(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114309
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】画像処理装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/401 20060101AFI20240816BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240816BHJP
B41J 2/205 20060101ALI20240816BHJP
B41J 2/525 20060101ALI20240816BHJP
H04N 1/405 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
H04N1/401
B41J2/01 201
B41J2/205
B41J2/01 451
B41J2/525
H04N1/405 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019988
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平本 健一郎
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
2C262
5C077
【Fターム(参考)】
2C056EB13
2C056EB27
2C056EB47
2C056EC76
2C056EC79
2C056ED01
2C056FA04
2C056FA13
2C056FA14
2C057AG12
2C057AG44
2C057AL36
2C057AN05
2C057AN06
2C057BA03
2C057BA14
2C057CA01
2C262AA02
2C262AB05
2C262BB03
2C262BB08
2C262BC01
2C262BC07
2C262FA13
2C262GA02
5C077LL19
5C077MM27
5C077MP08
5C077NN11
5C077PP02
5C077PP15
5C077PP33
5C077RR02
5C077TT05
(57)【要約】
【課題】本開示は、印刷条件ごとの階調補正テーブルを作成するにあたっての、作業時間の短縮およびユーザ負担の軽減を一つの目的とする。
【解決手段】
画像処理装置は、印刷条件に対応する前記階調補正テーブルを参照して階調補正する。画像処理装置は、記憶装置に記憶されている第1印刷条件に対応する第1階調補正テーブルを参照して、第2印刷条件に対応する第2階調補正テーブルを作成する。画像処理装置は、階調値と、当該階調値を階調補正して形成される画像に使用される色材量を示す付与量との対応関係について、第1印刷条件に従った対応関係である第1対応関係を第1階調補正テーブルを参照して作成する。画像処理装置は、第1階調補正テーブルから第1印刷条件に従った対応関係である第2対応関係を推定し、推定した第2対応関係を用いて第2階調補正テーブルを作成する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像に対して階調補正を行う画像処理装置であって、
階調値と補正階調値とを対応付けた階調補正テーブルを印刷条件ごとに記憶する記憶装置と、
指定された印刷条件に対応する前記階調補正テーブルを参照して入力画像を階調補正する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記記憶装置に記憶されている第1印刷条件に対応する第1階調補正テーブルを参照して、第2印刷条件に対応する第2階調補正テーブルを作成する階調補正テーブル作成部を含み、
前記階調補正テーブル作成部は、
前記第1印刷条件に従って階調補正を行って形成される画像に使用される色材量である第1付与量と、階調補正前の階調値との対応関係を示す第1対応関係を、前記第1階調補正テーブルを用いて作成する第1作成部と、
前記第2印刷条件に従って階調補正を行って形成される画像に使用される色材量である第2付与量と、階調補正前の階調値との対応関係を示す第2対応関係を、前記第1対応関係を用いて推定する第2作成部と、
前記第2対応関係を用いて前記第2階調補正テーブルを作成する第2階調補正テーブル作成部とを含む、画像処理装置。
【請求項2】
前記第1対応関係および前記第2対応関係において、階調補正前の階調値を入力値、前記第1付与量および前記第2付与量を出力値とした場合に、
前記第2作成部は、
前記第2対応関係における入力範囲である第2入力範囲に対応する出力範囲である第2出力範囲を求め、
前記第2出力範囲に対応する、前記第1対応関係における入力範囲である第1入力範囲を特定し、
特定した前記第1入力範囲を前記第2入力範囲に変換することで、前記第1対応関係を用いて前記第2対応関係を推定する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第2入力範囲は、0から最大の階調値までである、請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記第2入力範囲の最大値は、前記第1入力範囲の最大値よりも大きい、請求項2または3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記第2階調補正テーブル作成部は、前記第2付与量の画像を階調補正することなく形成する場合の階調値を、前記第2対応関係における当該第2付与量に対応する階調値の補正階調値として、前記第2階調補正テーブルを作成する、請求項1~3のうちいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記印刷条件は、印刷解像度に関する条件である、請求項1~3のうちいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記第1印刷条件として、第1解像度で画像を形成することが設定されており、
前記第2印刷条件として、前記第1解像度よりも低い第2解像度で画像を形成することが設定されている、請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記第2作成部は、前記第1付与量と階調値との関係を連続的な関係に平滑化して、前記第1対応関係を用いて前記第2対応関係を推定する、請求項1~3のうちいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記第1対応関係における最大の階調値に対応する付与量は、前記第2対応関係における最大の階調値に対応する付与量よりも多い、請求項1~3のうちいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記制御装置は、印刷条件に従って階調値を量子化することで単位面積当たりのドットの出現頻度を算出し、算出したドットの出現頻度と当該ドットの大きさとに基づいて、当該階調値の画像に使用される色材量である付与量を算出する付与量算出部をさらに含む、請求項1~3のうちいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記付与量算出部は、ドット分散型のハーフトーンを用いて階調値を量子化する、請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記第2印刷条件に従って画像を形成する場合に一のドットを印字するときに使用する最大液滴量は、前記第1印刷条件に従って画像を形成する場合に一のドットを印字するときに使用する最大液滴量よりも多い、請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記第2印刷条件に従って画像を形成する場合に設定可能なドットの種類は、前記第1印刷条件に従って画像を形成する場合に設定可能なドットの種類よりも多い、請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項14】
前記入力画像は、複数の色材を混色することによるカラー画像であって、
前記画像処理装置は、前記複数の色材の各階調値の合計量を制限するように当該複数の色材の各々に対応する階調値を求め、求めた階調値を階調補正テーブルに従って補正するように構成されており、
前記記憶装置は、印刷条件ごとに合計量を制限するための制限テーブルを記憶するとともに、前記複数の色材ごとに前記階調補正テーブルを記憶し、
前記制限テーブルは、前記複数の色材の各階調値を含む入力データと、当該入力データに含まれる各階調値を制限した後の階調値を含む出力データとを対応付けた多次元テーブルであって、
前記制御装置は、前記第1印刷条件に対応する第1制限テーブルを参照して、前記第2印刷条件に対応する第2制限テーブルを作成する制限テーブル作成部をさらに含み、
前記制限テーブル作成部は、
前記複数の色材の各階調値を含む任意の第1データを設定する第1データ設定部と、
前記第2印刷条件に従って前記第1データに対応する画像を合計量を制限することなく形成する場合の各色材の付与量を示す第1付与量データを前記第2対応関係から求める第1付与量データ算出部と、
前記第1印刷条件に従って前記第1付与量データが示す画像を形成する場合に設定される各色材の階調補正前の階調値を示す第2データを前記第1対応関係から求める第2データ算出部と、
前記第2データを入力データとし、前記第1印刷条件に従った合計量の制限および階調補正を行って当該第2データに対応する画像を形成する場合の各色材の付与量を示す第2付与量データを前記第1制限テーブルおよび前記第1対応関係から求める第2付与量データ算出部と、
前記第2印刷条件に従って前記第2付与量データが示す画像を形成する場合に設定される各色材の階調補正前の階調値を示す第3データを前記第2対応関係から求める第3データ算出部と、
前記第2制限テーブルの入力データを前記第1データとし、当該第2制限テーブルの出力データを前記第3データとして、前記第2制限テーブルを作成する第2制限テーブル作成部とを含む、請求項1~3のうちいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項15】
記録媒体上に画像を形成する画像形成部と、
請求項1~3のうちいずれか1項に記載の画像処理装置とを備える、画像形成装置。
【請求項16】
前記画像形成部は、所定方向に配列された複数のヘッドモジュールを含み、
前記画像形成装置は、前記ヘッドモジュールによって前記記録媒体に形成されたテスト用階調画像を読み取る画像読取部をさらに備え、
前記記憶装置は、前記画像形成部の前記所定方向の不均一性を補正するためのムラ補正データを印刷条件ごとに記憶し、
前記第1階調補正テーブルは、前記第1印刷条件に従って形成された階調補正用の第1テスト用階調画像を測色して得られる第1測色データを用いて作成され、
前記制御装置は、
前記第1測色データと前記画像読取部が前記第1テスト用階調画像を読み取って得られた読み取り値とを対応付けてプロファイルを作成し、
ムラ補正に対応するテスト用階調画像を読み取って得られた読み取り値を前記プロファイルを用いて測色データを取得し、取得した測色データに基づいて前記ムラ補正データを作成する、請求項15に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像処理装置および当該画像処理装置を備える画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置などの画像形成装置においては、画像を印刷する際に希望する再現特性にするために階調補正が行われる。階調補正において使用される階調補正テーブルは、キャリブレーションを行うことで得られる。キャリブレーションは、一般的には、色ごとに階調値を変化させた複数の階調パッチを印刷する処理と、印刷した階調パッチの濃度を測定する処理とが含まれる。
【0003】
特開2013-215888号公報(特許文献1)には、印刷条件ごとに出力画像の濃度が変化するため、印刷条件ごとにキャリブレーションを実行する必要があることが記載されている。また、特許文献1には、印刷条件ごとにキャリブレーションに必要なすべてのパッチを用いてキャリブレーションを実行すると、インクなどの記録剤の消費量が増えてしまうという課題が記載されている。この課題を解決するために、特許文献1には、印刷方式の異なる二以上のキャリブレーションを実行する際に、一のキャリブレーションの測色データを使用することにより、他のキャリブレーションのパッチチャートのパッチ数を減らすことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
印刷条件ごとにキャリブレーションを行う場合、各印刷条件でパッチチャートであるテストチャートを印刷し、印刷したテストチャートを測定する必要がある。そのため、作業に時間を要し、ユーザに対する負担となっていた。
【0006】
本開示は、印刷条件ごとの階調補正テーブルを作成するにあたっての、作業時間の短縮およびユーザ負担の軽減を一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある局面に従う画像処理装置は、入力画像に対して階調補正を行う。画像処理装置は、記憶装置と、制御装置とを含む。記憶装置は、階調値と補正階調値とを対応付けた階調補正テーブルを印刷条件ごとに記憶する。制御装置は、指定された印刷条件に対応する階調補正テーブルを参照して入力画像を階調補正する。制御装置は、記憶装置に記憶されている第1印刷条件に対応する第1階調補正テーブルを参照して、第2印刷条件に対応する第2階調補正テーブルを作成する階調補正テーブル作成部を含む。階調補正テーブル作成部は、第1作成部と、第2作成部と、第2階調補正テーブル作成部とを含む。第1作成部は、第1印刷条件に従って階調補正を行って形成される画像に使用される色材量である第1付与量と、階調補正前の階調値との対応関係を示す第1対応関係を、第1階調補正テーブルを用いて作成する。第2作成部は、第2印刷条件に従って階調補正を行って形成される画像に使用される色材量である第2付与量と、階調補正前の階調値との対応関係を示す第2対応関係を、第1対応関係を用いて推定する。第2階調補正テーブル作成部は、第2対応関係を用いて前記第2階調補正テーブルを作成する。
【0008】
好ましくは、第1対応関係および第2対応関係において、階調補正前の階調値を入力値、第1付与量および第2付与量を出力値とした場合に、第2作成部は、第2対応関係における入力範囲である第2入力範囲に対応する出力範囲である第2出力範囲を求める。第2作成部は、第2出力範囲に対応する、第1対応関係における入力範囲である第1入力範囲を特定する。第2作成部は、特定した第1入力範囲を第2入力範囲に変換することで、第1対応関係を用いて第2対応関係を推定する。
【0009】
好ましくは、第2入力範囲は、0から最大の階調値までである。
【0010】
好ましくは、第2入力範囲の最大値は、第1入力範囲の最大値よりも大きい。
【0011】
好ましくは、第2階調補正テーブル作成部は、第2付与量の画像を階調補正することなく形成する場合の階調値を、第2対応関係における当該第2付与量に対応する階調値の補正階調値として、第2階調補正テーブルを作成する。
【0012】
好ましくは、印刷条件は、印刷解像度に関する条件である。
【0013】
好ましくは、第1印刷条件として、第1解像度で画像を形成することが設定されており、第2印刷条件として、第1解像度よりも低い第2解像度で画像を形成することが設定されている。
【0014】
好ましくは、第2作成部は、第1付与量と階調値との関係を連続的な関係に平滑化して、第1対応関係を用いて第2対応関係を推定する。
【0015】
好ましくは、第1対応関係における最大の階調値に対応する付与量は、第2対応関係における最大の階調値に対応する付与量よりも多い。
【0016】
好ましくは、制御装置は、付与量算出部をさらに含む。付与量算出部は、印刷条件に従って階調値を量子化することで単位面積当たりのドットの出現頻度を算出し、算出したドットの出現頻度と当該ドットの大きさとに基づいて、当該階調値の画像に使用される色材量である付与量を算出する。
【0017】
好ましくは、付与量算出部は、ドット分散型のハーフトーンを用いて階調値を量子化する。
【0018】
好ましくは、第2印刷条件に従って画像を形成する場合に一のドットを印字するときに使用する最大液滴量は、第1印刷条件に従って画像を形成する場合に一のドットを印字するときに使用する最大液滴量よりも多い。
【0019】
好ましくは、第2印刷条件に従って画像を形成する場合に設定可能なドットの種類は、第1印刷条件に従って画像を形成する場合に設定可能なドットの種類よりも多い。
【0020】
好ましくは、入力画像は、複数の色材を混色することによるカラー画像である。画像処理装置は、複数の色材の各階調値の合計量を制限するように当該複数の色材の各々に対応する階調値を求め、求めた階調値を階調補正テーブルに従って補正するように構成されている。記憶装置は、印刷条件ごとに合計量を制限するための制限テーブルを記憶するとともに、複数の色材ごとに階調補正テーブルを記憶する。制限テーブルは、複数の色材の各階調値を含む入力データと、当該入力データに含まれる各階調値を制限した後の階調値を含む出力データとを対応付けた多次元テーブルである。制御装置は、第1印刷条件に対応する第1制限テーブルを参照して、第2印刷条件に対応する第2制限テーブルを作成する制限テーブル作成部をさらに含む。制限テーブル作成部は、第1データ設定部と、第1付与量データ算出部と、第2データ算出部と、第2付与量データ算出部と、第3データ算出部と、第2制限テーブル作成部とを含む。第1データ設定部は、複数の色材の各階調値を含む任意の第1データを設定する。第1付与量データ算出部は、第2印刷条件に従って第1データに対応する画像を合計量を制限することなく形成する場合の各色材の付与量を示す第1付与量データを第2対応関係から求める。第2データ算出部は、第1印刷条件に従って第1付与量データが示す画像を形成する場合に設定される各色材の階調補正前の階調値を示す第2データを第1対応関係から求める。第2付与量データ算出部は、第2データを入力データとし、第1印刷条件に従った合計量の制限および階調補正を行って当該第2データに対応する画像を形成する場合の各色材の付与量を示す第2付与量データを第1制限テーブルおよび第1対応関係から求める。第3データ算出部は、第2印刷条件に従って第2付与量データが示す画像を形成する場合に設定される各色材の階調補正前の階調値を示す第3データを第2対応関係から求める。第2制限テーブル作成部は、第2制限テーブルの入力データを第1データとし、当該第2制限テーブルの出力データを第3データとして、第2制限テーブルを作成する。
【0021】
本開示の他の局面に従う画像形成装置は、記録媒体上に画像を形成する画像形成部と、上記画像処理装置と、を含む。
【0022】
好ましくは、画像形成部は、所定方向に配列された複数のヘッドモジュールを含む。画像形成装置は、ヘッドモジュールによって記録媒体に形成されたテスト用階調画像を読み取る画像読取部をさらに含む。記憶装置は、画像形成部の所定方向の不均一性を補正するためのムラ補正データを印刷条件ごとに記憶する。第1階調補正テーブルは、第1印刷条件に従って形成された階調補正用の第1テスト用階調画像を測色して得られる第1測色データを用いて作成される。制御装置は、第1測色データと画像読取部が第1テスト用階調画像を読み取って得られた読み取り値とを対応付けてプロファイルを作成する。制御装置は、ムラ補正に対応するテスト用階調画像を読み取って得られた読み取り値をプロファイルを用いて測色データを取得し、取得した測色データに基づいてムラ補正データを作成する。
【発明の効果】
【0023】
本開示によれば、一の印刷条件に対応する階調補正テーブル(第1階調補正テーブル)から、他の印刷条件に対応する階調補正テーブル(第2階調補正テーブル)を作成でき、テストチャートを印刷して測定する場合に比べて作業時間を短縮することができ、ユーザへの負担を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】画像形成装置の全体構成を概略的に示す図である。
【
図2】ヘッドユニットを搬送ドラム側から見た図である。
【
図3】画像処理部のハードウェア構成を示す図である。
【
図4】画像処理部の印刷時の処理の概要を説明するための図である。
【
図5】各種参照データを作成する方法を示すフローチャートである。
【
図6】第2階調補正テーブル作成時の処理の概要を説明するための図である。
【
図7】
図6の処理の続きの処理の概要を説明するための図である。
【
図8】高解像度における階調値とドット率との関係を示す図である。
【
図9】低解像度における階調値とドット率との関係を示す図である。
【
図10】第2制限テーブル作成時の処理の概要を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ、各実施形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。なお、以下で説明される各実施の形態および各変形例は、適宜選択的に組み合わされてもよい。
【0026】
[画像形成装置の全体構成]
図1は、画像形成装置の全体構成を概略的に示す図である。画像形成装置100は、インクおよびトナーなどの色材を用いて画像を形成する記録装置である。画像形成装置100は、カラー画像形成装置でもモノクロ画像形成装置でもよい。本実施の形態においては、複数のノズルからインクを吐出させて画像を形成するカラーのインクジェット記録装置である場合を例に挙げて説明する。画像形成装置100は、画像処理部1と、画像形成部2と、給紙部3と、排紙部4とを備える。
【0027】
画像処理部1は、画像形成装置100全体を制御する。画像処理部1は、外部装置または画像形成装置100が備える操作パネル21(
図3参照)などから入力される印刷ジョブのデータ(以下、「ジョブデータ」ともいう)を受信し、このデータを展開して画像データと印刷条件データとを生成する。画像データは、256階調などの階調画像データである。画像処理部1は、印刷条件データが示す印刷条件に従って、階調補正および量子化処理などの画像処理を行い、階調画像データをドットの種類に応じた量子化値で表したハーフトーン画像に変換する。画像処理部1は、ハーフトーン画像を画像形成部2に出力する。画像形成部2は、出力されたハーフトーン画像に従って画像を用紙Pに形成する。これにより、ジョブデータに含まれる画像データが示す画像が用紙Pに形成される。
【0028】
給紙部3は、画像形成部2に向けて記録媒体である用紙Pを供給する。なお、記録媒体は、樹脂フィルムであってもよい。樹脂フィルムは、たとえば、PETフィルム、PPフィルムまたはPEフィルムなどであってもよい。また、記録媒体は、金属、木板または布などであってもよい。給紙部3は、給紙トレイ3aを備える。給紙トレイ3aには、画像を形成する前の用紙P、あるいは、所定のパターンまたは画像が形成されたテスト用紙Pが積載される。給紙部3は、給紙トレイ3aに積載された用紙Pを最上位から順に一枚ずつ分離して画像形成部2に供給する。
【0029】
画像形成部2は、搬送部30と、複数のヘッドユニット50Y,50M,50C,50Kと、定着部32とを備える。また、搬送部30による用紙Pの搬送方向ARにおいて、定着部32の下流側に、画像読取部5が設けられている。
【0030】
排紙部4は、排紙トレイ4aを有している。排紙トレイ4aには、画像形成部2によって画像が形成された用紙Pが順に排出される。
【0031】
搬送部30は、給紙部3から供給された用紙Pを搬送方向ARに向けて搬送する。搬送部30は、複数のヘッドユニット50Y,50M,50C,50K、定着部32、画像読取部5の順でこれらを通過するように用紙Pを搬送し、複数のヘッドユニット50Y,50M,50C,50Kによって画像が形成された用紙Pを排紙部4に向けて搬送する。搬送部30は、搬送ドラム31と、反転部35と、大小2つの搬送ローラ36a,36bとを備える。搬送ドラム31、反転部35、および搬送ローラ36a,36bは、各々、回転可能に設けられている。
【0032】
搬送ドラム31は、給紙部3から供給された用紙Pを搬送ドラム31の外周面31aに巻き付けながら回転する。搬送ドラム31は、回転により用紙Pを搬送方向ARに搬送する。用紙Pは、搬送ドラム31によって搬送されることで、ヘッドユニット50、定着部32、画像読取部5の順でこれらを通過する。反転部35は、用紙Pの両面に画像を形成するため、あるいは用紙Pの片面に形成された画像を下向きにして用紙Pを排出するために、用紙Pの表裏を反転する部分である。搬送ローラ36a,36bは、画像の形成を終えた用紙Pを排紙部4に向けて搬送するローラである。
【0033】
複数のヘッドユニット50Y,50M,50C,50Kは、各々、用紙Pに対して対応する色のインクを用いて画像を形成(記録)する。具体的には、ヘッドユニット50Yはイエロー(Y)のインクを用いて画像を形成する。ヘッドユニット50Mはマゼンタ(M)のインクを用いて画像を形成する。ヘッドユニット50Cはシアン(C)のインクを用いて画像を形成する。ヘッドユニット50Kはブラック(K)のインクを用いて画像を形成する。なお、以下では、ヘッドユニット50Y,50M,50C,50Kを区別しない場合には、「ヘッドユニット50」と称する。
【0034】
本実施の形態においては、一例として、ヘッドユニット50は、紫外線硬化型のインクを用いるものとする。ヘッドユニット50は、搬送ドラム31の上側の外周面31aに対向する状態で配置されている。また、複数のヘッドユニット50は、各々、搬送ドラム31の円周方向に位置をずらして配置されている。
【0035】
図2を参照して、ヘッドユニット50の構成について詳細に説明する。
図2は、ヘッドユニットを搬送ドラム側から見た図である。ヘッドユニット50は、複数のヘッドモジュール51を備える。
図2に示す例では、ヘッドユニット50は、4つのヘッドモジュール51を備える。ヘッドユニット50YはヘッドモジュールY1~Y4を備え、ヘッドユニット50MはヘッドモジュールM1~M4を備え、ヘッドユニット50CはヘッドモジュールC1~C4を備え、ヘッドユニット50KはヘッドモジュールK1~K4を備える。
【0036】
4つのヘッドモジュール51は、用紙Pの搬送方向ARに対して直交する所定方向BRに配列されている。
図2に示す例では、4つのヘッドモジュール51は、所定方向BRにおいて配置範囲が違いに一部重複するように、千鳥格子状に配置されている。また、ヘッドモジュール51は、所定方向BRに配列された複数の記録素子510を備える。
【0037】
記録素子510は、インクを吐出する。記録素子510は、インクを貯留する圧力室と、圧力室の壁面に設けられた圧電素子と、圧電素子に電圧を印加して電界を生じさせるための電極と、圧力室に連通し圧力室内のインクを吐出するノズルとを有する。記録素子510は、圧電素子を変形動作させる駆動信号が入力されると、圧電素子の変形により圧力室が変形して圧力室内の圧力が変化し、圧力室に連通するノズルからインクを吐出する。ノズルから吐出されるインクの量は、駆動信号の電圧の振幅を変更することにより調整できる。
【0038】
一の駆動信号に対して吐出されるインクの量は、圧電素子の特性の違いなどにより、ノズルごとに個体差が生じる。また、複数の記録素子510を所定方向BRに配列し、所定方向BRに対して直交する方向に用紙Pを搬送して画像を形成すると、所定方向BRの各位置で画像形成に使用するノズルが異なる。そのため、ノズルごとの個体差により、濃度ムラが発生してしまうことがある。本実施の形態においては、ノズルごとの濃度ムラを無くすためのヘッドシェーディング補正が行われる。
【0039】
図1に戻って、定着部32は、用紙Pの搬送方向ARにおいて、ヘッドユニット50の下流側に配置されている。定着部32は、用紙Pに光(たとえば、紫外線)を照射することにより、用紙P上のインクを硬化させてインクを用紙Pに定着させる。定着部32による画像の定着は、光を照射するものに限らず、インクの性質に応じてインクを硬化させ得るエネルギー線を照射するもの、あるいは、用紙Pを加熱してインクを乾燥させるものなどであってもよい。
【0040】
画像読取部5は、たとえば、インラインセンサである。画像読取部5は、用紙Pの画像形成面を縮小光学系により読み取る。用紙Pの画像形成面とは、搬送部30が用紙Pを搬送する場合に、ヘッドユニット50と対向する用紙Pの面をいう。画像読取部5は、用紙Pに光を照射し、用紙Pに入射した光の反射光のうちR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の波長成分の強度を各々検出する。画像読取部5は、たとえば、CCD(Charge Coupled Device)センサ又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどを備える。画像読取部5が読み取った画像データは、画像処理部1に出力される。
【0041】
以上のように、画像形成装置100は、画像処理部1がジョブデータに含まれる画像データを画像処理し、画像処理部1によって生成されたデータを用いて画像形成部2が用紙Pに画像を形成することで、ジョブデータに含まれる画像データに対応する画像を用紙Pに形成する。
【0042】
[画像処理部の構成]
図3を参照して、画像処理部1の構成について説明する。
図3は、画像処理部のハードウェア構成を示す図である。画像処理部1は、制御装置10と、記憶装置20と、操作パネル21と、通信インターフェース(I/F)23とを備える。
【0043】
制御装置10は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103等を備える。CPU101は、ROM102から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM103に展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置100の各ブロックの動作を集中制御する。このとき、記憶装置20に格納されている各種データが参照される。
【0044】
記憶装置20は、例えば不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブ等の記憶装置で構成される。後述するように、本実施の形態では、印刷条件に応じて、「階調補正テーブル」、「制限テーブル」、および「ムラ補正テーブル」が参照される。記憶装置20は、階調補正テーブル格納部220、制限テーブル格納部240、およびムラ補正テーブル格納部260を備える。階調補正テーブルは、階調補正テーブル格納部220に格納される。制限テーブルは、制限テーブル格納部240に格納される。ムラ補正テーブルは、ムラ補正テーブル格納部260に格納される。
【0045】
操作パネル21は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部および操作部として機能する。操作パネル21は、制御装置10から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面・画像の状態表示、各機能の動作状況等の表示、を行う。また、操作パネル21は、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御装置10に出力する。
【0046】
通信I/F23は、ネットワーク等を通じて、図示しない外部装置との間で各種の情報を送受信する。たとえば、通信I/F23は、外部装置からジョブデータを受信する。
【0047】
なお、以下では、各画像処理に必要となる各種データを作成する処理および、印刷時に作成した各種データを利用しての画像処理は、画像処理部1にて行うものとする。なお、印刷時に作成した各種データを利用しての画像処理は、画像形成装置100の画像形成部2にて行っても良い。
【0048】
[画像処理部の印刷時の処理の概要]
図4は、画像処理部の印刷時の処理の概要を説明するための図である。画像処理部1は、階調画像に対して種々の画像処理を行い、階調画像をハーフトーン画像に変換する。画像処理において、画像処理部1は、印刷条件に応じたデータを参照する。以下では、印刷条件は、解像度であるものとして説明する。すなわち、画像処理部1は、解像度に応じたデータを参照して画像処理を行う。
【0049】
画像処理部1は、上述したように、制御装置10と、記憶装置20とを備える。制御装置10は、色変換部11と、合計量制限部12と、ムラ補正部13と、階調補正部14と、量子化処理部15とを備える。制御装置10が備えるこれらの各部の機能は、CPU101がROM102に格納されたプログラムを実行することによって実現される。
【0050】
色変換部11は、ジョブデータに含まれる画像データ(たとえば、RGBデータ)を画像形成装置100において使用される各インク色に対応したYMCK画像データに変換する。色変換部11は、ルックアップテーブルを用いる方法など、既知の方法を用いて画像データをYMCK画像データに変換する。
【0051】
合計量制限部12は、制限テーブル格納部240に格納されている制限テーブル24を参照して合計量制限処理を行い、YMCK画像データをY1M1C1K1画像データに変換する。合計量制限処理とは、用紙Pへの印刷において重ねて塗布されるインクの合計量を制限するための処理である。インクの合計量が制限されることで用紙上の画像の滲みを防止できる。制限テーブル24は、多次元テーブルであって、複数のインク(イエロ(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K))の各階調値を含む入力データと当該入力データに含まれる各階調値を制限した後の階調値を含む出力データを含む出力データとを対応づけたテーブルである。
【0052】
制限テーブル格納部240には、印刷条件ごとに制限テーブル24(24a,24b・・・)が格納されている。たとえば、制限テーブル24は、印刷条件の一つである解像度ごとに用意されている。合計量制限部12は、ジョブデータに含まれる印刷条件データに対応する制限テーブル24を参照して合計量制限処理を実行する。
【0053】
画像データの階調値が同じ場合であっても、最終的に使用される1色あたりのインク量は、解像度によって異なり、一般的には、高解像度の方が低解像度よりも多い。そのため、高解像度の方が強い制限となるように設計されていることが好ましく、画像処理部1は、解像度に応じた制限テーブル24を備える。
【0054】
ムラ補正部13は、ムラ補正テーブル格納部260に格納されているムラ補正データセット262を参照して、ノズルごとの濃度ムラを無くすためのヘッドシェーディング補正を行い、Y1M1C1K1画像データをY2M2C2K2画像データに変換する。ムラ補正データセット262は、インクごとに設けられたムラ補正データ26の集合であって、イエロー用のムラ補正データ26Yと、マゼンタ用のムラ補正データ26Mと、シアン用のムラ補正データ26Cと、ブラック用のムラ補正データ26Kとを含む。なお、以下では、ムラ補正データ26Y,26M,26C,26Kを区別しない場合には、「ムラ補正データ26」と称する。
【0055】
ムラ補正テーブル格納部260には、印刷条件ごとにムラ補正データセット262(262a,262b・・・)が格納されている。たとえば、ムラ補正データセット262は、印刷条件の一つである解像度ごとに用意されている。ムラ補正部13は、ジョブデータに含まれる印刷条件データに対応するムラ補正データセット262の各ムラ補正データ26を参照して、ヘッドシェーディング補正を行う。
【0056】
画像データの階調値が同じ場合であっても、最終的に使用されるインク量は、解像度によって異なる。すなわち、画像データの階調値が同じ場合であっても、解像度によって、ノズルに対して出す信号値は変わる。画像処理部1は、出力する信号値に応じたヘッドシェーディング補正を行うために、解像度に応じたムラ補正データ26を備える。
【0057】
階調補正部14は、階調補正テーブル格納部220に格納されている階調補正テーブルセット222を参照して階調補正処理を行い、Y2M2C2K2画像データをY3M3C3K3画像データに変換する。階調補正テーブルセット222は、インクごとに設けられた階調補正テーブル22の集合であって、イエロー用の階調補正テーブル22Yと、マゼンタ用の階調補正テーブル22Mと、シアン用の階調補正テーブル22Cと、ブラック用の階調補正テーブル22Kとを含む。なお、以下では、階調補正テーブル22Y,22M,22C,22Kを区別しない場合には、「階調補正テーブル22」と称する。
【0058】
階調補正テーブル格納部220には、印刷条件ごとに階調補正テーブルセット222(222a,222b・・・)が格納されている。たとえば、階調補正テーブルセット222は、印刷条件の一つである解像度ごとに用意されている。階調補正部14は、ジョブデータに含まれる印刷条件データに対応する階調補正テーブルセット222の各階調補正テーブル22を参照して、階調補正を行う。
【0059】
画像データの階調値が同じ場合であっても、最終的に使用されるインク量は、解像度によって異なるため、色味も変わる。そのため、画像処理部1は、解像度に応じた階調補正テーブル22を備える。
【0060】
量子化処理部15は、解像度に応じた量子化処理を行い、Y3M3C3K3画像データである階調画像データをドットの種類に応じた量子化値で表したハーフトーン画像に変換する。量子化処理部15は、ディザ法や誤差拡散法といった公知の量子化処理を適用して、階調画像データをハーフトーン画像に変換する。より特定的には、量子化処理部15は、ドット分散型のハーフトーンを用いて量子化処理を実行する。
【0061】
画像形成部2は、ハーフトーン画像に基づいて、ヘッドユニット50の各ノズルにおけるインク吐出動作を制御して、用紙Pに画像を形成する。
【0062】
以上のように、画像処理部1は、複数のデータを参照して、階調画像に対して種々の画像処理を行い、ハーフトーン画像を作成する。なお、処理の順番は一例であって、合計量制限処理、ヘッドシェーディング補正にかかる処理、および階調補正処理の順番は変更可能である。
【0063】
以下では、画像処理において参照する制限テーブル24、ムラ補正データ26、および階調補正テーブル22などのデータを総じて「参照データ」と称することがある。参照データは、印刷条件ごとに用意することが好ましい。しかし、参照データを作成する工程には、テスト用の階調画像を印刷する工程、得られた画像を測色する工程などの工程を含む。そのため、印刷条件ごとに参照データを用意しようとした場合、これらの工程を印刷条件ごとに行う必要があり、作業に時間を要し、ユーザへの負担が大きくなってしまうという問題があった。
【0064】
本実施の形態にかかる画像処理部1は、参照データの作成時間の短縮および作成負担の軽減のために、一の印刷条件に従って作成した参照データを基に、他の印刷条件用の参照データを作成する。以下、具体的な方法について説明する。
【0065】
以下では、「第1」と付された参照データは、基準とする参照データであって、第1印刷条件に対応する参照データを示すものとする。「第2」と付された参照データは、第1印刷条件とは異なる第2印刷条件に対応する参照データを示すものとする。また、本実施の形態において、第2印刷条件は、第1印刷条件における解像度(高解像度)に対して相対的に低い解像度(低解像度)であるものとして説明する。
【0066】
[各種参照データの作成フロー]
図5は、各種参照データを作成する方法を示すフローチャートである。各種参照データの作成の流れの概略について説明する。なお、以下では、ステップを「S」と省略する。また、
図5に示す例では、第1制限テーブルは、すでに作成されており、制限テーブル格納部240に格納されているものとして説明する。
【0067】
S100において、第1印刷条件に対応する第1階調補正テーブルが作成される。S100は、S101~S103を含む。
【0068】
S101において、画像形成装置100は、テスト用の階調画像であるテストチャートを第1印刷条件に従って印刷し(すなわち、高解像度で印刷する)、テストチャートが印刷された用紙Pを画像読取部5で読み取る。
【0069】
S102において、ユーザは、テストチャートが印刷された用紙Pを測色計で計測する。これにより、用紙Pに形成された画像の色を示す測色データを得られる。測色計は、測色結果を通信I/Fなどを介して画像形成装置100へ出力する。なお、画像形成装置100が測色計を備える場合、ユーザが用紙Pを測色計にセットする必要はない。
【0070】
S103において、画像処理部1は、測色値に基づいて、第1階調補正テーブルを作成する。階調補正テーブルの作成方法は、既知の方法を利用可能である。
【0071】
S100において第1階調補正テーブルが作成された後に、S200以降の処理が実行される。
【0072】
S200において、画像処理部1は、第1階調補正テーブルから第2階調補正テーブルを作成する。具体的な作成方法は、
図6,7を参照して後述する。
【0073】
S300において、画像処理部1は、第1制限テーブルから第2制限テーブルを作成する。具体的な作成方法は、
図10を参照して後述する。
【0074】
S110において、制御装置10は、変換プロファイルを作成する。変換プロファイルは、S101によって得られたテストチャートが印刷された用紙Pの画像読取値と測色値とを対応づけた参照データである。画像読取部5は、用紙Pに光を照射し、用紙Pに入射した光の反射光のうちR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の波長成分の強度を各々検出する。そのため、画像読取値は、RGBの色空間座標系で表される。これに対して、測色値は、明度および色度などを含む色空間座標系で表される。変換プロファイルは、RGBの色空間座標系を明度および色度などを含む測色計の色空間座標系に変換するための参照データである。
【0075】
S110において、変換プロファイルが作成された後に、S410またはS420の処理が実行される。なお、S110の処理は、S100の処理を実行した以降に実行されればよく、S200およびS300の処理を実行する前に行っても良い。
【0076】
S410において、画像形成装置100は、第1ムラ補正データを作成する。S410は、S411~S413を含む。
【0077】
S411において、画像形成装置100は、テスト用の階調画像であるテストチャートを第1階調補正テーブルを用いて補正した上で、第1印刷条件に従って印刷し、テストチャートが印刷された用紙Pを画像読取部5で読み取る。
【0078】
S412において、画像処理部1は、S110において作成した変換プロファイルを用いて、S411において得られた画像読取値を測色値に変換する。
【0079】
S413において、画像処理部1は、変換後の測色値に基づいて第1ムラ補正データを作成する。なお、ヘッドシェーディング補正に利用されるムラ補正データの作成方法は、既知の方法を適宜選択可能であって、特に限定されるものではないため、ここでは説明を省略する。
【0080】
S420において、画像処理部1は、第2ムラ補正データを作成する。S420は、S421~S423を含む。なお、S420は、S421において、テスト用の階調画像であるテストチャートを第2階調補正テーブルを用いて補正した上で、第2印刷条件に従って印刷する点がS410と異なる以外、S410と処理が共通するため、説明を省略する。
【0081】
なお、S410の処理は、S100およびS110の処理を実行した以降に実行されればよく、S200およびS300の処理を実行する前に行っても良い。
【0082】
以上のように、第1階調補正テーブルを作成したときに得られた測色値と画像読取値とを用いて変換プロファイルが作成される。これにより、第1ムラ補正データおよび第2ムラ補正データを作成するときに、測色結果を取得しなくとも、画像形成装置100に設けられた画像読取部5の読み取り結果に基づいて測色値を得られ、作業時間を短縮できるとともにユーザ負担を軽減できる。
【0083】
なお、画像処理部1は、変換プロファイルを予め作成している場合、S102の処理を実行することなく、S101において得られた画像読取値を変換プロファイルを用いて測色値に変換し、S103において、変換後の測色値に基づいて第1階調補正テーブルを作成してもよい。また、変換プロファイルを予め作成している場合、S110の処理を実行することなく、S410およびS420を実行してもよい。
【0084】
[階調補正テーブルの作成フロー]
図6,7を参照して、第1階調補正テーブルから第2階調補正テーブルを作成する方法について説明する。
図6は、第2階調補正テーブル作成時の処理の概要を説明するための図である。
図7は、
図6の処理の続きの処理の概要を説明するための図である。
図6および
図7を参照して、画像処理部1は、第1作成部41と、第2作成部42と、第3作成部43と、第2階調補正テーブル作成部44と、付与量算出部45とを備える。画像処理部1(より特定的には、制御装置10)が備えるこれらの各部の機能は、CPU101がROM102に格納されたプログラムを実行することによって実現される。
【0085】
第1作成部41は、第1印刷条件に従って第1対応関係412を作成する。第1対応関係412は、入力階調値と、付与量との対応関係を示す。付与量は、単位面積当たりに付与(使用)されるインク量である。第1対応関係412における付与量は、第1印刷条件に従って入力階調値を階調補正した上で画像を形成した場合に用紙Pの単位面積当たりに付与(使用)されるインク量である。
【0086】
より具体的には、第1作成部41は、第1階調補正テーブル22aを参照して、入力階調値を補正階調値に変換する。第1作成部41は、得られた補正階調値を付与量算出部45へ入力し、出力結果として付与量を得る。これにより、第1作成部41は、入力階調値と付与量との関係を得る。
【0087】
付与量算出部45が行う演算について、
図8および
図9を参照して説明する。
図8は、高解像度における階調値とドット率との関係を示す図である。
図9は、低解像度における階調値とドット率との関係を示す図である。なお、
図8および
図9に示した階調値とドット率との関係は一例であって、設定により変更可能である。
【0088】
図8および
図9に示すように、各階調値において使用されるドットのドット率がドットサイズごとに設定されている。ドット率とは、所定の画素領域において当該画素領域に含まれる全画素に対してドットが形成される画素数の割合である。ドット率に、一のドットを作成するのに必要なインク量を掛けることで、単位面積当たりに使用されるインク量である付与量が算出される。なお、ドットサイズは、一のドットを作成するのに必要な色材量に相当する。そのため、ドット率にドットサイズを掛けて得られる特徴量は、付与量に対応する特徴量である。
【0089】
図8を参照して、高解像度においては、サイズがAの一種類のドットが設定されており、入力階調値が上がるごとにドット率も上がる。一方、
図9を参照して、低解像度においては、サイズがBとBよりも大きいCとの2種類のドットが設定されている。なお、ドットサイズは、B,A,Cの順で大きいものとする。
【0090】
低解像度においては、低い入力階調値に対しては、サイズの小さいドットが設定されており、入力階調値が上がるにつれて、サイズの大きいドットの使用割合が高くなるように設定されている。これは、低解像度においては、一画素あたりの面積が大きくなるため、高階調値に対しては大きいドットサイズを用いても問題ないものの、低階調値に対しても同じ大きいドットサイズを用いると画質があらくなる。そこで、低階調値に対しては小さいドットサイズを用いることで画質の低下を避けることができる。
【0091】
なお、2種類以上のドットを利用する場合、付与量は、各ドットごとに、単位面積当たりに使用されるインク量を求め、各インク量を足し合わせることで求められる。
【0092】
図8、9に示した例では、高解像度で1種類、低解像度で2種類のドットを使用するものとした。なお、高解像度と低解像度とで使用するドットの種類は、特に限定されるものではない。たとえば、高解像度で2種類以上のドットを使用してもよく、低解像度で1種類または3種類以上のドットを使用するようにしてもよい。また、ドットサイズについて、低解像度において使用可能なドットサイズの少なくとも一のドットサイズが、高解像度において使用可能なドットサイズのうち最も大きなドットサイズよりも大きいことが好ましいものの、特に限定されるものではない。
【0093】
以上のように、付与量算出部45は、階調値と印刷条件とに基づいて、当該階調値の画像を形成した場合に単位面積当たりに使用されるインク量を求めることができる。
【0094】
図6に戻って、第2作成部42は、第1対応関係412を用いて、第2印刷条件に対応する第2対応関係421を推定する。第2対応関係421は、入力階調値と、付与量との対応関係を示す。第2対応関係421における付与量は、第2印刷条件に従って入力階調値を階調補正した上で画像を形成した場合に用紙Pの単位面積当たりに付与(使用)されるインク量である。第2作成部42は、特定部422と、変換部424と、平滑部426とを備える。
【0095】
特定部422は、ある階調値(特定階調値BM)の画像を階調補正することなく第2印刷条件に従って画像を形成した場合に、当該画像の単位面積当たりに使用されるインク量(特定付与量IM)を求め、当該付与量に対応する、第1対応関係412における入力階調値(対応階調値BM’)を特定する。ここで、対応階調値BM’とは、単位面積当たりに特定付与量IMのインクが使用されるような画像を第1印刷条件に従って作成する場合の補正階調前の入力階調値に相当する。
【0096】
なお、本実施の形態において、特定階調値BMは、最大の階調値(255)である。最大の階調値(255)は、階調補正をした後も最大の階調値である。そのため、付与量の範囲も、0~特定付与量IMとなる。第2対応関係421における入力階調値を入力値、付与量を出力値とすると、特定階調値BMから特定付与量IMを求めることで、第2対応関係421における入力範囲(0~特定階調値BM)に対応する出力範囲(0~特定付与量IM)が求まる。
【0097】
特定部422は、特定付与量IMに対応する、第1対応関係412における入力階調値(対応階調値BM’)を特定しているため、第2対応関係421における入力範囲(0~特定階調値BM)に対応する出力範囲(0~特定付与量IM)を出すための、第1対応関係における入力範囲(0~対応階調値BM’)を特定しているともいえる。ここで、解像度が異なる場合であっても、単位面積当たりに付与(使用)されるインク量が同じであれば、測色結果は略同じになる。すなわち、第1印刷条件に従って対応階調値BM’の画像を印刷したときと、第2印刷条件に従って特定階調値BMの画像を印刷したときとでは、ドットの態様は異なるものの、得られる測色結果は略同じになる。
【0098】
変換部424は、特定部422が特定した対応階調値B
M’と、特定階調値B
Mとの対応関係に基づき、第1対応関係412における入力階調値を第2対応関係421における入力階調値に変換することで第2対応関係421を推定する。より具体的には、変換部424は、第1対応関係412における横軸(入力階調値)について、0から対応階調値B
M’までを特定階調値B
Mで均等分割することで、第1対応関係412における入力階調値を第2対応関係421における入力階調値に変換する。変換後の入力階調値と付与量との対応関係が第2対応関係421に相当する。なお、
図6においては、第1対応関係412における入力階調値の1目盛の幅と、第2対応関係421における入力階調値の1目盛の幅とを同じにして表している。そのため、第2対応関係421のグラフは、第1対応関係412のグラフを横方向に引き延ばしたような形となっている。
【0099】
階調補正テーブル22は、入力階調値の変化に対する印刷物の視覚的な濃さ(L*値など)の変化が均等になるように作成される。すなわち、第1対応関係412においては、入力階調値の変化に対して印刷物の視覚的な濃さの変化が均等になるように入力階調値と付与量とが対応付けられている。解像度が異なる場合であっても、単位面積当たりに付与(使用)されるインク量が同じであれば、測色結果は略同じになるため、付与量は、測色値に対応する特徴量であるとも言える。そのため、第1対応関係412における横軸を均等分割して再定義し直した入力階調値と付与量との対応関係(すなわち、推定した第2対応関係421)も、入力階調値の変化に対して印刷物の視覚的な濃さの変化が均等になるような対応関係となっている。
【0100】
なお、上述したように、特定部422は第2対応関係421における入力範囲(0~特定階調値BM)に対応する出力範囲(0~特定付与量IM)を出すための、第1対応関係における入力範囲(0~対応階調値BM’)を特定しているともいえる。変換部424は、第1対応関係412における入力階調値(対応階調値BM’)を第2対応関係421における入力階調値(特定階調値BM)に変換しているため、第1対応関係における入力範囲(0~対応階調値BM’)を、第2対応関係における入力範囲(0~特定階調値BM)に変換しているともいえる。
【0101】
平滑部426は、第1対応関係412における入力階調値と付与量との関係を連続的な関係に平滑化する。これにより、0から対応階調値BM’までを特定階調値BMで均等分割したときの各入力値に対する付与量を求めることができる。より具体的には、平滑部426は、0から対応階調値BM’までを特定階調値BMで均等分割したときの各入力値に対する付与量を補間を用いて求める。
【0102】
図7を参照して、第2階調補正テーブル作成部44は、第2対応関係421を用いて第2階調補正テーブル22bを作成する。上述したように、第2対応関係421は、入力階調値と、付与量(第2印刷条件に従って入力階調値を階調補正した上で画像を形成した場合に用紙Pの単位面積当たりに付与(使用)されるインク量)との対応関係を示す。
【0103】
階調値と付与量との関係は、付与量算出部45により求めることができる。具体的には、第3作成部43は、階調値と付与量との関係として、第3対応関係431を作成する。第3作成部43は、階調値を付与量算出部45へ入力し、出力結果として付与量を得る。これにより、第3作成部43は、階調値と付与量との関係である第3対応関係431を作成する。なお、付与量算出部45は、
図9に示した低解像度(第2印刷条件)における階調値とドット率との関係に基づいて、出力結果として付与量を出力する。
【0104】
第2階調補正テーブル作成部44は、入力階調値と当該入力階調値を補正した上で画像を形成した場合の付与量との関係(第2対応関係421)と、階調値と当該階調値を補正することなく画像を形成した場合の付与量との関係(第3対応関係431)とに基づいて、入力階調値と補正階調値との関係を示す第2階調補正テーブル22bを作成する。
【0105】
具体的には、第2階調補正テーブル作成部44は、一の付与量Iaについて、第2対応関係421における付与量Iaに対応する階調値Baと、第3対応関係431における付与量Iaに対応する階調値Ba’とを求め、階調値Baを入力階調値、階調値Ba’を補正階調値とする。第2階調補正テーブル作成部44は、各入力階調値に対する補正階調値を求めることで第2階調補正テーブル22bを作成する。
【0106】
ここで、第3対応関係431は、階調値と、当該階調値を付与量算出部45へ入力して得られた付与量との対応関係である。すなわち、第3対応関係431は、階調値と、第2印刷条件に従って当該階調値を階調補正することなく画像を形成した場合の付与量との対応関係である。よって、第2階調補正テーブル作成部44は、一の付与量Iaの画像を階調補正することなく形成する場合の階調値Ba’を、第2対応関係421における付与量Iaに対応する階調値Baの補正階調値として、第2階調補正テーブル22bを作成しているともいえる。
【0107】
なお、
図6,7においては、一種類のインクについて説明したが、同様の方法で、各インクに対応する階調補正テーブル22を作成することができる。その過程で、インクごとに第1対応関係412および第2対応関係421が作成される。
【0108】
以上のように、画像処理部1は、第1階調補正テーブル22aから第2階調補正テーブル22bを作成することができる。そのため、基準となる一の階調補正テーブル22を作成すれば、テストチャートの印刷をすることなく、他の階調補正テーブル22が作成され、テストチャートを印刷して測定する場合に比べて作業時間を短縮でき、ユーザへの負担を軽減できる。
【0109】
[制限テーブルの作成フロー]
図10を参照して、第1制限テーブルから第2制限テーブルを作成する方法について説明する。
図10は、第2制限テーブル作成時の処理の概要を説明するための図である。
図10を参照して、画像処理部1は、第1データ設定部61と、第1付与量データ算出部62と、第2データ算出部63と、第2付与量データ算出部64と、第3データ算出部65と、第2制限テーブル作成部66とを備える。画像処理部1(より特定的には、制御装置10)が備えるこれらの各部の機能は、CPU101がROM102に格納されたプログラムを実行することによって実現される。
【0110】
第1データ設定部61は、複数のインク(Y、M、C、K)の各階調値を含む任意の入力データとして、第1データ612を設定する。
【0111】
第1付与量データ算出部62は、第1データ612に対応する画像を合計量を制限することなく形成する場合の各インクの付与量を示す第1付与量データ622を各インクに対応する第2対応関係421(421Y,421M421C,421K)から求める。なお、第2対応関係421Y,421M,421C,421Kは、それぞれ、イエローの第2対応関係、マゼンタの第2対応関係、シアンの第2対応関係、ブラックの第2対応関係である。
【0112】
より具体的には、第1付与量データ算出部62は、第2対応関係421Yを参照して第1データ612に含まれるイエローの階調値BY1に対応する付与量IY1を求める。同様に、第1付与量データ算出部62は、第1データ612に含まれるマゼンタの階調値BM1,シアンの階調値BC1,ブラックの階調値BK1について、それぞれ、第2対応関係421M,421C,421Kを参照して、対応する付与量IM1,IC1,IK1を求める。
【0113】
第2データ算出部63は、第1印刷条件に従って第1付与量データ622が示す画像を形成する場合に設定される各インクの階調補正前の入力階調値を示す第2データ632を各インクに対応する第1対応関係412(412Y,412M421C,412K)から求める。なお、第1対応関係412Y,412M,412C,412Kは、それぞれ、イエローの第1対応関係、マゼンタの第1対応関係、シアンの第1対応関係、ブラックの第1対応関係である。
【0114】
より具体的には、第2データ算出部63は、第1対応関係412Yを参照して第1付与量データ622に含まれるイエローの付与量IY1に対応する階調値BY2を求める。同様に、第2データ算出部63は、第1付与量データ622に含まれるマゼンタの付与量IM1,シアンの付与量IC1,ブラックの付与量IK1について、それぞれ、第1対応関係412M,412C,412Kを参照して、対応する階調値BM2,BC2,BK2を求める。
【0115】
第2付与量データ算出部64は、第2データ632を入力データとして、第1印刷条件に従った合計量の制限および階調補正を行って、当該第2データ632に対応する画像を形成する場合の各インクの付与量を示す第2付与量データ642を、第1制限テーブル24aおよび第1対応関係412(412Y,412M421C,412K)から求める。
【0116】
より具体的には、第2付与量データ算出部64は、第1制限テーブル24aを参照して、第2データ632である階調値(BY2,BM2,BC2,BK2)を入力データとして、第1制限テーブルにおいて制限した後の階調値(BY2’,BM2’,BC2’,BK2’)を出力データとして得る。
【0117】
第2付与量データ算出部64は、第1対応関係412Yを参照して制限後のイエローの階調値BY2’に対応する付与量IY2を求める。同様に、第2付与量データ算出部64は、制限後のマゼンタの階調値BM2’,シアンの階調値BC2’,ブラックの階調値BK2’について、それぞれ、第1対応関係412M,412C,412Kを参照して、対応する付与量IM2,IC2,IK2を求める。
【0118】
第3データ算出部65は、第2印刷条件に従って第2付与量データ642が示す画像を形成する場合に設定される各インクの階調補正前の入力階調値を示す第3データ652を各インクに対応する第2対応関係421(421Y,421M421C,421K)から求める。
【0119】
より具体的には、第3データ算出部65は、第2対応関係421Yを参照して第2付与量データ642に含まれるイエローの付与量IY2に対応する階調値BY3を求める。同様に、第3データ算出部65は、第2付与量データ642に含まれるマゼンタの付与量IM2,シアンの付与量IC2,ブラックの付与量IK2について、それぞれ、第2対応関係421M,421C,421Kを参照して、対応する階調値BM3,BC3,BK3を求める。
【0120】
第2制限テーブル作成部66は、第1データ設定部61が設定した第1データ612を入力データ、第3データ算出部65が求めた第3データ652を第2制限テーブル24bにおける出力データとして、第2制限テーブル24bを作成する。
【0121】
画像処理部1は、第1データ設定部61、第1付与量データ算出部62、第2データ算出部63、第2付与量データ算出部64、第3データ算出部65、第2付与量データ算出部64が実行する処理を繰り返すことで、複数の入力データ(第1データ612)に対する各出力データ(第3データ652)を求め、第2制限テーブル24bを作成する。
【0122】
すなわち、画像処理部1は、第2印刷条件(低解像度)における階調補正特定に従うデータをインク量(第1付与量データ622)を介して第1印刷条件(高解像度)におけるデータ(第2データ632)に読み替えている。そして、読み替えた第1印刷条件におけるデータ(第2データ632)を、第1印刷条件において設定した合計量制限特性を満たす制限値(BY2’,BM2’,BC2’,BK2’)を再度インク量(第2付与量データ642)を介して第2印刷条件(低解像度)におけるデータ(第3データ652)に読み替えている。これより、第1印刷条件において設定した合計量制限特性を反映した第2印刷条件(低解像度)におけるデータ(第3データ652)が得られるため、第2制限テーブル24bを作成できる。
【0123】
以上のように、画像処理部1は、制限テーブル24のような複雑な多次元テーブルについても、一の制限テーブル24から他の制限テーブル24を作成することができるため、一から制限テーブル24を作成する場合に比べて画像処理部1にかかる処理負担を軽減できる。
【0124】
[変形例]
上記実施の形態において、画像処理部1は、第2階調補正テーブル22bを作成した後に、第2制限テーブル24bを作成した。なお、画像処理部1は、第1対応関係412および第2対応関係421を作成した後に、第2階調補正テーブル22bおよび第2制限テーブル24bを作成すればよく、第2階調補正テーブル22bおよび第2制限テーブル24bの作成順序は、特に限定されるものではない。
【0125】
上記実施の形態において、画像処理部1は、高解像度における階調補正テーブル(第1階調補正テーブル22a)から、低解像度における階調補正テーブル(第2階調補正テーブル22b)を作成するものとしたが、低解像度における階調補正テーブル(第2階調補正テーブル22b)から高解像度における階調補正テーブル(第1階調補正テーブル22a)を作成してもよい。この場合、高階調値側の一部の階調値と付与量との対応関係を低解像度における階調補正テーブルから作成することが難しいものの、画像処理部1は、たとえば、データを補間することによって作成してもよい。
【0126】
<付記>
以上のように、本実施の形態は以下のような開示を含む。
【0127】
[構成1]
入力画像に対して階調補正を行う画像処理装置であって、
階調値と補正階調値とを対応付けた階調補正テーブルを印刷条件ごとに記憶する記憶装置と、
指定された印刷条件に対応する前記階調補正テーブルを参照して入力画像を階調補正する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記記憶装置に記憶されている第1印刷条件に対応する第1階調補正テーブルを参照して、第2印刷条件に対応する第2階調補正テーブルを作成する階調補正テーブル作成部を含み、
前記階調補正テーブル作成部は、
前記第1印刷条件に従って階調補正を行って形成される画像に使用される色材量である第1付与量と、階調補正前の階調値との対応関係を示す第1対応関係を、前記第1階調補正テーブルを用いて作成する第1作成部と、
前記第2印刷条件に従って階調補正を行って形成される画像に使用される色材量である第2付与量と、階調補正前の階調値との対応関係を示す第2対応関係を、前記第1対応関係を用いて推定する第2作成部と、
前記第2対応関係を用いて前記第2階調補正テーブルを作成する第2階調補正テーブル作成部とを含む、画像処理装置。
【0128】
[構成2]
前記第1対応関係および前記第2対応関係において、階調補正前の階調値を入力値、前記第1付与量および前記第2付与量を出力値とした場合に、
前記第2作成部は、
前記第2対応関係における入力範囲である第2入力範囲に対応する出力範囲である第2出力範囲を求め、
前記第2出力範囲に対応する、前記第1対応関係における入力範囲である第1入力範囲を特定し、
特定した前記第1入力範囲を前記第2入力範囲に変換することで、前記第1対応関係を用いて前記第2対応関係を推定する、構成1に記載の画像処理装置。
【0129】
[構成3]
前記第2入力範囲は、0から最大の階調値までである、構成2に記載の画像処理装置。
【0130】
[構成4]
前記第2入力範囲の最大値は、前記第1入力範囲の最大値よりも大きい、構成2または3に記載の画像処理装置。
【0131】
[構成5]
前記第2階調補正テーブル作成部は、前記第2付与量の画像を階調補正することなく形成する場合の階調値を、前記第2対応関係における当該第2付与量に対応する階調値の補正階調値として、前記第2階調補正テーブルを作成する、構成1~4のうちいずれか1項に記載の画像処理装置。
【0132】
[構成6]
前記印刷条件は、印刷解像度に関する条件である、構成1~4のうちいずれか1項に記載の画像処理装置。
【0133】
[構成7]
前記第1印刷条件として、第1解像度で画像を形成することが設定されており、
前記第2印刷条件として、前記第1解像度よりも低い第2解像度で画像を形成することが設定されている、構成6に記載の画像処理装置。
【0134】
[構成8]
前記第2作成部は、前記第1付与量と階調値との関係を連続的な関係に平滑化して、前記第1対応関係を用いて前記第2対応関係を推定する、構成1~7のうちいずれか1項に記載の画像処理装置。
【0135】
[構成9]
前記第1対応関係における最大の階調値に対応する付与量は、前記第2対応関係における最大の階調値に対応する付与量よりも多い、構成1~8のうちいずれか1項に記載の画像処理装置。
【0136】
[構成10]
前記制御装置は、印刷条件に従って階調値を量子化することで単位面積当たりのドットの出現頻度を算出し、算出したドットの出現頻度と当該ドットの大きさとに基づいて、当該階調値の画像に使用される色材量である付与量を算出する付与量算出部をさらに含む、構成1~9のうちいずれか1項に記載の画像処理装置。
【0137】
[構成11]
前記付与量算出部は、ドット分散型のハーフトーンを用いて階調値を量子化する、構成10に記載の画像処理装置。
【0138】
[構成12]
前記第2印刷条件に従って画像を形成する場合に一のドットを印字するときに使用する最大液滴量は、前記第1印刷条件に従って画像を形成する場合に一のドットを印字するときに使用する最大液滴量よりも多い、構成10または11に記載の画像処理装置。
【0139】
[構成13]
前記第2印刷条件に従って画像を形成する場合に設定可能なドットの種類は、前記第1印刷条件に従って画像を形成する場合に設定可能なドットの種類よりも多い、構成10~12のうちいずれか1項に記載の画像処理装置。
【0140】
[構成14]
前記入力画像は、複数の色材を混色することによるカラー画像であって、
前記画像処理装置は、前記複数の色材の各階調値の合計量を制限するように当該複数の色材の各々に対応する階調値を求め、求めた階調値を階調補正テーブルに従って補正するように構成されており、
前記記憶装置は、印刷条件ごとに合計量を制限するための制限テーブルを記憶するとともに、前記複数の色材ごとに前記階調補正テーブルを記憶し、
前記制限テーブルは、前記複数の色材の各階調値を含む入力データと、当該入力データに含まれる各階調値を制限した後の階調値を含む出力データとを対応付けた多次元テーブルであって、
前記制御装置は、
前記第1印刷条件に対応する第1制限テーブルを参照して、前記第2印刷条件に対応する第2制限テーブルを作成する制限テーブル作成部をさらに含み、
前記制限テーブル作成部は、
前記複数の色材の各階調値を含む任意の第1データを設定する第1データ設定部と、
前記第2印刷条件に従って前記第1データに対応する画像を合計量を制限することなく形成する場合の各色材の付与量を示す第1付与量データを前記第2対応関係から求める第1付与量データ算出部と、
前記第1印刷条件に従って前記第1付与量データが示す画像を形成する場合に設定される各色材の階調補正前の階調値を示す第2データを前記第1対応関係から求める第2データ算出部と、
前記第2データを入力データとし、前記第1印刷条件に従った合計量の制限および階調補正を行って当該第2データに対応する画像を形成する場合の各色材の付与量を示す第2付与量データを前記第1制限テーブルおよび前記第1対応関係から求める第2付与量データ算出部と、
前記第2印刷条件に従って前記第2付与量データが示す画像を形成する場合に設定される各色材の階調補正前の階調値を示す第3データを前記第2対応関係から求める第3データ算出部と、
前記第2制限テーブルの入力データを前記第1データとし、当該第2制限テーブルの出力データを前記第3データとして、前記第2制限テーブルを作成する第2制限テーブル作成部とを含む、構成1~13のうちいずれか1項に記載の画像処理装置。
【0141】
[構成15]
記録媒体上に画像を形成する画像形成部と、
構成1~14のうちいずれか1項に記載の画像処理装置とを備える、画像形成装置。
【0142】
[構成16]
前記画像形成部は、所定方向に配列された複数のヘッドモジュールを含み、
前記画像形成装置は、前記ヘッドモジュールによって前記記録媒体に形成されたテスト用階調画像を読み取る画像読取部をさらに備え、
前記記憶装置は、前記画像形成部の前記所定方向の不均一性を補正するためのムラ補正データを印刷条件ごとに記憶し、
前記第1階調補正テーブルは、前記第1印刷条件に従って形成された階調補正用の第1テスト用階調画像を測色して得られる第1測色データを用いて作成され、
前記制御装置は、
前記第1測色データと前記画像読取部が前記第1テスト用階調画像を読み取って得られた読み取り値とを対応付けてプロファイルを作成し、
ムラ補正に対応するテスト用階調画像を読み取って得られた読み取り値を前記プロファイルを用いて測色データを取得し、取得した測色データに基づいて前記ムラ補正データを作成する、構成15に記載の画像形成装置。
【0143】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この出願の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0144】
1 画像処理部、2 画像形成部、3 給紙部、3a 給紙トレイ、4 排紙部、4a 排紙トレイ、5 画像読取部、10 制御装置、11 色変換部、12 合計量制限部、13 ムラ補正部、14 階調補正部、15 量子化処理部、20 記憶装置、21 操作パネル、22,22C,22K,22M,22Y 階調補正テーブル、22a 第1階調補正テーブル、22b 第2階調補正テーブル、23 通信I/F、24 制限テーブル、24a 第1制限テーブル、24b 第2制限テーブル、26,26C,26K,26M,26Y ムラ補正データ、30 搬送部、31 搬送ドラム、31a 外周面、32 定着部、35 反転部、36a,36b 搬送ローラ、41 第1作成部、42 第2作成部、43 第3作成部、44 第2階調補正テーブル作成部、45 付与量算出部、50,50C,50K,50M,50Y ヘッドユニット、51,C1~C4,K1~K4,M1~M4,Y1~Y4 ヘッドモジュール、61 第1データ設定部、62 第1付与量データ算出部、63 第2データ算出部、64 第2付与量データ算出部、65 第3データ算出部、66 第2制限テーブル作成部、100 画像形成装置、101 CPU、102 ROM、103 RAM、220 階調補正テーブル格納部、222 階調補正テーブルセット、240 制限テーブル格納部、260 ムラ補正テーブル格納部、262 ムラ補正データセット、412,412C,412K,412M,412Y 第1対応関係、421,421C,421K,421M,421Y 第2対応関係、422 特定部、424 変換部、426 平滑部、431 第3対応関係、510 記録素子、612 第1データ、622 第1付与量データ、632 第2データ、642 第2付与量データ、652 第3データ、P 用紙。