(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114272
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】車両用緊急通報装置及び車両用緊急通報システム
(51)【国際特許分類】
G08B 25/04 20060101AFI20240816BHJP
H04M 11/04 20060101ALI20240816BHJP
G08B 25/10 20060101ALI20240816BHJP
G08B 21/02 20060101ALI20240816BHJP
B60R 21/00 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
G08B25/04 K
H04M11/04
G08B25/04 C
G08B25/10 D
G08B21/02
B60R21/00 340
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019935
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【弁理士】
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】網野 慶秋
【テーマコード(参考)】
5C086
5C087
5K201
【Fターム(参考)】
5C086AA22
5C086AA54
5C086BA22
5C086CA06
5C086CA15
5C086CA21
5C086CA22
5C086CA28
5C086CB36
5C086FA06
5C087AA37
5C087BB20
5C087DD03
5C087DD14
5C087FF01
5C087FF02
5C087GG08
5C087GG09
5C087GG70
5C087GG83
5K201BA03
5K201BA13
5K201CA01
5K201CA04
5K201CC04
5K201CC10
5K201EB06
5K201EC05
5K201ED04
5K201EF04
(57)【要約】
【課題】従来の車両用緊急通報システムでは、車両からの緊急通報時に送信されるデータ容量が大きく、緊急機関への要請の判断が遅れるという課題がある。
【解決手段】
本発明の車両用緊急通報装置10では、車両制御部11は、情報取得装置13にて取得した乗員情報等から乗員救助要否情報を生成する。そして、車両制御部11は、車両用通信装置12を介してコールセンタ22へ緊急通報を行う。コールセンタ22のオペレータは、乗員の意識が喪失状態においても、上記緊急通報に伴い送信された上記乗員救助要否情報を用いて救急機関23への出動要請の要否を精度良く判定することが可能となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両からコールセンタへと緊急通報を行う車両用通信装置と、
少なくとも前記車両に関する車両情報または前記車両の乗員に関する乗員情報のどちらか一方を取得する情報取得装置と、
前記車両用通信装置及び前記情報取得装置を制御すると共に、前記車両情報または前記乗員情報から前記乗員の救助が必要であるか否かを判定し、乗員救助要否情報を生成する車両制御部と、を備え、
前記車両と前記コールセンタとの間にて通話を開始した後、前記車両制御部は、前記車両用通信装置を制御し、前記乗員救助要否情報を前記コールセンタに送信することを特徴とする車両用緊急通報装置。
【請求項2】
前記乗員が、前記車両用通信装置を介して手動にて前記車両と前記コールセンタとの間にて通話を開始した後、前記車両制御部は、前記乗員の音声を取得しない場合には、前記乗員救助要否情報を生成し、前記コールセンタに送信することを特徴とする請求項1に記載の車両用緊急通報装置。
【請求項3】
前記情報取得装置は、前記車両の内部を撮影する撮像装置であり、
前記撮像装置は、前記乗員情報として前記乗員を撮影することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用緊急通報装置。
【請求項4】
車両からコールセンタへと緊急通報がなされると共に、前記緊急通報の状況に応じて前記コールセンタから救急機関へと出動要請を行う車両用緊急通報システムであって、
前記車両は、
前記車両から前記コールセンタへと前記緊急通報を行う車両用通信装置と
少なくとも前記車両に関する車両情報または前記車両の乗員に関する乗員情報のどちらか一方を取得する情報取得装置と、
前記車両用通信装置及び前記情報取得装置を制御すると共に、前記車両情報または前記乗員情報から前記乗員の救助が必要であるか否かを判定し、乗員救助要否情報を生成する車両制御部と、を備え、
前記コールセンタでは、前記車両用通信装置を介して前記車両との間にて通話を開始した後、前記乗員との会話が成立しない場合には、前記車両制御部が前記車両用通信装置を介して前記コールセンタへと送信した前記乗員救助要否情報から前記救急機関への前記出動要請の要否を判断することを特徴とする車両用緊急通報システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用緊急通報装置及び車両用緊急通報システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の緊急通報システムが開示されている。緊急通報システムは、車両に搭載される車載機と、車両の乗員の携帯電話機等の携帯端末と、上記携帯端末から緊急通報を受信するヘルプネットオペレーションセンタ(以下、「センタ」と呼ぶ。)と、センタから緊急通報を受け対処する消防署等の緊急連絡先と、から構成される。
【0003】
車載機は、車両の乗員の体調具合、例えば、体温、血圧、脈拍、脳波等を検出する。車載機は、その検出値と予め設定された閾値とを対比することで、上記乗員の体調具合がスレッシュオーバしているか、否かを判定する。そして、車載機は、上記乗員の体調具合にスレッシュオーバが発生している場合には、上記携帯端末を介してセンタへ自動にて緊急通報を行う。このとき、車載機は、緊急通報と同時に、上記乗員の体調に関する検出データもセンタへと送信する。
【0004】
センタでは、オペレータは、上記乗員と通話が出来ない場合には、送信された上記検出データを確認し、上記乗員の現状の体調具合を把握する。そして、オペレータは、その把握内容から緊急通報が必要であると判断した場合には、適切な緊急連絡先へと緊急通報を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した車両の緊急通報システムでは、車載機が、上記乗員の体調具合にスレッシュオーバが発生している場合には、上記携帯端末を介してセンタへ自動にて緊急通報を行う。そして、車載機は、上記緊急通報と合わせて、上記乗員の体調に関する検出データもセンタへと送信する。そのため、上記検出データのデータ容量が大きい場合には、センタでは、上記検出データのアップロードに時間が掛かる場合もある。そして、上記アップロードに時間が掛かることで、センタでは、乗員の最新の体調具合の判断を直ぐに行うことが出来ず、緊急通報が遅れてしまう恐れがあるという課題がある。
【0007】
また、上記検出データに乗員の顔情報等の画像や映像が含まれる場合、特に、車両の同乗者の上記画像等の場合には、上記同乗者から個人を特定可能な情報の車外への送信に対して了承が得られていない場合が多い。そのため、上記画像等を車両からセンタへ送信することは、個人情報保護の観点から好ましくないという課題がある。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、コールセンタでは車両からの緊急通報後に、車両からの乗員救助要否情報に従い救急機関への出動要請の要否の判断を可能にする車両用緊急通報装置及び車両用緊急通報システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態である車両用緊急通報装置は、車両からコールセンタへと緊急通報を行う車両用通信装置と、少なくとも前記車両に関する車両情報または前記車両の乗員に関する乗員情報のどちらか一方を取得する情報取得装置と、前記車両用通信装置及び前記情報取得装置を制御すると共に、前記車両情報または前記乗員情報から前記乗員の救助が必要であるか否かを判定し、乗員救助要否情報を生成する車両制御部と、を備え、前記車両と前記コールセンタとの間にて通話を開始した後、前記車両制御部は、前記車両用通信装置を制御し、前記乗員救助要否情報を前記コールセンタに送信することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の他の実施形態である車両用緊急通報システムは、車両からコールセンタへと緊急通報がなされると共に、前記緊急通報の状況に応じて前記コールセンタから救急機関へと出動要請を行う車両用緊急通報システムであって、前記車両は、前記車両から前記コールセンタへと前記緊急通報を行う車両用通信装置と、少なくとも前記車両に関する車両情報または前記車両の乗員に関する乗員情報のどちらか一方を取得する情報取得装置と、前記車両用通信装置及び前記情報取得装置を制御すると共に、前記車両情報または前記乗員情報から前記乗員の救助が必要であるか否かを判定し、乗員救助要否情報を生成する車両制御部と、を備え、前記コールセンタでは、前記車両用通信装置を介して前記車両との間にて通話を開始した後、前記乗員との会話が成立しない場合には、前記車両制御部が前記通信装置を介して前記コールセンタへと送信した前記乗員救助要否情報から前記救急機関への出動要請の要否を判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態である車両用緊急通報装置では、車両制御部は、情報取得装置にて取得した乗員情報等から乗員救助要否情報を生成する。そして、車両制御部は、車両用通信装置を介してコールセンタへ緊急通報を行う。コールセンタのオペレータは、乗員の意識が喪失状態においても、上記緊急通報に伴い送信された上記乗員救助要否情報を用いて救急機関への出動要請の要否を精度良く判定することが可能となる。
【0012】
また、本発明の他の実施形態である車両用緊急通報システムは、車両用緊急通報装置を備える車両と、車両から緊急通報を受けるコールセンタと、コールセンタから出動要請を受ける救急機関と、から構成される。そして、コールセンタのオペレータは、乗員の意識が喪失状態においても、上記乗員救助要否情報を用いて救急機関の出動要請の要否を精度良く判定することが可能となる。その結果、救急機関では、コールセンタにていたずら等の対処不要な出動要請が除外されることで、本当に救助が必要な車両に対して救助に向かうことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態である車両用緊急通報装置を説明するブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態である車両用緊急通報装置の乗員の手動による緊急通報の制御方法を説明するフローチャートである。
【
図3】本発明の一実施形態である車両用緊急通報装置の車両の自動による緊急通報の制御方法を説明するフローチャートである。
【
図4】本発明の他の実施形態である車両用緊急通報システムを説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る車両用緊急通報装置10を図面に基づき詳細に説明する。尚、本実施形態の説明の際には、同一の構成要素には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。
【0015】
図1は、本実施形態の車両用緊急通報装置10を説明するブロック図である。
図2は、本実施形態の車両用緊急通報装置10を用いた乗員の手動による緊急通報の制御方法を説明するフローチャートである。
図3は、本実施形態の車両用緊急通報装置10を用いた車両制御部11による自動の緊急通報の制御方法を説明するフローチャートである。
【0016】
車両用緊急通報装置10は、主に、車両制御部11と、乗員の体調不良時等にコールセンタ22(
図4参照)へと緊急通報を行う車両用通信装置12と、乗員の生体情報等を取得する情報取得装置13と、を備える。そして、車両用通信装置12は、車両制御部11により制御され、主に、ネットワーク通信部14と、GPSデコーダ15と、アンプ部16と、ユーザユニットインターフェイス17と、を備える。
【0017】
車両制御部11は、CPU(CENTRAL PROCESSING UNIT)、ROM(READ ONLY MEMORY)、RAM(RANDOM ACCESS MEMORY)等を有して構成される。そして、車両制御部11は、車両用緊急通報装置10、車両用通信装置12やエンジン等の駆動装置(図示せず)等を制御するための各種の演算等を実行する一または複数のプロセッサを有する電子制御ユニット(ECU)である。
【0018】
また、車両制御部11は、記憶部(図示せず)を有し、記憶部は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-only Memory)等の不揮発性メモリにて構成される。そして、記憶部には、車両21(
図4参照)の制御に必要な各種データや上記一または複数のプロセッサによって実行可能な一または複数のプログラムが記憶される。
【0019】
ネットワーク通信部14は、車両21(
図4参照)に配設される主アンテナ31及び副アンテナ32を用いた公知のテレマティクス通信システムによるデータ通信のための処理を行う。テレマティクス通信システムは、個々の車両21とサービスプロバイダ(図示せず)との間の通信により、個々の車両21に対して緊急通報等の通信サービスを提供するシステムである。
【0020】
ここで、本実施形態の緊急通報とは、車両21の乗員に体調不良が発生した場合や車両21に衝突事故が発生した場合等、乗員による手動操作あるいは車両21による自動操作により、コールセンタ22(
図4参照)に対して通話回線を開いてオペレータとの通話を可能状態とする通報やコールセンタ22に対して車両21の現在位置情報や乗員救助要否情報等を送信する通報のことをいう。
【0021】
GPSデコーダ15は、GPSアンテナ33にて受信した信号のデコードを行い、車両21の現在位置情報等を取得する。そして、上記現在位置情報は、車両制御部11へと送信され、車両制御部11の記憶部に記憶される。
【0022】
アンプ部16は、車両制御部11から入力される通話音声等の音声データを音声信号へと変換処理し、スピーカー34L,34Rから音声として出力させる。例えば、車両制御部11が、乗員救助要請情報を生成する際に乗員の意識状態を確認するために、アンプ部16を制御し、スピーカー34L,34Rから確認用の音声を出力させる。
【0023】
ユーザユニットインターフェイス17は、乗員対応コンソール35と車両制御部11との間の入出力を行う。乗員対応コンソール35としては、例えば、マイクロフォン36や緊急通報ボタン37等が車両21の車室内に配設される。そして、ユーザユニットインターフェイス17は、マイクロフォン36にて集音した音声信号を音声データへと変換処理し、車両制御部11へと入力する。また、乗員により緊急通報ボタン37が押下された場合には、ユーザユニットインターフェイス17は、緊急通報ボタン37の操作情報信号を車両制御部11へと入力する。
【0024】
情報取得装置13は、車両21の乗員の健康状態等を把握するための乗員情報を取得するための装置である。あるいは、情報取得装置13は、車両21の走行状態等を把握するための車両情報を取得するための装置である。
【0025】
情報取得装置13として乗員情報を取得する場合には、例えば、車両21の車室内に配設される撮像装置やハンドル操作を検知するハンドルの検知装置等が用いられる。そして、撮像装置は、例えば、CCDやCMOS等のイメージセンサを有するカメラモジュールである。撮像装置は、車内ネットワークを介して車両制御部11と接続する。また、ハンドルの検知装置は、ドライバによるハンドルの把持状況やハンドルの操作状況を検知するための圧力センサや操舵角センサ等を有する。同様に、ハンドルの検知装置は、車内ネットワークを介して車両制御部11と接続する。
【0026】
情報取得装置13は、上記撮像装置により乗員を撮影することで、乗員の目の開度、頭の角度、虹彩等の乗員情報を取得し、車両制御部11へと送信する。その後、乗員情報は、車両制御部11の記憶部に記憶される。
【0027】
情報取得装置13として車両情報を取得する場合には、例えば、車両21の衝突を検出する衝突検出装置が用いられる。そして、衝突検出装置は、車両21の衝突を検出する圧力センサ、加速度センサ等の各種センサ等を有する。衝突検出装置は、車内ネットワークを介して車両制御部11と接続する。
【0028】
情報取得装置13は、上記衝突検出装置により車両21の衝突を検出することで、車両21の走行が可能か否か等の車両情報を取得し、車両制御部11へと送信する。その後、車両情報は、車両制御部11の記憶部に記憶される。
【0029】
尚、近年、車両21には、ドライバの顔を認識してドライバの脇見運転の警報や眠気、居眠り時の警報を行うドライバモニタリングシステム(以下、「DMS」と呼ぶ。)が搭載されている。DMSに用いられる撮像装置は、例えば、ステアリングの内側に配設され、ドライバの顔を撮影する。そして、情報取得装置13として、DMSを用いる場合でも良い。
【0030】
次に、
図2を用いて、本実施形態の車両用緊急通報装置10を用いた乗員の手動による緊急通報の制御方法について説明する。尚、本実施形態では、車両21の乗員としてドライバの場合について説明するが、ドライバに限定するものではない。車両21の乗員としては、助手席や後部座席等の車両21の同乗者の場合でも良い。
【0031】
図2に示すように、ステップS10では、ドライバが車両21に搭乗し、イグニッションスイッチ(図示せず)を押下すると、車両21は、イグニッション・オン状態となる。そして、ステップS11では、上記イグニッションスイッチの押下により、車両21の車両用緊急通報装置10もオン状態となる。
【0032】
ステップS12では、車両制御部11は、エンジン等の車両駆動機構(図示せず)を始動させ、ドライバは、ステアリング等を操作し、車両21の走行を開始する。
【0033】
ステップS13では、車両21の走行中に、ドライバの体調が急に悪化し、ドライバが自らのスマートフォン等にて消防署への出動要請の電話が難しい場合には、ドライバは手動にて車両21に搭載された緊急通報ボタン37を押下する。
【0034】
ステップS14では、車両制御部11は、ネットワーク通信部14を制御し、コールセンタ22へと緊急通報を行う。上述したように、車両21には、予め、コールセンタ22の連絡先が登録されており、緊急通報ボタン37の押下に連動して、車両21からコールセンタ22へと電話を掛ける。
【0035】
ステップS15では、車両制御部11は、ネットワーク通信部14を制御し、手動通報であること、自車両の位置情報、車両ナンバ、車種等の自車両に関する情報をコールセンタ22へと送信する。上述したように、車両制御部11は、緊急通報ボタン37の押下を検出することで、GPSデコーダ15を制御し、自車両の位置情報を取得し、記憶部へと記憶する。尚、車両制御部11の記憶部には、予め、車両ナンバ、車種等、緊急通報時に必要な自車両に関する情報が記憶されている。また、コールセンタ22のサーバ装置に、上記自車両に関する情報が予め記憶されている場合でも良い。
【0036】
ステップS16では、コールセンタ22にて、車両21からの緊急通報である電話を受けることで、コールセンタ22のオペレータは、車両21のドライバとの通話を開始する。
【0037】
ステップS17では、オペレータは、車両21のドライバに対して呼び掛けを行う。ステップS17のYESでは、オペレータとドライバとの会話が成立する場合には、オペレータは、ドライバから緊急通報の内容をヒアリングし、後述するステップS21へと移行する。
【0038】
一方、ステップS17のNOでは、ドライバがオペレータの呼びかけに対して応答せず、オペレータとドライバとの会話が成立しない場合には、ステップS18へと移行する。
【0039】
ここで、車両制御部11は、ユーザユニットインターフェイス17を制御し、コールセンタ22との通話を開始後、マイクロフォン36からドライバの音声入力を検出しない場合には、緊急通報後直ぐにドライバが意識を喪失していると判断する。
【0040】
ステップS18では、車両制御部11は情報取得装置13を制御し、車両21のドライバの乗員情報を取得する。上述したように、情報取得装置13としては、例えば、DMSの撮像装置が用いられる。そして、情報取得装置13は、ドライバの頭部や顔を撮影することで、例えば、ドライバの目の開度、頭の角度、虹彩等の乗員情報を取得し、車両制御部11へと送信する。その後、車両制御部11は、乗員情報を記憶部に記憶する。
【0041】
ステップS19では、車両制御部11は、記憶部に記憶された乗員情報と予め設定された閾値とを対比し、ドライバの救助が必要か、否かを判定する。乗員情報がドライバの目の開度であり、ドライバの目の開度が全開状態の40%以下の場合には、ドライバに意識障害が発生している蓋然性が高く、ドライバの救助が必要であると判断する。
【0042】
また、乗員情報がドライバの頭の角度であり、ドライバの頭の開度が垂直方向から20度以上傾斜している場合には、ドライバは車両21の前方を目視出来ず、ドライバに意識障害が発生している蓋然性が高く、ドライバの救助が必要であると判断する。
【0043】
車両制御部11は、ドライバの救助が必要であると判定した場合には、乗員救助要否情報として「1」のフラグを生成する。一方、車両制御部11は、ドライバの救助が不要であると判定した場合には、乗員救助要否情報として「0」のフラグを生成する。その後、車両制御部11は、記憶部に上記フラグを記憶する。
【0044】
ステップS20では、車両制御部11は、ネットワーク通信部14を制御し、生成した上記フラグをコールセンタ22へと送信する。上記フラグは、「1」または「0」の1ビットデータであり、膨大な送信時間を要することなく、オペレータは、上記緊急通報後、早いタイミングに上記フラグを確認することが可能となる。また、上記フラグには、ドライバや同乗者を特定する画像や映像が含まれることがなく、個人情報保護の観点からも好ましい。
【0045】
ステップS21では、コールセンタ22のオペレータは、ドライバとの会話が不能の場合でも、車両21から送信される上記フラグの内容に応じて、救急機関23への出動要請の要否を判定する。オペレータは、上記フラグが「1」の場合には、ドライバは意識喪失している蓋然性が高く、消防署へと出動要請の通報を行う。このとき、オペレータは、ドライバは意識喪失している蓋然性が高いことと共に、ステップS15にて取得した車両21の位置情報等も合わせて通報する。
【0046】
一方、上記フラグが「0」の場合には、ドライバにより緊急通報ボタン37は押下されたが、ドライバによるいたずらの可能性が高く、オペレータは、消防署への出動要請の通報は不要であると判断し、出動要請の通報は行わない。
【0047】
尚、ステップS17のYESにおいて、オペレータは、ドライバとの会話が可能な場合には、ドライバから直接健康状態等を確認し、救急機関23への出動要請の要否を判断する。
【0048】
ステップS22では、オペレータが、緊急通報による電話を切ることで、緊急通報が終了する。その後、ステップS23では、ドライバは、目的地に到着し、車両21を駐車場等に停車させ、イグニッションスイッチを押下すると、車両21は、イグニッション・オフ状態となる。
【0049】
本実施形態の車両用緊急通報装置10では、ドライバの手動により緊急通報ボタン37が押下された後、車両制御部11が、情報取得装置13を制御し、ドライバの目の開度等の乗員情報を取得する。そして、車両制御部11は、上記乗員情報から乗員救助要否情報を生成する。この制御方法により、緊急通報ボタン37が押下された直後のドライバの意識状態に基づき乗員救助要否情報が生成される。その結果、コールセンタ22のオペレータは、ドライバの意識が喪失状態においても、救急機関23の出動要請の要否を精度良く判定することが可能となる。
【0050】
尚、本実施形態では、車両制御部11は、緊急通報ボタン37が押下された後に、乗員救助要否情報を生成する場合に限定するものではない。例えば、車両制御部11は、車両21の走行開始後、緊急通報ボタン37が押下される前に、情報取得装置13により取得された乗員情報に基づき、乗員救助要否情報を生成する場合でも良い。この場合には、車両制御部11は、車両21の走行中に繰り返して乗員救助要否情報を生成し、記憶部に記憶させる。そして、車両制御部11は、緊急通報ボタン37が押下された後に、最新の乗員救助要否情報を車両21の位置情報等と合わせてコールセンタ22へと送信する。
【0051】
次に、
図3を用いて、本実施形態の車両用緊急通報装置10を用いた車両制御部11の自動による緊急通報の制御方法について説明する。尚、本実施形態では、車両21の乗員としてドライバの場合について説明するが、ドライバに限定するものではない。車両21の乗員としては、助手席や後部座席等の車両21の同乗者の場合でも良い。
【0052】
図3に示すように、ステップS30では、ドライバが車両21に搭乗し、イグニッションスイッチ(図示せず)を押下すると、車両21は、イグニッション・オン状態となる。そして、ステップS31では、上記イグニッションスイッチの押下により、車両21の車両用緊急通報装置10もオン状態となる。
【0053】
ステップS32では、車両制御部11は、エンジン等の車両駆動機構(図示せず)を始動させ、ドライバは、ステアリング等を操作し、車両21の走行を開始する。そして、ステップS33では、ドライバは、例えば、車線中央維持機能及び先行車追従操舵機能を設定し、車両21を走行させる。
【0054】
ステップS34では、車両21の走行中において、車両制御部11は、ステアリングの圧力センサや操舵角センサからの入力信号を検出し、ドライバがステアリングを把持しているか、否かを判定する。
【0055】
ステップS34のYESでは、車両制御部11は、ステアリングからの上記入力信号を一定時間に渡り検出しない場合には、ドライバがステアリングを把持していないと判定し、ステップS35へと移行する。
【0056】
一方、ステップS34のNOでは、車両制御部11は、ステアリングからの上記入力信号を検出した場合には、ドライバがステアリングを把持していると判定する。そして、車両制御部11は、引き続きステアリングからの上記入力信号を監視する。
【0057】
ステップS35では、車両制御部11は、アンプ部16を制御し、ドライバに対してステアリングを把持し、自ら車両21の操作を行うことを警告する。そして、ステップS36では、車両制御部11は、再び、ステアリングからの上記入力信号を検出し、ドライバがステアリングを把持しているか、否かを判定する。
【0058】
ステップS36のNOでは、車両制御部11は、ステアリングからの上記入力信号を一定時間に渡り検出しない場合には、ドライバが意識を喪失していると判定し、ステップS37へと移行する。
【0059】
一方、ステップS36のYESでは、車両制御部11は、ステアリングからの上記入力信号を検出した場合には、ドライバがステアリングを把持していると判定する。そして、車両制御部11は、引き続きステアリングからの上記入力信号を監視する。
【0060】
ステップS37では、車両制御部11は、上記車両駆動機構を制御し、車両21のホーン及びハザードを鳴動させながら、車両21を同一車線内に緊急停車させる。また、車両制御部11は、乗員救助要否情報として「1」のフラグを生成する。その後、車両制御部11は、記憶部に上記フラグ「1」を記憶する。
【0061】
ステップS38では、車両制御部11は、ネットワーク通信部14を制御し、コールセンタ22へと自動にて緊急通報を行う。上述したように、車両21には、予め、コールセンタ22の連絡先が登録されており、車両21からコールセンタ22へと電話を掛ける。
【0062】
ステップS39では、車両制御部11は、ネットワーク通信部14を制御し、上記フラグ「1」と合わせて、自動通報であること、自車両の位置情報、車両ナンバ、車種等の自車両に関する情報をコールセンタ22へと送信する。上述したように、車両制御部11は、GPSデコーダ15を制御し、自車両の位置情報を取得し、記憶部へと記憶する。
【0063】
ステップS40では、コールセンタ22にて、車両21からの緊急通報である電話を受けることで、コールセンタ22のオペレータは、車両21のドライバとの通話を開始する。
【0064】
ステップS41では、オペレータは、車両21のドライバに対して呼び掛けを行う。ステップS41のYESでは、ドライバの意識が回復し、オペレータとドライバとの会話が成立する場合には、ステップS42にて、オペレータは、ドライバから緊急通報の内容をヒアリングし、ステップS43へと移行する。
【0065】
ステップS43では、オペレータは、ドライバとの会話が可能な場合には、ドライバから直接健康状態等を確認し、救急機関23への出動要請の要否を判断する。一方、コールセンタ22のオペレータは、ドライバとの会話が不能であり、車両21から上記フラグ「1」が送信されてきた場合には、ドライバは意識喪失している蓋然性が高く、消防署へと出動要請の通報を行う。このとき、オペレータは、ドライバは意識喪失している蓋然性が高いことと共に、ステップS39にて取得した車両21の位置情報等も合わせて通報する。
【0066】
ステップS44では、オペレータが、緊急通報による電話を切ることで、緊急通報が終了する。その後、ステップS45では、ドライバが、自ら運転が可能な場合には、目的地まで車両21を運転し、車両21を駐車場等に停車させ、イグニッションスイッチを押下すると、車両21は、イグニッション・オフ状態となる。一方、ドライバが、緊急搬送された場合には、救助隊等が、車両21を安全な路肩等に移動させ、車両21のイグニッションスイッチを押下すると、車両21は、イグニッション・オフ状態となる。
【0067】
本実施形態の車両用緊急通報装置10では、車両21の自動による緊急通報が成される場合においても、車両制御部11は、乗員救助要否情報を生成し、コールセンタ22へと乗員救助要否情報を送信する。この制御方法により、コールセンタ22のオペレータは、ドライバの意識が喪失状態においても、救急機関23の出動要請の要否を精度良く判定することが可能となる。
【0068】
次に、本発明の他の実施形態に係る車両用緊急通報システム20を図面に基づき詳細に説明する。尚、本実施形態の説明の際には、
図1から
図3を用いて説明した車両用緊急通報装置10と同一の構成要素には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。そして、
図4は、本実施形態である車両用緊急通報システム20を説明する概略図である。
【0069】
図4に示すように、車両用緊急通報システム20は、車両用緊急通報装置10を備える車両21と、車両21から緊急通報を受けるコールセンタ22と、コールセンタ22から出動要請を受ける救急機関23と、から構成される。
【0070】
図1から
図3を用いて上述したように、車両21の走行中に乗員であるドライバの体調が急変し、自ら救急機関23への出動要請の通報が難しい場合に、ドライバが、手動にて車両21の緊急通報ボタン37を押下することで、車両21からコールセンタ22へと緊急通報が行われる。
【0071】
コールセンタ22では、オペレータが、緊急通報を受けると共に、車両21のドライバとの通話を開始するが、ドライバとの会話が成立しない場合には、
図2の制御方法にて説明したように、車両21の車両制御部11が、乗員救助要否情報を生成し、コールセンタ22へと送信する。そして、オペレータは、ドライバとの会話が成立しない場合においても、上記乗員救助要否情報から救急機関23への出動要請の通報を判断することが可能となる。
【0072】
救急機関23では、コールセンタ22にていたずら等の対処不要な出動要請の通報が除外されることで、本当に救助が必要な車両21に対して救助に向かうことが可能となる。
【0073】
尚、本実施形態の車両用緊急通報装置10及び車両用緊急通報システム20では、コールセンタ22から救急機関23である消防署に対して出動要請の通報を行う場合について説明したが、この場合に限定するものではない。例えば、車両21が、他車両からあおり運転等を受けている場合には、救急機関23である消防署の代わりに警察署に対して出動要請の通報を行う場合でも良い。
【0074】
また、本実施形態の車両用緊急通報装置10及び車両用緊急通報システム20では、車両制御部11は、情報取得装置13にて取得した乗員情報から乗員救助要否情報を生成する場合について説明したが、この場合に限定するものではない。例えば、車両制御部11は、情報取得装置13にて取得した車両情報から乗員救助要否情報を生成する場合でも良い。この場合でも、コールセンタ22のオペレータは、車両21の乗員との会話が成立しない場合でも、上記乗員救助要否情報を用いて救急機関23の出動要請の通報の要否を判断することが出来る。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲にて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0075】
10 車両用緊急通報装置
11 車両制御部
12 車両用通信装置
13 情報取得装置
14 ネットワーク通信部
15 GPSデコーダ
16 アンプ部
17 ユーザユニットインターフェイス
20 車両用緊急通報システム
21 車両
22 コールセンタ
23 救急機関
36 マイクロフォン
37 緊急通報ボタン