IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

<>
  • 特開-弾性波装置 図1
  • 特開-弾性波装置 図2
  • 特開-弾性波装置 図3
  • 特開-弾性波装置 図4
  • 特開-弾性波装置 図5
  • 特開-弾性波装置 図6
  • 特開-弾性波装置 図7
  • 特開-弾性波装置 図8
  • 特開-弾性波装置 図9
  • 特開-弾性波装置 図10
  • 特開-弾性波装置 図11
  • 特開-弾性波装置 図12
  • 特開-弾性波装置 図13
  • 特開-弾性波装置 図14
  • 特開-弾性波装置 図15
  • 特開-弾性波装置 図16
  • 特開-弾性波装置 図17
  • 特開-弾性波装置 図18
  • 特開-弾性波装置 図19
  • 特開-弾性波装置 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114277
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】弾性波装置
(51)【国際特許分類】
   H03H 9/25 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
H03H9/25 Z
H03H9/25 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019942
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩本 英樹
(72)【発明者】
【氏名】道上 彰
(72)【発明者】
【氏名】奥永 洋夢
【テーマコード(参考)】
5J097
【Fターム(参考)】
5J097AA29
5J097BB11
5J097EE08
5J097EE09
5J097FF04
5J097FF05
5J097GG03
5J097GG04
5J097GG09
5J097KK03
5J097KK05
(57)【要約】
【課題】大型化を招かずして、比帯域を容易に調整することができる、弾性波装置を提供することができる。
【解決手段】本発明の弾性波装置1は、支持基板3と、支持基板3上に設けられており、互いに対向している第1の主面7a及び第2の主面7bを有する圧電体層7と、圧電体層7の第1の主面7aに設けられている第1のIDT電極9A、及び第2の主面7bに設けられている第2のIDT電極9Bと、圧電体層7の第1の主面7aと第1のIDT電極9Aとの間、及び第2の主面7bと第2のIDT電極9Bの間のうち少なくとも一方に設けられている誘電体膜8Aとを備える。誘電体膜8A及び圧電体層7がそれぞれ、Li、Ta及びOを含む構成、並びにLi、Nb及びOを含む構成のうち一方の構成を有する。誘電体膜8A及び圧電体層7において、分極方向、材料に含まれる元素、及び材料の組成のうち少なくともいずれかが互いに異なる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、
前記支持基板上に設けられており、互いに対向している第1の主面及び第2の主面を有する圧電体層と、
前記圧電体層の前記第1の主面に設けられている第1のIDT電極、及び前記第2の主面に設けられている第2のIDT電極と、
前記圧電体層の前記第1の主面と前記第1のIDT電極との間、及び前記第2の主面と前記第2のIDT電極の間のうち少なくとも一方に設けられている誘電体膜と、
を備え、
前記誘電体膜及び前記圧電体層がそれぞれ、Li、Ta及びOを含む構成、並びにLi、Nb及びOを含む構成のうち一方の構成を有し、
前記誘電体膜及び前記圧電体層において、分極方向、材料に含まれる元素、及び材料の組成のうち少なくともいずれかが互いに異なる、弾性波装置。
【請求項2】
前記誘電体膜が、第1の誘電体膜及び第2の誘電体膜を含み、
前記圧電体層の前記第1の主面と前記第1のIDT電極との間に前記第1の誘電体膜が設けられており、前記第2の主面と前記第2のIDT電極との間に前記第2の誘電体膜が設けられている、請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項3】
前記第1の誘電体膜及び前記第2の誘電体膜のうち少なくとも一方の分極方向と、前記圧電体層の分極方向とが互いに逆の方向である、請求項2に記載の弾性波装置。
【請求項4】
前記第1の誘電体膜及び前記第2の誘電体膜の双方の分極方向と、前記圧電体層の分極方向とが互いに逆の方向である、請求項3に記載の弾性波装置。
【請求項5】
前記第1の誘電体膜及び前記第2の誘電体膜のうち少なくとも一方の双極子配向度と、前記圧電体層の双極子配向度とが互いに異なる、請求項2に記載の弾性波装置。
【請求項6】
前記第1の誘電体膜及び前記第2の誘電体膜のうち少なくとも一方は、圧電性を有していない、請求項5に記載の弾性波装置。
【請求項7】
前記支持基板及び前記圧電体層の間に設けられている中間層をさらに備える、請求項1に記載の弾性波装置。
【請求項8】
前記中間層が、材料として酸化ケイ素が用いられている層を含む、請求項7に記載の弾性波装置。
【請求項9】
前記圧電体層の材料として圧電単結晶が用いられている、請求項1に記載の弾性波装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性波装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性波装置は携帯電話機のフィルタなどに広く用いられている。下記の特許文献1には、弾性波装置の一例が開示されている。この弾性波装置においては、圧電体層の両主面に絶縁体層が設けられている。圧電体層の両主面に、絶縁体層を介して間接的にIDT(Interdigital Transducer)電極が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2022/202917号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の弾性波装置のように、圧電体層及びIDT電極の間に絶縁体層が設けられている場合には、絶縁体層の厚みを調整することにより、比帯域を調整し得る。なお、特許文献1においては、絶縁体層の材料の例として、窒化ケイ素、酸化ケイ素、酸化タンタル、アルミナ及び酸窒化ケイ素が挙げられている。しかしながら、上記の材料の誘電率は、十分に高くはない。そのため、特許文献1の弾性波装置においては、所望の静電容量を得ようとした場合には、弾性波装置が大型化してしまう。
【0005】
本発明の目的は、大型化を招かずして、比帯域を容易に調整することができる、弾性波装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る弾性波装置は、支持基板と、前記支持基板上に設けられており、互いに対向している第1の主面及び第2の主面を有する圧電体層と、前記圧電体層の前記第1の主面に設けられている第1のIDT電極、及び前記第2の主面に設けられている第2のIDT電極と、前記圧電体層の前記第1の主面と前記第1のIDT電極との間、及び前記第2の主面と前記第2のIDT電極の間のうち少なくとも一方に設けられている誘電体膜とを備え、前記誘電体膜及び前記圧電体層がそれぞれ、Li、Ta及びOを含む構成、並びにLi、Nb及びOを含む構成のうち一方の構成を有し、前記誘電体膜及び前記圧電体層において、分極方向、材料に含まれる元素、及び材料の組成のうち少なくともいずれかが互いに異なる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、大型化を招かずして、比帯域を容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施形態に係る弾性波装置の正面断面図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る弾性波装置の平面図である。
図3】本発明の第1の実施形態における、誘電体膜の厚みと比帯域との関係を示す図である。
図4】本発明の第1の実施形態における、誘電体膜の厚みと静電容量との関係を示す図である。
図5図2中のII-II線に沿う断面図である。
図6】本発明の第2の実施形態及びその変形例並びに第1の比較例における、誘電体膜の厚みと比帯域との関係を示す図である。
図7】本発明の第3の実施形態、第4の実施形態、第1の比較例及び第2の比較例における、誘電体膜の厚みと比帯域との関係を示す図である。
図8】本発明の第5の実施形態における、各IDT電極の1対の電極指付近を示す正面断面図である。
図9】本発明の第6の実施形態における各IDT電極の1対の電極指付近を示す正面断面図である。
図10】本発明の第1の実施形態、第5の実施形態、第6の実施形態及び第1の比較例における、誘電体膜の厚みと比帯域との関係を示す図である。
図11】本発明の第1の実施形態、第5の実施形態、第6の実施形態及び第1の比較例における、誘電体膜の厚みと静電容量との関係を示す図である。
図12】本発明の第1の実施形態、第5の実施形態及び第6の実施形態における、高次モードが生じる周波数付近の位相特性を示す図である。
図13】(a)は、本発明の第6の実施形態における、第1の誘電体膜、第2の誘電体膜及び圧電体層の分極方向を示す模式的断面図である。(b)は、本発明の第6の実施形態の第1の変形例における、第1の誘電体膜、第2の誘電体膜及び圧電体層の分極方向を示す模式的断面図である。(c)は、本発明の第6の実施形態の第2の変形例における、第1の誘電体膜、第2の誘電体膜及び圧電体層の分極方向を示す模式的断面図である。(d)は、本発明の第6の実施形態の第3の変形例における、第1の誘電体膜、第2の誘電体膜及び圧電体層の分極方向を示す模式的断面図である。
図14】本発明の第6の実施形態及びその第1~第3の変形例並びに第1の比較例における、誘電体膜の厚みと、1450MHz付近に生じる高次モードの位相の最大値との関係を示す図である。
図15】本発明の第6の実施形態及びその第1~第3の変形例並びに第1の比較例における、誘電体膜の厚みと、1100MHz付近に生じる高次モードの位相の最大値との関係を示す図である。
図16】(a)及び(b)は、本発明の第6の実施形態に係る弾性波装置の製造方法の一例における、第2のIDT電極を設ける工程までを説明するための正面断面図である。
図17】(a)及び(b)は、本発明の第6の実施形態に係る弾性波装置の製造方法の一例における、誘電体層を設ける工程までを説明するための正面断面図である。
図18】(a)~(c)は、本発明の第6の実施形態に係る弾性波装置の製造方法の一例における、圧電基板の厚みを調整する工程までを説明するための正面断面図である。
図19】(a)及び(b)は、本発明の第6の実施形態に係る弾性波装置の製造方法の一例における、第1のIDT電極を設ける工程までを説明するための正面断面図である。
図20】(a)及び(b)は、本発明の第6の実施形態に係る弾性波装置の製造方法の一例における、第1の接続電極及び第2の接続電極を設ける工程までを説明するための、電極指が伸びる方向に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0010】
なお、本明細書に記載の各実施形態は、例示的なものであり、異なる実施形態間において、構成の部分的な置換または組み合わせが可能であることを指摘しておく。
【0011】
図1は、第1の実施形態に係る弾性波装置の正面断面図である。図2は、第1の実施形態に係る弾性波装置の平面図である。なお、図1は、図2中のI-I線に沿う断面図である。図2においては、後述する第1の接続電極や第2の接続電極を省略している。
【0012】
図1に示すように、弾性波装置1は圧電性基板2を有する。圧電性基板2は、支持基板3と、中間層4と、圧電体層7とを有する。圧電性基板2は、圧電体層7を有することによって、圧電性を有する基板のことである。
【0013】
本実施形態においては、中間層4は積層体である。具体的には、中間層4は、第1の層5及び第2の層6を含む。圧電性基板2においては、支持基板3上に第1の層5が設けられている。第1の層5上に第2の層6が設けられている。第2の層6上に圧電体層7が設けられている。なお、圧電性基板2の積層構造は上記に限定されない。例えば、中間層4は単層の誘電体層であってもよい。あるいは、中間層4は設けられていなくともよい。
【0014】
支持基板3の材料として、シリコンが用いられている。支持基板3に用いられているシリコンの面方位は(100)である。該シリコンのオイラー角(φ,θ,ψ)は、(0°,0°,45°)である。中間層4の第1の層5の材料として、窒化ケイ素が用いられている。第2の層6の材料として、酸化ケイ素が用いられている。なお、支持基板3及び中間層4の各層の材料は上記に限定されない。
【0015】
圧電体層7は第1の主面7a及び第2の主面7bを有する。第1の主面7a及び第2の主面7bは互いに対向している。第1の主面7a及び第2の主面7bのうち、第2の主面7bが支持基板3側に位置している。
【0016】
圧電体層7の材料として、タンタル酸リチウムが用いられている。具体的には、圧電体層7の材料として、50°YカットX伝搬のLiTaOが用いられている。圧電体層7に用いられているLiTaOのオイラー角は、(0°,140°,0°)である。なお、圧電体層7のカット角、オイラー角、組成や材料は上記に限定されない。
【0017】
圧電体層7は、Li、Ta及びOを含む構成、並びにLi、Nb及びOを含む構成のうち一方の構成を有していればよい。言い換えれば、圧電体層7は、Li及びTa、またはLi及びNbを含む酸化物層であればよい。なお、圧電体層7の材料として、Li及びTa、またはLi及びNbを含む酸化物である、圧電単結晶が用いられていることが好ましい。それによって、弾性波装置1のQ値を好適に高めることができる。
【0018】
圧電体層7の第1の主面7aには誘電体膜8Aが設けられている。誘電体膜8Aは、本発明における第1の誘電体膜である。誘電体膜8Aの材料として、ニオブ酸リチウムが用いられている。具体的には、誘電体膜8Aの材料として、LiNbOが用いられている。本実施形態においては、誘電体膜8Aの分極方向は、圧電体層7の分極方向と逆の方向である。なお、誘電体膜8Aの組成、材料や分極方向は上記に限定されない。誘電体膜8Aは、Li、Ta及びOを含む構成、並びにLi、Nb及びOを含む構成のうち一方の構成を有していればよい。言い換えれば、誘電体膜8Aは、Li及びTa、またはLi及びNbを含む酸化物膜であればよい。
【0019】
誘電体膜8A上には第1のIDT電極9Aが設けられている。すなわち、圧電体層7の第1の主面7aに、誘電体膜8Aを介して間接的に第1のIDT電極9Aが設けられている。なお、誘電体膜8A上には、第1のIDT電極9Aを覆うように、保護膜が設けられていてもよい。保護膜には、酸化ケイ素、窒化ケイ素または酸窒化ケイ素などを用いることができる。
【0020】
一方で、圧電体層7の第2の主面7bに直接的に、第2のIDT電極9Bが設けられている。第2のIDT電極9Bは、中間層4の第2の層6に埋め込まれている。第1のIDT電極9A及び第2のIDT電極9Bは、圧電体層7を挟み互いに対向している。
【0021】
図2に示すように、第1のIDT電極9Aは、第1のバスバー16及び第2のバスバー17と、複数の第1の電極指18及び複数の第2の電極指19とを有する。第1のバスバー16及び第2のバスバー17は互いに対向している。第1のバスバー16に、複数の第1の電極指18の一端がそれぞれ接続されている。第2のバスバー17に、複数の第2の電極指19の一端がそれぞれ接続されている。複数の第1の電極指18及び複数の第2の電極指19は互いに間挿し合っている。第1の電極指18及び第2の電極指19は、互いに異なる電位に接続される。以下においては、第1の電極指18及び第2の電極指19を、単に電極指と記載することがある。
【0022】
図1に示す第2のIDT電極9Bも、第1のIDT電極9Aと同様に、1対のバスバーと、複数の電極指とを有する。第1のIDT電極9Aの電極指ピッチ、及び第2のIDT電極9Bの電極指ピッチは同じである。電極指ピッチとは、互いに異なる電位に接続され、かつ隣り合う電極指同士の中心間距離である。本明細書において電極指ピッチが同じとは、弾性波装置の電気的特性に影響が生じない程度の誤差範囲において、電極指ピッチが異なることも含む。
【0023】
第1のIDT電極9A及び第2のIDT電極9Bに交流電圧を印加することにより、弾性波が励振される。本実施形態では、第1のIDT電極9A及び第2のIDT電極9Bのそれぞれにおいて、弾性波伝搬方向は、複数の電極指が伸びる方向と直交する。第1のIDT電極9Aの弾性波伝搬方向両側には、1対の反射器14A及び反射器14Bが設けられている。同様に、第2のIDT電極9Bの弾性波伝搬方向両側には、1対の反射器14C及び反射器14Dが設けられている。弾性波装置1は弾性表面波装置である。
【0024】
上記の2対の反射器は、第1のIDT電極9Aのいずれかの電極指と同電位であってもよく、第2のIDT電極9Bのいずれかの電極指と同電位であってもよい。あるいは、各反射器は浮き電極であってもよい。なお、浮き電極とは、信号電位及びグラウンド電位に接続されない電極をいう。
【0025】
第1のIDT電極9A、第2のIDT電極9B及び各反射器は積層金属膜からなる。具体的には、第1のIDT電極9Aの層構成は、圧電体層7側から、Ti層及びAl層がこの順序において積層された構成である。反射器14A及び反射器14Bの層構成も同様である。第2のIDT電極9Bの層構成は、圧電体層7側から、Pt層及びAl層がこの順序において積層された構成である。反射器14C及び反射器14Dの層構成も同様である。もっとも、第1のIDT電極9A、第2のIDT電極9B及び各反射器の材料は上記に限定されない。あるいは、第1のIDT電極9A、第2のIDT電極9B及び各反射器は、単層の金属膜からなっていてもよい。
【0026】
本実施形態の特徴は、以下の構成を有することにある。1)誘電体膜8A及び圧電体層7がそれぞれ、Li、Ta及びOを含む構成、並びにLi、Nb及びOを含む構成のうち一方の構成を有すること。2)誘電体膜8A及び圧電体層7において、分極方向、材料に含まれる元素、及び材料の組成のうち少なくともいずれかが互いに異なること。
【0027】
なお、本明細書では、一方の材料及び他方の材料において分極方向が互いに異なる構成は、一方の材料が分極方向を有し、他方の材料が分極方向を有しない構成を含む。
【0028】
一方の材料及び他方の材料において組成が互いに異なるとは、一方の材料及び他方の材料を構成している元素が同じであり、かつ一方の材料における元素同士の比率と、他方の材料における元素同士の比率が互いに異なる場合を含む。例えば、x及びyを任意の正の数としたときに、LiTaO及びLiTaOにおけるx及びyが互いに異なる場合、双方の組成は互いに異なる。
【0029】
上記のように、弾性波装置1は、誘電体膜8A及び圧電体層7がそれぞれ、Li、Ta及びOを含む構成、並びにLi、Nb及びOを含む構成のうち一方の構成を有する。そして、誘電体膜8A及び圧電体層7において、少なくとも、材料に含まれる元素が互いに異なる。それによって、弾性波装置1の大型化を招かずして、弾性波装置1の比帯域を容易に調整することができる。この詳細を以下において説明する。
【0030】
本実施形態の構成を有する弾性波装置1において、誘電体膜8Aの厚みと比帯域との関係を、シミュレーションにより導出した。比帯域は、共振周波数をfr、反共振周波数をfaとしたときに、(|fr-fa|/fr)×100[%]により表わされる。さらに、本実施形態の構成を有する弾性波装置1において、誘電体膜8Aの厚みと静電容量との関係を、シミュレーションにより導出した。
【0031】
なお、上記の関係を導出した弾性波装置1の設計パラメータは、以下の通りである。ここで、電極指ピッチにより規定される波長をλとする。具体的には、図1における、隣り合う第1の電極指18及び第2の電極指19の中心間距離を電極指ピッチをPとすると、波長λは、λ=2P、で定義される。以下の設計パラメータにおいては、各部材の厚みの基準とする波長λは、第1のIDT電極9Aの波長λとする。もっとも、各部材の厚みの基準とする波長λは、第2のIDT電極9Bの波長λとしてもよい。
【0032】
支持基板3:材料…Si、面方位…(100)、オイラー角(φ,θ,ψ)におけるψ…45°、厚み…25λ
第1の層5:材料…SiN、厚み…0.075λ
第2の層6:材料…SiO、厚み…0.37λ
圧電体層7:材料…LiTaO、カット角…50°Y、オイラー角…(0°,140°,0°)、厚み…0.3λ
誘電体膜8A:材料…LiNbO、カット角及び厚み…40°Y及び0.01λ、33°Y及び0.02λ、25°Y及び0.03λ、20°Y及び0.04λ、15°Y及び0.05λ、または13°Y及び0.06λ
第1のIDT電極9A:層構成…圧電体層7側からTi層/Al層、厚み…圧電体層7側から0.006λ/0.065λ
第2のIDT電極9B:層構成…圧電体層7側からPt層/Al層、厚み…圧電体層7側から0.015λ/0.1λ
第1のIDT電極9A及び第2のIDT電極9Bの波長λ:5μm
第1のIDT電極9A及び第2のIDT電極9Bのデューティ比:0.45
【0033】
誘電体膜8Aのカット角を、誘電体膜8Aの厚みに応じて異ならせることにより、不要波としてのレイリー波を抑制することができる。なお、誘電体膜8Aのカット角及び誘電体膜8Aの厚みの関係は、特に限定されるものではない。
【0034】
図3及び図4において、第1の実施形態の結果と共に、誘電体膜の厚みが0である第1の比較例の結果も示す。なお、第1の比較例の設計パラメータは、誘電体膜が設けられていない点以外においては、第1の実施形態の構成を有する弾性波装置1の設計パラメータと同様である。
【0035】
図3は、第1の実施形態における、誘電体膜の厚みと比帯域との関係を示す図である。図4は、第1の実施形態における、誘電体膜の厚みと静電容量との関係を示す図である。なお、図3及び図4においては、誘電体膜の厚みが0であるプロットが、第1の比較例の結果を示す。図4においては、静電容量を、第1のIDT電極及び第2のIDT電極における、それぞれの1対の電極指が位置する部分当たりの静電容量として示す。図4以外の、誘電体膜の厚み及び静電容量の関係を示す図においても同様である。
【0036】
図3に示すように、誘電体膜8Aの厚みが厚くなるほど、比帯域の値が大幅に小さくなっていることがわかる。このように、第1の実施形態においては、誘電体膜8Aの厚みを変化させることにより、比帯域を容易に調整することができる。
【0037】
一方、図4に示すように、誘電体膜8Aの厚みを変化させても、弾性波装置1の静電容量にはほとんど変化がないことがわかる。すなわち、第1の実施形態においては、図1に示すように、誘電体膜8Aが圧電体層7上に設けられていても、静電容量がほとんど小さくならない。
【0038】
例えば、誘電体膜が、従来のように、酸化ケイ素やアルミナなどからなる場合には、該誘電体膜の誘電率が小さい。そのため、圧電体層及び該誘電体膜の積層体の静電容量は小さくなる。よって、該誘電体膜を設ける構成においては、所望の静電容量を得るために、圧電体層及び該誘電体膜の積層体の面積を広くする必要が生じる。
【0039】
これに対して、第1の実施形態においては、誘電体膜8Aの材料が、Li及びNbを含む酸化物である。よって、誘電体膜8Aの誘電率を好適に高くすることができる。第1の実施形態においては、誘電体膜8Aが圧電体層7上に設けられていても、弾性波装置1の静電容量はほとんど小さくならない。誘電体膜8Aの厚みを調整する際においても同様である。従って、弾性波装置1の大型化を招かずして、弾性波装置1の比帯域を容易に調整することができる。
【0040】
以下において、第1の実施形態の構成をより詳細に説明する。
【0041】
図5は、図2中のII-II線に沿う断面図である。
【0042】
誘電体膜8A及び圧電体層7を貫通するように、複数の貫通孔13が設けられている。1つの貫通孔13は、第2のIDT電極9Bの一方のバスバーに至っている。該貫通孔13内及び誘電体膜8A上に連続的に、第1の接続電極15Aが設けられている。第1の接続電極15Aは、第2のIDT電極9Bの一方のバスバーと、第1のIDT電極9Aの第1のバスバー16とを接続している。これにより、第1のIDT電極9Aにおける複数の第1の電極指18の電位と、第2のIDT電極9Bにおける一方のバスバーに接続された複数の電極指の電位とが同相となる。
【0043】
他の貫通孔13は、第2のIDT電極9Bの他方のバスバーに至っている。該貫通孔13内及び誘電体膜8A上に連続的に、第2の接続電極15Bが設けられている。第2の接続電極15Bは、第2のIDT電極9Bの他方のバスバーと、第1のIDT電極9Aの第2のバスバー17とを接続している。これにより、第1のIDT電極9Aにおける複数の第2の電極指19の電位と、第2のIDT電極9Bにおける他方のバスバーに接続された複数の電極指の電位とが同相となる。
【0044】
図2に戻り、第1のIDT電極9Aにおいて、弾性波伝搬方向から見たときに、隣り合う電極指同士が重なり合っている領域は交叉領域Aである。同様に、圧電体層7の第2の主面7b側において、図1に示す第2のIDT電極9Bの構成によっても、交叉領域が定義される。圧電体層7の第1の主面7a側の交叉領域A、及び第2の主面7b側の交叉領域は、平面視において重なっている。より具体的には、圧電体層7の第1の主面7a側の交叉領域Aに位置する、第1のIDT電極9Aの複数の電極指の中心と、第2の主面7b側の交叉領域に位置する、第2のIDT電極9Bの複数の電極指の中心とは、平面視において重なっている。
【0045】
本明細書において平面視とは、図1などにおける上方に相当する方向から見ることをいう。図1においては、例えば、圧電体層7側及び支持基板3側のうち、圧電体層7側が上方である。
【0046】
なお、第1のIDT電極9Aの複数の電極指の少なくとも一部と、第2のIDT電極9Bの複数の電極指の少なくとも一部とが、平面視において重なっていればよい。より詳細には、第1のIDT電極9Aの複数の電極指と、第2のIDT電極9Bの複数の電極指とが、弾性波装置1の電気的特性に影響が生じない程度の誤差範囲内で、平面視において重なっている状態であればよい。本明細書においては、製造ばらつき上のずれにより、平面視において重なっている状態から外れている場合も、平面視において重なっていることに含まれるものとする。
【0047】
第1の実施形態においては、平面視において重なっている電極指の電位は同相である。もっとも、第1のIDT電極9Aの電極指及び第2のIDT電極9Bの電極指の電位の関係は上記に限定されない。例えば、平面視において重なっている複数対の電極指のうち少なくとも1対の電極指の電位が同相であってもよい。
【0048】
図1に示すように、圧電性基板2は、支持基板3、中間層4の第1の層5及び第2の層6、並びに圧電体層7の積層基板である。より詳細には、第1の実施形態では、第1の層5は高音速膜である。高音速膜は相対的に高音速な膜である。より具体的には、高音速膜を伝搬するバルク波の音速は、圧電体層7を伝搬する弾性波の音速よりも高い。他方、第2の層6は低音速膜である。低音速膜は相対的に低音速な膜である。より具体的には、低音速膜を伝搬するバルク波の音速は、圧電体層7を伝搬するバルク波の音速よりも低い。
【0049】
第1の実施形態では、圧電性基板2において、高音速膜、低音速膜及び圧電体層7がこの順序で積層されている。それによって、弾性波のエネルギーを圧電体層7側に効果的に閉じ込めることができる。
【0050】
中間層4の第1の層5が高音速膜である場合、高音速膜の材料としては、例えば、窒化アルミニウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、水晶などの圧電体、アルミナ、サファイア、マグネシア、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア、コージライト、ムライト、ステアタイト、フォルステライト、スピネル、サイアロンなどのセラミック、酸化アルミニウム、酸窒化ケイ素、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、ダイヤモンドなどの誘電体、もしくはシリコンなどの半導体、または上記材料を主成分とする材料を用いることができる。なお、上記スピネルには、Mg、Fe、Zn、Mnなどから選ばれる1以上の元素と酸素とを含有するアルミニウム化合物が含まれる。上記スピネルの例としては、MgAl、FeAl、ZnAl、MnAlを挙げることができる。本明細書において主成分とは、占める割合が50重量%を超える成分をいう。上記主成分の材料は、単結晶、多結晶、及びアモルファスのうちいずれかの状態、もしくは、これらが混在した状態で存在していてもよい。
【0051】
第2の層6が低音速膜である場合、低音速膜の材料としては、例えば、ガラス、酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化リチウム、酸化タンタル、もしくは酸化ケイ素にフッ素、炭素やホウ素を加えた化合物などの誘電体、または上記材料を主成分とする材料を用いることができる。
【0052】
なお、第1の実施形態における中間層4は、酸化ケイ素層としての第2の層6を含む。もっとも、例えば、中間層4が単層の誘電体層である場合には、中間層4が酸化ケイ素層であってもよい。これらのように、中間層4が、材料として酸化ケイ素が用いられている層を含むことが好ましい。それによって、弾性波装置1の周波数温度係数の絶対値を小さくすることができ、弾性波装置1の周波数温度特性を改善することができる。
【0053】
支持基板3の材料としては、例えば、窒化アルミニウム、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、水晶などの圧電体、アルミナ、サファイア、マグネシア、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ジルコニア、コージライト、ムライト、ステアタイト、フォルステライト、スピネル、サイアロンなどのセラミック、酸化アルミニウム、酸窒化ケイ素、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、ダイヤモンドなどの誘電体、もしくはシリコンなどの半導体、または上記材料を主成分とする材料を用いることができる。上記スピネルの例としては、MgAl、FeAl、ZnAl、MnAlを挙げることができる。
【0054】
第1の実施形態の弾性波装置1においては、圧電体層7は、Li及びTaを含む酸化物層である。なお、圧電体層7は、Li及びNbを含む酸化物層であってもよい。この例を、第2の実施形態により示す。なお、第2の実施形態の弾性波装置における層構成は、第1の実施形態の弾性波装置1における層構成と同じである。よって、第2の実施形態の説明には、第1の実施形態の説明に用いた図面及び符号を援用することとする。
【0055】
第2の実施形態においては、図1に示す圧電体層7の材料として、40°YカットX伝搬のLiNbOが用いられている。圧電体層7に用いられているLiNbOのオイラー角は、(0°,130°,0°)である。誘電体膜8Aの材料として、LiTaOが用いられている。誘電体膜8Aに用いられているLiTaOのオイラー角は、(0°,130°,0°)である。第2の実施形態では、誘電体膜8Aの分極方向と、圧電体層7の分極方向とは同じである。
【0056】
なお、誘電体膜8Aの分極方向と、圧電体層7の分極方向とは同じではなくともよい。例えば、図1を援用して示す第2の実施形態の変形例においては、誘電体膜8Aの分極方向と、圧電体層7の分極方向とは、互いに逆の方向である。具体的には、誘電体膜8Aに用いられているLiTaOのオイラー角は、(0°,-50°,0°)である。
【0057】
第2の実施形態及びその変形例においても、誘電体膜8A及び圧電体層7がそれぞれ、Li、Ta及びOを含む構成、並びにLi、Nb及びOを含む構成のうち一方の構成を有する。そして、誘電体膜8A及び圧電体層7において、少なくとも、材料に含まれる元素が互いに異なる。それによって、第1の実施形態と同様に、弾性波装置の大型化を招かずして、弾性波装置の比帯域を容易に調整することができる。
【0058】
ここで、第2の実施形態の構成を有する弾性波装置、及び第2の実施形態の変形例の構成を有する弾性波装置において、誘電体膜8Aの厚みと比帯域との関係を、シミュレーションにより導出した。なお、第2の実施形態の構成を有する弾性波装置の設計パラメータは、以下のパラメータ以外においては、図3及び図4の関係を導出した弾性波装置1の設計パラメータと同様である。
【0059】
圧電体層7:材料…LiNbO、カット角…40°Y、オイラー角…(0°,130°,0°)、厚み…0.3λ
誘電体膜8A:材料…LiTaO、カット角…40°Y、オイラー角…(0°,130°,0°)、厚み…0.01λ以上、0.06λ以下の範囲において0.01λ刻みで変化させた。
【0060】
第2の実施形態の変形例の構成を有する弾性波装置の設計パラメータは、誘電体膜8Aに用いられているLiTaOのオイラー角が(0°,-50°,0°)である点のみにおいて、第2の実施形態の構成を有する弾性波装置の設計パラメータと異なる。図6において、第2の実施形態及びその各変形例の結果と共に、誘電体膜の厚みが0である第1の比較例の結果も示す。なお、第1の比較例の設計パラメータは、誘電体膜が設けられていない点以外においては、第2の実施形態の構成を有する弾性波装置の設計パラメータと同様である。
【0061】
図6は、第2の実施形態及びその変形例並びに第1の比較例における、誘電体膜の厚みと比帯域との関係を示す図である。なお、図6中の「分極方向:逆」とは、誘電体膜及び圧電体層の分極方向が互いに逆であることを示す。「分極方向:同」とは、誘電体膜及び圧電体層の分極方向が同じであることを示す。図6以外の、誘電体膜の厚みと比帯域との関係を示す図においても同様である。
【0062】
図6に示すように、第2の実施形態及びその変形例においては、誘電体膜8Aの厚みが厚くなるほど、比帯域の値が小さくなっていることがわかる。このように、第2の実施形態及びその変形例においては、誘電体膜8Aの厚みを変化させることにより、比帯域を容易に調整することができる。特に、第2の実施形態においては、誘電体膜8Aの厚みが厚くなるほど、比帯域の値が大幅に小さくなっている。このことから、誘電体膜8Aの分極方向と、圧電体層7の分極方向とが互いに逆の方向であることが好ましい。これにより、誘電体膜8Aの厚みを変化させることによって、比帯域をより一層容易に調整することができる。
【0063】
なお、第2の実施形態及びその変形例においては、誘電体膜8Aの材料が、Li及びTaを含む酸化物である。よって、誘電体膜8Aの誘電率を好適に高くすることができる。これにより、誘電体膜8Aが圧電体層7上に設けられていても、弾性波装置の静電容量はほとんど小さくならない。誘電体膜8Aの厚みを調整する際においても同様である。従って、第2の実施形態及びその変形例においては、弾性波装置の大型化を招かずして、弾性波装置の比帯域を容易に調整することができる。
【0064】
第1の実施形態及び第2の実施形態においては、誘電体膜8A及び圧電体層7において、材料に含まれる元素が互いに異なる。もっとも、誘電体膜8A及び圧電体層7において、分極方向、材料に含まれる元素、及び材料の組成のうち少なくともいずれかが互いに異なっていればよい。誘電体膜8A及び圧電体層7において、分極方向のみが互いに異なる例を、第3の実施形態及び第4の実施形態により示す。
【0065】
第3の実施形態及び第4の実施形態の弾性波装置における層構成は、第1の実施形態の弾性波装置1における層構成と同じである。よって、第3の実施形態及び第4の実施形態の説明には、第1の実施形態の説明に用いた図面及び符号を援用することとする。
【0066】
第3の実施形態は、図1に示す誘電体膜8Aの材料のみにおいて第1の実施形態と異なる。具体的には、誘電体膜8Aの材料として、50°YカットX伝搬のLiTaOが用いられている。圧電体層7の材料も同様である。もっとも、誘電体膜8A及び圧電体層7においては、分極方向が互いに逆の方向である。
【0067】
第4の実施形態は、図1に示す誘電体膜8Aが圧電性及び分極方向を有しない点において、第3の実施形態と異なる。具体的には、誘電体膜8Aの材料として、LiTaOが用いられている。誘電体膜8Aにおける双極子配向度は50%である。なお、双極子配向度とは、圧電体の表面の分極方向において、プラス方向またはマイナス方向のうち、占有率が高い方の割合を算出したものである。圧電体の双極子配向度が50%である場合には、プラス方向の分極とマイナス方向の分極とが同じ割合で存在しているので、該圧電体は圧電性を有しない。すなわち、双極子配向度が50%である、ということは、分極方向が無い状態であり、圧電性を有していないことを意味する。第4の実施形態においては、圧電体層7が分極方向を有し、誘電体膜8Aが分極方向を有しない。すなわち、圧電体層7の双極子配向度と誘電体膜8Aの双極子配向度とは、互いに異なる。よって、誘電体膜8A及び圧電体層7において、分極方向は互いに異なる。
【0068】
第3の実施形態及び第4の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、弾性波装置の大型化を招かずして、弾性波装置の比帯域を容易に調整することができる。これを、第3の実施形態、第4の実施形態及び第2の比較例を比較することにより、以下において示す。なお、第2の比較例は、誘電体膜及び圧電体層において、分極方向、材料に含まれる元素、及び材料の組成の全てが同じである点において、第3の実施形態及び第4の実施形態と異なる。
【0069】
第3の実施形態の構成を有する弾性波装置、第4の実施形態の構成を有する弾性波装置、及び第2の比較例の弾性波装置において、誘電体膜の厚みと比帯域との関係を、シミュレーションにより導出した。これらの結果を図7により示す。
【0070】
なお、第3の実施形態の構成を有する弾性波装置の設計パラメータは、誘電体膜の材料、カット角及びオイラー角以外においては、図3及び図4の関係を導出した弾性波装置1の設計パラメータと同様である。第4の実施形態も同様である。なお、第4の実施形態の弾性波装置における誘電体膜は、分極方向を有しない。一方、第2の比較例の弾性波装置の設計パラメータは、誘電体膜のオイラー角以外においては、第3の実施形態の構成を有する弾性波装置の設計パラメータと同様である。具体的には、第2の比較例の弾性波装置における誘電体膜の分極方向は、第3の実施形態の構成を有する弾性波装置における誘電体膜の分極方向と逆の方向である。
【0071】
さらに、誘電体膜が設けられていない点において第3の実施形態と異なる、第1の比較例の比帯域を、シミュレーションにより算出した。この結果も図7に示す。第1の比較例の設計パラメータは、誘電体膜が設けられていない点以外においては、第3の実施形態の構成を有する弾性波装置の設計パラメータと同様である。
【0072】
図7は、第3の実施形態、第4の実施形態、第1の比較例及び第2の比較例における、誘電体膜の厚みと比帯域との関係を示す図である。なお、図7中の「分極方向:無/有」とは、誘電体膜が分極方向を有さず、圧電体層が分極方向を有することを示す。すなわち、スラッシュ記号の前の表記が、誘電体膜の分極方向の有無を示し、スラッシュ記号の後の表記が、圧電体層の分極方向の有無を示す。
【0073】
図7に示すように、第2の比較例においては、誘電体膜の厚みを変化させても、比帯域の値はほとんど変化していない。そして、第2の比較例における比帯域は第1の比較例における比帯域とほとんど変わらない。これに対して、第3の実施形態及び第4の実施形態においては、誘電体膜の厚みが厚くなるほど、比帯域の値が大幅に小さくなっていることがわかる。このように、第3の実施形態及び第4の実施形態においては、誘電体膜の厚みを変化させることにより、比帯域を容易に調整することができる。なお、特に第3の実施形態において、誘電体膜の厚みの変化に対する、比帯域の値の変化が大きい。よって、第3の実施形態においては、比帯域をより一層容易に調整することができる。
【0074】
加えて、第3の実施形態及び第4の実施形態においては、誘電体膜の材料が、Li及びTaを含む酸化物である。よって、誘電体膜の誘電率を好適に高くすることができる。そのため、第1の実施形態と同様に、第3の実施形態においても、誘電体膜が圧電体層上に設けられていても、弾性波装置の静電容量はほとんど小さくならない。従って、弾性波装置の大型化を招かずして、弾性波装置の比帯域を容易に調整することができる。
【0075】
ところで、本発明において、誘電体膜が設けられている位置は、圧電体層の第1の主面に限定されない。以下において、誘電体膜の配置のみが第1の実施形態と異なる、第5の実施形態及び第6の実施形態を示す。第5の実施形態及び第6の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、弾性波装置の大型化を招かずして、弾性波装置の比帯域を容易に調整することができる。
【0076】
図8は、第5の実施形態における各IDT電極の1対の電極指付近を示す正面断面図である。
【0077】
本実施形態においては、圧電体層7の第1の主面7aに直接的に、第1のIDT電極9Aが設けられている。一方、第2の主面7bに誘電体膜8Bが設けられている。具体的には、圧電体層7と、中間層4の第2の層6との間に誘電体膜8Bが設けられている。誘電体膜8Bは、本発明における第2の誘電体膜である。
【0078】
圧電体層7の第2の主面7bに、誘電体膜8Bを介して間接的に第2のIDT電極9Bが設けられている。第2のIDT電極9Bは中間層4の第2の層6に埋め込まれている。
【0079】
第1の実施形態と同様に、圧電体層7の材料として、50°YカットX伝搬のLiTaOが用いられている。誘電体膜8Bの材料として、LiNbOが用いられている。誘電体膜8B及び圧電体層7において、分極方向は互いに逆の方向である。
【0080】
図9は、第6の実施形態における各IDT電極の1対の電極指付近を示す正面断面図である。
【0081】
本実施形態においては、圧電体層7の第1の主面7aと、第1のIDT電極9Aとの間に、第1の誘電体膜28Aが設けられている。第2の主面7bと、第2のIDT電極9Bとの間に、第2の誘電体膜28Bが設けられている。
【0082】
第1の実施形態と同様に、圧電体層7の材料として、50°YカットX伝搬のLiTaOが用いられている。第1の誘電体膜28A及び第2の誘電体膜28Bの材料として、LiNbOが用いられている。第1の誘電体膜28A及び第2の誘電体膜28Bの分極方向は同じ方向である。他方、第1の誘電体膜28A及び第2の誘電体膜28Bの分極方向は、圧電体層7の分極方向と逆の方向である。
【0083】
ここで、第5の実施形態の構成を有する弾性波装置、及び第6の実施形態の構成を有する弾性波装置において、誘電体膜の厚みと比帯域との関係を、シミュレーションにより導出した。さらに、第5の実施形態の構成を有する弾性波装置、及び第6の実施形態の構成を有する弾性波装置において、誘電体膜の厚みと静電容量との関係を、シミュレーションにより導出した。第6の実施形態の構成を有する弾性波装置においては、図9に示す第1の誘電体膜28Aの厚み、及び第2の誘電体膜28Bの厚みを同じとした。
【0084】
なお、第5の実施形態の構成を有する弾性波装置の設計パラメータは、誘電体膜8B以外においては、図3及び図4の関係を導出した、第1の実施形態の構成を有する弾性波装置1の設計パラメータと同様である。具体的には、図1に示す誘電体膜8Aに相当する誘電体膜の厚みを0とした。他方、圧電体層7の第2の主面7bに設けられている誘電体膜8Bのパラメータを、上記誘電体膜8Aのパラメータと同様とした。
【0085】
第6の実施形態の構成を有する弾性波装置の設計パラメータは、第1の誘電体膜28A及び第2の誘電体膜28B以外においては、上記弾性波装置1の設計パラメータと同様である。具体的には、第1の誘電体膜28A及び第2の誘電体膜28Bのカット角を上記誘電体膜8Aのカット角と同じとし、かつ第1の誘電体膜28A及び第2の誘電体膜28Bの厚みの合計を、上記誘電体膜8Aの厚みと同様とした。
【0086】
図10及び図11において、第5の実施形態及び第6の実施形態の結果と共に、図3及び図4に示した第1の実施形態及び第1の比較例の結果も併せて示す。
【0087】
図10は、第1の実施形態、第5の実施形態、第6の実施形態及び第1の比較例における、誘電体膜の厚みと比帯域との関係を示す図である。図11は、第1の実施形態、第5の実施形態、第6の実施形態及び第1の比較例における、誘電体膜の厚みと静電容量との関係を示す図である。第6の実施形態の構成を有する弾性波装置においては、第1の誘電体膜28Aの厚み及び第2の誘電体膜28Bの厚みそれぞれが、図10及び図11の横軸に示す誘電体膜の厚みである。例えば、誘電体膜の厚みが0.02λである、とは、第1の誘電体膜28Aの厚み及び第2の誘電体膜28Bの厚みが、それぞれ0.02λである。
【0088】
図10に示すように、第1の実施形態、第5の実施形態及び第6の実施形態のいずれにおいても、誘電体膜の厚みが厚くなるほど、比帯域の値が大幅に小さくなっていることがわかる。特に、第6の実施形態において、誘電体膜の厚みの変化に対する、比帯域の値の変化が大きいことがわかる。このことから、図9に示すように、第1の誘電体膜28A及び第2の誘電体膜28Bの双方が設けられていることが好ましい。それによって、比帯域をより一層容易に調整することができる。
【0089】
一方、図11に示すように、第1の実施形態、第5の実施形態及び第6の実施形態のいずれにおいても、誘電体膜の厚みを変化させても、弾性波装置の静電容量には大きな変化がないことがわかる。
【0090】
さらに、第1の実施形態の構成を有する弾性波装置、第5の実施形態の構成を有する弾性波装置、及び第6の実施形態の構成を有する弾性波装置のそれぞれにおいて、高次モードが生じる周波数付近の位相特性を測定した。
【0091】
図12は、第1の実施形態、第5の実施形態及び第6の実施形態における、高次モードが生じる周波数付近の位相特性を示す図である。
【0092】
図12に示すように、各実施形態では、900MHz~1100MHzにおいて、高次モードが生じている。もっとも、第6の実施形態においては、高次モードの位相が、-82°未満に抑制されていることがわかる。このことから、図9に示すように、第1の誘電体膜28A及び第2の誘電体膜28Bの双方が設けられていることが好ましい。それによって、高次モードを効果的に抑制することができる。
【0093】
ところで、第6の実施形態においては、図13(a)により模式的に示すように、第1の誘電体膜28A及び第2の誘電体膜28Bの分極方向と、圧電体層7の分極方向とは、互いに逆の方向である。もっとも、上記の分極方向の関係は、図13(b)~図13(d)に示す、第6の実施形態の第1~第3の変形例の関係であってもよい。なお、第1~第3の変形例は、第1の誘電体膜28A及び第2の誘電体膜28Bの分極方向と、圧電体層7の分極方向との関係のみにおいて、第6の実施形態と異なる。すなわち、各変形例においては、第6の実施形態と同様に、第1の誘電体膜28A及び第2の誘電体膜28Bの材料に含まれる元素と、圧電体層7の材料に含まれる元素とは互いに異なる。
【0094】
具体的には、図13(b)に示す第1の変形例においては、第1の誘電体膜28Aの分極方向と圧電体層7の分極方向とが同じ方向であり、かつ第2の誘電体膜28Bの分極方向と圧電体層7の分極方向とが互いに逆の方向である。図13(c)に示す第2の変形例においては、第1の誘電体膜28Aの分極方向と圧電体層7の分極方向とが互いに逆の方向であり、かつ第2の誘電体膜28Bの分極方向と圧電体層7の分極方向とが同じの方向である。図13(d)に示す第3の変形例においては、第1の誘電体膜28A及び第2の誘電体膜28Bの分極方向と、圧電体層7の分極方向とが同じ方向である。
【0095】
第1~第3の変形例においても、第6の実施形態と同様に、弾性波装置の大型化を招かずして、弾性波装置の比帯域を容易に調整することができる。
【0096】
さらに、圧電体層7、第1の誘電体膜28A及び第2の誘電体膜28Bの分極方向による、高次モードに対する影響を検討した。第6の実施形態の構成を有する弾性波装置において、誘電体膜の厚みと高次モードの位相の最大値との関係を、シミュレーションにより導出した。第6の実施形態の各変形例の構成を有する弾性波装置においても、誘電体膜の厚みと高次モードの位相の最大値との関係を、シミュレーションにより導出した。
【0097】
なお、ここでいう誘電体膜の厚みとは、第1の誘電体膜28Aの厚み及び第2の誘電体膜28Bの厚みそれぞれの厚みである。第6の実施形態及びその各変形例においては、第1の誘電体膜28A及び第2の誘電体膜28Bの厚みは同じである。上記の関係は、2種の高次モードに対して導出した。より具体的には、2種の高次モードは、1450MHz付近に生じる高次モード、及び1100MHz付近に生じる高次モードである。図14及び図15において、第6の実施形態及びその各変形例の結果と共に、誘電体膜の厚みが0である第1の比較例の結果も示す。
【0098】
図14は、第6の実施形態及びその第1~第3の変形例並びに第1の比較例における、誘電体膜の厚みと、1450MHz付近に生じる高次モードの位相の最大値との関係を示す図である。図15は、第6の実施形態及びその第1~第3の変形例並びに第1の比較例における、誘電体膜の厚みと、1100MHz付近に生じる高次モードの位相の最大値との関係を示す図である。なお、図14中及び図15中の、例えば「分極方向:逆/逆」とは、第1の誘電体膜及び圧電体層の分極方向が互いに逆の方向であり、第2の誘電体膜及び圧電体層の分極方向が互いに逆の方向であることを示す。すなわち、スラッシュ記号の前の表記が、第1の誘電体膜及び圧電体層の分極方向の関係を示し、スラッシュ記号の後の表記が、第2の誘電体膜及び圧電体層の分極方向の関係を示す。
【0099】
図14に示すように、第3の変形例以外においては、誘電体膜の厚みを所定の範囲内とすることにより、1450MHz付近に生じる高次モードを、第1の比較例よりも抑制できることがわかる。
【0100】
第6の実施形態では、第1の誘電体膜28A及び第2の誘電体膜28Bの分極方向と、圧電体層7の分極方向とが互いに逆の方向である。この場合、第1の誘電体膜28A及び第2の誘電体膜28Bの厚みの合計は、0.036λ以下であることが好ましく、0.03λ以下であることがより好ましい。それによって、1450MHz付近に生じる高次モードを抑制することができる。
【0101】
第1の変形例及び第2の変形例では、第1の誘電体膜28A及び第2の誘電体膜28Bのうち一方の分極方向と、圧電体層7の分極方向とが互いに逆の方向である。この場合、第1の誘電体膜28A及び第2の誘電体膜28Bの厚みの合計は、0.05λ以下であることが好ましく、0.04λ以下であることがより好ましい。それによって、1450MHz付近に生じる高次モードを抑制することができる。
【0102】
図15に示すように、第6の実施形態においては、誘電体膜の厚みを所定の範囲内とすることにより、1100MHz付近に生じる高次モードを、第1の比較例よりも抑制できることがわかる。すなわち、0.04λ以下であることが好ましく、0.03λ以下であることがより好ましい。それによって、1100MHz付近に生じる高次モードを抑制することができる。
【0103】
ところで、図9に示す第1の誘電体膜28A及び第2の誘電体膜28Bと、圧電体層7とにおいて、分極方向、材料に含まれる元素、及び材料の組成のうち少なくともいずれかが互いに異なっていればよい。この場合において、第1の誘電体膜28A及び第2の誘電体膜28Bのうち少なくとも一方の双極子配向度と、圧電体層7の双極子配向度とが互いに異なることが好ましい。それによって、弾性波装置の比帯域をより一層容易に調整することができる。例えば、第1の誘電体膜28A及び第2の誘電体膜28Bのうち少なくとも一方が、圧電性を有していなくともよい。
【0104】
以下において、第6の実施形態に係る弾性波装置の製造方法の一例を示す。
【0105】
図16(a)及び図16(b)は、第6の実施形態に係る弾性波装置の製造方法の一例における、第2のIDT電極を設ける工程までを説明するための正面断面図である。図17(a)及び図17(b)は、第6の実施形態に係る弾性波装置の製造方法の一例における、誘電体層を設ける工程までを説明するための正面断面図である。図18(a)~図18(c)は、第6の実施形態に係る弾性波装置の製造方法の一例における、圧電基板の厚みを調整する工程までを説明するための正面断面図である。図19(a)及び図19(b)は、第6の実施形態に係る弾性波装置の製造方法の一例における、第1のIDT電極を設ける工程までを説明するための正面断面図である。図20(a)及び図20(b)は、第6の実施形態に係る弾性波装置の製造方法の一例における、第1の接続電極及び第2の接続電極を設ける工程までを説明するための、電極指が伸びる方向に沿う断面図である。
【0106】
図16(a)に示すように、圧電基板37を用意する。圧電基板37は第3の主面37a及び第4の主面37bを有する。第3の主面37a及び第4の主面37bは互いに対向している。次に、圧電基板37の第4の主面37bに第2の誘電体膜28Bを設ける。第2の誘電体膜28Bは、例えば、スパッタリング法または真空蒸着法などにより成膜することができる。
【0107】
なお、例えば、第2の誘電体膜28Bと同じ材料からなる基板を圧電基板37の第4の主面37bに張り付けた後、該基板の厚みを薄くすることにより、第2の誘電体膜28Bを形成してもよい。該基板を薄くするに際し、例えば、グラインド、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法またはエッチングなどを用いることができる。
【0108】
次に、図16(b)に示すように、第2の誘電体膜28B上に第2のIDT電極9Bを設ける。同時に、第2の誘電体膜28B上に、反射器14C及び反射器14Dを設ける。第2のIDT電極9B及び各反射器は、例えば、スパッタリング法または真空蒸着法などを用いたリフトオフ法などにより形成することができる。
【0109】
次に、図17(a)に示すように、第2のIDT電極9Bを覆うように、第2の誘電体膜28B上に誘電体層36Aを設ける。誘電体層36Aは、例えば、スパッタリング法または真空蒸着法などにより形成することができる。次に、図17(b)に示すように、誘電体層36Aの平坦化を行う。誘電体層36Aの平坦化には、例えば、グラインドまたはCMP法などを用いればよい。なお、誘電体層36Aの材料としては、図9に示す中間層4の第2の層6と同様の材料を用いることができる。この製造方法の例においては、誘電体層36Aの材料は酸化ケイ素である。
【0110】
一方、図18(a)に示すように、支持基板3上に第1の層5を設ける。次に、第1の層5上に誘電体層36Bを設ける。第1の層5及び誘電体層36Bはそれぞれ、例えば、スパッタリング法または真空蒸着法により形成することができる。なお、誘電体層36Bの材料としては、図9に示す中間層4の第2の層6と同様の材料を用いればよい。この製造方法の例においては、誘電体層36Bの材料は酸化ケイ素である。
【0111】
次に、図17(b)に示す誘電体層36A及び図18(a)に示す誘電体層36Bを接合する。これにより、図18(b)に示すように、第2の層6を形成し、かつ支持基板3及び圧電基板37を接合する。そして、圧電基板37、中間層4及び支持基板3の積層体を得る。
【0112】
次に、圧電基板37の厚みを調整する。より具体的には、圧電基板37における、第3の主面37a側を研削または研磨することにより、圧電基板37の厚みを薄くする。圧電基板37の厚みの調整には、例えば、グラインド、CMP法、イオンスライス法またはエッチングなどを用いることができる。これにより、図18(c)に示すように、圧電体層7を得る。
【0113】
次に、図19(a)に示すように、圧電体層7の第1の主面7aに第1の誘電体膜28Aを設ける。第1の誘電体膜28Aは、例えば、スパッタリング法または真空蒸着法などにより成膜することができる。なお、例えば、第1の誘電体膜28Aと同じ材料からなる基板を圧電体層7の第1の主面7aに張り付けた後、該基板の厚みを薄くすることにより、第1の誘電体膜28Aを形成してもよい。該基板を薄くするに際し、例えば、グラインド、CMP法またはエッチングなどを用いることができる。
【0114】
次に、図19(b)に示すように、第1の誘電体膜28A上に第1のIDT電極9Aを設ける。同時に、第1の誘電体膜28A上に、反射器14A及び反射器14Bを設ける。第1のIDT電極9A及び各反射器は、例えば、スパッタリング法または真空蒸着法などを用いたリフトオフ法などにより形成することができる。
【0115】
次に、図20(a)に示すように、第1の誘電体膜28A、圧電体層7及び第2の誘電体膜28Bに、複数の貫通孔13を設ける。より具体的には、第2のIDT電極9Bの一方のバスバーに至る貫通孔13と、他方のバスバーに至る貫通孔13とを設ける。複数の貫通孔13は、例えば、RIE(Reactive Ion Etching)法などにより形成することができる。
【0116】
次に、図20(b)に示すように、第2のIDT電極9Bの一方のバスバーに至っている貫通孔13内、及び第1の誘電体膜28A上に連続的に第1の接続電極15Aを設ける。第1の接続電極15Aは、第1のIDT電極9Aの第1のバスバー16に至るように設ける。これにより、第2のIDT電極9Bの一方のバスバーと、第1のIDT電極9Aの第1のバスバー16とを、第1の接続電極15Aによって接続する。
【0117】
さらに、第2のIDT電極9Bの他方のバスバーに至っている貫通孔13内、及び第1の誘電体膜28A上に連続的に第2の接続電極15Bを設ける。第2の接続電極15Bは、第1のIDT電極9Aの第2のバスバー17に至るように設ける。これにより、第2のIDT電極9Bの他方のバスバーと、第1のIDT電極9Aの第2のバスバー17とを、第2の接続電極15Bによって接続する。第1の接続電極15A及び第2の接続電極15Bは、例えば、スパッタリング法または真空蒸着法などを用いたリフトオフ法などにより形成することができる。以上により、弾性波装置を得る。
【0118】
以下において、本発明に係る弾性波装置の形態の例をまとめて記載する。
【0119】
<1>支持基板と、前記支持基板上に設けられており、互いに対向している第1の主面及び第2の主面を有する圧電体層と、前記圧電体層の前記第1の主面に設けられている第1のIDT電極、及び前記第2の主面に設けられている第2のIDT電極と、前記圧電体層の前記第1の主面と前記第1のIDT電極との間、及び前記第2の主面と前記第2のIDT電極の間のうち少なくとも一方に設けられている誘電体膜と、を備え、前記誘電体膜及び前記圧電体層がそれぞれ、Li、Ta及びOを含む構成、並びにLi、Nb及びOを含む構成のうち一方の構成を有し、前記誘電体膜及び前記圧電体層において、分極方向、材料に含まれる元素、及び材料の組成のうち少なくともいずれかが互いに異なる、弾性波装置。
【0120】
<2>前記誘電体膜が、第1の誘電体膜及び第2の誘電体膜を含み、前記圧電体層の前記第1の主面と前記第1のIDT電極との間に前記第1の誘電体膜が設けられており、前記第2の主面と前記第2のIDT電極との間に前記第2の誘電体膜が設けられている、<1>に記載の弾性波装置。
【0121】
<3>前記第1の誘電体膜及び前記第2の誘電体膜のうち少なくとも一方の分極方向と、前記圧電体層の分極方向とが互いに逆の方向である、<2>に記載の弾性波装置。
【0122】
<4>前記第1の誘電体膜及び前記第2の誘電体膜の双方の分極方向と、前記圧電体層の分極方向とが互いに逆の方向である、<3>に記載の弾性波装置。
【0123】
<5>前記第1の誘電体膜及び前記第2の誘電体膜のうち少なくとも一方の双極子配向度と、前記圧電体層の双極子配向度とが互いに異なる、<2>に記載の弾性波装置。
【0124】
<6>前記第1の誘電体膜及び前記第2の誘電体膜のうち少なくとも一方は、圧電性を有していない、<5>に記載の弾性波装置。
【0125】
<7>前記支持基板及び前記圧電体層の間に設けられている中間層をさらに備える、<1>~<6>のいずれか1つに記載の弾性波装置。
【0126】
<8>前記中間層が、材料として酸化ケイ素が用いられている層を含む、<7>に記載の弾性波装置。
【0127】
<9>前記圧電体層の材料として圧電単結晶が用いられている、<1>~<8>のいずれか1つに記載の弾性波装置。
【符号の説明】
【0128】
1…弾性波装置
2…圧電性基板
3…支持基板
4…中間層
5,6…第1,第2の層
7…圧電体層
7a,7b…第1,第2の主面
8A,8B…誘電体膜
9A,9B…第1,第2のIDT電極
13…貫通孔
14A~14D…反射器
15A,15B…第1,第2の接続電極
16,17…第1,第2のバスバー
18,19…第1,第2の電極指
28A,28B…第1,第2の誘電体膜
36A,36B…誘電体層
37…圧電基板
37a,37b…第3,第4の主面
A…交叉領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20