリ32Aの外周面との間には、径方向隙間が形成される。
【0071】
突部41Cの内側面と駆動プーリ32Aの外周面との径方向隙間の径方向長さは、たとえば、図7に示される第2の構成パターンにおける第2の外側隙間L22の軸方向長さと同じ長さに設定してもよい。また、突部41Cの内側面と駆動プーリ32Aの外周面との径方向隙間の径方向長さは、第2の構成パターンにおける第2の外側隙間L22の軸方向長さよりも短い長さに設定してもよい。
【0072】
なお、製品仕様によっては、駆動プーリ32Aの第2の端部を位置決め部61の内部に挿入しないようにしてもよい。
<実施の形態の効果>
本実施の形態は、以下の作用および効果を奏する。
【0073】
(1)オイルシール49は、第1の軸受46に対して、軸方向外側に位置している。オイルシール49は、出力軸44の外周面と、第1の貫通孔41Bの内周面との間を密封している。摩耗粉などの異物が、軸方向隙間L1および周方向隙間L2を介して、第1の貫通孔41Bの内部に侵入した場合であれ、侵入した異物が第1の軸受46に至ること、ひいては第1の軸受46の内部に侵入することが抑制される。第1の軸受46に対する異物侵入のリスクが低減されることにより、第1の軸受46、ひいては転舵機構11の動作に対する信頼性を向上させることができる。異物は、ベルト32Bの摩耗紛などの粉塵、あるいはグリースを含む。
【0074】
(2)オイルシール49は、モータケース41の端壁の外面に対して、軸方向内側に位置している。すなわち、オイルシール49の第1の面は、モータケース41の端壁の外面に対して、軸方向内側に位置している。第1の面は、軸方向外側に位置するオイルシール49の面である。モータケース41の端壁は、モータケース41の中でも特に剛性が高い部位の一つである。このため、オイルシール49を安定して保持することができる。
【0075】
また、オイルシール49の第1の面が、モータケース41の端壁の外面に対して軸方向外側に位置している場合と異なり、オイルシール49の一部が、第1の貫通孔41Bの外部に露出することがない。すなわち、オイルシール49は、その全体が第1の貫通孔41Bの内部に位置している。オイルシール49の外周面の全体が、第1の貫通孔41Bの内周面に接触した状態に維持される。このため、オイルシール49を安定して保持することができる。オイルシール49の劣化も抑えられる。
【0076】
(3)モータケース41は、位置決め部61を有している。位置決め部61は、複数の突部41Cを含む。各突部41Cは、モータケース41の端壁の外面において、第1の貫通孔41Bの周囲に配置されている。各突部41C間には、周方向隙間L2が形成されている。周方向隙間L2は、出力軸44の周方向において互いに隣り合う2つの突部41Cの間の隙間である。ベルト32Bの摩耗粉などの異物が、モータケース41における各突部41Cの内側の領域に侵入した場合、侵入した異物は、周方向隙間L2を介して、モータケース41における各突部41Cの外側の領域に排出されやすい。このため、モータケース41における各突部41Cの内側の領域に異物が蓄積すること、ひいては第1の貫通孔41Bの内部に異物が侵入することを抑制することができる。
【0077】
(4)位置決め部61は、モータケース41の端壁の外面において、第1の貫通孔41Bの周囲に配置される複数の突部41Cを有する。位置決め部61が、単一の筒状の突部である場合に比べて、周方向隙間L2の分だけ、モータケース41、ひいてはモータ本体を軽量化することができる。
【0078】
(5)複数の突部41Cは、第1の貫通孔41Bの周囲に等間隔で配置されている。このため、モータ31の基本特性試験を行う際、モータ31の出力軸44をモータ試験機の所定位置に安定的に配置することができる。
【0079】
(6)各突部41Cの外側面は、同一の第1の仮想円C1上に位置している。軸方向からみて、第1の仮想円C1は、出力軸44と同軸である。このため、モータ31の基本特性試験を行う際、各突部41Cを治具62の穴62Aに嵌め込むだけで、治具62、ひいてはモータ試験機に対する出力軸44の位置が決まる。すなわち、モータ31の基本特性試験を行う際、モータ31の出力軸44をモータ試験機の所定位置に容易に配置することができる。したがって、モータ31の位置決め作業が簡単である。モータ31の位置決め作業性もよい。
【0080】
(7)位置決め部61として第1の構成パターンが採用される場合、位置決め部61の内径D1、すなわち第2の仮想円C2の直径が駆動プーリ32Aの外径D2よりも小さい。また、突部41Cの先端面が、駆動プーリ32Aの第2の端面に対して軸方向に対向する。このため、出力軸44に駆動プーリ32Aを組み合わせる際、軸方向の組立公差のばらつきに起因して、突部41Cの先端面と駆動プーリ32Aの第2の端面とが、互いに軸方向に接触するおそれがある。この点、本実施の形態では、突部41Cの先端面は、駆動プーリ32Aの第2の端面に対して、軸方向に定められた距離だけ離隔している。すなわち、突部41Cの先端面と、駆動プーリ32Aの第2の端面との間には、第1の内側隙間L11が設けられている。第1の内側隙間L11は、出力軸44に対する駆動プーリ32Aの軸方向の組立公差を吸収する観点から定められた軸方向長さを有する。これにより、出力軸44に駆動プーリ32Aを組み合わせる際、突部41Cの先端面と駆動プーリ32Aの第2の端面との軸方向の接触を抑制することができる。
【0081】
(8)位置決め部61として第2の構成パターンが採用される場合、位置決め部61の内径D1、すなわち第2の仮想円C2の直径が駆動プーリ32Aの外径D2と同じである。また、突部41Cの内周面と突部41Cの先端面とが交わる内側角部が、第2の外側傾斜面32Dとフランジ部32Cの外周面とが交わる外側角部に対して軸方向に対向する。このため、出力軸44に駆動プーリ32Aを組み合わせる際、軸方向の組立公差のばらつきに起因して、突部41Cの内側角部と、駆動プーリ32Aの外側角部とが、互いに軸方向に接触するおそれがある。この点、本実施の形態では、突部41Cの内側角部は、駆動プーリ32Aの外側角部に対して、軸方向に定められた距離だけ離隔している。すなわち、突部41Cの内側角部と、駆動プーリ32Aの外側角部との間には、第2の外側隙間L22が設けられている。第2の外側隙間L22は、出力軸44に対する駆動プーリ32Aの軸方向の組立公差を吸収する観点から定められた軸方向長さを有する。これにより、出力軸44に駆動プーリ32Aを組み合わせる際、突部41Cの内側角部と駆動プーリ32Aの外側角部との軸方向の接触を抑制することができる。
【0082】
(9)位置決め部61の第2の構成パターンは、位置決め部61の内径D1、すなわち第2の仮想円C2の直径が駆動プーリ32Aの外径D2よりも若干小さい場合を含む。この場合、突部41Cの内側角部が、駆動プーリ32Aの第2の外側傾斜面32Dに対して軸方向に対向する。突部41Cの内側角部と、駆動プーリ32Aの第2の外側傾斜面32Dとの間の軸方向長さは、たとえば、出力軸44に対する駆動プーリ32Aの軸方向の組立公差を吸収する観点から、図7に示される第2の外側隙間L22の軸方向長さと同様の長さに設定される。このため、出力軸44に駆動プーリ32Aを組み合わせる際、突部41Cの内側角部と、駆動プーリ32Aの第2の外側傾斜面32Dとの軸方向の接触を抑制することができる。
【0083】
(10)位置決め部61として第3の構成パターンが採用される場合、位置決め部61の内径D1、すなわち第2の仮想円C2の直径が駆動プーリ32Aの外径D2よりも大きい。また、駆動プーリ32Aの第2の端部を位置決め部61の内部に挿入可能である。位置決め部61の内部は、モータケース41における複数の突部41Cの内側の領域である。このため、出力軸44に駆動プーリ32Aを組み合わせる際、軸方向の組立公差のばらつきに起因して、突部41Cの先端面と、駆動プーリ32Aとが、互いに軸方向に接触することを抑制することができる。
【0084】
(11)駆動プーリ32Aは、フランジ部32Cを有している。フランジ部32Cは、モータケース41の端壁に近い側の駆動プーリ32Aの軸方向端部の外周面の全周にわたって設けられている。フランジ部32Cの外周面は、駆動プーリ32Aに巻かれているベルト32Bの部分の外周面に対して径方向内側に位置する。また、フランジ部32Cの外周面は、駆動プーリ32Aに巻かれているベルト32Bの部分の内周面に対して径方向外側に位置する。このため、駆動プーリ32Aの第1の端部から第2の端部へ向かう方向のベルト32Bの移動を、フランジ部32Cによって適切に規制することができる。
【0085】
<他の実施の形態>
なお、本実施の形態は、つぎのように変更して実施してもよい。
・位置決め部61の突部41Cの数は、製品仕様などに応じて、適宜変更してもよい。図8に示すように、位置決め部61は、たとえば、3つの突部41Cを有していてもよい。各突部41Cは、出力軸44の周方向に等間隔、すなわち120°ごとに配置されている。突部41Cの周方向長さは、図5に示される突部41Cの周方向長さと同じである。出力軸44の軸方向からみて、各突部41Cの間には、周方向隙間L2が設けられている。このようにしても、各突部41Cを治具62の穴62Aに嵌め込んだとき、治具62に対するモータ31の径方向の移動が規制される。
【0086】
・位置決め部61の突部41Cの数は、製品仕様などに応じて、適宜変更してもよい。図9に示すように、位置決め部61は、2つの突部41Cを有していてもよい。各突部41Cは、出力軸44の周方向に等間隔、すなわち180°ごとに配置されている。突部41Cの周方向長さは、図5に示される突部41Cの周方向長さよりも長い。出力軸44の軸方向からみて、3時位置、および9時位置には、周方向隙間L2が設けられている。このようにしても、各突部41Cを治具62の穴62Aに嵌め込んだとき、治具62に対するモータ31の径方向の移動が規制される。
【0087】
・位置決め部61の突部41Cの形状は、製品仕様などに応じて、適宜変更してもよい。突部41Cは、出力軸44の軸方向からみて、第1の仮想円C1上に位置する辺、頂点、あるいは接点を有する形状であればよい。突部41Cは、たとえば、円筒状であってもよい。この場合、円筒状の突部41Cは、軸方向からみて、突部41Cの外周面が第1の仮想円C1に内接するように設けられる。このようにしても、各突部41Cを治具62の穴62Aに嵌め込んだとき、治具62に対するモータ31の径方向の移動が規制される。
【0088】
・位置決め部61の各突部41Cの配置間隔は、製品仕様などに応じて、適宜変更してもよい。たとえば、各突部41Cは、必ずしも周方向に等間隔に配置しなくてもよい。すなわち、各突部41Cの間に形成される周方向隙間L2の周方向長さが異なっていてもよい。各突部41Cを治具62の穴62Aに嵌め込んだとき、治具62に対するモータ31の径方向の移動が規制されればよい。
【0089】
・治具62の形状によっては、突部41Cをつぎのように構成してもよい。すなわち、図10に示すように、モータケース41の端壁と向き合う治具62の面は、突部62Bを有している。突部62Bは、たとえば、円筒状であって、穴62Aの周囲を囲んでいる。突部62Bは、穴62Aと同軸である。この場合、位置決め部61は、たとえば、モータケース41の端壁の外面に溝41Eを設けることによって形成してもよい。溝41Eは、環状であって、治具62の突部62Bと嵌まり合う。モータケース41の端壁の溝41Eに囲まれた部分に、複数の周方向隙間L2(図示略)を設けることにより、複数の突部41Cが形成される。このようにしても、先の(1)欄~(11)欄に記載の効果と同様の効果を得ることができる。
【0090】
・位置決め部61として、図10に示される構成を採用する場合、オイルシール49は、溝41Eの内端面に対して、軸方向内側に位置していてもよい。すなわち、オイルシール49の第1の面は、溝41Eの内端面に対して、軸方向内側に位置している。第1の面は、軸方向外側に位置するオイルシール49の面である。モータケース41の端壁のうち、溝41Eが設けられていない部分の剛性は、溝41Eが設けられている部分の剛性よりも高い。このため、オイルシール49を安定して保持することができる。
【0091】
・伝動機構32は、ウォーム減速機であってもよい。ウォーム減速機は、ウォームとウォームホイールとを組み合わせた機構である。ウォームは、継手を介して出力軸44の先端に連結される。継手は、動力伝達部材である。また、変換機構33は、ラックアンドピニオン機構であってもよい。ラックアンドピニオン機構は、ピニオンシャフトとラック軸とを組み合わせた機構である。転舵シャフト22は、ラック軸を兼ねる。この場合、ウォームあるいはウォームホイールの摩耗粉、またはウォームあるいはウォームホイールに塗布されるグリースが、第1の貫通孔41Bを介してモータケース41の内部に侵入するおそれがある。したがって、オイルシール49を、第1の軸受46に対して、軸方向外側に配置することにより、異物が第1の軸受46の内部、ひいてはモータケース41の内部に侵入することを抑制することができる。また、位置決め部61の構成は、図6および図7に示される構成を含む3つの構成パターンのうちいずれか一つを採用してもよい。ただし、突部41Cと駆動プーリ32Aとの関係は、突部41Cと継手との関係に読み替える。これにより、出力軸44に継手を組み合わせる際、軸方向の組立公差のばらつきに起因して、突部41Cと継手とが、互いに軸方向に接触することを抑制することができる。
【0092】
・位置決め部61の構成として、第1の構成パターン、または第3の構成パターンを採用する場合、駆動プーリ32Aとして、第2の外側傾斜面32Dを有さない構成を採用してもよい。
【0093】
・転舵機構11は、電動駆動装置の一例であるが、これに限定されるものではない。電動駆動装置には、モータ31および伝動機構32を有する機械装置の全般が含まれる。
・本明細書において使用される「筒」又は「筒状」という用語は、周壁を有する任意の構造を指しうる。「筒」または「筒状」という用語は、たとえば、円形、楕円形、および鋭いまたは丸い角を持つ多角形の断面形状を有する任意の構造を指しうるが、これらに限定されない。
【符号の説明】
【0094】
11…転舵機構(電動駆動装置)
22…転舵シャフト(駆動対象)
31…モータ
32…伝動機構
32A…駆動プーリ(動力伝達部材)
32D…第2の外側傾斜面(外側傾斜面)
41…モータケース
41B…第1の貫通孔(貫通孔)
41C…突部
44…出力軸
46…第1の軸受(軸受)
49…オイルシール
C1…第1の仮想円(外側仮想円)
C2…第1の仮想円(内側仮想円)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10