(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114284
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】自立型手すりのベースの取っ手構造と自立型手すり
(51)【国際特許分類】
E04F 11/18 20060101AFI20240816BHJP
A61H 3/00 20060101ALN20240816BHJP
【FI】
E04F11/18
A61H3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019949
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000245830
【氏名又は名称】矢崎化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174207
【弁理士】
【氏名又は名称】筬島 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 弘卓
【テーマコード(参考)】
2E301
4C046
【Fターム(参考)】
2E301FF01
2E301HH00
2E301JJ01
2E301LL02
2E301LL13
4C046AA29
4C046CC01
4C046DD33
(57)【要約】
【課題】自立型手すりを移動する際に、ベースの持ち運びが容易で使い勝手に優れた自立型手すりのベースの取っ手構造を提供する。
【解決手段】自立型手すりAを構築するためのベースBに設けられる取っ手構造であって、ベースBには貫通する引っ掛け用孔5が形成され、引っ掛け用孔5の上方には、引っ掛け部6が前記ベースBの外周縁10から内方へ突き出て設けられ、引っ掛け部6が引っ掛けられ又は握持されてベースBを移動可能な構成である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自立型手すりを構築するためのベースに設けられる取っ手構造であって、
前記ベースには貫通する引っ掛け用孔が形成され、
前記引っ掛け用孔の上方には、引っ掛け部が前記ベースの外周縁から内方へ突き出て設けられ、
前記引っ掛け部が引っ掛けられ又は握持されて前記ベースを移動可能な構成であること、
を特徴とする自立型手すりのベースの取っ手構造。
【請求項2】
前記ベースは、ベース部材と、前記ベース部材の上の金属板と、前記金属板の上のマットとから成り、
前記引っ掛け用孔が、前記ベース部材の外周縁よりも内方位置で上下方向に貫通して形成され、
前記引っ掛け用孔の空間内に、前記引っ掛け部が前記ベース部材の外周縁から内方へ突き出ており、
前記ベース部材の上に前記金属板が載置された際に、前記引っ掛け部と前記金属板との高さが同じになるように構成されていること、
を特徴とする請求項1に記載した自立型手すりのベースの取っ手構造。
【請求項3】
前記貫通する引っ掛け用孔の代わりに、前記ベースには貫通しない引っ掛け用孔が形成されて成ること、
を特徴とする請求項1に記載した自立型手すりのベースの取っ手構造。
【請求項4】
請求項1又は2又は3に記載した前記ベースの取っ手構造を使用して構成されていること、
を特徴とする自立型手すり。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ベースの持ち運びを容易にするための自立型手すりのベースの取っ手構造と自立型手すりの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
自立型手すりに関し、下記特許文献1には、台部10と、複数個の柱部20・20と、第一手摺部30と、第二手摺部32と、を備える。台部10はベース体11と、カバー体17と、縁部体12と、を備える。縁部体12は、ゴムなどの樹脂素材から成る部材で上外部が斜めに切り欠かれるように構成される。縁部体12の第二縁部体15はベース体に取り付けられた状態でベース体11の縁部よりも外側に張り出すように構成される部分を有し、第二縁部体15の第二張出部16は弾性変形可能に構成されている床置き手摺が開示されている。
また、本出願人は、
図10に示したような従来品を販売している。この従来の自立型手すりaは、ベースbと手すり部cとを備え、ベースbの端縁b1は下向きに折り曲げ、当該端縁b1の周囲に取り付け溝を設けたゴム及び合成樹脂製の滑り止め機能を有する保護部材b2を取り付けていることから、使用者の体がベースbに接触しても怪我が回避可能な構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載の床置き手摺は、台部のみを移動させる場合、第二張出部即ち台部の外周縁を指でつまみ、指が入る程度まで鉛直上向きに持上げて指を第二縁部体の底面に差し入れることになるが、ゴム手袋を着用していると指でつまみ難く、持ち上げるまでに時間がかかる。
特に、平らな床面やテーブルといったフラットな面での移動がし難く、素手の場合、ゴム手袋着用時よりは指でつまみやすくものの、持ち上げるまでに時間がかかる。持ち運ぶ場合は両手で指でつまんだ状態のままで行わなければならず、台部は重量物であることから落としやすく怪我をする虞があるため安全に持ち運べる状態とは言い難い。
【0005】
図10の従来品aでは、手すり部cが無いベースbのみを持ち上げる際は保護部材b2を指でつまむことになり、ベースbの端縁b1が下向きに折り曲げられていることからつまみ難く、床面と保護部材b2との間のわずかな隙間に指を少しずつ入れて、当該隙間を徐々に大きくして持ち上げ可能にまで指を入れることになる。しかし、ゴム手袋を着用しているとゴム手袋が邪魔をして隙間に指を入れ難い。また、保護部材b2は引っ張ることで外れてしまい、再度取り付けするにも時間がかかり、これらが解決すべき課題となっている。
【0006】
したがって、本発明の目的は、自立型手すりを移動する際に、ベースの持ち運びが容易で使い勝手に優れた安全設計の自立型手すりのベースの取っ手構造と、その取っ手構造を使用した自立型手すりを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決する手段として、請求項1に記載した発明は、自立型手すりAを構築するためのベースBに設けられる取っ手構造であって、
前記ベースBには貫通する引っ掛け用孔5が形成され、
前記引っ掛け用孔5の上方には、引っ掛け部6が前記ベースBの外周縁10から内方へ突き出て設けられ、
前記引っ掛け部6が引っ掛けられ又は握持されて前記ベースBを移動可能な構成であること、
を特徴とする自立型手すりのベースの取っ手構造である。
【0008】
請求項2に記載した発明は、前記ベースBは、ベース部材1と、前記ベース部材1の上の金属板2と、前記金属板2の上のマット3とから成り、
前記引っ掛け用孔5が、前記ベース部材1の外周縁10よりも内方位置で上下方向に貫通して形成され、
前記引っ掛け用孔5の空間7内に、前記引っ掛け部6が前記ベース部材1の外周縁10から内方へ突き出ており、
前記ベース部材1の上に前記金属板2が載置された際に、前記引っ掛け部6と前記金属板2との高さが同じになるように構成されていること、
を特徴とする請求項1に記載した自立型手すりのベースの取っ手構造である。
【0009】
請求項3に記載した発明は、前記貫通する引っ掛け用孔5の代わりに、前記ベースBには貫通しない引っ掛け用孔5が形成されて成ること、
を特徴とする請求項1に記載した自立型手すりのベースの取っ手構造である。
【0010】
請求項4に記載した発明は、請求項1又は2又は3に記載した前記ベースBの取っ手構造を使用して構成されていること、
を特徴とする自立型手すりAである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の自立型手すりのベースの取っ手構造によれば、以下の効果を奏する。
(1)ベースに引っ掛け用孔と引っ掛け部とで構成する取っ手を設けたことで、平らな床面やテーブルのフラットな面であってもゴム手袋をした状態でも指を差し入れることが容易となる。そのため、引っ掛け部に指を引っ掛けるだけでベースを移動させることができ、時間短縮になった。
(2)また、持ち運びについても引っ掛け用孔に指を通すことで片手で持つことができ、安全に持ち運ぶことが可能になった。
(3)さらに、引っ掛け部に指を引っ掛けた状態のままベースを引きずるように移動することも可能であることから、移動回数が多い場合、非常に便利になった。
(4)引っ掛け部と金属板との高さが同じであることから、金属板の上にマットを載せたことでベースとしてフラットな面を形成することができた。
(5)上述した構造を採用したベースを取り付けた自立型手すりとしたことで、ベースに引っ掛け用孔が設けられている状態ではあるが、引っ掛け用孔の上方に引っ掛け部が内方に突き出ていることから、開口の大きさは必要最小限にとどめることができ、使用者のつま先が入り難くなり、躓きを防止し使用者は安全に使用することができた。
(6)引っ掛け部は指に限らず、引っ掛け棒などの工具を用いて引っ掛けることができ、指を怪我した状態でも無理なくベースを移動させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の自立型手すりのベースの取っ手構造を採用した自立型手すりを示した斜視図である。
【
図3】ベースを構成するベース部材と金属板の合体状態を示しており、(A)は平面図、(B)は前記(A)におけるA-A線断面図、(C)は正面図、(D)は裏面図である。
【
図4】ベース部材と金属板の合体状態を示した斜視図である。
【
図5】
図4における引っ掛け用孔と引っ掛け部の取っ手部分を拡大して示した斜視図である。
【
図6】(A)は、ベース部材の引っ掛け部に指を引っ掛けた状態を示した部分断面図、(B)は、(A)の状態から上方に若干持ち上げた状態を示した部分断面図である。
【
図7】
図3のA-A線断面における一側の引っ掛け用孔と引っ掛け部の取っ手部分を示した部分拡大図である。
【
図8】異なる引っ掛け部を示した拡大断面図である。
【
図9】異なる引っ掛け部を示した拡大斜視図である。
【
図10】従来の自立型手すりを示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の自立型手すりのベースの取っ手構造を、以下、図面にしたがって説明する。
この取っ手構造は、
図1に示したような自立型手すりAを構築するためのベースBに設けられ、同ベースBの持ち運びを容易にするために供される。
ベースBの短手外周に手すりCが取り付けられているが、手すりCは、ベースBの長手外周に設けたり、その形状も丸みを帯びた目の字状に限らず横長の日の字状であったり、玄関の上がり框に供するための傾斜角度の付いた形態や、短手外周の両端に手すりCが取りついた形態でも実施可能である。
後述するベースBに手すりCを取り付けて自立型手すりAが構築されている。
【0014】
ベースBは、ベース部材1と、同ベース部材1の上に載置される金属板2と、同金属板2の上に載置されるマット3とから成る。ベース部材1の裏面には滑り止めのゴム片4が取り付けられている。金属板2はベース部材1に設けられている下記の引っ掛け用孔5を塞ぐことの無いように切り欠き2aを設けた形状となっている(
図2参照)。
前記ベース部材1と金属板2とがねじ止め(符号9参照)され、金属板2の上にマット3が貼り付けられている。
【0015】
前記ベースBを構成するベース部材1は、合成樹脂製で略矩形状に一体的に形成されており、外周縁10はスロープ状となっている。当該スロープ状外周縁10の裏面には、補強用のリブ11が多数設けられている。また、ベース部材1には肉抜き孔12が設けられており、軽量化の役目を果たしている。
このようなベース部材1の長手方向の各外周縁10より内方の位置には、上下方向に貫通する引っ掛け用孔5が対峙するように形成されている。と共に、前記引っ掛け用孔5の空間7における上方には、引っ掛け部6が前記ベースBの外周縁10から内方へ突き出て設けられている。つまり、引っ掛け用孔5と引っ掛け部6とで取っ手が構成され、前記引っ掛け部6を指8aで引っ掛け又は握持することによって、ベースBを自由に移動することができる構成となっている。
しかも、前記ベース部材1の上に前記金属板2が載置された際に、前記引っ掛け部6と前記金属板2との高さが同じになるように構成されているので、金属板2の上にマット3を載せてフラット面を形成することができる。
なお、引っ掛け部6は指8a以外にも、引っ掛け棒などの工具で引っ掛けることも可能である。
【0016】
引っ掛け用孔5は、指8aを差し入れることができる程度の大きさで開いており、ベース部材1の外周縁10の内側面10bよりも内方に設けられている(
図4、
図5)。
また、前記引っ掛け部6は、
図3と
図4に示したように、略矩形状の長手方向の中央に対峙する形で設けられているが、引っ掛け用孔5と共に短手方向に設けることも可能である。本実施形態では、長手方向各1か所に引っ掛け部6を設けているが、設置数に制限は無い。
引っ掛け部6の裏面全体には、指8aが引っ掛かりやすいように漸次傾斜する形状に形成されて突き出た構成とされている(
図6、
図7)。なお、引っ掛け部6の強度を高めるために、引っ掛け部6の裏面端部を、
図8に示したような厚肉の断面に形成して実施しても効果に変わりはない。他に、引っ掛け部6の強度を高めるための方法としては、
図9に示したような引っ掛け部6の端部とベース部材1の前記金属板2と当接する面とが一体となるように正面視で門型状に形成され、引っ掛け部6の中央は指8aがさらに引っ掛かりやすいように薄肉に形成された構成で実施することも可能である。
【0017】
なお、上述した貫通型の引っ掛け用孔5の代わりに、前記ベースBには貫通しない非貫通型の引っ掛け用孔5を形成して実施することも可能である(図示は省略)。
【0018】
マット3は、
図1に示したように上述した引っ掛け用孔5を塞いでいる。このように、使用状態では塞いでいた方が使用者にとっては躓く虞れが無くなるので安全である。また、マット3にはミシン目3aが設けられているが、これは手すりCを別の位置に変更するための準備構造である。
【0019】
<ベースBを移動させるための具体的な方法>
(a)
図6Aに示したように、手8を引っ掛け用孔5に差し入れて、指8aを引っ掛け部6に引っ掛ける。
(b)しかる後、
図6Bに示したように、鉛直上向きに持上げる。そうすると、指8aを引っ掛けた側の反対側の外周縁10の端10aが地面Gに接地した状態となり、指8aが向いている方向(
図6では左方向)へ引きずるように移動させることができる。
(c)移動方法は引きずるだけではなく、ベースBの底面が地面Gと略垂直にしつつ、指8aを引っ掛けた側と反対側の側面が接地しないように持ち上げれば、ベースBを片手8で持って歩行状態で移動させることもできる。
なお、
図4ではマット3が無い状態を示しているが、
図1のようにマット3がある場合は、引っ掛け部6に指8aを引っ掛ける側の引っ掛け用孔5が見えるまでマット3をめくる必要がある。
【0020】
以上、実施例を図面に基づいて説明したが、本発明は図示例の限りではなく、例えばベースBは
図2等では略矩形状となっているが、略円形状として実施する等、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために申し添える。
【符号の説明】
【0021】
A 自立型手すり
B ベース
1 ベース部材
10 外周縁
10a 外周縁の端
10b 内側面
11 リブ
12 肉抜き孔
2 金属板
2a 切り欠き
3 マット
3a ミシン目
4 ゴム片
5 引っ掛け用孔
6 引っ掛け部
7 空間
8 手
8a 指
9 ねじ
C 手すり
G 地面