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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011428
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】固形乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/894 20060101AFI20240118BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 8/33 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20240118BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20240118BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
A61K8/894
A61K8/37
A61K8/33
A61K8/36
A61K8/34
A61K8/92
A61K8/41
A61K8/42
A61K8/60
A61K8/06
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022113393
(22)【出願日】2022-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】水島 実莉
(72)【発明者】
【氏名】中村 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】白神 裕人
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA081
4C083AA121
4C083AB332
4C083AB442
4C083AC012
4C083AC071
4C083AC111
4C083AC122
4C083AC171
4C083AC241
4C083AC331
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC521
4C083AC641
4C083AD022
4C083AD042
4C083AD112
4C083AD152
4C083AD161
4C083AD162
4C083AD191
4C083BB12
4C083BB13
4C083CC02
4C083DD21
4C083DD31
4C083EE01
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】肌に適用することで、心地よい触覚、嗅覚、または視覚を与え、短時間で手軽にストレスや緊張を緩和できる化粧料の提供。
【解決手段】 (A)極性油、(B)側鎖にポリオキシプロピレン基、または炭素数10~20のアルキル基を有するジメチルポリシロキサン、および(C)水または水溶性溶媒
を含んでなる固形乳化化粧料。前記固形乳化化粧料の総質量を基準とした前記(A)成分の含有率は11質量%以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)極性油、
(B)側鎖にポリオキシプロピレン基、または炭素数10~20のアルキル基を有するジメチルポリシロキサン、および
(C)水または水溶性溶媒
を含んでなる固形乳化化粧料であって、
前記固形乳化化粧料の総質量を基準とした前記(A)成分の含有率が11質量%以上である、固形乳化化粧料。
【請求項2】
(A)成分が、エステル油、エーテル油、高級脂肪酸、高級アルコール、液体油脂、固体油脂、アミド化合物、高級アミン、トリグリセリド油、および糖類からなる群から選択される、請求項1に記載の固形乳化化粧料。
【請求項3】
(A)成分が香料を含んでなる、請求項1または2に記載の固形乳化化粧料。
【請求項4】
(B)成分が、側鎖にポリオキシプロピレン基、および炭素数10~20のアルキル基を有するジメチルポリシロキサンである、請求項1または2に記載の固形乳化化粧料。
【請求項5】
(B)成分が、下記一般式(b):

【化1】
(式中、
pは、9~19であり、
qは、2または3であり、
m:nは、1:5~1:10であり、
x、y、およびzは、主鎖を構成する繰り返し単位の構成比を表し、
各繰り返し単位はランダムに結合していても、ブロックを形成していてもよい)
で表される、請求項1または2に記載の固形乳化化粧料。
【請求項6】
(B)成分が、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコンである、請求項1または2に記載の固形乳化化粧料。
【請求項7】
前記化粧料の総質量を基準とした(B)成分の含有率が、0.2~10質量%である、請求項1または2に記載の固形乳化化粧料。
【請求項8】
(A)成分の含有量Mに対する(B)成分の含有量Mの比M/Mが、0.02~0.3である、請求項1または2に記載の固形乳化化粧料。
【請求項9】
(C)成分が多価アルコールを含む、請求項1または2に記載の固形乳化化粧料。
【請求項10】
前記化粧料の総質量を基準とした前記多価アルコールの含有率が、5~60質量%である、請求項9に記載の固形乳化化粧料。
【請求項11】
前記化粧料の総質量を基準とした前記水の含有率が、10質量%以下である、請求項9に記載の固形乳化化粧料
【請求項12】
前記水の含有量Mに対する前記多価アルコールの含有量Mの比Ma/Mwが、1.5以上である、請求項9または10に記載の固形乳化化粧料。
【請求項13】
25℃におけるレオメーター硬度γが50以下である、請求項1または2に記載の固形乳化化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固形乳化化粧料に関する。さらに詳しくは、肌に塗布してなじませたうえで、広がる香りや温感によって、緊張、疲労、ストレスなどを緩和することができる固形乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、感染症防止のためにマスク着用を強いられたり、長時間のオンライン会議などともなうリモートワークなどによって、従来は感じられなかった緊張、疲労、ストレスを感じたりすることが多くなっている。
【0003】
触覚、嗅覚、視覚などの感覚によって、このようなストレス等を緩和することが可能であることから、触感、香り、色などによってストレス等を緩和することができる化粧料が検討されている。
【0004】
このような化粧料においては、塗布後の香りの持続性などの観点から、油分が多いことが望ましいが、油分の含有率を高くすると、分散安定性や乳化性が劣化する傾向にあってその改良が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際特許出願公開第2019/230578
【特許文献2】特許6728241号明細書
【発明の概要】
【0006】
本発明は、緊張、疲労、ストレスを感じたときに、皮膚に塗布することによって、触覚、嗅覚、視覚などの感覚によって、このようなストレス等を緩和することが可能な固形乳化化粧料を提供することを目的とする。
【0007】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1] (A)極性油、
(B)側鎖にポリオキシプロピレン基、または炭素数10~20のアルキル基を有するジメチルポリシロキサン、および
(C)水または水溶性溶媒
を含んでなる固形乳化化粧料であって、
前記固形乳化化粧料の総質量を基準とした前記(A)成分の含有率が11質量%以上である、固形乳化化粧料。
[2] (A)成分が、エステル油、エーテル油、高級脂肪酸、高級アルコール、液体油脂、固体油脂、アミド化合物、高級アミン、トリグリセリド油、および糖類からなる群から選択される、[1]に記載の固形乳化化粧料。
[3] (A)成分が香料を含んでなる、[1]または[2]に記載の固形乳化化粧料。
[4] (B)成分が、側鎖にポリオキシプロピレン基、および炭素数10~20のアルキル基を有するジメチルポリシロキサンである、[1]~[3]のいずれかに記載の固形乳化化粧料。
[5] (B)成分が、下記一般式(b):
【化1】
(式中、
pは、9~19であり、
qは、2または3であり、
m:nは、1:5~1:10であり、
x、y、およびzは、主鎖を構成する繰り返し単位の構成比を表し、
各繰り返し単位はランダムに結合していても、ブロックを形成していてもよい)
で表される、[1]~[4]のいずれかに記載の固形乳化化粧料。
[6] (B)成分が、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコンである、[1]~[5]のいずれかに記載の固形乳化化粧料。
[7] 前記化粧料の総質量を基準とした(B)成分の含有率が、0.2~10質量%である、[1]~[6]のいずれかに記載の固形乳化化粧料。
[8] (A)成分の含有量Mに対する(B)成分の含有量Mの比M/Mが、0.02~0.3である、[1]~[7]のいずれかに記載の固形乳化化粧料。
[9] (C)成分が多価アルコールを含む、[1]~[8]のいずれかに記載の固形乳化化粧料。
[10] 前記化粧料の総質量を基準とした前記多価アルコールの含有率が、5~60質量%である、[9]に記載の固形乳化化粧料。
[11] 前記化粧料の総質量を基準とした前記水の含有率が、10質量%以下である、[9]に記載の固形乳化化粧料
[12] 前記水の含有量Mに対する前記多価アルコールの含有量Mの比Ma/Mwが、1.5以上である、[9]または[10]に記載の固形乳化化粧料。
[13] 25℃におけるレオメーター硬度γが50以下である、[1]~[12]のいずれかに記載の固形乳化化粧料。
【0008】
オフィスワークやリモートワークなどにおいて、ストレス等を感じた場合に、本発明による化粧料を肌に適用することで、心地よい触覚、嗅覚、または視覚を与え、短時間で手軽にそのストレス等を緩和でき、作業等の効率を改善することができる。さらに、本発明による化粧料は、分散安定性に優れており、製造時の歩留まりも改善されている。
【発明の具体的説明】
【0009】
本発明による固形乳化化粧料(以下、簡単に化粧料ということがある)は、(A)極性油、(B)活性剤、および(C)水または水溶性溶媒を含んでなる固形乳化化粧料である。本発明による化粧料に含まれる各成分について説明すると以下のとおりである。
【0010】
(A)極性油
本発明による化粧料は、極性油を含んでなる。極性油は通常、化粧品、医薬品、食品で用いられるものであれば特に限定されるものでない。ここで極性油とは、油類のうち親水性基を有するものであり、例えばIOB値(Inorganic/Organic Balance)が、0.05~0.80であるものが好ましく用いられる。また、化学構造の観点から分類すると、極性油は、エステル油、エーテル油、高級脂肪酸、高級アルコール、液体油脂、固体油脂、アミド化合物、高級アミン、トリグリセリド油、および糖類からなる群から選択されるものが好ましく、エステル油、高級脂肪酸、高級アルコールからなる群から選択されるものが好ましい。
【0011】
エステル油は、モノエステル、ジエステル、炭酸エステル等であってよい。また、エステル油の具体例として、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸イソプロピル、2-エチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、12-ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ2-エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ2-ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル(トリエチルヘキサノイン)、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、ナフタリンジカルボン酸ジエチルヘキシル、安息香酸アルキル(C12-15)、セテアリルイソノナノエート、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン、(ジカプリル酸/カプリン酸)ブチレングリコール、トリミリスチン酸グリセリル、トリ2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オレイル、セトステアリルアルコールアセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバシン酸ジ2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸ジ2-エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル、p-メトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、ジピバリン酸トリプロピレングリコール、パルミチン酸オクチル、イソパルミチン酸オクチル、ピバリン酸イソデシル、炭酸ジカプリリル等が挙げられる。
【0012】
高級脂肪酸の具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、トール酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)等が挙げられる。
【0013】
高級アルコールの具体例としては、直鎖アルコール(例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等)、及び分枝鎖アルコール(例えば、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)-2-デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等)等が挙げられる。
エステル油、例えばセバシン酸ジイソプロピル、コハク酸ジエチルヘキシル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、2-エチルヘキサン酸セチル、炭素数12~15のアルキルベンゾエート、およびイソノナン酸イソノニル等が挙げられ、これらのうちセバシン酸ジイソプロピル、およびコハク酸ジエチルヘキシル、が好ましく用いられる。
【0014】
本発明による化粧料には、これらのうち、エステル油が好ましく用いられる。
【0015】
なお、本発明による化粧料は、使用時に好ましい香りを与えることができるが、そのために香料を配合することが好ましい。この香料として、芳香または香気を放散する極性油を用いることができる。以下、このような極性油を芳香極性油という。本発明において、芳香極性油は、極性油の一部であり、香料でもある。
このような芳香極性油としては、化粧品分野で香料として用いられるものから任意に選択して用いることができる。このような芳香性極性油としては、フェネチルアルコール、リナリルアルコール、リモネン、リナロールなどが挙げられる。
【0016】
本発明による化粧料は、比較的高濃度の極性油を含有している。具体的には、化粧料の総質量を基準として11質量%以上、好ましくは13質量%以上、より好ましくは17質量%以上の極性油を含む。このように極性油を高濃度で含むことにより、化粧料を肌に適用したときのしっとりした感触を得ることができ、また芳香の持続性が改良される。
【0017】
(B)活性剤
本発明による化粧料は、上記の極性油を分散させるために活性剤を含んでなる。このような活性剤として、側鎖にポリオキシプロピレン基、または炭素数10~20のアルキル基を有するジメチルポリシロキサンが用いられる。本発明による化粧料は、これらの特定の活性剤を用いることで、極性油の含有率が高くても優れた分散安定性を実現している。
【0018】
これらの活性剤は、ジメチルポリシロキサンを主骨格に有し、その側鎖にポリオキシプロピレン基、または炭素数10~20のアルキル基を有している。本発明に用いられる活性剤は、これらの基のいずれかを有していればいいが、その両方を有していてもよい。両方の側鎖を有することで、より高い分散安定性を実現できる。またこれらの側鎖以外の側鎖を有していてもよい。例えば、ポリオキシエチレン基を側鎖として有することが好ましい。
【0019】
好ましい活性剤のひとつは、側鎖にポリオキシプロピレン基、ポリオキシエチレン基、および炭素数10~20のアルキル基を有するものである。このような活性剤の一例は、下記式(b)で表すことができる。
【化2】
(式中、
pは、9~19であり、
qは、2または3であり、
m:nは、1:5~1:10であり、
x、y、およびzは、主鎖を構成する繰り返し単位の構成比を表し、
各繰り返し単位はランダムに結合していても、ブロックを形成していてもよい)
【0020】
このような活性剤の具体例として、セチルPEG/PPG-10/1ジメチコンが挙げられ、ABIL 90、 ABIL 180(いずれも商品名、エボニックオペレーションGmbH製)、KF-6048(商品名、信越化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0021】
式(b)で表される活性剤の分子量は特に限定されないが、一般に質量平均分子量が10,000以上のものが用いられる。
【0022】
(B)成分の含有率は、目的に応じて任意に調整することができるが、化粧料の総質量を基準とした(B)成分の含有率が、0.2~10質量%であることが好ましく、0.3~8質量%であることがより好ましい。活性剤の含有率をこの範囲とすることで優れた分散安定性を実現できる。
【0023】
なお、化粧料の分散安定性は、(A)成分と(B)成分との配合比にも影響を受けやすい。すなわち、一方の配合量が極端に多い場合や極端に少ない場合、十分な分散安定性が得られないことがある。このため、(A)成分の含有量Mに対する(B)成分の含有量Mの比M/Mが、0.02~0.3であることが好ましく、0.03~02であることがより好ましい。
【0024】
(C)水または水溶性溶媒
本発明は前記極性油等の油性成分を含む固形乳化化粧料であり、乳化物の水相を構成する成分として、水または水性溶媒を含んでなる。
【0025】
本発明による化粧料が水を含む場合。水としては、一般的に化粧料に使用される水を使用することができ、例えば、精製水、イオン交換水、水道水等を使用することができる。
【0026】
また、水性溶媒としては、低級アルコール、エーテル、ケトンなどが挙げられるが、これらのうち、炭素数6以下の低級アルコール、特に多価アルコールが好ましい。多価アルコールは、保湿剤として作用するほか、化粧料を肌に適用したときに温感を与えることができるため、本発明によるストレス等の緩和に寄与することができる。このような多価アルコールとしては、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール・ポリプロピレングリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ソルビタン、グルコース、ソルビトール、マルチトール、スクロース、ラフィノース、ヘキシレングリコール、1,2-ペンタンジオール、およびトレハロースなどを挙げることができる。
【0027】
本発明による化粧料は、水または水性溶媒を含むものであるが、水の含有率は少ないことが好ましい。水の含有率が低いことによって、水性溶媒による温感効果が高まる。具体的には、化粧料の総質量を基準とした水の含有率が、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。
【0028】
また、水性溶媒として多価アルコールを用いる場合、化粧料の総質量を基準とした多価アルコールの含有率が、5~60質量%であることが好ましく、10~50質量%であることがより好ましい。本発明による化粧料が多価アルコールをこのような範囲で含む場合、優れた温感と、優れた分散安定性を実現できる。
【0029】
さらに多価アルコールの含有率は水の含有率よりも高いことが好ましく、具体的には 水の含有量Mに対する前記多価アルコールの含有量Mの比Ma/Mwが、1.5以上であることが好ましく、5以上であることがより好ましい。
【0030】
(D)その他の成分
本発明による化粧料は、上記した(A)~(C)成分の他に、必要に応じてその他の成分を配合することができる。
【0031】
このようなその他の成分のひとつとして、ワックスが挙げられる。
【0032】
ワックスは非液状の油性材料である。本発明において、ワックスは、通常の化粧料において用いられるものから必要に応じて選択して用いることができる。ワックスは、合成ワックスと天然ワックスとに大別でき、いずれを用いることもできる。そして、合成ワックスには、炭化水素系合成ワックス、高級脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、ケトン、アミン、水素硬化油などがある。また、天然ワックスには、動物由来、植物由来、石油由来、鉱物由来などのワックスがある。本発明においては、これらの各種ワックスのうち、炭化水素系ワックスが好ましく用いられる。炭化水素系ワックスとしては、炭化水素系合成ワックス、例えばフィッシャー・トロプスワックス、ポリエチレンワックスなど、と石油または鉱物由来の天然炭化水素系ワックス、例えばパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、セレシンワックスなど、が挙げられる。
【0033】
また、本発明において、ワックスとして、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ヒマワリ種子ロウ、ミツロウ、綿ロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ライスロウ、カポックロウ、モクロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ホホバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、ビーズワックス、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、脂肪酸グリセリド、硬化ヒマシ油、ワセリン、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等を用いることもできる。
【0034】
本発明による化粧料は、さらに、非極性油、色材、光輝性顔料、界面活性剤、増粘剤、紫外線吸収剤、多価アルコール以外の保湿剤、酸化防止剤、消炎剤、美白剤、各種抽出物、賦活剤、血行促進剤、抗脂漏剤、 抗炎症剤、油溶性皮膜形成剤、水溶性皮膜形成剤、およびアミノ酸またはペプチド等を含んでいてもよい。
【0035】
本発明による化粧料は、上記した成分を含むものであるが、本発明による固形乳化化粧料は、例えばスティック状に成型され、肌に直接適用することができる。また、成形された化粧料をコンパクト容器に収容した形態とすることもできる。
【0036】
本発明による固形乳化化粧料の硬度が特定の範囲内にある場合、特に優れた使用感を実現できる。具体的には、25℃において、1.5mmφの針を用い、針入速度2cm/分、針入距離10mmの条件で測定したレオメーター硬度が50以下であることが好ましい。より具体的には、レオメーター硬度γは、上記した条件で測定された測定応力から、以下の式によって算出される。
γ=(G*L)/(l*a) (dyn/cm
(式中、
G: 測定応力(gr)×980dyn
L: サンプルの厚み(mm)
l: 圧縮距離(mm)
a: 針の断面積(cm))
【0037】
[実施例]
以下に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、配合量は化粧料の総質量に対する質量%を表す。
【0038】
[乳化直後および脱気後の安定性評価]
下記の表1に示された組成で、実施例1~10、比較例1~8の固形乳化化粧料を製造し、以下の項目について評価した。それらの結果も表1-1および1-2に併せて示す。
【0039】
[乳化直後、および脱気後の安定性]
各試料の原料を溶融状態で攪拌混合して、乳化化粧料を製造した。この乳化直後の乳化状態を目視により確認した。また乳化後、さらに十分に攪拌して脱気を行い、脱気後の乳化状態を目視により確認した。評価基準は以下のとおりである。
A: 乳化状態は安定であった
B: 試料表面にわずかなムラが認められた
C: 試料に分離が認められた
【0040】
[硬度]
測定機器としてRHEOTEC FUDOH RHEO METER(商品名、株式会社レオテック製)を用いて、25℃において、1.5mmφの針を用い、針入速度2cm/分、針入距離10mmの条件で測定した。
【0041】
【表1-1】
【0042】
【表1-2】
表中のN/Aは未測定を表す
【0043】
[リメルト後の安定性評価]
実施例1~3および10、ならびに比較例1~3、および6~7について、さらにリメルト後の安定性を以下の方法で評価した。得られた結果は表2に示すとおりであった。
【0044】
[リメルト後の安定性]
脱気後の乳化安定性を評価した後の試料を冷却して固形としてから保存し,再度加熱溶解した後の乳化状態を目視により確認した。評価基準は以下のとおりである。
A: 乳化状態は安定であった
B: 試料表面にわずかなムラが認められた
C: 試料に分離が認められた
【0045】
【表2】