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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114299
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】アロイ樹脂
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/06 20060101AFI20240816BHJP
   C08L 33/10 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
C08L27/06
C08L33/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019974
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】桜井 宏之
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BD04W
4J002BD04X
4J002BD05W
4J002BD05X
4J002BD08W
4J002BD08X
4J002BD09W
4J002BD09X
4J002BG06Y
(57)【要約】
【課題】本発明は、流動性が高く、射出成形性が良好なアロイ樹脂を提供することを目的とする。
【解決手段】平均重合度が600以上1000以下である第一の塩化ビニル系樹脂(A)と、平均重合度が300以上600未満である第二の塩化ビニル系樹脂(B)と、メチルメタクリレート系樹脂(C)と、を含み、前記メチルメタクリレート系樹脂(C)の、JIS K7210-1に従って、温度230℃、荷重37.3Nの条件で測定されるメルトフローレートが2.0g/10分以上15.0g/10分以下である、アロイ樹脂。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均重合度が600以上1000以下である第一の塩化ビニル系樹脂(A)と、
平均重合度が300以上600未満である第二の塩化ビニル系樹脂(B)と、
メチルメタクリレート系樹脂(C)と、を含み、
前記メチルメタクリレート系樹脂(C)の、JIS K7210-1に従って、温度230℃、荷重37.3Nの条件で測定されるメルトフローレートが2.0g/10分以上15.0g/10分以下である、アロイ樹脂。
【請求項2】
前記メチルメタクリレート系樹脂(C)の重量平均分子量が10,000以上200,000以下であり、前記メチルメタクリレート系樹脂(C)の数平均分子量が5,000以上100,000以下である、請求項1に記載のアロイ樹脂。
【請求項3】
前記第一の塩化ビニル系樹脂(A)と、前記第二の塩化ビニル系樹脂(B)との合計100質量部に対して、
前記メチルメタクリレート系樹脂(C)の配合割合が20質量部以上65質量部以下である、請求項1又は2に記載のアロイ樹脂。
【請求項4】
前記第一の塩化ビニル系樹脂(A)100質量部に対して、前記第二の塩化ビニル系樹脂(B)の配合割合が20質量部以上70質量部以下である、請求項3に記載のアロイ樹脂。
【請求項5】
前記第一の塩化ビニル系樹脂(A)と、前記第二の塩化ビニル系樹脂(B)とを含む塩化ビニル系樹脂の、JIS K7210-1に従って、温度200℃、荷重98.1Nの条件で測定されるメルトフローレートが10.0g/10分以上30.0g/10分以下である、請求項4に記載のアロイ樹脂。
【請求項6】
JIS K7210-1に従って、温度200℃、荷重98.1Nの条件で測定されるメルトフローレートが7.0g/10分以上20.0g/10分以下である、請求項1又は2に記載のアロイ樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アロイ樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル系樹脂は、一般に難燃性及び耐薬品性に優れるため、パイプ、一般建材等の用途に広く用いられている。また、塩化ビニル系樹脂の特性を改善する目的で、メチルメタクリレート系樹脂やアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂等をアロイとして添加することも知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61-014246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
塩化ビニル系樹脂とメチルメタクリレート系樹脂とのアロイ樹脂を射出成形した成形品は、表面硬度が高く、耐傷付き性に優れ、耐候性や耐衝撃性にも優れる。
しかしながら、塩化ビニル系樹脂とメチルメタクリレート系樹脂とのアロイ樹脂は、流動性が低く、射出成形性に劣るという課題がある。
【0005】
そこで、本発明は、流動性が高く、射出成形性が良好なアロイ樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の態様を有する。
[1]平均重合度が600以上1000以下である第一の塩化ビニル系樹脂(A)と、
平均重合度が300以上600未満である第二の塩化ビニル系樹脂(B)と、
メチルメタクリレート系樹脂(C)と、を含み、
前記メチルメタクリレート系樹脂(C)の、JIS K7210-1に従って、温度230℃、荷重37.3Nの条件で測定されるメルトフローレートが2.0g/10分以上15.0g/10分以下である、アロイ樹脂。
[2]前記メチルメタクリレート系樹脂(C)の重量平均分子量が10,000以上200,000以下であり、前記メチルメタクリレート系樹脂(C)の数平均分子量が5,000以上100,000以下である、[1]に記載のアロイ樹脂。
[3]前記第一の塩化ビニル系樹脂(A)と、前記第二の塩化ビニル系樹脂(B)との合計100質量部に対して、
前記メチルメタクリレート系樹脂(C)の配合割合が20質量部以上65質量部以下である、[1]又は[2]に記載のアロイ樹脂。
[4]前記第一の塩化ビニル系樹脂(A)100質量部に対して、前記第二の塩化ビニル系樹脂(B)の配合割合が20質量部以上70質量部以下である、[1]~[3]のいずれかに記載のアロイ樹脂。
[5]前記第一の塩化ビニル系樹脂(A)と、前記第二の塩化ビニル系樹脂(B)とを含む塩化ビニル系樹脂の、JIS K7210-1に従って、温度200℃、荷重98.1Nの条件で測定されるメルトフローレートが10.0g/10分以上30.0g/10分以下である、[1]~[4]のいずれかに記載のアロイ樹脂。
[6]JIS K7210-1に従って、温度200℃、荷重98.1Nの条件で測定されるメルトフローレートが7.0g/10分以上20.0g/10分以下である、[1]~[5]のいずれかに記載のアロイ樹脂。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、流動性が高く、射出成形性が良好なアロイ樹脂を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[アロイ樹脂]
本発明のアロイ樹脂は、第一の塩化ビニル系樹脂(A)(以下、「PVC系樹脂(A)」ともいう。)と、第二の塩化ビニル系樹脂(B)(以下、「PVC系樹脂(B)」ともいう。)と、メチルメタクリレート系樹脂(C)(以下、「MMA系樹脂(C)」ともいう。)と、を含むアロイ樹脂である。
本発明のアロイ樹脂は、MMA系樹脂(C)の、JIS K7210-1に従って、温度230℃、荷重37.3Nの条件で測定されるメルトフローレートが2.0g/10分以上15.0g/10分以下である。
【0009】
アロイ樹脂の、JIS K7210-1に従って、温度200℃、荷重98.1Nの条件で測定されるメルトフローレート(MFR)は、例えば、7.0g/10分以上20.0g/10分以下が好ましく、8.0g/10分以上17.0g/10分以下がより好ましく、9.0g/10分以上14.0g/10分以下がさらに好ましい。アロイ樹脂のMFRが上記下限値以上であると、射出成形性をより高められる。アロイ樹脂のMFRが上記上限値以下であると、成形品の表面硬度をより高められる。
アロイ樹脂のMFRは、PVC系樹脂(A)の平均重合度と含有量、PVC系樹脂(B)の平均重合度と含有量、MMA系樹脂(C)の種類と含有量、添加剤の種類と含有量、及びこれらの組合せによって調節できる。
【0010】
アロイ樹脂のビカット軟化温度は、例えば、75℃以上100℃以下が好ましく、80℃以上95℃以下がより好ましい。アロイ樹脂のビカット軟化温度が上記下限値以上であると、熱安定性が良好で、成形品の変形を小さくできる。アロイ樹脂のビカット軟化温度が上記上限値以下であると、流動性が良好で、射出成形性をより高められる。
アロイ樹脂のビカット軟化温度は、PVC系樹脂(A)の平均重合度と含有量、PVC系樹脂(B)の平均重合度と含有量、MMA系樹脂(C)の種類と含有量、及びこれらの組合せによって調節できる。
アロイ樹脂のビカット軟化温度は、JIS K7206に記載のB50法に準じて測定できる。
【0011】
塩化ビニル系樹脂(以下、「PVC系樹脂」ともいう。)は、塩化ビニル由来の繰り返し単位(以下、「塩化ビニル単位」ともいう。)の割合が全繰り返し単位の合計質量に対して50質量%超の重合体である。PVC系樹脂は、塩化ビニルの単独重合体であってもよく、塩化ビニルと、塩化ビニルと共重合可能なビニル系単量体との共重合体であってもよい。
PVC系樹脂が共重合体である場合、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよく、グラフト共重合体であってもよい。
アロイ樹脂は、PVC系樹脂(A)と、PVC系樹脂(B)との2種類のPVC系樹脂を含む。
【0012】
PVC系樹脂中の塩化ビニル単位の割合は、全繰り返し単位の合計質量に対して、75質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、85質量%以上がさらに好ましく、98質量%以上が特に好ましい。PVC系樹脂中の塩化ビニル単位の割合の上限は、特に限定されず、100質量%とすることができる。
【0013】
塩化ビニルと共重合可能なビニル系単量体としては、特に限定されず、例えば、脂肪酸ビニルエステル、アクリレート、メタクリレート、シアン化ビニル、ビニルエーテル、α-オレフィン、不飽和カルボン酸又はその酸無水物、塩化ビニリデン、臭化ビニル、各種ウレタンを例示できる。
塩化ビニルと共重合可能なビニル系単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
脂肪酸ビニルエステルとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニルを例示できる。
アクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレートを例示できる。
メタクリレートとしては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレートを例示できる。
シアン化ビニルとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルを例示できる。
ビニルエーテルとしては、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニルオクチルエーテルを例示できる。
α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレンを例示できる。
不飽和カルボン酸又はその酸無水物類としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸を例示できる。
【0015】
PVC系樹脂(A)の平均重合度は、600以上1000以下であり、650以上900以下が好ましく、700以上800以下がより好ましい。PVC系樹脂(A)の平均重合度が上記下限値以上であると、成形品の機械強度をより高められる。PVC系樹脂(A)の平均重合度が上記下限値以下であると、射出成形性をより高められる。
PVC系樹脂(A)の平均重合度は、JIS K6720-2に準じて測定できる。
【0016】
PVC系樹脂(B)の平均重合度は、300以上600未満であり、350以上550以下が好ましく、400以上500以下がより好ましい。PVC系樹脂(B)の平均重合度が上記下限値以上であると、成形品の機械強度をより高められる。PVC系樹脂(B)の平均重合度が上記上限値未満であると、流動性をより高められる。
PVC系樹脂(B)の平均重合度は、PVC系樹脂(A)の平均重合度と同様の方法で測定できる。
【0017】
PVC系樹脂(A)の平均重合度と、PVC系樹脂(B)の平均重合度との差は、例えば、100以上が好ましく、200以上がより好ましく、300以上がさらに好ましい。PVC系樹脂(A)の平均重合度と、PVC系樹脂(B)の平均重合度との差が上記下限値以上であると、流動性をより高められ、射出成形性をより高められる。PVC系樹脂(A)の平均重合度と、PVC系樹脂(B)の平均重合度との差の上限値は特に限定されないが、例えば、700以下とされる。
【0018】
本発明のアロイ樹脂は、平均重合度が異なる2種類のPVC系樹脂を併用することで、射出成形性と成形品の表面硬度との両立を図れる。
PVC系樹脂(A)とPVC系樹脂(B)との配合割合は、PVC系樹脂(A)100質量部に対するPVC系樹脂(B)の質量部で規定できる。PVC系樹脂(B)の配合割合は、例えば、PVC系樹脂(A)100質量部に対して、20質量部以上70質量部以下が好ましく、25質量部以上65質量部以下がより好ましく、30質量部以上55質量部以下がさらに好ましい。PVC系樹脂(B)の配合割合が上記下限値以上であると、流動性をより高められ、射出成形性をより高められる。PVC系樹脂(B)の配合割合が上記上限値以下であると、成形品の機械強度をより高められ、成形品の耐熱性をより高められる。
【0019】
PVC系樹脂(A)とPVC系樹脂(B)とを含むPVC系樹脂(以下、「PVC系樹脂(A+B)」ともいう。)の、JIS K7210-1に従って、温度200℃、荷重98.1Nの条件で測定されるメルトフローレート(MFR)は、10.0g/10分以上30.0g/10分以下が好ましく、11.0g/10分以上25.0g/10分以下がより好ましく、12.0g/10分以上20.0g/10分以下がさらに好ましい。PVC系樹脂(A+B)のMFRが上記下限値以上であると、射出成形性をより高められる。PVC系樹脂(A+B)のMFRが上記上限値以下であると、成形品の耐熱性をより高められる。加えて、PVC系樹脂(A+B)のMFRが上記上限値以下であると、MMA系樹脂(C)との相溶性をより高められる。
【0020】
PVC系樹脂としては、硬質塩化ビニル系樹脂でもよく、軟質塩化ビニル系樹脂でもよいが、成形品の表面硬度が高く、耐傷付き性に優れる点から、硬質塩化ビニル系樹脂が好ましい。
【0021】
MMA系樹脂(C)は、メチルメタクリレート(MMA)由来の繰り返し単位(以下、「MMA単位」ともいう。)の割合が全繰り返し単位の合計質量に対して80質量%以上の重合体である。
MMA系樹脂(C)は、MMAの単独重合体であってもよく、MMAと、MMA以外の(メタ)アクリレートとの共重合体であってもよい。なお、「(メタ)アクリレート」は、メタクリレートとアクリレートの総称である。
MMA系樹脂(C)が共重合体である場合、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
アロイ樹脂に含まれるMMA系樹脂(C)は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0022】
MMA系樹脂(C)中のMMA単位の割合は、全繰り返し単位の合計質量に対して、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。MMA単位の割合が上記下限値以上であると、成形品の表面硬度をより高められる。
【0023】
MMA以外の(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレートを例示できる。
MMA系樹脂(C)に用いるMMA以外の(メタ)アクリレートは、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0024】
MMA系樹脂(C)の重量平均分子量は、10,000以上が好ましく、20,000以上がより好ましい。MMA系樹脂(C)の重量平均分子量が上記下限値以上であると、成形品の表面硬度をより高められる。MMA系樹脂(C)の重量平均分子量は、200,000以下が好ましく、100,000以下がより好ましい。MMA系樹脂(C)の重量平均分子量が上記上限値以下であると、成形品の機械強度をより高められる。
MMA系樹脂(C)の重量平均分子量の下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば、10,000以上200,000以下が好ましい。
【0025】
MMA系樹脂(C)の数平均分子量は、5,000以上が好ましく、10,000以上がより好ましい。MMA系樹脂(C)の数平均分子量が上記上限値以下であると、成形品の表面硬度をより高められる。MMA系樹脂(C)の数平均分子量は、100,000以下が好ましく、60,000以下がより好ましい。MMA系樹脂(C)の数平均分子量が上記上限値以下であると、成形品の機械強度をより高められる。
MMA系樹脂(C)の数平均分子量の下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば、5,000以上100,000以下が好ましい。
なお、上記重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を用いて測定されるポリスチレン換算の平均分子量である。
【0026】
JIS K7210-1に従って、温度230℃、荷重37.3Nの条件で測定されるMMA系樹脂(C)のメルトフローレート(MFR)は、2.0g/10分以上が好ましく、5.0g/10分以上がより好ましい。MMA系樹脂(C)のMFRが上記下限値以上であると、射出成形性をより高められる。MMA系樹脂(C)のMFRは、20.0g/10分以下が好ましく、15.0g/10分以下がより好ましい。MMA系樹脂(C)のMFRが上記上限値以下であると、成形品の耐熱性をより高められる。
MMA系樹脂(C)のMFRの下限と上限は任意に組み合わせることができ、例えば、2.0g/10分以上20.0g/10分以下がより好ましい。
【0027】
MMA系樹脂(C)のビカット軟化温度は、例えば、80℃以上110℃以下が好ましく、90℃以上100℃以下がより好ましい。MMA系樹脂(C)のビカット軟化温度が上記下限値以上であると、熱安定性が良好で、成形品の変形を小さくできる。MMA系樹脂(C)のビカット軟化温度が上記上限値以下であると、流動性が良好で、射出成形性をより高められる。
MMA系樹脂(C)のビカット軟化温度は、MMA系樹脂(C)の重量平均分子量、MMA系樹脂(C)の数平均分子量、及びこれらの組合せによって調節できる。
MMA系樹脂(C)のビカット軟化温度は、JIS K7206に記載のB50法に準じて測定できる。
【0028】
アロイ樹脂中のMMA系樹脂(C)の配合割合は、PVC系樹脂(A)と、PVC系樹脂(B)との合計100質量部に対するMMA系樹脂(C)の質量部で規定できる。MMA系樹脂(C)の配合割合は、例えば、PVC系樹脂(A)と、PVC系樹脂(B)との合計100質量部に対して、20質量部以上65質量部以下が好ましく、30質量部以上60質量部以下がより好ましく、35質量部以上55質量部以下がさらに好ましい。MMA系樹脂(C)の配合割合が上記下限値以上であると、成形品の表面硬度をより高められる。MMA系樹脂(C)の配合割合が上記上限値以下であると、射出成形性をより高められる。
【0029】
本発明のアロイ樹脂は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、必要に応じて熱安定剤、光安定剤、滑剤、酸化防止剤、改質剤、紫外線吸収剤、可塑剤、防汚剤、衝撃改質剤、着色剤、充填剤等の添加剤を添加することができる。
アロイ樹脂が添加剤を含む場合、添加剤は1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0030】
アロイ樹脂中のPVC系樹脂(A)と、PVC系樹脂(B)と、MMA系樹脂(C)との合計割合は、アロイ樹脂の総質量に対して、例えば、80質量%以上が好ましく、85質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。前記合計割合が上記下限値以上であると、射出成形性及び成形品の表面硬度をより高められる。前記合計割合の上限は特に限定されず、100質量%とすることができる。
本発明のアロイ樹脂の形態は、特に限定されず、例えば、ペレット状を例示できる。
【0031】
(製造方法)
本発明のアロイ樹脂の製造方法は、特に限定されない。例えば、PVC系樹脂(A)と、PVC系樹脂(B)と、MMA系樹脂(C)と、必要に応じて用いる成分を公知の方法で混練することにより、アロイ樹脂を製造できる。
アロイ樹脂の各成分の混練方法としては、例えば、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、コニーダー押出機、射出成形機等を単独、又は複数組み合わせて混練する方法を例示できる。
【0032】
以上説明した本発明のアロイ樹脂は、平均重合度が異なる2種類のPVC系樹脂を併用し、MMA系樹脂が配合されている。そのため、本発明のアロイ樹脂は、従来のPVC系樹脂及びMMA系樹脂のアロイ樹脂に比べて、流動性が高く、射出成形性が良好である。
また、MMA系樹脂の重量平均分子量及び数平均分子量を特定の範囲とすることにより、成形品の表面硬度をより高められる。
【0033】
(成形品)
本実施形態の成形品は、本実施形態のアロイ樹脂が成形されたものである。
本実施形態の成形品は、本実施形態のアロイ樹脂を用いること以外は、公知の態様を採用できる。
本実施形態の成形品の用途は特に限定されず、例えば、自動車や家電等の樹脂部品を例示できる。
【0034】
成形品のシャルピー衝撃強度は、例えば、10kJ/m以上が好ましく、20kJ/m以上がより好ましく、30kJ/m以上がさらに好ましい。成形品のシャルピー衝撃強度が上記下限値以上であると、成形品が破損しにくく、衝撃強度に優れる。成形品のシャルピー衝撃強度の上限値は特に限定されないが、例えば、60kJ/m以下とされる。
成形品のシャルピー衝撃強度は、JIS K7111-1に準じて測定できる。
【0035】
成形品の表面硬度は、鉛筆硬度で規定できる。
成形品の鉛筆硬度は、例えば、F以上が好ましく、H以上がより好ましく、2H以上がさらに好ましい。成形品の鉛筆硬度が上記下限値以上であると、成形品の表面硬度に優れ、耐傷付き性が良好である。成形品の鉛筆硬度の上限は特に限定されないが、例えば、9Hとされる。
成形品の鉛筆硬度は、JIS K5600-5-4に記載の引っかき硬度(鉛筆法)に準じて測定できる。
【0036】
本実施形態の成形品の製造方法は、特に限定されない。
例えば、公知の射出成形、公知の射出圧縮成形によって製造できる。
【0037】
なお、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【実施例0038】
以下に、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0039】
(PVC系樹脂(A))
樹脂A-1:第一の塩化ビニル系樹脂(塩化ビニル単位の割合:87質量%、平均重合度:700)。
【0040】
(PVC系樹脂(B))
樹脂B-1:第二の塩化ビニル系樹脂(塩化ビニル単位の割合:88質量%、平均重合度:400)。
【0041】
(PVC系樹脂組成物)
樹脂A-1をベース樹脂とし、ベース樹脂100質量部に対し、樹脂B-1を50質量部、安定剤3.5質量部、酸化防止剤0.5質量部、滑剤0.3質量部、改質剤1質量部、及び紫外線吸収剤0.3質量部を配合した樹脂組成物。
【0042】
(MMA系樹脂(C))
樹脂C-1:メチルメタクリレート系樹脂、商品名「アクリペット VH-001」、三菱ケミカル株式会社製、MMA単位の割合:90質量%、重量平均分子量:92,000、数平均分子量:55,000、ビカット軟化温度:107℃、MFR(JIS K 7210-1、温度230℃、荷重37.3N):2.0g/10分。
樹脂C-2:メチルメタクリレート系樹脂、商品名「アクリペット MD-001」、三菱ケミカル株式会社製、MMA単位の割合:90質量%、重量平均分子量:97,000、数平均分子量:57,000、ビカット軟化温度:94℃、MFR(JIS K 7210-1、温度230℃、荷重37.3N):6.0g/10分。
【0043】
[実施例1]
100質量部の樹脂A-1と50質量部の樹脂B-1とを含むPVC系樹脂組成物と、MMA系樹脂(C)として66質量部の樹脂C-1とを樹脂温度220℃で混練してアロイ樹脂とし、射出成形によって厚さ3mm、幅70mm、長さ200mmの板状の成形品を作製した。
【0044】
[実施例2]
樹脂A-1をベース樹脂とし、ベース樹脂100質量部に対し、樹脂B-1を50質量部、安定剤5.5質量部、酸化防止剤0.5質量部、滑剤0.3質量部、改質剤1質量部、及び紫外線吸収剤0.3質量部を配合したPVC系樹脂組成物を用意した。このPVC系樹脂組成物と、MMA系樹脂(C)として66質量部の樹脂C-2とを混練した以外は、実施例1と同様にして成形品を作製した。
【0045】
[実施例3]
PVC系樹脂組成物に配合する樹脂B-1を30質量部とし、このPVC系樹脂組成物と、MMA系樹脂(C)として58質量部の樹脂C-2とを混練した以外は、実施例2と同様にして成形品を作製した。
【0046】
[比較例1]
樹脂A-1をベース樹脂とし、ベース樹脂100質量部に対し、安定剤3.5質量部、酸化防止剤0.5質量部、滑剤0.3質量部、改質剤1質量部、及び紫外線吸収剤0.3質量部を配合したPVC系樹脂組成物を用意した。このPVC系樹脂組成物と、MMA系樹脂(C)として45質量部の樹脂C-1とを混練した以外は、実施例1と同様にして成形品を作製した。
【0047】
[比較例2]
PVC系樹脂組成物と混練するMMA系樹脂(C)を樹脂C-2に代えた以外は、比較例1と同様にして成形品を作製した。
【0048】
[比較例3]
PVC系樹脂組成物に、さらにポリエチレン系の改質剤0.5質量部を配合した以外は、比較例1と同様にして成形品を作製した。
【0049】
[比較例4]
PVC系樹脂組成物に、さらにポリエチレン系の改質剤0.5質量部を配合した以外は、比較例2と同様にして成形品を作製した。
【0050】
[比較例5]
PVC系樹脂組成物に、さらにポリエチレン系の改質剤1.0質量部を配合した以外は、比較例1と同様にして成形品を作製した。
【0051】
[比較例6]
PVC系樹脂組成物に、さらにポリプロピレン系の改質剤0.5質量部を配合した以外は、比較例1と同様にして成形品を作製した。
【0052】
[比較例7]
PVC系樹脂組成物に、さらにポリプロピレン系の改質剤0.5質量部を配合した以外は、比較例2と同様にして成形品を作製した。
【0053】
[比較例8]
PVC系樹脂組成物に、さらに滑剤0.8質量部を配合した以外は、比較例1と同様にして成形品を作製した。
【0054】
[MFRの測定]
各例のPVC系樹脂組成物について、JIS K7210-1に従って、温度200℃、荷重98.1Nの条件でMFRを測定した。
また、MMA系樹脂(C)(樹脂C-1又は樹脂C-2)について、JIS K7210-1に従って、温度230℃、荷重37.3Nの条件でMFRを測定した。
【0055】
各例のPVC系樹脂組成物にMMA系樹脂(C)を配合したアロイ樹脂について、JIS K7210-1に従って、温度230℃、荷重37.3Nの条件でMFRを測定した。
【0056】
[ビカット軟化温度]
各例のアロイ樹脂について、JIS K7206に記載のB50法に準拠して、ビカット軟化温度を測定した。
【0057】
[シャルピー衝撃強度]
各例の成形品について、JIS K7111-1に従ってシャルピー衝撃強度(kJ/m)を測定した。
【0058】
[外観]
各例の成形品について、外観を目視で観察し、下記評価基準に基づいて評価した。
《評価基準》
○:乳白色透明で、良好な外観である。
△:黄色く変色している箇所がある。
×:褐色に変色している箇所(ヤケ)がある。
【0059】
[静的熱安定性]
各例の成形品を設定温度190℃のオーブンに入れ、30分間加熱した。オーブンから取り出した後の成形品の外観を目視で観察し、下記評価基準に基づいて静的熱安定性を評価した。
○:乳白色透明で、良好な外観である。
△:黄色く変色している箇所がある。
×:褐色に変色している箇所(ヤケ)がある。
【0060】
[温水白化]
各例の成形品を60℃の温水に30分間浸漬し、温水から取り出した後の成形品の外観を目視で観察し、下記評価基準に基づいて温水白化(耐温水性)を評価した。
○:白化は確認されず、良好な外観である。
△:若干白化している箇所がある。
×:明確に白化している箇所がある。
【0061】
[鉛筆硬度]
各例の成形品について、JIS K5600-5-4に記載の引っかき硬度(鉛筆法)に準拠して、鉛筆硬度を測定した。
【0062】
各例のアロイ樹脂の樹脂配合量と試験結果を表1に示す。表中、樹脂配合量の「-」は、その樹脂を配合していないことを示す。評価結果の「-」は、その試験を行わなかったことを示す。
【0063】
【表1】
【0064】
表1に示すように、本発明を適用した実施例1~3のアロイ樹脂は、MFRが9.0g/10分以上であり、流動性が高く、射出成形性が良好であることが分かった。
これに対し、PVC系樹脂(B)を含有しない比較例1~8のアロイ樹脂は、MFRが6.04g/10分以下であり、流動性が低かった。