(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114250
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】組成物、膜、構造体、および組成物セット
(51)【国際特許分類】
C08F 290/00 20060101AFI20240816BHJP
C08F 4/40 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
C08F290/00
C08F4/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019901
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】中山 佑太
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 貴之
(72)【発明者】
【氏名】高安 政春
【テーマコード(参考)】
4J015
4J127
【Fターム(参考)】
4J015CA05
4J015CA08
4J015CA09
4J015CA14
4J127AA03
4J127AA04
4J127BB221
4J127BB222
4J127BD142
4J127BD411
4J127BG182
4J127BG18Y
4J127BG271
4J127BG27Y
4J127CB153
4J127CB154
4J127CB281
4J127CB282
4J127CB403
4J127CC094
4J127EA07
4J127FA07
4J127FA14
4J127FA15
4J127FA48
(57)【要約】
【課題】低温硬化性に優れた組成物、およびこれに関する技術を提供する。
【解決手段】本発明の組成物は、ラジカル重合性二重結合を有する化合物(A)と、ラジカル重合開始剤(b1)および還元剤(b2)を含有するレドックス系開始剤(B)と、を含み、前記還元剤(b2)は、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、亜鉛およびカルシウムからなる群から選択される中心金属(i)と、分子構造中に一または二以上の3級窒素原子を含有する配位子(ii)と、を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合性二重結合を有する化合物(A)と、
ラジカル重合開始剤(b1)および還元剤(b2)を含有するレドックス系開始剤(B)と、
を含む組成物であって、
前記還元剤(b2)は、
鉄、銅、コバルト、ニッケル、マンガン、亜鉛およびカルシウムからなる群から選択される中心金属(i)と、分子構造中に一または二以上の3級窒素原子を含有する配位子(ii)と、を有する、組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物であって、
前記化合物(A)は、分子中に少なくとも1つ以上の(メタ)アクリロイル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(a1)を含む、組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の組成物であって、
前記配位子(ii)が、以下の式(1)または(2)で示される構造を有する、組成物。
【化1】
【化2】
【請求項4】
請求項1または2に記載の組成物であって、
前記還元剤(b2)が、以下の式(3)で示される構造を有する、組成物。
【化3】
【請求項5】
請求項1または2に記載の組成物であって、
前記還元剤(b2)が、以下の式(4)で示される構造を有する、組成物。
【化4】
(式中、X
1、YおよびZは、同一または互いに異なり、CH
3-COO
-またはCH
3-(CH
2)
3-CH(CH
3CH
2)COO
-からなる群から選択され、nは、1~4の整数である。)
【請求項6】
請求項1または2に記載の組成物であって、
前記化合物(A)100質量部に対し、前記レドックス系開始剤(B)が0.2~6質量部である、組成物。
【請求項7】
請求項1または2に記載の組成物であって、
前記ラジカル重合開始剤(b1)が、有機過酸化物である、組成物。
【請求項8】
請求項1または2に記載の組成物であって、
コンクリート構造物の補修用途に供される、組成物。
【請求項9】
重合性である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項10】
請求項1または2に記載の組成物の硬化物からなる、膜。
【請求項11】
基材と、該基材の表面に形成された膜とを備える構造体であって、
前記膜が、請求項1または2に記載の組成物の硬化物からなる、構造体。
【請求項12】
請求項1または2に記載の組成物を用いた組成物セットであって、
前記化合物(A)および前記ラジカル重合開始剤(b1)を含む組成物と、
前記化合物(A)および前記還元剤(b2)を含む組成物と、が別々の容器に収容された、二液混合タイプの組成物セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、膜、構造体、および組成物セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築構造物、輸送機等の加工・製造や補修に用いられる重合性組成物の施工は、冬場の屋外のような低温環境下で行われる場合がある。そのため、重合性組成物は低温での良好な硬化性が求められる。
例えば、特許文献1には、低温硬化の観点から、硬化剤としてマンニッヒ変性アミン化合物を用い、特定構造のアクリル官能性化合物と、特定のエポキシ化合物を含むエポキシ系の硬化性樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の硬化性樹脂組成物は、低温硬化性の点で依然として改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、低温硬化性を向上すべく、新たにレドックス系開始剤に着目したところ、特定のレドックス系開始剤とラジカル重合性二重結合を有するモノマーとを組み合わせることが有効であることを見出した。
【0006】
本発明によれば、以下の組成物、およびこれを用いた膜、構造体、組成物セットが得られる。
【0007】
[1] ラジカル重合性二重結合を有する化合物(A)と、
ラジカル重合開始剤(b1)および還元剤(b2)を含有するレドックス系開始剤(B)と、
を含む組成物であって、
前記還元剤(b2)は、
鉄、銅、コバルト、ニッケル、マンガン、亜鉛およびカルシウムからなる群から選択される中心金属(i)と、分子構造中に一または二以上の3級窒素原子を含有する配位子(ii)と、を有する、組成物。
[2] [1]に記載の組成物であって、
前記化合物(A)は、分子中に少なくとも1つ以上の(メタ)アクリロイル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(a1)を含む、組成物。
[3] [1]または[2]に記載の組成物であって、
前記配位子(ii)が、以下の式(1)または(2)で示される構造を有する、組成物。
【化1】
【化2】
[4] [1]乃至[3]いずれか一つに記載の組成物であって、
前記還元剤(b2)が、以下の式(3)で示される構造を有する、組成物。
【化3】
[5] [1]乃至[4]いずれか一つに記載の組成物であって、
前記還元剤(b2)が、以下の式(4)で示される構造を有する、組成物。
【化4】
(式中、X
1、YおよびZは、同一または互いに異なり、CH
3-COO
-またはCH
3-(CH
2)
3-CH(CH
3CH
2)COO
-からなる群から選択され、nは、1~4の整数である。)
[6] [1]乃至[5]いずれか一つに記載の組成物であって、
前記化合物(A)100質量部に対し、前記レドックス系開始剤(B)が0.2~6質量部である、組成物。
[7] [1]乃至[6]いずれか一つに記載の組成物であって、
前記ラジカル重合開始剤(b1)が、有機過酸化物である、組成物。
[8] [1]乃至[7]いずれか一つに記載の組成物であって、
コンクリート構造物の補修用途に供される、組成物。
[9] 重合性である、[1]乃至[8]いずれか一つに記載の組成物。
[10] [1]乃至[9]いずれか一つに記載の組成物の硬化物からなる、膜。
[11] 基材と、該基材の表面に形成された膜とを備える構造体であって、
前記膜が、[1]乃至[9]いずれか一つに記載の組成物の硬化物からなる、構造体。
[12] [1]乃至[9]いずれか一つに記載の組成物を用いた組成物セットであって、
前記化合物(A)および前記ラジカル重合開始剤(b1)を含む組成物と、
前記化合物(A)および前記還元剤(b2)を含む組成物と、が別々の容器に収容された、二液混合タイプの組成物セット。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低温硬化性に優れた組成物、およびこれに関する技術を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0010】
本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。また、数値範囲の下限値および上限値は、それぞれ他の数値範囲の下限値および上限値と任意に組み合わせられる。
【0011】
本明細書に例示する各成分および材料は、特に断らない限り、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0012】
本明細書における「(メタ)アクリル」との表記は、アクリルとメタクリルの両方を包含する概念を表す。「(メタ)アクリレート」等の類似の表記についても同様である。
【0013】
<組成物>
本実施形態の組成物は、ラジカル重合性二重結合を有する化合物(A)と、ラジカル重合開始剤(b1)および還元剤(b2)を含有するレドックス系開始剤(B)と、を含む。また、還元剤(b2)は、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、亜鉛およびカルシウムからなる群から選択される中心金属(i)と、分子構造中に一または二以上の3級窒素原子を含有する配位子(ii)と、を有するものである。組成物としては、重合性組成物が好ましい。これにより、低温硬化性が良好な重合性組成物が得られる。
【0014】
また、従来、硬化性樹脂組成物は、施工をしやすくするための良好な流動性が求められ、可使時間をできるだけ長くすることが望まれる一方で、単に硬化性のみを向上させようすると可使時間が短くなるという問題があった。これに対し、本実施形態の重合性組成物は、特定のレドックス系開始剤(B)とラジカル重合性二重結合を有する化合物(A)を組み合わせることで、低温硬化性と良好な可使時間のバランスを向上させることができる。
【0015】
以下、本実施形態の重合性組成物に含まれる各成分の詳細について説明する。
【0016】
[ラジカル重合性二重結合を有する化合物(A)]
本実施形態のラジカル重合性二重結合を有する化合物(A)は、ラジカル重合性二重結合を有するため、後述のレドックス系開始剤(B)と併用することで、ラジカル重合による良好な低温硬化性を得ることができる。
ラジカル重合性二重結合を有する化合物(A)としては、(メタ)アクリル基を有する化合物が好ましい。(メタ)アクリル基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。ラジカル重合性二重結合を有する化合物(A)としては、例えば、アクリルモノマーまたはメタクリルモノマー、エポキシ樹脂に不飽和一塩基酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート、多価イソシアネートおよびポリオールに活性水素を有するアクリレートまたはメタクリレートを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート、多価アルコールおよび多塩基酸またはその無水物にアクリル酸またはメタクリル酸を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、アルキド(メタ)アクリレート、シリコン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0017】
また、本実施形態のラジカル重合性二重結合を有する化合物(A)は、分子中に少なくとも2つ以上の(メタ)アクリロイル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(a1)(以下、多官能の(メタ)アクリロイル基含有ラジカル重合性不飽和単量体ということもある)、ウレタン(メタ)アクリレート(a2)、ポリエステル(メタ)アクリレート(a3)、単官能(メタ)アクリルモノマー(a4)を含むことが好ましい。
分子中に少なくとも2つ以上の(メタ)アクリロイル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(a1)および単官能(メタ)アクリルモノマー(a4)は、ウレタン(メタ)アクリレート(a2)およびポリエステル(メタ)アクリレート(a3)を含まない。
(a1)、(a2)、(a3)、(a4)の含有割合(質量部)は、(a1)、(a2)、(a3)、および(a4)の合計100質量部中、質量比で、(a1):(a2):(a3):(a4)=5~60:3~50:1~30:10~70が好ましく、10~50:5~35:3~20:20~60がより好ましく、20~40:10~30:5~15:30~50が最も好ましい。
【0018】
(多官能の(メタ)アクリロイル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(a1))
多官能の(メタ)アクリロイル基含有ラジカル重合性不飽和単量体(a1)とは、分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性不飽和単量体をいう。強度や耐久性の観点から、分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性不飽和単量体を使用することができる。
【0019】
分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性不飽和単量体の具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトシキ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエスリトールヘキサ(メタ)アクリレート;2,2-ビス[4-(メタクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(アクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、ビスフェノールA型エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ビニルエステル樹脂等が挙げられる。
【0020】
上記のビニルエステル樹脂の具体例としては、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂であり、エポキシ化合物と不飽和一塩基酸(本実施形態では、アクリル酸、メタクリル酸)のエステル化反応により得られる従来公知のものを用いることができる。このような公知のビニルエステル樹脂は、例えば、「ポリエステル樹脂ハンドブック」、日刊工業新聞社、1988年発行、および「塗料用語辞典」、色材協会編、1993年発行等に記載されている。
【0021】
ビニルエステル樹脂に使用されるエポキシ化合物の具体例としては、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応物、水素化ビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応物、シクロヘキサンジメタノールとエピクロルヒドリンとの反応物、ノルボルナンジアルコールとエピクロルヒドリンとの反応物、テトラブロムビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応物、トリシクロデカンジメタノールとエピクロルヒドリンとの反応物、アリサイクリックジエポキシカーボネート、アリサイクリックジエポキシアセタール、アリサイクリックジエポキシカルボキシレート、ノボラック型グリシジルエーテル、クレゾールノボラック型グリシジルエーテル等といった、ビスフェノールA型グリシジルエーテル、ノボラック型グリシジルエーテル、その他のエポキシ化合物が挙げられる。
【0022】
ビニルエステル樹脂に使用される不飽和塩基酸の具体例としては、不飽和一塩基酸のアクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。エポキシ(メタ)アクリレート樹脂としては、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物等が挙げられる。
【0023】
(ウレタン(メタ)アクリレート(a2))
ウレタン(メタ)アクリレート(a2)は、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレートである。ウレタン(メタ)アクリレート(a2)は、例えば、少なくとも1個以上の活性水素基を有する化合物と、イソシアネート化合物と、ヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート化合物を反応させることによって得ることができるラジカル重合性不飽和基含有オリゴマーである。
【0024】
ウレタン(メタ)アクリレート(a2)の製造方法は特に限定されないが、活性水素基含有化合物とイソシアネート化合物を反応させ、イソシアネート末端のプレポリマーを調整後、ヒドロキシ基含有アクリレート化合物を反応させる方法やヒドロキシ基含有アクリレート化合物とイソシアネート化合物を反応させ、その後、活性水素基含有化合物とを反応させる方法が挙げられる。これらの製造方法は、製造の安定性等の観点から、ヒドロキシ基含有アクリレート化合物を除く前記の(メタ)アクリロイル基含有ラジカル重合性不飽和単量体や溶剤中で適宜選択され調整される。
【0025】
ウレタン(メタ)アクリレート(a2)に使用される活性水素基含有化合物の具体例としては、少なくとも1個以上の活性水素基を有し、イソシアネート化合物と反応すれば特に限定されるものではなく、ダイマーポリオールを含むポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、(メタ)アクリルポリオール、シリコーンポリオール、ヒマシ油系ポリオール、フッ素系ポリオール、オレフィンポリオール、およびポリチオール化合物等の活性水素基を有するポリマーや低分子ポリオールから少なくとも1種類から選択される。
【0026】
(ポリエステル(メタ)アクリレート(a3))
ポリエステル(メタ)アクリレート(a3)の具体例としては、(1)前記の炭素数18の不飽和脂肪酸を二量化して得られる炭素数36のジカルボン酸、またはこれらの無水物等の1種類以上と分子量500以下の低分子ポリオール類の1種類以上との縮重合反応から得られるカルボキシル基末端ポリエステルに、α,β-不飽和カルボン酸エステル基を含有するエポキシ化合物を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、(2)前記の炭素数18の不飽和脂肪酸を二量化して得られる炭素数36のジカルボン酸、またはこれらの無水物等の1種類以上と分子量500以下の低分子ポリオール類の1種類以上との縮重合反応から得られるポリエステルポリオールに、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート樹脂、(3)前記の炭素数18の不飽和脂肪酸を二量化して得られる炭素数36のジカルボン酸、またはこれらの無水物等の1種類以上と分子量500以下の低分子ポリオール類の1種類以上との縮重合反応から得られるカルボキシル基末端ポリエステルに、分子内に1個以上のヒドロキシ基含有アクリレート化合物を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
(単官能(メタ)アクリルモノマー(a4))
単官能(メタ)アクリルモノマー(a4)とは、分子中に1つの(メタ)アクリロイル基を有する化合物をいい、例えば、単官能のアクリルモノマーまたは単官能のメタクリルモノマーをいう。
【0028】
上記のアクリルモノマーまたはメタクリルモノマー(a4)としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシルのようなアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジルのようなアクリル酸アリールエステル;アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸エトキシエチル、アクリル酸プロポキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸エトキシプロピルのようなアクリル酸アルコキシアルキル;アクリル酸およびアクリル酸アルカリ金属塩等の塩;アクリル酸およびメタクリル酸アルカリ金属塩等の塩;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ドデシルのようなメタアクリル酸アルキルエステル;メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジルのようなメタクリル酸アリールエステル;メタクリル酸メトキシエチル、メタクリル酸エトキシエチル、メタクリル酸プロポキシエチル、メタクリル酸ブトキシエチル、メタクリル酸エトキシプロピルのようなメタクリル酸アルコキシアルキル;アクリル酸-2-クロロエチル、メタクリル酸-2-クロロエチルのようなハロゲン化ビニル化合物、アクリル酸シクロヘキシルのような脂環式アルコールのアクリル酸エステル;メタクリル酸シクロヘキシルのような脂環式アルコールのメタクリル酸エステル;アクリロイルアジリジン、メタクリロイルアジリジン、アクリル酸-2-アジリジニルエチル、メタクリル酸-2-アジリジニルエチルのようなアジリジン基含有重合性化合物;アクリル酸グリシジルエーテル、メタクリル酸グリシジルエーテル、アクリル酸ジグリシジルエーテル、アクリル酸-2-エチルグリシジルエーテル、メタクリル酸-2-エチルグリシジルエーテルのようなエポキシ基含有ビニル単量体;アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、メタクリル酸-2-ヒドロキシプロピルのような(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;アクリル酸、またはメタクリル酸とポリプロピレングリコール、またはポリエチレングリコールとのモノエステル、ラクトン類と(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチルとの付加物のようなヒドロキシル基含有ビニル化合物;フッ素置換メタクリル酸アルキルエステル、フッ素置換アクリル酸アルキルエステル等の含フッ素ビニル単量体;メタクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N-メトキシエチルメタクリルアミド、N-ブトキシメチルメタクリルアミドのようなアミド基含有ビニル単量体;γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランのような有機ケイ素基含有ビニル化合物単量体;ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種または2種以上を混合して用いてもよい。
【0029】
本実施形態のラジカル重合性二重結合を有する化合物(A)は、上記以外のラジカル重合性二重結合を有する化合物を含んでもよい。
【0030】
[レドックス系開始剤(B)]
本実施形態のレドックス系開始剤(B)は、ラジカル重合開始剤(b1)および還元剤(b2)を含有するものである。すなわち、レドックス系開始剤(B)とは、酸化剤と還元剤の共存でラジカル(遊離基)の生成を促進する重合開始剤である。
【0031】
(ラジカル重合開始剤(b1))
ラジカル重合開始剤(b1)は、酸化剤として作用するものである。ラジカル重合開始剤(b1)は、有機過酸化物が好ましい。
【0032】
上記の有機過酸化物としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ヒドロキシパーオキサイド、ジアリルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、およびパーオキシジカーボネートの中から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
【0033】
具体的には、クメンヒドロキシパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、3-イソプロピルヒドロパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジクミルヒドロパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、イソブチルパーオキサイド、3,3,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスカルボンアミド、ベンゾイルm-メチルベンゾイルパーオキサイド、m-トルオイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。これらの中でも、ジベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルm-メチルベンゾイルパーオキサイド、m-トルオイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、キュメンハイドロパーオキサイドおよびt-ブチルパーオキシベンゾエートからなる群から選択される1種または2種以上が好ましい。
【0034】
ラジカル重合開始剤(b1)の含有量は、ラジカル重合性二重結合を有する化合物(A)100質量部に対して、0.1~3質量部が好ましく、0.5~2.5質量部がより好ましい。
ラジカル重合開始剤(b1)の含有量を上記下限値以上とすることにより、良好な低温硬化性が得られる。一方、ラジカル重合開始剤(b1)の含有量を上記上限値以下とすることにより、硬化物の物性を向上し、低温硬化性と良好な可使時間のバランスを保持しやすくなる。
【0035】
(還元剤(b2))
本実施形態の還元剤(b2)は、-10℃以上の温度でラジカル重合開始剤(b1)と反応してフリーラジカルを生成することができる。
還元剤(b2)は、鉄、銅、コバルト、ニッケル、マンガン、亜鉛およびカルシウムからなる群から選択される中心金属(i)と、分子構造中に一または二以上の3級窒素原子を含有する配位子(ii)と、を有する。
本実施形態において還元剤(b2)は、中心金属(i)となる金属カチオンと、アニオンと、窒素ドナーとする配位子(ii)を含む金属錯体である。
【0036】
中心金属(i)は、好ましくは、Fe(II)およびFe(III)から選択することができる鉄カチオン、または、好ましくは、Co(II)およびCo(III)から選択することができるコバルトカチオンである。
【0037】
金属カチオンと結合するアニオンとしては、ハロゲン化物イオン、硝酸イオン(NO3
-)、硫酸イオン(SO4
2-)、カルボン酸イオン(COO-)、PF6
-、SbF6
-、AsF6
-、BF4
-、B(C6F5)4
-、Cl-、Br-、I-、NO3-、またはRCOO-(式中、Rは、炭素数1~20アルキルである)からなる群から選択することができる。
上記カルボン酸イオンとしては例えば、酢酸イオン、エチルヘキサン酸イオン、オクタン酸イオン、ネオデカン酸イオン、ナフテン酸イオン、およびアセトアセトナート等が挙げられる。
【0038】
配位子(ii)としては、例えば、6-アミノ-1,4,6-トリメチル-1,4-ジアザシクロヘプタン、6-ジメチルアミノ-1,4-ビス(ピリジン-2-イルメチル)-6-メチル-1,4-ジアザシクロヘプタン、1,4,6-トリメチル-6[N-(ピリニン-2-イルメチル)-N-メチルアミノ]-1,4-ジアザシクロヘプタン、ビスフェンジメチル3-メチル-9-オキソ-2、および4-ジピリジン-2-イル-7-(ピリジン-2-イルメチル)-3,7-ジアズビシクロ[3.3.1]ノナン-1,3-ジカルボキシラート等の1,4-デアザシクロヘプタンベースのリガンド;フェロセン、アシルフェロセン、ベンゼンアシクロフェロセン、およびN,N-ビス(ピリジン-2-イルメチル)-1,1-ビス(ピリジン-2-イル)-1-アミノ-エタン等のフェロセン系リガンドが挙げられる。これらは1種または2種以上を用いてもよい。
【0039】
また、例えば、以下の式(1)または(2)で示される構造を有することが好ましい。
【0040】
【0041】
【0042】
本実施形態の還元剤(b2)の具体例としては、例えば、鉄を中心金属(i)とした以下の式(3)で示される構造を有する錯体(CAS番号478945-46-9)、マンガンを中心金属(i)とした以下の式(4)で示される構造を有する錯体(CAS番号1381939-25-8)が挙げられる。式(3)で示される構造を有する錯体は、国際公開第2015/082553号、国際公開第2017/085154号、国際公開第2013/092051号、欧州特許第2652025号明細書に記載されている。式(3)で示される構造を有する錯体としては、Borchi社の「OXY-Coat」が挙げられる。式(4)で示される構造を有する錯体は、特表2016-505663号公報や国際公開第2015/082553号に記載されている。
【0043】
【0044】
【化8】
(X
1、YおよびZは、同一または互いに異なり、CH
3-COO
-またはCH
3-(CH
2)
3-CH(CH
3CH
2)COO
-からなる群から選択され、nは、1~4の間、好ましくは2~4の間、より好ましくは2~3の間の整数である。)
【0045】
本実施形態において、ラジカル重合性二重結合を有する化合物(A)100質量部に対し、前記レドックス系開始剤(B)が0.2~6質量部であることが好ましく、2~4質量部であることがより好ましい。
【0046】
また、ラジカル重合開始剤(b1)の含有量は、組成物全量に対して、0.1質量%~3質量%であることが好ましく、0.5質量%~2.5質量%であることがより好ましく、1質量%~2質量%であることが一層さらに好ましい。
【0047】
また、還元剤(b2)の含有量は、組成物全量に対して、0.1質量%~3質量%であることが好ましく、0.5質量%~2.5質量%であることがより好ましく、1質量%~2質量%であることが一層さらに好ましい。
【0048】
本実施形態のレドックス系開始剤(B)は、溶媒の希釈溶液で提供できる。例えば、溶液は、1質量%~15質量%、または5質量%~15質量%のレドックス系開始剤(B)を含むことができる。溶媒の例には、アセチルアセトン、HB-40(登録商標)(テルフェニルの組み合わせ)、トルエン、水、イソプロパノール、メチルプロピルケトン、ヘキサン、メタノール、およびシクロヘキサンが含まれる。
【0049】
[その他]
本実施形態の重合性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記ラジカル重合開始剤(b1)以外の有機過酸化物、重合禁止剤、ワックス類、無機充填材、光重合開始剤、光増感剤、粘着付与剤、シランカップリング材、酸化防止剤、および有機溶剤等を含有してもよい。また、用途に応じて、チキソトロピー剤、エラストマー成分等を含有してもよい。
【0050】
(重合禁止剤)
重合性組成物の自己重合を抑制するために重合禁止剤を併用することができる。
重合禁止剤の具体例としては、4-tert-ブチルピロカテコール、tert-ブチルヒドロキノン、1,4-ベンゾキノン、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、1,1-ジフェニル-2-ピクリルヒドラジルフリーラジカル、2,2-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン、アンモニウム-N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン、およびN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩を挙げることができる。これらの重合禁止剤は1種または2種以上併用して用いることができる。
重合禁止剤の含有量は、組成物100質量部に対して、0.001~1質量部が好ましく、0.01~0.1質量部がより好ましい。
【0051】
(ワックス類)
表面硬化性を向上させるために天然ワックス、合成ワックス、天然と合成の配合ワックス等のワックス類を併用することができる。
天然ワックスの具体例としては、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ろう、ホホバ油等の植物系ワックス、蜜蝋、ラノリン、鯨蝋等の動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン等の鉱物系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタム等の石油ワックス等が挙げられる。
合成ワックスの具体例としては、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス等の合成炭化水素、モンタンワックス誘導体、NPS-9125(日本精蝋社製)、NPS-9210(日本精蝋社製)、NPS-6010(日本精蝋社製)、HAD-5080(日本精蝋社製)、NSP-8070(日本精蝋社製)、OX-020(日本精蝋社製)T、OX-1949(日本精蝋社製)等のパラフィンワックス誘導体やマイクロクリスタリンワックス誘導体等の変性ワックス、ダイヤモンドワックス(新日本理化社製)等の動植物油脂の誘導体、セラマー67(東洋ペトロライト社製)、セラマー1608(東洋ペトロライト社製)等のカルボキシル基含有単量体とオレフィンとの共重合体、硬化ひまし油、硬化ひまし油誘導体等の水素化ワックス、ステアリン酸、ドデカン酸、ステアリン酸オクタデシル等の炭素数12以上の脂肪酸、およびその誘導体、ノニポール160(三洋化成工業社製)、エマルミン200(三洋化成工業社製)等のアルキルフェノールや高級アルコールに、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドが付加したアルコール類等が挙げられる。
【0052】
ワックス類の融点としては、40~100℃であることが好ましい。下限値以上の場合には、組成物の硬化時に、ワックス類が表面に析出し、表面硬化性が向上する。上限値以下の場合には、組成物中にワックス類が溶解し、物性が向上する。ワックス類の融点は、JIS K 2235-1991に準拠して測定した値を示す。
【0053】
ワックス類の含有量は、組成物100質量部に対し、0.1~5質量部添加することが好ましい。下限値以上の場合には、表面硬化性が向上する。上限値以下の場合には、組成物中にワックス類が溶解し、物性が向上する。
【0054】
[特性・物性]
本実施形態の組成物は、UV線等の化学線への曝露や加熱を必須とせず、暗所で硬化することが可能である。
本実施形態の組成物の硬化温度は、好ましくは-10~40℃であり、より好ましくは-5~35℃であり、さらに好ましくは5~25℃である。
【0055】
[用途]
本実施形態の組成物は、接着剤、シール剤、コーティング剤、ポッティング剤等の用途に適用することができる。なかでも、寒冷地や冬場の屋外のような低温環境下で使用されることが想定される用途において好適である。具体的には、例えば、屋外で作業される土木、建築分野における橋脚、道路橋床板、トンネル、煙突、管路、および鋼管の建設・補修・補強等が挙げられる。本実施形態の組成物は、コンクリート構造物の補修用途に使用できる。
【0056】
[製造方法]
本実施形態の組成物は、上記各成分を公知の方法で混合することで得られるが、後述する組成物セットを得るべく、各組成物を、化合物(A)およびラジカル重合開始剤(b1)を含む組成物と、化合物(A)および還元剤(b2)を含む組成物とに分けることが好適である。
【0057】
<組成物セット・使用方法>
本実施形態の組成物の好ましい形態としては、化合物(A)およびラジカル重合開始剤(b1)を含む組成物と、化合物(A)および還元剤(b2)を含む組成物と、を別々の容器に収容、密閉し、使用する際に容器を開封し、収容された各組成物を混合して用いる二液混合タイプの組成物セットとすることが好ましい。各組成物を別々に梱包することにより、組成物の保管中に(b1)と(b2)が接触し反応が進行することを避け、組成物の保存安定性を向上するとともに、使用時には、二剤を組成物の使用現場で混合して速やかに硬化させることができる。
また、各組成物を混合する方法としては、従来知られている方法を用いることができ、例えばスタティックミキサー、回転式ミキサー(ダイナミックミキサー)等を用途に応じ適宜選択することができる。
【0058】
本実施形態の組成物は、所望の対象に適用後、硬化反応が進行し、その後、完全に硬化する。完全硬化するまでの時間は、本実施形態の組成物の成分組成、適用方法、および温度等の条件により適宜調整される。
【0059】
<膜、構造体>
本実施形態の膜は、上記の組成物の硬化物からなる。また、本実施形態の構造体は、基材と、該基材の表面に形成された膜とを備える構造体であって、前記膜が、上記の組成物の硬化物からなるものである。
【0060】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0061】
次に、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。
【0062】
(1)原料
以下の原料を用いて、表1に示す組成の重合性組成物を得た。
[ラジカル重合性二重結合を有する化合物(A)]
・不飽和単量体(a1-1):ビスフェノールA型エチレンオキシド変性ジメタクリレート(Miwon社製/Miramer M241)
・不飽和単量体(a1-2):ビスフェノールA型ジグリシジルエーテルアクリル酸付加物(大阪有機化学工業社製/ビスコート#540)
・ウレタンアクリレート(a2):ウレタンアクリレート(Miwon社製/Miramer MU3603)
・ポリエステルアクリレート(a3):不飽和ポリエステル(DICマテリアル社製/アクアライト CN-450-R)
・メタクリルモノマー(a4-1):ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(レゾナック社製/FA-512M)
・メタクリルモノマー(a4-2):2-ヒドロキシエチルメタクリレート(オリサリスケミカルズ社製/BISOMER HEMA)
【0063】
[レドックス系開始剤(B)]
・有機過酸化物(b1):クメンヒドロキシパーオキサイド(化薬ヌーリオン社製/トリゴノックスK-80)
・還元剤(b2-1):鉄錯体溶液(Borchi OXY-Coat)
・還元剤(b2-2):2-エチルヘキサン酸コバルト(東京ファインケミカル社製/Co-12E)
[その他]
・重合禁止剤1:ハイドロキノン(精工化学社製/ハイドロキノン)
・重合禁止剤2:2,2-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)(住友化学社製/スミライザーMDP-S)
・パラフィンワックス:固形パラフィン(日本精蝋社製/ParaffinWax-115)
【0064】
(2)重合性組成物の調製
<実施例1>
1.第一剤の調製
撹拌機、温度計、加熱装置を備えた撹拌装置に、70℃に加熱溶融したウレタンアクリレート(a2)を20質量部と、不飽和単量体(a1-1)を2.5質量部と、メタクリルモノマー(a4-1)を20質量部と、メタクリルモノマー(a4-2)を7.5質量部と、重合禁止剤1を0.02質量部と、60℃に加熱溶融したパラフィンワックスを0.25質量部仕込み、撹拌しながら60℃で30分間撹拌混合した。その後、常温に冷却し、有機過酸化物(b1)を1.5質量部添加し、常温下で30分撹拌し、第一剤を得た。
【0065】
2.第二剤の調製
撹拌機、温度計、加熱装置を備えた撹拌装置に、70℃に加熱溶融した不飽和単量体(a1-2)を7.5質量部と、不飽和単量体(a1-1)を20質量部と、メタクリルモノマー(a4-1)を5質量部と、メタクリルモノマー(a4-2)を7.5質量部と、ポリエステルアクリレート(a3)を10質量部と、重合禁止剤2を0.06質量部仕込み、撹拌しながら60℃で30分間撹拌混合した。その後、常温に冷却し、還元剤(b2-2)を0.75質量部と、還元剤(b2-1)を0.75質量部添加し、常温下で30分撹拌し、第二剤を得た。
【0066】
<実施例2~4および比較例1~2>
表1の割合(単位:質量部)で各成分を使用した以外は、実施例1と同様に重合性組成物を調製した。
【0067】
(3)評価・測定
上記実施例および比較例で調製し、得られた第一剤と第二剤からなる重合性組成物を用いて、以下の評価・測定を行った。得られた結果を表1に示す。
【0068】
・低温硬化性:5℃表面硬化時間の測定方法
第一剤と第二剤を等量混合した硬化性組成物を薄膜状に塗布した際に塗膜表面が硬化するまでの時間を測定した。
具体的には、23℃環境下で、JIS R 5201:2015に規定された方法で調製したモルタル試験板(寸法:10mm×70mm×150mm)に第一剤と第二剤を等量混合した硬化性組成物を塗布量0.5kg/m2となる様に秤量しながら刷毛で塗布し、試験体とした。試験体をそのまま5℃環境下に静置し、塗布直後より30分間隔で塗膜表面を指触し、塗膜表面からベトツキがなくなるまでの時間を5℃表面硬化時間(hr)とした。
【0069】
・可使性:5℃可使時間の測定方法
第一剤および第二剤を混合し、混合液の発熱温度がピークに達した時間を発熱挙動より測定した。第一剤および第二剤を5℃に設定した恒温槽内に2時間以上置き、5℃に達するまで静置した。第一剤を25g、第二剤を25gの計50gとなるように100mlディスポカップに秤入れ、色が均一になるまで混合し、熱電対を混合液中央部に挿入して温度と時間の記録を行った。発熱温度がピークに達した時間に係数0.6を掛けた数値を可使時間(min)とした。
【0070】