(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114281
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】配電線自動化システム、配電系統監視制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20240816BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
H02J13/00 311R
H02J13/00 301A
H02J3/00 170
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019946
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 颯人
(72)【発明者】
【氏名】市村 義宏
(72)【発明者】
【氏名】奥田 倫裕
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AC05
5G064AC08
5G064CB04
5G064CB06
5G064CB10
5G064DA03
5G066AA03
5G066AE01
5G066AE03
5G066AE09
(57)【要約】
【課題】新規配電事業者が運用する配電系統監視制御装置との情報連係機能を実装することで、一般送配電事業者が、新規配電事業者が管理する系統情報の取得可能とし、新規配電事業者が配電網の一部を運用した場合を含め、従来と同等の監視制御を実現可能とする。
【解決手段】実施形態の配電線自動化システムは、一般送配電事業者が管理する第1配電系統設備の設備情報と、第1配電系統設備のオンライン情報と、第1配電系統設備で発生した事故の事故件名管理情報と、第1配電系統設備で行われた作業の作業件名管理情報と、第1配電系統設備の計画に関する系統計画情報と、を、第1配電系統設備の一部でありかつ一般送配電事業者から譲渡または貸与された第2配電系統設備を管理する新規配電事業者が運用する配電系統監視制御装置と連係する新規配電事業者連係機能部、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般送配電事業者が管理する第1配電系統設備の設備情報と、前記第1配電系統設備のオンライン情報と、前記第1配電系統設備で発生した事故の事故件名管理情報と、前記第1配電系統設備で行われた作業の作業件名管理情報と、前記第1配電系統設備の計画に関する系統計画情報と、を、前記第1配電系統設備の一部でありかつ前記一般送配電事業者から譲渡または貸与された第2配電系統設備を管理する新規配電事業者が運用する配電系統監視制御装置と連係する新規配電事業者連係機能部、
を備える配電線自動化システム。
【請求項2】
前記新規配電事業者連係機能部は、前記第2配電系統設備の設備情報と、前記第2配電系統設備の前記オンライン情報と、前記第2配電系統設備で発生した事故の前記事故件名管理情報と、前記第2配電系統設備で行われた作業の前記作業件名管理情報と、前記第2配電系統設備の計画に関する前記系統計画情報と、を、前記配電系統監視制御装置と連係する、請求項1に記載の配電線自動化システム。
【請求項3】
前記新規配電事業者が遠制制御の可能な前記第2配電系統設備への制御を要求した際に、当該第2配電系統設備の選択制御データを、前記第2配電系統設備を制御する伝送系装置に送信する伝送系装置選択制御送信機能部をさらに備える、請求項2に記載の配電線自動化システム。
【請求項4】
前記伝送系装置選択制御送信機能部は、前記新規配電事業者の配電線自動化システム端末から、前記第2配電系統設備の制御を要求する制御要求情報を受信した場合に、前記選択制御データを前記伝送系装置に送信する、請求項3に記載の配電線自動化システム。
【請求項5】
前記新規配電事業者が遠制制御の可能な前記第2配電系統設備への制御を要求された際に、前記配電線自動化システムにて前記第2配電系統設備の所属および契約と、系統運用への支障の有無と、に基づいて、前記第2配電系統設備の遠隔制御が可能か否かを判断する融通計算機能部をさらに備える請求項3に記載の配電線自動化システム。
【請求項6】
前記融通計算機能部は、前記第2配電系統設備内で、配電線事故、発電設備事故、または発電機設備の需給不平衡が生じて、作業計画時に電力融通を要請された場合、前記第2配電系統設備への電力融通の融通手順を作成する、請求項5に記載の配電線自動化システム。
【請求項7】
前記融通計算機能部は、前記一般送配電事業者の管理する前記第1配電系統設備内で、配電線事故、発電設備事故、または発電機設備の需給不平衡が発生して、作業計画時に前記第2配電系統設備から電力融通が必要な場合に、前記新規配電事業者への電力融通を要請する、請求項5または6に記載の配電線自動化システム。
【請求項8】
前記新規配電事業者連係機能部は、前記設備情報と、前記オンライン情報と、前記事故件名管理情報と、前記作業件名管理情報と、前記系統計画情報と、をデータウェアハウスに保存する、請求項1に記載の配電線自動化システム。
【請求項9】
配電線自動化システムで実行される配電系統監視制御方法であって、
新規配電事業者連係機能部が、
一般送配電事業者が管理する第1配電系統設備の設備情報と、前記第1配電系統設備のオンライン情報と、前記第1配電系統設備で発生した事故の事故件名管理情報と、前記第1配電系統設備で行われた作業の作業件名管理情報と、前記第1配電系統設備の計画に関する系統計画情報と、を、前記第1配電系統設備の一部でありかつ前記一般送配電事業者から譲渡または貸与された第2配電系統設備を管理する新規配電事業者が運用する配電系統監視制御装置と連係する工程と、
前記第2配電系統設備の設備情報と、前記第2配電系統設備の前記オンライン情報と、前記第2配電系統設備で発生した事故の前記事故件名管理情報と、前記第2配電系統設備で行われた作業の前記作業件名管理情報と、前記第2配電系統設備の計画に関する前記系統計画情報と、を、前記配電系統監視制御装置と連係する工程と、
を含む配電系統監視制御方法。
【請求項10】
コンピュータを、
一般送配電事業者が管理する第1配電系統設備の設備情報と、前記第1配電系統設備のオンライン情報と、前記第1配電系統設備で発生した事故の事故件名管理情報と、前記第1配電系統設備で行われた作業の作業件名管理情報と、前記第1配電系統設備の計画に関する系統計画情報と、を、前記第1配電系統設備の一部でありかつ前記一般送配電事業者から譲渡または貸与された第2配電系統設備を管理する新規配電事業者が運用する配電系統監視制御装置と連係する新規配電事業者連係機能部、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、配電線自動化システム、配電系統監視制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レジリエンス強化等の観点から、特定の区域において一般送配電事業者の配電網の一部を新たな事業者にて系統運用を行う配電ライセンスの法的整備に向けた本格的検討が始まっている。一般送配電事業者の系統運用管理下での一部の配電線または区間を、譲渡または貸与した場合、新規参入した被譲渡側または貸借側配電事業者(以下、新規配電事業者)がもつ新技術を活用した系統運用の効率化、および再生可能エネルギーの分散電源の導入促進も期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般送配電事業者がもつ配電線自動化システムは、新規配電事業者が配電網の一部を運用する場合を考慮したシステムではないため、一般送配電事業者は新規配電事業者が管理する系統情報を取得することが困難である。したがって、一般送配電事業者が系統運用している一部の配電線または区間の管理権限を単数または複数の新規配電事業者に譲渡または貸与した場合、従来と同等の監視制御(配電系統事故発生時対応、系統メンテナンス業務、作業計画業務等)を実施できない可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の配電線自動化システムは、一般送配電事業者が管理する第1配電系統設備の設備情報と、第1配電系統設備のオンライン情報と、第1配電系統設備で発生した事故の事故件名管理情報と、第1配電系統設備で行われた作業の作業件名管理情報と、第1配電系統設備の計画に関する系統計画情報と、を、第1配電系統設備の一部でありかつ一般送配電事業者から譲渡または貸与された第2配電系統設備を管理する新規配電事業者が運用する配電系統監視制御装置と連係する新規配電事業者連係機能部、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1の実施形態にかかる配電線自動化システムを適用したシステムの全体構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態にかかる配電線自動化システムのソフトウェアの基本構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態にかかる配電線自動化システムの特徴の一例を説明するための図である。
【
図4】
図4は、第2の実施形態にかかる配電線自動化システムの特徴の一例を説明するための図である。
【
図5】
図5は、第3の実施形態にかかる配線自動化システムの特徴の一例を説明するための図である。
【
図6】
図6は、第4の実施形態にかかる配電線自動化システムの特徴の一例を説明するための図である。
【
図7】
図7は、第5の実施形態にかかる配線自動化システムの特徴の一例を説明するための図である。
【
図8】
図8は、第7の実施形態にかかる配電線自動化システムの特徴の一例を説明するための図である。
【
図9】
図9は、第8の実施形態にかかる配電線自動化システムの特徴の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付の図面を用いて、本実施形態にかかる配電線自動化システム、配電系統監視制御方法、およびプログラムを適用した配電線自動化システムの一例について説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
本実施形態は、一般配電事業者の管理する電力系統内の配電系統設備(第1配電系統設備の一例)の設備情報と、配電系統設備のオンライン情報(配電系統設備の状態、計測情報等)と、事故件名管理情報と、作業件名管理情報と、第1配電系統設備の一部でありかつ一般配電事業者から譲渡または貸与された配電系統設備(第2配電系統設備の一例)を管理する新規配電事業者が運用する配電線管理システム(配電系統監視制御装置の一例)と連係する例である。
【0009】
図1は、第1の実施形態にかかる配電線自動化システムを適用したシステムの全体構成の一例を示す図である。本実施形態にかかるシステムは、
図1に示すように、電力系統1と、伝送系装置4、配電線自動化システム6、連係用通信網8、連係用通信網ゲートウェイ9、配電線管理システム10、およびデータウェアハウス26を有する。配電線自動化システム6は、設備データベース2、およびオンラインデータベース3を有する。
【0010】
電力系統1は、配電線自動化システム6より伝送系装置4を通じて遠隔監視および遠隔制御が可能な構成となっている。伝送系装置4は、配電系統設備(開閉器等)を制御したり、伝送系装置原始データを配電線自動化システム6に送信したり、電力融通を制御したり、配電系統設備の状態を監視したりする。ここで、伝送系装置原始データは、配電系統設備のオンライン情報の生成に用いる情報(開閉器の開閉、電力の値等)である。
【0011】
配電線自動化システム6は、配電系統設備に関する設備情報を含む設備データベース2と、配電系統設備の現在状態および計測情報等のオンライン情報を含むオンラインデータベース3を管理する。配電線自動化システム6は、連係用通信網ゲートウェイ9を介して連係用通信網8に接続されており、新規配電事業者の配電線管理システム10(配電系統監視制御装置の一例)と、一般配電事業者と新規配電事業者とで共有する各種情報を記憶するデータウェアハウス26にネットワークを介して接続可能な構成となっている。
【0012】
図2は、第1の実施形態にかかる配電線自動化システムのソフトウェアの基本構成の一例を示す図である。本実施形態にかかる配電線自動化システム6は、
図2に示すように、設備データベース2、オンラインデータベース3、原始データ取込機能部7、事故件名管理機能部13、作業件名管理機能部14、メンテナンス件名管理機能部15、系統計画機能部16、ログ保存機能部17、および新規配電事業者連係機能部23を有する。
【0013】
原始データ取込機能部7は、伝送系装置4から伝送系装置原始データ5を受信すると、受信した伝送系装置原始データ5から、2値情報および数値情報を取り出す。また、原始データ取込機能部7は、2値情報処理機能部11と数値情報監視処理機能部12を起動し、2値情報を2値情報処理機能部11に渡し、数値情報を数値情報監視処理機能部12に渡す。
【0014】
2値情報処理機能部11は、2値情報(開閉器の入り切り等)を予め設定されたフォーマットに変換して、当該2値情報によって、オンラインデータベース3に記憶されるオンライン情報を更新する。数値情報監視処理機能部12は、数値情報(電力のワット、位相差等)を予め設定されたフォーマットに変換して、当該数値情報によって、オンラインデータベース3に記憶されるオンライン情報を更新する。
【0015】
メンテナンス件名管理機能部15は、電力系統1内の配電系統設備のメンテナンス件名データ21の管理と、配電系統設備の設備情報(どういう設備があるか、開閉器が何個あるか等)を含む設備データベース2の更新と、を行う。
【0016】
事故件名管理機能部13は、電力系統1内の配電系統設備で発生した事故の事故件名管理情報の一例である事故件名データ19の管理を行う。作業件名管理機能部14は、電力系統1内の配電系統設備で行われた作業の作業件名管理情報の一例である作業件名データ20の管理を行う。系統計画機能部16は、電力系統1内の配電系統設備の計画に関する系統計画情報の一例である系統計画検討件名データ22の管理を行う。ログ保存機能部17は、計算機のセキュリティ情報、計算機に作業が行われたタイミング等、配電線自動化システム6を構成する計算機のログを含む計算機ログデータ18の収集を行う。
【0017】
新規配電事業者連係機能部23は、連係用通信網ゲートウェイ9および連係用通信網8を介して、設備データベース2、オンラインデータベース3、計算機ログデータ18、事故件名データ19、作業件名データ20、メンテナンス件名データ21、系統計画検討件名データ22等の少なくとも1つを配電線管理システム10と連係する。例えば、新規配電事業者連係機能部23は、連係用通信網ゲートウェイ9および連係用通信網8を介して、設備データベース2等の少なくとも1つを配電線管理システム10に送信する。
【0018】
図3は、第1の実施形態にかかる配電線自動化システムの特徴の一例を説明するための図である。本実施形態では、新規配電事業者連係機能部23は、設備データベース2等を収集する。また、新規配電事業者連係機能部23は、収集した設備データベース2等を含む配電線自動化システム連係用ファイル25を作成する。また、新規配電事業者連係機能部23は、連係用通信網ゲートウェイ9と連係用通信網8を経由して、配電線管理システム10に配電線自動化システム連係用ファイル25を送信する。
【0019】
このように、第1の実施形態にかかる配電線自動化システム6によれば、配電線自動化システム6が取得した、電力系統1の現在状態と、標準状態と、系統計画内容と、事故件名管理情報と、作業件名管理情報と、を配電線管理システム10が取得可能となる。
【0020】
(第2の実施形態)
本実施形態は、新規配電事業者の管理する第2配電系統設備の設備情報と、第2配電系統設備のオンライン情報と、第2配電系統設備で発生した事故の事故件名管理情報と、第2配電系統設備で行われた作業の作業件名管理情報と、第2配電系統設備の計画に関する系統計画情報と、を新規送配電事業者が運用する配電線管理システムと連係することを可能とする例である。以下の説明では、第1の実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0021】
図4は、第2の実施形態にかかる配電線自動化システムの特徴の一例を説明するための図である。本実施形態では、配電線管理システム10は、電力系統1のうち配電線管理システム10が運用する系統区間(第2配電系統設備のうち、新規配電事業者が設置した設備等、新規配電事業者しか分からない設備等)の情報を、配電線自動化システム被連係用ファイル33に登録する。配電線管理システム10は、連係用通信網8と連係用通信網ゲートウェイ9を経由して、配電線自動化システム被連係用ファイル33を配電線自動化システム6に送信する。
【0022】
配電線自動化システム6は、新規配電事業者連係機能部23を起動する。そして、新規配電事業者連係機能部23は、配電線自動化システム被連係用ファイル33に基づいて、配電線管理システム10が運用する系統区間の設備データベース2、オンラインデータベース3、事故件名データ19、作業件名データ20、メンテナンス件名データ21、系統計画検討件名データ22等を更新する。
【0023】
すなわち、新規配電事業者連係機能部23は、配電線自動化システム被連係用ファイル33に基づいて、配電線管理システム10が運用する系統区間の設備データベース2、オンラインデータベース3、事故件名データ19、作業件名データ20、メンテナンス件名データ21、系統計画検討件名データ22等を、配電線管理システム10と連係する。
【0024】
具体的には、新規配電事業者連係機能部23は、被起動の新規配電事業者連係機能部23は、配電線自動化システム6の2値情報処理機能部11と、数値情報監視処理機能部12と、事故件名管理機能部13と、作業件名管理機能部14と、メンテナンス件名管理機能部15と、系統計画機能部16と、を起動する。
【0025】
2値情報処理機能部11は、配電線自動化システム被連係用ファイル33に基づいて、電力系統1のうち、配電線管理システム10が運用する系統区間の2値情報に関するオンラインデータベース3を更新する。数値情報監視処理機能部12は、配電線自動化システム被連係用ファイル33に基づいて、電力系統1のうち、配電線管理システム10が運用する系統区間の数値情報に関するオンラインデータベース3を更新する。
【0026】
事故件名管理機能部13は、配電線自動化システム被連係用ファイル33に基づいて、電力系統1内の配電系統設備のうち、配電線管理システム10が運用する系統区間の事故件名データ19の管理(登録、更新等)を行う。作業件名管理機能部14は、配電線自動化システム被連係用ファイル33に基づいて、電力系統1のうち、配電線管理システム10が運用する系統区間の作業件名データ20の管理(登録、更新等)を行う。
【0027】
メンテナンス件名管理機能部15は、配電線自動化システム被連係用ファイル33に基づいて、電力系統1のうち配電線管理システム10が運用する系統区間のメンテナンス件名データ21の管理(登録、更新等)、および設備データベース2の更新を行う。系統計画機能部16は、配電線自動化システム被連係用ファイル33に基づいて、電力系統1のうち、配電線管理システム10が運用する系統区間の系統計画検討件名データ22の管理(登録、更新等)を行う。
【0028】
このように、第2の実施形態にかかる配電線自動化システム6によれば、配電線管理システム10が管理している系統区間の現在状態と、標準状態と、系統計画内容と、事故件名管理情報と、作業件名管理情報と、を配電線自動化システム6が登録と管理を可能となる。
【0029】
(第3の実施形態)
本実施形態は、新規配電事業者が遠制制御の可能な配電系統設備への制御を要求した際に、配電線自動化システムからの制御を可能とする例である。以下の説明では、上述の実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0030】
図5は、第3の実施形態にかかる配線自動化システムの特徴の一例を説明するための図である。配電線管理システム10は、連係用通信網8と連係用通信網ゲートウェイ9を経由して、配電線自動化システム被連係用ファイル33を、配電線自動化システム6に送信する。ここで、配電線自動化システム被連係用ファイル33は、選択要求情報および制御要求情報を含む。選択要求情報は、電力系統1のうち配電線管理システム10が運用する配電系統設備でありかつ遠制制御が可能な設備を示す情報である。制御要求情報は、配電系統設備の制御を要求する情報である。
【0031】
配電線自動化システム6は、新規配電事業者連係機能部23を起動する。新規配電事業者連係機能部23は、配電線自動化システム被連係用ファイル33より、遠制選択制御要求データ27(配電系統設備の選択、配電系統設備の制御情報)の作成と、伝送系装置選択制御送信機能部28の起動を行う。伝送系装置選択制御送信機能部28は、遠制選択制御要求データ27より選択制御データ29を作成し、伝送系装置4に送信する。すなわち、伝送系装置選択制御送信機能部28は、新規配電事業者が遠制制御の可能な第2配電系統設備への制御を要求した際に、当該第2配電系設備の選択制御データを作成して、第2配電系統設備を制御する伝送系装置4に送信する。
【0032】
伝送系装置4は、選択制御データに従って、遠制制御の対象の第2配電系統設備を制御する。また、伝送系装置4は、第2配電系統設備の制御結果である遠制制御要求応答結果を伝送系装置原始データ5として配電線自動化システム6に送信する。原始データ取込機能部7は、2値情報処理機能部11を起動する。2値情報処理機能部11は、電力系統1内の第2配電系統設備の制御結果を含む遠制選択制御応答データ24の作成と、新規配電事業者連係機能部23の起動と、遠制選択制御応答データ24の新規配電事業者連係機能部23への送信を行う。
【0033】
被起動された新規配電事業者連係機能部23は、遠制選択制御応答データ24を配電線自動化システム連係用ファイル25に登録すると、連係用通信網ゲートウェイ9と連係用通信網8を経由して、配電線自動化システム連係用ファイル25を配電線管理システム10と連係する。
【0034】
このように、第3の実施形態にかかる配電線自動化システム6によれば、配電線管理システム10が管理する電力系統1のうち、遠制制御が可能な第2配電系統設備への制御を要求した際に、配電線自動化システム6から制御可能となる。
【0035】
(第4の実施形態)
本実施形態は、新規配電事業者が遠制制御の可能な第2配電系統設備への制御を要求した際に、新規配電事業者の配電線自動化システム端末から第2配電系統設備を直接制御可能とする例である。以下の説明では、上述の実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0036】
図6は、第4の実施形態にかかる配電線自動化システムの特徴の一例を説明するための図である。
図6に示すように、配電線管理システム10は、新規配電事業者内通信網31を経由して、新規配電事業者の端末である配電線自動化システム端末30に対して制御要求情報を送信する。配電線自動化システム端末30は、遠制制御が可能な第2配電系統設備への制御要求情報を登録した配電線自動化システム被連係用ファイル33を配電線自動化システム6に送信する。すなわち、配電線自動化システム端末30は、新規配電事業者が遠制制御の可能な第2配電系統設備の制御を要求した際に、第2配電系統設備の制御要求情報を含む配電線自動化システム被連係用ファイル33を配電線自動化システム6に送信する。
【0037】
配電線自動化システム6は、新規配電事業者連係機能部23を起動する。新規配電事業者連係機能部23は、配電線自動化システム被連係用ファイル33より、遠制選択制御要求データ27の作成と、伝送系装置選択制御送信機能部28の起動を行う。伝送系装置選択制御送信機能部28は、遠制選択制御要求データ27より選択制御データ29を作成し、伝送系装置4に送信する。すなわち、伝送系装置選択制御送信機能部28は、新規配電事業者の配電線自動化システム端末30から、第2配電系統設備の制御を要求する制御要求情報を受信した場合に、選択制御データを伝送系装置4に送信する。
【0038】
このように、第4の実施形態にかかる配電線自動化システム6によれば、配電線管理システム10と配電事業者が管理する配電線自動化システム端末30のデータ連係と、配電線自動化システム端末30を経由した電力系統の監視および制御が可能となる。
【0039】
(第5の実施形態)
本実施形態は、新規配電事業者が遠制制御の可能な第2配電系統設備への制御を要求された際に、配電線自動化システムにて第2配電系統設備の所属および契約(融通可否等)と、系統運用への支障の有無(位相差等ループ可否等)と、に基づいて、第2配電系統設備の遠隔制御が可能か否かを判断する例である。以下の説明では、上述の実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0040】
図7は、第5の実施形態にかかる配線自動化システムの特徴の一例を説明するための図である。
図7に示すように、配電線管理システム10は、連係用通信網8と連係用通信網ゲートウェイ9を経由して、電力系統1のうち配電線管理システム10が運用する系統設備でありかつ遠制制御が可能な第2配電系統設備の制御要求情報を登録した配電線自動化システム被連係用ファイル33を配電線自動化システム6に送信する。
【0041】
新規配電事業者連係機能部23は、融通計算機能部32に配電線自動化システム被連係用ファイル33を渡す。例えば、第2配電系統設備との位相差が大きいと、電線に異常が生じる等の不具合が生じる場合がある。そのため、融通計算機能部32は、第2配電系統設備の契約情報等の設備データベース2(第2配電系統設備の所属や契約等)とオンラインデータベース3(系統運用への支障の有無)に基づいて、第2配電系統設備の遠制制御の実施可能性を判断する。融通計算機能部32は、その判断結果を、配電線自動化システム連係用ファイル25へ登録する。新規配電事業者連係機能部23は、配電線自動化システム連係用ファイル25を、連係用通信網ゲートウェイ9と連係用通信網8を経由して、配電線管理システム10に連係することにより、制御要求の判断結果を通知する。
【0042】
このように、第5の実施形態にかかる配電線自動化システム6によれば、新規配電事業者から遠制制御の可能な第2配電系統設備への制御を要求された際に、配電線自動化システム6にて第2配電系統設備の所属や契約(融通可否等)と、系統運用への支障有無(位相差等ループ可否)と、を考慮して、第2配電系統設備の遠隔制御の可能性を判断可能とする。
【0043】
(第6の実施形態)
本実施形態は、新規配電事業者の管理する第2配電系統設備内で配電線事故、発電設備事故、または発電機設備の需給不平衡が生じて、作業計画時に電力融通を要請された場合、第2配電系統設備への電力の融通手順を作成する例である。以下の説明では、上述の実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0044】
図7に示すように、配電線管理システム10は、連係用通信網8と連係用通信網ゲートウェイ9を経由して、電力系統1のうち配電線管理システム10が運用する系統区間にて電力融通の必要有無と、電力融通が必要な系統区間と、融通に必要な電力量と、連係区間の電圧および位相と、を登録した配電線自動化システム被連係用ファイル33を配電線自動化システム6に送信する。
【0045】
新規配電事業者連係機能部23は、配電線自動化システム連係用ファイル35(制御要求情報)を融通計算機能部32に渡す。第2配電系統設備内で、配電線事故、発電設備事故、または発電機設備の需給不平衡が生じて、作業計画時に電力融通を要請された場合、融通計算機能部32は、設備データベース2とオンラインデータベース3に基づいて、融通手順を作成する。
【0046】
このように、第6の実施形態にかかる配電線自動化システム6によれば、新規配電事業者の管理する第2配電系統設備内で配電線事故、発電設備事故、または発電機設備の需給不平衡が生じて、作業計画時に電力融通を要請された場合、第2配電系統設備への電力融通の融通手順を作成することが可能となる。
【0047】
(第7の実施形態)
本実施形態は、一般送配電事業者の管理する配電系統内で新規配電事業者の管理する配電系統内で配電線事故、発電設備事故、または発電機設備の需給不平衡が発生して、作業計画時に新規配電事業者の管理する第2配電系統設備からの電力融通が必要な場合に、一般送配電事業者が新規配電事業者への融通要請を可能とする例である。以下の説明では、上述の実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0048】
図8は、第7の実施形態にかかる配電線自動化システムの特徴の一例を説明するための図である。
図8に示すように、融通計算機能部32は、事故件名管理機能部13から送信される事故件名データ19と、作業件名管理機能部14から送信される作業件名データ20を受信すると、設備データベース2とオンラインデータベース3から、電力融通の融通手順を作成する。融通計算機能部32は、融通手順作成時に新規配電事業者が管理する区間より電力融通が必要と判断した場合、新規配電事業者連係機能部23に伝達し、配電線自動化システム連係用ファイル25を更新する。すなわち、融通計算機能部32は、一般送配電事業者の管理する第1配電系統設備内で、配電線事故、発電設備事故、または発電機設備の需給不平衡が発生して、作業計画時に第2配電系統設備から電力融通が必要な場合に、新規配電事業者への電力融通を要請する。
【0049】
新規配電事業者連係機能部23は、連係用通信網ゲートウェイ9と連係用通信網8を経由して、配電線自動化システム連係用ファイル25を連係することで、配電線管理システム10に電力融通要求を行う。
【0050】
このように、第7の実施形態にかかる配電線自動化システム6によれば、一般送配電事業者の管理する配電系統内で配電線事故、発電設備事故、または発電機設備の需給不平衡が発生して、作業計画時に新規配電事業者の管理する第2配電系統設備から電力融通が必要な場合に、一般送配電事業者が新規配電事業者に融通を要請することを可能となる。
【0051】
(第8の実施形態)
本実施形態は、一般送配電事業者および新規配電事業者の系統監視情報と系統制御情報と系統計画情報インターネットを介して共有することを可能とする例である。以下の説明では、上述の実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0052】
図9は、第8の実施形態にかかる配電線自動化システムの特徴の一例を説明するための図である。
図9に示すように、新規配電事業者連係機能部23は、設備データベース2と、オンラインデータベース3と、事故件名データ19と、作業件名データ20と、メンテナンス件名データ21と、系統計画検討件名データ22と、計算機ログデータ18と、を収集し、配電線自動化システム連係用ファイル25として作成する。そして、新規配電事業者連係機能部23は、連係用通信網ゲートウェイ9と連係用通信網8を経由して、データウェアハウス26に配電線自動化システム連係用ファイル25を保存する。
【0053】
このように、第8の実施形態にかかる配電線自動化システム6によれば、一般送配電事業者や新規配電事業者の系統監視情報と系統制御情報と系統計画情報とを、インターネットを介して共有可能となる。
【0054】
以上説明したとおり、第1から第8の実施形態によれば、新規配電事業者が運用する配電系統監視制御装置との情報連係機能を実装することで、一般送配電事業者が、新規配電事業者が管理する系統情報の取得可能とし、新規配電事業者が配電網の一部を運用した場合を含め、従来と同等の監視制御を実現可能とすることができる。
【0055】
なお、本実施形態の配電線自動化システム6で実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)等に予め組み込まれて提供される。本実施形態の配電線自動化システム6で実行されるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成しても良い。
【0056】
本実施形態の配電線自動化システム6で実行されるプログラムは、上述した各部(原始データ取込機能部7、事故件名管理機能部13、作業件名管理機能部14、メンテナンス件名管理機能部15、系統計画機能部16、ログ保存機能部17、新規配電事業者連係機能部23、伝送系装置選択制御送信機能部28、融通計算機能部32)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサの一例が上記ROMからプログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、原始データ取込機能部7、事故件名管理機能部13、作業件名管理機能部14、メンテナンス件名管理機能部15、系統計画機能部16、ログ保存機能部17、新規配電事業者連係機能部23、伝送系装置選択制御送信機能部28、融通計算機能部32が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
1 電力系統
2 設備データベース
3 オンラインデータベース
4 伝送系装置
6 配電線自動化システム
7 原始データ取込機能部
8 連係用通信網
9 連係用通信網ゲートウェイ
10 配電線管理システム
11 2値情報処理機能部
12 数値情報監視処理機能部
13 事故件名管理機能部
14 作業件名管理機能部
15 メンテナンス件名管理機能部
16 系統計画機能部
17 ログ保存機能部
23 新規配電事業者連係機能部
28 伝送系装置選択制御送信機能部
32 融通計算機能部
26 データウェアハウス