(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114249
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】負圧吸着パレット、自動パレット交換装置、および自動パレット交換方法
(51)【国際特許分類】
B23Q 7/00 20060101AFI20240816BHJP
B23Q 3/08 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
B23Q7/00 J
B23Q7/00 H
B23Q3/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019896
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】野中 貴之
(72)【発明者】
【氏名】関 和浩
(72)【発明者】
【氏名】浅野目 裕
【テーマコード(参考)】
3C016
3C033
【Fターム(参考)】
3C016DA01
3C033AA15
3C033AA22
(57)【要約】
【課題】負圧配管まわりの構造を簡素にできかつ移動経路全体でワークの吸着が維持できる負圧吸着パレット、自動パレット交換装置、および自動パレット交換方法を提供する。
【解決手段】ワーク2を保持した状態で工作機械のテーブル上に搬入および搬出される負圧吸着パレット30であって、ワーク2を保持する保持面33と、保持面33に配置された第1吸着孔314、外部の負圧配管が接続可能な第1カプラ313、および第1吸着孔314と第1カプラ313とを連通する第1連通路310、を有する第1吸着回路31と、保持面33に配置された第2吸着孔324、外部の負圧配管が接続可能な第2カプラ323、および第2吸着孔324と第2カプラ323とを連通する第2連通路320、を有する第2吸着回路32と、を有し、第1吸着孔314および第2吸着孔324は、保持面33に載置されたワーク2を個別または同時に吸着可能である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持した状態で工作機械のテーブル上に搬入および搬出される負圧吸着パレットであって、
前記ワークを保持する保持面と、
前記保持面に配置された第1吸着孔、外部の負圧配管が接続可能な第1カプラ、および第1吸着孔と第1カプラとを連通する第1連通路、を有する第1吸着回路と、
前記保持面に配置された第2吸着孔、外部の負圧配管が接続可能な第2カプラ、および第2吸着孔と第2カプラとを連通する第2連通路、を有する第2吸着回路と、を有し、
前記第1吸着孔および前記第2吸着孔は、前記保持面に載置された前記ワークを個別または同時に吸着可能である、負圧吸着パレット。
【請求項2】
請求項1に記載した負圧吸着パレットにおいて、
前記第1カプラおよび前記第2カプラは、それぞれ前記負圧吸着パレットの同じ側面の互いに反対側端部に設置されている、負圧吸着パレット。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載した負圧吸着パレットにおいて、
前記第1連通路は、互いに平行な複数の第1支線部と、各第1支線部の同じ側の端部を順次連結しかつ前記第1カプラに接続される第1幹線部と、を有し、
前記第2連通路は、前記第1支線部と交互に配置される互いに平行な複数の第2支線部と、前記第1幹線部とは反対側となる各第2支線部の端部を順次連結しかつ前記第2カプラに接続される第2幹線部と、を有する負圧吸着パレット。
【請求項4】
請求項1に記載した負圧吸着パレットを用いて工作機械のテーブル上にワークを搬入および搬出する自動パレット交換装置であって、
前記テーブル上に前記負圧吸着パレットを保持可能な加工ステーションと、
前記テーブル外で前記負圧吸着パレットを保持可能な準備ステーションと、
前記準備ステーションから前記加工ステーションに至る前記負圧吸着パレットの移動経路の途中で前記負圧吸着パレットを保持可能な中継ステーションと、
前記準備ステーションと前記中継ステーションとの間で前記負圧吸着パレットを移動させる準備側移動機構と、
前記加工ステーションと前記中継ステーションとの間で前記負圧吸着パレットを移動させる加工側移動機構と、
前記準備ステーションと前記中継ステーションとの間にある前記負圧吸着パレットに接続可能な準備側負圧配管と、
前記加工ステーションと前記中継ステーションとの間にある前記負圧吸着パレットに接続可能な加工側負圧配管と、を有する自動パレット交換装置。
【請求項5】
請求項1に記載した負圧吸着パレットを用いて工作機械のテーブル上にワークを搬入および搬出する自動パレット交換装置であって、
前記テーブル上に前記負圧吸着パレットを保持可能な加工ステーションと、
前記テーブル外で前記負圧吸着パレットを保持可能な準備ステーションと、
前記準備ステーションと前記加工ステーションとの間で前記負圧吸着パレットを移動させる移動機構と、
前記準備ステーションから引き出されて、前記準備ステーションから前記加工ステーションまで移動する前記負圧吸着パレットに接続可能な準備側負圧配管と、
前記加工ステーションから引き出されて、前記加工ステーションにある前記負圧吸着パレットに接続可能な加工側負圧配管と、を有する自動パレット交換装置。
【請求項6】
請求項4に記載した自動パレット交換装置を用いて工作機械のテーブル上にワークを搬入および搬出する自動パレット交換方法であって、
前記準備ステーションにおいて前記負圧吸着パレットに前記準備側負圧配管を接続し、
前記準備側負圧配管が接続された前記負圧吸着パレットを前記準備ステーションから前記中継ステーションへと移動させ、
前記中継ステーションにおいて、前記準備側負圧配管が接続された前記負圧吸着パレットに前記加工側負圧配管を接続したのち、前記負圧吸着パレットから前記準備側負圧配管を分離し、
前記加工側負圧配管が接続された前記負圧吸着パレットを前記中継ステーションから前記加工ステーションへと移動させることで、前記テーブル上に前記ワークを搬入するとともに、
前記テーブル上から前記ワークを搬出する際には、
前記加工側負圧配管が接続された前記負圧吸着パレットを前記加工ステーションから前記中継ステーションへと移動させ、
前記中継ステーションにおいて、前記加工側負圧配管が接続された前記負圧吸着パレットに前記準備側負圧配管を接続したのち、前記負圧吸着パレットから前記加工側負圧配管を分離し、
前記準備側負圧配管が接続された前記負圧吸着パレットを前記中継ステーションから前記準備ステーションへと移動させる、自動パレット交換方法。
【請求項7】
請求項5に記載した自動パレット交換装置を用いて工作機械のテーブル上にワークを搬入および搬出する自動パレット交換方法であって、
前記準備ステーションにおいて前記負圧吸着パレットに前記準備側負圧配管を接続し、
前記準備側負圧配管が接続された前記負圧吸着パレットを前記準備ステーションから前記加工ステーションへと移動させ、
前記加工ステーションにおいて、前記準備側負圧配管が接続された前記負圧吸着パレットに前記加工側負圧配管を接続したのち、前記負圧吸着パレットから前記準備側負圧配管を分離することで、前記テーブル上に前記ワークを搬入するとともに、
前記テーブル上から前記ワークを搬出する際には、
前記加工ステーションにおいて、前記加工側負圧配管が接続された前記負圧吸着パレットに前記準備側負圧配管を接続したのち、前記負圧吸着パレットから前記加工側負圧配管を分離し、
前記準備側負圧配管が接続された前記負圧吸着パレットを前記中継ステーションから前記準備ステーションへと移動させる、自動パレット交換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負圧吸着パレット、自動パレット交換装置、および自動パレット交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械では、テーブル上に載置されたワークに対して工具による加工を行う。テーブル上へのワークの搬入および搬出を効率よく行うために、工作機械にはパレットでワークを搬送する自動パレット交換装置が設置される。
自動パレット交換装置は、テーブル上に設定される加工位置と、テーブル外に設定される準備位置と、準備位置から加工位置に至る移動経路を移動可能な複数のパレットとを備える。ワークは、準備位置でパレットに保持され、パレットに載せて移動経路を移送され、加工位置に搬入されて加工される。加工の間に、準備位置では他のパレットにワークの着脱が実施でき、並列化による作業の効率化が図られる。加工ののち、ワークはパレットとともに加工位置から搬出され、移動経路を搬送されて準備位置へ戻される。
自動パレット交換装置において、パレット上のワークを定位置に保持するために、パレットには真空チャック装置が用いられる。真空チャック装置は、パレットの表面に吸着孔を有し、吸着孔は負圧配管を通して真空ポンプなどの外部の減圧装置に接続され、吸着孔の減圧によりワークを負圧吸着することができる(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の自動パレット交換装置では、テーブル上の加工位置からX方向にずれたテーブル外に、2つの準備位置がY方向に並べて設置されている。各準備位置にはそれぞれパレットが配置され、各パレットは準備位置からY方向およびX方向へ移動することで加工位置へ導入可能である。各パレットには、それぞれ吸引ホースおよび真空ポンプが接続される。パレットが移動する際、吸引ホースは移動経路に沿って引き出される。移動経路がY方向からX方向へ屈曲する地点にはホースリールが設置されている。パレットの移動により引き出される吸引ホースは、ホースリールで屈曲されて移動経路に沿わされ、途中部分での蛇行や絡みが防止される。
【0004】
自動パレット交換装置の真空チャック装置としては、フィルタ清掃のために交互使用可能な2系統の減圧装置を設けたものもある(特許文献2参照)。
特許文献2の装置では、ワークを吸着するパレットへの接続は1系統とされ、その接続先を電磁切替弁で2系統の減圧装置のいずれかに切り替えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-66374号公報
【特許文献2】特開2004-42252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した特許文献1の自動パレット交換装置では、各パレットに接続される吸引ホースの途中部分をホースリールに巻回させ、これにより移動経路に沿って屈曲させており、吸引ホースの引き出しには抵抗力が生じている。また、ホースリールへの巻回を維持するために吸引ホースには所定の張力を付与することが必要となる。
このような負圧配管からの抵抗力や張力が、テーブル上のパレットに常に加わっていると、ワークの加工時にパレットをYX各方向へ移動させる際に動作抵抗となり、円滑な加工動作が妨げられる可能性があった。
これに対し、テーブル周辺に短尺の吸引ホースを準備しておき、この吸引ホースで加工時のワークの吸着を行うことで、搬送経路までの吸引ホースを分離することができ、加工動作の円滑性を高めることができる。
しかし、このような構成で負圧配管のつなぎ替えを行う際には、一時的にパレットにおけるワークの負圧吸着が途切れることになり、その間にワークのずれ等が生じる可能性があり、精度が要求される工作機械の自動パレット交換装置としては採用できなかった。
【0007】
本発明の目的は、ワークの加工時の負圧配管による動作抵抗を低減できる負圧吸着パレット、自動パレット交換装置、および自動パレット交換方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の負圧吸着パレットは、ワークを保持した状態で工作機械のテーブル上に搬入および搬出される負圧吸着パレットであって、前記ワークを保持する保持面と、前記保持面に配置された第1吸着孔、外部の負圧配管が接続可能な第1カプラ、および第1吸着孔と第1カプラとを連通する第1連通路、を有する第1吸着回路と、前記保持面に配置された第2吸着孔、外部の負圧配管が接続可能な第2カプラ、および第2吸着孔と第2カプラとを連通する第2連通路、を有する第2吸着回路と、を有し、前記第1吸着孔および前記第2吸着孔は、前記保持面に載置された前記ワークを個別または同時に吸着可能である。
【0009】
このような本発明では、第1吸着回路および第2吸着回路にそれぞれ外部の負圧配管を接続することができる。そして、第1吸着回路および第2吸着回路のどちらかに外部の負圧配管が接続されていれば、保持面にワークを負圧吸着することができる。従って、複数の負圧配管のつなぎ替えを行う場合でも、その際にワークの負圧吸着が途切れることを防止でき、その間にワークのずれ等が生じる可能性を解消でき、精度が要求される工作機械の自動パレット交換装置にも採用できる。
複数の負圧配管をもつ自動パレット交換装置としては、例えば準備位置から加工位置までの搬送経路(準備位置および加工位置を含む)を分割し、各区間を担当する負圧配管を設けたもの、あるいは搬送経路の往路および復路を各々担当する負圧配管を設けたものが利用できる。
例えば、区間毎に分担する場合、準備位置で第1吸着回路に負圧配管を接続し、第1吸着回路でパレット上のワークを吸着し、この状態でパレットを移動経路の加工位置側へ移動させる。移動の途中で、第2吸着回路に別の負圧配管を接続し、第2吸着回路でパレット上のワークを吸着し、この状態で第1吸着回路に接続されていた負圧配管を分離したうえ、パレットを加工位置へと移動させる。これにより、準備位置から移動経路の途中までは、第1吸着回路によりワークの吸着が維持され、移動経路の途中から加工位置までは、第2吸着回路によりワークの吸着が維持される。
このような操作により、移動経路の途中で第1吸着回路と第2吸着回路とを切り替えることで、第1吸着回路に接続される負圧配管は準備位置から移動経路の途中までの区間を担当し、第2吸着回路に接続される負圧配管は移動経路の途中から加工位置までの区間を担当すればよく、各々の引き回し長さを短縮して絡みなどを防止できる。とくに、移動経路がXY方向に屈曲する際など、屈曲する位置で2系統の負圧配管の切り替えを行うことで、各区間が直線的になり各区間を担当する負圧配管の引き回しをさらに簡素化できる。
さらに、移動経路の途中で第1吸着回路と第2吸着回路とを切り替える操作の間もワークの吸着を維持することができ、移動経路全体でワークの吸着を維持できる。
なお、パレットを加工位置から準備位置へと戻す際には、逆の手順で第2吸着回路と第1吸着回路との切り替えを行えばよい。
これにより負圧配管まわりの構造を簡素にできかつ移動経路全体でワークの吸着が維持できる負圧吸着パレットを提供できる。
【0010】
本発明の負圧吸着パレットにおいて、前記第1カプラおよび前記第2カプラは、それぞれ前記パレットの同じ側面の互いに反対側端部に設置されていることが好ましい。
このような本発明では、第1カプラおよび第2カプラが前記負圧吸着パレットの同じ側面にあることで、負圧配管を接続する操作を容易に行える。また、第1カプラおよび第2カプラが、同じ側面の互いに反対側端部にあることで、負圧配管を接続する際の各々の識別が容易である。
【0011】
本発明の負圧吸着パレットにおいて、前記第1連通路は、互いに平行な複数の第1支線部と、各第1支線部の同じ側の端部を順次連結しかつ前記第1カプラに接続される第1幹線部と、を有し、前記第2連通路は、前記第1支線部と交互に配置される互いに平行な複数の第2支線部と、前記第1幹線部とは反対側となる各第2支線部の端部を順次連結しかつ前記第2カプラに接続される第2幹線部と、を有することが好ましい。
このような本発明では、第1連通路と第2連通路とが互いに櫛形に対向配置され、互いに交錯しない簡単な構造としつつ、第1吸着孔および第2吸着孔を高密度に配置することができる。
【0012】
本発明の自動パレット交換装置は、前述した本発明の負圧吸着パレットを用いて工作機械のテーブル上にワークを搬入および搬出する自動パレット交換装置であって、前記テーブル上に前記負圧吸着パレットを保持可能な加工ステーションと、前記テーブル外で前記負圧吸着パレットを保持可能な準備ステーションと、前記準備ステーションから前記加工ステーションに至る前記負圧吸着パレットの移動経路の途中で前記負圧吸着パレットを保持可能な中継ステーションと、前記準備ステーションと前記中継ステーションとの間で前記負圧吸着パレットを移動させる準備側移動機構と、前記加工ステーションと前記中継ステーションとの間で前記負圧吸着パレットを移動させる加工側移動機構と、前記準備ステーションと前記中継ステーションとの間にある前記負圧吸着パレットに接続可能な準備側負圧配管と、前記加工ステーションと前記中継ステーションとの間にある前記負圧吸着パレットに接続可能な加工側負圧配管と、を有する。
【0013】
このような本発明では、負圧吸着パレットを準備ステーションに保持した状態でワークの設置などの準備作業を行い、負圧吸着パレットを加工ステーションに保持した状態で工作機械によるワークの加工作業を行うことができる。そして、準備側移動機構および加工側移動機構により、準備ステーションの負圧吸着パレットを中継ステーション経由で加工ステーションへと搬入し、あるいは加工ステーションの負圧吸着パレットを中継ステーション経由で準備ステーションへと搬出できる。
搬送経路のうち、準備ステーションから中継ステーションまでの区間では、準備側負圧配管により負圧吸着パレットにおけるワークの吸着が維持され、加工ステーションから中継ステーションまでの区間では、加工側負圧配管により負圧吸着パレットにおけるワークの吸着が維持される。
中継ステーションにおいては、負圧吸着パレットの負圧吸着を維持するための配管を、準備側負圧配管から加工側負圧配管へ、または加工側負圧配管から準備側負圧配管へ切り替える。この際、負圧吸着パレットの第1吸着回路および第2吸着回路にそれぞれ加工側負圧配管および準備側負圧配管のいずれかを接続し、加工側負圧配管による吸着と準備側負圧配管による吸着とを重複させて並列化することで、ワークの負圧吸着が途切れることを防止できる。
従って、本発明においては、加工ステーションから中継ステーションを経て準備ステーションに至る移動経路の全長にわたって途切れることなくワークの吸着を維持できるとともに、移動経路における負圧吸着を準備側負圧配管と加工側負圧配管とで分担することで、各々の配管長さを短縮でき、負圧配管まわりの構造を簡素にできる。
これにより、加工ステーションにある負圧吸着パレットは、加工側負圧配管により加工時のワークの吸着が維持され、準備ステーションから引き回される長尺の準備側負圧配管との接続を解消でき、ワークの加工時の負圧配管による動作抵抗を低減できる。
【0014】
本発明の自動パレット交換装置は、前述した本発明の負圧吸着パレットを用いて工作機械のテーブル上にワークを搬入および搬出する自動パレット交換装置であって、前記テーブル上に前記負圧吸着パレットを保持可能な加工ステーションと、前記テーブル外で前記負圧吸着パレットを保持可能な準備ステーションと、前記準備ステーションと前記加工ステーションとの間で前記負圧吸着パレットを移動させる移動機構と、前記準備ステーションから引き出されて、前記準備ステーションから前記加工ステーションまで移動する前記負圧吸着パレットに接続可能な準備側負圧配管と、前記加工ステーションから引き出されて、前記加工ステーションにある前記負圧吸着パレットに接続可能な加工側負圧配管と、を有する。
【0015】
このような本発明では、負圧吸着パレットを準備ステーションに保持した状態でワークの設置などの準備作業を行い、負圧吸着パレットを加工ステーションに保持した状態で工作機械によるワークの加工作業を行うことができる。そして、移動機構により、準備ステーションの負圧吸着パレットを加工ステーションへと搬入し、あるいは加工ステーションの負圧吸着パレットを準備ステーションへと搬出できる。
加工ステーションにおいては、負圧吸着パレットの負圧吸着を維持するための配管を、準備側負圧配管から加工側負圧配管へ、または加工側負圧配管から準備側負圧配管へ切り替える。この際、負圧吸着パレットの第1吸着回路および第2吸着回路にそれぞれ加工側負圧配管および準備側負圧配管のいずれかを接続し、加工側負圧配管による吸着と準備側負圧配管による吸着とを重複させて並列化することで、ワークの負圧吸着が途切れることを防止できる。
これにより、加工ステーションにある負圧吸着パレットは、加工側負圧配管により加工時のワークの吸着が維持され、準備ステーションから引き回される長尺の準備側負圧配管との接続を解消でき、ワークの加工時の負圧配管による動作抵抗を低減できる。
【0016】
本発明の自動パレット交換方法は、前述した中継ステーションを有する本発明の自動パレット交換装置を用いて工作機械のテーブル上にワークを搬入および搬出する自動パレット交換方法であって、前記準備ステーションにおいて前記負圧吸着パレットに前記準備側負圧配管を接続し、前記準備側負圧配管が接続された前記負圧吸着パレットを前記準備ステーションから前記中継ステーションへと移動させ、前記中継ステーションにおいて、前記準備側負圧配管が接続された前記負圧吸着パレットに前記加工側負圧配管を接続したのち、前記負圧吸着パレットから前記準備側負圧配管を分離し、前記加工側負圧配管が接続された前記負圧吸着パレットを前記中継ステーションから前記加工ステーションへと移動させることで、前記テーブル上に前記ワークを搬入するとともに、前記テーブル上から前記ワークを搬出する際に、前記加工側負圧配管が接続された前記負圧吸着パレットを前記加工ステーションから前記中継ステーションへと移動させ、前記中継ステーションにおいて、前記加工側負圧配管が接続された前記負圧吸着パレットに前記準備側負圧配管を接続したのち、前記負圧吸着パレットから前記加工側負圧配管を分離し、前記準備側負圧配管が接続された前記負圧吸着パレットを前記中継ステーションから前記準備ステーションへと移動させる。
【0017】
このような本発明においては、加工ステーションから中継ステーションを経て準備ステーションに至る移動経路の全長にわたって途切れることなくワークの吸着を維持できるとともに、移動経路における負圧吸着を準備側負圧配管と加工側負圧配管とで分担することで、各々の配管長さを短縮でき、負圧配管まわりの構造を簡素にできる。
これにより、加工ステーションにある負圧吸着パレットは、加工側負圧配管により加工時のワークの吸着が維持され、準備ステーションから引き回される長尺の準備側負圧配管との接続を解消でき、ワークの加工時の負圧配管による動作抵抗を低減できる。
【0018】
本発明の自動パレット交換方法は、前述した準備用負圧配管および加工用負圧配管を有する本発明の自動パレット交換装置を用いて工作機械のテーブル上にワークを搬入および搬出する自動パレット交換方法であって、前記準備ステーションにおいて前記負圧吸着パレットに前記準備側負圧配管を接続し、前記準備側負圧配管が接続された前記負圧吸着パレットを前記準備ステーションから前記加工ステーションへと移動させ、前記加工ステーションにおいて、前記準備側負圧配管が接続された前記負圧吸着パレットに前記加工側負圧配管を接続したのち、前記負圧吸着パレットから前記準備側負圧配管を分離することで、前記テーブル上に前記ワークを搬入するとともに、前記テーブル上から前記ワークを搬出する際には、前記加工ステーションにおいて、前記加工側負圧配管が接続された前記負圧吸着パレットに前記準備側負圧配管を接続したのち、前記負圧吸着パレットから前記加工側負圧配管を分離し、前記準備側負圧配管が接続された前記負圧吸着パレットを前記中継ステーションから前記準備ステーションへと移動させる。
【0019】
このような本発明では、準備ステーションから加工ステーションに至る移動経路の全長にわたって、準備側負圧配管により負圧吸着パレットにおけるワークの負圧吸着を維持される。一方、加工ステーションにおいては、加工側負圧配管に接続を切り替えることにより、加工側負圧配管により負圧吸着パレットにおけるワークの吸着が維持される。
これにより、加工ステーションにある負圧吸着パレットにおいては、準備ステーションから引き回される長尺の準備側負圧配管との接続を解消でき、ワークの加工時の負圧配管による動作抵抗を低減できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ワークの加工時の負圧配管による動作抵抗を低減できる負圧吸着パレット、自動パレット交換装置、および自動パレット交換方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の自動パレット交換装置の第1実施形態を示す平面図。
【
図2】前記第1実施形態の負圧吸着パレットを示す平面図。
【
図3】前記第1実施形態の負圧吸着パレットの要部を示す部分拡大図。
【
図4】前記第1実施形態の第1パレットの準備作業を示す模式図。
【
図5】前記第1実施形態の第1パレットの往路中継作業を示す模式図。
【
図6】前記第1実施形態の第1パレットの加工作業および第2パレットの準備作業を示す模式図。
【
図7】前記第1実施形態の第1パレットの復路中継作業を示す模式図。
【
図8】前記第1実施形態の第1パレットの検査作業を示す模式図。
【
図9】前記第1実施形態の第2パレットの往路移動作業を示す模式図。
【
図10】前記第1実施形態の第2パレットの往路中継作業を示す模式図。
【
図11】前記第1実施形態の第2パレットの加工作業および第1パレットの準備作業を示す模式図。
【
図12】前記第1実施形態の第2パレットの復路中継作業を示す模式図。
【
図13】前記第1実施形態の第2パレットの検査作業および第1パレットの往路移動作業を示す模式図。
【
図14】本発明の第2実施形態の第1パレットの加工作業および第2パレットの準備作業を示す模式図。
【
図15】本発明の第2実施形態の第2パレットの往路移動作業を示す模式図。
【
図16】本発明の第2実施形態の第2パレットの加工作業および第1パレットの準備作業を示す模式図。
【
図17】本発明の第2実施形態の第2パレットの復路中継作業を示す模式図。
【
図18】本発明の第2実施形態の第2パレットの検査作業および第1パレットの往路移動作業を示す模式図。
【
図19】本発明の自動パレット交換装置の第3実施形態を示す平面図。
【
図20】本発明の第3実施形態の第1パレットの準備作業を示す模式図。
【
図21】本発明の第3実施形態の第1パレットの往路移動を示す模式図。
【
図22】本発明の第3実施形態の第1パレットの往路移動後の負圧配管の切り替えを示す模式図。
【
図23】本発明の第3実施形態の第1パレットの加工作業および第2パレットの準備作業を示す模式図。
【
図24】本発明の第3実施形態の第1パレットの復路移動前の負圧配管の切り替えを示す模式図。
【
図25】本発明の第3実施形態の第1パレットの復路移動を示す模式図。
【
図26】本発明の第3実施形態の第1パレットの検査作業を示す模式図。
【
図27】本発明の第3実施形態の第2パレットの往路移動前半を示す模式図。
【
図28】本発明の第3実施形態の第2パレットの往路移動後半を示す模式図。
【
図29】本発明の第3実施形態の第2パレットの往路移動後の負圧配管の切り替えを示す模式図。
【
図30】本発明の第3実施形態の第2パレットの加工作業および第1パレットの準備作業を示す模式図。
【
図31】本発明の第3実施形態の第2パレットの復路移動前の負圧配管の切り替えを示す模式図。
【
図32】本発明の第3実施形態の第2パレットの復路移動前半を示す模式図。
【
図33】本発明の第3実施形態の第2パレットの復路移動後半および第1パレットの往路移動前半を示す模式図。
【
図34】本発明の自動パレット交換装置の第4実施形態を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔第1実施形態〕
図1から
図13により本発明の第1実施形態を説明する。
図1において、加工装置1はワーク2の加工を行うものであり、工作機械10および自動パレット交換装置20を備えている。
【0023】
工作機械10は、フロア11の上にテーブル12およびコラム13を有する。コラム13には主軸ヘッド14が支持され、主軸ヘッド14には主軸15が支持され、主軸15の先端には加工用の工具(図示省略)が装着されている。
テーブル12とフロア11との間にはX軸移動機構16およびY軸移動機構17が設置され、テーブル12はフロア11に対して水平なX方向およびY方向へ移動可能である。コラム13にはZ軸移動機構18が設置され、主軸ヘッド14および主軸15は垂直なZ方向へ移動可能である。
【0024】
テーブル12の上面には、自動パレット交換装置20により、ワーク2を保持した負圧吸着パレット30が搬入および搬出される。
ワーク2を保持した負圧吸着パレット30がテーブル12上に搬入された状態で、主軸15を回転させつつテーブル12に対してXYZ各軸移動させることで、ワーク2に対する三次元加工が可能である。
【0025】
自動パレット交換装置20は、ワーク2を保持した負圧吸着パレット30を工作機械10のテーブル12上へ搬入および搬出する装置であって、テーブル12上に負圧吸着パレット30を保持可能な加工ステーションS0と、テーブル12外で負圧吸着パレット30を保持可能な準備ステーションS1,S2と、準備ステーションS1,S2から加工ステーションS0に至る負圧吸着パレット30の移動経路の途中で負圧吸着パレット30を保持可能な中継ステーションS3と、を備えている。
【0026】
加工ステーションS0は、工作機械10でワーク2を加工する際のテーブル12上に負圧吸着パレット30が配置される区画である。
中継ステーションS3は、加工ステーションS0からコラム13の反対側へずれた位置に設定された区画である。
準備ステーションS1,S2は、中継ステーションS3のY方向の両側に対称に設定された区画である。
【0027】
自動パレット交換装置20は、準備ステーションS1から中継ステーションS3を経て準備ステーションS2に至る準備側移動機構21を有する。
準備側移動機構21は、負圧吸着パレット30をY方向へ移動させる駆動機構で構成され、準備ステーションS1、中継ステーションS3、および準備ステーションS2の各々で負圧吸着パレット30を静止状態で支持可能である。
【0028】
工作機械10において、テーブル12をX方向に移動させるX軸移動機構16は、フロア11の外縁を超えて延伸されており、テーブル12はX軸移動機構16により加工ステーションS0と中継ステーションS3との間を移動可能である。
自動パレット交換装置20においては、工作機械10のX軸移動機構16が加工側移動機構として兼用されており、加工側移動機構であるX軸移動機構16により、負圧吸着パレット30を加工ステーションS0と中継ステーションS3との間で移動可能である。
【0029】
自動パレット交換装置20は、準備ステーションS1,S2と中継ステーションS3との間にある負圧吸着パレット30に接続可能な準備側負圧配管41,42と、加工ステーションS0と中継ステーションS3との間にある負圧吸着パレット30に接続可能な加工側負圧配管43と、を有する。
【0030】
準備側負圧配管41は、準備ステーションS1に設置された第1負圧装置44から延びる可撓性のホースであり、第1負圧装置44に設置された真空ポンプにより負圧吸着パレット30がワーク2を吸着するのに十分な負圧を供給可能である。準備側負圧配管41は、準備ステーションS1にある負圧吸着パレット30を中継ステーションS3まで移動させた際にも接続が維持できかつ余分な弛みを生じない長さとされている。
【0031】
準備側負圧配管42は、準備ステーションS2に設置された第2負圧装置45から延びる可撓性のホースであり、第2負圧装置45に設置された真空ポンプにより負圧吸着パレット30がワーク2を吸着するのに十分な負圧を供給可能である。準備側負圧配管42は、準備ステーションS2にある負圧吸着パレット30を中継ステーションS3まで移動させた際にも接続が維持できかつ余分な弛みを生じない長さとされている。
【0032】
加工側負圧配管43は、加工ステーションS0に設置された第3負圧装置46から延びる可撓性のホースであり、第3負圧装置46に設置された真空ポンプにより負圧吸着パレット30がワーク2を吸着するのに十分な負圧を供給可能である。加工側負圧配管43は、加工ステーションS0にある負圧吸着パレット30を中継ステーションS3まで移動させた際にも接続が維持できかつ余分な弛みを生じない長さとされている。
【0033】
図2および
図3には負圧吸着パレット30が示されている。
負圧吸着パレット30は、表面がワーク2を保持する保持面33とされた板状の本体34を有し、本体34には第1吸着回路31および第2吸着回路32が形成されている。
【0034】
第1吸着回路31は、保持面33に配置された複数の第1吸着孔314と、外部の負圧配管が接続可能な第1カプラ313と、複数の第1吸着孔314と第1カプラ313とを連通する第1連通路310と、を有する。
第1連通路310は、互いに平行な複数の第1支線部311と、各第1支線部311の同じ側の端部を順次連結しかつ第1カプラ313に接続される第1幹線部312と、を有する。
複数の第1吸着孔314は、第1支線部311および第1幹線部312に沿って配列され、保持面33の略全面にわたって配置されている。
第1吸着回路31は、第1カプラ313に負圧配管を接続して減圧することで、複数の第1吸着孔314で保持面33に置かれたワーク2を負圧吸着し、保持面33に保持可能である。
【0035】
第2吸着回路32は、保持面33に配置された複数の第2吸着孔324と、外部の負圧配管が接続可能な第2カプラ323と、複数の第2吸着孔324と第2カプラ323とを連通する第2連通路320と、を有する。
第2連通路320は、互いに平行な複数の第2支線部321と、各第2支線部321の同じ側の端部を順次連結しかつ第2カプラ323に接続される第2幹線部322と、を有する。
複数の第2吸着孔324は、第2支線部321および第2幹線部322に沿って配列され、保持面33の略全面にわたって配置されている。
第2吸着回路32は、第2カプラ323に負圧配管を接続して減圧することで、複数の第2吸着孔324で保持面33に置かれたワーク2を負圧吸着し、保持面33に保持可能である。
【0036】
複数の第1支線部311および第2支線部321は、互いに近接した状態で並行に配置されており、第1吸着回路31および第2吸着回路32によるワーク2の吸着効果は略同一とされている。
第1幹線部312および第2幹線部322は、本体34の互いに反対側の辺縁に離れて並行に配置され、それぞれ複数の第1支線部311および第2支線部321の互いに反対側の各端部を連通している。
このような配置により、第1連通路310と第2連通路320とは互いに櫛形であって互いに対向した状態で配置され、互いに交錯しない簡単な構造としつつ、各々の第1吸着孔314および第2吸着孔324をそれぞれ高密度に配置できるようになっている。
【0037】
第1カプラ313および第2カプラ323は、それぞれ本体34の同じ側面に配置され、各々に負圧配管を接続する操作を容易に行えるようになっている。また、第1カプラ313および第2カプラ323は、本体34の同じ側面における反対側の端部に設置されており、各々に負圧配管を接続する際の各々の識別が容易である。
【0038】
図4から
図13の各図に、第1実施形態における動作を示す。
第1実施形態の自動パレット交換装置20(
図1参照)では、負圧吸着パレット30(
図2および
図3参照)を用い、その第1吸着回路31および第2吸着回路32にそれぞれ準備側負圧配管41,42および加工側負圧配管43のいずれかを接続することで、準備ステーションS1,S2から中継ステーションS3を経て加工ステーションS0に至る移動経路全体にわたってワーク2の吸着を維持する。
【0039】
図4において、準備ステーションS1,S2にはそれぞれ負圧吸着パレット30を設置しておく。このうち、準備ステーションS1に配置されたものを負圧吸着パレット30Aとし、準備ステーションS2に配置されたものを負圧吸着パレット30Bとする。
先ず、準備ステーションS1において、負圧吸着パレット30Aにワーク2を設置するとともに、準備側負圧配管41を負圧吸着パレット30Aの第1吸着回路31(第2吸着回路32でもよい)に接続し、ワーク2を負圧吸着して保持する。
次に、準備側移動機構21により、ワーク2を保持した負圧吸着パレット30Aを、準備ステーションS1から中継ステーションS3へと移動させる。その間、移動する負圧吸着パレット30Aにおいては、準備側負圧配管41によるワーク2の負圧吸着が維持される。
【0040】
図5において、中継ステーションS3に負圧吸着パレット30Aが搬入されたら、準備側負圧配管41によりワーク2を負圧吸着した状態で、加工側負圧配管43を負圧吸着パレット30Aの第2吸着回路32(第1吸着回路31または第2吸着回路32の空いているほう)に接続し、第1吸着回路31および第2吸着回路32を同時に用いて並列的にワーク2を負圧吸着する。
続いて、準備側負圧配管41による負圧吸着を停止し、準備側負圧配管41を負圧吸着パレット30Aから分離し、加工側負圧配管43からの負圧だけでワーク2を負圧吸着パレット30Aに吸着する。分離した準備側負圧配管41は準備ステーションS1に戻しておく。
この後、加工側移動機構であるX軸移動機構16により、ワーク2を保持した負圧吸着パレット30Aを、中継ステーションS3から加工ステーションS0へと移動させる。その間、移動する負圧吸着パレット30Aにおいては、加工側負圧配管43によりワーク2の負圧吸着が維持される。
【0041】
図6において、加工ステーションS0では、加工側負圧配管43によりワーク2を負圧吸着パレット30Aに吸着保持した状態で、工作機械10によるワーク2の加工を行う。
加工が済んだら、
図4ないし
図6とは逆の手順でワーク2を保持した負圧吸着パレット30Aを、加工ステーションS0から中継ステーションS3を経て準備ステーションS1へと戻す。
【0042】
図7において、ワーク2を保持した負圧吸着パレット30Aは、加工側移動機構であるX軸移動機構16により、加工ステーションS0から中継ステーションS3へ戻される。その間、移動する負圧吸着パレット30Aにおいては、加工側負圧配管43によりワーク2の負圧吸着が維持される。
中継ステーションS3では、加工側負圧配管43によりワーク2の負圧吸着を維持した状態で、準備側負圧配管41を接続して並列的にワーク2の負圧吸着を行い、次に加工側負圧配管43を分離し、準備側負圧配管41からの負圧だけでワーク2を負圧吸着パレット30Aに吸着した状態とする。分離した加工側負圧配管43は加工ステーションS0に戻しておく。
【0043】
図8において、準備側移動機構21により、準備側負圧配管41からの負圧だけでワーク2を負圧吸着している負圧吸着パレット30Aを、中継ステーションS3から準備ステーションS1へと戻す。
準備ステーションS1では、加工されたワーク2の検査を行ったのち、準備側負圧配管41からの負圧を停止してワーク2の負圧吸着を解除し、負圧吸着パレット30Aからワーク2を取り出す。
【0044】
一方、準備ステーションS2においては、加工ステーションS0で負圧吸着パレット30Aに保持されたワーク2の加工を行っている状態(
図6参照)で、負圧吸着パレット30Bにワーク2を設置し、準備側負圧配管42を負圧吸着パレット30Bの第1吸着回路31(第2吸着回路32でもよい)に接続し、ワーク2を負圧吸着して保持しておく。
そして、加工済のワーク2を保持した負圧吸着パレット30Aが、中継ステーションS3から準備ステーションS1へと戻される状態(
図8参照)を待って、負圧吸着パレット30Bを準備ステーションS2から中継ステーションS3ないし加工ステーションS0へ搬送する。
【0045】
図9において、準備側移動機構21により、ワーク2を保持した負圧吸着パレット30Bを、準備ステーションS2から中継ステーションS3へと移動させる。その間、移動する負圧吸着パレット30Bにおいては、準備側負圧配管42によるワーク2の負圧吸着が維持される。
【0046】
図10において、中継ステーションS3に負圧吸着パレット30Bが搬入されたら、準備側負圧配管42によりワーク2を負圧吸着した状態で、加工側負圧配管43を負圧吸着パレット30Bの第2吸着回路32(第1吸着回路31または第2吸着回路32の空いているほう)に接続し、第1吸着回路31および第2吸着回路32を同時に用いて並列的にワーク2を負圧吸着する。
続いて、準備側負圧配管42による負圧吸着を停止し、準備側負圧配管42を負圧吸着パレット30Aから分離し、加工側負圧配管43からの負圧だけでワーク2を負圧吸着パレット30Bに吸着する。分離した準備側負圧配管42は準備ステーションS2に戻しておく。
この後、加工側移動機構であるX軸移動機構16により、ワーク2を保持した負圧吸着パレット30Bを、中継ステーションS3から加工ステーションS0へと移動させる。その間、移動する負圧吸着パレット30Bにおいては、加工側負圧配管43によりワーク2の負圧吸着が維持される。
【0047】
図11において、加工ステーションS0では、加工側負圧配管43によりワーク2を負圧吸着パレット30Bに吸着保持した状態で、工作機械10によるワーク2の加工を行う。負圧吸着パレット30Bに保持されたワーク2の加工の間に、準備ステーションS1においては、負圧吸着パレット30Aに次のワーク2を準備しておく。
加工が済んだら、
図9ないし
図11とは逆の手順でワーク2を保持した負圧吸着パレット30Aを、加工ステーションS0から中継ステーションS3を経て準備ステーションS1へと戻す。
【0048】
図12において、ワーク2を保持した負圧吸着パレット30Bは、加工側移動機構であるX軸移動機構16により、加工ステーションS0から中継ステーションS3へ戻される。その間、移動する負圧吸着パレット30Bにおいては、加工側負圧配管43によりワーク2の負圧吸着が維持される。
中継ステーションS3では、加工側負圧配管43によりワーク2の負圧吸着を維持した状態で、準備側負圧配管42を接続して並列的にワーク2の負圧吸着を行い、次に加工側負圧配管43を分離し、準備側負圧配管42からの負圧だけでワーク2を負圧吸着パレット30Bに吸着した状態とする。分離した加工側負圧配管43は加工ステーションS0に戻しておく。
【0049】
図13において、準備側移動機構21により、準備側負圧配管42からの負圧だけでワーク2を負圧吸着している負圧吸着パレット30Bを、中継ステーションS3から準備ステーションS2へと戻す。
準備ステーションS2では、加工されたワーク2の検査を行ったのち、準備側負圧配管42からの負圧を停止してワーク2の負圧吸着を解除し、負圧吸着パレット30Bからワーク2を取り出す。
この際、準備ステーションS1には、ワーク2を保持した負圧吸着パレット30Aが準備されているので、
図4以降の動作を繰り返すことで、2枚の負圧吸着パレット30を交互に用いてワーク2を工作機械10へと効率よく搬入および搬出できる。
【0050】
第1実施形態の自動パレット交換装置20では、負圧吸着パレット30(30A,30B)を準備ステーションS1,S2に保持した状態でワーク2の設置などの準備作業を行い、負圧吸着パレット30を加工ステーションS0に保持した状態で工作機械10によるワーク2の加工作業を行うことができる。
自動パレット交換装置20では、準備側移動機構21および加工側移動機構であるX軸移動機構16により、準備ステーションS1,S2の負圧吸着パレット30を中継ステーションS3経由で加工ステーションS0へと搬入し、あるいは加工ステーションS0の負圧吸着パレット30を中継ステーションS3経由で準備ステーションS1,S2へと搬出できる。
【0051】
搬送経路のうち、準備ステーションS1,S2から中継ステーションS3までの区間では、準備側負圧配管41,42により負圧吸着パレット30におけるワーク2の吸着が維持され、加工ステーションS0から中継ステーションS3までの区間では、加工側負圧配管43により負圧吸着パレット30におけるワーク2の吸着が維持される。
中継ステーションS3においては、負圧吸着パレット30の負圧吸着を維持するための配管を、準備側負圧配管41,42から加工側負圧配管43へ、または加工側負圧配管43から準備側負圧配管41,42へ切り替えることができる。
この際、負圧吸着パレット30の第1吸着回路31および第2吸着回路32に、それぞれ準備側負圧配管41,42および加工側負圧配管43のいずれかを接続し、準備側負圧配管41,42による吸着と加工側負圧配管43による吸着とを重複させて並列化することで、準備側負圧配管41,42と加工側負圧配管43との切り替えの際にワーク2の負圧吸着が途切れることを防止できる。
【0052】
このように、本実施形態の加工装置1では、準備ステーションS1,S2から中継ステーションS3を経て加工ステーションS0に至る移動経路の全長にわたって途切れることなくワーク2の吸着を維持できるとともに、移動経路における負圧吸着を準備側負圧配管41,42と加工側負圧配管43とで分担することで、各々の配管長さを短縮でき、負圧配管まわりの構造を簡素にできる。
これにより、加工ステーションS0にある負圧吸着パレット30は、加工側負圧配管43により加工時のワーク2の吸着が維持され、準備ステーションS1,S2から搬送経路の全長にわたって準備側負圧配管41,42を引き回した場合のような、長尺の準備側負圧配管41,42との接続を解消でき、ワーク2の加工時の負圧配管による動作抵抗を低減できる。
【0053】
〔第2実施形態〕
図14から
図18により本発明の第2実施形態を説明する。
前述した第1実施形態においては、準備ステーションS1,S2の負圧吸着パレット30A,30Bには、準備側負圧配管41および準備側負圧配管42がそれぞれ負圧吸着パレット30A,30Bの反対側すなわち中継ステーションS3から離れた側に接続され(
図4および
図9参照)、負圧吸着パレット30A,30Bが中継ステーションS3へ移動した際には、準備側負圧配管41が負圧吸着パレット30Aの準備ステーションS1側となり、準備側負圧配管42が負圧吸着パレット30Bの準備ステーションS2側となり、それぞれ最寄りの状態とされていた。
これに対し、準備ステーションS1,S2において、準備側負圧配管41および準備側負圧配管42を、負圧吸着パレット30A,30Bの同じ側に接続してもよい。
【0054】
前述した第1実施形態の
図4および
図5の通り、準備ステーションS1に配置された負圧吸着パレット30Aには中継ステーションS3から離れた側に準備側負圧配管41を接続し、中継ステーションS3から加工ステーションS0へ搬送する。
図14において、準備ステーションS2に配置された負圧吸着パレット30Bでは、準備側負圧配管42を負圧吸着パレット30Aと同じ側、すなわち中継ステーションS3に近い側に接続してもよい。
このような場合でも、負圧吸着パレット30Bを中継ステーションS3から加工ステーションS0へ搬送する際には、
図15に示すように、負圧吸着パレット30Bの空いている側の回路に加工側負圧配管43を接続すればよい。このような接続であっても、
図16および
図17に示すように、加工ステーションS0での加工時(
図16参照)、中継ステーションS3への戻り(
図17参照)、準備ステーションS2への戻り(
図18)の際にも、前述した第1実施形態の
図10ないし
図13と同様な動作を行うことができる。
【0055】
〔第3実施形態〕
図19から
図33により本発明の第3実施形態を説明する。
図19において、本実施形態の加工装置3は、前述した第1実施形態(
図1参照)と同様な工作機械10および自動パレット交換装置20を備え、負圧吸着パレット30によりワーク2を搬送可能である。これらの工作機械10、自動パレット交換装置20、および負圧吸着パレット30の構成は、基本的に第1実施形態で説明した通りであり、重複する説明は省略し、以下には相違部分について説明する。
【0056】
前述した第1実施形態では、工作機械10に加工ステーションS0が設置され、自動パレット交換装置20に準備ステーションS1,S2および中継ステーションS3が設置されていた。これに対し、本実施形態では、負圧配管の接続切り替えを行う中継ステーションS3が省略され、X軸移動機構16(第1実施形態では加工側移動機構に兼用)と準備側移動機構21とが交差する部分では負圧吸着パレット30の載せ替えだけが行われる。当該部分では負圧吸着パレット30の載せ替えのために僅かな時間、負圧吸着パレット30が停止するが、X軸移動機構16および準備側移動機構21は一連の移動機構として動作し、この移動機構により工作機械10の加工ステーションS0と自動パレット交換装置20の準備ステーションS1,S2との間で負圧吸着パレット30が搬送される。
【0057】
前述した第1実施形態では、自動パレット交換装置20に2系統の準備側負圧配管41,42および第1負圧装置44、第2負圧装置45が設置され、準備側負圧配管41,42はそれぞれ中継ステーションS3まで引き出し可能な長さを有していた。これに対し、本実施形態の準備側負圧配管41,42は、それぞれ移動機構(X軸移動機構16および準備側移動機構21)に沿って加工ステーションS0まで引き出し可能な長さとされている。
【0058】
前述した第1実施形態では、工作機械10に加工側負圧配管43および第3負圧装置46が設置され、加工側負圧配管43は中継ステーションS3まで引き出し可能な長さを有していた。これに対し、本実施形態の加工側負圧配管43は、自動パレット交換装置20に達しない短尺とされ、工作機械10のワーク2の加工動作時にテーブル12上の負圧吸着パレット30が移動する範囲に追従可能な最小限の長さとされている。
【0059】
前述した第1実施形態では、準備側負圧配管41,42により準備ステーションS1,S2と中継ステーションS3との間の負圧吸着パレット30の負圧吸着を維持し、加工側負圧配管43により中継ステーションS3と加工ステーションS0との間の負圧吸着を維持しており、中継ステーションS3で準備側負圧配管41,42と加工側負圧配管43との接続を切り替えていた。そして、加工ステーションS0での加工動作時には、加工側負圧配管43をそのまま用いていた。
これに対し、本実施形態では、準備側負圧配管41,42により準備ステーションS1,S2と加工ステーションS0との間、つまり移動機構(X軸移動機構16および準備側移動機構21)による移動経路の全長にわたって、負圧吸着パレット30の負圧吸着を維持する。また、加工側負圧配管43は、加工動作時を含めて、加工ステーションS0における負圧吸着パレット30の負圧吸着を維持する。そして、準備側負圧配管41,42と加工側負圧配管43との接続を切り替えは、加工ステーションS0で行われる。
【0060】
図20から
図33に第3実施形態の動作を示す。
図20において、準備ステーションS1,S2にはそれぞれ負圧吸着パレット30を設置しておく。前述した第1実施形態と同様、準備ステーションS1に配置されたものを負圧吸着パレット30Aとし、準備ステーションS2に配置されたものを負圧吸着パレット30Bとする。
先ず、準備ステーションS1において、負圧吸着パレット30Aにワーク2を設置するとともに、準備側負圧配管41を負圧吸着パレット30Aの第1吸着回路31(第2吸着回路32でもよい)に接続し、ワーク2を負圧吸着して保持する。
次に、準備側移動機構21により、ワーク2を保持した負圧吸着パレット30Aを、準備ステーションS1からX軸移動機構16との交差位置まで移動させる。
その間、移動する負圧吸着パレット30Aにおいては、準備側負圧配管41によるワーク2の負圧吸着が維持される。
【0061】
図21において、交差位置では、X軸移動機構16により、ワーク2を保持した負圧吸着パレット30Aを準備側移動機構21から受け取り、加工ステーションS0まで移動させる。
その間、移動する負圧吸着パレット30Aにおいては、準備側負圧配管41によるワーク2の負圧吸着が維持される。
【0062】
図22において、加工ステーションS0に負圧吸着パレット30Aが搬入されたら、準備側負圧配管41によりワーク2を負圧吸着した状態で、加工側負圧配管43を負圧吸着パレット30Aの第2吸着回路32(第1吸着回路31または第2吸着回路32の空いているほう)に接続し、第1吸着回路31および第2吸着回路32を同時に用いて並列的にワーク2を負圧吸着する。
続いて、準備側負圧配管41による負圧吸着を停止し、準備側負圧配管41を負圧吸着パレット30Aから分離し、加工側負圧配管43からの負圧だけでワーク2を負圧吸着パレット30Aに吸着する。分離した準備側負圧配管41は準備ステーションS1に戻しておく。
【0063】
図23において、加工ステーションS0では、加工側負圧配管43によりワーク2を負圧吸着パレット30Aに吸着した状態で、工作機械10によるワーク2の加工を行う。
加工の間に、準備ステーションS2においては、負圧吸着パレット30Bにワーク2を設置するとともに、準備側負圧配管42を負圧吸着パレット30Bの第1吸着回路31(第2吸着回路32でもよい)に接続し、ワーク2を負圧吸着して保持しておく。
【0064】
図24において、ワーク2の加工が済んだら、加工側負圧配管43によりワーク2を負圧吸着した状態で、準備側負圧配管41を負圧吸着パレット30Aの第2吸着回路32(第1吸着回路31または第2吸着回路32の空いているほう)に接続し、第1吸着回路31および第2吸着回路32を同時に用いて並列的にワーク2を負圧吸着する。
続いて、加工側負圧配管43による負圧吸着を停止し、加工側負圧配管43を負圧吸着パレット30Aから分離し、準備側負圧配管41からの負圧だけでワーク2を負圧吸着パレット30Aに吸着する。分離した加工側負圧配管43は第3負圧装置46の近傍にまとめておく。
【0065】
図25において、ワーク2を保持した負圧吸着パレット30Aは、加工側移動機構であるX軸移動機構16により、加工ステーションS0から準備側移動機構21との交差位置まで移動させる。
その間、移動する負圧吸着パレット30Aにおいては、準備側負圧配管41によりワーク2の負圧吸着が維持される。
【0066】
図26において、交差位置では、準備側移動機構21により、ワーク2を保持した負圧吸着パレット30AをX軸移動機構16から受け取り、準備ステーションS1まで移動させる。
その間、移動する負圧吸着パレット30Aにおいては、準備側負圧配管41によるワーク2の負圧吸着が維持される。
準備ステーションS1では、加工されたワーク2の検査を行ったのち、準備側負圧配管41からの負圧を停止してワーク2の負圧吸着を解除し、負圧吸着パレット30Aからワーク2を取り出す。
【0067】
図27において、準備ステーションS2においては、加工ステーションS0で負圧吸着パレット30Aに保持されたワーク2の加工を行っている状態(
図23参照)で、負圧吸着パレット30Bにワーク2が設置され、準備側負圧配管42が負圧吸着パレット30Bに接続され、ワーク2が負圧吸着された状態となっている。
そして、加工済のワーク2を保持した負圧吸着パレット30Aが、準備ステーションS1へと戻された状態(
図26参照)を待って、準備側移動機構21により、負圧吸着パレット30Bを準備ステーションS2からX軸移動機構16との交差位置まで移動させる。
その間、移動する負圧吸着パレット30Bにおいては、準備側負圧配管42によるワーク2の負圧吸着が維持される。
【0068】
図28において、交差位置では、X軸移動機構16により、ワーク2を保持した負圧吸着パレット30Bを準備側移動機構21から受け取り、加工ステーションS0まで移動させる。
その間、移動する負圧吸着パレット30Bにおいては、準備側負圧配管42によるワーク2の負圧吸着が維持される。
【0069】
図29において、加工ステーションS0に負圧吸着パレット30Bが搬入されたら、準備側負圧配管42によりワーク2を負圧吸着した状態で、加工側負圧配管43を負圧吸着パレット30Bの第2吸着回路32(第1吸着回路31または第2吸着回路32の空いているほう)に接続し、第1吸着回路31および第2吸着回路32を同時に用いて並列的にワーク2を負圧吸着する。
続いて、準備側負圧配管42による負圧吸着を停止し、準備側負圧配管42を負圧吸着パレット30Bから分離し、加工側負圧配管43からの負圧だけでワーク2を負圧吸着パレット30Bに吸着する。分離した準備側負圧配管42は準備ステーションS2に戻しておく。
【0070】
図30において、加工ステーションS0では、加工側負圧配管43によりワーク2を負圧吸着パレット30Bに吸着した状態で、工作機械10によるワーク2の加工を行う。
加工の間に、準備ステーションS1においては、負圧吸着パレット30Aにワーク2を設置するとともに、準備側負圧配管41を負圧吸着パレット30Aの第1吸着回路31(第2吸着回路32でもよい)に接続し、ワーク2を負圧吸着して保持しておく。
【0071】
図31において、ワーク2の加工が済んだら、加工側負圧配管43によりワーク2を負圧吸着した状態で、準備側負圧配管42を負圧吸着パレット30Bの第2吸着回路32(第1吸着回路31または第2吸着回路32の空いているほう)に接続し、第1吸着回路31および第2吸着回路32を同時に用いて並列的にワーク2を負圧吸着する。
続いて、加工側負圧配管43による負圧吸着を停止し、加工側負圧配管43を負圧吸着パレット30Bから分離し、準備側負圧配管42からの負圧だけでワーク2を負圧吸着パレット30Bに吸着する。分離した加工側負圧配管43は第3負圧装置46の近傍にまとめておく。
【0072】
図32において、ワーク2を保持した負圧吸着パレット30Bは、加工側移動機構であるX軸移動機構16により、加工ステーションS0から準備側移動機構21との交差位置まで移動させる。
その間、移動する負圧吸着パレット30Bにおいては、準備側負圧配管42によりワーク2の負圧吸着が維持される。
【0073】
図33において、交差位置では、準備側移動機構21により、ワーク2を保持した負圧吸着パレット30BをX軸移動機構16から受け取り、準備ステーションS2まで移動させる。
その間、移動する負圧吸着パレット30Bにおいては、準備側負圧配管42によるワーク2の負圧吸着が維持される。
準備ステーションS2では、加工されたワーク2の検査を行ったのち、準備側負圧配管42からの負圧を停止してワーク2の負圧吸着を解除し、負圧吸着パレット30Bからワーク2を取り出す。
この際、準備ステーションS1には、ワーク2を保持した負圧吸着パレット30Aが準備されているので、
図20以降の動作を繰り返すことで、2枚の負圧吸着パレット30を交互に用いてワーク2を工作機械10へと効率よく搬入および搬出できる。
【0074】
このような第3実施形態によれば、準備ステーションS1,S2から加工ステーションS0に至る移動経路の全長にわたって、準備側負圧配管41,42により負圧吸着パレット30におけるワーク2の負圧吸着が維持される。一方、加工ステーションS0においては、加工側負圧配管43に接続を切り替えることにより、加工側負圧配管43により負圧吸着パレット30におけるワーク2の吸着が維持される。
これにより、加工ステーションにある負圧吸着パレットにおいては、準備ステーションから引き回される長尺の準備側負圧配管との接続を解消でき、ワークの加工時の負圧配管による動作抵抗を低減できる。
【0075】
加工ステーションS0では、負圧吸着パレット30の負圧吸着を維持するための配管を、準備側負圧配管41,42から加工側負圧配管43へ、または加工側負圧配管43から準備側負圧配管41,42へ切り替えることができる。
この際、負圧吸着パレット30の第1吸着回路31および第2吸着回路32に、それぞれ準備側負圧配管41,42および加工側負圧配管43のいずれかを接続し、準備側負圧配管41,42による吸着と加工側負圧配管43による吸着とを重複させて並列化することで、準備側負圧配管41,42と加工側負圧配管43との切り替えの際にワーク2の負圧吸着が途切れることを防止できる。
【0076】
〔第4実施形態〕
図34により本発明の第4実施形態を説明する。
前述した第3実施形態では、工作機械10に加工ステーションS0が設置され、自動パレット交換装置20に準備ステーションS1,S2が設置されていた。そして、第1実施形態および第2実施形態における中継ステーションS3は省略され、準備ステーションS1,S2で準備された負圧吸着パレット30(30A,30B)が交互に加工ステーションS0まで搬送され、加工ステーションS0において負圧配管41,42,43の接続切り替えを行っていた。
ここで、第3実施形態では、負圧吸着パレット30A,30Bを準備ステーションS1,S2から加工ステーションS0まで搬送するために、自動パレット交換装置20の準備側移動機構21および工作機械10のX軸移動機構16を用いていた。つまり、準備側移動機構21で負圧吸着パレット30A,30Bを準備ステーションS1,S2からX軸移動機構16の端部まで搬送し、テーブル12に負圧吸着パレット30A,30Bを交互に載置して加工ステーションS0まで搬送していた。
【0077】
図34において、本実施形態の加工装置4は2つのテーブル12(12A,12B)を有し、各々は自動パレット交換装置20の準備側移動機構21および工作機械10のX軸移動機構16により準備ステーションS1,S2と加工ステーションS0との間を移動可能である。
2つのテーブル12A,12Bの上には負圧吸着パレット30A,30Bが載置されている。このうち、負圧吸着パレット30Aを載置したテーブル12Aは、準備ステーションS1から加工ステーションS0まで搬送され、負圧吸着パレット30Bを載置したテーブル12Bは、準備ステーションS2から加工ステーションS0まで搬送される。
【0078】
従って、負圧吸着パレット30A,30Bが準備ステーションS1,S2から加工ステーションS0へと搬送される点では前述した第3実施形態と同様であり、前述した第3実施形態で説明した通りのワーク2および負圧配管41,42,43の操作により、同様な機能を得ることができる。
さらに、本実施形態では、負圧吸着パレット30A,30Bはそれぞれ2つのテーブル12A,12Bの上に載置された状態とされ、載せ替え操作が必要なく、作業効率を向上できる。
【0079】
なお、第4実施形態では、負圧吸着パレット30A,30Bはテーブル12A,12Bの上に常時載置されるものであり、負圧吸着パレット30A,30Bがテーブル12A,12Bと一体化された構成としてもよい。
また、テーブル12A,12Bを省略し、負圧吸着パレット30A,30Bがそれぞれ単体で、準備側移動機構21およびX軸移動機構16により準備ステーションS1,S2から加工ステーションS0へと搬送されるようにしてもよい。
この場合、工作機械10のテーブル12およびX軸移動機構16は、工作機械10が設置された加工ステーションS0の範囲内で設置すればよく、自動パレット交換装置20の搬送装置を加工ステーションS0まで延長して負圧吸着パレット30A,30Bを加工ステーションS0まで搬送できる構成とすればよい。
【0080】
〔他の実施形態〕
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれる。
前記第1ないし第3実施形態では、X軸移動機構16の移動範囲を延長して加工側移動機構として兼用したが、専用の加工側移動機構を別途設置してもよい。ただし、X軸移動機構16の延長部分を加工側移動機構として兼用することで、構成の簡素化および設備コストの低減が図れる。
前記第1および第2実施形態において、準備ステーションS1,S2および中継ステーションS3は、自動パレット交換装置20に設置される専用の区画などでなくてよく、負圧吸着パレット30を搬送する準備側移動機構21の途中の区間を用いてもよい。例えば、準備側移動機構21として負圧吸着パレット30を搬送するコンベアの途中に、負圧吸着パレット30を係止するストッパなどを設置し、負圧吸着パレット30を静止させて準備側移動機構21上に保持する構成などが採用でき、ストッパを進退させることで負圧吸着パレット30の通過および停止を切り替えるようにしてもよい。
【0081】
前記第1および第2実施形態では、加工ステーションS0からX方向にずれた位置に中継ステーションS3を設け、そのY方向の両側に1つずつ一対の準備ステーションS1,S2を設けた。
これに対し、準備側移動機構21をY方向に延長し、中継ステーションS3の両側に複数の準備ステーションを設けてもよい。一方、加工側移動機構であるX軸移動機構16をさらに延長し、複数の中継ステーションを設け、各々のY方向の両側に準備ステーションを設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、負圧吸着パレット、自動パレット交換装置、および自動パレット交換方法に利用できる。
【符号の説明】
【0083】
1,3,4…加工装置、2…ワーク、10…工作機械、11…フロア、12,12A,12B…テーブル、13…コラム、14…主軸ヘッド、15…主軸、16…加工側移動機構であるX軸移動機構、17…Y軸移動機構、18…Z軸移動機構、20…自動パレット交換装置、21…準備側移動機構、30,30A,30B…負圧吸着パレット、31…第1吸着回路、32…第2吸着回路、33…保持面、34…本体、41,42…準備側負圧配管、43…加工側負圧配管、44…第1負圧装置、45…第2負圧装置、46…第3負圧装置、310…第1連通路、311…第1支線部、312…第1幹線部、313…第1カプラ、314…第1吸着孔、320…第2連通路、321…第2支線部、322…第2幹線部、323…第2カプラ、324…第2吸着孔、S0…加工ステーション、S1,S2…準備ステーション、S3…中継ステーション。