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特開2024-114240溝路構成部材および溝路構成部材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114240
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】溝路構成部材および溝路構成部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E03F 5/04 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
E03F5/04 B
E03F5/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019882
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】592094243
【氏名又は名称】カネソウ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】豊田 悟志
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063CA02
2D063CA04
2D063CA11
2D063CA41
2D063CB06
(57)【要約】
【課題】通水溝路を施工する作業の繁雑化を抑制できると共に、製造に要する手間とコストとを抑制できる溝路構成部材を提案する。
【解決手段】通水溝路の側壁部を構成する一対の垂直側板部11,11と、該垂直側板部11の両端縁から外方へ略直交状に折り曲げられた折曲端部21とを備え、所定の単位分割長で形成されてなるものである。そして、かかる構成を長手方向に複数列ねて、隣り合う折曲端部21同士を連結させることにより、通水溝路を形成する。かかる構成は、単位分割長でユニット化されたことで、運搬や施工の作業性を向上できるため、通水溝路の施工作業に要する手間やコストを低減できる。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた単位分割長で形成され、長手方向に複数列設されることにより通水溝路を形成するものであって、
前記通水溝路の長手方向に沿って対向状に立設されて、該通水溝路の側壁部を夫々構成する、金属板からなる一対の垂直側板部と、
前記垂直側板部の長手方向の両端縁から外方へ夫々折り曲げられ、該垂直側板部に対して直交状に延出された折曲端部と
を備え、
長手方向で隣り合う夫々の折曲端部同士を連結させることによって、長手方向に列設されるものであることを特徴とする溝路構成部材。
【請求項2】
各垂直側板部の上縁から外方へ延出された水平縁部と該水平縁部の外縁から上方へ立ち上がる垂直縁部とを備え、通水溝路の上部開口を覆う溝蓋を支承する一対の支持枠部と、
各垂直側板部の下縁から外方へ延出された下側水平縁部と
を備えたものであって、
折曲端部は、
上端が前記水平縁部の下面に接し、且つ下端が前記下側水平縁部の上面に接すると共に、
上端部の内側に、支持枠部の水平縁部と垂直側板部とに接しない面取り上部が形成され、且つ下端部の内側に、下側水平縁部と垂直側板部とに接しない面取り下部が形成されてなるものであることを特徴とする請求項1に記載の溝路構成部材。
【請求項3】
垂直側板部の外側面に、折曲端部から所定間隔をおいて接合され、上端が支持枠部の水平縁部の下面に接し且つ下端が下側水平縁部の上面に接する帯板状の補強板部を備え、
前記補強板部は、
上端部の内側に、支持枠部の水平縁部と垂直側板部とに接しない面取り上部が形成され、且つ下端部の内側に、下側水平縁部と垂直側板部とに接しない面取り下部が形成されたものであることを特徴とする請求項2に記載の溝路構成部材。
【請求項4】
請求項1に記載の溝路構成部材の製造方法であって、
レーザー加工により、金属板から、垂直側板部と該垂直側板部の長手方向両端に夫々連成された折曲端部形成部とを有する所定形状の展開板体を切り出す切出し工程と、
前記展開板体の折曲端部形成部を折曲加工することにより、垂直側板部の両端縁に折曲端部を形成する折曲げ工程と
を備えていることを特徴とする溝路構成部材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水路等の通水溝路を構成するために用いられる溝路構成部材、および溝路構成部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通水溝路は、コンクリート製のU字溝により構成されるものがよく知られている。こうしたU字溝上には、溝蓋を支承するための支持枠が設置され、該溝蓋によって通水溝路の上部開口が覆われる(例えば、特許文献1)。
【0003】
前記のU字溝は、重量物であることから、運搬や施工の際における取扱いが難しく、作業性を向上できない一因とされる。これに対して、例えば図9,10に示すように、金属製板材からなる一対の溝枠部102,102が所定間隔をおいて対向状に配設された溝路構成部材101により、通水溝路を形成するようにしたものがある。この溝路構成部材101は、その溝枠部102が、長手方向に延成された長方形状の垂直板部105と、該垂直板部105の上側縁から連成された略L形の支持枠部106と、該垂直板部105の下側縁から連成された載置板部107とから構成されている。ここで、支持枠部106は、垂直板部105の上側縁から外方へ延出された水平縁部110と該水平縁部110の外側縁から上方へ立ち上がる垂直縁部111とにより構成されている。こうした溝路構成部材101は、基盤上に配置されて、溝枠部102の外側にコンクリートが打設されることにより、通水溝路が形成される。そして、各各溝枠部102の支持枠部106,106により溝蓋(図示せず)を支承することで、通水溝路の上部開口が覆われる。
【0004】
前記した溝枠部102は、垂直板部105の外面に、長手方向に所定間隔をおいて複数の補強板113が溶接されてなる。各補強板113は、垂直板部105と直交状に取り付けられており、上端が水平縁部110の下面に溶接され且つ下端が載置板部107の上面に溶接されている。こうした複数の補強板113によって、垂直板部105の剛性と強度とを補強すると共に、前記溝蓋を支承する支持枠部106を補強する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-163684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前述した従来の溝路構成部材101は、その長さが通水溝路の長さに応じて設定される。例えば、通水溝路を二分割や三分割する長さにより溝路構成部材101を形成し、二個や三個の溝路構成部材101を長手方向に列設することによって通水溝路を形成する。こうしたことから、従来は、比較的長尺の溝路構成部材101が通水溝路の施工に用いられていた。しかし、長尺になるにつれて、重量が増加することから、運搬や施工の作業に要する負担が大きく増えて、作業性が低減する。さらに、従来の溝路構成部材101では、所望の剛性と強度とを保つために、前記した補強板113を一定間隔で設ける必要があることから、前記した長尺になるにつれて、該補強板113の配設数が増加する。この補強板113の配設数が増加するにしたがって、部品点数が増えると共に、該補強板113の取り付け作業に要する手間とコストとが増加する。加えて、溝路構成部材101の重量も増加する。
【0007】
本発明は、施工作業の繁雑化を抑制できると共に、製造に要する手間とコストとを抑制し得る溝路構成部材と、該溝路構成部材の製造方法とを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、予め定められた単位分割長で形成され、長手方向に複数列設されることにより通水溝路を形成するものであって、前記通水溝路の長手方向に沿って対向状に立設されて、該通水溝路の側壁部を夫々構成する、金属板からなる一対の垂直側板部と、前記垂直側板部の長手方向の両端縁から外方へ夫々折り曲げられ、該垂直側板部に対して直交状に延出された折曲端部とを備え、長手方向で隣り合う夫々の折曲端部同士を連結させることによって、長手方向に列設されるものであることを特徴とする溝路構成部材である。
【0009】
かかる構成にあっては、通水溝路を構成する一のユニットとして、予め定められた単位分割長でユニット化されたものであり、垂直側板部の長手方向両端部を外方へ折曲させて折曲端部を形成することによって、該垂直側板部の剛性と強度とを向上させたものである。そして、複数の本構成(ユニット)を長手方向に列ねて、隣り合う折曲端部同士を連結させることにより、通水溝路を形成する。本発明の構成によれば、単位分割長でユニット化されたことで、比較的運搬し易く且つ施工作業を行い易いことから、通水溝路の施工作業に要する手間とコストを低減できる。さらに、折曲端部により剛性と強度とが向上することから、前記従来構成のように補強板を取り付ける場合に、該補強板の配設数を低減できるため、該補強板の取り付け作業に要する手間とコストとを低減できる。
【0010】
前述した本発明の溝路構成部材にあって、各垂直側板部の上縁から外方へ延出された水平縁部と該水平縁部の外縁から上方へ立ち上がる垂直縁部とを備え、通水溝路の上部開口を覆う溝蓋を支承する一対の支持枠部と、各垂直側板部の下縁から外方へ延出された下側水平縁部とを備えたものであって、折曲端部は、上端が前記水平縁部の下面に接し、且つ下端が前記下側水平縁部の上面に接すると共に、上端部の内側に、支持枠部の水平縁部と垂直側板部とに接しない面取り上部が形成され、且つ下端部の内側に、下側水平縁部と垂直側板部とに接しない面取り下部が形成されてなるものである構成が提案される。
【0011】
かかる構成にあって、折曲端部によって水平縁部と下側水平縁部とを支えることから、溝蓋を支承する支持枠部の強度と剛性とを向上でき、該溝蓋を長期に亘って安定して支持できる。
【0012】
また、本構成にあっては、折曲端部の面取り上部によって、該折曲端部が垂直側板部の上縁と水平縁部の内縁とを連続する湾曲部位に接しないと共に、該折曲端部の面取り下部によって、該折曲端部が垂直側板部の下縁と下側水平縁部の内縁とを連続する湾曲部位に接しない。これにより、折曲端部は、折り曲げられる際に前記湾曲部位と干渉しないため、垂直側板部の両側縁から安定して折り曲げて形成され得る。
【0013】
さらに、本発明の構成がスチール製の鋼板から成形されたものである場合には、溶融亜鉛メッキによる防錆処理を行うことが一般的である。そして、防錆処理では、高温で溶かした亜鉛槽に浸すことで表面に亜鉛被膜を形成する。こうした防錆処理で亜鉛槽から取り出す際に、本構成は、面取り上部と面取り下部とにより夫々形成される空隙から溶融亜鉛を排出できるため、前記した上下の湾曲部位に亜鉛が溜まってしまうことを抑制できるという優れた利点がある。
【0014】
前述した本発明の溝路構成部材にあって、垂直側板部の外側面に、折曲端部から所定間隔をおいて接合され、上端が支持枠部の水平縁部の下面に接し且つ下端が下側水平縁部の上面に接する帯板状の補強板部を備え、前記補強板部は、上端部の内側に、支持枠部の水平縁部と垂直側板部とに接しない面取り上部が形成され、且つ下端部の内側に、下側水平縁部と垂直側板部とに接しない面取り下部が形成されたものである構成が提案される。
【0015】
かかる構成にあっては、両端の折曲端部間に補強板部が取り付けられたものであるから、該補強板部によって、垂直側板部の剛性と強度とを一層向上できると共に、支持枠部の水平縁部と下側水平縁部との強度と剛性とを一層向上できる。
【0016】
また、本構成は、補強板部が面取り上部と面取り下部とを備えることから、垂直側板部の上縁と水平縁部の内縁とを連続する湾曲部位に接しないと共に、垂直側板部の下縁と下側水平縁部の内縁とを連続する湾曲部位に接しない。これにより、補強板部は、垂直側板部に取り付けられる際に前記湾曲部位と干渉しないことから、内側縁を垂直側板部に接した状態で容易かつ安定して取り付けられる。
【0017】
さらに、前述した折曲端部と同様に、スチール製の鋼板から成形されたものである場合には、防錆処理の際に、前記した上下の湾曲部位に亜鉛メッキが溜まってしまうことを抑制できるという優れた利点がある。
【0018】
本発明は、前述した溝路構成部材の製造方法であって、レーザー加工により、金属板材から、垂直側板部と該垂直側板部の長手方向両端に夫々連成された折曲端部形成部とを有する所定形状の展開板体を切り出す切出し工程と、前記展開板体の折曲端部形成部を折曲加工することにより、垂直側板部の両端縁に折曲端部を形成する折曲げ工程とを備えていることを特徴とする溝路構成部材の製造方法である。
【0019】
かかる製造方法にあっては、レーザー加工により展開板体を正確かつ容易に切り出すことができ、該展開板体の折曲端部形成部を折曲げ加工することによって、両端に折曲端部を有する垂直側板部を安定して形成できる。このように本発明の製造方法によれば、前述した作用効果を奏し得る溝路構成部材を安定して製造できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の溝路構成部材にあっては、単位分割長でユニット化されたことにより、比較的運搬し易く且つ施工作業を行い易いため、通水溝路の施工作業に要する手間とコストとを低減できる。また、折曲端部により剛性と強度とを向上できることから、前記の従来構成と同様の補強板を取り付ける場合に、該補強板の配設数を少なくでき、製造に要するコストと時間とを低減できる。
【0021】
本発明の溝路構成部材の製造方法によれば、前述した溝路構成部材を安定して製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施例の溝路構成部材1の、(A)平面図と、(B)側面図である。
図2】溝路構成部材1の、(A)正面図と、(B)図1のX-X線断面図である。
図3】溝路構成部材1の斜視図である。
図4】通水溝路51の施工状態を示す縦断面図である。
図5】隣り合う溝路構成部材1を連結した状態を示す拡大側面図である。
図6】溝路構成部材1の製造工程を示すフロー図である。
図7】(A)展開板体41と(B)補強板部31とを示す平面図である。
図8】展開板体41を折曲加工した状態を示す説明図である。
図9】従来構成の溝路構成部材101を示す側面図である。
図10】従来構成の溝路構成部材101を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明にかかる実施例を添付図面を用いて説明する。
本実施例の溝路構成部材1は、予め定められた単位分割長tで形成されたものであり、通水溝路51(図4参照)を構成する一のユニットである。そして、このユニットである溝路構成部材1を、長手方向に複数列ねて連結することによって、通水溝路51を形成できる。
【0024】
溝路構成部材1は、図1~3に示すように、所定間隔をおいて対向配置された一対の溝枠体2,2を備え、両溝枠体2,2の下部に差し渡された保持板5と両溝枠体2,2の上部に差し渡された保持部材6とが長手方向に複数配設されている。これら上下の保持板5および保持部材6によって、両溝枠体2,2の前記間隔が保たれている。尚、本実施例にあって、下部の保持板5は矩形状の平板からなり、上部の保持部材6は、L形の鋼材からなる。そして、上部の保持部材6は、通水溝路(図4参照)の施工時に取り外される。
【0025】
溝枠体2は、後述するように所定形状の鋼板を折曲加工することによって形成された枠主体30(図8参照)と、該枠主体30に溶接された補強板部31(図7(B)参照)とにより構成される。枠主体30は、横方向(通水溝路51の長手方向)に長尺な側面視長方形状の垂直側板部11と、該垂直側板部11の上縁から外方(通水溝路の外方)へ連成された断面L形の支持枠部12と、該垂直側板部11の下縁から外方へ延出された下側水平縁部13とを備える。支持枠部12は、垂直側板部11の上縁から外方へ延出された水平縁部15と、該水平縁部15の外縁から上方へ立ち上がる垂直縁部16とにより構成されている。ここで、下側水平縁部13と支持枠部12の水平縁部15とは、垂直側板部11に対して略直交していると共に、該支持枠部12の垂直縁部16は、該垂直側板部11と略平行に設けられている。
【0026】
そして、溝枠体2の枠主体30には、垂直側板部11の長手方向の両端縁から外方へ夫々延出され、該垂直側板部11に略直交して設けられた折曲端部21,21を備えている(図8参照)。折曲端部21は、略長方形状を成し、その外縁が支持枠部12の垂直縁部16および下側水平縁部13よりも外方へ突出しないように形成されている。さらに、折曲端部21は、その上端が支持枠部12の水平縁部15の下面に溶接されると共に、下端が下側水平縁部13の上面に溶接される。そして、折曲端部21は、長手方向で外側を向いた面(外側面)21aが、支持枠部12の長手方向端面(水平縁部15および垂直縁部16の各端面)と下側水平縁部13の長手方向端面とに略面一に設けられている。このように本実施例にあっては、長手方向両端に位置する折曲端部21,21の各外側面21a,21a間の距離(換言すると、支持枠部12の長さ及び下側水平縁部13の長さ)が、前記した単位分割長tとなっている。
【0027】
この折曲端部21は、その上端の内側(垂直側板部11側)に面取り上部22が形成されると共に、下縁の内側に面取り下部23が形成されている。この面取り上部22は、垂直側板部11と支持枠部12の水平縁部15とに非接触であることから、これらとの間に空隙24が形成される。同様に、面取り下部23は、垂直側板部11と下側水平縁部13とに非接触であることから、これらとの間に空隙25が形成される。さらに、折曲端部21は、面取り上部22によって、垂直側板部11の上縁と水平縁部15とを連続する湾曲部位に接触しないと共に、面取り下部23によって、該垂直側板部11の下縁と下側水平縁部13とを連続する湾曲部位に接触しない。
【0028】
折曲端部21には、円形の透孔26,26が上下に並んで開口されている。この透孔26と、ボルト28およびナット29とよって、後述するように隣り合う溝路構成部材1を連結できる(図5参照)。
【0029】
こうした枠主体30の垂直側板部11の外面に、帯板状の補強板部31が溶接されることによって、前記溝枠体2が形成される。この補強板部31は、長方形状を成し、前記折曲端部21と略平行に配置されて、内縁が垂直側板部11の外面に溶接されている。さらに、補強板部31は、上端が支持枠部12の水平縁部15の下面に溶接され且つ下端が下側水平縁部13の上面に溶接されていると共に、その外縁が支持枠部12の垂直縁部16および下側水平縁部13よりも外方へ突出しないように形成されている。また、前記折曲端部21と同様に、補強板部31には、その上端の内側(垂直側板部11側)に面取り上部32が形成されると共に、下縁の内側に面取り下部33が形成されている。そして、面取り上部32と、垂直側板部11および水平縁部15との間に空隙35が形成されると共に、面取り下部33と、垂直側板部11および下側水平縁部13との間に空隙36が形成される。また、補強板部31は、面取り上部32によって垂直側板部11の上縁と水平縁部15とを連続する湾曲部位に接触せず、且つ面取り下部33によって垂直側板部11の下縁と下側水平縁部13とを連続する湾曲部位に接触しない。
【0030】
本実施例の溝路構成部材1は、こうした二個の溝枠体2,2を所定間隔をおいて対向配置して、これら溝枠体2,2に前記保持板5と前記保持部材6とが差し渡されてなる。ここで、保持板5は、両端部が、各溝枠体2,2を構成する垂直側板部11,11の下端部に溶接され、両垂直側板部11,11の間隔を保持する。また、保持部材6は、両端部が、各溝枠体2,2を構成する支持枠部12,12の水平縁部15,15に乗載された状態で仮溶接され、前記保持板5と共に両垂直側板部11,11の間隔を保持する。
【0031】
さらに、本実施例にあっては、各溝枠体2,2の垂直縁部16の長手方向一端部に、長手方向に突出する案内部材17,17が夫々溶接されている。この案内部材17,17により、複数の溝路構成部材1を列ねる際に、該溝路構成部材1を一列状に容易に配置できる。
【0032】
尚、本実施例の溝路構成部材1は、溝枠体2の単位分割長t=1000mm、高さ=400mm、板厚=3.2mmに設定されている。そして、両溝枠体2,2の間隔=200mmとしている。
【0033】
次に、前述した本実施例の溝路構成部材1により構成される通水溝路51について説明する。
溝路構成部材1は、前述したように、通水溝路51を構成する一のユニットとして、前記単位分割長tで形成されたものである。この溝路構成部材1を、長手方向に沿って複数個を列ねて、図5に示すように隣り合う折曲端部21同士をボルト28とナット29とにより連結させると共に、図4に示すように所定深さに設けられたコンクリート製の基盤52上に載せる。そして、図示しない嵩上げ手段を用いて、溝路構成部材1の上端位置が地面53と略等しくなるように、該溝路構成部材1の深さ位置を調整する。この後に、各溝枠体2の下側水平縁部13を、図示しないアンカーボルトによって基盤52に固定することにより、溝路構成部材1を基盤52上に位置決めする。
【0034】
溝路構成部材1を位置決め固定した後に、該溝路構成部材1の外側からモルタルを流し込み、図4のように該溝路構成部材1を埋設する。さらに、溝路構成部材1の溝枠体2,2間にも、該垂直側板部11,11の下部を埋めるようにモルタルを流し込み、長手方向へ傾斜する勾配底部55を形成する。勾配底部55は、長手方向の所定場所に設けられた排水管(図示せず)に向かって水流を生じ易くでき、複数の溝路構成部材1に亘って比較的緩やかな勾配で形成される。そして、保持板5は、垂直側板部11,11の下端部に溶接されていることから、勾配底部55を形成するモルタルによって埋まる。ここで、保持板5が平板状であり且つ垂直側板部11の下端部に溶接された構成であるから、勾配底部55を形成する際に、所定勾配で均す作業を行い易く、作業性の向上に寄与する。尚、こうした勾配底部55の勾配は、通水溝路51の長さ、前記排水管の位置などに基づいて、自由に設計することが可能である。
【0035】
このように溝路構成部材1を埋設した後に保持部材6を取り外すことにより、通水溝路51が形成される。通水溝路51は、その左右の側壁部が溝路構成部材1の垂直側板部11,11によって形成され、該溝路構成部材1の支持枠部12,12間で開口する。そして、この上部開口を覆うグレーチング56が、支持枠部12,12の水平縁部15,15によって支承される。グレーチング56は、図示しないロック手段により溝路構成部材1に固定される。このグレーチング56が、本発明にかかる溝蓋に相当する。尚、グレーチング56は、従来から公知のものを適用できることから、その詳細は書略する。
【0036】
次に、前述した実施例の溝路構成部材1の製造方法について説明する。
溝路構成部材1の製造方法は、図6に示す本実施例の製造工程により実現される。この製造工程は、準備工程、切出し工程、折曲げ工程、溶接工程、組立て工程、およびメッキ処理工程により構成される。ここで、準備工程は、スチール製の鋼板を準備する工程である。さらに、本実施例では、準備工程で、前記した保持板5と保持部材6とを準備する。
【0037】
切出し工程は、前記スチール製の鋼板から、図7(A)に示す所定形状の展開板体41をレーザー加工によって切り出すと共に、スチール製の長尺帯状板材を所定長で切断することによって、図7(B)に示す補強板部31を得る。ここで、補強板部31は、前述したように帯板状に形成され、面取り上部32と面取り下部33とが形成される。尚、スチール製鋼板とスチール製の長尺帯状板材とが、本発明にかかる金属板に相当する。
【0038】
展開板体41は、長方形状の主体部44と、該主体部44の長手方向の両側縁から夫々外方へ延出された折曲端部形成部45,45とから構成されている。主体部44は、前述した垂直側板部11を構成する側板部形成部46と、該側板部形成部46の上縁から上方へ延出された支持枠形成部47と、該側板部形成部46の下縁から下方へ延出された下側縁形成部48とを備える。そして、支持枠形成部47が、側板部形成部46の上縁に連成された水平縁形成部47aと、該水平縁形成部47aの上縁から上方へ延出された垂直縁形成部47bとから構成されている。さらに、側板部形成部46の両側縁から前記折曲端部形成部45,45が外方へ延出されている。折曲端部形成部45には、前記した面取り上部22と面取り下部23とが形成されている。そして、面取り上部22と側板部形成部46とが連成する部位、および面取り下部23と該側板部形成部46とが連成する部位に、切込部43,43が夫々形成されている。この上下の切込部43,43により、折曲端部形成部45と主体部44との仮想境界線49dが、前記支持枠形成部47と下側縁形成部48との各側縁よりも内側に位置される。また、主体部44には、側板部形成部46と支持枠形成部47との仮想境界線49aの両端、支持枠形成部47の水平縁形成部47aと垂直縁形成部47bとの仮想境界線49bの両端、および側板部形成部46と下側縁形成部48との仮想境界線49cの両端には、僅かに窪む凹部50が夫々形成されている。さらにまた、折曲端部形成部45には、前記した透孔26,26に開口形成される。
【0039】
折曲げ工程では、前記展開板体4を折り曲げる加工を行って、図8に示す枠主体30を形成する。すなわち、支持枠形成部47を、前記仮想境界線49aに沿って略直角に折り曲げると共に、該支持枠形成部47の垂直縁形成部47bを、前記仮想境界線49bに沿って略直角に折り曲げる。これにより、支持枠部12を形成する。そして、下側縁形成部48を、前記仮想境界線49cに沿って略直角に折り曲げることにより、下側水平縁部13を形成する。ここで、各仮想境界線49a~49cの両端に凹部50が夫々形成されていることから、折り曲げた際に、夫々の長手方向端面よりも長手方向外方へ突出することを抑制できる。さらに、折曲端部形成部45を、前記仮想境界線49dに沿って略直角に折り曲げることにより、折曲端部21を形成する。
ここで、面取り上部22と面取り下部23とが形成されていることにより、折曲端部形成部45を、垂直側板部11と支持枠部12とを連続する湾曲部位、および該垂直側板部11と下側水平縁部13とを連続する湾曲部位に干渉せずに(接触すること無く)、折り曲げることができる。さらに、折曲端部形成部45の上下両端に設けられた前記切込部43,43により仮想境界線49dが内側に位置することから、該仮想境界線49dで折り曲げることにより、該折曲端部形成部45を支持枠部12と下側水平縁部13との間に略直角に折り曲げることができる。こうしたことから、折曲端部形成部45を折り曲げることによって、外側面21aを支持枠部12の端面および下側縁形成部48の端面と略面一にした折曲端部21を形成できる。
【0040】
溶接工程では、折曲端部21の上端を支持枠部12の水平縁部15の下面に溶接すると共に、該折曲端部21の下端を下側水平縁部13の上面に溶接する。さらに、補強板部31を前記枠主体30に溶接する。補強板部31は、枠主体30の垂直側板部11の長手方向中央に、折曲端部21と略平行に配置されて、該垂直側板部11に溶接される(図3参照)。ここで、補強板部31は、前述したように面取り上部22と面取り下部23とを有することから、垂直側板部11と支持枠部12との前記湾曲部位、および該垂直側板部11と下側水平縁部13との前記湾曲部位に干渉すること無く(接触すること無く)、該面取り上部22と面取り下部23との間に在る内側縁を、垂直側板部11に当接できる。そして、この当接させた状態で、補強板部31を垂直側板部11に溶接できる。
【0041】
組立て工程では、二個の溝枠体2,2を保持板5と保持部材6とにより連結して、図3に示す溝路構成部材1を組み立てる。すなわち、二個の溝枠体2,2を、夫々の垂直側板部11,11が所定間隔で対向するように配置し、保持板5の両端を垂直側板部11,11の下部に溶接すると共に、保持部材6の両端部を水平縁部15,15上に載置して仮溶接する。保持板5と保持部材6とは長手方向に間隔をおいて複数溶接する。こうして溝路構成部材1を形成する。
【0042】
メッキ処理工程では、高温で溶かした亜鉛の槽に溝路構成部材1を浸すことにより、該溝路構成部材1の表面に亜鉛皮膜を形成し、スチール製の溝路構成部材1に防錆処理を行う。このメッキ処理工程では、溝路構成部材1を、亜鉛の槽にドブ付けすることから、該槽から溝路構成部材1を取り出す際に、垂直側板部11と支持枠部12との前記湾曲部位、および該垂直側板部11と下側水平縁部13との前記湾曲部位に亜鉛が溜まり易い。しかし、本実施例の溝路構成部材1は、前記空隙24,25,35,36から亜鉛を排出できることから、該亜鉛が溜まることを抑制できる。
【0043】
こうした製造工程によって、本実施例の溝路構成部材1を製造できる。本実施例の製造工程では、鋼板から展開板体41と補強板部31とを切り出し、該展開板体41を折曲げ加工して該補強板部31を溶接することにより、溝枠体2を成形できる。
【0044】
一方、前述したように図9,10に示す従来構成の溝路構成部材101は、溝枠部102に複数の補強板113が溶接された構成である。そして、この溝路構成部材101は、その長さが通水溝路の長さに応じて設定され、長尺になるにつれて、接合する補強板113の個数が増加する。そのため、部品点数が増加すると共に、補強板113の接合作業に要する手間と時間が増加する。
本実施例の溝路構成部材1は、前述したように予め定められた単位分割長tで形成され且つ長手方向両端の折曲端部21,21を折曲げ加工により形成されている構成であるから、従来構成に比して、部品点数を少なくできると共に、溶接箇所も少なくできる。これにより、製造にかかる手間を低減でき、製造に要するコストと時間とを低減できる。
【0045】
また、本実施例の溝路構成部材1は、前述したように単位分割長tでユニット化されていることから、比較的運搬し易く且つ施工作業を行い易い。これにより、通水溝路51の施工作業に要する手間とコストとを低減できる。
【0046】
本発明は、前述した実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更することが可能である。
前述の実施例は、単位分割長t=1000mmとしたが、これに限らず、該単位分割長を適宜変更して設定できる。同様に、各部の寸法形状は、適宜変更することが可能である。
前述の実施例は、溝枠体に一個の補強板部を溶接した構成であるが、これに限らず、補強板部の個数は適宜変更できる。すなわち、単位分割長や垂直側板部11の高さ等に応じて、補強板部の個数を設定することができる。尚、複数の補強板部を溶接する場合には、隣り合う補強板部の間隔と、隣り合う補強板部および折曲端部の間隔とを等しくすることが好適である。
【符号の説明】
【0047】
1 溝路構成部材
2 溝枠体
5 保持板
6 保持部材
11 垂直側板部
12 支持枠部
13 下側水平縁部
15 水平縁部
16 垂直縁部
17 案内部材
21 折曲端部
21a 外側面
22 面取り上部
23 面取り下部
24,25 空隙
26 透孔
28 ボルト
29 ナット
31 補強板部
32 面取り上部
33 面取り下部
35,36 空隙
41 展開板体
43 切込部
44 主体部
45 折曲端部形成部
46 側板部形成部
47 支持枠形成部
47a 水平縁形成部
47b 垂直縁形成部
48 下側縁形成部
49a~49d 仮想境界線
50 凹部
51 通水溝路
52 基盤
53 地面
55 勾配底部
56 グレーチング(溝蓋)
101 溝路構成部材
102 溝枠部
105 垂直板部
106 支持枠部
107 載置板部
110 水平縁部
111 垂直縁部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10