(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114265
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】超音波プローブに取り付ける眼球観察用アダプタ及びそのセット
(51)【国際特許分類】
A61B 8/10 20060101AFI20240816BHJP
A61B 8/00 20060101ALI20240816BHJP
A61B 3/10 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
A61B8/10
A61B8/00
A61B3/10 900
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019924
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000189486
【氏名又は名称】上田日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117226
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】宮下 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】石井 佑実
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 貴博
【テーマコード(参考)】
4C316
4C601
【Fターム(参考)】
4C316AA01
4C316AA09
4C316AB14
4C316FC07
4C601DD13
4C601EE11
4C601GB04
4C601GC01
4C601GC02
4C601GC03
4C601GC09
(57)【要約】
【課題】超音波プローブに取り付ける新しい眼球観察用アダプタ及びそのセットを提供する。
【解決手段】超音波プローブ3に取り付ける眼球観察用のアダプタ1であって、超音波プローブ3を構成するプローブヘッド部32が挿入されて該プローブヘッド部32を収容するための収容部11と、プローブヘッド部32を挿入するための挿入側開口部16と、挿入されたプローブヘッド部32の眼接触部33側に設けられて眼球観察時に診断部位に接触させる接触媒体2を収容するための接触媒体収容部12と、接触媒体収容部12に収容された接触媒体2を診断部位に接触させるための測定側開口部13とを有し、測定側開口部13が、収容部11から凸状に突出しているように構成して課題を解決した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波プローブに取り付ける眼球観察用のアダプタであって、
前記超音波プローブを構成するプローブヘッド部が挿入されて該プローブヘッド部を収容するための収容部と、前記プローブヘッド部を挿入するための挿入側開口部と、挿入された前記プローブヘッド部の眼接触部側に設けられて眼球観察時に診断部位に接触させる接触媒体を収容するための接触媒体収容部と、該接触媒体収容部に収容された前記接触媒体を前記診断部位に接触させるための測定側開口部と、を有し、
前記測定側開口部が、前記収容部から凸状に突出している、ことを特徴とする眼球観察用アダプタ。
【請求項2】
前記測定側開口部が、前記収容部に挿入される前記プローブヘッド部の中央位置又は略中央位置に設けられている、請求項1に記載の眼球観察用アダプタ。
【請求項3】
前記測定側開口部が、四角形、円形、楕円形、及び四角形以外の多角形から選ばれる1の形状である、請求項1又は2に記載の眼球観察用アダプタ。
【請求項4】
前記測定側開口部の開口寸法は、前記接触媒体収容部の内周壁面の寸法以下である、請求項1又は2に記載の眼球観察用アダプタ。
【請求項5】
前記接触媒体収容部の高さが、5~20mmの範囲内である、請求項1又は2に記載の眼球観察用アダプタ。
【請求項6】
超音波プローブに取り付ける請求項1~5のいずれか1項に記載の眼球観察用のアダプタを複数備えるセットであって、
前記超音波プローブの種類に対応した寸法形状の前記眼球観察用のアダプタを複数備える、又は、複数の診断部位に対応した測定側開口部又は接触媒体収容部を有する前記眼球観察用のアダプタを複数備える、ことを特徴とする眼球観察用アダプタのセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波プローブに取り付ける眼球観察用アダプタ及びそのセットに関する。
【背景技術】
【0002】
医療等の分野において、人体を含む各種被検体の診断部位の状態を診断するため、超音波画像診断システムが広く用いられている。この種の超音波画像診断システムは、一般に、超音波プローブと制御装置とを備えている。超音波プローブは、診断部位に対して所定周波数帯の音波(「超音波」ともいう。)を送信し、診断部位で反射した音波(すなわち、エコー)を受信する。本体装置は、超音波プローブにて受信されたエコーに基づき生成された受信信号に基づいて診断部位を撮影した複数の超音波診断画像フレームからなる超音波診断画像データを生成し、生成したデータに基づき超音波診断画像を表示する構成を有している。
【0003】
こうした超音波プローブを眼科用に使用する場合は、診断部位である角膜等の保護や苦痛を軽減した超音波プローブが要求されている。こうした要求に対し、特許文献1には、診断部位である眼の表面に損傷を与えることのない安全性を優位にした超音波探触子が提案されている。この超音波深触子は、バッキング材上に凹面状とした圧電素子を固着して音響整合層を設けてなる探触子本体と、前記探触子本体の超音波送受波面となる前面を露出して収容してなる外側ケースとからなる超音波探触子において、前記探触子本体の前面を含む外周側面を前記外側ケースの開口面から突出した構成となっている。
【0004】
一般的な超音波プローブは、平面状又は湾曲状の先端形態又はそれに類する先端形態を診断部位に当接して測定するものが知られている(特許文献2)。こうした超音波プロープは、診断部位に当接した平面状又は湾曲状の眼接触部(コンタクト部ともいう。)が頸動脈や甲状腺画像を観察するが、眼科用として網膜剥離や白内障等の眼球観察を行う際には、眼接触部が平面状又は湾曲状であるために球面状の眼球形状に沿った接触が難しかった。
【0005】
こうした課題に対し、従来の眼球観察では、先端が円形のペンシル型超音波プロープが多く使用されているが、特許文献2のような平面状の眼接触部を有する超音波プローブを用いる場合は、眼接触部を直接眼にあてるか、水袋(ビニール袋やケースに水が含まれているもの。)又はゲルパッドを介して眼接触部を眼にあてている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-157545号公報
【特許文献2】意匠登録第1697766号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、ペンシル型超音波プローブは、眼科専用のプローブであり、他の診断部位(頸動脈、甲状腺等)の観察には使用できない。一方、平面状の眼接触部を有する超音波プローブ(
図1の符号3)では、眼接触部33を直接眼にあてる場合、球面状の眼球が近距離にあるため超音波の焦点が合わず、画質が悪くなってしまう。また、
図5(B)に示すように、超音波プローブを縦にして使用する場合、眼接触部33の幅が広くて眼接触部の端部等が顔の額にあたってしまい、眼の縦方向の観察が十分できないという難点がある。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、超音波プローブに取り付ける新しい眼球観察用アダプタ及びそのセットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係る眼球観察用アダプタは、超音波プローブに取り付ける眼球観察用のアダプタであって、前記超音波プローブを構成するプローブヘッド部が挿入されて該プローブヘッド部を収容するための収容部と、前記プローブヘッド部を挿入するための挿入側開口部と、挿入された前記プローブヘッド部の眼接触部側に設けられて眼球観察時に診断部位に接触させる接触媒体を収容するための接触媒体収容部と、該接触媒体収容部に収容された前記接触媒体を前記診断部位に接触させるための測定側開口部と、を有し、前記測定側開口部が、前記収容部から凸状に突出している、ことを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、超音波プローブを構成するプローブヘッド部を挿入することができるので、頸動脈や甲状腺等の観察で使用する一般的な超音波プローブでも眼球観察に適用できる。その結果、眼科専用の超音波プローブを使用する必要がなく、既存の超音波プローブに汎用性を持たせることができる。また、測定側開口部が収容部から凸状に突出しているので、近距離にある球面状の眼球に対しても超音波の焦点を合わせることができ、画質の悪化を防ぐことができる。また、収容部から凸状に突出しているので、超音波プローブを縦にして使用する場合でも、眼接触部の端部等が顔の額にあたるのを防いで眼の縦方向の観察を十分に行うことも可能になる。
【0011】
本発明に係る眼球観察用アダプタにおいて、前記測定側開口部が、前記収容部に挿入される前記プローブヘッド部の中央位置又は略中央位置に設けられている。こうすることにより、プローブヘッド部の中央位置又は略中央位置に設けられた測定側開口部が診断部位に接触することになるので、眼球観察を正確に行うことができる。
【0012】
本発明に係る眼球観察用アダプタにおいて、前記測定側開口部が、四角形、円形、楕円形、及び四角形以外の多角形から選ばれる1の形状である。この発明によれば、測定側開口部は、好ましくは四角形、円形、楕円形であるが、それ以外の多角形であってもよい。また、四角形を含む多角形の角部は曲面形状であってもよい。
【0013】
本発明に係る眼球観察用アダプタにおいて、前記測定側開口部の開口寸法は、前記接触媒体収容部の内周壁面の寸法以下である。こうすることにより、接触媒体を診断部位に接触させる大きさの範囲を規定できる。
【0014】
本発明に係る眼球観察用アダプタにおいて、前記接触媒体収容部の高さが、5~20mmの範囲内である。こうすることにより、例えば超音波プローブを縦にして使用する場合でも、眼接触部の端部等が顔の額にあたるのを防いで眼の縦方向の観察を十分に行うことができる。
【0015】
(2)本発明に係る眼球観察用アダプタのセットは、超音波プローブに取り付ける上記本発明に係る眼球観察用のアダプタを複数備えるセットであって、前記超音波プローブの種類に対応した寸法形状の前記眼球観察用のアダプタを複数備える、又は、複数の診断部位に対応した測定側開口部又は接触媒体収容部を有する前記眼球観察用のアダプタを複数備える、ことを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、超音波プローブの種類に対応した寸法形状のアダプタを複数備えるセットとすれば、例えばプローブヘッド部の形状が平面状である場合や湾曲状である場合やヘッド幅が広い場合やヘッドの厚さが異なる場合のように複数の超音波プローブを既に保有している場合に、既存の超音波プローブに対応したアダプタを選択して装着するだけで眼球観察用に使用することができる。また、複数の診断部位に対応した測定側開口部又は接触媒体収容部を有するアダプタを複数備えるセットとすれば、例えば測定側開口部や接触媒体収容部を大きくしたり小さくしたり円形にしたり四角形にしたりしたアダプタセットとすることで、子供や大人や顔骨格形状に対応したアダプタを選択して装着するだけで眼球観察用に使用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、頸動脈や甲状腺等の観察で使用する一般的な超音波プローブでも眼球観察に適用できるので、眼科専用の超音波プローブを使用する必要がなく、既存の超音波プローブに汎用性を持たせることができる。また、近距離にある球面状の眼球に対しても超音波の焦点を合わせることができ、画質の悪化を防ぐことができる。また、超音波プローブを縦にして使用する場合でも、眼接触部の端部等が顔の額にあたるのを防いで眼の縦方向の観察を十分に行うことも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る眼球観察用アダプタを超音波プローブに取り付けた形態の説明図である。
【
図2】眼球観察用アダプタの形態図であり、(A)は正面図であり、(B)は右側面図であり、(C)は(A)の断面形態図であり、(D)は(C)の断面形態図である。
【
図3】眼球観察用アダプタの形態図であり、(A)は平面図であり、(B)は底面図であり、(C)は斜視図である。
【
図4】眼球観察用アダプタを超音波プロープに装着し、開口に接触媒体を入れた状態を示す模式図であり、(A)は測定側開口部が四角形の例であり、(B)は測定側開口部が円形の例である。
【
図5】超音波プローブによる眼球観察の様子であり、(A)は超音波プローブの幅の広い側を横方向にした場合であり、(B)は超音波プローブの幅の広い側を縦方向にした場合である。
【
図6】眼球観察用アダプタを超音波プロープに装着し、開口に接触媒体を入れた状態で眼球観察して得られた画像の例であり、(A)は前眼部の画像であり、(B)は眼球全体の画像である。
【
図7】眼球観察用アダプタを超音波プロープに装着し、開口に接触媒体を入れた状態で眼球観察して得られた網膜剥離の状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る眼球観察用アダプタ及びそのセットについて図面を参照しつつ説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の内容を包含する。
【0020】
[眼球観察用アダプタ]
本発明に係る眼球観察用アダプタ1は、
図1~
図4に示すように、超音波プローブ3に取り付ける眼球観察用のアダプタ1である。このアダプタ1は、超音波プローブ3を構成するプローブヘッド部32が挿入されて該プローブヘッド部32を収容するための収容部11と、プローブヘッド部32を挿入するための挿入側開口部16と、挿入されたプローブヘッド部32の眼接触部33側に設けられて眼球観察時に診断部位に接触させる接触媒体2を収容するための接触媒体収容部12と、接触媒体収容部12に収容された接触媒体2を診断部位に接触させるための測定側開口部13とを有している。このアダプタ1では、測定側開口部13が収容部11から凸状に突出していることに特徴がある。
【0021】
こうしたアダプタ1は、超音波プローブ3を構成するプローブヘッド部32を挿入することができるので、頸動脈や甲状腺等の観察で使用する一般的な超音波プローブでも眼球観察に適用できる。その結果、眼科専用の超音波プローブを使用する必要がなく、既存の超音波プローブに汎用性を持たせることができる。また、測定側開口部13が収容部11から凸状に突出しているので、近距離にある球面状の眼球に対しても超音波の焦点を合わせることができ、画質の悪化を防ぐことができる。また、収容部11から凸状に突出しているので、超音波プローブ3を縦にして使用する場合でも、眼接触部の端部等が顔の額にあたるのを防いで眼の縦方向の観察を十分に行うことも可能になる。
【0022】
以下、各構成要素を詳しく説明する。
【0023】
(超音波プローブ)
眼球観察用アダプタ1に収容される超音波プローブ3としては、
図1に示すような、頸動脈や甲状腺等の観察で使用する超音波プローブを適用できる。既存の超音波プローブであってもよしい、今後発売される新型の超音波プローブであってもよい。プローブヘッド部32の形状においても、
図1に示すような平面形状であってもよいし、曲面形状であってもよいし、ヘッド幅が広いものであってもよいし、ヘッドの厚さが薄いものや厚いものであってもよい。既存又は新型の超音波プローブを本発明に係るアダプタ1に装着することにより、眼球観察用に使用することができる。
【0024】
超音波プローブ3が装着するアダプタ1には、超音波プローブ3を構成するプローブヘッド部32が挿入される。アダプタ1を使用することで、例えば一般的な超音波プローブでも眼球観察に適用できる。その結果、眼科専用の超音波プローブを使用する必要がなく、既存の超音波プローブに汎用性を持たせることができる。また、既存の超音波プローブ3の形伏や性能を変更することなく利用可能であることから、眼科専用プロープを特別に作る開発費も削減でき、極めて経済的である。
【0025】
(収容部)
収容部11は、超音波プローブ3を構成するプローブヘッド部32が挿入され、そのプローブヘッド部32を収容する。収容部11は、
図1~
図3に示すように、全体的に見ると箱形であり、プローブヘッド部32が挿入される側に大きな開口部(挿入側開口部16)があり、その反対側の測定する側に小さな開口部(測定側開口部13)がある。
【0026】
収容部11の構造形態として、例えば
図2(A)~(D)及び
図3(A)~(C)の例を挙げることができるが、同様の機能をもつものであればこうした構造形態に限定されない。収容部11の外周壁面は、
図2及び
図3の例では、正面側の外壁面11a、背面側の外壁面11b、左側面側の外壁面11c、及び右側面側の外壁面11dで構成され、プローブヘッド部32を収容している。収容部11の内周壁面は、
図2及び
図3の例では、正面側の内壁面11a’、背面側の内壁面11b’、左側面側の内壁面11c’、及び右側面側の内壁面11d’で構成され、プローブヘッド部32をガタつきなく収容できるクリアランスで形成されている。
【0027】
収容部11の底部には、底部側の全面が開口した挿入側開口部16が設けられており、収容部11にプローブヘッド部32が挿入しやすくなっている。収容部11の上部には、上部側の一部が開口した測定側開口部13が設けられており、接触媒体収容部12に収容された接触媒体2が露出するようになっている。なお、符号18は、収容部11の底部側端面であり、符号19は、収容部11の外周壁面に設けられた溝部19である。溝部19は好ましく設けられるものであり、アダプタ1を取り付けた超音波プローブ10の眼接触部側全体をカバーフィルムやカバー袋(図示しない)で覆った場合に、そのカバーフィルムやカバー袋が外れないように固定するゴムバンドを挿入させるための溝部19として機能する。
【0028】
収容部11において、上部の内壁面14’には、プローブヘッド部32が当接し、その位置でプローブヘッド部32が固定される。プローブヘッド部32とアダプタ1との固定手段は特に限定されないが、例えばに嵌め合わせて固定するのが便利である。そうした嵌め合いは、例えば、プローブヘッド部32の外周面とアダプタ1の内壁面のいずれか一方に突起を設け、他方にその突起に嵌め合わされる溝を設ける例を挙げることができるが、こうした固定手段に限定されない。上部の外壁面14は、測定対象の側の面であり、測定側開口部13の位置である上部側端面17よりも低い位置となっている。こうした位置関係により、測定側開口部13が、収容部11から凸状に突出している。
【0029】
(挿入側開口部)
挿入側開口部16は、プローブヘッド部32を挿入するための開口部である。挿入側開口部16は、
図2(C)(D)及び
図3(B)の例では、収容部11の底部側の全面が開口しており、プローブヘッド部32が挿入しやすくなっている。なお、収容部11の構造形態によっては、挿入側開口部16は、底部側の全面が開口していない形態であってもよい。
【0030】
(測定側開口部)
測定側開口部13は、接触媒体収容部12に収容された接触媒体2を診断部位に接触させるための開口部である。測定側開口部13は、
図2(C)(D)及び
図3(A)(C)の例では、収容部11の上部側の一部が開口しており、収容部11から凸状に突出している。そして、接触媒体収容部12に収容された接触媒体2が露出するようになっている。
【0031】
測定側開口部13は、収容部11に挿入されるプローブヘッド部32の中央位置又は略中央位置に設けられている。こうした位置に設けられた測定側開口部13は、診断部位に接触することになるので、眼球観察を正確に行うことができる。
【0032】
測定側開口部13の形状は、四角形、円形、楕円形、及び四角形以外の多角形から選ばれる1の形状であることが好ましい。好ましい形状は、四角形、円形、楕円形であるが、それ以外の多角形であってもよい。円形の場合がより好ましい。また、四角形を含む多角形の角部は、曲面形状であってもよい。
【0033】
測定側開口部13の開口寸法は、接触媒体収容部12の内周壁面の寸法以下であることが好ましい。こうした大きさにすることにより、接触媒体2を診断部位に接触させる大きさの範囲を規定できる。「内周壁面の寸法以下」とは、接触媒体収容部12の内周壁面と同じ大きさ又はそれ以下の大きさを意味し、
図1~
図3の例では、測定側開口部13の開口寸法は、接触媒体収容部12の内周壁面と同じ大きさになっている。具体的な開口寸法は特に限定されないが、
図3(C)中のX方向(コンタクト部又はプローブヘッドの幅方向)とY方向(コンタクト部又はプローブヘッドの厚さ方向)とで表される四角形の測定側開口部13の場合(
図4(A)を参照)、その開口寸法としては、X方向が10~25mmの範囲内で、Y方向が10~25mmの範囲内であることが好ましい。こうした範囲は、視野幅を最低限確保しつつ、あまり大きくなりすぎない範囲である。また、
図4(B)に示すような円形の測定側開口部13の場合も、その開口寸法としては、直径が10~25mmの範囲内であることが好ましい。測定側開口部13の開口寸法を調整することで、眼の小さな小児等の診断用としても適用できる。
【0034】
(接触媒体収容部)
接触媒体収容部12は、挿入されたプローブヘッド部32の眼接触部33側に設けられて眼球観察時に診断部位に接触させる接触媒体2を収容する。接触媒体収容部12は、
図1~
図4に示すように、全体的に見ると、収容部11よりも小さい大きさで測定側開口部13に連続して繋がる部位である。
【0035】
接触媒体収容部12の構造形態として、例えば
図2(A)~(D)及び
図3(A)~(C)の例を挙げることができるが、同様の機能をもつものであればこうした構造形態に限定されない。接触媒体収容部12の外周壁面は、
図2及び
図3の例では、正面側の外壁面12a、背面側の外壁面12b、左側面側の外壁面12c、及び右側面側の外壁面12dで構成されている。接触媒体収容部12の内周壁面は、
図2及び
図3の例では、正面側の内壁面12a’、背面側の内壁面12b’、左側面側の内壁面12c’、及び右側面側の内壁面12d’で構成されている。
【0036】
上記したように、測定側開口部13が収容部11から凸状に突出しているので、その測定側開口部13に連続して繋がる接触媒体収容部12も、収容部11から凸状に突出している。接触媒体収容部12も収容部11から凸状に突出しているので、近距離にある球面状の眼球に対しても超音波の焦点を合わせることができ、画質の悪化を防ぐことができる。また、収容部11から凸状に突出しているので、超音波プローブ3を縦にして使用する場合でも、眼接触部の端部等が顔の額にあたるのを防いで眼の縦方向の観察を十分に行うことも可能になる。
【0037】
接触媒体収容部12の高さは、5~20mmの範囲内であることが好ましい。接触媒体収容部12をこの高さ範囲内で突出することにより、例えば超音波プローブ3を縦にして使用する場合でも、眼接触部の端部等が顔の額にあたるのを防いで眼の縦方向の観察を十分に行うことができる。また、眼球の横方向の断面観察だけでなく、90度回転させて眼球の縦方向の断面観察も容易になる。また、超音波プロープを0度~360度の範囲で回転させることも可能になり、0度~360度の範囲で回転させて画像を取得でき、立体画像化が可能となる。
【0038】
(接触媒体)
接触媒体収容部12には接触媒体2が収容される。接触媒体2としては、ゲル、ゲルバッド、水袋等を挙げることができ、
図4に示すように、接触媒体収容部12内に流動せずに保持されるものであえば特に限定されない。
【0039】
(診断画像)
本発明に係る眼球観察用アダプタ1を取り付け、接触媒体2を接触媒体収容部12に入れた超音波プローブ3を使用して診断部位を撮影した。その結果の例を
図6及び
図7に示した。
図6(A)の前眼部の撮影画像では、まぶた、角膜、虹彩、水晶体を撮影でき、緑内障の診断を支障なく行うことができた。
図6(B)の眼球全体の撮影画像では、角膜や視神経も撮影できた。
図7の眼球全体の撮影画像の模式図では、網膜剥離の状態を撮影できた。
【0040】
本発明に係る眼球観察用アダプタ1を使用することによって、腕や足等の湾曲部位にも対応可能なアダプタとして応用することができ、様々な診断部位での診断精度の向上が見込まれる。
【0041】
[眼球観察用アダプタのセット]
本発明に係る眼球観察用アダプタのセットは、超音波プローブ3に取り付ける上記本発明に係る眼球観察用のアダプタ1を複数備えるセットであって、超音波プローブ3の種類に対応した寸法形状のアダプタ1を複数備える、又は、複数の診断部位に対応した測定側開口部13又は接触媒体収容部12を有するアダプタ1を複数備える。
【0042】
超音波プローブ3の種類に対応した寸法形状のアダプタ1を複数備えるセットとすれば、例えばプローブヘッド部32の形状が平面状である場合や湾曲状又は曲面状である場合やヘッド幅(X方向の長さ)が広い場合やヘッドの厚さ(Y方向の長さ)が異なる場合のように複数の超音波プローブ3を既に保有している場合に、既存の超音波プローブ3に対応したアダプタを選択して装着するだけで眼球観察用に使用することができる。
【0043】
また、複数の診断部位に対応した測定側開口部13又は接触媒体収容部12を有するアダプタ1を複数備えるセットとすれば、例えば測定側開口部13や接触媒体収容部12を大きくしたり小さくしたり円形にしたり四角形にしたりしたアダプタセットとすることで、子供や大人や顔骨格形状に対応したアダプタを選択して装着するだけで眼球観察用に使用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 眼球観察用アダプタ
2 接触媒体
3 超音波プローブ
10 眼球観察用アダプタを取り付けた超音波プローブ
11 超音波プローブの収容部
11a 正面側の外壁面
11b 背面側の外壁面
11c 左側面側の外壁面
11d 右側面側の外壁面
11a’ 正面側の内壁面
11b’ 背面側の内壁面
11c’ 左側面側の内壁面
11d’ 右側面側の内壁面
12 接触媒体の収容部
12a 正面側の外壁面
12b 背面側の外壁面
12c 左側面側の外壁面
12d 右側面側の外壁面
12a’ 正面側の内壁面
12b’ 背面側の内壁面
12c’ 左側面側の内壁面
12d’ 右側面側の内壁面
13 測定する側の開口部(測定側開口部)
14 上部の外壁面
14’ 上部の内壁面
16 超音波プローブを挿入する側の開口部(挿入側開口部)
17 上部側端面
18 底部側端面
19 溝部
21 プローブヘッド部の収容空間
22 接触媒体の収容空間
31 プローブ本体部
32 プローブヘッド部
33 眼接触部(コンタクト部)
X コンタクト部(又はプローブヘッド)の幅方向
Y コンタクト部(又はプローブヘッド)の厚さ方向