(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114261
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】マイクロモビリティ及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
B60W 30/02 20120101AFI20240816BHJP
B60W 50/14 20200101ALI20240816BHJP
B62K 17/00 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
B60W30/02
B60W50/14
B62K17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019914
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】横山 博亮
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】下田 義弥
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 沙也加
(72)【発明者】
【氏名】山下 華妃
【テーマコード(参考)】
3D212
3D241
【Fターム(参考)】
3D212BB08
3D212BB13
3D212BB24
3D212BB44
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(57)【要約】
【課題】搭乗者であるユーザの安全に配慮したマイクロモビリティ及びその制御方法を提供すること。
【解決手段】本開示に係るマイクロモビリティ100は、動力付きのマイクロモビリティであって、マイクロモビリティの走行時におけるユーザの安定性を検知する第1検出部111と、マイクロモビリティの進行方向の走行路の幅の情報を得る取得部113と、マイクロモビリティの走行を制御する制御部114と、を備え、制御部は、マイクロモビリティの進路変更時に走行路の幅に応じて、マイクロモビリティを減速させる制御、又は、進路変更時に生じる曲率半径を所定の曲率半径よりも大きくした走行軌跡にてマイクロモビリティを走行させる制御、をマイクロモビリティが備える動力及びブレーキに対して行うものである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力付きのマイクロモビリティであって、
前記マイクロモビリティの走行時におけるユーザの安定性を検知する第1検出部と、
前記マイクロモビリティの進行方向の走行路の幅の情報を得る取得部と、
前記マイクロモビリティの走行を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記マイクロモビリティの進路変更時に前記走行路の幅に応じて、前記マイクロモビリティを減速させる制御、又は、進路変更時に生じる曲率半径を所定の曲率半径よりも大きくした走行軌跡にて前記マイクロモビリティを走行させる制御、を前記マイクロモビリティが備える動力及びブレーキに対して行う
マイクロモビリティ。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1検出部において検知された前記ユーザの安定性に基づき、前記走行路の幅が所定値以上である場合において、前記マイクロモビリティを減速させずに、前記ユーザが転倒しないような前記所定の曲率半径の走行軌跡にて前記マイクロモビリティを走行させる制御を前記動力及びブレーキに対して行う
請求項1に記載のマイクロモビリティ。
【請求項3】
さらに、路面に走行軌跡を描画する描画部を備え、
前記制御部は、前記走行路の幅が所定値以上である場合において、前記マイクロモビリティを減速させずに、前記ユーザが転倒しないような前記所定の曲率半径の走行軌跡、又は前記所定の曲率半径よりも大きくした走行軌跡を描画する指示を前記描画部に送信する
請求項1に記載のマイクロモビリティ。
【請求項4】
さらに、前記ユーザに通知を行う通知部と、を備え、
前記制御部は、前記マイクロモビリティの安定性が損なわれる程度まで減速させる必要がある走行軌跡となる場合において、前記ユーザに前記マイクロモビリティから降りる通知を行う指示を通知部に送信する
請求項1に記載のマイクロモビリティ。
【請求項5】
動力付きのマイクロモビリティの制御方法であって、
前記マイクロモビリティの走行時におけるユーザの安定性を検知し、
前記マイクロモビリティの進行方向の走行路の幅の情報を取得し、
前記マイクロモビリティの進路変更時に前記走行路の幅に応じて、前記マイクロモビリティを減速させる、又は、進路変更時に生じる曲率半径を所定の曲率半径よりも大きくした走行軌跡にて前記マイクロモビリティを走行させる
マイクロモビリティの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マイクロモビリティ及びその制御方法に関し、動力付きマイクロモビリティ及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両位置から前方の道路の形状と現在の車両速度を取得し、理想的な走行軌跡及び予測軌跡を運転者に情報として与える運転支援表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電動キックボード、電動アシスト自転車、電動一輪車など、歩道及び車道の両方を走行可である動力付きマイクロモビリティの普及が進んでいる。自動車などの車両において、自動ブレーキを含むブレーキ動作時の衝撃を減らすためにエアバッグやシートベルトなど、搭乗者であるユーザを保護する機能がある。一方、マイクロモビリティにおいて、ユーザを保護する機能は備えておらず、搭乗者であるユーザの安全性に関する開発の重要性は高い。
【0005】
特許文献1に開示される運転支援表示装置は、ユーザが立った状態で走行する電動キックボードのような車両では、危険性の考慮がより必要である。一方、マイクロモビリティはユーザが立った状態で操作するため、交差点やカーブにて進路変更や旋回をする際にマイクロモビリティの減速などの制御を行う運転支援については、搭乗者の転倒などの危険性を考慮することが重要となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るマイクロモビリティは、動力付きのマイクロモビリティであって、前記マイクロモビリティの走行時におけるユーザの安定性を検知する第1検出部と、前記マイクロモビリティの進行方向の走行路の幅の情報を得る取得部と、前記マイクロモビリティの走行を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記マイクロモビリティの進路変更時に前記走行路の幅に応じて、前記マイクロモビリティを減速させる制御、又は、進路変更時に生じる曲率半径を所定の曲率半径よりも大きくした走行軌跡にて前記マイクロモビリティを走行させる制御、を前記マイクロモビリティが備える動力及びブレーキに対して行うものである。
【0007】
本開示に係るマイクロモビリティの制御方法は、動力付きのマイクロモビリティの制御方法であって、前記マイクロモビリティの走行時におけるユーザの安定性を検知し、前記マイクロモビリティの進行方向の走行路の幅の情報を取得し、前記マイクロモビリティの進路変更時に前記走行路の幅に応じて、前記マイクロモビリティを減速させる、又は、進路変更時に生じる曲率半径を所定の曲率半径よりも大きくした走行軌跡にて前記マイクロモビリティを走行させるものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示により、搭乗者であるユーザの安全に配慮したマイクロモビリティ及びその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態に係るマイクロモビリティの図である。
【
図2】本実施の形態に係るマイクロモビリティのブロック図である。
【
図3】本実施の形態に係るマイクロモビリティに搭乗するユーザの安定性を説明する図である。
【
図4】本実施の形態に係るマイクロモビリティの走行軌跡と曲率半径を説明する図である。
【
図5】本実施の形態に係るマイクロモビリティの走行軌跡と走行路の幅を説明する図である。
【
図6】本実施の形態に係るマイクロモビリティの走行軌跡の描画を説明する図である。
【
図7】本実施の形態に係るマイクロモビリティの制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態に係るマイクロモビリティの構造を表している。本実施の形態に係るマイクロモビリティ100は、ハンドル101、ブレーキレバー102、車輪103、搭乗者であるユーザが乗るボディ部104を備えている。また、
図1に示されるマイクロモビリティ100は、さらに、通知部117、描画部118を備えている。
【0011】
マイクロモビリティ100は、さらにライト、バックミラー、動力、バッテリー、ナンバープレートホルダなどを備えていることが好ましい。
図1においては、煩雑さを避けるために割愛している。
【0012】
なお、
図1では、電動キックボードの形状の例を示しているが、これに限定されず、一輪車の構造や、前方又は後方の車輪を2つ備える三輪車の構造などを有してもよい。また、本開示は、歩道及び車道の両方を走行可であるマイクロモビリティについて記載しているが、公園、広場、私有地などを走行する場合においても適用可能である。
【0013】
また、本開示における動力付きマイクロモビリティ100とは、電動キックボード、電動アシスト自転車、電動一輪車などのような、歩道及び車道の両方を走行可であり、かつ車両停止時において不安定である、即ち、搭乗者であるユーザによる支持が必要である車両を指す。
【0014】
図2は、本実施の形態に係るマイクロモビリティ100のブロック図である。本実施の形態に係るマイクロモビリティ100は、第1検出部111、第2検出部112、取得部113、制御部114、ブレーキ115、動力116、通知部117、描画部118を備える。なお、
図2に示されるユーザ120は、マイクロモビリティ100の搭乗者であり、路面130は、マイクロモビリティ100が走行している道路、即ち、歩道又は車道を指す。
【0015】
第1検出部111は、マイクロモビリティ100の走行時における搭乗者であるユーザ120の安定性を検出する機能を有する。第1検出部111の取り付け位置は、ボディ部104の内部又は近傍が好ましい。
【0016】
本実施の形態におけるユーザの安定性とは、ユーザ120の乗車位置や、荷重のかかり方や、走行中の重心移動などが挙げられる。また、これらユーザ側の安定性の他に、マイクロモビリティ100の傾きなど、マイクロモビリティ側の安定性も考慮するとより好ましいため、第1検出部111は、複数のセンサや検知領域を備えてもよい。
【0017】
例えば、ユーザ側の安定性の検知には荷重センサなどを用い、マイクロモビリティ側の安定性の検知には、3軸加速度センサなどを用いることができる。
【0018】
マイクロモビリティ100の走行中に進路変更を行う時において、ユーザの転倒などの危険性を考慮するために、第1検出部111によってユーザの安定性を検出することは重要である。
【0019】
ユーザ120の安定性の検出方法について、
図3(a)~(c)を用いて説明する。
図3は、マイクロモビリティ100のボディ部104に、ユーザ120の右足121及び左足122が乗せられた状態を示している。
図3に示される例において、第1検出部111は、ボディ部104の後輪側に設けられており、複数の荷重センサ123と、3軸加速度センサ124とを制御している。
【0020】
ボディ部104の内部には、複数の荷重センサ123が並べられており、これによってユーザ120の乗車位置や荷重のかかり方、即ち、ユーザ側の安定性を検知している。また、ボディ部104の内部の任意の位置には、3軸加速度センサ124が備えられており、これによってマイクロモビリティ100の傾き、即ち、マイクロモビリティ側の安定性を検知している。
【0021】
図3(a)は、右足121及び左足122をボディ部104の中心部分に乗せて、マイクロモビリティ100へ安定した荷重がかかっている状態を表している。一方、
図3(b)は、例えば、急な減速や、走行中の振動に対してユーザ120が右足121を前に出して踏ん張った姿勢の状態を表している。
【0022】
図3(b)においては、マイクロモビリティ100の進行方向に対して荷重がかかっており、また、右側へマイクロモビリティ100が傾いているため、
図3(a)の状態に比べて不安定な状態である。
【0023】
また、
図3(c)は、マイクロモビリティ100が安定した走行状態にて左折する時の状況を表している。安定した走行状態であるため、ユーザ120からマイクロモビリティ100への荷重のかかり方は、中心部分に安定している。一方、マイクロモビリティ100は、左折に伴い、左側へ傾いており、
図3(a)に示される状態よりも少し不安定な状態であることが示される。
【0024】
第1検出部111は、このようにしてユーザ側の安定性とマイクロモビリティ側の安定性を検知し、ユーザ120の安定性を検出している。
【0025】
また、ユーザ120の安定性の検出は、マイクロモビリティ100の走行中において常時、又は頻繁に実行されていることが好ましい。これにより、マイクロモビリティ100の加速時や減速時、或いは高速で走行している時に、ユーザ120がどの程度バランスを崩すか、即ち、安定性への影響のデータを蓄積することができる。
【0026】
これらのデータは、後述するように、進路変更時におけるマイクロモビリティ100の走行軌跡の算出に用いられる。これにより、進路変更時における転倒の危険性を抑えられる走行軌跡を提示することが可能となる。
【0027】
第2検出部112は、マイクロモビリティ100の進行方向の路面130上にある障害物を検知する機能を有する。第2検出部112の取り付け位置は特に限定されないが、ハンドル101及びブレーキレバー102の近傍や、前方の車輪103の近傍が好ましい。また、障害物を検知する方法は特に限定されず、例として、カメラ、距離検出センサなどを単体或いは任意に組み合わせて用いる方法が挙げられる。
【0028】
本実施の形態における障害物とは、マイクロモビリティ100が歩道又は車道を走行する際に、マイクロモビリティ100又はユーザ120と接触、衝突する可能性のある移動体及び非移動体を指す。移動体の例として、歩行者、自転車、他のユーザが操作するマイクロモビリティ、車道を走行する車両又は軽車両などが挙げられる。非移動体の例として、段差、柱、壁、看板、木の枝葉、小石などが挙げられる。また、これらの障害物の情報は、進路変更時におけるマイクロモビリティ100の走行軌跡の算出に用いられる。
【0029】
取得部113は、マイクロモビリティ100の進行方向にある走行路の幅の情報を取得する機能を有する。取得部113の取り付け位置は特に限定されないが、ハンドル101及びブレーキレバー102の近傍や、前方の車輪103の近傍が好ましい。
【0030】
走行路の幅の情報は、取得部113が備えるGPS(Global Positioning System)にてマイクロモビリティ100の位置情報を取得し、地図情報(図示なし)と照合して情報を取得する方法が挙げられる。この他にも、第2検出部112が備えるカメラやセンサと連動することにより、走行路の幅の情報を取得してもよい。また、地図情報は、取得部113内に格納されていてもよいし、地図情報を格納しているサーバと通信して得てもよい。サーバと通信する場合は、取得部113又はマイクロモビリティ100のその他の領域において通信手段を備えていることが好ましい。
【0031】
また、歩道、公園、広場、私有地を走行するマイクロモビリティは、現行の法定速度に基づき、時速6km以下の走行速度に制限されているため、マイクロモビリティ100の走行速度が時速6kmである場合に、安全に進路変更できる走行路の幅を予め決定してもよい。これにより、安全に進路変更できる走行路の幅を有する歩道の情報を取得部113内又はサーバに格納しておくことができる。
【0032】
制御部114は、マイクロモビリティ100のブレーキ115及び動力116の制御を行う機能を有する。動力116としては、電動式モーターなどが挙げられる。制御部114の取り付け位置は特に限定されず、ブレーキレバー102及び車輪103と連動している。制御部114にて行われる制御の詳細については後述する。
【0033】
通知部117は、ユーザ120への通知を行う機能を有する。通知部117の取り付け位置は特に限定されないが、ハンドル101及びブレーキレバー102の近傍であると、ユーザ120に伝えやすいため好ましい。また、ユーザ120がヘルメットを装着している場合は、ヘルメット内に設けてもよい。ユーザ120への通知の詳細については、制御部114の制御の詳細と併せて後述する。
【0034】
通知部117の例として、視覚的にユーザに知らせるモニターや、聴覚的にユーザに伝えるスピーカーや、触覚的にユーザに伝えるバイブレータなどが挙げられる。モニターの場合は、文字情報で伝えてもよいし、簡易的に色味の変化で伝えてもよい。スピーカーの場合は、音声で伝えてもよいし、簡易的にアラームやブザーを鳴らす方法でもよい。
【0035】
次に、本実施の形態に係るマイクロモビリティの制御方法について、図を用いて説明する。
【0036】
図4(a)は、マイクロモビリティが交差点やカーブに沿って左方向へ進路変更をする際の走行軌跡を示している。マイクロモビリティ100は、歩道131を走行しており、走行軌跡133に示されるような経路を通って左折することが予測される。
【0037】
なお、本開示において、車道132以外の道路を便宜上「歩道131」と表記している。以下に説明する制御方法は、歩道を走行する場合について記載しているが、本開示はこれに限らず、二輪車専用道路及び自転車専用道路、ならびに車道を走行する場合においても適用可能である。
【0038】
図4(b)は、
図4(a)の走行軌跡133を抜き出したものである。マイクロモビリティ100の進路変更時に生じる走行軌跡133は、曲線部134を有している。この曲線部134の曲率半径135は、マイクロモビリティ100の走行速度や傾き、ハンドル操作などによって変化する。特に、車道を走行する場合においては、現行の法定速度に基づき、時速20kmにて走行できるため、マイクロモビリティ100の走行速度が及ぼす曲率半径135への影響は大きい。
【0039】
例えば、高速で急に旋回する場合は、
図4(c)の線Aに示されるように、曲率半径135の小さい走行軌跡にて走行するため、マイクロモビリティ100にかかる負荷は大きくなる。一方、低速で緩やかに旋回する場合は、
図4(c)の線Bに示されるように、曲率半径135の大きい走行軌跡となり、マイクロモビリティ100にかかる負荷は小さくなる。
【0040】
本実施の形態に係る制御部114は、進路変更時において、取得部113にて得られた走行路の幅に応じて、マイクロモビリティ100を減速させる制御、又は、曲率半径を大きくした走行軌跡にてマイクロモビリティ100を走行させる制御を行う。ここで、曲率半径を大きくした走行軌跡とは、ユーザ120が転倒しない最小曲率半径よりも大きくした走行軌跡を表す。
【0041】
これらの制御は、第1検出部111において検知された前記ユーザ120の安定性に基づいて、マイクロモビリティ100のブレーキ115、動力116などに作用することにより行われる。また、後述する描画部118が描画する走行軌跡のガイドに沿ってマイクロモビリティ100を走行できるように、制御部114が、ハンドル101に作用して制御を行ってもよい。
【0042】
図5は、歩道131の幅、即ち、走行路の幅が小さい場合(
図5(a))と、走行路の幅が大きい場合(
図5(b))における、マイクロモビリティ100の走行軌跡133を表している。
【0043】
図5(a)に示されるように、走行路の幅136が小さい場合には、マイクロモビリティ100は、曲率半径が小さい走行軌跡にて走行することになるため、マイクロモビリティ100にかかる負荷は大きくなる。この時、制御部114は、搭乗者であるユーザ120が転倒しない速度まで、マイクロモビリティ100を減速する制御を行う。
【0044】
この時、制御部114は、通知部117にマイクロモビリティ100の減速をユーザ120に知らせる指示を送信する。これにより、マイクロモビリティ100の急な減速に対して、ユーザ120が慌てず対応しやすくなるため、ユーザの安定性を維持しながらマイクロモビリティ100を減速することができる。
【0045】
なお、マイクロモビリティ100の速度を時速1km未満まで下げると、マイクロモビリティ100は、安定して走行することができなくなる。マイクロモビリティ100の安定性が損なわれる程度までマイクロモビリティ100を減速させる必要がある走行軌跡となる場合は、制御部114から通知部117にマイクロモビリティ100から降りるようにユーザ120に知らせる指示を送信する。これにより、ユーザ120は、転倒しないように安全にマイクロモビリティ100から降りることができる。
【0046】
一方、
図5(b)に示されるように、走行路の幅136が十分に大きい場合には、マイクロモビリティ100を減速させなくても、曲率半径が大きい走行軌跡にて走行させることにより、転倒の危険性を抑えることが可能である。したがって、制御部114は、マイクロモビリティ100の減速を行わずに、曲率半径を大きくした走行軌跡133にて走行させる制御を行う。
【0047】
ユーザが転倒しないような曲率半径とは、ユーザ120が進路変更を行った際の過去の走行軌跡において、ユーザ120の足の位置が
図3の(c)の状態を保っている時の走行軌跡の曲率半径の中で最も小さい曲率半径を、ユーザが転倒しない曲率半径とする。この過去の走行軌跡は、マイクロモビリティ100内の記憶部に格納されてもよいし、サーバと通信して、サーバに格納されてもよい。
【0048】
また、走行路の幅136が十分に大きい場合には、制御部114は、
図6に示されるような曲率半径を大きくした走行軌跡133のガイドを路面130に描画する指示を、描画部118に行ってもよい。
【0049】
描画部118は、光源、ランプ、ビーム、レーザポインタなどを備え、路面130に走行軌跡133のガイドを描画する機能を有する。このようにすることで、マイクロモビリティ100にかかる負荷が小さい走行軌跡をユーザに提示できるため、進路変更時における転倒の危険性を抑えることが可能となる。なお、走行軌跡133のガイドの描画の実行は、第2検出部112による障害物の検知情報、例えば、歩行者の有無など、に基づいて行われることが好ましい。
【0050】
また、例えば、マイクロモビリティ100が交差点やカーブに差し掛かった時、曲がっている間、交差点やカーブを抜けて直進に戻る時、など、マイクロモビリティ100の走行状態に応じて、描画部118は、走行軌跡133を変化させて描画することが好ましい。
【0051】
次に、
図7のフローチャートを用いて、本実施の形態に係るマイクロモビリティ100の制御方法を説明する。まず、ユーザ120がマイクロモビリティ100の走行を開始した後、第1検出部111によって、ユーザ側及びマイクロモビリティ側の安定性を検知し、ユーザ120の安定性を計測する(S101)。ユーザ120の安定性の検出は、データの蓄積のために、マイクロモビリティ100の走行中において常時、又は頻繁に実行されていることが好ましい。
【0052】
次に、取得部113において、マイクロモビリティ100の進行方向における走行路の幅の情報を取得する(S102)。走行路の幅の情報は、マイクロモビリティ100の位置情報と、地図情報と照合することにより取得する、又は、第2検出部112が備えるカメラやセンサと連動して取得してもよい。
【0053】
マイクロモビリティ100の進路変更時において、走行路の幅が所定値以上であるかどうかを判断する(S103)。所定値は、第1検出部111において検知された走行中のユーザの安定性や、マイクロモビリティ100の速度や、過去の走行軌跡からその速度や加速時や減速時におけるユーザの安定性への影響、及び障害物の有無などによる走行路の状況に基づいて決定される。その他にも、マイクロモビリティ100内又はサーバに格納された地図情報などを参照して、マイクロモビリティ100の乗車前に予め決定した値を用いてもよい。
【0054】
走行路の幅が所定値以下である場合は、曲率半径の小さい走行軌跡にて走行することになるため、マイクロモビリティ100にかかる負荷は大きくなる。そこで、制御部114は、マイクロモビリティ100を減速する制御を行い、マイクロモビリティ100の減速をユーザに知らせるよう、通知部117に指示を送信する(S104)。
【0055】
また、マイクロモビリティ100の速度を時速1km未満、即ち、マイクロモビリティ100の安定性が損なわれる程度まで減速させないと走行できない走行路の幅である場合は、制御部114は、マイクロモビリティ100の停止制御を行う。同時に、制御部114は、マイクロモビリティ100の停止をユーザに知らせるよう、通知部117に指示を送信する。
【0056】
このように、走行路の幅が所定値以下である場合には、マイクロモビリティ100を減速、又は停止させることによって、安全に進路変更を行うことができる。
【0057】
走行路の幅が所定値以上である場合は、曲率半径の大きい走行軌跡にてマイクロモビリティ100を走行させることができる。この時、制御部114は、マイクロモビリティ100の減速を行わずに、曲率半径を大きくした走行軌跡をユーザに提示する制御を行う(S105)。曲率半径を大きくした走行軌跡をユーザに提示する方法は、通知部117にて走行軌跡を表示してもよいし、描画部118にて走行軌跡のガイドを路面130に描画してもよい。
【0058】
このように、走行路の幅が所定値以下である場合には、マイクロモビリティ100を減速させずに、ユーザが転倒しないような曲率半径の走行軌跡を提示して、安全に進路変更を行うことができる。
【0059】
このような構成とすることにより、本実施の形態に係るマイクロモビリティは、搭乗者であるユーザの安全をより配慮したものとなる。
【0060】
なお、本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0061】
100 マイクロモビリティ
101 ハンドル
102 ブレーキレバー
103 車輪
104 ボディ部
111 第1検出部
112 第2検出部
113 取得部
114 制御部
115 ブレーキ
116 動力
117 通知部
118 描画部
120 ユーザ
121 右足
122 左足
123 荷重センサ
124 3軸加速度センサ
130 路面
131 歩道
132 車道
133 走行軌跡
134 曲線部
135 曲率半径