(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114274
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】高耐性包材用積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 15/085 20060101AFI20240816BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
B32B15/085 A
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019938
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】増田 勇作
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BB66
3E086BB85
4F100AB01C
4F100AB10C
4F100AB33C
4F100AK04B
4F100AK06B
4F100AK06D
4F100AK24D
4F100AK42A
4F100AK63E
4F100AL07D
4F100AT00A
4F100BA05
4F100BA07
4F100CB03E
4F100EH17B
4F100EH20D
4F100GB15
4F100JA04E
4F100JA06D
4F100JA13D
4F100JK04
4F100YY00E
(57)【要約】
【課題】優れた耐内容物性を発現する積層体を提供すること。また、積層体に使用されるポリエチレンの伸びを抑制することによってカット性を向上させ、腰感があり折れ曲がりにくく、柔軟性に優れることでシワの発生を抑制する積層体を提供することを課題とする。
【解決手段】表層側から、基材層、溶融押出し層、金属層、溶融共押出し層、シーラント層の順に積層される積層体であって、
前記溶融押出し層は、基材層と金属層とでサンドイッチラミネートされており、
前記溶融共押出し層は、金属層側に酸変性ポリエチレン層が、シーラント層側に低密度ポリエチレン層が配置されるように溶融共押出しされることにより、金属層とシーラント層とでサンドイッチラミネートされており、
前記積層体は、50mN以上150mN以下の腰強度を有することを特徴とする高耐性包材用積層体である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層側から、基材層、溶融押出し層、金属層、溶融共押出し層、シーラント層の順に積層される積層体であって、
前記溶融押出し層は低密度ポリエチレン層が溶融押出しされることにより、基材層と金属層とでサンドイッチラミネートされており、
前記溶融共押出し層は、金属層側に酸変性ポリエチレン層が、シーラント層側に低密度ポリエチレン層が配置されるように溶融共押出しされることにより、金属層とシーラント層とでサンドイッチラミネートされており、
前記積層体は、ループ長を70mm、押込み長を10mmとしたループスティフネス測定において、50mN以上150mN以下の腰強度を有することを特徴とする高耐性包材用積層体。
【請求項2】
前記シーラント層は融点115℃以上の直鎖状低密度ポリエチレンであることを特徴とする請求項1に記載の高耐性包材用積層体。
【請求項3】
前記酸変性ポリエチレン層が、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンであることを特徴とする請求項1または2に記載の高耐性包材用積層体。
【請求項4】
前記無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンと低密度ポリエチレンの溶融共押出し層は、層厚比が25:75~75:25であることを特徴とする請求項3に記載の高耐性包材用積層体。
【請求項5】
前記無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンの無水マレイン酸グラフト率が0.1wt%以上1.0wt%以下であり、密度が0.86g/cm3以上0.92g/cm3以下であり、メルトフローレートが8.5以上12.0以下であることを特徴とする請求項3に記載の高耐性包材用積層体。
【請求項6】
前記低密度ポリエチレンが、密度が0.910g/cm3以上0.930g/cm3以下であり、メルトフローレートが6.0以上8.5以下であることを特徴とする請求項1に記載の高耐性包材用積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包材へのアタックが強いヘアカラー剤、香料、次亜塩素酸塩、除草剤等の保存液に対して、金属層の腐食やデラミネーションを抑制する優れた耐内容物性を発現し、さらに生産性に優れた高耐性包材用積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品等の包装に用いられる包装材料としては、一般に、内容物の変質や腐敗等を抑制し、それらの機能や性質を保持するために、水蒸気、酸素、その他の内容物を変質させる気体の進入を遮断するガスバリア性を有する積層フィルムが用いられている。
【0003】
このような積層フィルムにおいては、耐性包材の用途であっても、接着層を形成する接着剤として一般的にウレタン2液硬化タイプのドライラミネート用接着剤が用いられる。しかし、包装材料により包装される内容物には、アルカリ性物質、香料、界面活性剤、高沸点有機溶剤などを含有するものが多くあり、これらの内容物を包装すると、アルミニウム箔などの金属層とシーラント層間のドライラミネート用接着剤層に悪影響を及ぼし、積層体におけるラミネート強度の低下を招き、デラミネーション(剥離)が引き起こされるという問題があった。
【0004】
このような状況に対応するため、ラミネート加工に使用される接着剤の改良が種々行われており、アルコール耐性のあるものなど提案されている(特許文献1参照)。また、接着層として、幅広い種類の透明バリアフィルムやアルミニウム箔との接着性に優れ、耐内容物性に優れたものとして無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンを使った積層フィルムが提案されている(特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンの接着強度を発現させるためには高温での熱処理が必要となるが、高温での熱処理によって、接着層の柔軟性が損なわれてしまう。そのため、積層体にシワが入ってしまうという問題がある。
【0006】
一方、アルミニウム箔などの金属箔は、ヘアカラー剤のような高い酸性もしくはアルカリ性の内容物によって腐食して、細かなピンホールを生じることが知られている。ピンホールを生じるとバリア性が劣化してその部分から酸素が侵入し、ヘアカラー剤に斑点状の変色が発生する。そのため、アルミニウム箔などの金属箔に化成処理を施すことが行われている。
【0007】
例えば特許文献3には、ヘアカラー剤用包装材として、アルミニウム箔とシーラントフィルムを熱可塑性樹脂の押し出しにより接着することによって、ヘアカラー剤によるデラミネーションを防止し、かつアルミニウム箔表面にリン酸クロメート処理などの化成処理を行うことによって腐食防止を行うものが開示されている。
【0008】
また、内容物が上述したようなヘアカラー剤などの液体の場合、耐内容物性が求められる他に生産性に優れた積層体が求められている。例えば、連続して袋を作製しながら内容物を充填する方法が採用されているピロー包装袋に用いられる積層体において、内容物がヘアカラー剤などの高い酸性もしくはアルカリ性の液体の場合、シーラント層に一般的なポリエチレンを用いたドライラミネーション仕様の接着剤では、樹脂が溶け出しやすく、積層体が柔らかいため(ループスティフネス強度が低く)充填機および製袋機において、充填袋ごとに切り離す際にポリエチレンが伸びしてしまうためカット性が悪く、搬送コン
ベアでの折れ曲がりによる搬送不良が生じてしまう。また、逆に積層体が硬すぎるとシワが発生する虞がある。
【0009】
したがって、樹脂が溶け出しにくくし、ポリエチレンの伸びを抑制することによってカット性に優れ、腰感があり折れ曲がりにくく、さらに柔軟性があってシワになりにくい、生産性に優れた積層体が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第5915710号公報
【特許文献2】特開2020-049896号公報
【特許文献3】特許第4945871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述のような背景技術の問題を鑑みて、
包材へのアタックが強いヘアカラー剤、香料、次亜塩素酸塩、除草剤等の保存液に対して、アルミニウム箔の腐食やデラミネーションを抑制する、優れた耐内容物性を発現する積層体を提供することを課題とする。また、積層体に使用される無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン樹脂を溶け出しにくくし、ポリエチレンの伸びを抑制することによってカット性を向上させ、腰感があり折れ曲がりにくく、ドライラミネーション仕様よりも柔軟性に優れることでシワの発生を抑制する積層体を作製することを課題とする。
を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するための手段として、本発明の第1の態様は、
表層側から、基材層、溶融押出し層、金属層、溶融共押出し層、シーラント層の順に積層される積層体であって、
前記溶融押出し層は低密度ポリエチレン層が溶融押出しされることにより、基材層と金属層とでサンドイッチラミネートされており、
前記溶融共押出し層は、金属層側に酸変性ポリエチレン層が、シーラント層側に低密度ポリエチレン層が配置されるように溶融共押出しされることにより、金属層とシーラント層とでサンドイッチラミネートされており、
前記積層体は、ループ長を70mm、押込み長を10mmとしたループスティフネス測定において、50mN以上150mN以下の腰強度を有することを特徴とする高耐性包材用積層体である。
【0013】
内容物に影響を受ける金属層とシーラント層の間の接着層として、酸変性ポリエチレンと低密度ポリエチレンを使用し、金属層側に酸変性ポリエチレン層が配置される様にすることで耐内容物性に優れ、金属層の腐食が抑制される。また、接着層のシーラント層側に低密度ポリエチレン層を配置することで、基材層、金属層、シーラント層間をポリエチレンで挟んだダブルサンドイッチ構成となり、腰感があり折れ曲がりにくく、ドライラミネーション仕様よりも柔軟性に優れシワの発生を抑制する高耐性包材用積層体を得ることができる。
【0014】
また、フィルム状の部材の腰強度は、ループスティフネス測定で測ることができる(ループスティフネス測定方法については後述する)。上記高耐性包材用積層体において、ループ長を70mm、押込み長を10mmとしたループスティフネス測定において、50mN以上150mN以下の腰強度を有してもよい。
【0015】
また、本発明の第2の態様は、
前記シーラント層は融点115℃以上の直鎖状低密度ポリエチレンあってよい。耐熱性を有するシーラント層を選定することで、ヒートシール熱によるポリエチレンの伸びを抑制し、カット性を向上させることができる。
【0016】
また、本発明の第3の態様は、
前記酸変性ポリエチレン層が、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンであってよい。無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンを金属層側に配置される様にすることで耐内容物性および金属層の腐食が抑制される。
【0017】
また、本発明の第4の態様は、
前記無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンと低密度ポリエチレンの溶融共押出し層が、層厚比25:75~75:25であってよい。無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンが少ないと接着性が不安定となる虞がある。また、低密度ポリエチレンを混ぜることは、コスト面で有利である。
【0018】
また、本発明の第5の態様は、
前記無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンの無水マレイン酸グラフト率が0.1wt%以上1.0wt%以下であり、密度が0.86g/cm3以上0.92g/cm3以下であり、メルトフローレートが8.5以上12.0以下であるものとすると好ましい。接着層の成膜時に、より平滑性の高い成膜が行える。
【0019】
また、本発明の第6の態様は、
前記低密度ポリエチレンが、密度が0.910g/cm3以上0.930g/cm3以下であり、メルトフローレートが6.0以上8.5以下であるものとすると好ましい。
【0020】
前記無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン層を示差走査熱量測定(DSC)において90℃~100℃に第1融点ピークを示し、かつ、50℃から低温側に20℃以上連続した第2融点ピークを示す成分を含むものとすると好ましい。より低温から接着強度が発現し、熱処理時のシワの発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、耐内容物性が高く、ヘアカラー剤、次亜塩素酸水や香料など包材へのアタックが強い内容物用の包材に適用できる高耐性包材用積層体が得られる。また、耐熱性(融点が高い)を有し、ヒートシール時の熱で樹脂が溶けにくいシーラント層を選定することで、充填時のポリエチレンの伸びを抑制し、カット性を向上させることができる。また、溶融押出し層をダブルサンドイッチ構成にすることで適切な腰強度を持たせ、搬送コンベアでの折れ曲がりやヒートシール時のシワを抑制することもでき、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の高耐性包材用積層体の一形態の断面模式図である。
【
図2】無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンのDSC測定例を示す図である。
【
図3】ループスティフネス測定方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0024】
図1は、本発明の高耐性包材用積層体の一形態の断面模式図である。本実施形態の積層
体1は、少なくとも基材層2、溶融押出し層4、金属層5、酸変性ポリエチレン層6と低密度ポリエチレン層7を含む溶融共押出し層9、シーラント層8が順次積層された構成である。基材層2には印刷インキ層3を設けることができる。
【0025】
基材層2を形成する樹脂としては、この種の包装材料に通常用いられるポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等を用いれば良く、例えばポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン-2、6-ナフタレート、ポリブチレンテレフタレートやこれらの共重合体等のポリエステル系樹脂が挙げられる。
【0026】
基材層2の厚みは特に限定されるものではないが、通常は二軸延伸することによって得られる延伸フィルムが用いられ、9μm~50μmの範囲の厚みのものが望ましい。厚みは、積層体の用途によって決めることができる。
【0027】
印刷インキ層3は必須ではないが、積層体やパウチに情報を表示するために必要な場合などには、特に限定するものではないが、公知のグラビアインキ等により印刷して設けることができる。
【0028】
金属層5は、金属箔からなる層であり、金属箔の材料としては、アルミニウム、銅、鉄、ステンレス等が使用できるが、なかでも、汎用性、フレキシブル性の観点からアルミニウムまたはアルミニウム合金が特に望ましい。また、金属箔は、薄いほどピンホールが発生しやすいため、必要なバリア性を確保するためには厚さが5μm~50μmであることが望ましい。
【0029】
シーラント層8を構成する樹脂としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂(EP)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、及びそれらの金属架橋物等が挙げられる。なかでも、融点115℃以上の耐熱性を有する直鎖状低密度ポリエチレンが望ましい。耐熱性を有するシーラント層8を選定することで、ヒートシール熱によるポリエチレンの伸びを抑制し、カット性を向上させることができる。
【0030】
溶融押出し層4は、低密度ポリエチレン層が溶融押出しされることにより、基材層2と金属層5とでサンドイッチラミネートされており、密度が0.910g/cm3以上0.930g/cm3以下であり、メルトフローレートが6.0以上8.5以下であると好ましい。また、溶融共押出し層9は、金属層5側に酸変性ポリエチレン層6が、シーラント層8側に低密度ポリエチレン層7が配置されるように溶融共押出しされており、金属層5とシーラント層8とでサンドイッチラミネートされている。このように、溶融押出し層4と溶融共押出し層9は、基材層2と金属層5とシーラント層8とでダブルサンドイッチ構成で接着されている。
【0031】
ここで、溶融共押出し層9は、金属層側に酸変性ポリエチレン層が配置される様にすることで金属層と接着層の接着強度が向上し、且つ内容物浸透によるアタックによるデラミネーション、金属層の腐食によるデラミネーションを抑制する。また、シーラント層側に低密度ポリエチレン層を配置することで、フィルムとフィルムとの間に溶融したポリエチレンをダブルで挟むダブルサンドイッチ構成とすることにより、腰感があり折れ曲がりにくく、ドライラミネーション仕様よりも柔軟性に優れることで、シワの発生を抑制する高耐性包材用積層体を得ることができる。
【0032】
無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンは、酸変性ポリエチレンの一つとして本発明
に好ましく用いられる。無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンは、ポリエチレンを無水マレイン酸によりグラフト変性したポリエチレンである。そして本発明に使用される無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンは、
図2に示す様に、示差走査熱量測定(DSC測定)を行ったとき、90℃~100℃に第1融点ピークを示し、かつ、50℃から低温側に20℃以上連続した第2融点ピークを示す成分を含むものとすると好ましい。
【0033】
低温側に第2融点ピークを有するものとすることで、低温から接着性が発現するため、熱処理時のシワの発生を抑制することができる。
【0034】
また、無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンの無水マレイン酸グラフト率は、0.1wt%以上1.0wt%以下であると好ましい。接着層の成膜時に、より平滑性の高い成膜が行える。
【0035】
また溶融共押出し層9における無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンと低密度ポリエチレンの溶融共押出しの層厚比は、25:75~75:25であるものとすると好ましい。溶融共押出し層に占める無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン6の厚みが25/75よりも小さくなると、接着性が不安定となる虞がある。また、少しでも安価な低密度ポリエチレン7を混ぜることは、コスト面で有利である。
【実施例0036】
以下に実施例により本発明をより具体的に説明する。各実施例および比較例の結果は表1にまとめる。
【0037】
<実施例1>
実施例1では以下の材料を用いた。
・基材層:ポリエチレンテレフタレート12μm(フタムラ化学(株)製:FE2001)
・溶融押出し層:低密度ポリエチレン15μm(日本ポリエチレン(株)製:LC600A、融点106℃、密度0.918g/cm3、MFR7.0g/10min)
・金属層:アルミニウム箔9μm(東洋アルミニウム(株)製:1N30)
・溶融共押出し層:無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン(三菱ケミカル(株)製:M605、第1融点ピーク98℃、第2融点ピーク50℃、密度0.88g/cm3、MFR10g/cm3)と低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製:LC600A、融点106℃、密度0.918g/cm3、MFR7.0g/10min)を溶融共押出して形成(M605とLC600Aの層厚比=25:75~75:25)。
・シーラント層:直鎖状低密度ポリエチレン40μm(出光ユニテック(株)製:耐熱グレードLL-LS733CA)
【0038】
上記実施例1の材料を積層させたフィルムを140℃、15秒ヒーターロールに抱かせるように熱を加えて積層体を作製した。積層体を充填機にかけ、カット時のポリエチレンの伸び(カット性)、搬送コンベアへの搬送性(腰強度)、ヒートシール部のシワ(柔軟性)を確認した。充填結果/ピッチ:170mm、ショット数:25袋/min。
【0039】
また、腰強度は下記の方法で測定した。
[ループスティフネスの測定]
図3は、ループスティフネス測定方法を説明するための模式図である。実施例1の積層体のフィルムから、幅15mm、長さ(ループ長)70mmの短冊状フィルムを切り出した。このとき、短冊状フィルムの長手方向が測定対象の方向に一致するようにした。
図3のように、切り出した短冊状フィルムをループスティフネステスタ10にセットしてループを形成し、形成したループに装置の当て板を押し付けてループを押込み、ループの反発
力を測定した。押込み長は10mmとした。測定で得られた反発強度の値(mN)を腰強度値とした。
【0040】
また、比較例としては、下記に示すが、シーラント層に非耐熱グレードLL-MTNST(フタムラ化学株式会社製:膜厚40μm)を用いたり、腰強度を上げるためにPET基材25μmを用いて、実施例1と同様の方法で積層体を作製し、同様の方法で測定および評価した。
【0041】
<比較例1>
・基材層:ポリエチレンテレフタレート12μm(フタムラ化学(株)製:FE2001)
・溶融押出し層:低密度ポリエチレン15μm(日本ポリエチレン(株)製:LC600)
・金属層:アルミニウム箔9μm(東洋アルミニウム(株)製:1N30)
・溶融共押出し層:無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン(三菱ケミカル(株)製:M605)と低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製:LC600A)を溶融共押出して形成(M605とLC600Aの層厚比=10μm/10μm)。
・シーラント層8:直鎖状低密度ポリエチレン40μm(フタムラ化学(株)製:非耐熱グレードLL-MTNST)
【0042】
<比較例2>
・基材層:ポリエチレンテレフタレート12μm(フタムラ化学(株)製:FE2001)
・接着剤:エステル主鎖の主剤(三井化学(株)製:A525、A52)
・金属層:アルミニウム箔9μm(東洋アルミニウム(株)製:1N30)
・溶融共押出し層:無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン(三菱ケミカル(株)製:M605)と低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製:LC600A)を溶融共押出して形成(M605とLC600Aの層厚比=10μm/10μm)。
・シーラント層:直鎖状低密度ポリエチレン40μm(出光ユニテック(株)製:耐熱グレードLL-LS733CA)
【0043】
<比較例3>
・基材層:ポリエチレンテレフタレート25μm(フタムラ化学(株)製:FE2001)
・溶融押出し層:低密度ポリエチレン15μm(日本ポリエチレン(株)製:LC600)
・金属層:アルミニウム箔9μm(東洋アルミニウム(株)製:1N30)
・溶融共押出し層:無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン(三菱ケミカル(株)製:M605)と低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製:LC600A)を溶融共押出して形成(M605とLC600Aの層厚比=10μm/10μm)。
・シーラント層:直鎖状低密度ポリエチレン40μm(出光ユニテック(株)製:耐熱グレードLL-LS733CA)
【0044】
<比較例4>
・基材層:ポリエチレンテレフタレート25μm(フタムラ化学(株)製:FE2001)
・接着剤:エステル主鎖の主剤(三井化学(株)製:A525、A52)
・金属層:アルミニウム箔9μm(東洋アルミニウム(株)製:1N30)
・溶融共押出し層:無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン(三菱ケミカル(株)製:M605)と低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製:LC600A)を溶融共
押出して形成(M605とLC600Aの層厚比=10μm/10μm)。
・シーラント層:直鎖状低密度ポリエチレン40μm(出光ユニテック(株)製:耐熱グレードLL-LS733CA)
【0045】
<判定基準>
・ポリエチレンの伸び(カット性):なければ〇、あれば×
・搬送性(腰強度):折れ曲がりなく搬送できれば〇、折れ曲がって搬送できなければ×・シワ(柔軟性):シワ発生しなければ〇、発生すれば×
・総合評価:上記項目全て〇で〇、そうでないもの×
【0046】
表1に評価結果を示す。
【0047】
【0048】
<評価結果>
実施例1は、すべての評価項目で〇(腰強度値は、100mN)。
比較例1は、シーラント層が耐熱グレードでないため、ポリエチレンの伸び(カット性)が×。比較例2は、シーラント層は耐熱グレードのためポリエチレンの伸びは発生しないものの、接着剤がドライラミネート仕様なので耐内容物性が低く、腰強度が低いため搬送中に折れ曲がりが生じ、搬送性(腰強度)×。比較例3は、基材層の厚さを上げたので硬すぎることから折れシワ(柔軟性)が発生し×。比較例4は、腰強度をあげるため基材層の厚さを上げたので搬送性(腰強度)は改善したが、接着剤がドライラミネート仕様なので柔軟性を欠いてしまうことから折れシワが発生し×。
【0049】
本発明によれば、内容物耐性が高く、ヘアカラー剤、次亜塩素酸水や香料など包材へのアタックが強い内容物用の包材に適用できる高耐性包材用積層体が得られた。
また、実施例1の結果から、充填時のポリエチレンの伸びを抑制し、カット性を向上させることができ、搬送コンベアでの折れ曲がりやヒートシール時のシワを抑制することができる高耐性包材用積層体を提供することが可能になった。