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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114310
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】口腔用組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/25 20060101AFI20240816BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20240816BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20240816BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
A61K8/25
A61K8/365
A61K8/44
A61Q11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019989
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】391066490
【氏名又は名称】日本ゼトック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100218578
【弁理士】
【氏名又は名称】河井 愛美
(72)【発明者】
【氏名】小林 奈那子
(72)【発明者】
【氏名】馬場(稲垣) みずき
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB032
4C083AB051
4C083AB052
4C083AB172
4C083AB242
4C083AB292
4C083AB441
4C083AB442
4C083AB472
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC472
4C083AC581
4C083AC582
4C083AC662
4C083AC692
4C083AC782
4C083AC792
4C083AC862
4C083AD072
4C083AD272
4C083AD282
4C083AD302
4C083AD332
4C083AD532
4C083AD632
4C083CC41
4C083DD41
4C083DD42
4C083DD50
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】ゲル状態とゾル状態の間を簡便に変化させることが可能であり、かつゾル状態とゲル状態との間を適切な時間で変化することにより、口腔内のブラッシングを容易にする口腔用組成物を提供する。
【解決手段】(A)20℃の0.3質量%水溶液中で平均粒径が101nm以上500nm以下の範囲にある第1のヘクトライトと、(B)20℃の0.3質量%水溶液中で平均粒径が10nm以上100nm以下の範囲にある第2のヘクトライトと、(C)ポリカルボン酸と、を含むことを特徴とする、口腔用組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)20℃の0.3質量%水溶液中で平均粒径が101nm以上500nm以下の範囲にある第1のヘクトライトと、
(B)20℃の0.3質量%水溶液中で平均粒径が10nm以上100nm以下の範囲にある第2のヘクトライトと、
(C)ポリカルボン酸と、
を含むことを特徴とする、口腔用組成物。
【請求項2】
(A)及び(B)を主成分とするゲル化剤と、pH11.5~12.5のアルカリイオン水と、を混合してなるゲル状物質を含む、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
(A)が、その結晶構造中にSiを23~27%、Mgを16~17%、Liを0.4~0.6%、Naを1.95~2.05%、Feを0.0~0.5%、Alを0.05~0.15%含有する、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
(B)が、合成ケイ酸ナトリウム・マグネシウムである、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項5】
(B)が、以下の化学式を有する、請求項4に記載の口腔用組成物。
Na+ 0.7[(Si8Mg5.5Li0.3)O20(OH)4-0.7
【請求項6】
(C)が、クエン酸、グルタミン酸、及び酒石酸からなる群から選択される1つ以上のポリカルボン酸である、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項7】
(A)を主成分とするゲル化剤と、pH11.5~12.5のアルカリ性電解水と、を混合してなる(A)含有ゲル状物質を含む、請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項8】
(A)含有ゲル状物質の含有量が、口腔用組成物の全質量に対して0.01~70質量%である、請求項7に記載の口腔用組成物。
【請求項9】
(B)の含有量が、口腔用組成物の全質量に対して0.01~5質量%である、請求項8に記載の口腔用組成物。
【請求項10】
(C)の含有量が、口腔用組成物の全質量に対して0.001~1質量%である、請求項9に記載の口腔用組成物。
【請求項11】
(A)含有ゲル状物質の含有量を1質量部としたとき、(B)の含有量が0.00014質量部以上500質量部以下である、請求項10に記載の口腔用組成物。
【請求項12】
ゲル状態からゾル状態への移行に関わる降伏値が0.1~1.0Paである、請求項1のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
【請求項13】
口腔用組成物の用途が口腔内のブラッシングであり、ブラッシングが、
口腔用組成物に応力を加えてゾル状態にすることと、
ゾル状態の口腔用組成物を口腔内に導入することと、
口腔用組成物に対する応力を除去してゲル状態にした後に、口腔内をブラッシングすることと、
を含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔用組成物に関し、より具体的には、チキソトロピー性を有し、口腔内のブラッシングを容易とする口腔用組成物、及び前記口腔用組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
現在使用されている歯磨剤としては練り歯磨剤が主流であるが、近年は液状歯磨剤も広がりをみせつつある。従来用いられてきた練り歯磨剤に対して、液状歯磨剤は口に含んですすぐことで、成分をすみずみまで広げることができるという利点がある。一方で液状歯磨剤には、液体であるために製剤を口に含んだ状態でブラッシングすることが困難であるという課題が挙げられる。このことから、液体でありながらブラッシングが容易にできる歯磨剤が求められている。
【0003】
液状歯磨剤が口腔内に含んだ状態でゲル状であると、容易にブラッシングすることができる。一方で、液状歯磨剤を容器からコップに移してさらに口に含ませる際には、ゲル状ではなくゾル状(液状)である方が、利便性が高い。ゾル状からゲル状への粘度変化が起きる液状歯磨剤であれば、これらの両方をかなえることができると考えられる。
このような性質を示す現象の一つとして、チキソトロピー(thixotropy)が挙げられる。チキソトロピーとは、分散系溶液の状態が応力に応じてゾルとゲルの間で入れ替わる現象である。具体的には、チキソトロピー性を有するゲル状物質に応力を加えると粘度が低下してゾル状になり、応力を除去すると粘度が上昇して再びゲル状になる。チキソトロピーを利用し、応力を加えない状態でゲル状の歯磨剤であって、手で軽く振って応力を加えることでゾル化し、コップに注いで口に含んだのちにゲル化する歯磨剤の開発が期待されている。
【0004】
チキソトロピー性を有する原料の例として、ヘクトライトが挙げられる。ヘクトライトは高いチキソトロピー性を有し、ヘクトライトを水に分散した溶液に応力を与えると粘度が低下してゾル状になり、応力を除去すると瞬時にゲル状になるが、ヘクトライトを水に分散させた溶液はゾル状からゲル状に変化する時間が非常に短い。そのためこれを液状歯磨剤として用いた場合には、液状歯磨剤を容器からコップに注ぎ、さらに口に含むまでの間ゾル状態を保つことができない。
特許文献1に記載のゲル状物質は、ヘクトライトを主成分とするゲル化剤と、pH11.5~12.5のアルカリイオン水とを混合してなることを特徴とするゲル状物質であり、商品名「還元性チキソトロピー原料GE-100」(以下、GE-100と記載)として販売されている(特許文献2参照)。GE-100は、手で軽く振ることで瞬時にゾル化し、静置すれば完全にゲル化して殆ど流動性がなくなる。GE-100は、ゾル状態から応力を除去してゲル状になるまでに数秒間はゾル状を保つ性質を持つため、液状歯磨剤の成分として有望である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-51682号公報
【特許文献2】特開2000-247892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の記載のゲル状物質をそのまま液状歯磨剤に適用すると、ゾル状態で口に含んだ後にゲル化するまでに時間がかかりすぎてしまい、ブラッシングすることが困難である。
【0007】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであって、チキソトロピー性を有する口腔用組成物であって、ゲル状態とゾル状態の間を簡便に変化させることが可能であり、かつゾル状態とゲル状態との間を適切な時間で変化することにより、口腔内のブラッシングを容易にする口腔用組成物を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、粒径の異なる2種類のヘクトライトを配合したゲル状の口腔用組成物が、応力を加えることで即座にゾル化し、かつ適切な時間で再度ゲル化することを見出した。また、本発明者らは、当該口腔用組成物にさらにポリカルボン酸を配合することにより、ゾル化とゲル化の間の変化にかかる時間をより適切な時間に調節可能であることを見出した。
【0009】
本発明が取り得る態様としては、以下を挙げることができる。
〔1〕
(A)20℃の0.3質量%水溶液中で平均粒径が101nm以上500nm以下の範囲にある第1のヘクトライトと、
(B)20℃の0.3質量%水溶液中で平均粒径が10nm以上100nm以下の範囲にある第2のヘクトライトと、
(C)ポリカルボン酸と、
を含むことを特徴とする、口腔用組成物。
〔2〕
(A)及び(B)を主成分とするゲル化剤と、pH11.5~12.5のアルカリイオン水と、を混合してなるゲル状物質を含む、前記〔1〕に記載の口腔用組成物。
〔3〕
(A)が、その結晶構造中にSiを23~27%、Mgを16~17%、Liを0.4~0.6%、Naを1.95~2.05%、Feを0.0~0.5%、Alを0.05~0.15%含有する、前記〔1〕に記載の口腔用組成物。
〔4〕
(B)が、合成ケイ酸ナトリウム・マグネシウムである、前記〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
〔5〕
(B)が、以下の化学式を有する、前記〔4〕に記載の口腔用組成物。
Na+ 0.7[(Si8Mg5.5Li0.3)O20(OH)4-0.7
〔6〕
(C)が、クエン酸、グルタミン酸、及び酒石酸からなる群から選択される1つ以上のポリカルボン酸である、前記〔1〕に記載の口腔用組成物。
〔7〕
(A)を主成分とするゲル化剤と、pH11.5~12.5のアルカリ性電解水と、を混合してなる(A)含有ゲル状物質を含む、前記〔1〕に記載の口腔用組成物。
〔8〕
(A)含有ゲル状物質の含有量が、口腔用組成物の全質量に対して0.01~70質量%である、前記〔7〕に記載の口腔用組成物。
〔9〕
(B)の含有量が、口腔用組成物の全質量に対して0.01~5質量%である、前記〔7〕又は〔8〕に記載の口腔用組成物。
〔10〕
(C)の含有量が、口腔用組成物の全質量に対して0.001~1質量%である、前記〔7〕~〔9〕のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
〔11〕
(A)含有ゲル状物質の含有量を1質量部としたとき、(B)の含有量が0.00014質量部以上500質量部以下である、前記〔7〕~〔10〕のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
〔12〕ゲル状態からゾル状態への移行に関わる降伏値が0.1~1.0Paである、前記〔1〕~〔11〕のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
〔13〕口腔用組成物の用途が口腔内のブラッシングであり、ブラッシングが、
口腔用組成物に応力を加えてゾル状態にすることと、
ゾル状態の口腔用組成物を口腔内に導入することと、
口腔用組成物に対する応力を除去してゲル状態にした後に、口腔内をブラッシングすることと、
を含む、前記〔1〕~〔12〕のいずれか一項に記載の口腔用組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明に従えば、応力を加えることで即座にゾル化し、かつ適切な時間で再度ゲル化する口腔用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、以下で例示する好ましい態様やより好ましい態様などは、「好ましい」や「より好ましい」などの表現にかかわらず適宜相互に組み合わせて使用することができる。また、数値範囲の記載は例示であって、各範囲の上限と下限並びに実施例の数値とを適宜組み合わせた範囲も好ましく使用することができる。さらに、「含有する」又は「含む」などの用語は、「本質的になる」や「のみからなる」と読み替えてもよい。
【0012】
[口腔用組成物]
本発明の口腔用組成物は、口に含ませて口腔内をブラッシングするために使用される組成物である。口腔用組成物とは、ヒトや非ヒト哺乳動物の口腔内全体又は局所的に適用される組成物である。
本発明の口腔用組成物は、チキソトロピー性を有することにより、応力が加えられていない状態ではゲル状であり、応力を加えるとゾル状に変化し、応力を除去すると再びゲル状に変化することを特徴とする。
【0013】
本明細書における「チキソトロピー(thixotropy)」とは、分散系溶液の状態が、応力に応じてゾルとゲルの間で入れ替わる現象を指し、シキソトロピー又は揺変性とも呼称される。本明細書における「チキソトロピー性を有する物質」は、応力に応じてチキソトロピーを生じる物質を指す。一般に、チキソトロピー性を有するゲル状物質に応力を加えると粘度が低下してゾル状(液状)になり、応力を除去すると粘度が上昇して再びゲル状になる。
【0014】
本明細書における「ゲル状態」及び「ゲル状」は、流動性を有する低粘性の状態及び流動性を有しない高粘性の状態を指す。「ゲル状態」及び「ゲル状」における粘度は、JIS Z8803に準拠して25℃における粘度を測定したとき、例えば10~500Pasである。
本明細書における「ゾル状態」、「ゾル状」、及び「液状」は、粘性をほとんど有さず、水に近い流動性を有する状態を指す。「ゾル状態」、「ゾル状」、及び「液状」における粘度は、JIS Z8803に準拠して25℃における粘度を測定したとき、例えば0.01~9Pasである。
【0015】
本発明の口腔用組成物は、ゲル状態からゾル状態への移行に関わる降伏値が0.1~1.0Paであることを特徴とする。降伏値とは、チキソトロピーを有する物質がゲル状態からゾル状態に変化するために必要な応力の最小値である。降伏値は、レオメーター(Viscotester iQ:ThermoFisherScientific社製)を用いて、25℃において0.001~10s-1の範囲でせん断速度を変化させたときのせん断応力を測定することで求めることができる。
本発明の口腔用組成物は、上記した降伏値を有することにより、当該口腔用組成物を入れた容器を手で軽く振ることによりチキソトロピーを生じる。本発明の口腔用組成物は、ゾル状態の口腔用組成物に加えられた応力を除去してから、ゲル状態に変化するまでの時間は、例えば1~30秒である。
【0016】
本発明の口腔用組成物は、粒径の異なる2種類のヘクトライトを含有することを特徴とする。具体的には、口腔用組成物は、(A)20℃の0.3質量%水溶液中で平均粒径が101nm以上500nm以下の範囲にある第1のヘクトライトと、(B)20℃の0.3質量%水溶液中で平均粒径が10nm以上100nm以下の範囲にある第2のヘクトライトと、を含む。
【0017】
本明細書における「ヘクトライト」とは、スメクタイトに分類される粘土鉱物の一種であり、コロイド状ケイ酸ナトリウム・マグネシウムである。ヘクトライトは、水に分散させた溶液がチキソトロピーを示すことから、チキソトロピー性を有する無機鉱物系ゲル化剤として利用されている。ヘクトライトのチキソトロピー性は、ヘクトライトが含有する元素の比率及びヘクトライトの粒径に応じて変化する。
【0018】
(A)第1のヘクトライト
第1のヘクトライトは、第1のヘクトライトを0.3質量%の濃度で水に溶解させて調製した第1のヘクトライトの水溶液中で、20℃にて平均粒径が、好ましくは101~500nm、より好ましくは150~450nm、特に好ましくは200~400nmである。また、第1のヘクトライトは、本発明の口腔用組成物を水で10倍希釈した水溶液中での平均粒径が、好ましくは101~500nm、より好ましくは150~450nm、特に好ましくは200~400nmである。
なお、本明細書における「第1のヘクトライトの平均粒径」は、水溶液中又は口腔用組成物中の第1のヘクトライトの凝集体の平均粒径を指す。第1のヘクトライトは、水溶液中又は口腔用組成物中で複数の分子が凝集した凝集体を形成する。その凝集状態は水溶液中の第1のヘクトライトの濃度及び水溶液のpH等によって変化する。前記凝集体の平均粒径は、動的光散乱法(DLS: Dynamic Light Scattering)により粒子のブラウン運動を測定し、ストークス・アインシュタイン法に基づいて粒子径を算出することにより得られる。
【0019】
第1のヘクトライトは、例えば元素Si、Mg、Li、Na、Fe、及びAlを含む。第1のヘクトライトは、その結晶構造中にSiを23~27%、Mgを16~17%、Liを0.4~0.6%、Naを1.95~2.05%、Feを0.0~0.5%、Alを0.05~0.15%含有する。第1のヘクトライトは、例えばその結晶構造中に、各元素を以下の量で含有する。
Si:25.4% Mg:16.8% Li:0.5%
Na:2.0% Fe:0.0% Al:0.1%
第1のヘクトライトとしては天然に存在するヘクトライトが挙げられるが、上記した特徴を有するように人工的に合成したものであってもよい。
口腔用組成物中の(A)の含有量は、口腔用組成物の全質量に対して、好ましくは0.00028~1.96質量%、より好ましくは0.28~1.68質量%、特に好ましくは0.42~1.4質量%である。
【0020】
(B)第2のヘクトライト
第2のヘクトライトは、第2のヘクトライトを0.3質量%の濃度で水に溶解させて調製した第2のヘクトライトの水溶液中で、20℃にて平均粒径が、好ましくは10~100nm、より好ましくは15~90nm、特に好ましくは20~70nmである。また、第2のヘクトライトは、本発明の口腔用組成物を水で10倍希釈した水溶液中での平均粒径が、好ましくは10~100nm、より好ましくは15~90nm、特に好ましくは20~70nmである。
なお、本明細書における「第2のヘクトライトの平均粒径」は、水溶液中又は口腔用組成物中の第2のヘクトライトの凝集体の平均粒径を指す。第2のヘクトライトは、水溶液中又は口腔用組成物中で複数の分子が凝集した凝集体を形成する。その凝集状態は水溶液中の第2のヘクトライトの濃度及び水溶液のpH等によって変化する。前記凝集体の平均粒径は、第1のヘクトライトの平均粒径と同様に測定する。
第1のヘクトライト及び第2のヘクトライトの平均粒径は、20℃条件下で0.3%水溶液をZetasizer Nano ZS90(マルバーンパナリティカル社製)を用いた動的光散乱システムによる粒子径測定をした場合の値である。
【0021】
第2のヘクトライトは、例えば以下の化学式:
Na+ 0.7[(Si8Mg5.5Li0.3)O20(OH)4-0.7
で表される。
第2のヘクトライトは、例えば元素Si、Mg、Li、Na、Fe、及びAlを含む。第2のヘクトライトは、その結晶構造中にSiを28~30%、Mgを17~18%、Liを0.2~0.4%、Naを2.0~2.1%、Feを0.0~0.5%、Alを0.00~0.05%含有する。第2のヘクトライトは、例えばその結晶構造中に、各元素を以下の量で含有する。
Si:29.4% Mg:17.5% Li:0.3%
Na:2.1% Fe:0.0% Al:0.0%
【0022】
第2のヘクトライトとしては、上記した特徴を有するように人工的に合成したヘクトライトが挙げられ、例えばラポナイト(登録商標)が挙げられる。ラポナイトはヘクトライトを人工合成した化合物であり、円盤状の結晶構造を持つ。ラポナイトは天然ヘクトライトより10倍以上小さい結晶構造を有することから、高いチキソトロピー性を有する。
口腔用組成物中の(B)の含有量は、口腔用組成物の全質量に対して、好ましくは0.01~5.0質量%、より好ましくは1.0~2.5質量%、特に好ましくは1.5~1.9質量%である。
【0023】
本発明の口腔用組成物は、ある態様では、(A)及び(B)を主成分とするゲル化剤と、pH11.5~12.5のアルカリイオン水と、を混合してなるゲル状物質を含む。本発明の口腔用組成物において(A)及び(B)はゲル化剤として機能し、「(A)及び(B)を主成分とする」とは、本発明の口腔用組成物に含まれるゲル化剤の全質量に対して、(A)及び(B)の合計が例えば50%質量以上、好ましくは60%質量以上、特に好ましくは70%以上であることを指す。
pH11.5~12.5のアルカリイオン水は、具体的にはアルカリ性電解水である。アルカリイオン水は例えば特開2000-51682号公報に記載の方法に従って作製することができる。具体的には、電解槽に水を入れ、電解質(例えばNaCl)を添加して陰極と陽極の間に電解電流を通電することにより、アルカリイオン水を作製することができる。pH11.5~12.5のアルカリイオン水としては、例えば、商品名「還元性イオン水S-100」(株式会社エー・アイ・システムプロダクト)が挙げられる。
【0024】
本発明の口腔用組成物は、ある態様では、(A)を主成分とするゲル化剤と、pH11.5~12.5のアルカリイオン水と、を混合してなる(A)含有ゲル状物質を含む。当該態様においては、(A)含有ゲル状物質の含有量は、口腔用組成物の全質量に対して、好ましくは0.01~70質量%、より好ましくは10~60質量%、特に好ましくは15~50質量%である。また、(A)含有ゲル状物質の含有量を1質量部としたとき、(B)の含有量は、好ましくは0.00014質量部以上500質量部以下、より好ましくは0.017質量部以上0.25質量部以下、特に好ましくは0.03質量部以上0.127質量部以下である。
(A)含有ゲル状物質は、商品名「還元性チキソトロピー原料GE-100」(株式会社エー・アイ・システムプロダクト)として販売されている。GE-100は、(A)をGE-100の全質量に対して2.8質量%の量で含有する。
なお、本発明の口腔用組成物は、(B)及びpH11.5~12.5のアルカリイオン水を混合してなるゲル状物質に、(A)を混合して製造することも当然可能であり、(A)及び(B)の混合物にpH11.5~12.5のアルカリイオン水を混合して製造することも当然可能である。
【0025】
本発明の口腔用組成物において、(A)は、口腔用組成物がゾル状からゲル状になるまでの間、数秒間ゾル状態を維持する機能を有する。一方で(B)は、口腔用組成物に高いチキソトロピー性を付与することにより、口腔用組成物がゾル状からゲル状になるまでの間が長くなりすぎないようにする機能を有する。
【0026】
(C)ポリカルボン酸
本発明の口腔用組成物は、(C)ポリカルボン酸をさらに含むことを特徴とする。
本明細書における「ポリカルボン酸」とは、2以上のカルボキシル基を有する分子を指す。特定の理論に拘束されないが、ポリカルボン酸はヘクトライトの粒子をカルボキシル基により架橋するため、口腔用組成物のゲル化及びゾル化の速度に影響を与えると考えられる。即ち、ポリカルボン酸を口腔用組成物に適切な量で配合させることで、口腔用組成物ンのゾル化とゲル化の間の変化にかかる時間をより適切な時間に調節可能である。このような機能を有するポリカルボン酸としては、好ましくは分子量90~1000、より好ましくは100~500、特に好ましくは150~200である。例えばクエン酸、グルタミン酸、及び酒石酸が挙げられる。
口腔用組成物中の(C)の含有量は、口腔用組成物の全質量に対して、好ましくは0.001~1質量%、より好ましくは0.005~0.1質量%、特に好ましくは0.05~0.06質量%である。
【0027】
その他の殺菌・抗菌成分
本発明の口腔用組成物には、上記(A)、(B)、及び(C)に加え、必要に応じて口腔用組成物に通常用いられる殺菌・抗菌成分を含有させることができる。
その他の殺菌・抗菌成分としては、例えば、カチオン性殺菌剤、ノニオン性殺菌剤、両性殺菌剤などを使用することができる。カチオン性殺菌剤としては、塩化セチルピリジニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルピリジニウムなどの第四級アンモニウム塩;グルコン酸アレキシジン、塩酸アレキシジン、酢酸アレキシジン、塩酸クロルヘキシジン、酢酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジンなどのビグアニド系殺菌剤などのカチオン性殺菌剤などを挙げることができる。ノニオン性殺菌剤としては、例えば、フェノール系殺菌剤であるイソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、ヒノキチオール、フェノール、チモール、オイゲノール、ビスフェノールなどを挙げることができる。両性殺菌剤としては、ドデシルジアミノエチルグリシンなどをあげることができる。これらの抗菌成分は、1種類のみで用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。その他の殺菌・抗菌成分の配合量は、当該口腔用組成物の全質量を基準として、一般的に0.001質量%~10質量%である。
【0028】
任意成分
本発明の口腔用組成物には、必要に応じて口腔用組成物に通常用いられる任意成分を含有させることができる。任意成分は、例えば、界面活性剤、研磨剤、増粘剤、湿潤剤、溶剤、甘味剤、香料、冷感剤、pH調整剤、防腐剤、着色剤、懸濁剤、機能成分、矯味成分などが挙げられる。なお、本発明の口腔用組成物を研磨剤無配合の口腔用組成物に調製することもできる。これらの任意成分は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択することができ、また、任意成分を適当な配合量で配合することができる。これらの任意成分は、1つの化合物が複数の特徴(例えば、香料と冷感剤)を有していても良い。
【0029】
界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、N-ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、N-アシルグルタミン酸塩、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体、アルキルグリコシド類、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキルジメチルアミンオキシド、ラウリルエタノールアマイド、ココイルサルコシン酸ナトリウム、N-ラウロイルメチルタウリンナトリウム液などが挙げられる。界面活性剤の配合量は、当該口腔用組成物の全質量を基準として、一般的に0.01質量%~10質量%である。
【0030】
研磨剤としては、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、第2リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、不溶性メタリン酸カルシウム、含水ケイ酸、無水ケイ酸、二酸化チタン、非晶質シリカ、結晶質シリカ、アルミノシリケケート、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、レジンなどが挙げられる。研磨剤の配合量は、当該口腔用組成物の全質量を基準として、一般的に0.01質量%~50質量%である。
増粘剤としては、例えば、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウムなどのアルカリ金属アルギネート、アルギン酸プロピレングリコール、キサンタンガム、トラガカントガム、アラビアガムなどのガム類、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドンなどの合成増粘剤、シリカゲル、アルミニウムシリカゲル、ビーガムなどの無機増粘剤などが挙げられる。増粘剤の配合量は、当該口腔用組成物の全質量を基準として、一般的に0.01質量%~30質量%である。
湿潤剤としては、例えば、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリトール、マルチトール、ラクチトールなどの多価アルコールが挙げられる。湿潤剤の配合量は、当該口腔用組成物の全質量を基準として、一般的に0.01質量%~99質量%である。
【0031】
溶剤としては、例えば、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコールなどの有機溶剤、水などが挙げられる。溶剤の配合量は、当該口腔用組成物の全質量を基準として、一般的に0.01質量%~99質量%である。
甘味剤としては、例えば、パラチニット、アスパルテーム、サッカリンナトリウム、アセスルファームカリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、グリチルリチン、ペリラルミン、タウマチン、アスパラチルフェニルアラニルメチルエステル、ρ-メトキシシンナミックアルデヒド、スクラロース、キシリトール、ステビアなどが挙げられる。甘味剤の配合量は、当該口腔用組成物の全質量を基準として、一般的に0.001質量%~10質量%である。
香料としては、例えば、ストロベリーフレーバー、アップルフレーバーなどの調合香料、テルペノイド系精油、フェニルプロパノイド系精油などが挙げられる。香料の配合量は、当該口腔用組成物の全質量を基準として、一般的に0.001質量%~5質量%である。
冷感剤としては、例えば、N-エチル-p-メンタン-3-カルボキサミド、エチル-3-(p-メンタン-カルボキサミド)アセテート、N-(4-シアノメチルフェニル)-p-メンタンカルボキサミドなどが挙げられる。冷感剤の配合量は、当該口腔用組成物の全質量を基準として、一般的に0.001質量%~5質量%である。
pH調整剤としては、リン酸、パントテン酸、リンゴ酸、ピロリン酸、乳酸、酒石酸、グリセロリン酸、酢酸、硝酸、ケイ酸、クエン酸、メタリン酸、ポリリン酸及びこれらの化学的に可能な塩、並びに水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。pH調整剤の配合量は、当該口腔用組成物の全質量を基準として、一般的に0.001質量%~20質量%である。
【0032】
防腐剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル類、安息香酸及びその塩、サリチル酸及びその塩、ソルビン酸及びその塩、フェノキシエタノール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシンなどが挙げられる。防腐剤の配合量は、当該口腔用組成物の全質量を基準として、一般的に0.001質量%~10質量%である。
着色剤としては、例えば、青色1号、緑色3号、黄色4号、赤色105号などの色素、二酸化チタン、酸化亜鉛、グンジョウなどの顔料が挙げられる。着色剤の配合量は、当該口腔用組成物の全質量を基準として、一般的に0.01質量%~10質量%である。
懸濁剤としては、例えば、オリーブ油、ツバキ油、ヒマシ油などの油脂、及びこれらの油脂を含むエマルションなどが挙げられる。懸濁剤の配合量は、当該口腔用組成物の全質量を基準として、一般的に0.001質量%~5質量%である。
機能成分としては、例えば、グリチルリチン酸及びその塩、グリチルレチン酸、ピリドキシン塩酸塩、ε-アミノカプロン酸、アラントイン、塩化ナトリウム、アスコルビン酸及びその塩、アスコルビン酸誘導体、トコフェロール酢酸エステル、ゼオライト、フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、硝酸カリウム、アズレンスルホン酸及びその塩、乳酸アルミニウム、並びにトラネキサム酸などが挙げられる。機能成分の配合量は、当該口腔用組成物の全質量を基準として、一般的に0.001質量%~10質量%である。
矯味成分としては、例えば、チャエキス、チャ乾留液、グルタミン酸ナトリウムなどが挙げられる。矯味成分の配合量は、当該口腔用組成物の全質量を基準として、一般的に0.001質量%~5質量%である。
【0033】
[製造方法]
本発明の口腔用組成物の製造方法は、(A)第1のヘクトライト、(B)第2のヘクトライト、及び(C)ポリカルボン酸を混合するステップを含む。各成分の混合の順序は特に限定されず、1成分ずつ順に混合しても良いし、すべての成分を同時に混合しても良い。
本発明の口腔用組成物は、前記混合するステップのほか、口腔用組成物の製造方法において通常用いられる方法に従ってその他の殺菌・抗菌成分及び任意成分を配合するステップによって調製することができる。
【0034】
[口腔用組成物の用途]
本発明の口腔用組成物は、口腔内のブラッシングに用いられる。ブラッシングは少なくとも、
(1)口腔用組成物に応力を加えてゾル状態にすることと、
(2)ゾル状態の口腔用組成物を口腔内に導入することと、
(3)口腔用組成物に対する応力を除去してゲル状態にした後に、口腔内をブラッシングすることと、を含む。
工程(1)では、口腔用組成物を充填した容器を手で数回振るなどして口腔用組成物に応力を加え、口腔用組成物をゲル状からゾル状に変化させる。工程(2)では、口腔用組成物がゾル状態のうちに容器からコップに移すなどしてから口に含ませることで口腔内に導入する。この時、導入した口腔用組成物によって口腔内を軽くすすぐことで、口腔内の隅々まで口腔用組成物を行き渡らせることができる。工程(3)では、口腔用組成物がゲル状になるまで数秒間、好ましくは1~30秒間、口腔用組成物を動かさずに保持した後に、歯ブラシなどを用いて歯をブラッシングする。
【実施例0035】
以下、本発明の口腔用組成物の具体的な実施例について説明するが、当該実施例は本発明の範囲を限定する意図ではないことを確認的に明記しておく。
【0036】
[試験例1]ゲル状物質の製造
本発明の口腔用組成物(ゲル状物質)を製造するための各成分の配合を確認した。
表1に記載の実施例並びに表2及び3に記載の比較例の組成物を調製した。表中の(A)第1のヘクトライトには、(A)とpH11.5~12.5のアルカリイオン水とを含んでなるGE-100((A)含有ゲル状物質、株式会社エー・アイ・システムプロダクト製)を使用した。(B)第2のヘクトライトには、ラポナイト(BYK Additives Limited社製)を使用した。(C)ポリカルボン酸には、クエン酸(昭和化工株式会社製)、グルタミン酸(味の素株式会社製)、及び酒石酸(富士フィルム和光純薬株式会社製)を使用した。
【0037】
(A)及び(B)の代替原料として、チキソトロピー性原料であり、ヘクトライトと同様にスメクタイトに分類されるベントナイトを使用した。(C)の代替原料として、無機酸であるリン酸を使用した。
調製した口腔用組成物15g、開口部が直径3cmの円錐台型容器(プラスチックボトル)に充填し、25℃で3日間静置後、倒立させ、充填した組成物が落下するまでに要する時間を測定した。測定された時間を下記の評価基準に従い評価した。
◎(最良) :60秒以上
○(良) :30秒以上60秒未満
△(可) :10秒以上30秒未満
×(不可) :10秒未満
【0038】
[試験例2]ゾル化容易性
本発明の口腔用組成物が容易にゾル化することを確認した。
表1に記載の実施例並びに表2及び3に記載の比較例の組成物を容器に充填し、1秒間に往復1回垂直方向に30cm振った。ゲル状の口腔用組成物がゾル状に変化するまでに振った回数を、下記の評価基準に従い評価した。
◎(最良) :3~5回
○(良) :2回又は6~7回
△(可) :1回又は8~9回
×(不可) :1回未満又は10回以上
【0039】
[試験例3]ゲル化速度及びゲル硬さ
本発明の口腔用組成物が、ゾル状態から適切な速度でゲル化し、かつゲル状態で適切な硬さを有することを確認した。
表1に記載の実施例並びに表2及び3に記載の比較例の組成物を完全にゾル化させ、各組成物0.5gを地面に対して水平なガラス板の表面に円形になるように載せた。30秒間静置後、ガラス板を地面に対して垂直になるように傾けた。1分間静置後、ガラス板上に垂れた組成物の長さを測定した。同一の試験を3回実施し、3回の試験の平均値を求めて測定値とした。測定値を下記の評価基準に従い評価した。
◎(最良) :3cm以上7cm未満
○(良) :2cm以上3cm未満又は7cm以上11cm未満
△(可) :1cm以上又は2cm未満又は11cm以上15cm未満
×(不可) :1cm未満又は15cm以上
【0040】
実施例及び比較例に対する評価結果を、表1~3に示す。
なお、表中の各成分の配合量の単位は、組成物全体を100質量%とした場合の質量%である。
表中の「ゲル状物質の製造」の欄の数値は、実際に測定された時間(秒)を示す。「ゾル化容易性」の欄の数値は、ゾル化するまでに実際に振った回数(回)を示す。「ゲル化速度及びゲル硬さ」の欄の数値は、1分間静置後にガラス板上に垂れた組成物の長さ(cm)を示す。
実施例及び比較例の組成物において、グリセリンを湿潤剤として使用し、水酸化ナトリウムをpHを中性に揃えるためのpH調整剤として使用した。
【0041】
[試験例4]第1のヘクトライトの平均粒径
実施例1の口腔用組成物に含まれる、第1のヘクトライトの平均粒径を測定した。平均粒径は、20℃条件下で実施例1の口腔用組成物を水で10倍希釈した溶液1mLの第1のヘクトライトの凝集体の粒径を測定し、その平均値を算出することで得た。粒径の測定には、Zetasizer Nano ZS90(マルバーンパナリティカル社製)を用いた動的光散乱システムを用いた。
第1のヘクトライトの平均粒径は、324±180nmであった。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
実施例1及び比較例1~9より、(A)、(B)、及び(C)を配合することにより、手で振って応力を加えることで容易にゾル化し、応力を除去した後に適切な時間で適切な硬度を有するゲル状物質に変化する口腔用組成物(ゲル状物質)の調製が達成された。
実施例1並びに比較例10及び11より、ヘクトライト((A)含有組成物中の第1のヘクトライト及び(B))の合計の配合量を一定として、(A)含有ゲル状物質又は(B)のいずれか一方のみで構成した場合には、上記した物性が達成されないことが示された。
比較例12及び13より、比較例10及び11の組成物のpHを実施例1の組成物のpHと揃えた場合にも、上記した物性が達成されないことが示された。即ち、本発明の口腔組成物の物性はpHによるものではなく、(A)及び(B)を配合することにより達成されることが明らかとなった。
【0046】
実施例1~3より、(C)成分としてはクエン酸、グルタミン酸、及び酒石酸が好ましいことが示された。
実施例1及び4より、(A)含有ゲル状物質の含有量は、口腔用組成物の全質量に対して15~50質量%であることが好ましいことが示された。
実施例1、5、及び6より、(B)成分の含有量は、口腔用組成物の全質量に対して1.5~1.9質量%であることが好ましいことが示された。
実施例1及び7より、(C)成分の含有量は、口腔用組成物の全質量に対して0.05~0.06質量%であることが好ましいことが示された。
実施例1~9より、(A)含有ゲル状物質の合計の含有量を1質量部としたとき、(B)成分の含有量が0.034質量部以上0.127質量部以下であることが好ましいことが示された。
【0047】
[処方例]
(A)、(B)、及び(C)とともに、任意成分を混合して調製した本発明の口腔用組成物の処方例を示す。配合量の単位は、処方剤全体を100質量%とした場合の質量%である。
以下に示すジェル状歯磨剤、練歯磨剤、及び非水練歯磨剤は、応力を加えない状態でゲル状であり、容器を振って応力を加えるとゾル状になり、応力を除去すると再ゲル化することが確認された。
また、使用者がこれらの歯磨剤をゾル状にした後、口に含ませて再ゲル化させることにより、口腔内を容易にブラッシング可能であることが確認された。
【0048】
[処方例1]ジェル状歯磨剤
GE-100 15.0
合成ケイ酸Na・Mg 1.7
クエン酸 0.05
グルタミン酸 0.05
酒石酸 0.05
ベンザルコニウム塩化物 0.01
ベンゼトニウム塩化物 0.01
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.1
ヒドロキシエチルセルロース 0.1
70%ソルビット液 10.0
フッ化ナトリウム 0.1
濃グリセリン 30.0
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
イソプロピルメチルフェノール 0.1
ラウロイルサルコシンナトリウム 0.1
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.5
グリセリン脂肪酸エステル 0.5
ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
香料 1.0
精製水 残
合計 100%
【0049】
[処方例2]練歯磨剤
GE-100 15.0
合成ケイ酸Na・Mg 1.7
クエン酸 0.05
グルタミン酸 0.05
酒石酸 0.05
ベンザルコニウム塩化物 0.01
ベンゼトニウム塩化物 0.01
無水ケイ酸 7.0
含水ケイ酸 3.0
リン酸水素カルシウム 1.0
酸化チタン 0.3
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.1
フッ化ナトリウム 0.1
サッカリンナトリウム 0.1
ラウリル硫酸ナトリウム 1.0
ラウロイルメチルタウリンナトリウム 0.5
イソプロピルメチルフェノール 0.1
ピリドキシン塩酸塩 0.1
70%ソルビット液 10
濃グリセリン 20
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 1.0
香料 1.0
精製水 残
合計 100%
【0050】
[処方例3]非水練歯磨剤
GE-100 15.0
合成ケイ酸Na・Mg 1.7
クエン酸 0.05
グルタミン酸 0.05
酒石酸 0.05
ベンザルコニウム塩化物 0.01
ベンゼトニウム塩化物 0.01
無水ケイ酸 10.0
含水ケイ酸 5.0
リン酸水素カルシウム 1.0
酸化チタン 1.0
アルギン酸プロピレングリコール 0.1
ヒドロキシエチルセルロース 0.1
カルボキシメチルセルロースナトリウム 0.1
ヒドロキシプロピルセルロース 0.1
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.1
ポリビニルピロリドン 1.0
水酸化ナトリウム 0.3
フッ化ナトリウム 0.1
サッカリンナトリウム 0.1
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5
ラウロイルメチルタウリンナトリウム 0.5
イソプロピルメチルフェノール 0.1
ピリドキシン塩酸塩 0.1
濃グリセリン 20.0
グリセリン脂肪酸エステル 0.5
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 1.0
香料 1.0
プロピレングリコール 残
合計 100%