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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114243
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】造粒装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 2/14 20060101AFI20240816BHJP
   B01J 2/12 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
B01J2/14
B01J2/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019885
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】396019631
【氏名又は名称】株式会社チップトン
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大脇 五郎
(72)【発明者】
【氏名】伊東 稔
【テーマコード(参考)】
4G004
【Fターム(参考)】
4G004HA02
4G004JA01
(57)【要約】
【課題】耐摩耗性に優れた造粒装置を提供する。
【解決手段】造粒装置Aは、筒形をなすドラム41と、ドラム41の底面の開口を塞ぐように配置されたディスク60とを有する造粒槽40と、ディスク60をドラム41と同軸状に回転駆動する駆動機構20と、を備え、造粒槽40に造粒材料Gを投入してディスク60を回転させることによって造粒品を製造する。ドラム41の内周面とディスク60の上面のうち、ディスク60の回転に伴って造粒材料Gが接触する領域に、皿状ウレタンライニング66が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒形をなすドラムと、前記ドラムの底面の開口を塞ぐように配置されたディスクとを有する造粒槽と、
前記ディスクを前記ドラムと同軸状に回転駆動する駆動機構と、を備え、
前記造粒槽に造粒材料を投入して前記ディスクを回転させることによって造粒品を製造する造粒装置であって、
前記ドラムの内周面と前記ディスクの上面のうち、前記ディスクの回転に伴って前記造粒材料が接触する領域に、ウレタンライニングが設けられている造粒装置。
【請求項2】
前記ディスクの外周縁部と前記ドラムの内周面との間にスリットが形成されており、
前記ディスクの外周縁部のうち前記スリットを構成する内側対向面と、前記ドラムの内周面のうち前記スリットを構成する外側対向面の少なくとも一方が、ウレタン製のスリット用ライニングによって形成されている請求項1に記載の造粒装置。
【請求項3】
前記ドラムは、前記外側対向面を含まない筒状部材と、前記外側対向面を含むリング状部材とを備えて構成されており、
前記リング状部材は、前記筒状部材に対して着脱が可能である請求項2に記載の造粒装置。
【請求項4】
前記ディスクの上面に設けた前記ウレタンライニングが、複数の平面部を鈍角状に連ねた回転促進面を有している請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の造粒装置。
【請求項5】
前記ディスクは、板材からなるディスク本体と、前記ディスク本体の上面を覆う前記ウレタンライニングとを備えて構成され、
前記回転促進面が、前記ウレタンライニングの厚さを部分的に変えることによって形成されている請求項4に記載の造粒装置。
【請求項6】
前記ドラムの内周面に設けた前記ウレタンライニングが、複数の平面を鈍角状に連ねた流動促進面を有している請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の造粒装置。
【請求項7】
前記ドラムが正逆両方向へ回転可能である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の造粒装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造粒装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回転皿を円筒状の固定壁で包囲した遠心転動部を有する造粒装置が開示されている。遠心転動部内に粉粒体、粉体、結合剤を投入し、回転皿を回転させると、粉粒体に粉体が被覆され、造粒品が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-128097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された造粒装置は、回転皿と固定壁が金属製である。そのため、粉粒体がセラミック等の硬質材料からなる場合には、回転皿や固定壁が早期に摩耗してしまう虞があった。
【0005】
本願の発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、造粒槽の耐摩耗性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
筒形をなすドラムと、前記ドラムの底面の開口を塞ぐように配置されたディスクとを有する造粒槽と、
前記ディスクを前記ドラムと同軸状に回転駆動する駆動機構と、を備え、
前記造粒槽に造粒材料を投入して前記ディスクを回転させることによって造粒品を製造する造粒装置であって、
前記ドラムの内周面と前記ディスクの上面のうち、前記ディスクの回転に伴って前記造粒材料が接触する領域に、ウレタンライニングが設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、造粒材料が金属等の硬質材料である場合でも、ドラムとディスクの摩耗を抑制できる。よって、造粒槽の耐摩耗性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1の造粒装置の断面図
図2】造粒槽の平面図
図3】アンダープレートと筒状部材の固定構造をあらわす部分拡大断面図
図4】アンダープレートとリング状部材の固定構造をあらわす部分拡大断面図
図5】スリットの構造をあらわす部分拡大断面図
図6】実施例2の造粒装置の断面図
図7】実施例2の造粒槽の平面図
図8】実施例3の造粒装置の断面図
図9】実施例3の造粒槽の平面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。下記の複数の実施形態を、矛盾を生じない範囲で任意に組み合わせたものも、発明を実施するための形態に含まれる。
【0010】
本発明は、
(1)筒形をなすドラムと、前記ドラムの底面の開口を塞ぐように配置されたディスクとを有する造粒槽と、前記ディスクを前記ドラムと同軸状に回転駆動する駆動機構と、を備え、前記造粒槽に造粒材料を投入して前記ディスクを回転させることによって造粒品を製造する造粒装置である。前記ドラムの内周面と前記ディスクの上面のうち、前記ディスクの回転に伴って前記造粒材料が接触する領域に、ウレタンライニングが設けられている。ウレタンライニングの材料であるウレタン樹脂は、比較的硬質の部材が接触しても摩耗し難いので、造粒槽の耐摩耗性を向上させることができる。
【0011】
(2)(1)において、前記ディスクの外周縁部と前記ドラムの内周面との間にスリットが形成されており、前記ディスクの外周縁部のうち前記スリットを構成する内側対向面と、前記ドラムの内周面のうち前記スリットを構成する外側対向面の少なくとも一方が、ウレタン製のスリット用ライニングによって形成されていることが好ましい。この構成によれば、スリット内における摩耗を抑制し、ひいては、スリットからの造粒材料の落下を抑制することができる。
【0012】
(3)(2)において、前記ドラムは、前記外側対向面を含まない筒状部材と、前記外側対向面を含むリング状部材とを備えて構成されており、前記リング状部材は、前記筒状部材に対して着脱が可能であることが好ましい。この構成によれば、外側対向面を形成するスリット用ライニングが摩耗したときには、リング状部材のみを交換すればよく、ドラム全体を交換せずに済む。
【0013】
(4)(1)~(3)において、前記ディスクの上面に設けた前記ウレタンライニングが、複数の平面部を鈍角状に連ねた回転促進面を有していることが好ましい。この構成によれば、ディスクから造粒材料への回転力の伝達が、回転促進面によって促進されるので、良好な造粒を実現することができる。
【0014】
(5)(4)において、前記ディスクは、板材からなるディスク本体と、前記ディスク本体の上面を覆う前記ウレタンライニングとを備えて構成され、前記回転促進面が、前記ウレタンライニングの厚さを部分的に変えることによって形成されていることが好ましい。この構成によれば、ディスク本体の形状を簡素化することができる。
【0015】
(6)(1)~(3)において、前記ドラムの内周面に設けた前記ウレタンライニングが、複数の平面を鈍角状に連ねた流動促進面を有していることが好ましい。この構成によれば、造粒材料の流動が流動促進面によって促進されるので、良好な造粒を実現することができる。
【0016】
(7)(1)~(3)において、前記ドラムが正逆両方向へ回転可能であることが好ましい。この構成によれば、ディスクに対するドラムの相対回転方向や、ディスクに対するドラムの相対回転速度を調整することによって、良好な造粒を行うことができる。
【0017】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を図1図5を参照して説明する。尚、以下の説明において、上下の方向については、図1,3~5にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。上下方向と軸線方向を同義で用いる。上下方向(軸線方向)と直交する方向を径方向と定義する。
【0018】
本実施例1の造粒装置Aは、ラムネ、錠剤等の食品・医薬品、または洗剤や消臭剤などの化学製品、バレル研磨用の研磨石、触媒担体用のセラミックボールなどの造粒品を製造するための装置である。造粒方法としては、芯玉(造粒材料G)の表面を粉粒体(造粒材料G)でコーティングする被覆造粒法や、湿潤状態の粉粒体を凝集させて大きくする方法等がある。本実施例1の造粒装置Aは、コーティング装置として使用することが可能である。
【0019】
図1に示すように、造粒装置Aは、ベースプレート10と、ハウジング11と、駆動機構20と、アンダープレート26と、造粒槽40とを備えて構成されている。ベースプレート10は、図示しない基台によって水平に配置されている。ハウジング11は、下面が開口した箱状をなし、ベースプレート10に対して造粒槽40を上から覆うように取り付けられている。ハウジング11の天板部には、投入口12と集塵口13が開口している。造粒槽40内には、造粒材料Gである芯玉と粉粒体が、投入口12から投入されるようになっている。投入口12には給水管14が挿通されている。給水管14の下端部には、造粒槽40内の造粒材料Gに水を散布するためのノズル15が設けられている。集塵口13には、集塵装置(図示省略)のダクトが接続されている。
【0020】
駆動機構20は、第1モータ21と、回転軸22と、第2モータ24と、平歯車25とを備えている。第1モータ21は、ベースプレート10よりも下方に配置され、図示しない基台に固定されている。回転軸22は、軸線を上下方向に向け、上下両端が開放された円筒形の部品である。回転軸22は、ベースプレート10の中心孔を貫通した状態でベースプレート10に対して回転自由に支持されている。回転軸22は、第1モータ21によって正逆両方向に回転駆動される。回転軸22の内部は、回転軸22を上下に貫通する給気孔23として機能する。給気孔23の下端部には、エア供給源(図示省略)が接続されている。
【0021】
第2モータ24は、ベースプレート10の下面に取り付けられている。第2モータ24の上向きの駆動軸には、軸線を上下方向に向けた平歯車25が取り付けられている。造粒装置Aを上から見た平面視において、平歯車25は、回転軸22に対して偏心した位置に配置されている。平歯車25は、ベースプレート10よりも上方に配置されている。
【0022】
アンダープレート26は、平面視形状が円形をなし、上面が凹んだ皿形をなしている。アンダープレート26は、円形のプレート本体部27と、プレート本体部27の外周縁から同心状に立ち上がる円筒形の周壁部28とを有する単一部品である。アンダープレート26は、ステンレス等の金属材料からなる単一部品である。アンダープレート26は、軸線を上下方向に向け、回転軸22と同心状に回転し得る状態でベースプレート10の上面に支持されている。アンダープレート26の外周縁部の下面には、内歯歯車29がアンダープレート26と同心状に設けられている。内歯歯車29は、第2モータ24の平歯車25に噛み合わされている。アンダープレート26は、第2モータ24によって正逆両方向に、且つ周速度の調整を可能に回転駆動される。
【0023】
図3,4に示すように、周壁部28の上端縁には、アンダープレート26と同心状に径方向外方へ張り出したフランジ状の支持部30が形成されている。支持部30は、円環形をなす水平な載置部31と、載置部31の外周縁から同心状に上方へ立ち上がった円形の壁状部32とを有する。載置部31の周方向に間隔を空けた複数位置には、載置部31を上下方向に貫通する第1取付孔33が形成されている(図3を参照)。載置部31のうち周方向において隣り合う第1取付孔33の間には、載置部31を上下方向に貫通する第2取付孔34が形成されている(図4を参照)。壁状部32の周方向に間隔を空けた複数位置には、壁状部32を径方向(水平方向)に貫通する調整用雌ネジ孔35が形成されている。調整用雌ネジ孔35には、外周面側から調整ボルト36がねじ込まれている。
【0024】
図1に示すように、造粒槽40は、筒形をなすドラム41と、ドラム41の底面の開口を塞ぐように配置されたディスク60とによって構成されている。造粒槽40の内部は、造粒を行うための造粒空間として機能する。ドラム41は、全体として軸線を上下方向に向けた円筒形の筒状部材42と、同じく軸線を上下方向に向けた円環形のリング状部材50とを備えて構成されている。筒状部材42は、ドラム本体43と、筒状ウレタンライニング44とを一体化させたものである。ドラム本体43は、ステンレス等の金属からなる円筒形の単一部品である。ドラム本体43の下端部には、周方向に間隔を空けて配置された複数の固定用第1雌ネジ孔45が形成されている(図3参照)。固定用第1雌ネジ孔45は、軸線を上下方向に向け、ドラム本体43の下端面に開口している。
【0025】
筒状ウレタンライニング44は、インサート成形によって形成され、ドラム本体43の内周面全体に密着している。インサート成形の工程では、ドラム本体43と筒状ウレタンライニング44との密着性を高めるために、ブラスト処理等によってドラム本体43の内周面を粗くする処理が施されている。
【0026】
図1,2に示すように、筒状ウレタンライニング44のうち上端側領域の内周面は、複数の長方形平面46を周方向に連ねて構成されている。図2に示すように、筒状ウレタンライニング44の上端側領域における内周面の平面視形状は、正多角形(正12角形)である。筒状ウレタンライニング44の下端側領域の内周面は、流動促進面47として機能する。流動促進面47は、頂点を上向きにした複数の二等辺三角平面48と、頂点を下向きにした複数の二等辺三角平面48とを、鈍角をなすように、且つ周方向に交互に連ねて構成されている。流動促進面47は、筒状ウレタンライニング44の径方向の厚さ寸法を調整することによって形成された面である。筒状ウレタンライニング44の下端の内周縁は、円形をなしている。
【0027】
リング状部材50は、リング本体51と、リング状ウレタンライニング52とを一体化させたものである。リング本体51は、ステンレス等の金属からなる円環形の単一部品である。リング本体51には、周方向に間隔を空けて配置された複数の調整用貫通孔53が形成されている(図3参照)。調整用貫通孔53は、軸線を上下方向に向け、リング本体51を貫通している。リング本体51には、軸線を上下方向に向け、リング本体51を貫通する複数の固定用第2雌ネジ孔54が形成されている(図4参照)。複数の固定用第2雌ネジ孔54は、周方向に隣り合う調整用貫通孔53の間に配置されている。
【0028】
リング状ウレタンライニング52は、インサート成形によって形成され、リング本体51の内周面全体に密着している。図5に示すように、リング本体51の上端側領域の内径は、その上端から下端まで一定の寸法である。リング本体51の下端側領域の内周面は、内径が上端から下端に向かって次第に大きくなるようなテーパ状(円錐台状)をなしている。インサート成形の工程では、リング本体51とリング状ウレタンライニング52との密着性を高めるために、ブラスト処理等によってリング本体51の内周面を粗くする処理が施されている。
【0029】
リング状ウレタンライニング52の内周面の平面視形状は、円形である。リング状ウレタンライニングは、後述するスリット73を構成するスリット用ライニングとして機能する。リング状ウレタンライニングの上端部領域の内径は、その上端部領域の下端から上端に至る全領域に亘って一定である。リング状ウレタンライニング52の内周面のうち内径が一定である上端部領域は、スリット73に臨む外側対向面55として機能する。リング状ウレタンライニング52の内周面のうち上端部よりも下方の広範囲領域は、内径が上端から下端に向かって次第に大きくなるようなテーパ状(円錐台状)をなしている。
【0030】
ドラム41は、アンダープレート26の支持部30に一体回転し得るように固定されている。ドラム41を固定する際には、載置部31の上面にリング状部材50を載置し、第1取付孔33に調整用貫通孔53を同心状に位置合わせするとともに、第2取付孔34に固定用第2雌ネジ孔54を同心状に位置合わせする。次に、リング状部材50の上面に筒状部材42を載置し、調整用貫通孔53に固定用第1雌ネジ孔45を同心状に位置合わせする。その後、載置部31の下方から、第1ボルト56を、第1取付孔33と調整用貫通孔53に貫通させ、固定用第2雌ネジ孔54にねじ込む。同じく載置部31の下方から、第2ボルト57を、第2取付孔34に貫通させて固定用第2雌ネジ孔54にねじ込む。第1ボルト56と第2ボルト57によって、アンダープレート26とリング状部材50と筒状部材42が固定される。第1ボルト56と第2ボルト57を締め付けることによって、筒状部材42とリング状部材50が一体化されるとともに、アンダープレート26に固定される。
【0031】
ディスク60は、全体として上面が凹んだ浅い皿状をなす部材である。ディスク60は、ディスク本体61と、皿状ウレタンライニング66とを一体化させたものである。ディスク本体61は、ステンレス等の金属からなる部品である。ディスク本体61は、円形の水平板部62と、水平板部62と同心の円錐台状をなすテーパ状板部63とを有する単一部品である。テーパ状板部63は、水平板部62の外周縁から径方向外方(外周縁側)に向かって次第に高くなるように斜め上方へ延出した形状をなす。
【0032】
水平板部62(ディスク本体61)の中心孔は、回転軸22の上端部に対して一体回転し得るように固着されている。プレート本体部27の上面とディスク本体61の下面との間には、通気可能な隙間が空いている。ディスク本体61には、水平板部62の下面から上面へ貫通した複数の通気孔64が形成されている。水平板部62の上面には、給気孔23の上端の開口と全ての通気孔64を覆う円形ドーム状のカバー65が、ディスク本体61と同心状に取り付けられている。
【0033】
皿状ウレタンライニング66は、インサート成形によって形成され、ディスク本体61の上面に密着している。インサート成形の工程では、ディスク本体61と皿状ウレタンライニング66との密着性を高めるために、ブラスト処理等によってディスク本体61の上面を粗くする処理が施されている。ディスク本体61の上面において皿状ウレタンライニング66が形成されているのは、カバー65よりも外周側の領域全体である。詳細には、水平板部62の外周縁側の円環形領域と、テーパ状板部63の全体に、皿状ウレタンライニング66が形成されている。
【0034】
図1,2に示すように、皿状ウレタンライニング66の上面には、回転促進面67が形成されている。図2に示すように、回転促進面67は、円弧と3本の直線からなる複数の異形平面68と、複数の三角形平面69とから構成されている。複数の異形平面68と複数の三角形平面69は、周方向に交互に並ぶように配置され、且つ鈍角をなして連なっている。回転促進面67は、ディスク本体61の厚さを一定にしたままで、皿状ウレタンライニング66の厚さを調整することによって形成された面である。
【0035】
図5に示すように、ディスク本体61のテーパ状板部63の最外周縁部63Eは、上向きに尖った形状をなしている。皿状ウレタンライニング66の外周縁部には、最外周縁部63Eの外周面に密着する下向きの折返部70が形成されている。折返部70は、スリット73を構成するスリット用ライニングとして機能する。折返部70(スリット用ライニング)の外周面は、スリット73に臨む内側対向面71として機能する。
【0036】
ドラム41の下端部内周面とディスク60の外周縁部との間には、平面視形状が円形をなすスリット73が形成されている。スリット73は、リング状ウレタンライニング52の内周面(外側対向面55)と、皿状ウレタンライニング66の折返部70(内側対向面71)とによって構成されている。スリット73は、上下方向に貫通した空間であり、造粒槽40の内部空間と、ディスク60の下面とアンダープレート26の上面との間に確保された通気空間59とを連通させる。
【0037】
回転軸22の回転中心を含むように造粒装置Aを切断した断面において、外側対向面55と内側対向面71は、互いに平行をなしている。スリット73の径方向の隙間(外側対向面55と内側対向面71との間隔)は、粉粒体(造粒材料G)が通過し難いと想定される0.2~0.4mm程度に設定される。スリット73の隙間を全周に亘って均一にするために、アンダープレート26に対してリング状部材50が同心状に配置されるように、リング状部材50の水平方向の位置を調整する。調整の際には、第1ボルト56と第2ボルト57を緩めた状態で、複数の調整ボルト36をリング状部材50(リング本体51)の外周面に押し当てることによって、リング状部材50を水平方向に移動させる。リング状部材50を位置決めした状態で、第1ボルト56と第2ボルト57を締め付けると、リング状部材50がアンダープレート26に固定される。
【0038】
次に、本実施例1の作用を説明する。まず、造粒材料Gのうち芯玉を造粒槽40内に投入し、ノズル15から水等を噴霧して芯玉の表面を濡らす。この間、ディスク60とドラム41を回転させることによって、芯玉を流動させる。芯玉を流動させた状態のままで、粉粒体を造粒槽40内に供給すると、粉粒体が濡れた芯玉の表面に雪玉状に付着する。ノズル15からの水の噴霧と粉粒体の供給を繰り返すことによって、造粒品が成長していく。造粒中は、造粒槽40に投入した粉粒体の一部が舞い上がるが、舞い上がった粉粒体は、集塵口13から集塵装置によって吸引される。
【0039】
造粒品が成長していく過程では、ディスク60の回転促進面67によって、ディスク60の回転力が芯玉と粉粒体に伝達され易くなるので、芯玉と粉粒体は、遠心力によってディスク60の外周縁からドラム41の内周面に沿って高く上昇し、雪崩のように流動する動作を生じ易い。同時に芯玉と粉粒体は、ドラム41の流動促進面47によって周方向へ横流れすることを抑制されるので、上下方向の流動を生じ易い。この上下方向の流動は、造粒品に粉粒体が均一に巻き、成長度合いが向上することを促進する。特に、ドラム41をディスク60と逆方向に回転させた場合には、造粒品のドラム41への貼り付きも抑制することができる。
【0040】
造粒材料Gがステンレスより硬い粉粒体(例えば、アルミナ等)を含む場合、その硬い粉粒体が、高速流動している状態で、ステンレス製のドラム本体43やディスク本体61に接触すると、粉粒体の接触部分が磨耗する虞がある。特に、スリット73の近傍、即ち、ディスク60の外周側領域やドラム41の下端部においては、ディスク60の回転力によって粉粒体に作用する遠心力が最大になるため、磨耗が著しい。この対策として、本実施例1では、ドラム本体43の内周面を筒状ウレタンライニング44で覆い、ディスク本体61の上面を皿状ウレタンライニング66で覆っている。ウレタン樹脂は、ステンレスよりも硬い粉粒体が高速で接触しても摩耗し難い。
【0041】
本実施例1の造粒装置Aを用い、下記の条件の元で造粒実験を行った。造粒槽40の容量は40リットル、ディスク60の外径は400mm、ドラム41の正12角形の内周面に外接する円の最大径は460mm、スリット73の間隔は0.2mm、ディスク60の回転数は正方向へ350rpm、ドラム41の回転数は逆方向へ20rpmである。造粒槽40内に外径が0.15mmの芯玉を2kg投入し、外径が0.3mmの球状バレル研磨石を造粒した。粉粒体は、粘土成分とアルミナ砥粒#400(平均粒径37μm)を混合したものからなる。この粉粒体の供給と、ノズル15からの水の供給とを繰り返することによって、外径が0.3mmの球状研磨石16kg(造粒品)を製造した。この実験において、ドラム41の内周面とディスク60上面にはウレタンライニング44,66が施工されているので、ドラム本体43とディスク本体61は摩耗しなかった。
【0042】
ドラム41の内周面とディスク60の外周縁との間にスリット73を設けることによって、ドラム41とディスク60が非接触の状態で回転できるようにした。これにより、ドラム41とディスク60との間に摺動抵抗が生じることを防止し、ドラム41とディスク60の回転の円滑化を実現した。スリット73を構成する外側対向面55と内側対向面71は、粉粒体が落下し難い隙間(0.2mm~0.4mm)を空けている。また、回転軸22の給気孔23に供給されたエアが、カバー65内の空間と通気孔64と通気空間59を順に通ってスリット73から造粒槽40内に圧送される。したがって、造粒槽40内にスリット73の幅よりも小径の粉粒体が供給されたとしても、その小径の粉粒体がスリット73を通って通気空間59内に落下する虞はない。
【0043】
粉粒体の一部がスリット73に噛み込んでも、スリット73を構成する外側対向面55と内側対向面71は、ウレタン樹脂製なので、噛み込んだ粉粒体によって摩耗する虞はない。万一、粉粒体がスリット73に噛み込んで、外側対向面55が摩耗した場合には、外側対向面55を有するリング状部材50を交換すればよい。リング状部材50を交換する際には、第1ボルト56と第2ボルト57を外し、筒状部材42とリング状部材50をアンダープレート26の支持部30から取り外す。そして、新規のリング状部材50をアンダープレート26に載置し、その上に筒状部材42を位置して、第1ボルト56と第2ボルト57によって筒状部材42とリング状部材50を固定すればよい。
【0044】
本実施例1の造粒装置Aは、造粒槽40と、駆動機構20とを備えている。造粒槽40は、筒形をなすドラム41と、ドラム41の底面の開口を塞ぐように配置されたディスク60とを有している。駆動機構20は、ディスク60をドラム41と同軸状に回転駆動する。造粒槽40に造粒材料G(芯玉と粉粒体)を投入してディスク60を回転させることによって、造粒品が製造される。ドラム41の内周面とディスク60の上面には、筒状ウレタンライニング44と皿状ウレタンライニング66が設けられている。筒状ウレタンライニング44と皿状ウレタンライニング66は、ディスク60の回転に伴って造粒材料Gが接触する領域に配置されている。筒状ウレタンライニング44と皿状ウレタンライニング66の材料であるウレタン樹脂は、比較的硬質の部材が接触しても、摩耗し難い。したがって、本実施例1の造粒装置Aによれば、造粒槽40の耐摩耗性を向上させることができるので、造粒材料Gが金属等の硬質材料である場合でも、ドラム41とディスク60の摩耗を抑制できる。
【0045】
ディスク60の外周縁部とドラム41の内周面との間には、スリット73が形成されている。スリット73は、造粒槽40内の空間と、造粒槽40外の通気空間59とを連通させるが、通気空間59内から造粒槽40内へエアが圧送されるので、造粒槽40内の粉粒体等が通気空間59内へ落下する虞はない。ディスク60の外周縁部のうちスリット73を構成する内側対向面71と、ドラム41の内周面のうちスリット73を構成する外側対向面55は、ウレタン製のスリット用ライニング(折返部70とリング状ウレタンライニング52)によって形成されている。この構成によれば、スリット73内における摩耗を抑制することができるので、スリット73からの造粒材料G(粉粒体)の落下を抑制することができる。
【0046】
ドラム41は、外側対向面55を含まない筒状部材42と、外側対向面55を含むリング状部材50とを備えて構成されている。リング状部材50は、筒状部材42に対して着脱が可能である。外側対向面55を形成するスリット用ライニング(リング状ウレタンライニング52)が摩耗したときには、リング状部材50のみを交換すればよい。よって、ドラム41全体を交換せずに済む。
【0047】
ドラム41の内周面に設けた筒状ウレタンライニング44は、周方向に並ぶ複数の平面(二等辺三角平面48)を鈍角状に連ねた流動促進面47を有している。造粒材料G(芯玉と粉粒体)の流動が流動促進面47によって促進されるので、良好な造粒を実現することができる。流動促進面47は、ドラム本体43の板厚を一定にしたままで、筒状ウレタンライニング44の厚さを部分的に変えることによって形成されているので、ドラム本体43の形状を簡素化することができる。
【0048】
ディスク60の上面に設けた皿状ウレタンライニング66は、回転促進面67を有している。回転促進面67は、複数の異形平面68と複数の三角形平面69を、周方向において交互に並ぶように、且つ鈍角状に連ねた形態である。ディスク60から造粒材料Gへの回転力の伝達が、回転促進面67によって促進されるので、良好な造粒を実現することができる。ディスク60は、金属製の板材からなるディスク本体61と、ディスク本体61の上面を覆う皿状ウレタンライニング66とを備えて構成されている。回転促進面67を構成する異形平面68と三角形平面69は、ディスク本体61の板厚を一定にしたままで、皿状ウレタンライニング66の厚さを部分的に変えることによって形成されているので、ディスク本体61の形状を簡素化することができる。
【0049】
ドラム41は、正逆両方向へ回転可能である。ディスク60に対するドラム41の相対回転方向や、ディスク60に対するドラム41の相対回転速度を調整することによって、良好な造粒を行うことができる。
【0050】
<実施例2>
次に、本発明を具体化した実施例2を図6図7を参照して説明する。本実施例2の造粒装置Bは、上記実施例1の造粒装置Aにおいて、造粒槽80を構成するドラム81とディスク83の構成を変更したものである。詳細には、ドラム81の筒状ウレタンライニング82の内周面の形状と、ディスク83の皿状ウレタンライニング84の上面の形状を変更した。その他の構成については上記実施例1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0051】
造粒装置Bを上から視た平面視において、筒状ウレタンライニング82の内周面の上端側領域は、円形をなす。筒状ウレタンライニング82の内周面の下端側領域は、下方に向かって内径が次第に小さくなるような円錐台形をなす。筒状ウレタンライニング82の内周面は、実施例1で説明した流動促進面47を有していない。ディスク83の皿状ウレタンライニング84の上面は、外周側に向かって次第に高くなるように傾斜した円錐台状をなしている。皿状ウレタンライニング84は、実施例1で説明した回転促進面67を有していない。
【0052】
本実施例2の造粒装置Bを用い、下記の条件の元で造粒実験を行った。造粒槽80の容量は40リットル、ディスク83の外径は400mm、ドラム81の内周面の最大径は460mm、スリットの間隔は0.2mm、ディスク83の回転数は正方向へ220rpm、ドラム81の回転数は逆方向へ20rpmである。造粒槽80内に外径が0.5mmの芯玉を4kg投入し、外径が0.8mmの球状バレル研磨石を造粒した。粉粒体は、粘土成分とアルミナ砥粒#100(平均粒径150μm)を混合したものからなる。この粉粒体の供給と、ノズルからの水の供給とを繰り返することによって、外径が0.8mmの球状研磨石16kgを製造した。この実験において、ドラム81の内周面とディスク83上面にはウレタンライニング82,84が施工されているので、ドラム81本体とディスク83本体は摩耗しなかった。
【0053】
実施例2の造粒装置Bは、ディスク83に回転促進面67が形成されておらず、ドラム81には流動促進面47が形成されていない。しかし、造粒品であるバレル研磨石のアルミナ砥粒径が大きい場合は、この大きさがドラム81及びディスク83に対する引っ掛かり抵抗となるため、回転方向の流動が良好に行われる。また、粉粒体が大きいアルミナ砥粒を含む場合は、上下方向の巻き込み流動が生じる。よって、良好な造粒を行うことができる。
【0054】
<実施例3>
次に、本発明を具体化した実施例3を図8図9を参照して説明する。本実施例3の造粒装置Cは、実施例1の造粒装置Aにおいて、ディスク83の皿状ウレタンライニング84の上面の形状を実施例2と同じ構成としたものである。即ち、皿状ウレタンライニング84の上面には、回転促進面67は形成されていない。その他の構成については上記実施例1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0055】
実施例3の造粒装置Cは、ディスク83に回転促進面67が形成されていない。しかし、造粒品が、バレル研磨石のアルミナのように径が大きいものである場合には、この大きさがディスク83に対する引っ掛かり抵抗となるため、ディスク83の回転力が造粒材料に対して良好に伝達される。造粒品の粒径が大きくなって重量も大きくなると、ディスク83の回転によって造粒品に作用する遠心力も大きくなるので、造粒品がドラム41の内周面に沿って上昇し易くなっていく。造粒品と一緒に粉粒体もドラム41の内周面を上昇していく。ドラム41の流動促進面47は、造粒品と粉粒体の上下方向の巻き込み流動を生じさせるので、良好な造粒を行うことができる。
【0056】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
実施例1~3において、ディスクにおけるウレタンライニングは、ディスクの一部のみ(外周縁側領域のみ)に設けてもよい。
実施例1~3において、ドラムにおけるウレタンライニングは、ドラムの一部のみ(下端部側領域のみ)に設けてもよい。
実施例1~3において、スリット用ライニングは、ディスクの内側対向面とドラムの外側対向面のうちいずれか一方のみに形成してもよい。
実施例1~3において、ウレタンライニングの厚さを全領域に亘って一定とし、ディスク本体の上面を回転促進面と同一の形状に形成してもよい。
実施例1~3において、ドラムは、回転せずに固定されていてもよい。
実施例1において、ドラムに流動促進面を設けない構成としてもよい。
実施例2において、ドラムの筒状ウレタンライニングの内径は、ドラムの下端から上端に至る全域に亘って一定の寸法であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
A…造粒装置
B…造粒装置
C…造粒装置
G…造粒材料
20…駆動機構
40…造粒槽
41…ドラム
42…筒状部材
44…筒状ウレタンライニング(ウレタンライニング)
47…流動促進面
48…二等辺三角平面(流動促進面を構成する平面)
50…リング状部材
52…リング状ウレタンライニング(ウレタンライニング、スリット用ライニング)
55…外側対向面
60…ディスク
61…ディスク本体
66…皿状ウレタンライニング(ウレタンライニング)
67…回転促進面
68…異形平面(回転促進面を構成する平面)
69…三角形平面(回転促進面を構成する平面)
70…折返部(スリット用ライニング)
71…内側対向面
73…スリット
80…造粒槽
81…ドラム
82…筒状ウレタンライニング
83…ディスク
84…皿状ウレタンライニング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9