(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114295
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】ニップ装置
(51)【国際特許分類】
B65H 23/025 20060101AFI20240816BHJP
B65H 20/02 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
B65H23/025
B65H20/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019969
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000240341
【氏名又は名称】株式会社ヒラノテクシード
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戸倉 康裕
(72)【発明者】
【氏名】工藤 晨
(72)【発明者】
【氏名】杉山 勉
(72)【発明者】
【氏名】西村 研治
【テーマコード(参考)】
3F103
3F104
【Fターム(参考)】
3F103AA04
3F103AA05
3F103AA07
3F103BA01
3F103BA21
3F103EA15
3F104AA01
3F104AA04
3F104AA05
3F104AA07
3F104BA05
3F104GA02
3F104KA11
(57)【要約】
【課題】ウエブの幅方向において引張応力に差があってシワが発生する可能性があるときに、そのシワの発生を防止することができるニップ装置を提供する。
【解決手段】フィードロール64に搬送されてくるウエブWの幅方向における一端部の引張応力が他端部の引張応力より弱い場合に、傾斜装置66は、ニップロール62の回転軸70を傾斜させて、ウエブWの一端部におけるニップ量を、ウエブWの他端部におけるニップ量より大きくして、ウエブWの幅方向全体の引張応力を均一に調整する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に走行するウエブを抱きかかえて搬送するために駆動回転軸が水平方向に配された金属製のフィードロールと、
前記フィードロールを回転させるロールモータと、
前記フィードロールと平行に配され、前記フィードロールへ前記ウエブをニップする弾力性のあるニップロールと、
前記ニップロールの回転軸を水平方向に対し傾斜させる傾斜装置と、
を有し、
前記フィードロールに搬送されてくる前記ウエブの幅方向における一端部の引張応力が他端部の引張応力より弱い場合に、前記傾斜装置は、前記ニップロールの前記回転軸を傾斜させて、前記ウエブの前記一端部におけるニップ量を、前記ウエブの前記他端部におけるニップ量より大きくして、前記ウエブの幅方向全体の前記引張応力を均一に調整する、
ことを特徴とするニップ装置。
【請求項2】
前記傾斜装置は、前記フィードロールを初期ニップ量Δz(但し、Δz>0である)でニップしている前記ニップロールの前記回転軸を傾斜させて、前記ウエブの前記一端部における前記ニップ量を前記初期ニップ量Δz+調整ニップ量dzに設定し(但し、dz=>0である)、前記ウエブの前記他端部における前記ニップ量を前記初期ニップ量Δz-調整ニップ量dzに設定する、
請求項1に記載のニップ装置。
【請求項3】
前記ウエブが前記フィードロールに至るまでに蛇行修正装置が設けられ、
前記蛇行修正装置の修正ロールの傾斜角θ°から前記調整ニップ量を調整する、
請求項2に記載のニップ装置。
【請求項4】
前記傾斜装置は、
左右一対の腕部と、
左右一対の前記腕部の中央部にそれぞれ設けられた支点と、
左右一対の前記腕部の後端部をそれぞれ上下方向に移動させる上下動装置と、
を有し、
左右一対の前記腕部の前端に、前記ニップロールの前記回転軸の左右端部がそれぞれ取り付けられている、
請求項1に記載のニップ装置。
【請求項5】
前記上下動装置は、
左右一対の前記腕部の後端部にそれぞれ当接された左右一対の円板状の偏心カムと、
左右一対の前記偏心カムをそれぞれ回転させるカムモータと、
を有する請求項4に記載のニップ装置。
【請求項6】
前記傾斜装置は、
前後方向に移動自在な左右一対の上コッタと、
左右一対の前記上コッタの下方に配され、前記上コッタの移動によって上下動する左右一対の下コッタと、
左右一対の前記上コッタを前後方向にそれぞれ移動させる左右一対のコッタ駆動部と、
を有し、
左右一対の前記下コッタに、前記ニップロールの前記回転軸の左右端部がそれぞれ取り付けられている、
請求項1に記載のニップ装置。
【請求項7】
制御部をさらに有し、
前記制御部は、前記ウエブの臨界剪断応力τcrと、前記ニップロールに至るまでの前記ウエブの剪断応力τyを算出し、
Δτ=τy-τcr>0のときは、
前記ウエブのニップ後の剪断応力τ’yとした場合に、Δτ=τ’y-τcr=0となるように、前記傾斜角θ°を用いて、前記調整ニップ量dzを算出する、
請求項3に記載のニップ装置。
【請求項8】
前記蛇行修正装置から前記ニップ装置に案内するガイドロールが配され、
前記制御部に、前記蛇行修正装置に至るまでの前記ウエブの張力T0、前記修正ロールと前記ガイドロール間のライン長L0、前記ウエブの幅w、前記ウエブの厚みt、前記ウエブのヤング率Eweb 、前記ウエブのポアソン比νweb 、前記フィードロールの半径R1、前記ニップロールの半径R2、前記フィードロールのヤング率E1、前記ニップロールのヤング率E2、前記フィードロールのポアソン比ν1、前記ニップロールのポアソン比ν2、前記初期ニップ量Δz、前記ニップロールと前記ウエブとの摩擦係数μnip 、前記ウエブと前記ガイドロールの間の摩擦係数μ0、前記ガイドロールの抱き角β、前記修正ロールの前記傾斜角θ°が入力され、
前記制御部は、入力した前記情報から前記ウエブの臨界剪断応力τcr とニップ後の剪断応力τ’yを算出する、
請求項7に記載のニップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエブのニップ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、長尺状のウエブに塗工液を塗工し、乾燥装置に入れて塗工した塗工液を乾燥させている。この乾燥装置から搬出されたウエブは、乾燥中に搬送方向が蛇行している場合があるので、蛇行修正装置を用いて、その蛇行を修正している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記蛇行修正装置によって蛇行が修正されたウエブは、幅方向の左側と右側の引張応力に差があるため、蛇行修正装置の搬出側でウエブの表面に波状のシワが発生することがある。このような状態のウエブをニップ装置のニップロールとフィードロールとでウエブをテンションカットをすると、ニップにより波状のシワが押しつぶされ、修復不可能な折りシワとなることとなる。
【0005】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、ウエブの幅方向において引張応力に差があってシワが発生する可能性があるときに、そのシワの発生を防止することができるニップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前後方向に走行するウエブを抱きかかえて搬送するために駆動回転軸が水平方向に配された金属製のフィードロールと、前記フィードロールを回転させるロールモータと、前記フィードロールと平行に配され、前記フィードロールへ前記ウエブをニップする弾力性のあるニップロールと、前記ニップロールの回転軸を水平方向に対し傾斜させる傾斜装置と、を有し、前記フィードロールに搬送されてくる前記ウエブの幅方向における一端部の引張応力が他端部の引張応力より弱い場合に、前記傾斜装置は、前記ニップロールの前記回転軸を傾斜させて、前記ウエブの前記一端部におけるニップ量を、前記ウエブの前記他端部におけるニップ量より大きくして、前記ウエブの幅方向全体の前記引張応力を均一に調整する、ことを特徴とするニップ装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フィードロールに対するニップロールの傾きによって、ウエブの一端部におけるニップ量を、ウエブの他端部におけるニップ量より大きくして、ウエブの幅方向全体の引張応力を均一に調整し、シワの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態の乾燥装置、蛇行修正装置、ニップ装置までの簡略化した右側面図である。
【
図2】乾燥装置、蛇行修正装置、ニップ装置までの簡略化した平面図である。
【
図4】ニップロールを傾ける傾斜装置の説明図である。
【
図5】ニップロールとフィードロールとの関係を示す図である。
【
図6】蛇行修正装置とニップ装置のブロック図である。
【
図7】(a)は第1中間ロールと第2修正ロールの関係を示す平面図であり、(b)は引張応力分布である。
【
図8】(a)はフィードロールとニップロールとの関係を示す図であり、(b)はその位置における引張応力分布である。
【
図9】フィードロールとニップロール右側面図であって、ニップが初期状態の図面である。
【
図10】(a)はニップの調整後のフィードロールとニップロールの右側面図であり、(b)はニップの調整後のフィードロールとニップロールの左側面図である。
【
図12】ニップの調整のためのフローチャートである。
【
図14】ニップの調整後の変更例7のフィードロールとニップロールの左側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態のウエブWの乾燥装置1と蛇行修正装置10とニップ装置60について
図1~
図12を参照して説明する。ウエブWとしては、例えば、合成樹脂フィルム、金属箔、布、紙等である。なお、本明細書において方向を定義するため、xyz軸よりなる3次元直交座標系を導入し、ウエブWが前進する方向をx方向、ウエブの幅方向をy方向、高さ方向をz方向とする。そして各図面においてその方向を明確にするため、座標系をそれぞれ記載する。
【0010】
(1)乾燥装置1
まず、乾燥装置1について
図1を参照して説明する。
【0011】
ウエブWは、例えば、巻き出し装置から巻き出され、塗工装置などで塗工液が塗工され、乾燥装置1の直方体の断熱室2に搬入される。乾燥装置1の断熱室2に搬入されたウエブWは、断熱室2内の直線状の搬送路の上下に配された複数のノズル3から熱風が吹き付けられ、塗工された塗工液を乾燥させ、外部に搬出される。断熱室2から搬出されたウエブWは、蛇行している可能性があるため、蛇行修正装置10に送られる。
【0012】
(2)蛇行修正装置10
次に、蛇行修正装置10について
図1~
図2を参照して説明する。
【0013】
図1と
図3に示すように、乾燥装置1を出口側に配された固定台(フレーム)12の上面の上方には、移動台14が配されている。移動台14は、左右一対の移動支持板15,15と、左右一対の移動支持板15,15を固定する固定シャフト42から形成されている。左右一対の移動支持板15,15の前部から左右一対の第1支持部20,20が縦方向にそれぞれ立設され、その間に第1修正ロール16が回転自在に支持されている。左右一対の移動支持板15,15の後端部から左右一対の第2支持部22,22が横方向にそれぞれ突出し、その間に第2修正ロール18が回転自在に支持されている。なお、固定シャフト42は、第1修正ロール16と第2修正ロール18の回転軸と平行である。
【0014】
図1と
図3に示すように、固定台12の上面には、ウエブWの搬送路の中心線Sを中心に左右一対の左レール26と右レール24が設けられている。搬送路の中心線Sにおける任意の点を中心に円弧状のラインを描いた場合に、左レール26と右レール24は、そのライン上にそれぞれ位置している。
【0015】
図1と
図3に示すように、左右一対の移動支持板15,15の下部には左右一対の移動脚部30,28が延設され、この左右一対の移動脚部30,28の下部には、左移動部34と右移動部32が回転軸31,29を用いて回転自在に設けられている。左移動部34と右移動部32は、左レール26と右レール24をそれぞれ移動する。
【0016】
図1と
図3に示すように、右移動部32には、接続部材40が設けられている。右移動部32の近傍であって固定台12の上面には、移動センサ44が設けられている。右移動部32の近傍であって固定台12の上面には、アクチュエーター(エアーシリンダ)よりなる台駆動部36が設けられ、この台駆動部36のシャフト38の先端が、右移動部32の接続部材40に固定されている。台駆動部36のシャフト38が伸縮することにより右移動部32が右レール24に沿って移動し、右移動部32に回転自在に取り付けられている右側の移動脚部28が移動する。右側の移動支持板15が、円弧状のライン上の右レール24に沿って移動すると、左側の移動支持板15がそれと共に移動し、そして、左移動部34が左レール26に沿って移動し、第1修正ロール16と第2修正ロール18の回転軸が、中心線Sの法線に対してθ°傾斜するように移動する。すなわち、第1修正ロール16と第2修正ロール18とは、ステアリングローラ方式で軸方向に対しθ°傾斜するように移動させるものである。そして、この移動量は、台駆動部36のシャフト38の移動量を移動センサ44で検出できる。
【0017】
図1と
図2に示すように、蛇行修正装置10の第2修正ロール18と後から説明するニップ装置60のフィードロール64との間には、ガイドロールである第1中間ロール52と第2中間ロール54が配されている。第1中間ロール52は、第2修正ロール18から送られたウエブWを下周面で抱きかかえ第2中間ロール54に送る。この場合の第1中間ロール52のウエブWに対する抱き角はβ1°とする。第2中間ロール54は、第1中間ロール52から送られたウエブWを上周面で抱きかかえ、フィードロール64に送る。この場合の第2中間ロール54のウエブWの抱き角をβ2°とする。
【0018】
図1と
図2に示すように、第2修正ロール18と第1中間ロール52の間には、ウエブWの両耳部の位置を検出するための左右一対のセンサからなる蛇行センサ46が設けられている。なお、ウエブWの片耳の位置だけ検出してもよい。
【0019】
(3)ニップ装置60
次に、ニップ装置60について
図1と
図2と
図4と
図5を参照して説明する。
【0020】
図4に示すように、ニップ装置60は、フィードロール64と、フィードロール64にウエブWをニップするニップロール62と、ニップロール62の回転軸70の左右両端をそれぞれ上下動させて回転軸70を傾斜させる傾斜装置66を有している。
図1に示すように、ニップロール62、フィードロール64、傾斜装置66は、フレーム58に設置されている。そして、ニップロール62とフィードロール64の間を抜けたウエブWは、
図1と
図2に示すように、後の行程に送り出すための搬出ロール56に至る。
【0021】
ここで、「ニップする」とは、駆動して回転している金属製のフィードロール64に抱きかかえられて前後方向に搬送されているウエブWを、弾力性のあるニップロール62で挟むことを意味し、これによりフィードロール64の駆動力がウエブWに伝わり、フィードロール64の前後でウエブWのテンションカットができる。なお、「テンションカット」とは、ウエブWが巻出しロールから巻出される工程、塗工工程、乾燥工程、そして、巻取りロールに巻取られる巻取り工程が行われる1つのライン内であっても、各工程の前後で意図的にウエブWのテンション(張力)を変更する場合があり、この意図的にテンションを変更することを意味する。弾力性のあるニップロール62とは、例えば、ゴム製のニップロール62である。
【0022】
図1と
図2と
図4と
図5に示すように、フィードロール64は、金属製であり、左右方向に設けられた水平な駆動回転軸68を中心に設けられ、搬送モータ48の速度に併せてロールモータ96で駆動されている。そして、第1中間ロール52、第2中間ロール54を経たウエブWを下周面に抱きかかえて前方に搬送する。
【0023】
図2と
図4と
図5に示すように、ニップロール62は、ゴム製であり、回転軸70が左右方向(y方向)で通常は水平に配され、かつ、フィードロール64の下方に配置され、フィードロール64によって抱きかかえられたウエブWを挟むように配置されている。ニップロール62は、フィードロール64と共に回転する他動である。
【0024】
そして、蛇行修正装置10を通過すると、フィードロール64に搬送されてくるウエブWの幅方向における一端部の引張応力が他端部の引張応力より弱く、ウエブWの幅方向全体の引張応力を均一でなく、ウエブWにシワが発生する可能性がある。そこで、ニップ装置60は、傾斜装置66を有している。この傾斜装置66は、ニップロール62の回転軸70を傾斜させて、ウエブWの一端部におけるニップ量を、ウエブWの他端部におけるニップ量より大きくすることによりウエブWの一端部の引張応力を強くし、逆に、ウエブWの他端部における引張応力を弱くして、ウエブWの幅方向全体の引張応力を均一に調整するものである。すなわち、ウエブWのある箇所のニップ量を大きくすると、その箇所の引張応力が強くなることに注目したものである。
【0025】
図2と
図4と
図5に示すように、傾斜装置66は、ニップロール62の回転軸70の左右両端部に設けられた左右一対の腕部72を有している。
図4に示すように、右側の腕部72は中央部が支点74に回転自在に設けられ、前端部が回転軸70の右端部に回転自在に固定されている。右側の腕部72の後端部の下部には板状の接触板76が設けられている。また、この右側の腕部72の後端部の上方には、上下動する右側のアクチュエータであるエアーシリンダ78が上下方向(z方向)に設けられている。このエアーシリンダ78のピストンロッド80は、エアーシリンダ78の下方から鉛直方向に突出しその先端に円柱型の連結部82が設けられている。この連結部82は、軸部84を介して腕部72の後端部に接続されている。
【0026】
図4に示すように、右側の腕部72の後端部にある接触板76の下方には、円板形の右側の偏心カム86が設けられている。この右側の偏心カム86の偏心した位置にあるカム回転軸88には、歯車が設けられている。また、右側の腕部72の下方にはサーボモータよりなる右側のカムモータ90が水平に設けられ、右側のカムモータ90の駆動軸の先端には円筒ウォーム92が設けられている。この円筒ウォーム92とカム回転軸88の歯車の間にはウォームホイール94が介されている。右側の腕部72の後端部にある連結部82は、右側のエアーシリンダ78によって常に下方に押圧され、偏心カム86の上周辺部に接触板76が常に押圧されている。
【0027】
これにより、右側のカムモータ90が駆動して右側の偏心カム86が回転すると、右側の偏心カム86の偏心分だけ、右側の腕部72の後端部が上下動する。右側のカムモータ90が駆動して右側の偏心カム86が、右側の腕部72の上下動装置となる。そして、右側の腕部72の前端部は支点74を介して逆に上下動し、ニップロール62の右側の回転軸70を上下動させることができる。そして、このニップロール62を上下動させるニップ量は、右側のカムモータ90の回転角度で決定することができる。
【0028】
ニップロール62の回転軸70の左端部に取り付けられている左側の腕部72についても、右側の構成と同様に左側のエアーシリンダ78、偏心カム86、カムモータ90などの構成を有し、ニップロール62の左側の回転軸70を上下動させることができる。
【0029】
傾斜装置66により、ニップロール62の回転軸70は、左右独立して上下動させて傾斜させることができ、フィードロール64に対するニップ量を左端部と右端部で異なった値で制御することができ、このニップ量の制御によりウエブWに発生するシワを防止することができる。この制御方法については、後から説明する。
【0030】
(4)蛇行修正装置10とニップ装置60の電気的構成
次に、蛇行修正装置10とニップ装置60の電気的構成について
図6のブロック図を参照して説明する。
【0031】
図6に示すように、コンピュータよりなる制御部50には、蛇行修正装置10の台駆動部36、移動センサ44、蛇行センサ46が接続されている。また、ウエブWを走行させる搬送モータ48が接続されている。この搬送モータ48は、例えば最後の行程である巻取り装置の巻取りロールを回転させるモータである。これによって、一定のテンションでウエブWを走行させることができる。そして、制御部50には、ニップ装置60のフィードロール64を回転させるロールモータ96、左側のカムモータ90、右側のカムモータ90が接続されている。さらに、左側のエアーシリンダ78と右側のエアーシリンダ78も接続され、その押圧力を調整することができる。
【0032】
(5)蛇行修正装置10の動作状態
次に、蛇行修正装置10の動作状態について
図1~
図3を参照して説明する。ここで「蛇行」とは、搬送路の中心線SとウエブWの左右方向の中心が変位して横ずれすることを言い、「蛇行量」とはその変位量を意味する。そして、この蛇行が発生することにより、ウエブWの一側部が緊張し、他側部が弛んだ状態となる。蛇行センサ46は、ウエブWの両耳部の位置を検出して、そこから横ずれの量を求め、これを蛇行量とする。
【0033】
ウエブWが蛇行しておらず真っ直ぐに正常に搬送されていると、前後方向の搬送路の中心線SとウエブWの中心が一致している。この場合には、第1修正ロール16、第2修正ロール18、第1中間ロール52の回転軸は、搬送路の中心線Sに対して直角になるように並んで配置されている。この状態で蛇行センサ46が、ウエブWの両耳部の位置を検出すると、左右同じ値のため、横ずれがなく蛇行も発生していないと、制御部50は認識できる。
【0034】
しかし、
図2に示すようにウエブWが実際に蛇行すると、蛇行センサ46が、ウエブWの両耳部の位置を検出した場合に、蛇行による横ずれのために左右異なる値となり、制御部50は、蛇行方向と横ずれ量を求めることができる。そこで、蛇行修正装置10が蛇行を修正する。
【0035】
このウエブWの蛇行の修正の制御方法について説明する。
図2に示すように、制御部50は、蛇行センサ46でウエブWの蛇行量を検出し、
図3に示すように、蛇行している方向と横ずれ量に基づいて、台駆動部36を移動させ、第1修正ロール16と第2修正ロール18の平行を維持しつつステアリングさせ、
図2に示すように第1修正ロール16と第2修正ロール18の回転軸を搬送路の中心線Sの法線方向とはθ°傾けて、ウエブWの蛇行を修正する。制御部50は、例えば、ウエブWが右側(蛇行方向が右側)に50mm横ずれしている場合には、台駆動部36のシャフト38を移動させて、第1修正ロール16と第2修正ロール18の左側を右側よりも前方に移動させる。これによって蛇行が修正される。
【0036】
制御部50は、
図3に示すように、蛇行が修正できれば、台駆動部36のシャフト38の位置を元の位置に復帰させ、第1修正ロール16と第2修正ロール18が搬送路の中心線Sと直角になるようにする。
【0037】
以後、制御部50は、ウエブWの蛇行が修正されるように、第1修正ロール16と第2修正ロール18を傾斜させてフィードバック制御する。なお、ウエブWの左右の蛇行方向が逆の場合には、上記動きとは左右逆に制御する。
【0038】
(6)シワ発生防止のための理論
上記したように、蛇行修正装置10の第1修正ロール16と第2修正ロール18の傾斜角θ°によってウエブWの幅方向の引張応力に差が生じ、これによってシワが発生する可能性がある。そのため、傾斜装置66によって、シワが発生しないようにニップロール62の回転軸70の傾きを手動で操作して、蛇行修正装置10によってウエブWの蛇行が修正された後に発生するウエブWの幅方向の引張応力の差に基づくシワの発生をできる。
【0039】
しかし、本実施形態では、自動的にニップロール62の回転軸70の傾きを調整する。すなわち、制御部50と傾斜装置66は、ニップロール62が、フィードロール64で搬送されているウエブWを予め設定されたニップ量(以下、「初期ニップ量」という)Δz(但し、Δz>0である)でニップしている初期状態からシワの発生を防止する制御を自動的に行う。なお、初期状態では、フィードロール64の駆動回転軸68とニップロール62の回転軸70とは、水平であり、平行であり、幅方向のどの位置においても、ニップ量は、初期ニップ量Δzである。
【0040】
そして、シワの発生を防止するために、
図8(a)に示すように、傾斜装置66でニップロール62の回転軸70をニップロール62の回転軸70に対し傾けて、ニップロール62の右端部を上昇させ、左端部を下降させ、ウエブWのa端の初期ニップ量ΔzをΔz+dzに調整し、b端における初期ニップ量ΔzをΔz-dzに調整する制御方法を実施する。なお、dzと-dzを、「調整ニップ量」という(但し、dz=>0である)。
【0041】
まず、そのニップ装置60の制御方法の前提となるシワ発生防止のための理論について、本発明者が発明したので
図7~
図11を参照して説明する。後からその理論に基づいて、ニップ装置60の制御方法について説明する。
【0042】
また、第1修正ロール16と第2修正ロール18とは同じ傾斜角θ°であるため、以下の説明では単に第2修正ロール18の傾斜角θ°を用いて説明する。
【0043】
(6-1)第2修正ロール18と第1中間ロール52の間の剪断応力τy
まず、第2修正ロール18と第1中間ロール52の間の剪断応力τyについて
図7(a)と
図7(b)を参照して求める。
【0044】
第2修正ロール18と第1中間ロール52が平行である場合、ウエブWの引張応力σT は、
σT =T0/(w*t) ・・・(1)式
となる。但し、T0はウエブWの張力(N)、wはウエブWの幅(m)、tはウエブWの厚み(m)である。すなわち、このウエブWの引張応力σT は、ウエブWにかかる張力のみから発生する。また、言い方を変えると引張応力σT は、x方向の応力である。
【0045】
図7(a)に示すように、第2修正ロール18の傾斜角θ°によって、第2修正ロール18と第1中間ロール52が平行でない場合、ウエブWの右端部(以下、「a端」という)と、左端部(以下、「b端」という)の引張応力は均一でなくなる。そして、a端は圧縮作用、b端は引張作用になる。
Δσa=Eweb *w/2*tanθ/L0 ・・・(2)式
Δσb=-Eweb *w/2*tanθ/L0 ・・・(3)式
となる。但し、L0は第2修正ロール18と第1中間ロール52が平行である場合のロール間のライン長、Eweb はウエブWのヤング率である。
【0046】
図7(b)に示すように、第2修正ロール18の傾きによって、第2修正ロール18と第1中間ロール52の間のウエブW上の引張応力の分布は均一ではない。
【0047】
a端のx方向上のひずみは、
εax=(σT +Δσa)/Eweb
b端のx方向上のひずみは、
εbx=(σT +Δσb)/Eweb ・・・(4)式
a端のy方向のひずみは、
εay=νweb *εax
b端のy方向のひずみは、
εby=νweb *εbx ・・・(5)式
となる。但し、νweb はウエブWのポアソン比である。
【0048】
ウエブWのヤング率の異方性がなければ、a端のy方向の応力は、
σay=Eweb *εay=νweb *(σT +Δσa) ・・・(6)式
b端のy方向の応力は、
σby=Eweb *εby=νweb *(σT +Δσb) ・・・(7)式
となる。y方向上の剪断応力τyは、
τy=σay-σby=νweb *(Δσa-Δσb) ・・・(8)式
となる。そして、(8)式に(2)式と(3)式を代入すると、
τy=νweb *{Eweb *w/2*tanθ/L0+Eweb *w/2*tanθ/L0}=νweb *Eweb *w*tanθ/L0 ・・・(8’)式
となる。もし、第2修正ロール18の傾斜角θ°が小さければ、tanθ≒θとなる。そうすると(8’)式は、
τy=νweb *Eweb *w*θ/L0 ・・・(9)式
となる。係数k1について、
k1≡νweb *Eweb *w/L0 ・・・(9’)式
と定義すると、(9)式は、
τy=k1*θ ・・・(10)式
となる。(10)式からわかるように、第2修正ロール18と第1中間ロール52の間のウエブWの剪断応力τyは第2修正ロール18の傾斜角θ°と比例する。ウエブハンドリング理論(「ウエブハンドリングの基礎理論と応用」橋本巨著 加工技術研究会(2008/4/1)参照)により、ウエブWの剪断応力τyはウエブWの臨界剪断応力τcrより大きければ、シワを形成する。そのため、
τy>τcr ・・・(11)式
となり、この(11)式が、シワ発生の条件となる。逆に、
τy<=τcr ・・・(11’)式
であれば、シワは発生しない。
【0049】
なお、ウエブWの臨界剪断応力τcrは、ウエブWの張力、ウエブWの幅、ウエブWの厚みなどから予め算出した定数であり、その算出方法については後から説明する。
【0050】
(6-2)ニップロール62の調整ニップ量dz
次に、シワを防止するためにニップロール62の調整ニップ量dzを求める理論について
図8(a)、
図8(b)、
図9、
図10(a)、
図10(b)を参照して説明する。なお、
図9はニップの初期状態である。
図8(a)に示すように、傾斜装置66でゴム製のニップロール62の回転軸70を傾けると、ウエブWのa端が、
図10(a)に示すように金属製(例えば、鉄製)のフィードロール64に初期ニップ量Δzからさらにdz押し込まれ、b端は、
図10(b)に示すようにフィードロール64から初期ニップ量Δzからdz下がることになる。すなわち、-dz押し込まれる。
【0051】
円筒接触の理論式から、
図9に示す円筒間の接触半幅γは以下のように求められる。
γ=√(4/π*q*R
* /E
* ) ・・・(12)式
R
* =R1*R2/(R1+R2) ・・・(13)式
E
* =1/{(1-ν1
2 )/E1+(1-ν2
2 )/E2}・・・(14)式
となる。但し、qはゴム製のニップロール62と鉄製のフィードロール64の間の線圧力、E1は鉄製のフィードロール64のヤング率、E2はニップロール62のヤング率、ν1はフィードロール64のポアソン比、ν2はニップロール62のポアソン比、R1はフィードロール64の半径、R2はニップロール62の半径である。
【0052】
フィードロール64は金属製であり、ゴム製のニップロール62と比べれば非常に硬いので、表面形状の変化はほぼニップロール62の表面のみと仮定することができる。フィードロール64に対し、以下の幾何関係がある。
γ*γ=Δz*(2R1-Δz) ・・・(15)式
ニップロール62の初期ニップ量Δzはフィードロール64の半径R1より大分小さいので、(15)式は(16)式のように、
γ2 ≒Δz*2R1 ・・・(16)式
となる。
【0053】
図8(a)に示すように、ニップロール62の回転軸をy軸に対し傾け、左右の位置を上げ下げの調整をする場合、a端の調整ニップ量をdz、b端の調整ニップ量を-dzとする。
【0054】
図10(a)に示すようにa端の接触半幅γaは、
γa
2 =2R1*(Δz+dz)
図10(b)に示すようにb端の接触半幅γbは、
γb
2=2R1*(Δz-dz)
a端の線圧qaは、
qa=π*γa
2 *E
* /(4*R
* ) ・・・(17)式
b端の線圧qbは、
qb=π*γb
2 *E
* /(4*R
* ) ・・・(18)式
図8(b)に示すように、ニップによる摩擦力によって、a端とb端のウエブWの間に引張応力差Δσ’が生じる。
σ1a=μnip *qa/t
σ1b=μnip *qb/t ・・・(19)式
となる。但し、μnip はウエブWとニップロール62の間の摩擦係数である。
【0055】
ニップロール62と第2修正ロール18の間に、第1中間ロール52と第2中間ロール54の2つのガイドロールがある。ニップロール62による第2修正ロール18へのウエブWのa端とb端の引張応力σcpcaとσcpcbは、
σcpca=σ1a*exp (-μ0*β)
σcpcb=σ1b*exp (-μ0*β) ・・・(20)式
となる。但し、μ0はウエブWと第1中間ロール52と間の摩擦係数、βは第1中間ロール52の抱き角β1と第2中間ロール54の抱き角β2の総計抱き角(β1+β2)である。
【0056】
そして、(13)式、(14)式、(16)式~(20)式とウエブWの張力の連続性により、
σcpca=σT +0.5*k2*dz
σcpcb=σT -0.5*k2*dz ・・・(21)式
となる。但し、係数k2は、
k2≡{μnip *πR1*E* *exp (-μ0*β)}/(R* *t) ・・・(21’)式
と定義する。
【0057】
ニップによるウエブWの張力を合成した後の第2修正ロール18と第1中間ロール52の間のウエブWの引張応力分布は、
図11に示すように、
σ’a=σT +Δσa-0.5*k2*dz
σ’b=σT +Δσb+0.5*k2*dz ・・・(22)式
となる。ニップの調整後のウエブWのy方向の剪断応力τ’yは、
τ’y=τy-νweb *k2*dz ・・・(23)式
となる。そして、(10)式を(23)式に代入して、
τ’y=τy-νweb *k2*dz
=k1*θ-νweb *k2*dz ・・・(24)式
となる。また、(11)式と(11’)式のシワ発生条件をもう一度記載すると、
τcr<τy ・・・(11)式 シワが発生する
τy<=τcr ・・・(11’)式 シワが発生しない
である。また、ウエブWの臨界剪断応力τcrは、後から説明する(h)式より、
τcr=√(σycr
2 -σycr*σT )
である。したがって、
Δτ=τy-τcr ・・・(25)式
を算出し、Δτ<=0のときは、ニップを調整せず、Δτ>0のときは、シワが発生しないようにするため、ニップを調整して、Δτ>0からΔτ=0となるようにする。仮にニップの調整後の剪断応力をτ’yとすると、ニップの調整後において、(11’)式と(24)式から、
Δτ=τ’y-τcr
=k1*θ-νweb *k2*dz-τcr
=0 ・・・(26)式
の条件を満たせばシワが発生しない。(26)式を書き換えると、
dz=(k1*θ-τcr)/(νweb *k2) ・・・(27)式
となる。この(27)式において、k1、τcr、νweb 、k2は、予め得られる情報(パラメータ)から算出される値なので、後は蛇行修正装置10から傾斜角θ°を取得すると調整ニップ量dxを算出できる。
【0058】
そして、このように予め得られる情報と傾斜角θ°から算出した調整ニップ量dzに基づいて傾斜装置66でニップロール62のニップ量を調整して、ウエブWにおけるシワの発生を防止できる。
【0059】
(6-3)ウエブWの臨界剪断応力τcrの算出方法
次に、ウエブWの臨界剪断応力τcrの算出方法について説明する。
【0060】
ライン上で巻取り装置の駆動モータなどでウエブWを引っ張る力をT(N/m)とすると、
T=T0/w ・・・(a)式
となる。但し、T0はウエブWの張力(N)、wはウエブWの幅(m)、tはウエブWの厚み(m)である。第2修正ロール18と第1中間ロール52が平行である場合、ウエブWの引張応力σT は、
σT =T0/(w*t) ・・・(b)式
となる、これは上記で記載した(1)式と同じである。そして、材料定数Dxxは、
Dxx=Eweb *t3 /(12*(1-νweb 2 )) ・・・(c)式
となる。但し、Eweb はウエブWのヤング率(Pa)、νweb はウエブWのポアソン比である。
σe=π2 *Dxx/(L02 *t) ・・・(d)式
となる。但し、L0は第2修正ロール18と第1中間ロール52間のスパン長である。
ウエブWに異方性がなければ、材料の異方性係数ξ1、ξ2は、
ξ1=1、ξ2=2 ・・・(e)式
整数iを(f)式から求める。
i*(1+i)>√[(1+T*L02 /(π2 *Dxx)*w4 /(L04 *ξ1))]>i*(i-1) ・・・(f)式
幅方向での臨界応力σycrは、
σycr=w2/(i2 *L02 )*{(σe*(1+ξ1*i4 *L4 /w4)+ξ2*i2*L02/w2 )-σT } ・・・(g)式
ウエブWの臨界剪断応力τcrは、
τcr=√(σycr2 -σycr*σT ) ・・・(h)式
である。ウエブWの種類、幅、厚み、走行条件などが一定であれば、第2修正ロール18と第1中間ロール52の間のウエブWの臨界剪断応力τcrの値は定数となるので、予め算出しておく。
【0061】
(7)ニップ装置60の制御方法
次に、上記理論に基づいてウエブWのシワを防止するために、ニップ装置60におけるニップロール62の調整ニップ量dzを制御する方法について
図12のフローチャートを参照して説明する。
【0062】
ステップS1において、制御部50に蛇行修正装置10とウエブWに関する情報を入力する。具体的には、乾燥装置1の断熱室2の出口におけるウエブWの張力T0(N)、第2修正ロール18と第1中間ロール52間のライン長L0(m)、ウエブWの幅w(m)、ウエブWの厚みt(m)、ウエブWのヤング率Eweb 、ウエブWのポアソン比νweb を入力する。そしてステップS2に進む。
【0063】
ステップS2において、制御部50にニップ装置60に関する情報を入力する。具体的には、フィードロール64の半径R1、ニップロール62の半径R2、フィードロール64のヤング率E1、ニップロール62のヤング率E2、フィードロール64のポアソン比ν1、ニップロール62のポアソン比ν2、ニップ時のニップロール62の初期ニップ量Δz、ニップロール62とウエブWとの摩擦係数μnip を入力する。そしてステップS3に進む。
【0064】
ステップS3において、制御部50に第2修正ロール18とニップロール62の間における情報を入力する。具体的には、ウエブWと第1中間ロール52の間の摩擦係数μ0、ウエブWと第1中間ロール52と第2中間ロール54の総計抱き角β(=β1+β2)を入力する。そしてステップS4に進む。
【0065】
ステップS4において、制御部50は、入力した情報と(9’)式から係数k1を算出する。そしてステップS5に進む。
【0066】
ステップS5において、制御部50は、入力した情報と(h)式からウエブWの臨界剪断応力τcrを算出する。そしてステップS6に進む。
【0067】
ステップS6において、制御部50は、入力した情報と(16)式から接触半幅γを算出する。そしてステップS7に進む。
【0068】
ステップS7において、制御部50は、入力した情報と(21’)式から係数k2を算出する。そしてステップS8に進む。
【0069】
ステップS8において、第2修正ロール18の傾斜角θ°を蛇行修正装置10の移動センサ44に基づいて取得する。そしてステップS9に進む。
【0070】
ステップS9において、制御部50は、第2修正ロール18と第1中間ロール52の間のウエブWの剪断応力τyを、係数k1と傾斜角θ°と(10)式を用いて算出する。そしてステップS10に進む。
【0071】
ステップS10において、制御部50は、剪断応力τyと臨界剪断応力τcrからΔτ=τy-τcrを算出し、Δτ>0のときは、ステップS11に進む(yの場合)。Δτ<=0のときは、ニップを調整しないでステップS13に進む(nの場合)。
【0072】
ステップS11において、制御部50は、Δτ=0となるように、ニップの調整ニップ量dzを(27)式から算出する。そしてステップS12に進む。
【0073】
ステップS12において、制御部50は、
図8(a)に示すように、左右の傾斜装置66を用いてニップロール62の一方の端部(a端)をdz上昇させ、他方の端部(b端)をdz下降させ、ニップロール62の傾きを調整する。そして、ステップS13に進む。
【0074】
ステップS13において、1分経過すればステップS8に戻り(yの場合)、経過していなければこのステップを継続する(nの場合)。
【0075】
(8)効果
本実施形態によれば、蛇行修正装置10によってウエブWの蛇行が修正された後に発生するウエブWの幅方向の引張応力の差に基づくシワの発生を、ニップ装置60におけるニップロール62のフィードロール64に対する傾きを調整することにより防止することができる。
【0076】
また、ニップロール62の傾きを示すニップ量dzと-dzとは、第2修正ロール18の傾斜角θ°から自動的に求めることができる。
【変更例】
【0077】
次に、上記実施形態の変更例について説明する。
【0078】
(1)変更例1
変更例1は、ニップロール62を傾斜させる傾斜装置66の変更例であって、
図13を参照して説明する。
【0079】
上記実施形態では、偏心カム86によってニップロール62の回転軸70に連結された腕部72を上下動させたが、本変更例ではコッタ100を用いて上下動させる。
【0080】
ニップロール62の右側の回転軸70を回転自在にコッタ100の下コッタ102に取り付けられている。この下コッタ102の上面は傾斜して形成されている。この下コッタ102の上面に接するように上コッタ104が配されている。この上コッタ104の下面は、下コッタ102の上面と対応して傾斜して形成されている。
【0081】
下コッタ102は、エアーシリンダ106によって常に上方に押圧され、上コッタ104の下面と接するようになっている。
【0082】
上コッタ104の前後方向には、ネジ孔が開口し、ネジ棒108が螺合されている。このネジ棒108は、コッタ駆動部であるサーボモータ110によって回転する。
【0083】
そして、制御部50は、サーボモータ110によってネジ棒108を回転させることにより上コッタ104が前後方向にスライドし、それと共に下コッタ102が上下動して、ニップロール62の一方の回転軸70を上下動させる。このサーボモータ110の回転角の制御によって、ニップロール62の右側の回転軸70を上下動させて、調整ニップ量dzを調整する。
【0084】
左側のニップロール62の回転軸70にも同様の傾斜装置66が設けられている。
【0085】
(2)変更例2
上記実施形態では、ウエブWを下周面で抱きかかえるフィードロール64の下にニップロール62を配していたが、これに代えて、ウエブWを上周面で抱きかかえるフィードロール64の上にニップロール62を配してもよい。
【0086】
(3)変更例3
上記実施形態では、ニップ装置60は、蛇行修正装置10の次の工程に設けて、ウエブWのシワの発生を防止したが、これに代えて、ウエブWのテンションカットを行うときに用いるニップ装置に本実施形態を適用して、ウエブWのシワの発生を防止してもよい。
【0087】
(4)変更例4
上記実施形態では、第2修正ロール18の傾斜角θ°に基づいて、カムモータ90によって腕部72を自動的に上下動させてウエブWのシワの発生を防止したが、これに代えて、第2修正ロール18の傾斜角θ°に基づいて、ニップ装置60の管理者が、カムモータ90を駆動させて制御し、ニップロール62を手動で上下動させて傾斜させ、ウエブWのシワの発生を防止してもよい。
【0088】
また、変更例1において、管理者が、第2修正ロール18の傾斜角θ°に基づいて、コッタ100を用いて手動でニップロール62を上下動させて傾斜させ、ウエブWのシワの発生を防止してもよい。
【0089】
(5)変更例5
上記実施形態では、ウエブWのa端のニップ量がdz、b端のニップ量が-dzで、dz=|-dz|であったが、a端のニップ量がdza、b端のニップ量が-dzbで、dzaと|-dzb|が必ずしも同じ値にならなくてよい。
【0090】
(6)変更例6
上記実施形態では、
図8(a)と
図10(b)に示すように、Δz>dzであったが、Δz<=dzの場合もあり、この場合には、ウエブWのb端において、ニップロール62がフィードロール64のニップを行わず単に接触しているだけか、又は、
図14に示すようにニップロール62がフィードロール64と離れることになる。
【0091】
(7)変更例7
上記実施形態では、第1中間ロール52と第2中間ロール54の2本のガイドロールを用いたが、ガイドロールは1本、又は、3本以上でもよい。ガイドロールは1本のときの総計抱き角βは、そのロールの抱き角、3本以上のときの総計抱き角βは、3本の合計した抱き角で上記計算を行う。
【0092】
(8)その他
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0093】
1・・・乾燥装置、10・・・蛇行修正装置、16・・・第1修正ロール、18・・・第2修正ロール、52・・・第1中間ロール、54・・・第2中間ロール、60・・・ニップ装置、62・・・ニップロール、64・・・フィードロール、66・・・傾斜装置、86・・・偏心カム、100・・・コッタ