(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114291
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】管継手、配管構造、及び管継手の製造方法
(51)【国際特許分類】
F16L 59/18 20060101AFI20240816BHJP
F16L 59/075 20060101ALI20240816BHJP
F16L 57/00 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
F16L59/18
F16L59/075
F16L57/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019961
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】北側 文夏
(72)【発明者】
【氏名】東 総介
(72)【発明者】
【氏名】諫山 憲二
【テーマコード(参考)】
3H024
3H036
【Fターム(参考)】
3H024AA03
3H024AB02
3H024AC04
3H036AA04
3H036AA05
3H036AA06
3H036AB32
3H036AB42
3H036AC02
(57)【要約】
【課題】簡便に製造可能な中空層を有する管継手とその製造方法、及びこの管継手を用い配管の作業負担が少ない配管構造を提供する。
【解決手段】第1受口部13と第2受口部14を有する継手本体11と、継手本体11を覆うカバー部材と、継手本体11とカバー部材とを接合する固定部材(70、80)とを備え、継手本体11は、筒状部20と、第1鍔部30と第2鍔部40とを有し、カバー部材は、軸線O1を含む面によって分割される第1カバー部材51と第2カバー部材52とが連結して、筒状部20の外径よりも大きい内径を有する筒状カバー体を形成しており、固定部材は、第1鍔部30と第2鍔部40の各々の筒状部20側と、筒状カバー体の両端面の各々との間に充填された樹脂からなり、固定部材により接合された継手本体11とカバー部材との間に、中空空間25が形成されているソケット型管継手10。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管部材が挿入される複数の受口部を有する継手本体と、
第1カバー部材と第2カバー部材とが連結してなり、前記継手本体を覆うカバー部材と、
前記継手本体と前記カバー部材とを接合する固定部材とを備え、
前記固定部材は、前記継手本体と、前記カバー部材との間に充填された樹脂からなり、
前記固定部材により接合された前記継手本体と前記カバー部材との間に、中空空間が形成されていることを特徴とする管継手。
【請求項2】
前記固定部材が、前記第1カバー部材と前記第2カバー部材とが連結する面においてゲート痕を有する、請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記第1カバー部材と前記第2カバー部材とが、形状嵌合により連結している、請求項1に記載の管継手。
【請求項4】
前記第1カバー部材と前記第2カバー部材とが、樹脂により接合されて連結している、請求項1に記載の管継手。
【請求項5】
前記継手本体の最大外径と前記カバー部材の最大外径とが等しい、請求項1に記載の管継手。
【請求項6】
前記継手本体は、筒状部と、前記筒状部の各端部に各々設けられた複数の鍔部とを有し、前記各鍔部が、前記筒状部に隣接する小径部と、前記小径部に隣接し、前記小径部より外径の大きい大径部とからなり、前記カバー部材の端部における内周面は、前記小径部の外周面に当接しており、
前記固定部材は、前記各鍔部の大径部の各々の前記筒状部側と、前記カバー部材の端面のいずれかとの間に充填された樹脂からなる、請求項1に記載の管継手。
【請求項7】
前記継手本体は、筒状部と、前記筒状部の各端部に各々設けられた複数の鍔部とを有し、前記各鍔部が、前記筒状部に隣接する小径部と、前記小径部に隣接し、前記小径部より外径の大きい大径部とからなり、
前記カバー部材は、外周部と前記外周部よりも軸方向の長さが短い内周部とからなり、
前記カバー部材の前記外周部の内周面は、前記各鍔部の前記小径部の外周面に当接しており、
前記カバー部材の前記内周部の端面は、前記各鍔部の前記小径部の前記筒状部側に当接しており、
前記固定部材は、前記各鍔部の大径部の各々の前記筒状部側と、前記カバー部材の前記外周部との間に充填された樹脂からなる、請求項1に記載の管継手。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の管継手と、前記管継手の前記受口部に挿入された管部材とを備える配管構造。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の管継手の製造方法であって、
前記第1カバー部材と前記第2カバー部材の各々を製造し、
得られた前記第1カバー部材と前記第2カバー部材との間に前記継手本体を挿入してから、前記第1カバー部材と前記第2カバー部材とを連結し、
その後、溶融した樹脂を、前記継手本体と前記カバー部材との間に射出し固化させることにより、前記継手本体と前記カバー部材とを接合する、管継手の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管継手、配管構造、及び管継手の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスや学校・商業施設などの室内に設置された空調機で発生したドレンの排出等には、複数の管部材が管継手により接続された配管構造が使用されている。
配管構造には、特に、梅雨から夏などの高温多湿の環境下において、内部のドレンと外部の気温・湿度の差に起因する結露が生じやすい。結露を防止するため移管構造を施工する際には、断熱材等で管部材や管継手をグラスウール等の保温材で被覆するのが一般的である。
【0003】
しかし、配管の作業とは別に、保温材を巻いたり被せたりする作業を行うことは作業効率が悪く、狭い作業スペースでは作業を行えない場合もある。
そこで、断熱材等の施工を省略しながら、管継手の断熱性能を向上させために管継手の内部に樹脂が充填されていない中空空間を設けることによって、管継手内部に空気層(断熱部)を形成する技術がある(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0004】
特許文献1では、射出成形等で作成した複数個の部品を接着等によって一つの管継手にする方法が開示されている。特許文献2では、特許文献1に開示された方法とは異なり、ガスインジェクション成形を用いてガス中空層(断熱部)を作成している。ガスインジェクション成形では、射出成形中にガスを樹脂内部に注入・充填させ、ガスの圧力によって樹脂を金型に押し付け形状を形づくる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-141505号公報
【特許文献2】特開2021-55760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように射出成形等で作成した複数個の部品を接着等によって内部が中空の断熱継手を作成する方法では、成型後の後工程として組立を行う必要もあり生産が煩雑化してしまう。また継手に応力が発生した場合、接着した箇所から割れてしまう危険性がある。
【0007】
また、特許文献2のようなガスインジェクション成形を用いてガス中空層を作成し断熱性能を向上させる方法では、ガス注入のために通常の射出成型にはない設備が必要となる。
また、ガスインジェクション成形では、射出成形中にガスを樹脂内部に注入・充填し、発泡やガスの圧力によって樹脂を金型に押し付けて形状を形作る。しかし、樹脂とガスとでは粘性・比重・流動性が大きく異なるため、両者の境界を制御・調整し、任意の箇所のみにガスを充填させることは非常に難しく、充分な生産効率を得ることも困難であった。
【0008】
また、射出成形はショット毎で多少のバラつきが発生することがあり、そのわずかなバラつきによっても、ガスの充填・流動等に影響が生じる。結果として、寸法精度を出しにくいこともあり、ガスインジェクション成形は、通常の射出成形よりも難しい成形技術とされている。
本発明では、前記課題を鑑みて、簡便に安定して製造可能な中空層を有する管継手とその製造方法、及びこの管継手を用い配管の作業負担が少ない配管構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1]管部材が挿入される複数の受口部を有する継手本体と、
第1カバー部材と第2カバー部材とが連結してなり、前記継手本体を覆うカバー部材と、
前記継手本体と前記カバー部材とを接合する固定部材とを備え、
前記固定部材は、前記継手本体と、前記カバー部材との間に充填された樹脂からなり、
前記固定部材により接合された前記継手本体と前記カバー部材との間に、中空空間が形成されていることを特徴とする管継手。
[2]管部材が挿入される2つの受口部を有する継手本体と、
前記継手本体を覆うカバー部材と、
前記継手本体と前記カバー部材とを接合する固定部材とを備え、
前記継手本体は、中心軸が直線状に延びる筒状部と、前記筒状部の両端の各々に設けられた2つの鍔部と、を有し、
前記2つの鍔部は、各々前記筒状部の前記両端における外径よりも大きい外径を有すると共に内周側に前記受口部が形成されており、
前記カバー部材は、前記筒状部の中心軸を含む面によって分割される第1カバー部材と第2カバー部材とからなり、前記第1カバー部材と前記第2カバー部材とは連結して、前記筒状部の外径よりも大きい内径を有し、かつ前記筒状部と同軸の筒状カバー体を形成しており、
前記固定部材は、前記2つの鍔部の各々の前記筒状部側と、前記筒状カバー体の両端面の各々との間に充填された樹脂からなり、
前記固定部材により接合された前記継手本体と前記カバー部材との間に、中空空間が形成されていることを特徴とする管継手。
[3]管部材が挿入される2つの受口部を有する継手本体と、
前記継手本体を覆うカバー部材と、
前記継手本体と前記カバー部材とを接合する固定部材とを備え、
前記継手本体は、中心軸が同一平面内において、曲線状に、または屈曲して延びる筒状部と、前記筒状部の両端の各々に設けられた2つの鍔部と、を有し、
前記2つの鍔部は、各々前記筒状部の前記両端における外径よりも大きい外径を有すると共に内周側に前記受口部が形成されており、
前記カバー部材は、前記筒状部の中心軸を含む面によって分割される第1カバー部材と第2カバー部材とからなり、前記第1カバー部材と前記第2カバー部材とは連結して、前記筒状部の外径よりも大きい内径を有し、かつ前記筒状部と同軸の筒状カバー体を形成しており、
前記固定部材は、前記2つの鍔部の各々の前記筒状部側と、前記筒状カバー体の両端面の各々との間に充填された樹脂からなり、
前記固定部材により接合された前記継手本体と前記カバー部材との間に、中空空間が形成されていることを特徴とする管継手。
[4]管部材が挿入される3つの受口部を有する継手本体と、
前記継手本体を覆うカバー部材と、
前記継手本体と前記カバー部材とを接合する固定部材とを備え、
前記継手本体は、中心軸が同一平面内において延びる第1の筒状部と、前記第1の筒状部の途中から分岐し、中心軸が前記第1の筒状部の中心軸と同一平面内にある第2の筒状部と、前記第1の筒状部の両端と、前記第2の筒状部の端部の各々に設けられた3つの鍔部と、を有し、
前記3つの鍔部は、各々前記各筒状部の前記各端部における外径よりも大きい外径を有すると共に内周側に前記受口部が形成されており、
前記カバー部材は、前記第1の筒状部の中心軸と前記第2の筒状部の中心軸とを含む面によって分割される第1カバー部材と第2カバー部材とからなり、前記第1カバー部材と前記第2カバー部材とは連結して、前記第1の筒状部の外径よりも大きい内径を有し、かつ前記第1の筒状部と同軸の第1の筒状カバー体と、前記第1の筒状カバー体の途中から分岐し、前記第2の筒状部の外径よりも大きい内径を有し、かつ前記第2の筒状部と同軸の第2の筒状カバー体とを形成しており、
前記固定部材は、前記3つの鍔部の各々の前記各筒状部側と、前記第1の筒状カバー体の両端面と前記第2の筒状カバー体の端面のいずれかとの間に充填された樹脂からなり、
前記固定部材により接合された前記継手本体と前記カバー部材との間に、中空空間が形成されていることを特徴とする管継手。
[5]前記固定部材が、前記第1カバー部材と前記第2カバー部材とが連結する面においてゲート痕を有する、[1]~[4]のいずれかに記載の管継手。
[6]前記第1カバー部材と前記第2カバー部材とが、形状嵌合により連結している、[1]~[5]のいずれかに記載の管継手。
[7]前記第1カバー部材と前記第2カバー部材とが、樹脂により接合されて連結している、[1]~[6]のいずれかに記載の管継手。
[8]前記継手本体の最大外径と前記カバー部材の最大外径とが等しい、[1]~[7]のいずれかに記載の管継手。
[9]前記継手本体は、筒状部と、前記筒状部の各端部に各々設けられた複数の鍔部とを有し、前記各鍔部が、前記筒状部に隣接する小径部と、前記小径部に隣接し、前記小径部より外径の大きい大径部とからなり、前記カバー部材の端部における内周面は、前記小径部の外周面に当接しており、
前記固定部材は、前記各鍔部の大径部の各々の前記筒状部側と、前記各カバー部材の端面のいずれかとの間に充填された樹脂からなる、[1]~[8]のいずれかに記載の管継手。
[10]前記継手本体は、筒状部と、前記筒状部の各端部に各々設けられた複数の鍔部とを有し、前記各鍔部が、前記筒状部に隣接する小径部と、前記小径部に隣接し、前記小径部より外径の大きい大径部とからなり、
前記カバー部材は、外周部と前記外周部よりも軸方向の長さが短い内周部とからなり、
前記カバー部材の前記外周部の内周面は、前記各鍔部の前記小径部の外周面に当接しており、
前記カバー部材の前記内周部の端面は、前記各鍔部の前記小径部の前記筒状部側に当接しており、
前記固定部材は、前記各鍔部の大径部の各々の前記筒状部側と、前記カバー部材の前記外周部との間に充填された樹脂からなる、[1]~[9]のいずれかに記載の管継手。
[11][1]~[10]のいずれかに記載の管継手と、前記管継手の前記受口部に挿入された管部材とを備える配管構造。
[12][1]~[10]のいずれかに記載の管継手の製造方法であって、
前記第1カバー部材と前記第2カバー部材の各々を製造し、
得られた前記第1カバー部材と前記第2カバー部材との間に前記継手本体を挿入してから、前記第1カバー部材と前記第2カバー部材とを連結し、
その後、溶融した樹脂を、前記継手本体と前記カバー部材との間に射出し固化させることにより、前記継手本体と前記カバー部材とを接合する、管継手の製造方法。
[13][2]~[10]のいずれかに記載の管継手の製造方法であって、
前記第1カバー部材と前記第2カバー部材の各々を製造し、
得られた前記第1カバー部材と前記第2カバー部材との間に前記継手本体を挿入してから、前記第1カバー部材と前記第2カバー部材とを連結し、
その後、溶融した樹脂を、前記各鍔部の各々の前記筒状部側と、前記筒状カバー体の両端面の各々との間に射出し固化させることにより、前記継手本体と前記カバー部材とを接合する、管継手の製造方法。
[14][2]~[10]のいずれかに記載の管継手を、キャビティとコアが並んだ固定側金型と、初期状態において、前記固定側金型の前記キャビティと対向する位置にコアが形成されると共に、前記固定側金型の前記コアと対向する位置にキャビティが形成された可動側金型を用いてダイスライドインジェクション法により製造する方法であって、
前記第1カバー部材と前記第2カバー部材を、前記固定側金型と前記可動側金型との間に溶融した樹脂を射出し固化させることにより成形し、
前記固定側金型と前記可動側金型を開いて前記固定側金型をスライドさせることにより、得られた前記第1カバー部材と前記第2カバー部材とを対向配置させ、両者の間に前記継手本体を挿入してから、前記固定側金型と前記可動側金型を閉じて前記第1カバー部材と前記第2カバー部材とを連結し、
その後、溶融した樹脂を、前記各鍔部の各々の前記筒状部側と、前記筒状カバー体の両端面の各々との間に射出し固化させることにより、前記継手本体と前記カバー部材とを接合する、管継手の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の管継手とその製造方法によれば、中空層を有する管継手を簡便に安定して製造できる。また、本発明の配管構造は、配管の作業負担が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る管継手を示す斜視図である。
【
図2】
図1の管継手を、II-II’線で切断した際の斜視図である。
【
図3】
図1の管継手を構成する継手本体の斜視図である。
【
図4】
図1の管継手を構成するカバー部材の斜視図である。
【
図5】
図1の管継手を構成する固定部材の斜視図である。
【
図6】カバー部材の連結部の他の態様を示す図で、(a)はカバー部材全体の斜視図、(b)は上面から見た(a)のb部分の拡大図である。
【
図7】カバー部材の連結部の他の態様を示す図で、(a)はカバー部材全体の斜視図、(b)は上面から見た(a)のb部分の拡大図である。
【
図8】カバー部材の連結部の他の態様を示す図で、カバー部材を上面から見た連結部近傍の拡大図である。
【
図9】カバー部材の連結部の他の態様を示す図で、管継手の側面図である。
【
図10】カバー部材の連結部の他の態様を示す図で、(a)は管継手の側面図、(b)は、(a)の管継手を連結部と中心軸を含む平面で切断した断面図である。
【
図11】本発明の第2実施形態に係る管継手を示す断面図である。
【
図12】本発明の第3実施形態に係る管継手を示す断面図である。
【
図13】本発明の第4実施形態に係る管継手を示す断面図である。
【
図14】本発明の第1実施形態に係る管継手の製造方法における一工程を示す図である。
【
図15】本発明の第1実施形態に係る管継手の製造方法における一工程を示す図である。
【
図16】本発明の第1実施形態に係る管継手の製造方法における一工程を示す図である。
【
図17】本発明の第1実施形態に係る管継手の製造方法における一工程を示す図である。
【
図18】本発明の第1実施形態に係る管継手の製造方法における一工程を示す図である。
【
図19】本発明の一実施形態に係る配管構造を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<管継手>
[第1実施形態]
本発明の一実施形態に係るソケット型管継手の一例であるソケット型管継手10について、
図1~5を用いて説明する。
ソケット型管継手10は、
図1、2に示すように、各々同軸状に配置された継手本体11と、継手本体11を覆うカバー部材50と継手本体11とカバー部材50とを接合する第1固定部材70及び第2固定部材80とで構成されている。
【0013】
継手本体11には、その両端部に管部材が挿入される第1受口部13と第2受口部14(2つの受口部)とが形成され、第1受口部13と第2受口部14との間に通水孔12が形成されている。
継手本体11は、
図3に示すように、中心軸が直線状の軸線O1に沿って延びる筒状部20と、筒状部20の両端部の各々に、筒状部20と同軸状に設けられた第1鍔部30と第2鍔部40(2つの鍔部)とを有している。第1鍔部30と第2鍔部40の外径は、少なくともこれらが隣接する筒状部20の両端部の外径より大きい。
【0014】
以下では、軸線O1に沿う方向を、軸線O1方向と言う。軸線O1に直交する方向を径方向と言い、軸線O1回りに周回する方向を周方向と言う。
また、筒状部20から見た第1受口部13の方向及び筒状部20から見た第2受口部14の方向を軸線O1方向の外側と言い、第1受口部13又は第2受口部14から見た筒状部20の方向を、軸線O1方向の内側と言う。また、軸線O1から見たカバー部材50の方向を外周側と言い、カバー部材50から見た軸線O1の方向を内周側と言う。
なお、第2実施形態以下の他の軸線についても同様である。
【0015】
本実施形態における筒状部20は、軸線O1方向において一様な外径を有している。
第1鍔部30は、筒状部20に隣接する小径部31と、小径部31に隣接し、小径部31より外径の大きい大径部32とから構成されている。
第2鍔部40は、筒状部20に隣接する小径部41と、小径部41に隣接し、小径部41より外形の大きい大径部42とから構成されている。
【0016】
図2に示すように、小径部31の内周面(小径部内周面37)と小径部41の内周面(小径部内周面47)は、各々筒状部20の軸線O1方向の両端部において、その内周面(筒状部内周面22)と連続している。これら、小径部内周面37、筒状部内周面22、小径部内周面47で囲まれた領域が通水孔12とされている。
【0017】
大径部32の内径は、小径部31の内径より大きい。すなわち、大径部32の内周面(大径部内周面38)の径は、小径部内周面37の径より大きい。大径部内周面38と小径部内周面37とは同軸状とされ、両者の間の段差部分が、第1受口部13に挿入された管部材の先端が接地する第1管接地面39とされている。
【0018】
同様に、大径部42の内径は、小径部41の内径より大きい。すなわち、大径部42の内周面(大径部内周面48)の径は、小径部内周面47の径より大きい。大径部内周面48と小径部内周面47とは同軸状とされ、両者の間の段差部分が、第2受口部14に挿入された管部材の先端が接地する第2管接地面49とされている。
【0019】
カバー部材50は、
図4に示すように、軸線O1を含む中心面Sによって分割される第1カバー部材51と第2カバー部材52とからなり、第1カバー部材51と第2カバー部材52とは連結部53において連結して、筒状部20と同軸に配置される筒状カバー体54を形成している。
【0020】
図4の例において、連結部53は、中心面Sに沿う面での付き合わせとされている。
本実施形態における筒状カバー体54は、軸線O1方向において一様な外径を有している。筒状カバー体54の外径(カバー部材50の最大外径)は、大径部32、大径部42の外径(継手本体11の最大外径)と等しい。すなわち、筒状カバー体54の外周面(筒状カバー体外周面57)の径は、大径部外周面36及び大径部外周面46の径と等しい。
【0021】
図2に示すように、筒状カバー体54の軸線O1方向の長さは、筒状部20の軸方向の長さより大きく、筒状カバー体54の軸線O1方向の両端部は、小径部31、小径部41の外周まで延びている。
また、筒状カバー体内周面58の径は、小径部31の外周面(小径部外周面35)及び小径部41の外周面(小径部外周面45)の径と等しい。
その結果、筒状カバー体内周面58(カバー部材50の端部における内周面)は、その両端部の各々において、小径部外周面35及び小径部外周面45に当接している。
【0022】
筒状カバー体54の内径は、筒状部20の外径より大きい。すなわち、筒状カバー体54の内周面(筒状カバー体内周面58)の径は、筒状部20の外周面(筒状部外周面21)の径より大きく、筒状カバー体内周面58と筒状部外周面21との間は離間している。
この筒状カバー体内周面58と筒状部外周面21、及び小径部31の内側面(小径部内側面33)と小径部41の内側面(小径部内側面43)とで囲まれる領域が、断熱性をもたらす中空空間25となっている。
【0023】
第1固定部材70と第2固定部材80とは樹脂からなり、各々
図5に示すようなリング状とされている。
図2に示すように、第1固定部材70は、大径部32の筒状部20側の面(大径部内側面34)と筒状カバー体54の大径部32側の端面(筒状カバー体第1端面55、カバー部材50の端面)との間を埋めるように充填された樹脂からなり、その内周側は、小径部外周面35に接し、外周側は、大径部外周面36及び筒状カバー体外周面57と連続するように、これらと同径とされている。
【0024】
また、第2固定部材80は、大径部42の筒状部20側の面(大径部内側面44)と筒状カバー体54の大径部42側の端面(筒状カバー体第2端面56、カバー部材50の端面)との間を埋めるように充填された樹脂からなり、その内周側は、小径部外周面45に接し、外周側は、大径部外周面46及び筒状カバー体外周面57と連続するように、これらと同径とされている。
第1固定部材70及び第2固定部材80により、継手本体11とカバー部材50とが一体化されると共に、中空空間25の密閉性が向上する。
【0025】
なお、本実施形態において、連結部の態様は、
図4の連結部53のように、中心面Sに沿う面での付き合わせには限定されない。例えば、
図6~9に示すように、第1カバー部材51と第2カバー部材52とを形状嵌合させて連結してもよい。また、
図10に示すように、樹脂により接合して連結してもよい。
【0026】
図6の連結部60では、第1カバー部材51の径方向中央を凸とし、第2カバー部材52の径方向中央を凹とすることにより、両者を嵌合させている。
図7の連結部61では、第1カバー部材51の径方向外側を凸とし、第2カバー部材52の径方向外側を凹とすることにより、両者を嵌合させている。
【0027】
図8の連結部62では、第1カバー部材51の周方向の長さを、径方向外側程長くし、第2カバー部材52の周方向の長さを、径方向外側程短くすることにより、両者を嵌合させている。
図9の連結部63では、第1カバー部材51に軸線O1方向中央において周方向に延びる凸部51aを形成し、第2カバー部材52に軸線O1方向中央において周方向に凹む凹部52aを形成することにより、両者を嵌合させている。
【0028】
図10の連結部59は、第1カバー部材51と第2カバー部材52の双方において、連結部59の軸線O1方向中央の両側において樹脂流入用の凹溝51bと凹溝52bを各々形成し、互いに連通する凹溝51bと凹溝52bとにカバー部材接合部材75を充填することにより第1カバー部材51と第2カバー部材52とを接合している。
【0029】
カバー部材接合部材75は、第1固定部材70及び第2固定部材80と同一の樹脂であることが好ましい。
なお、
図10(b)に示すように、連結部59と対向する連結部(
図10(b)の図示右側)は、
図4と同じ、中心面Sに沿う面での付き合わせからなる連結部53とされている。
【0030】
[第2実施形態]
本発明の一実施形態に係るソケット型管継手の他の一例であるソケット型管継手18について、
図11を用いて説明する。
図11において、
図1~5と同一の構成部材については、
図1~5と同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0031】
ソケット型管継手18は、カバー部材50により構成される筒状カバー体54の形状が異なる他は、ソケット型管継手10と同様である。
すなわち、本実施形態の筒状カバー体54は、外周部64と外周部64よりも軸線O1方向の長さが短い内周部65とからなる。
【0032】
外周部64の軸線O1方向の外側の内周面(カバー部材50の端部における内周面)は、第1鍔部30側では、小径部31の小径部外周面35に当接しており、内周部65の軸線O1方向の外側の端面(内周部第1端面68)は、小径部31の内側(筒状部20側)の小径部内側面33に当接している。
また、外周部64の軸線O1方向の外側の内周面は、第2鍔部40側では、小径部41の小径部外周面45に当接しており、内周部65の軸線O1方向の外側の端面(内周部第2端面69)は、小径部41の内側(筒状部20側)の小径部内側面43に当接している。
【0033】
筒状カバー体54の内周部65の内径は、筒状部20の外径より大きい。すなわち、筒状カバー体54の内周面(筒状カバー体内周面58)の径は、筒状部20の外周面(筒状部外周面21)の径より大きく、筒状カバー体内周面58と筒状部外周面21との間は離間している。
この筒状カバー体内周面58(内周部65の内周面)と筒状部外周面21、及び小径部31の内側面(小径部内側面33)と小径部41の内側面(小径部内側面43)とで囲まれる領域が中空空間25となっている。
【0034】
ソケット型管継手10と同様に、第1固定部材70は、大径部32の筒状部20側の面(大径部内側面34)と外周部64の大径部32側の端面(外周部第1端面66、カバー部材50の端面)との間を埋めるように充填された樹脂からなり、その内周側は、小径部外周面35に接し、外周側は、大径部外周面36及び筒状カバー体外周面57と連続するように、これらと同径とされている。
【0035】
また、第2固定部材80は、大径部42の筒状部20側の面(大径部内側面44)と筒状カバー体54の大径部42側の端面(外周部第2端面67、カバー部材50の端面)との間を埋めるように充填された樹脂からなり、その内周側は、小径部外周面45に接し、外周側は、大径部外周面46及び筒状カバー体外周面57と連続するように、これらと同径とされている。
なお、本実施形態においても、連結部の態様は特に限定されない。
【0036】
[第3実施形態]
本発明の一実施形態に係るエルボ型管継手の一例であるエルボ型管継手90について、
図12を用いて説明する。
図12において、
図1~5と同一の構成部材については、
図1~5と同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
エルボ型管継手90は、継手本体11と、継手本体11を覆うカバー部材と、継手本体11とカバー部材とを接合する固定部材とを備えている。
【0037】
継手本体11は、同一平面内で90度の角度で屈曲した軸線O2を中心軸とする筒状部91と、筒状部91の両端の各々に設けられた第1鍔部30と第2鍔部40(2つの鍔部)とを備えている。
本実施形態における筒状部91は、軸線O2方向において一様な外径を有している。
第1鍔部30と第2鍔部40の外径は、筒状部20の外径より大きく、各々の内周側に第1受口部13と第2受口部14(2つの受口部)とが形成されている。
【0038】
カバー部材は、軸線O2を含む面によって分割される第1カバー部材と第2カバー部材とからなり、軸線O2を中心軸とする筒状カバー体92を構成している。
図12は、この軸線O2と、第1カバー部材と第2カバー部材の連結部を含む面によって切断した断面図である。第1カバー部材が図示した紙面の奥側、第2カバー部材が紙面の手前側にあり、図示した紙面上の連結部で連結して、筒状カバー体92を構成している。
【0039】
筒状カバー体92は、筒状部91の外径よりも大きい内径を有し、筒状部91と同軸状である。すなわち、筒状カバー体92の内周面と筒状部91の外周面との間は離間している。
この筒状カバー体92の内周面と筒状部91の外周面、及び第1鍔部30と第2鍔部40の内側面とで囲まれる領域が断熱性をもたらす中空空間25となっている。
【0040】
第1固定部材70は、第1鍔部30の筒状部91側と筒状カバー体92の軸線O2方向の外側端面(カバー部材の端面)の一方との間に充填された樹脂からなる。
第2固定部材80は、第2鍔部40の筒状部91側と筒状カバー体92の軸線O2方向の外側端面(カバー部材の端面)の他方との間に充填された樹脂からなる。
なお、本実施形態においても、連結部の態様は特に限定されず、第1実施形態と同様に、種々の態様を取り得る。
【0041】
[第4実施形態]
本発明の一実施形態に係るチーズ型管継手の一例であるチーズ型管継手93について、
図13を用いて説明する。
図13において、
図1~5と同一の構成部材については、
図1~5と同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
チーズ型管継手93は、継手本体11と、継手本体11を覆うカバー部材と、継手本体11とカバー部材とを接合する固定部材とを備えている。
【0042】
継手本体11は、直線状に延びる軸線O3を中心軸とする第1の筒状部94と、第1の筒状部94の途中から分岐し直線状に延びる軸線O4を中心軸とする第2の筒状部95と、第1の筒状部94の軸線O3方向の外側端部の各々に設けられた第1鍔部30と第2鍔部40と、第2の筒状部95の軸線O4方向の外側端部に設けられた第3鍔部98(3つの鍔部)を備えている。軸線O4は軸線O3と直交する方向に直線状に延びている。
【0043】
本実施形態における第1の筒状部94は、軸線O3方向において一様な外径を有している。第1鍔部30と第2鍔部40の外径は、第1の筒状部94の外径より大きく、各々の内周側に第1受口部13と第2受口部14とが形成されている。
第2の筒状部95は、軸線O4方向において一様な外径を有している。第3鍔部98の外径は、第2の筒状部95の外径より大きく、内周側に第3受口部15が形成されている。
すなわち、本実施形態の継手本体11は3つの鍔部を有し、3つの受口部が形成されている。
【0044】
カバー部材は、軸線O3と軸線O4を含む面によって分割される第1カバー部材と第2カバー部材とからなり、軸線O3を中心軸とする第1の筒状カバー体96と軸線O4を中心軸とする第2の筒状カバー体97を構成している。
第2の筒状部95は第1の筒状部94の途中から分岐している。
【0045】
図12は、軸線O3と軸線O4と、第1カバー部材と第2カバー部材の連結部を含む面によって切断した断面図である。第1カバー部材が図示した紙面の奥側、第2カバー部材が紙面の手前側にあり、図示した紙面上の連結部で連結して、第1の筒状部94及び第2の筒状部95を構成している。
【0046】
第1の筒状カバー体96は、第1の筒状部94の外径よりも大きい内径を有し、第1の筒状部94と同軸状である。すなわち、第1の筒状カバー体96の内周面と第1の筒状部94の外周面との間は離間している。
同様に、第2の筒状カバー体97は、第2の筒状部95の外径よりも大きい内径を有し、第2の筒状部95と同軸状である。すなわち、第2の筒状カバー体97の内周面と第2の筒状部95の外周面との間は離間している。
これら第1の筒状カバー体96の内周面と第1の筒状部94の外周面、第2の筒状カバー体97の内周面と第2の筒状部95の外周面、及び第1鍔部30と第2鍔部40と第3鍔部98の内側面とで囲まれる領域が断熱性をもたらす中空空間25となっている。
【0047】
第1固定部材70は、第1鍔部30の第1の筒状部94側と第1の筒状カバー体96の軸線O3方向の外側端面(カバー部材の端面)の一方との間に充填された樹脂からなる。
第2固定部材80は、第2鍔部40の第1の筒状部94側と第1の筒状カバー体96の軸線O3方向の外側端面(カバー部材の端面)の他方との間に充填された樹脂からなる。
第3固定部材85は、第3鍔部98の第2の筒状部95側と第2の筒状カバー体97の軸線O4方向の外側端面との間に充填された樹脂からなる。
なお、本実施形態においても、連結部の態様は特に限定されず、第1実施形態と同様に、種々の態様を取り得る。
【0048】
[その他態様]
第1実施形態から第4実施形態において、各筒状部は、いずれも、軸線方向において一様な外径を有するものとしたが、筒状部の外径は一様でなくてもよい、例えば、第1鍔部30側を第2鍔部40側より大径にしてもよい。
【0049】
なお、各実施形態の筒状部の軸方向端部を各実施形態におけるものより大径とした場合は、それに応じて、その端部に連続する鍔部の外径も大きくし、鍔部の外径が筒状部の端部における外径よりも大きいとの関係は維持する必要がある。
また、筒状部の外径は一様でないものとした場合は、筒状カバー体についても、軸線方向のいずれの箇所においても、筒状部の外径よりも大きい内径を有するとの関係を維持する必要がある。
【0050】
また、第1管接地面39、第2管接地面49等の管接地面は、鍔部内において、軸方向のいずれの位置に設けられてもよい。
また、第1実施形態から第3実施形態において、各鍔部をいずれも小径部と大径部とからなる構成としたが、第4実施形態のように、鍔部の外径が軸線方向で一様なものであつてもよい。反対に、第4実施形態の鍔部を、小径部と大径部とからなる構成としてもよい。
【0051】
また、第3実施形態において、軸線O2を90度の角度で屈曲したものとしたが、屈曲の角度は、90度に限定されない。また、屈曲部は丸みを帯びていてもよい。さらに、軸線O2は、直線の組み合わせに限られず、曲線状でもよい。ただし、軸線O2全体が、同一平面内に存在することが必要である。
【0052】
また、第4実施形態においても、軸線O3と軸線O4との角度を90度としたが、両軸線の角度は、90度に限定されない。また、軸線O3と軸線O4は、各々直線に限られず、曲線でもよい。ただし、軸線O3と軸線O4の全体が、同一平面内に存在することが必要である。
【0053】
また、第3実施形態、第4実施形態において、カバー部材により形成される各筒状カバー体を第2実施形態と同様にしてもよい。すなわち、各筒状カバー体を外周部と外周部よりも軸方向の長さが短い内周部とからなるものとし、各筒状カバー体の外周部の内周面が、各鍔部の小径部の外周面に当接し、各筒状カバー体の内周部の端面が、各鍔部の小径部の筒状部側に当接するようにしてもよい。
【0054】
[管継手の材質]
管継手を形成する材料は任意に設定することが可能であるが、例えば、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)を用いることが好適である。
また、管継手の一部または全部は、透明であることがより好適である。特に、継手本体の各鍔部を透明にすると、管部材の接続部分が確認できて好ましい。
【0055】
<管継手の製造方法>
本実施形態の製造方法は、第1カバー部材と前記第2カバー部材の各々を製造し、得られた第1カバー部材と前記第2カバー部材との間に継手本体を挿入してから、第1カバー部材と第2カバー部材とを連結し、その後、溶融した樹脂を、継手本体とカバー部材との間、具体的には、各鍔部の各々の筒状部側と、筒状カバー体の両端面の各々との間に射出し固化させることにより、継手本体とカバー部材とを接合する方法である。
【0056】
本実施形態の製造方法は、いわゆる、ダイスライドインジェクション法によることが好ましい。
すなわち、キャビティとコアが並んだ固定側金型と、初期状態において固定側金型のキャビティと対向する位置にコアが形成されると共に、固定側金型のコアと対向する位置にキャビティが形成された可動側金型を用いる方法が好ましい。
【0057】
具体的には、第1カバー部材と第2カバー部材を、固定側金型と可動側金型との間に溶融した樹脂を射出し固化させることにより成形し、固定側金型と可動側金型を開いて固定側金型をスライドさせることにより、得られた第1カバー部材と第2カバー部材とを対向配置させ、両者の間に継手本体を挿入してから、固定側金型と可動側金型を閉じて第1カバー部材と前記第2カバー部材とを連結し、その後、溶融した樹脂を、各鍔部の各々の筒状部側と、筒状カバー体の両端面の各々との間に射出し固化させることにより、継手本体とカバー部材とを接合する方法を好適に採用できる。
【0058】
次に、
図14~18を用い、
図1~5に示したソケット型管継手10を例にとって、本実施形態の管継手の製造方法の一例を詳細に説明する。
図14に示すように、本実施形態の製造方法には、可動側金型150と固定側板157に沿ってスライド可能な固定側金型153と、固定側金型153をスライドさせる油圧シリンダ156とを備えるダイスライドインジェクション装置を用いる。
【0059】
可動側金型150には、可動側キャビティ151と可動側コア152とが並べて形成されている。また、固定側金型153には、固定側コア155と固定側キャビティ154とが並べて形成されている。
図14に示す初期状態において、可動側キャビティ151と固定側コア155とが対向配置され、両者の間に、第2カバー部材52を成形するための成形空間が形成されている。また、可動側コア152と固定側キャビティ154とが対向配置され、両者の間に、第1カバー部材51を成形するための成形空間が形成されている。
【0060】
また、固定側板157側から、可動側金型150と固定側金型153との間の成形空間まで樹脂を導く樹脂流路158が形成されている。
樹脂流路158は、典型的には、可動側金型150と固定側金型153との間まで樹脂を導くスプルー、注入された樹脂を可動側金型150と固定側金型153との間で移動させるランナー、及び各成形空間(本実施形態では可動側キャビティ151と固定側コア155との間、及び可動側コア152と固定側キャビティ154との間)への入口であるゲートとで構成される。また、必要に応じて、コールドスラグウエルが設けられる。
【0061】
可動側キャビティ151と固定側コア155との間の成形空間へのゲートは、第2カバー部材52の一方の連結部となる部分(金型の割面)の軸線O1方向中央に設けられる。
可動側コア152と固定側キャビティ154との間の成形空間へのゲートは、第1カバー部材51の一方の連結部となる部分(金型の割面)の軸線O1方向中央に設けられる。
【0062】
なお、後述の第1固定部材70と第2固定部材80を得るための成形空間へのゲートは、第1固定部材70と第2固定部材80の各々に対応する部分に設けられる。これらのゲートは、第1カバー部材51を得るための成形空間、及び第2カバー部材52を得るための成形空間の外側(軸線O1方向において、筒状カバー体54の外側となる部分)に配置されるので、第1カバー部材51、第2カバー部材52を成形する段階では機能しない。
【0063】
この
図14の状態で溶融した樹脂を成形空間に射出し冷却固化させることにより、第1カバー部材51と第2カバー部材52を成形する。
そして、
図15に示すように可動側金型150と固定側金型153とを開き、可動側金型150側に保持された第2カバー部材52、固定側金型153側に保持された第1カバー部材51を得る。可動側金型150と固定側金型153とを開いた際、樹脂流路158内で固化したコールドランナー159は、カットして除去する。
【0064】
次に、
図16に示すように、固定側金型153をスライドさせ、得られた第1カバー部材51と第2カバー部材52とを対向配置させる。そして、第1カバー部材51と第2カバー部材52との間に継手本体11を挿入し、
図17に示すように、可動側金型150と固定側金型153とを閉じる。これにより、第1カバー部材51と第2カバー部材52とが連結する。
【0065】
この
図17の状態で、溶融した樹脂を第1鍔部30と第2鍔部40の各々の筒状部20側と、筒状カバー体54の両端面の各々との間の空隙に射出して充填し、冷却固化させることにより、第1固定部材70と第2固定部材80により継手本体11と筒状カバー体54(第1カバー部材51及び第2カバー部材52)とを接合する。
この製造方法によれば、第1固定部材70と第2固定部材80とは、各々第1カバー部材51と第2カバー部材52とが連結する面(金型の割面)においてゲート痕を有することとなる。
【0066】
なお、連結部を
図10に示すようなカバー部材接合部材75で接合するためには、
図10の樹脂流入用の凹溝51bと凹溝52bとの境界部分に通じるゲートを設けておけば、第1固定部材70及び第2固定部材80と同時にカバー部材接合部材75を形成することができる。
次に、
図18に示すように可動側金型150と固定側金型153とを開き、コールドランナー159が付着した状態のソケット型管継手10を取り出す。その後コールドランナー159を除去すれば、完成したソケット型管継手10が得られる。
【0067】
<配管構造の製造方法>
図19を用いて、本実施形態の配管構造の一例について説明する。配管構造100は空調機101に接続されたドレン排水用配管構造である。
本実施形態の配管構造100は、ドレン配管102とドレン配管103とが管継手106により接続され、ドレン配管103とドレン配管104とが管継手107により接続され、ドレン配管104とドレン配管105とが管継手108により接続されている。
【0068】
管継手107、管継手108としては、例えば、第1実施形態のソケット型管継手10、第2実施形態のソケット型管継手18を使用できる。また、管継手106としては、例えば第3実施形態のエルボ型管継手90を使用できる。
空調機101と配管構造100とは、天井110から、複数の吊り材111により吊り下げられている。
【0069】
配管構造の製造方法は、特に限定されず、本実施形態の管継手の受口部にドレン配管102等の管部材を挿入し、接続することで本実施形態の配管構造が得られる。管継手と管部材とを接続する方法は、特に限定されず、接着剤を用いて接続してもよく、管継手の受口部の内面と管部材の外面との間にゴムパッキンなどの止水部材を設置することで接着剤を用いずに接続してもよい。
【符号の説明】
【0070】
10 ソケット型管継手
11 継手本体
13 第1受口部
14 第2受口部
18 ソケット型管継手
20 筒状部
30 第1鍔部
40 第2鍔部
50 カバー部材
51 第1カバー部材
52 第2カバー部材
53 連結部
54 筒状カバー体
70 第1固定部材
80 第2固定部材
90 エルボ型管継手
93 チーズ型管継手