(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114258
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】燃料タンク用弁装置
(51)【国際特許分類】
B60K 15/077 20060101AFI20240816BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20240816BHJP
F16K 31/18 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
B60K15/077 Z
F02M37/00 301F
F02M37/00 311K
F16K31/18 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019911
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】近 拓馬
【テーマコード(参考)】
3D038
3H068
【Fターム(参考)】
3D038CA38
3D038CB01
3D038CC13
3D038CD14
3H068AA01
3H068BB72
3H068BB90
3H068DD12
3H068FF06
3H068FF09
3H068GG07
(57)【要約】
【課題】満タン規制位置の上昇を図れ且つ追加給油検知性能を向上できる燃料タンク用弁装置を提供する。
【解決手段】この燃料タンク用弁装置10は、周壁部53、仕切壁23、弁室V、通気室R、開口27を有するハウジング15と、開口27を閉塞するフロート弁80とを有し、ハウジング15は、フロート弁80を支持するフロート弁支持部51を有し、周壁部53には、フロート弁支持部51より上方に満タン規制開口68が形成され、満タン規制開口68よりも上方に軸方向に開口した追加給油規制開口70が形成され、満タン規制開口68は液没していない状態で給油ノズルからの連続給油を可能とし、追加給油規制開口70は液没していない状態で給油ノズルからの追加給油を可能とする。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周壁部及び仕切壁を有しており、前記仕切壁を介して、下方に燃料タンク内に連通する弁室、上方に燃料タンク外に連通する通気室が前記周壁部内に各々設けられ、前記仕切壁に前記弁室及び前記通気室を連通する開口が形成された、ハウジングと、
前記弁室内に昇降可能に収容されて前記開口を開閉し、給油ノズルからの前記燃料タンク内への給油時に上昇して前記開口を閉塞するフロート弁とを有しており、
前記ハウジングは、前記フロート弁を支持するフロート弁支持部を有しており、
前記周壁部には、前記フロート弁支持部より上方に、前記燃料タンク内と前記弁室内とを互いに連通させる満タン規制開口が形成されると共に、該満タン規制開口よりも上方に、軸方向に開口し且つ前記燃料タンク内と前記弁室内とを互いに連通させる追加給油規制開口が形成されており、
前記満タン規制開口は、液没していない状態で前記給油ノズルからの連続給油を可能とし、液没状態で前記連続給油を停止し、前記追加給油規制開口は、液没していない状態で前記給油ノズルからの追加給油を可能とし、液没状態で前記追加給油を停止するものであることを特徴とする燃料タンク用弁装置。
【請求項2】
前記追加給油規制開口を形成する壁部であって、前記ハウジングの径方向外側に配置されている前記壁部の一部が、最も肉厚に形成されている請求項1記載の燃料タンク用弁装置。
【請求項3】
前記周壁部の内周には、前記フロート弁の昇降動作をガイドする複数のガイドリブが軸方向に延設されており、
前記周壁部を軸方向断面で見たときに、前記周壁部は、複数の前記ガイドリブの間に位置して内周側に凹む凹部を有しており、該凹部の軸方向上方に棚状壁が配置されており、該棚状壁及び前記凹部を介して前記追加給油規制開口が設けられている請求項1又は2記載の燃料タンク用弁装置。
【請求項4】
前記満タン規制開口は、前記周壁部の周方向に離間して複数形成されており、
複数の前記満タン規制開口の間に前記追加給油規制開口が配置されている請求項1又は2記載の燃料タンク用弁装置。
【請求項5】
前記満タン規制開口は、前記周壁部の径方向に開口している請求項1又は2記載の燃料タンク用弁装置。
【請求項6】
前記満タン規制開口は、前記ハウジングの軸方向に開口した形状をなしている請求項1又は2の燃料タンク用弁装置。
【請求項7】
前記追加給油規制開口は、前記ハウジングを軸方向から見たときに、円弧状をなすように周方向に所定長さで延びる形状をなしている請求項1又は2記載の燃料タンク用弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の燃料タンクに取付けられ、燃料タンクへの過給油を防止したり、燃料タンク外への燃料流出を防止したりする、燃料タンク用弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等の車両の燃料タンクには、燃料タンク内の液面が、予め設定された満タン液面よりも上昇しないように、燃料タンク内への過給油を防止する弁装置(満タン規制バルブ)や、自動車が傾いたり横転したりしたときに、燃料タンク内の燃料が、燃料タンク外へ漏れるのを防止する弁装置(カットバルブ)が取付けられている。
【0003】
下記特許文献1には、周壁及び仕切壁を有し、仕切壁を介して下方に弁室、上方に通気室が設けられ、仕切壁に開口部が形成されたハウジングと、フロート弁とを有し、周壁に形成された第1流通孔と、周壁の、第1流通孔よりも上方に形成された第2流通孔と、周壁の、第2流通孔よりも上方に形成された第3流通孔とを有しており、第1流通孔は、追加給油前の満タン規制を行う高さに配置され、液没していない状態で給油ノズルからの連続給油を可能とし、液没状態で給油ノズルからの連続給油を停止するように構成され、第2流通孔は追加給油を可能に構成された、満タン規制バルブが記載されている。
【0004】
また、追加給油を可能とする第2流通孔は、ハウジングの周壁に対して、径方向に開口し、上下方向に所定高さを有する孔となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2022/080302A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、燃料タンク内への燃料の供給量は、満タン規制用の孔の高さによって決まるところ、上記満タン規制バルブでは、満タン規制用の第1流通孔がハウジングの周壁に形成されているので、満タン規制用の孔がハウジング底部に形成されているバルブと比べて、第1流通孔を高い位置に設けることができる。
【0007】
そのため、燃料タンク内へ供給される燃料の満タン位置(開口がフロート弁で閉塞されるときの燃料高さ)を高めることは可能となっている。なお、この満タン位置が規定される位置を、満タン規制面や、ロックポイント、SOH(Shut Off Height)等という。
【0008】
また、追加給油を可能とする第2流通孔は、ハウジングの周壁に対して、径方向に開口し、上下方向に所定高さを有する孔となっているので、追加給油がなされて燃料液面が上昇して、第2流通孔全域が液没する際に、応答が遅れることがあった。そのため、追加給油検知性能(追加給油がこれ以上できないことを検知する性能)を向上させることが望まれる。
【0009】
したがって、本発明の目的は、満タン規制位置の上昇を図ることができると共に、追加給油検知性能を向上させることできる、燃料タンク用弁装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る燃料タンク用弁装置は、周壁部及び仕切壁を有しており、前記仕切壁を介して、下方に燃料タンク内に連通する弁室、上方に燃料タンク外に連通する通気室が前記周壁部内に各々設けられ、前記仕切壁に前記弁室及び前記通気室を連通する開口が形成された、ハウジングと、前記弁室内に昇降可能に収容されて前記開口を開閉し、給油ノズルからの前記燃料タンク内への給油時に上昇して前記開口を閉塞するフロート弁とを有しており、前記ハウジングは、前記フロート弁を支持するフロート弁支持部を有しており、前記周壁部には、前記フロート弁支持部より上方に、前記燃料タンク内と前記弁室内とを互いに連通させる満タン規制開口が形成されると共に、該満タン規制開口よりも上方に、軸方向に開口し且つ前記燃料タンク内と前記弁室内とを互いに連通させる追加給油規制開口が形成されており、前記満タン規制開口は、液没していない状態で前記給油ノズルからの連続給油を可能とし、液没状態で前記連続給油を停止し、前記追加給油規制開口は、液没していない状態で前記給油ノズルからの追加給油を可能とし、液没状態で前記追加給油を停止するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、周壁部には、フロート弁支持部より上方に、燃料タンク内と弁室内とを互いに連通させる満タン規制開口が形成されているので、満タン規制位置を上昇させることができる。
【0012】
また、周壁部には、満タン規制開口よりも上方に、軸方向に開口し且つ燃料タンク内と弁室内とを互いに連通させる追加給油規制開口が形成されているので、追加給油により燃料液面が上昇し、追加給油規制開口に達したときに、追加給油規制開口の全域が迅速に閉塞されやすくなり、その応答性を高めて、追加給油検知性能を向上させることができる。
【0013】
このように、本発明の燃料タンク用弁装置においては、満タン規制位置の上昇を図ることができると共に、追加給油検知性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る燃料タンク用弁装置の、一実施形態を示す分解斜視図である。
【
図4】同燃料タンク用弁装置を構成するロアーキャップの平面図である。
【
図6】同ロアーキャップの、
図3のD-D矢視線における断面図である。
【
図7】同ロアーキャップの、
図3のE-E矢視線における断面図である。
【
図10】
図9の状態からフロート弁が上昇して、開口を閉じた場合の断面図である。
【
図11】
図10の状態からシール弁体に対して中間弁体が下降した場合の断面図である。
【
図12】本発明に係る燃料タンク用弁装置の、他の実施形態を示しており、同弁装置を構成するロアーキャップの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(燃料タンク用弁装置の一実施形態)
以下、
図1~11を参照して、本発明に係る燃料タンク用弁装置の、一実施形態について説明する。
【0016】
図1、
図8、及び
図9に示すように、この実施形態における燃料タンク用弁装置10(以下、単に「弁装置10」ともいう)は、周壁部21,41,53及び仕切壁23を有しており、仕切壁23を介して、下方に燃料タンク内に連通する弁室V、上方に燃料タンク外に連通する通気室Rが周壁部21,41,53内に各々設けられ、仕切壁23に弁室Vと通気室Rとを連通する開口27が形成された、ハウジング15と、弁室V内に昇降可能に収容されて開口27を開閉し、給油ノズルからの燃料タンク内への給油時に上昇して開口27を閉塞するフロート弁80と、該フロート弁80を付勢する付勢ばね17とを有している。
【0017】
この実施形態のハウジング15は、仕切壁23を有するハウジング本体20と、ハウジング本体20の上方に装着されるアッパーカバー40と、ハウジング本体20の下方に装着されるロアーキャップ50とを有している。
【0018】
また、ハウジング15は、フロート弁80を支持するフロート弁支持部51を有している。更に、ハウジング本体20が周壁部21を有しており、アッパーカバー40が周壁部41を有しており、ロアーキャップ50が周壁部53を有している。
【0019】
そして、
図8及び
図9に示すように、ロアーキャップ50の周壁部53には、フロート弁支持部51より上方に、燃料タンク内と弁室V内とを互いに連通させる満タン規制開口68が形成されると共に、当該満タン規制開口68よりも上方に、軸方向に開口し且つ燃料タンク内と弁室V内とを互いに連通させる追加給油規制開口70が形成されている。
【0020】
また、満タン規制開口68は、液没していない状態で給油ノズルからの連続給油を可能とし、液没状態で連続給油を停止し、追加給油規制開口70は、液没していない状態で給油ノズルからの追加給油を可能とし、液没状態で追加給油を停止するものとなっている。
【0021】
すなわち、この実施形態では、ロアーキャップ50側の周壁部53が、本発明における「周壁部」をなしている。
【0022】
なお、以下の説明において、「燃料」とは、液体の燃料(燃料の飛沫も含む)を意味し、「燃料蒸気」とは、蒸発した燃料を意味するものとする。また、本発明における「軸方向」とは、弁室V内を上下方向に昇降動作するフロート弁80の昇降動作に沿った方向や、フロート弁80の軸心に沿った方向(弁軸方向とも言える)を意味する(以下の説明でも同様)。
【0023】
まず、ハウジング本体20について、
図1,8,9等を参照して説明する。
【0024】
このハウジング本体20は、略円筒状をなした周壁部21を有しており、その上方に、仕切壁23が配置されている。また、周壁部21の上方からは、略円環状をなしたフランジ部25が張り出している。このフランジ部25には、複数の挿通孔25aが形成されている。
【0025】
上記仕切壁23の径方向中央部には、略円形孔状をなした開口27が形成されている。この開口27の裏側(下側)周縁からは、略円形突起状をなした弁座27aが突設されている(
図8,9参照)。この弁座27aに、フロート弁80が接離することで(
図9,10参照)、開口27が開閉される。
【0026】
なお、開口27の内周には、略十字状をなしたリブ27bが設けられている。このリブ27bによって、開口27の表側内周縁からの、シール弁体85(
図8,9参照)の飛び出しが防止されるようになっている。
【0027】
また、周壁部21の外周の、フランジ部25寄りの箇所であって、前記挿通孔25aに整合した位置からは、複数の第1係合突部29が突設されている。更に、周壁部21の外周であって、軸方向の下端部37寄りの位置には、複数の第2係合突部31が突設されている。
【0028】
また、仕切壁23とフランジ部25との間には、環状溝状をなしたリング装着溝33が形成されており、該リング装着溝33には、シールリング18が介装されるようになっている(
図8,9参照)。
【0029】
また、周壁部21の、仕切壁23寄りの箇所には、燃料タンク内と弁室V内とを互いに連通させる流通孔35が形成されている(
図1,8,9参照)。この流通孔35は、車両が横転したり反転したりした場合や、燃料タンク内への給油時を除いて、液没しない状態が維持されるようになっており、弁室V内に燃料タンク内の空気を流入させる部分となっている。
【0030】
更に
図1に示すように、周壁部21の軸方向の下端部37の外周には、環状突起37aが突設されている。
【0031】
次に、ハウジング本体20の上方に装着されるアッパーカバー40について、
図1,3,8,9等を参照して説明する。
【0032】
このアッパーカバー40は、略円筒状をなした周壁部41を有すると共に、天井部が閉塞しており、更に周壁部41の下端外周縁から径方向外方に向けて張り出したフランジ部43を有する、下方が開口し上方が閉塞した略ハット状をなしている。
【0033】
また、
図1に示すように、フランジ部43の内周縁部からは、下方に向けて複数の係合片45が垂下している。各係合片45には、係合孔45aが形成されている。
【0034】
そして、アッパーカバー40の各係合片45を、ハウジング本体20の対応する挿通孔25aから挿出させ、係合孔45aに対応する第1係合突部29をそれぞれ係合させる(
図2,3参照)。その結果、
図8,9に示すように、シールリング18を介して、ハウジング本体20の上方にアッパーカバー40が装着されることとなり、仕切壁23を介して、その上方に燃料タンクの外部に連通する通気室Rが形成されるようになっている。
【0035】
また、周壁部41の周方向の所定箇所には、略円形孔状をなした燃料蒸気排出口41a(以下、単に「排出口41a」ともいう)が、周壁部41を貫通して形成されている(
図9参照)。そして、周壁部41の、排出口41aの表側周縁から、燃料蒸気配管47(以下、単に「配管47」ともいう)が所定長さで延出している。この配管47は、排出口41aに連通している。
【0036】
次に、ハウジング本体20の下方に装着されるロアーキャップ50について、
図1~9を参照して説明する。
【0037】
このロアーキャップ50は、板状をなすと共に、キャップ底部に位置してフロート弁80を支持するフロート弁支持部51と、該フロート弁支持部51の外周縁部から立設した周壁部53とを有する、有底キャップ状をなしている。なお、フロート弁支持部51は、周壁部53の軸方向下端部に位置している、とも言える。
【0038】
そして、周壁部53には、フロート弁支持部51の上方に、満タン規制開口68が形成されていると共に、該満タン規制開口68の更に上方に追加給油規制開口70が形成されている。すなわち、この実施形態では、ロアーキャップ50に、満タン規制開口68及び追加給油規制開口70が設けられた構造となっている。
【0039】
また、フロート弁支持部51は、複数の支持部51a(
図5参照)を介して、周壁部53の下端よりも、やや上方に位置するように支持されている(
図8参照)。更に、フロート弁支持部51の内面(弁室V側に向く面)側の径方向中央部からは、付勢ばね17の下端部を支持する、略十字突起状をなしたばね支持突起54が突設されている。
【0040】
また、
図8,9等に示すように周壁部53は、軸方向下方に配置された縮径壁部55と、該縮径壁部55の上方に連結壁部56()を介して連結され、軸方向上方に配置されると共に、縮径壁部55よりも拡径した拡径壁部57とからなる構造となっている。
【0041】
更に
図6に示すように、周壁部53の内周には、フロート弁80の昇降動作をガイドする複数のガイドリブ59が軸方向に延設されている。
【0042】
この実施形態の場合、周壁部53を構成する縮径壁部55の内周から、周方向に均等な間隔を空けて、複数のガイドリブ59がハウジング15の径方向中心に向けて突出しており、且つ、各ガイドリブ59は縮径壁部55の軸方向に沿って延びている。
【0043】
また、
図6に示すように、周壁部53を軸方向断面で見たときに、周壁部53は、複数のガイドリブ59,59の間に位置して内周側に凹む凹部60を有しており、該凹部60の軸方向上方に棚状壁(第1棚状壁71)が配置されており、該棚状壁及び凹部60を介して追加給油規制開口70が設けられている(
図9参照)。
【0044】
この実施形態の場合、
図6に示すように、ロアーキャップ50の周壁部53を軸方向断面で見たときに、当該周壁部53は、その周方向に隣接配置された所定の一対のガイドリブ59,59の間に位置して、周壁部53の内周側に向けて(周壁部53の径方向内方に向けて)所定深さで凹む、凹部60を有している。なお、この凹部60は、周壁部53の軸方向に沿って所定長さで延びる、凹溝状をなしている。
【0045】
また、この実施形態においては、周壁部53の径方向に対向する2箇所に、凹部60がそれぞれ形成されている。
【0046】
更に
図6に示すように、各凹部60は、円弧状をなした底面60aと、該底面60aの周方向両端から径方向外方に向けて互いに広がるように傾斜した一対の内側面60b,60bとを有している。
【0047】
前記拡径壁部57は、軸方向上方に配置され、略円環状をなした上部61と、該上部61の下方に連設されると共に、上部61よりも縮径した下部62とを有している。
【0048】
上部61には、周方向に均等な間隔を空けて、周方向に長く延びる、長孔状をなした係合孔61aが形成されている。そして、各係合孔61aに、ハウジング本体20の、対応する第2係合突部31をそれぞれ係合させることで、ハウジング本体20の下方にロアーキャップ50が装着される(
図2,3参照)。その結果、仕切壁23を介して、ハウジング下方に図示しない燃料タンク内に連通する弁室Vが形成されるようになっている(
図8,9参照)。
【0049】
また、
図2や
図5に示すように、フロート弁支持部51の外周縁部や当該外周縁部よりも径方向内側の所定箇所、更に凹部60の下端部底面側には、燃料タンク内と弁室V内とを連通させる連通口63aが複数形成されている。
【0050】
更に
図4,5に示すように、所定の連通口63aを介して、撓み変形可能な弾性片63が、径方向に対向する箇所に形成されている。これらの一対の弾性片63,63は、フロート弁80が下降してフロート弁支持部51上に載置される際の、打音を抑制する。
【0051】
また、
図8や
図9に示すように、前記連結壁部56の内周縁部からは、略円環状をなした環状壁部65が軸方向上方に向けて所定高さで突出している。なお、環状壁部65は、縮径壁部55の軸方向上方に位置する(
図8参照)。この環状壁部65と、連結壁部56と、拡径壁部57の下部62との間に、上方が開口した環状をなした環状溝部66が形成されている。
【0052】
図9に示すように、上記環状溝部66内には、ハウジング本体20の下方にロアーキャップ50が装着された状態で、ハウジング本体20の周壁部21の下端部37が挿入され、その環状突起37aが、環状溝部66の径方向外側に位置する内周面に当接するようになっている。
【0053】
図1~3や
図6に示すように、満タン規制開口68は、満タン規制面や、ロックポイント、SOH(Shut Off Height)を設定するためのものであって、周壁部53の軸方向所定高さに配置され、且つ、周方向に沿って所定長さで延びる、周方向に細長い略長孔状をなしている。
【0054】
また、
図6や
図8に示すように、満タン規制開口68は、周壁部53を径方向に貫通しており(周壁部53を厚さ方向に貫通するとも言える)、径方向外方及び径方向内方に開口した形状となっている。すなわち、満タン規制開口68は、周壁部53の径方向に開口している。
【0055】
この実施形態の場合、周壁部53を構成する縮径壁部55の、軸方向上方寄りの位置であって、周壁部53の、一対の凹部60,60の間の径方向に対向する箇所に、一対の満タン規制開口68,68が形成されている。すなわち、一対の満タン規制開口68,68は周方向に離間して複数形成されている。
【0056】
また、
図3に示すように、満タン規制開口68は、拡径壁部57に形成され周方向に隣接配置された一対の係合孔61a,61aに亘る、周方向長さで形成されている。更に
図1~3に示すように、満タン規制開口68は、複数のガイドリブ59によって、複数の開口となるように区画されている。
【0057】
また、この満タン規制開口68は、追加給油前の満タン規制を行う高さに配置され、液没していない状態で、燃料タンク内と弁室V内とを互いに連通させて、給油ノズルからの連続給油を可能とするような開口面積で形成されている。
【0058】
更に、満タン規制開口68の液没状態では、給油ノズルからの連続給油速度に対して、追加給油規制開口70や流通孔35からの空気流入速度が間に合わず、弁室V内の燃料液面が上昇して、フロート弁80が開口27を閉塞して、給油ノズルからの連続給油を停止するように構成されている(
図10参照)。
【0059】
なお、満タン規制開口68における、上記の「液没していない状態」とは、液体の燃料によって、閉塞されずに開口し、燃料タンク内と弁室内とが連通した状態を意味し、「液没状態」とは、液体の燃料によって閉塞されて、燃料タンク内と弁室内との連通が遮断された状態を意味する。これらは、追加給油規制開口70でも同様の意味である。
【0060】
また、
図6に示すように、縮径壁部55及び拡径壁部57を連結する連結壁部56の、各凹部60に整合する位置からは、凹部60内に入り込むように径方向内方に突出する第1棚状壁71,71が、連結壁部56の径方向に対向する箇所にそれぞれ配置されている。すなわち、各凹部60の軸方向上方に、第1棚状壁71がそれぞれ配置されている。
【0061】
更に
図1に示すように、縮径壁部55及び環状壁部65の内周であって、凹部60の一対の内側面60b,60bに整合する位置からは、径方向内方に向けて突出し且つ軸方向に延びる、一対の側壁72,72が設けられている。
【0062】
また、
図1に示すように、一対の側壁72,72の突出方向先端どうしを連結する、立壁73が軸方向に延びている。なお、立壁73の上端は、各側壁72の上端よりもやや低い位置となっている(
図1参照)。
【0063】
更に、環状壁部65と、一対の側壁72,72と、立壁73との間であって、立壁73の軸方向上端に位置する箇所には、第2棚状壁74が配置されている(
図1参照)。
図6に示すように、この第2棚状壁74は、第1棚状壁71よりも軸方向上方に配置されている。
【0064】
また、
図4に示すように、この第2棚状壁74は、周壁部53の周方向に沿って延びる略円弧形の帯状形状をなしており、その周方向中央部に、矩形状をなした連通孔75が形成されている。この連通孔75は、弁室V内と追加給油規制開口70とを連通するものとなっている。
【0065】
そして、追加給油規制開口70は、上記の第1棚状壁71及び凹部60を介して設けられている。なお、第1棚状壁71と凹部60との間に、追加給油規制開口70が設けられている、とも言える。
【0066】
すなわち、凹部60内に入り込んだ第1棚状壁71と、凹部60の底面60a及び一対の両内側面60b,60bとの間に、追加給油規制開口70が形成されている。また、この追加給油規制開口70の高さ位置は、
図9の二点鎖線で示す位置となっている。
【0067】
更に、追加給油規制開口70は、複数の満タン規制開口68の間に配置されている。
図6に示すように、この実施形態の場合、一対の満タン規制開口68,68の、周方向両端部の間に、追加給油規制開口70,70がそれぞれ配置されている。
【0068】
なお、この実施形態における第1棚状壁71が、本発明における「棚状壁」をなしている。
【0069】
また、追加給油規制開口70は、ハウジング15を軸方向から見たときに、円弧状をなすように周方向に所定長さで延びる形状をなしている。
【0070】
これについて具体的に説明すると、
図7には、ハウジング15を軸方向断面で見たとき、具体的には
図3のE-E矢視線における断面図が示されている。この
図7に示すように、ハウジング15を構成するロアーキャップ50を軸方向断面で見たときに、追加給油規制開口70は、ロアーキャップ50の周壁部53を構成する拡径壁部57や縮径壁部55に形成した凹部60の周方向に沿って長く延びる略円弧形状をなしている。
【0071】
また、追加給油規制開口70を形成する壁部であって、ハウジング15の径方向外側に配置されている壁部の一部が、最も肉厚に形成されている。この実施形態の場合、追加給油規制開口70は、複数の壁部で囲まれて形成されており、該壁部の一部が、他の壁部よりも肉厚に形成され、該肉厚の壁部がハウジング15の径方向外側(ハウジング15を構成するロアーキャップ50の周壁部53の径方向外側)に配置されている。
【0072】
より具体的に説明すると、この実施形態においては、
図7に示すようにハウジング15を軸方向断面で見たとき、連結壁部56及び第1棚状壁71からなり、ロアーキャップ50の径方向外側に配置された肉厚の壁部W1と、凹部60の底面60aに整合配置された立壁73からなり、ロアーキャップ50の径方向内側に配置された、壁部W1よりも肉薄の壁部W2と、凹部60の両内側面60b,60bに整合配置された一対の側壁72,72(周壁部53の周方向に配置された壁部、とも言える)からなり、壁部W1よりも肉薄の壁部W3,W3とで囲まれることによって、追加給油規制開口70が形成されるようになっている。
【0073】
すなわち、追加給油規制開口70を形成する壁部W1,W2,W3の中の一部である、ハウジング15を構成するロアーキャップ50の周壁部53の径方向外側に配置された壁部W1が、径方向内側に配置された壁部W2や周方向に配置された壁部W3よりも厚く、且つ、壁部の中で最も肉厚に形成されている(壁部W1が、他の壁部W2,W3に比べて厚く、且つ、壁部の中で最も肉厚に形成されている)。
【0074】
上記の追加給油規制開口70は、追加給油規制を行う高さに配置され、液没していない状態で追加給油を可能とし、液没状態で追加給油を停止するように構成されている。なお、追加給油規制開口70は、その開口面積が、満タン規制開口68の開口面積よりも小さくなっている。
【0075】
また、上記の追加給油規制開口70は、ハウジング15の軸方向に開口したもの、すなわち、ハウジング15の軸方向(上下方向)が開口する形状となっている。この実施形態における追加給油規制開口70は、
図9に示すように、ロアーキャップ50の周壁部53の軸方向の下方に向けて開口した形状となっている(軸方向下方が開口している)。
【0076】
次に、弁室V内に昇降可能に収容されるフロート弁80について、
図8や
図9等を参照して説明する。
【0077】
この実施形態のフロート弁80は、燃料浸漬時に浮力を発生させるフロート本体81と、該フロート本体81の上方に装着され、フロート本体81に対して相対的に昇降動作し、仕切壁23の開口27に接離するシール部材83とを有している。
【0078】
また、シール部材83の上方には、ゴムや弾性エラストマー等の弾性材料からなるシール弁体85が装着されている。シール弁体85の中央には、上方及び下方が開口した通気孔85aが貫通して形成されている。このシール弁体85が開口27の弁座27aに接離して、開口27を開閉することで、フロート弁80が満タン規制弁として機能する。
【0079】
更に、フロート本体81とシール部材83との間には、中間弁体87が傾動可能に支持されている。この中間弁体87は、常時はシール弁体85の下端部に当接して、通気孔85aを閉塞し(
図8,9参照)、フロート本体81がシール部材83に対して下降したときに、通気孔85aを開くようになっている(
図11参照)。
【0080】
また、フロート弁80は、弁室V内において、ロアーキャップ50との間で、付勢ばね17を介在させた状態で昇降可能に収容配置され、燃料浸漬時に自身の浮力及び付勢ばね17の付勢力で上昇し、燃料の非浸漬時に自重で下降するようになっている。
【0081】
そして、この弁装置10においては、以下のようにして、満タン規制までの連続給油がなされると共に、満タン規制後の追加給油がなされるようになっている。これについて
図9~11を参照して説明する。
【0082】
なお、
図9~11に示す燃料液面L1,L2,L5は、弁室V外での燃料液面の液位を示しており、燃料液面L3,L4は、弁室V内での燃料液面の液位を示している。
【0083】
図9に示すように、燃料タンク内に燃料が給油されても、フロート弁80が燃料に浸漬されていない場合は(燃料液面L1参照)、フロート弁80は、その自重で下降して、開口27が開いており、この開口27を通じて弁室Vと通気室Rとが連通した状態となっている。
【0084】
上記状態では、連通口63a、満タン規制開口68、追加給油規制開口70、流通孔35の全てが液没しておらず開口している。また、フロート弁80の、シール弁体85の下端部が、中間弁体87に当接して、シール弁体85の通気孔85aが閉塞されている。
【0085】
そして、燃料タンク内に燃料が給油されて、燃料液面が上昇すると、燃料タンク内の空気が、連通口63a、満タン規制開口68、追加給油規制開口70、流通孔35を通って、弁室V内に流入した後、開口27を通過して通気室R内に流入し、更に排出口41aから配管47内に流入して、燃料タンク外のキャニスターへと排出される。このようにして、燃料タンク内の空気が、燃料タンク外へ排出されることで、燃料タンク内に燃料を連続給油可能となっている。
【0086】
その後、燃料液面が満タン規制開口68に達すると、この満タン規制開口68を通って、弁室V内に燃料が流入していき、燃料にフロート本体81が浸漬されることで、フロート弁80が徐々に上昇する。
【0087】
そして、燃料によって満タン規制開口68が液没すると(燃料液面L2参照)、
図10に示すように、弁室V内における燃料液面が一気に上昇して(燃料液面L3参照)、追加給油規制開口70も液没する。それと共に、フロート弁80が更に上昇して、シール弁体85が弁座27aに当接して、開口27が閉塞される。
【0088】
その結果、開口27を通じての、弁室Vと通気室Rとの気体流通(空気流通)が遮断されて、燃料タンク内の圧力が上昇する。すると、燃料タンク内の燃料が、燃料タンク側面から斜め外方に延出した給油管を上昇して、給油ノズルの満タン検知センサに燃料が接触して満タンが検知されるので、燃料タンク内への給油が停止されて満タン規制がなされる。
【0089】
その後、時間経過や、流通孔35から流入した空気により弁室V内の燃料液面が押されることによって、弁室V内の燃料液面が下降して、燃料の、フロート本体81に対する燃料の浸漬量が低下する。ここでは燃料タンク内の燃料液面L2と同一高さとなるまで下降する(燃料液面L4参照)。
【0090】
この際、弁座27aに当接したシール弁体85は、開口27に貼り付いた状態に維持されているため、シール弁体85が装着されたシール部材83に対して、フロート本体81が自重によって下降する(
図11参照)。すると、中間弁体87がシール弁体85から離反して、その通気孔85aが開口するので、開口27は、シール弁体85の通気孔85aを通して、弁室V及び通気室Rに連通する。
【0091】
また、弁室V内での燃料液面下降と共に、追加給油規制開口70から燃料が排出されて、追加給油規制開口70の液没状態が解除されて、追加給油規制開口70が液没せずに開口した状態となる。
【0092】
その結果、満タン規制開口68の液没状態(閉塞状態)は維持されるものの、追加給油規制開口70が液没せず開口した状態となるので、燃料タンク内の空気を、追加給油規制開口70や、通気孔85a、開口27等を通じて、燃料タンク外へ排出することが可能となる。これによって燃料タンク内の圧力が低下して、給油管内での燃料液面が下降するので、燃料タンク内への追加給油が可能となる。
【0093】
すなわち、燃料タンク内に追加給油をして、燃料タンク内の燃料液面が追加給油規制開口70まで達し(燃料液面L5参照)、追加給油規制開口70が液没して閉塞された状態となると、追加給油規制開口70を通じての、燃料タンク内と弁室V内との気体流通が遮断される。
【0094】
すると、弁室V内の燃料液面が上昇して、フロート本体81が上昇し、中間弁体87がシール弁体85に当接し、その通気孔85aが閉塞されるので、開口27を通じての、弁室Vと通気室Rとの気体流通(空気流通)が再度遮断される。すると、燃料タンク内の燃料が給油管を上昇して、給油ノズルの満タン検知センサに燃料が再度接触して、満タンが検知されるので、燃料タンク内への追加給油が停止される。
【0095】
このように、燃料によって追加給油規制開口70が液没するまで、追加給油が可能となる。
【0096】
(変形例)
本発明を構成するハウジング、該ハウジング本体を構成するハウジング本体、アッパーカバー、ロアーキャップ、フロート弁支持部、周壁部、満タン規制開口、追加給油規制開口等の、形状や、構造、レイアウト等は、上記態様に限定されるものではない。
【0097】
また、上記実施形態におけるハウジング15は、ハウジング本体20と、アッパーカバー40、ロアーキャップ50とから構成されているが、ハウジングとしては、少なくとも周壁部と、仕切壁と、フロート弁支持部とを有する構造であればよい。例えば、ハウジング本体自体が、単独で有底筒状をなすような構造(ハウジング本体とロアーキャップとが一体化したような構造)としてもよい。
【0098】
更に、この実施形態におけるフロート弁支持部51は、ロアーキャップ50の底部に設けられているが、例えば、フロート弁支持部としては、ロアーキャップの軸方向途中に設けてもよく、フロート弁を支持可能であればよい。
【0099】
また、この実施形態におけるハウジング本体20の周壁部21や、アッパーカバー40の周壁部41等は、略円筒状をなしているが、例えば、楕円筒状や角筒状等であってもよい。
【0100】
更に、この実施形態におけるフロート弁80は、フロート本体81や、シール部材83、中間弁体87等からなる多部品構成となっているが、フロート弁としては、例えば、上方に弾性材料からなるシール部材を装着したフロート弁等であってもよく、開口27を開閉可能であればよい。
【0101】
また、この実施形態では、ハウジング15内に形成された一つの弁室V内に、一つのフロート弁80が収容配置された構造となっているが、例えば、一つの弁室内に複数のフロート弁を収容配置したり(満タン規制弁のほか、燃料カット弁や圧力調整弁等として機能する)、ハウジング内に複数の弁室を画成して、各弁室内にフロート弁を収容配置したりしてもよい。
【0102】
更に、この実施形態における満タン規制開口68は、周壁部53の径方向に開口した形状をなしているが、ハウジングの軸方向に開口した形状であってもよい(これについては他の実施形態で説明する)。
【0103】
また、満タン規制開口68は、周壁部53の周方向に細長い略長孔状をなしているが、満タン規制開口としては、例えば、ハウジングを径方向から見たときに、円形状、楕円形状、略小判形状、矩形状、多角形状等であってもよく、燃料タンク内と弁室内とを連通可能であればよい。
【0104】
更に、この実施形態における追加給油規制開口70は、ハウジング15を軸方向から見たときに円弧状をなしているが(
図7参照)、追加給油規制開口としては、例えば、ハウジングを軸方向から見たときに、円形状、楕円形状、略小判形状、長孔状、矩形状、多角形状等であってもよく、軸方向に開口し、燃料タンク内と弁室内とを連通可能であればよい。
【0105】
また、この実施形態における追加給油規制開口70は、
図7に示すように、4つの壁部W1,W2,W3,W3で囲まれて形成され円弧状に延びる形状となっている。ただし、追加給油規制開口が、明確な境界が存在しない壁、例えば、円筒状の壁等で囲まれた円形状等をなしていてもよく、このような場合であっても、ハウジングの径方向外側に配置される壁部の一部が、他の壁部に比べて最も肉厚に形成されていればよい。
【0106】
なお、本発明における燃料タンク用弁装置は、主として、満タン規制や追加給油規制を図るものとなっているが、開口を形成した仕切壁と、開口に接離するフロート弁とを有することから、燃料流出規制弁(カットオフバルブ)等としても機能するものとなっている。
【0107】
(作用効果)
次に、上記構造からなる弁装置10の作用効果について説明する。
【0108】
すなわち、
図9に示す状態から、燃料タンク内に燃料が給油されて、その燃料液面が予め設定されたSOHに達したとき、すなわち、燃料液面が満タン規制開口68に達すると、満タン規制開口68が液没して、燃料タンク内と弁室Vとの間の空気流通が遮断されて、弁室V内での燃料液面が上昇する(
図10の燃料液面L3参照)。
【0109】
すると、フロート弁80が上昇して、そのシール弁体85が弁座27aに当接し、開口27が閉塞される(
図10参照)。そのため、開口27を通じての弁室Vと通気室Rとの空気流通が遮断されるので、燃料タンク内の圧力が上昇すると共に、燃料タンク内の燃料が給油管を上昇して、給油ノズルの満タン検知センサに燃料が接触する。その結果、燃料タンク内への給油が停止されて、満タン規制がなされる。
【0110】
また、その後の時間経過等により、弁室V内の燃料液面が下降すると、弁座27aに貼り付いて当接したシール弁体85が装着されたシール部材83に対して、フロート本体81が下降して、中間弁体87がシール弁体85から離反するので、通気孔85aが開口して、弁室V及び通気室Rが互いに連通する(
図11参照)。
【0111】
更に、追加給油規制開口70から燃料が排出されて開口状態となるので、燃料タンク内の空気を、追加給油規制開口70、通気孔85a、開口27等を通じて、燃料タンク外へ排出することが可能となる。その結果、燃料タンク内の圧力が低下して、給油管内での燃料液面が下降するので、燃料によって追加給油規制開口70が液没するまで、追加給油が可能となる。
【0112】
そして、この弁装置10においては、周壁部53には、フロート弁支持部51より上方に、燃料タンク内と弁室V内とを互いに連通させる満タン規制開口68が形成されているので、ハウジング底部に満タン規制開口がある態様に比べて、満タン規制位置を上昇させることができる。
【0113】
また、周壁部53には、満タン規制開口68よりも上方に、軸方向に開口し且つ燃料タンク内と弁室V内とを互いに連通させる追加給油規制開口70が形成されている。
【0114】
そのため、追加給油規制開口がハウジングの径方向に開口した態様に比べて、追加給油により燃料液面が上昇して、追加給油規制開口70に達したときに、追加給油規制開口70の全域が迅速に閉塞されやすくなるので(追加給油規制開口70が液没しやすくなるとも言える)、その応答性を高めることができる。その結果、追加給油検知性能(追加給油がこれ以上できないことを検知する性能)を向上させることができる。
【0115】
このように、本発明の燃料タンク用弁装置においては、満タン規制位置の上昇を図ることができると共に、追加給油検知性能を向上させることができる。
【0116】
また、この実施形態においては、
図7に示すように、追加給油規制開口70を形成する壁部であって、ハウジング15の径方向外側に配置されている壁部の一部(W1)が、最も肉厚に形成されている(壁部W1が、壁部W2,W3に比べて厚く且つ最も肉厚に形成されている)。
【0117】
上記態様によれば、追加給油時において、燃料液面が揺動したり波打ったりしても、燃料が、ハウジング15の径方向外側に配置された、肉厚の壁部W1に衝突しやすくなるので、追加給油規制開口70を液没させやすくすることができ(燃料液面が壁部W1に衝突することで、燃料液面の揺動や波打ちを鎮めやすくなるため、追加給油規制開口70を液没させやすい)、追加給油検知性能をより向上させることができる。
【0118】
更に、この実施形態においては、周壁部53を軸方向断面で見たときに、周壁部53は、複数のガイドリブ59,59の間に位置して内周側に凹む凹部60を有しており、該凹部60の軸方向上方に棚状壁(第1棚状壁71)が配置されており、該棚状壁及び凹部60を介して追加給油規制開口70が設けられている(
図6,9参照)。
【0119】
上記態様によれば、フロート弁80の昇降動作のガイド性を損なうことなく、凹部60及び棚状壁(第1棚状壁71)を介して、追加給油規制開口70を確実に形成することができる。更に、通常利用されない空間(いわゆるデッドスペース)となりやすいガイドリブ59,59間の空間を利用して、凹部60を配置したので、ハウジング15(ここではロアーキャップ50)の径方向寸法を小さくすることができる。
【0120】
また、この実施形態においては、満タン規制開口68は、周壁部53の周方向に離間して複数形成されており、複数の満タン規制開口68の間に追加給油規制開口70が配置されている(
図6参照)。
【0121】
上記態様によれば、満タン規制開口68及び追加給油規制開口70が、上記のような関係となっているので、満タン規制開口68及び追加給油規制開口70による、燃料タンク内と弁室V内との通気性を確保しつつ、ハウジング15(ここではロアーキャップ50)の径方向においてコンパクト化を図ることができる。
【0122】
更に、この実施形態においては、
図6や
図8に示すように、満タン規制開口68は、周壁部53の径方向に開口している。
【0123】
上記態様によれば、満タン規制開口68による、燃料タンク内と弁室V内との通気性を確保しつつ、満タン規制位置の上昇及び追加油検知性能の向上を図ることができる。また、周壁部53に、満タン規制開口68を形成しやすくなる。
【0124】
また、この実施形態においては、追加給油規制開口70は、ハウジング15を軸方向から見たときに、円弧状をなすように周方向に所定長さで延びる形状をなしている(
図7参照)。
【0125】
上記態様によれば、追加給油規制開口70による、追加給油検知性能を過敏にせず、適切な追加給油検知性能を得ることができる。すなわち、追加給油時以外にも生じ得る燃料液面のしぶきや小さな波等によって、追加給油規制開口70の全域が液没することを抑制して、追加給油時の液面上昇によってのみ、追加給油検知がなされるため、適切な追加給油検知性能が得られる。
【0126】
(燃料タンク用弁装置の他の実施形態)
図12~14には、本発明に係る燃料タンク用弁装置の、他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0127】
この実施形態の燃料タンク用弁装置は、主として、ロアーキャップ50Aの形状・構造が、前記実施形態と異なっており、満タン規制開口68が、ハウジング15の軸方向に開口した形状をなしている。
【0128】
図12及び
図13に示すように、この実施形態におけるロアーキャップ50Aは、フロート弁支持部51の外周縁部であって、各凹部60の周方向両側(幅方向両側)から、径方向外方に突出する一対の突出壁部77,77が設けられている。
【0129】
また、一方の凹部60の所定の突出壁部77と、他方の凹部60における、前記突出壁部77に対して周方向に隣接する突出壁部77とが、縮径壁部55の径方向外方に二重壁状をなすように配置された外壁部78によって連結されている。
【0130】
そして、
図14に示すように、外壁部78の延出方向下端部と、縮径壁部55と、突出壁部77の内面との間に、軸方向に開口した満タン規制開口68が設けられている。すなわち、この実施形態の場合、満タン規制開口68と追加給油規制開口70とが、共にハウジング15の軸方向に開口した形状をなしている(
図14参照)。
【0131】
なお、満タン規制開口68は、ハウジング15の軸方向に開口したもの、すなわち、ハウジング15の軸方向(上下方向)が開口する形状となっている。この実施形態における満タン規制開口68は、
図14に示すように、ロアーキャップ50の周壁部53の軸方向の下方に向けて開口した形状となっている(軸方向下方が開口している)。
【0132】
また、上記の満タン規制開口68は、追加給油規制開口70と同様に、ハウジング15を軸方向から見たときに、周壁部53の周方向に沿って長く延びる略円弧状をなしている(
図13参照)。
【0133】
更に
図12に示すように、外壁部78の軸方向上方内周からは、径方向内方に向けて第3棚状壁79aが張り出している。そして、この第3棚状壁79aと縮径壁部55との間に、弁室V内と満タン規制開口68とを連通させる、連通孔79が形成されている(
図14参照)。なお、この連通孔79は、縮径壁部53の周方向に沿って延びる略円弧状をなしている(
図13参照)。
【0134】
そして、この実施形態においては、満タン規制開口68がハウジング15の軸方向に開口しているので、径方向に満タン規制開口が開口した場合と比べて、燃料揺動時等に、燃料が満タン規制開口から弁室内に流入しにくくすることができる。
【0135】
すなわち、満タン規制開口68が軸方向に開口しているので、燃料が揺動しても、揺動した燃料が周壁部53に衝突して、その勢いが弱められることになるため、満タン規制開口68から弁室V内に燃料が直接流入しにくくなる(ダイレクトに流入しにくくなる)。そのため、仕切壁23の開口27を通じて、燃料を通気室R内に流入させにくくして、燃料タンク外に漏れにくくすることができる。
【0136】
また、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0137】
10 燃料タンク用弁装置(弁装置)
15 ハウジング
17 付勢ばね
20 ハウジング本体
23 仕切壁
27 開口
40 アッパーカバー
50,50A ロアーキャップ
51 フロート弁支持部
53 周壁部
59 ガイドリブ
60 凹部
68 満タン規制開口
70 追加給油規制開口
71 第1棚状壁(棚状壁)
80 フロート弁
R 通気室
V 弁室