(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114287
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】水深予測システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20240816BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240816BHJP
G01C 21/26 20060101ALI20240816BHJP
G16Y 40/60 20200101ALI20240816BHJP
G16Y 20/20 20200101ALI20240816BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20240816BHJP
【FI】
G08G1/00 J
G08G1/16 D
G01C21/26 C
G16Y40/60
G16Y20/20
G16Y10/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019956
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷川 颯
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129BB22
2F129BB26
2F129CC12
2F129CC15
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2F129FF64
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2F129FF72
2F129GG17
2F129HH12
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB05
5H181BB20
5H181CC03
5H181CC04
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5H181FF04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF14
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF32
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL14
5H181MC16
5H181MC27
(57)【要約】
【課題】道路の水没箇所の水深が車両の走行可能な深さであるか否かを早期に推定可能とする水深予測手段の提供。
【解決手段】本発明に係る水深予測システム(10)は、車両の前方画像を撮影して出力するカメラ(21)と、前方画像から道路の冠水を判定し、冠水がある場合に道路と冠水面との境界を示す境界線の情報を出力する水面境界線検出部(12)と、境界線の情報に基づき算出した境界線の推定位置の緯度経度とこれに対応した標高情報とを出力する境界線位置推定部(13)と、車両がこれから走行する経路の緯度経度とこれに対応した標高情報とを出力する走行予定経路取得部(15)と、これらの出力した緯度経度と標高情報とに基づき求めた境界線から先の水没箇所の水深により車両が水没箇所を走行可能か否かの判断結果を出力する走行経路判断部(16)と、その判断結果により走行が可能又は不可能を表示装置(22)に表示する表示生成部(17)と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、該車両の進行方向における道路の水没箇所の水深を予測する水深予測システムであって、
前記車両の前方の画像を撮影して出力するカメラと、
前記カメラの撮影した画像から道路の冠水を判定し、道路が冠水している場合に、前記道路と前記冠水面との境界を検出するとともに、その検出した境界を示す境界線の情報を出力する水面境界線検出部と、
前記境界線の情報に基づき境界線の推定位置としての緯度経度を算出し、この緯度経度に対応した標高情報を取得するとともに、これらの緯度経度および標高情報を出力する境界線位置推定部と、
前記車両がこれから走行する経路の緯度経度を取得し、この緯度経度に対応した標高情報を取得するとともに、これらの緯度経度および標高情報を出力する走行予定経路取得部と、
前記境界線位置推定部の出力した緯度経度および標高情報と、前記走行予定経路取得部の出力した緯度経度および標高情報とに基づいて前記車両の進行方向における前記境界線から先の道路の水没箇所の水深を求め、その求めた水深から前記車両が前記水没箇所を走行可能か否かを判断するとともに、その判断結果を出力する走行経路判断部と、
前記走行経路判断部の出力した判断結果に基づき、前記車両が前記水没箇所を走行可能である場合には走行可能であることを示す情報を、一方、前記車両が前記水没箇所を走行不可能である場合には走行不可能であることを示す情報を生成するとともに、その生成した情報を表示装置に表示する表示生成部と、
を備える、ことを特徴とする水深予測システム。
【請求項2】
請求項1に記載の水深予測システムにおいて、
前記車両の前記これから走行する経路は、外部のサーバから取得される、
ことを特徴とする水深予測システム。
【請求項3】
請求項1に記載の水深予測システムにおいて、
前記車両の前記これから走行する経路は、前記車両の現在位置を示すGPS情報および、車載センサの検出情報に基づいて推定される、
ことを特徴とする水深予測システム。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の水深予測システムにおいて、
前記走行経路判断部によって前記車両が前記水没箇所を走行不可能であると判断された場合に、走行可能な代替ルートを運転者に提示する、
ことを特徴とする水深予測システム。
【請求項5】
請求項2に記載の水深予測システムにおいて、
前記走行経路判断部によって前記車両が前記水没箇所を走行不可能であると判断された場合には、前記水没箇所の情報を外部のサーバにアップロードし、
前記外部のサーバは、経路検索要求の受信時に、そのアップロードされた前記水没箇所のある道路を含む経路を除外した経路情報を、前記車両の前記これから走行する経路の情報として返送する、
ことを特徴とする水深予測システム。
【請求項6】
請求項1に記載の水深予測システムにおいて、
前記車両は、前記標高情報を取得するための基となる三次元地図情報を、道路の走行の際の、GPSからの位置情報および、前記カメラにより撮影した画像または該車両に更に搭載したLiDARを使用して取得した計測情報、に基づいて生成する、
ことを特徴とする水深予測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水深予測システムに関し、特に、車両の進行方向における道路の水没箇所の水深を早期に推定することのできる水深予測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化に起因した短時間の多量の降雨により河川決壊などが発生して道路が冠水することが多くなっている。特に最近では、買い物や通勤などで普段走行するような街中の道路でさえ、同様の豪雨により排水不能が発生するなどして冠水することも珍しいことではなくなった。
ところで、このように冠水した道路を自動車などの車両が走行する場合、道路の水没箇所の水深が車両の浸水の許容水位(乗用車であれば一般にドア下端程度の水位)を超える深さになると、エンジンが停止して車両が動けなくなってしまうことがある。また、エンジン停止に至らない場合であっても、許容水位を超える冠水した道路をそのまま走行すると、車両が故障することもある。
【0003】
このような浸水による車両の停止や故障を回避する方法の一例が、例えば、特許文献1に開示されている。この従来技術では、車両下面の後部排気管近くにセンサを備え、そして、道路の冠水した部分に車両が侵入した後、センサがその水面との接触を検知した場合に、車両の浸水許容水位を超えそうな水の深さに到達したと判断して運転者に警報を行うようにしている。また、この従来技術の開示する別の実施例では、車両の前方、後方、またはサイドミラーに超音波やレーザを利用した測距センサを備え、車両が道路の冠水した部分に接近、あるいは侵入すると、測距センサからその冠水した部分の水表面までの間の距離を算出する。この距離(測定距離)の算出は、測距センサの出射した超音波またはレーザが、その出射から、水表面によって反射された後に同センサで受信されるまで、の時間を計測した計測値に基づいて行われる。そして、この実施例では、測距センサから車両の置かれる路面までの距離が既知であるため、その距離から前述の測定距離を減じることで道路の当該冠水部分の水深を求め、水深が車両の浸水許容水位を超える深さである場合に運転者に警報を行うようにしている。
【0004】
しかしながら、この従来技術では、車両が道路の冠水した部分に侵入するか、測距センサにより水位を検知可能なところまで接近しなければ、道路の水没箇所の水深を推定することができなかった。そのため、従来技術では、水没箇所の水深が車両の浸水許容水位を超える深さとなった場合にも、直ぐには運転者が車両の進行を止めることが難しく、結局、浸水により、車両の停止や故障を引き起こしてしまう場合があった。このような従来の課題から、車両の進行方向における道路の水没箇所の水深が車両の走行可能な深さであるか否かを早期に推定することのできる水深予測の手段が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するものであり、車両の進行方向における道路の水没箇所の水深が車両の走行可能な深さであるか否かを早期に推定することのできる水深予測システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る水深予測システムは、車両に搭載され、該車両の進行方向における道路の水没箇所の水深を予測する水深予測システムであって、前記車両の前方の画像を撮影して出力するカメラと、前記カメラの撮影した画像から道路の冠水を判定し、道路が冠水している場合に、前記道路と前記冠水面との境界を検出するとともに、その検出した境界を示す境界線の情報を出力する水面境界線検出部と、前記境界線の情報に基づき境界線の推定位置としての緯度経度を算出し、この緯度経度に対応した標高情報を取得するとともに、これらの緯度経度および標高情報を出力する境界線位置推定部と、前記車両がこれから走行する経路の緯度経度を取得し、この緯度経度に対応した標高情報を取得するとともに、これらの緯度経度および標高情報を出力する走行予定経路取得部と、前記境界線位置推定部の出力した緯度経度および標高情報と、前記走行予定経路取得部の出力した緯度経度および標高情報とに基づいて前記車両の進行方向における前記境界線から先の道路の水没箇所の水深を求め、その求めた水深から前記車両が前記水没箇所を走行可能か否かを判断するとともに、その判断結果を出力する走行経路判断部と、前記走行経路判断部の出力した判断結果に基づき、前記車両が前記水没箇所を走行可能である場合には走行可能であることを示す情報を、一方、前記車両が前記水没箇所を走行不可能である場合には走行不可能であることを示す情報を生成するとともに、その生成した情報を表示装置に表示する表示生成部と、を備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る水深予測システムによれば、車両の進行方向における道路の水没箇所の水深が車両の走行可能な深さであるか否かを早期に推定することのできる水深予測システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る水深予測システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】路面と冠水面との境界およびカメラの撮像範囲を示す図である。
【
図3】車両から路面と冠水面との境界までの距離(奥行)を示す図である。
【
図4】車両のこれからの走行経路としての予定経路を示す図である。
【
図5】車両のこれからの走行経路としての可能性経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を添付の図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る水深予測システムの構成を示すブロック図である。なお、水深予測システム10は、本実施形態においては、ECU(Electronic Control Unit)と呼ばれる車両を電子制御するための制御部1の一部として構成される。また、この水深予測システム10は、内燃機関(エンジン)を主な動力源とする自動車などの車両に搭載される。
【0011】
図1に示すように、水深予測システム10は、画像取得部11、水面境界線検出部12、境界線位置推定部13、標高情報取得部14、走行予定経路取得部15、走行経路判断部16、および表示生成部17を備える。これら各部の説明については後述する。また、水深予測システム10には、撮像装置21、表示装置22、GPS23、通信装置24、記憶装置25、操舵角センサ26、車輪速センサ27、角速度センサ28、および加速度センサ29が接続される。
撮像装置21は、車両の前方を撮影するためのカメラであり、アラウンドビューカメラやADAS(Advanced Driver-Assistance Systems)用カメラなどである。表示装置22は、現在地から目的地までのルート(経路)マップを表示するカーナビゲーション(カーナビ)画面や運転者に対する警告情報などを表示するための装置である。GPS23は、GPS(Global Positioning System)受信機であり、GPS衛星から受信する測位信号を用いて車両の現在位置情報(特に、緯度および経度)を計算し取得する。
通信装置24は、例えばセルラー通信規格のLTE(Long Term Evolution)や5G(第5世代携帯電話システム)NR(New Radio)に基づく無線通信を行うための装置である。水深予測システム10は、この通信装置24を介して、例えばインターネット上のクラウドとして構築された経路検索サーバ31や標高-緯度経度情報サーバ32に検索要求や問合せ要求の送信を行い、また、これらの要求に対応した応答を同サーバから受信する。なお、経路検索サーバ31は、少なくとも2地点(現在地および目的地)の情報を含む検索要求を受信すると、位置情報を含んだ地図に基づき、それら地点間の通行可能な道路についてルート(経路)情報を検索し、そして、その検索結果を含む検索応答を返送する。地図には、カーナビと同様のデジタルデータの地図が使用される。また、標高-緯度経度情報サーバ32は、緯度経度の情報を含む問合せ要求を受信すると、標高データを含んだ地形図に基づき、その緯度経度に対応する地点の標高を求め、そして、その標高の情報を含む問合せ応答を返送する。地形図は、航空写真データや衛星画像データ、または航空レーザ測量データに基づいて生成されるか、あるいは、道路を走行する車両に搭載されたLiDAR(Light Detection and Ranging)の計測データやカメラの画像データに基づいて生成される。
記憶装置25は、水深予測システム10が行う水深予測の処理に必要となる情報を一時的に記憶する。
操舵角センサ26は、ステアリングホイールの操舵角を検出する。車輪速センサ27は、車輪の回転速度を検出する。角速度センサ28は、車両のヨーレート(回転角速度)を検出する。そして、加速度センサ29は、車両の加速度を検出する。
【0012】
以下、水深予測システム10の備える、道路の水没箇所の水深を推定するための各機能部について説明する。
水深予測システム10は、撮像装置21から所定のフレームレート(fps)で連続して出力される車両の前方を撮影した撮影画像を、画像取得部11によって取得するように構成される。この画像取得部11の取得した撮影画像は、水面境界線検出部12に入力される。
【0013】
水面境界線検出部12は、入力の撮影画像から、画像処理によって、車両の進行方向の道路に冠水した部分があるかを判定し、冠水した部分があれば、路面とその冠水面との境界(
図2)を検出して、その境界を示す境界線の情報を出力する。境界線の情報は、車両からその境界までの距離(
図3)に関する距離(奥行)の情報を含む。水面境界線検出部12が出力した境界線の情報は、境界線位置推定部13に入力される。また、水面境界線検出部12は、撮影画像を画像処理することにより、境界線から先の進行方向の道路において、冠水が継続しているか否かを検出して、この検出した情報を出力する。
なお、水面境界線検出部12には、学習済みAIモデルが組み込まれており、このAIモデルを用いて、水面境界線検出部12では、入力の撮影画像から(車両の進行方向の道路に冠水した部分があること及びその)路面と冠水面との境界を検出する。学習済みAIモデルには、予め、外部のコンピュータ等を使用して、物体検出に加え、特にセグメンテーション(領域分割)のための識別方法を機械学習させたCNN(Convolutional Neural Network)を使用する。また、距離(奥行)は、例えば、ステレオカメラの有する左右のカメラで撮影した画像の視差を利用して推定することができる。あるいは、距離(奥行)は、例えば、単眼カメラで撮影した画像から、CNNを含むDNN(Deep Neural Network)の機械学習済みAIモデルを用いて推定することもできる。
【0014】
境界線位置推定部13は、GPS23から車両の現在位置情報としての緯度経度情報を取得し、この緯度経度情報と入力の境界線の情報(特に奥行)とに基づき、境界線の推定位置としての緯度経度を算出する。また、境界線位置推定部13は、算出した緯度経度の情報を入力として標高情報取得部14から標高情報を取得すると、その算出した緯度経度の情報および標高情報を出力する。なお、標高情報取得部14は、緯度経度の情報が入力されると、通信装置24を介して、例えばインターネット上に構築された標高-緯度経度情報サーバ32に、その緯度経度の情報を含む問合せ要求を送信する。そして、標高情報取得部14は、この問合せ要求に対する応答として、標高-緯度経度情報サーバ32から標高の情報を含む問合せ応答を受信すると、この受信により取得した標高情報を、入力に対する応答として出力する。境界線位置推定部13が出力した境界線の推定位置としての緯度経度の情報およびその推定位置に対応した標高情報は、走行経路判断部16、に入力される。
【0015】
走行予定経路取得部15、は、車両がこれから走行する予定の経路(予定経路)または走行する可能性のある経路(可能性経路)について、対応する緯度経度の情報を取得する。予定経路は、例えばカーナビによるルート(経路)検索など、運転者によって事前に行われる経路検索の結果に沿って走行する場合の情報であり、同検索の結果として取得される道路の緯度経度を含む線分情報である(
図4)。これは、例えば、経路の検索要求を行うことにより、その検索応答として経路検索サーバ31から取得するか、または、一時的に記憶装置25に記録されている、以前に経路検索サーバ31から得られた情報から取得することができる。この情報を取得した後、走行予定経路取得部15は、予定経路を構成する各線分の緯度経度の情報を入力として標高情報取得部14から標高情報を取得し、その緯度経度の情報および取得した標高情報を出力する。なお、ここでの標高情報の取得においては、進行方向において車両の現在位置に最も近い位置を含む線分について標高情報を取得するようにする。このような線分は、車両の現在位置情報としての緯度経度情報をGPS23から取得し、その取得した緯度経度情報を、各線分の緯度経度情報と比較することによって抽出することができる。また、標高情報の取得においては、各線分を成す複数の地点(位置)についての緯度経度情報を一度に入力することで、その各地点(位置)に対応した複数の標高情報を取得することができる。また、ここで取得する標高情報には、一時的に記憶装置25に記録されている以前に得られた標高情報を利用することもできる。なお、それら各地点(位置)の緯度経度情報には、カメラの撮像範囲(
図2)から外れて撮影画像には写らない遠い場所(地点)の情報が含まれることもある。よって、そのような緯度経度情報については、カメラの車両への搭載位置や角度、また、カメラの仕様や性能などから予め決定されるカメラの撮影距離に基づいて、標高情報取得の対象から除外するようにする。走行予定経路取得部15が出力した予定経路を構成する各線分の緯度経度の情報およびこの緯度経度の情報に対応した標高情報は、走行経路判断部16、に入力される。
【0016】
一方、可能性経路は、経路検索を行わずに運転者の判断で自由に走行する場合の情報であり、数秒~数十秒後に車両が走行している可能性のある場所について推測される緯度経度の情報である(
図5)。これは、GPS23から取得した車両の現在位置情報としての緯度経度情報と車載センサの検出値とから、進行方向における車両の走行し得る範囲を予測し、その予測の範囲内の緯度経度を算出することにより当該推測される緯度経度の情報を取得することができる。この情報を取得した後、走行予定経路取得部15は、その推測される緯度経度の情報を入力として標高情報取得部14から標高情報を取得し、当該推測される緯度経度情報および取得した標高情報を出力する。なお、推測される緯度経度情報のうち、カメラの撮像範囲から外れるものについては、上記と同様に標高情報取得の対象から除外するようにする。走行予定経路取得部15が出力した、車両が走行している可能性のある場所について推測される緯度経度の情報およびこの緯度経度の情報に対応した標高情報は、走行経路判断部16、に入力される。
【0017】
走行経路判断部16は、入力された緯度経度の情報およびこれに対応した標高情報について、境界線位置推定部13からの入力と走行予定経路取得部15からの入力とを比較・演算することで車両の進行方向における境界線から先の道路の水没箇所の水深を求める。ここで、境界線位置推定部13から入力された緯度経度は、路面と冠水面との境界線の位置を示すものである。そのため、この緯度経度と比較して、走行予定経路取得部15から入力された緯度経度が車両の進行方向においてその境界線から先の位置を示す値であるならば、標高情報は走行予定経路取得部15から入力された値の方が小さくなる。よって、走行予定経路取得部15より入力された標高情報(標高値)を、境界線位置推定部13より入力された標高情報(標高値)から減算すれば、道路の水没箇所の水深を求めることができる。走行経路判断部16は、このようにして求めた水没箇所の水深を基に、予定経路または可能性経路における道路の水没箇所を走行することが可能か否かを判断し、その結果を出力する。なお、この走行の可否の判断は、車種ごとに予め定められた渡河性能の情報と比較して行われる。走行経路判断部16が出力した判断の結果は、表示生成部17に入力される。
【0018】
表示生成部17は、入力された判断結果に基づき、冠水した道路の水没箇所を車両が走行可能であることを示す情報、または走行不可能であることを示す警告情報などを生成し、その生成した情報を表示装置22に表示する。
【0019】
ところで、既述のとおり、従来技術では、車両が道路の冠水した部分に侵入するか、測距センサにより水位を検知可能なところまで接近しなければ、道路の水没箇所の水深を推定することができなかった。そこで、これに対応するべく、本発明の一実施形態に係る水深予測システムでは、下記のようにして、車両の進行方向における道路の水没箇所の水深が車両の走行可能な深さであるか否かの推定を行うようにしている。
【0020】
以下、
図6の流れ図を参照して、制御部1が水深予測システム10を使用して行う水深予測の処理について説明する。なお、水深予測の処理は、例えば、運転者が車両の走行モードを水深予測モードに設定した場合に実行される。
ステップS1において、制御部1は、撮像装置21から出力された車両の前方撮影画像を、画像取得部11によって取得する。
次に、ステップS2~S3において、制御部1は、取得した撮影画像から、水面境界線検出部12による画像処理によって、車両の進行方向の道路に冠水した部分があるか否かを判定する。そして、冠水した部分が無ければ(S3でのNo側)、制御部1は、ステップS1に戻って同ステップからの処理を繰り返す。一方、冠水した部分が有る場合(S3でのYes側)は、制御部1は、ステップS4に移行する。
なお、以下のステップS4~S5の処理は、以下のステップS6の処理と並列に実行することもできる。
【0021】
ステップS4において、制御部1は、水面境界線検出部12による画像処理によって、冠水した部分の路面と冠水面との境界を検出し、その境界を示す境界線の情報を取得する。
次に、ステップS5において、制御部1は、境界線位置推定部13によって、境界線の情報とGPS23の緯度経度情報とに基づき境界線の推定位置としての緯度経度を算出する。そして、制御部1は、算出したその緯度経度の情報に対応した標高情報を、標高情報取得部14を介して標高-緯度経度情報サーバ32から取得する。ここで、ステップS6の処理と並列に実行する場合には、ステップS7に移行する。
ステップS6において、制御部1は、走行予定経路取得部15により、車両のこれからの走行経路としての予定経路または可能性経路について緯度経度の情報を取得する。そして、制御部1は、取得したその緯度経度情報に対応した標高情報を標高情報取得部14を介して標高-緯度経度情報サーバ32から取得する。
ステップS7において、制御部1は、ステップS5で取得した境界線の推定位置に関する情報とステップS6で取得したこれからの走行経路に関する情報とを、走行経路判断部16によって比較・演算する。具体的には、制御部1は、取得した境界線の推定位置としての緯度経度の情報およびこれに対応した標高情報とこれからの走行経路の緯度経度の情報およびこれに対応した標高情報とを、走行経路判断部16によって比較・演算する。そして、制御部1は、この走行経路判断部16による比較・演算によって車両の進行方向における境界線から先の道路の水没箇所の水深が求められることから、その水深の情報を取得する。
【0022】
次に、ステップS8において、制御部1は、取得した水没箇所の水深の情報を基に、走行経路判断部16によって、車両のこれからの走行経路における道路の水没箇所を走行することが可能か否かを判断する。そして、制御部1は、その走行経路判断部16による判断の結果を取得する。
次に、ステップS9~S11において、制御部1は、取得した判断結果から、車両が道路の水没箇所を走行不可能な場合には、判断結果を入力として表示生成部17により走行不可能であることを表示する(ステップS10)。そして、制御部1は、水深予測の処理を終了する。一方、制御部1は、判断結果から、車両が道路の水没箇所を走行可能である場合には、判断結果を入力として表示生成部17により走行可能であることを表示する(ステップS11)。
【0023】
次に、ステップS12において、制御部1は、撮像装置21から出力された車両の前方撮影画像を、画像取得部11によって取得する。
次に、ステップS13~S14において、制御部1は、取得した撮影画像から、水面境界線検出部12による画像処理によって、道路の冠水がまだ続いているか否かを判定する。そして、冠水が継続する場合(S14でのYes側)には、制御部1は、ステップS6に戻って同ステップからの処理を繰り返す。一方、冠水の区間が終了する場合(S14でのNo側)には、制御部1は、ステップS1に戻って同ステップからの処理を繰り返す。
【0024】
以上のように、本実施形態の水深予測の処理では、車両の前方を撮影した撮影画像から、車両の進行方向の道路に冠水した部分があるかを判定する。そして冠水部分がある場合には、撮影画像から路面とその冠水面との境界を検出するとともに、車両から境界までの距離を含む境界線の情報を取得し、この情報の特に距離と、GPSの緯度経度(車両現在位置)とから境界線の推定位置としての緯度経度を算出する。また、水深予測の処理では、算出したその境界線の推定位置としての緯度経度に対応した標高情報を外部のサーバから取得するとともに、車両のこれからの走行経路について緯度経度を取得し、その緯度経度に対応した標高情報を外部のサーバから取得する。走行経路の緯度経度には、外部のサーバから取得した情報か、または、車載センサの検出値に基づいて推定した情報が用いられる。次に、水深予測の処理では、その境界線の推定位置としての緯度経度およびこれに対応した標高情報と、車両のこれからの走行経路の緯度経度およびこれに対応した標高情報とを比較・演算することにより、道路の水没箇所の水深を求める。そして求めた水深から、車両が水没箇所を走行可能であると判断された場合には走行可能であることを運転者に表示し、走行不可能であると判断された場合には走行不可能であることを運転者に表示する。この表示は、車両がカメラの前方撮影画像から道路の冠水を検出した時点で行われるので、運転者は、その冠水よりも手前の距離の離れた位置において、早期に、冠水した道路の水没部分を車両が走行可能かどうかを知ることができる。
このように、本発明に係る水深予測システムを用いることで、車両の進行方向における道路の水没箇所の水深が車両の走行可能な深さであるか否かを早期に推定することができるようになる。
【0025】
なお、上述した走行予定経路取得部15での標高情報の取得の際には、予定経路を構成する各線分についての標高情報だけでなく、その線分を中心とする道路幅や車両幅、また事前に定められた一定の幅に含まれる位置についての標高情報も取得するとよい。そうすれば、例えば、線分の位置から外れた道路の一部に走行することができない深い水没箇所が存在するような場合にも、道路の当該水没箇所の水深を予測することができるようになるので、水浸予測の精度を高めることができる。
また、上記において、車両が道路の水没箇所を走行不可能であると判断された場合には、走行不可能であることを表示するのに加えて、走行可能な代替ルートを、水深予測システムが運転者に提案するようにしてもよい。
また、上記において、車両が道路の水没箇所を走行不可能であると判断された場合に、道路の水没箇所に関する情報(緯度経度情報等)をクラウドの経路検索サーバにアップロードするようにしてもよい。そして、その場合、経路検索サーバは、検索要求受信時に、当該水没箇所のある道路を含む経路を除外した検索結果(経路情報)を検索応答で返すようにするとよい。
また、水深予測システムを搭載した車両自身が、標高値を取得するための基となる三次元地図情報を生成するようにしてもよい。そうする場合、水深予測システムを搭載した車両自身が、車両に設けられたGPS受信機および、カメラまたはLiDARを使用して、道路を走行する際に緯度経度や地形等に関する情報を取得し、その取得した情報から三次元地図情報を生成するとよい。
【符号の説明】
【0026】
1 制御部、
10 水深予測システム、
11 画像取得部、
12 水面境界線検出部、
13 境界線位置推定部、
14 標高情報取得部、
15 走行予定経路取得部、
16 走行経路判断部、
17 表示生成部、
21 撮像装置、
22 表示装置、
23 GPS、
24 通信装置、
25 記憶装置、
26 操舵角センサ、
27 車輪速センサ、
28 角速度センサ、
29 加速度センサ、
31 経路検索サーバ
32 標高-緯度経度情報サーバ