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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114314
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】座屈拘束ブレース
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20240816BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20240816BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20240816BHJP
   F16F 7/12 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
E04H9/02 311
E04B1/58 G
E04B1/58 D
F16F15/02 Z
F16F7/12
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019996
(22)【出願日】2023-02-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-31
(71)【出願人】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 厚
(72)【発明者】
【氏名】脇田 直弥
(72)【発明者】
【氏名】中村 泰教
(72)【発明者】
【氏名】岸原 洋也
(72)【発明者】
【氏名】川村 典久
(72)【発明者】
【氏名】中村 博志
【テーマコード(参考)】
2E125
2E139
3J048
3J066
【Fターム(参考)】
2E125AA33
2E125AB16
2E125AB17
2E125AC01
2E125AC16
2E125AG03
2E125AG04
2E125AG12
2E125AG32
2E125AG57
2E125BC09
2E125BE08
2E125CA05
2E139AA01
2E139AC19
2E139BA06
2E139BD14
3J048AA06
3J048BC09
3J048CB30
3J048EA38
3J066AA30
3J066BA03
3J066BB01
3J066BC03
3J066BF11
3J066BG01
(57)【要約】
【課題】塑性化部の端部における応力集中を回避しつつ、塑性化部の長さを確保して、芯材の破断までのエネルギー吸収能力を向上させること。
【解決手段】座屈拘束ブレースは、芯材と、管体とを備え、芯材は、主芯材と、副芯材とを備え、芯材の接続部は、主芯材の端部で構成される主接続部と、副芯材の端部で構成される副接続部とを備え、主芯材は塑性化部の板幅よりも大きな板幅に変化して主接続部に連続する一対の主拡幅部を備え、副芯材は副接続部に向かい板幅が大きくなるよう板幅が変化する副拡幅部を備え、主拡幅部と塑性化部との境界である主芯材応力集中位置と、副拡幅部の塑性化部側の端部の長手方向における位置である副芯材応力集中位置とが、長手方向で副芯材応力集中位置が主芯材応力集中位置よりも外方に位置するように異なる位置に設定され、かつ、主芯材応力集中位置と副芯材応力集中位置との離間距離が塑性化部の板幅よりも短い。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に接続部を備えた長尺状の芯材と、
前記接続部の双方が突出した状態で前記芯材が挿通された管体と、
を備え、
前記芯材は、
長手方向の中央部に塑性化部が配置されている板状の主芯材と、
前記主芯材の長手方向の少なくとも両端に配置されかつ前記主芯材の板幅方向の中央において前記主芯材に直交する姿勢で接合される板状の副芯材と、を備え、
前記接続部は、前記主芯材の端部で構成される主接続部と、前記副芯材の端部で構成される副接続部と、を備える座屈拘束ブレースであって、
前記主芯材は、前記塑性化部の両端部に隣接して配置され前記塑性化部の板幅よりも大きな板幅に変化して前記主接続部に連続する一対の主拡幅部を備え、
前記副芯材は、前記副接続部に連続する位置に設けられ、前記副接続部に向かい板幅が大きくなるよう板幅が変化する副拡幅部を備え、
前記主拡幅部と前記塑性化部との境界である主芯材応力集中位置と、前記副拡幅部の前記塑性化部側の端部の長手方向における位置である副芯材応力集中位置とが、長手方向で前記副芯材応力集中位置が前記主芯材応力集中位置よりも外方に位置するように異なる位置に設定され、かつ、前記主芯材応力集中位置と前記副芯材応力集中位置との離間距離が前記塑性化部の板幅よりも短い、座屈拘束ブレース。
【請求項2】
前記主芯材と前記副芯材とを接合する溶接部、をさらに備え、
前記副芯材は、長手方向で前記塑性化部と重複する部分を有し、
前記溶接部は、長手方向で分散して配置された複数の部分溶接部を有し、
前記複数の部分溶接部のうち長手方向で前記主芯材応力集中位置が位置する特定部分溶接部は、前記主芯材応力集中位置の長手方向の両側に延在するように配置されている、請求項1に記載の座屈拘束ブレース。
【請求項3】
前記主芯材と前記副芯材とを接合する溶接部、をさらに備え、
前記副芯材は、長手方向で前記塑性化部と重複する部分を有さず、
前記溶接部は、前記副拡幅部の前記塑性化部側の端部を囲うように配置された回し溶接部を有し、
前記回し溶接部の熱影響部は、長手方向で前記塑性化部から前記接続部側に離間している、請求項1に記載の座屈拘束ブレース。
【請求項4】
前記主芯材応力集中位置における前記主芯材の板幅をL1とし、前記副芯材応力集中位置における前記主芯材の板幅をL2としたとき、L1×1.2<L2である、請求項1~3のいずれか一項に記載の座屈拘束ブレース。
【請求項5】
前記主芯材応力集中位置における前記主芯材の板幅をL1とし、前記主芯材応力集中位置における前記主芯材の板幅方向の両端を、前記副芯材応力集中位置を経由して結ぶ屈曲線の長さをL3としたとき、1.2≦L3/L1≦1.4である、請求項1~3のいずれか一項に記載の座屈拘束ブレース。
ただし、L3は、以下の長さl1とl2とl3との合計である。
l1:前記主芯材の板厚方向に沿って見て、前記主芯材応力集中位置における前記主芯材の板幅方向の一方側の端と、前記副芯材応力集中位置における前記副芯材の、前記主芯材の板幅方向における一方側の端とを結ぶ直線の長さ
l2:前記主芯材の板厚方向に沿って見て、前記副芯材応力集中位置における前記副芯材の、前記主芯材の板幅方向における一方側の端と他方の端とを結ぶ直線の長さ
l3:前記主芯材の板厚方向に沿って見て、前記副芯材応力集中位置における前記副芯材の、前記主芯材の板幅方向における他方側の端と、前記主芯材応力集中位置における前記主芯材の板幅方向の他方側の端とを結ぶ直線の長さ
【請求項6】
前記主芯材応力集中位置における前記主芯材の板幅方向の一方側の端と他方側の端とを通る直線と、前記主芯材応力集中位置における前記主芯材の板幅方向の一方側の端と前記副芯材応力集中位置における前記副芯材の、前記主芯材の板幅方向における一方側の端とのなす角をθとしたとき、30°<θ<45°である、請求項1~3のいずれか一項に記載の座屈拘束ブレース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座屈拘束ブレースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、構造物の補強材として、座屈拘束ブレースが用いられることがある。座屈拘束ブレースにおいては、軸力を受ける芯材が外周側から拘束部材及び充填材等によって拘束されることで、芯材の長手方向以外の変形や座屈を防止されながら塑性変形する。座屈拘束ブレースを用いることにより、構造物の耐震・制振性能が向上する。
【0003】
特許文献1には、主芯材と、主芯材の両面に沿って配置される一対の拘束部材と、を備える座屈拘束ブレースが開示される。また、主芯材における長手方向の両端部には、補強のためのリブ(副芯材)が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-229572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
座屈拘束ブレースの主芯材は、長手方向の中央に設けられる塑性化部と、長手方向の端部に設けられる主接続部と、塑性化部と主接続部との間に設けられる主拡幅部と、を有する。主拡幅部の板幅は、塑性化部側から主接続部側に向かうに連れ、大きくなっており、塑性化部と主拡幅部との境界には、芯材に引張軸力が作用した場合に応力が集中しやすい。また、リブの端部にも、芯材に引張軸力が作用した場合に応力が集中しやすい。芯材に引張軸力が作用した場合に塑性化部の端部に応力が集中すると、塑性化部の中央部分で変形能にまだ余裕があるような比較的低い軸力が芯材に作用した場合であっても、塑性化部の端部が破断してしまう可能性がある。塑性化部の端部に応力が集中することを抑制するために、リブの端部を、塑性化部と主拡幅部との境界から長手方向で離間させて配置することが考えられる。
【0006】
一方で、構造物に対する座屈拘束ブレースの取付強度を確保するために、主接続部およびリブには、ある程度の長さが必要となる。塑性化部と主拡幅部との境界からリブの端部が離間するほど、芯材に占める塑性化部の長さが短くなる。特許文献1では、塑性化部と主拡幅部との境界と、リブの端部との離間距離が大きく、芯材に占める塑性化部の長さが制限され、芯材の破断までのエネルギー吸収能力が低下してしまう。
【0007】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、塑性化部の端部における応力集中を回避しつつ、塑性化部の長さを確保して、芯材の破断までのエネルギー吸収能力を向上できる座屈拘束ブレースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
<1>本発明の一態様に係る座屈拘束ブレースは、両端に接続部を備えた長尺状の芯材と、前記接続部の双方が突出した状態で前記芯材が挿通された管体と、を備え、前記芯材は、長手方向の中央部に塑性化部が配置されている板状の主芯材と、前記主芯材の長手方向の少なくとも両端に配置されかつ前記主芯材の板幅方向の中央において前記主芯材に直交する姿勢で接合される板状の副芯材と、を備え、前記接続部は、前記主芯材の端部で構成される主接続部と、前記副芯材の端部で構成される副接続部と、を備える座屈拘束ブレースであって、前記主芯材は、前記塑性化部の両端部に隣接して配置され前記塑性化部の板幅よりも大きな板幅に変化して前記主接続部に連続する一対の主拡幅部を備え、前記副芯材は、前記副接続部に連続する位置に設けられ、前記副接続部に向かい板幅が大きくなるよう板幅が変化する副拡幅部を備え、前記主拡幅部と前記塑性化部との境界である主芯材応力集中位置と、前記副拡幅部の前記塑性化部側の端部の長手方向における位置である副芯材応力集中位置とが、長手方向で前記副芯材応力集中位置が前記主芯材応力集中位置よりも外方に位置するように異なる位置に設定され、かつ、前記主芯材応力集中位置と前記副芯材応力集中位置との離間距離が前記塑性化部の板幅よりも短い。
【0009】
主拡幅部と塑性化部との境界である主芯材応力集中位置は、主芯材において、芯材に引張軸力が作用した場合に応力が集中する位置である。副拡幅部の塑性化部側の端部の長手方向における位置である副芯材応力集中位置は、副芯材において、芯材に引張軸力が作用した場合に応力が集中する位置である。主芯材応力集中位置と、副芯材応力集中位置とを、長手方向で異なる位置に設定することで、塑性化部の端部に応力が集中することを防止することができる。この結果、塑性化部の全体が塑性化する前に、塑性化部の端部が破断することが防止できる。また、主芯材応力集中位置と副芯材応力集中位置との離間距離を塑性化部の板幅よりも短くすることで、芯材に占める塑性化部の長手方向の長さを確保することができ、芯材の破断までのエネルギー吸収能力を向上させることができる。
以上より、上記一態様に係る座屈拘束ブレースによれば、塑性化部の端部における応力集中を回避しつつ、塑性化部の長さを確保して、芯材の破断までのエネルギー吸収能力を向上させることができる。
【0010】
<2>上記<1>に係る座屈拘束ブレースでは、前記主芯材と前記副芯材とを接合する溶接部、をさらに備え、前記副芯材は、長手方向で前記塑性化部と重複する部分を有し、前記溶接部は、長手方向で分散して配置された複数の部分溶接部を有し、前記複数の部分溶接部のうち長手方向で前記主芯材応力集中位置が位置する特定部分溶接部は、前記主芯材応力集中位置の長手方向の両側に延在するように配置されている、構成を採用してもよい。
【0011】
溶接部の端部には応力が集中しやすいが、特定部分溶接部を、主芯材応力集中位置の長手方向の両側に延在するように配置することで、主芯材応力集中位置(すなわち、塑性化部の端部)への応力集中の発生を防止することができる。また、特定部分溶接部を、主芯材応力集中位置の長手方向の両側に延在するように配置することで、主芯材応力集中位置における、芯材の断面二次モーメントを向上させることができ、塑性化部の端部が破断することをより効果的に防止することができる。
【0012】
<3>上記<1>に係る座屈拘束ブレースでは、前記主芯材と前記副芯材とを接合する溶接部、をさらに備え、前記副芯材は、長手方向で前記塑性化部と重複する部分を有さず、前記溶接部は、前記副拡幅部の前記塑性化部側の端部を囲うように配置された回し溶接部を有し、前記回し溶接部の熱影響部は、長手方向で前記塑性化部から前記接続部側に離間している、構成を採用してもよい。
【0013】
これにより、回し溶接部を形成するときの熱の影響を、塑性化部が受けることが防止される。したがって、回し溶接部を形成するときの熱の影響による、塑性化部の強度の低下が防止でき、塑性化部の端部の破断をより効果的に防止することができる。
【0014】
<4>上記<1>~<3>のいずれか一つに係る座屈拘束ブレースでは、前記主芯材応力集中位置における前記主芯材の板幅をL1とし、前記副芯材応力集中位置における前記主芯材の板幅をL2としたとき、L1×1.2<L2である、構成を採用してもよい。
【0015】
主芯材応力集中位置における主芯材の板幅L1と、副芯材応力集中位置における主芯材の板幅L2とを上記を満たすよう設定することで、主芯材に塑性化部が塑性化する軸力が作用した場合であっても、主接続部については弾性領域を保つことができる。
【0016】
<5>上記<1>~<4>のいずれか一つに係る座屈拘束ブレースでは、前記主芯材応力集中位置における前記主芯材の板幅をL1とし、前記主芯材応力集中位置における前記主芯材の板幅方向の両端を、前記副芯材応力集中位置を経由して結ぶ屈曲線の長さをL3としたとき、1.2≦L3/L1≦1.4である、構成を採用してもよい。
ただし、L3は、以下の長さl1とl2とl3との合計である。
l1:前記主芯材の板厚方向に沿って見て、前記主芯材応力集中位置における前記主芯材の板幅方向の一方側の端と、前記副芯材応力集中位置における前記副芯材の、前記主芯材の板幅方向における一方側の端とを結ぶ直線の長さ
l2:前記主芯材の板厚方向に沿って見て、前記副芯材応力集中位置における前記副芯材の、前記主芯材の板幅方向における一方側の端と他方の端とを結ぶ直線の長さ
l3:前記主芯材の板厚方向に沿って見て、前記副芯材応力集中位置における前記副芯材の、前記主芯材の板幅方向における他方側の端と、前記主芯材応力集中位置における前記主芯材の板幅方向の他方側の端とを結ぶ直線の長さ
【0017】
<6>上記<1>~<5>のいずれか一つに係る座屈拘束ブレースでは、前記主芯材応力集中位置における前記主芯材の板幅方向の一方側の端と他方側の端とを通る直線と、前記主芯材応力集中位置における前記主芯材の板幅方向の一方側の端と前記副芯材応力集中位置における前記副芯材の、前記主芯材の板幅方向における一方側の端とのなす角をθとしたとき、30°<θ<45°である、構成を採用してもよい。
【0018】
これにより、主芯材応力集中位置と副芯材応力集中位置との離間距離の確保(すなわち、塑性化部の端部への応力集中の防止)と、芯材に占める塑性化部の長さの確保との双方を、より確実に両立させることができる。また、主芯材に塑性化部が塑性化する軸力が作用した場合であっても、主接続部については弾性領域を保つことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、塑性化部の端部における応力集中を回避しつつ、塑性化部の長さを確保して、芯材の破断までのエネルギー吸収能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態に係る座屈拘束ブレースを、主芯材の板厚方向に沿って見た図である。
図2】第1実施形態に係る座屈拘束ブレースを、主芯材の板幅方向に沿って見た図である。
図3】第1実施形態に係る座屈拘束ブレースの部分拡大図である。
図4】第2実施形態に係る座屈拘束ブレースを、主芯材の板厚方向に沿って見た図である。
図5】第2実施形態に係る座屈拘束ブレースを、主芯材の板幅方向に沿って見た図である。
図6】第2実施形態に係る座屈拘束ブレースの部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第1実施形態>
以下、図1~3を参照し、本発明の第1実施形態に係る座屈拘束ブレース1を説明する。
座屈拘束ブレース1は、構造物に取り付けられる。座屈拘束ブレース1は、例えば、建物における柱と梁とからなる構造物を補強するために用いられる。
【0022】
座屈拘束ブレース1は、芯材2と、管体30(拘束部材)と、充填材31と、アンボンド材32と、を備える。
【0023】
芯材2は、長手方向に延びる。芯材2における長手方向の端部は、構造物と接続される接続部2aである。すなわち、芯材2は、長手方向の両端部にそれぞれ位置する一対の接続部2aを有する。座屈拘束ブレース1は、一対の接続部2aが構造物に接続されることで、構造物に取り付けられる。
【0024】
芯材2は、主芯材10と、副芯材20と、を備える。主芯材10は、鋼板により構成された平板である。主芯材10は、長手方向に延びる。副芯材20は、鋼板により構成された板状の部材である。副芯材20は、主芯材10における長手方向の少なくとも両端に設けられる。副芯材20は、主芯材10と直交するよう設けられる。副芯材20は、主芯材10を補強し、主芯材10が板厚方向に折れ曲がることを防ぐ。
以下、座屈拘束ブレース1における各方向について説明する際、芯材2(主芯材10)の長手方向を、第1方向D1と呼称する。主芯材10の板幅方向を、第2方向D2と呼称する。すなわち、第2方向D2は、副芯材20の板厚方向でもある。主芯材10の板厚方向を、第3方向D3と呼称する。すなわち、第3方向D3は、副芯材20の板幅方向でもある。第1方向D1と、第2方向D2と、第3方向D3とは、互いに直交する。また、第1方向D1、第2方向D2及び第3方向D3について、芯材2に向かう側を内側、芯材2から離れる側を外側と呼称する。
【0025】
図1は、座屈拘束ブレース1を、第3方向D3に沿って見た図である。図2は、座屈拘束ブレース1を、第2方向D2に沿って見た図である。図3は、図1の部分拡大図である。
図1に示されるように、主芯材10は、塑性化部11と、一対の主接続部12と、一対の主拡幅部13と、を備えている。
【0026】
塑性化部11は、主芯材10における第1方向D1の中央に位置している。塑性化部11の断面形状は、第1方向D1において一定である。
一対の主接続部12は、主芯材10における第1方向D1の両端部にそれぞれ位置している。すなわち、主接続部12は、主芯材10における第1方向D1の端部で構成される。
【0027】
主接続部12の板幅(主接続部12の第2方向D2の長さ)は、塑性化部11の板幅(塑性化部11の第2方向D2の長さ)よりも大きい。また、塑性化部11の第1方向D1の長さは、主接続部12の第1方向D1の長さよりも長い。
主芯材10における第1方向D1の中央が塑性化部11であり、第1方向D1の端部が主接続部12であることで、主芯材10における第1方向D1の中央(すなわち、塑性化部11)が塑性化し易い領域となり、塑性化領域が前記中央に限定され、主芯材10における第1方向D1の両端部(すなわち、主接続部12)は、弾性領域を保つ。
【0028】
主拡幅部13は、塑性化部11と主接続部12との間に配置される。すなわち、一対の主拡幅部13は、塑性化部11における第1方向D1の両端部に隣接して配置され、一対の主接続部12にそれぞれ連続する。
主拡幅部13の板幅(主拡幅部13の第2方向D2の長さ)は、第1方向D1に沿って変化する。主拡幅部13の板幅は、塑性化部11側から主接続部12側に向かうに連れ、大きくなる。主拡幅部13は、主芯材10において、第1方向D1に垂直な断面形状が変化する部分である。
【0029】
図3に示されるように、主拡幅部13と塑性化部11との境界を、主芯材応力集中位置P1という。主芯材応力集中位置P1における主芯材10の第2方向D2の一方側の端を、端p11といい、主芯材応力集中位置P1における主芯材10の第2方向D2の他方側の端を、端p12という。主芯材応力集中位置P1は、主芯材10において、第1方向D1に垂直な断面形状が変化し始める位置であり、芯材2に引張軸力が作用した場合に応力が集中しやすい位置である。
【0030】
塑性化部11における第1方向D1の中央には、ズレ止め用突起16が設けられる。一対のズレ止め用突起16が、塑性化部11における第2方向D2の両側面から、第2方向D2の外側にそれぞれ突出するよう設けられる。
【0031】
副芯材20は、主芯材10における第1方向D1の少なくとも両端に設けられる。本実施形態では、副芯材20は、主芯材10の一対の主接続部12に設けられ、第1方向D1で塑性化部11と重複する部分を有さない。
【0032】
副芯材20は、主芯材10における表裏面(すなわち、第3方向D3を向く面)に設けられる。副芯材20は、主芯材10における第2方向D2の中央に設けられる。副芯材20は、主芯材10と直交するよう設けられる。すなわち、主芯材10及び副芯材20は、断面十字状を呈している。
副芯材20は、主芯材10における第2方向D2の中央において、主芯材10に直交する姿勢で接合される。副芯材20は、主芯材10に溶接により接合される。
【0033】
図2に示されるように、副芯材20は、副拡幅部21と、副接続部22と、を備えている。
副接続部22は、副芯材20における第1方向D1の外側の端部で構成される。
副拡幅部21は、副芯材20よりも、第1方向D1の内側に位置している。副拡幅部21は、副接続部22に、第1方向D1の内側から連続する。副拡幅部21は、主拡幅部13よりも、第1方向D1の外側に位置する。図2および図3に示されるように、副拡幅部21は、第1方向D1の内側(塑性化部11側)の端部である内側端部21a(端部)を有する。
【0034】
副拡幅部21の板幅(副拡幅部21の第3方向D3の長さ)は、第1方向D1に沿って変化する。副拡幅部21の板幅は、内側端部21aから、副接続部22側に向かうに連れ、大きくなる。副拡幅部21は、副芯材20において、第1方向D1に垂直な断面形状が変化する部分である。
【0035】
図3に示されるように、副拡幅部21の内側端部21aの第1方向D1における位置を、副芯材応力集中位置P2という。副芯材応力集中位置P2における副芯材20の第2方向D2の一方側の端(すなわち、内側端部21aにおける第2方向D2の一方側の端)を、端p21という。副芯材応力集中位置P2における副芯材20の第2方向D2の他方側の端(すなわち、内側端部21aにおける第2方向D2の他方側の端)を、端p22という。副芯材応力集中位置P2は、副芯材20において、第1方向D1に垂直な断面形状が変化し始める位置であり、芯材2に引張軸力が作用した場合に応力が集中しやすい位置である。
【0036】
芯材2の接続部2aは、主芯材10の主接続部12と、副芯材20の副接続部22と、により構成される。主接続部12及び副接続部22にはそれぞれ、図示しないボルト孔が開設されている。座屈拘束ブレース1は、ボルト孔に差し込まれる図示しないボルトによって、構造物に取り付けられる。
【0037】
管体30は筒状である。例えば、管体30は、角筒形の鋼管である。なお、管体30は、円筒形の鋼管であってもよい。
【0038】
管体30は、芯材2の外周を覆う。管体30の第1方向D1の長さは、芯材2全体の第1方向D1の長さよりも短い。したがって、芯材2の一対の接続部2aは、管体30から外側に突出している。なお、接続部2aの一部が管体30から外側に突出していてもよく、接続部2aの全体が管体30から外側に突出していてもよい。
【0039】
充填材31は、芯材2と管体30との間に充填される。例えば、充填材31の材質は、コンクリートやモルタルである。管体30の端部から充填材31が漏れ出ることを防止するために、管体30の両端開口は不図示の蓋により塞がれている。
なお、充填材31と主拡幅部13との間には、地震等で芯材2に長手方向の圧縮力が加わったときに充填材31と主拡幅部13との干渉を防止するための、不図示のクッション材が設けられていてもよい。充填材31とズレ止め用突起16との間には、地震等で芯材2に長手方向の圧縮力が加わったときに充填材31とズレ止め用突起16との干渉を防止するための、不図示のクッション材が設けられていてもよい。充填材31と副拡幅部21との間には、地震等で芯材2に長手方向の圧縮力が加わったときに充填材31と副拡幅部21との干渉を防止するための、不図示のクッション材が設けられていてもよい。これらクッション材は、省略されてもよい。
【0040】
アンボンド材32は、芯材2のうち、管体30の内側に配置される部分を覆う。アンボンド材32は、芯材2と充填材31との間に設けられる。アンボンド材32は、芯材2と充填材31とが互いに付着することを防止する。アンボンド材32により、芯材2は、充填材31に対して相対移動可能となっている。
【0041】
アンボンド材32が設けられることにより、充填材31は、芯材2の軸力が管体30に伝達しないように、芯材2を管体30に対して第1方向D1に相対移動可能に保持する。管体30及び充填材31により、芯材2の第1方向D1を除く方向への変形が規制される。
【0042】
このとき、ズレ止め用突起16は、アンボンド材32により覆われない。すなわち、ズレ止め用突起16は、アンボンド材32から露出する。これにより、ズレ止め用突起16は、充填材31に対して相対移動不能となる。ズレ止め用突起16は、主芯材10の中央部における、主芯材10の、充填材31に対する位置ずれを防止する。
【0043】
主芯材10と副芯材20との接合部分には、溶接部34が形成される。図3に示されるように、溶接部34は、副拡幅部21の内側端部21aを囲うように配置された回し溶接部34aを有する。
ここで、主芯材10と副芯材20とを溶接する(すなわち、溶接部34を形成する)とき、主芯材10および副芯材20は熱による影響を受ける。主芯材10および副芯材20において、溶接部34を形成するときに熱の影響を受ける部分を、溶接部34の熱影響部という。回し溶接部34aは、回し溶接部34aの熱影響部が、第1方向D1で塑性化部11から接続部2a側に離間するように、設けられている。
【0044】
図3を参照して、主芯材応力集中位置P1および副芯材応力集中位置P2について詳細に説明する。
副芯材応力集中位置P2は、主芯材応力集中位置P1と第1方向D1において異なる位置に設定される。副芯材応力集中位置P2は、主芯材応力集中位置P1よりも第1方向D1の外側に位置するよう設定される。これにより、塑性化部11の端部に応力が集中することを防止することができる。
【0045】
主芯材応力集中位置P1における主芯材10の板幅をL1とする。なお、板幅L1は、塑性化部11の板幅と同等である。
副芯材応力集中位置P2における主芯材10の板幅をL2とする。なお、本実施形態では、板幅L2は、主接続部12の板幅と同等である。
主芯材応力集中位置P1における主芯材10の第2方向D2の両端p11、p12を、副芯材応力集中位置P2を経由して結ぶ屈曲線の長さをL3とする。具体的には、第3方向D3に沿って見て、端p11と端p21との距離をl1とし、端p21と端p22との距離をl2とし、端p22と端p12との距離をl3とする。なお、距離l2は、内側端部21aの板厚(内側端部21aの第2方向D2の長さ)と同等である。上記屈曲線の長さL3は、距離l1と、距離l2と、距離l3との合計である。
主芯材応力集中位置P1と副芯材応力集中位置P2との第1方向D1における離間距離をL4とする。
【0046】
離間距離L4は、板幅L1よりも短い(すなわち、L4<L1)。
板幅L2は、板幅L1に1.2を乗じた値よりも大きい(すなわち、L1×1.2<L2)。なお、板幅L1と板幅L2との比率は、芯材2の材料の降伏比に基づき、主芯材10に塑性化部11が塑性化する軸力が作用した場合であっても、主接続部12については弾性領域を保つことができるような値に設定される。
板幅L1に対する、上記屈曲線の長さL3の比は、1.2から1.4の範囲内である(すなわち、1.2≦L3/L1≦1.4)。なお、板幅L1と上記屈曲線の長さL3との比率は、芯材2の材料の降伏比、および塑性化部11の端部への応力集中の防止、の双方の観点から設定される。
また、端p11と端p12とを通る直線と、端p11と端p21とを通る直線とのなす角θは、30°より大きく、45°より小さい(すなわち、30°<θ<45°)。なお、なす角θは、芯材2の材料の降伏比、および塑性化部11の端部への応力集中の防止、の双方の観点から設定される。
【0047】
以上説明したように、本実施形態に係る座屈拘束ブレース1は、両端に接続部2aを備えた長尺状の芯材2と、接続部2aの双方が突出した状態で芯材2が挿通された管体30と、を備える。芯材2は、第1方向D1の中央部に塑性化部11が配置されている板状の主芯材10と、主芯材10の第1方向D1の少なくとも両端に配置されかつ主芯材10の第2方向D2の中央において主芯材10に直交する姿勢で接合される板状の副芯材20と、を備える。接続部2aは、主芯材10の端部で構成される主接続部12と、副芯材20の端部で構成される副接続部22とを備える。主芯材10は、塑性化部11の両端部に隣接して配置され、塑性化部11の板幅よりも大きな板幅に変化して主接続部12に連続する一対の主拡幅部13を備える。副芯材20は、副接続部22に連続する位置に設けられ、副接続部22に向かい板幅が大きくなるよう板幅が変化する副拡幅部21を備える。主拡幅部13と塑性化部11との境界である主芯材応力集中位置P1と、副拡幅部21の内側端部21aの第1方向D1における位置である副芯材応力集中位置P2とが、第1方向D1で副芯材応力集中位置P2が主芯材応力集中位置P1よりも外方に位置するように異なる位置に設定される。主芯材応力集中位置P1と副芯材応力集中位置P2との離間距離L4が塑性化部11の板幅L1よりも短い。
【0048】
主拡幅部13と塑性化部11との境界である主芯材応力集中位置P1は、主芯材10において、芯材2に引張軸力が作用した場合に応力が集中する位置である。副拡幅部21の内側端部21aの第1方向D1における位置である副芯材応力集中位置P2は、副芯材20において、芯材2に引張軸力が作用した場合に応力が集中する位置である。例えば、主芯材応力集中位置P1と、副芯材応力集中位置P2とが第1方向D1で同じ位置に設定される場合、塑性化部11の端部に応力が集中してしまい、塑性化部11の中央部分で変形能にまだ余裕があるような比較的低い軸力が芯材2に作用した場合であっても、塑性化部11の端部が破断してしまう可能性がある。この場合、塑性化部11の全体が塑性化する前に、塑性化部11の端部が破断してしまい、座屈拘束ブレース1による構造物の耐震・制振性能を十分に確保することができない。主芯材応力集中位置P1と、副芯材応力集中位置P2とを、第1方向D1で異なる位置に設定することで、塑性化部11の端部に応力が集中することを防止することができる。この結果、塑性化部11の全体が塑性化する前に、塑性化部11の端部が破断することが防止できる。
また、例えば、主芯材応力集中位置P1と副芯材応力集中位置P2との離間距離L4が長くなると、芯材2に占める塑性化部11の第1方向D1の長さが短くなり、芯材2の破断までのエネルギー吸収能力が低下してしまう。なお、芯材2の破断までのエネルギー吸収能力とは、塑性化部11の全体を塑性化させるときの地震エネルギー吸収能力である。離間距離L4を板幅L1よりも短くすることで、芯材2に占める塑性化部11の第1方向D1の長さを確保することができ、芯材2の破断までのエネルギー吸収能力を向上させることができる。
以上より、本実施形態に係る座屈拘束ブレース1によれば、塑性化部11の端部における応力集中を回避しつつ、塑性化部11の長さを確保して、芯材2の破断までのエネルギー吸収能力を向上させることができる。
【0049】
また、座屈拘束ブレース1は、主芯材10と副芯材20とを接合する溶接部34をさらに備える。副芯材20は、第1方向D1で塑性化部11と重複する部分を有さない。溶接部34は、副拡幅部21の内側端部21aを囲うように配置された回し溶接部34aを有する。回し溶接部34aの熱影響部は、第1方向D1で塑性化部11から接続部2a側に離間している。
これにより、回し溶接部34aを形成するときの熱の影響を、塑性化部11が受けることが防止される。したがって、回し溶接部34aを形成するときの熱の影響による、塑性化部11の強度の低下が防止でき、塑性化部11の端部の破断をより効果的に防止することができる。
【0050】
また、主芯材応力集中位置P1における主芯材10の板幅をL1とし、副芯材応力集中位置P2における主芯材10の板幅をL2としたとき、L1×1.2<L2である。
主芯材応力集中位置P1における主芯材10の板幅L1と、副芯材応力集中位置P2における主芯材10の板幅L2とを上記を満たすよう設定することで、主芯材10に塑性化部11が塑性化する軸力が作用した場合であっても、主接続部12については弾性領域を保つことができる。
【0051】
また、主芯材応力集中位置P1における主芯材10の板幅をL1とし、主芯材応力集中位置P1における主芯材10の第2方向D2の両端p11、p12を、副芯材応力集中位置P2を経由して結ぶ屈曲線の長さをL3としたとき、1.2≦L3/L1≦1.4である。
また、主芯材応力集中位置P1における主芯材10の第2方向D2の一方側の端p11と他方側の端p12とを通る直線と、主芯材応力集中位置P1における主芯材10の第2方向D2の一方側の端p11と副芯材応力集中位置P2における副芯材20の、主芯材10の板幅方向における一方側の端p21とのなす角をθとしたとき、30°<θ<45°である。
これにより、主芯材応力集中位置P1と副芯材応力集中位置P2との離間距離L4の確保(すなわち、塑性化部11の端部への応力集中の防止)と、芯材2に占める塑性化部11の第1方向D1の長さの確保との双方を、より確実に両立させることができる。また、主芯材10に塑性化部11が塑性化する軸力が作用した場合であっても、主接続部12については弾性領域を保つことができる。
【0052】
<第2実施形態>
次に、図4図6を参照し、本発明の第2実施形態に係る座屈拘束ブレース1Aを説明する。本実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
図4は、座屈拘束ブレース1Aを、第3方向D3に沿って見た図である。図5は、座屈拘束ブレース1Aを、第2方向D2に沿って見た図である。図6は、図4の部分拡大図である。
【0053】
本実施形態に係る座屈拘束ブレース1Aは、芯材2Aと、管体30と、充填材31と、アンボンド材32と、を備える。
芯材2Aは、主芯材10と、副芯材40と、を備える。すなわち、本実施形態では、芯材2Aが、副芯材20の代わりに、副芯材40を備える点において、第1実施形態と異なる。
【0054】
副芯材40は、鋼板により構成された板状の部材である。副芯材40は、主芯材10の第1方向D1の全域に亘って設けられる。すなわち、副芯材40は、第1方向D1で主芯材10の塑性化部11と重複する部分を有する。芯材2A(主芯材10及び副芯材40)は、第1方向D1の全域に亘って、断面十字状を呈している。
【0055】
副芯材40は、主芯材10における表裏面(すなわち、第3方向D3を向く面)に設けられる。副芯材40は、主芯材10における第2方向D2の中央に設けられる。副芯材40は、主芯材10と直交するよう設けられる。
副芯材40は、主芯材10における第2方向D2の中央において、主芯材10に直交する姿勢で接合される。副芯材40は、主芯材10に溶接により接合される。
【0056】
図5に示されるように、副芯材40は、第2塑性化部41と、一対の副接続部42と、一対の副拡幅部43と、を備えている。
【0057】
第2塑性化部41は、副芯材40における第1方向D1の中央に位置している。第2塑性化部41の断面形状は、第1方向D1において一定である。
一対の副接続部42は、副芯材40における第1方向D1の両端部にそれぞれ位置している。すなわち、副接続部42は、副芯材40における第1方向D1の端部で構成される。
【0058】
副接続部42の板幅(副接続部42の第3方向D3の長さ)は、第2塑性化部41の板幅(第2塑性化部41の第3方向D3の長さ)よりも広い。また、第2塑性化部41の第1方向D1の長さは、副接続部42の第1方向D1の長さよりも長い。第2塑性化部41の第1方向D1の長さは、塑性化部11の第1方向D1の長さよりも長い。
【0059】
副拡幅部43は、第2塑性化部41と副接続部42との間に配置される。すなわち、一対の副拡幅部43は、第2塑性化部41における第1方向D1の両端部に隣接して配置され、一対の副接続部42にそれぞれ連続する。副拡幅部43は、主拡幅部13よりも、第1方向D1の外側に位置する。図5および図6に示されるように、副拡幅部43は、第1方向D1の内側(塑性化部11側)の端部である内側端部43a(端部)を有する。
【0060】
副拡幅部43の板幅(副拡幅部43の第3方向D3の長さ)は、第1方向D1に沿って変化する。副拡幅部43の板幅は、第2塑性化部41側(内側端部43a)から副接続部42側に向かうに連れ、大きくなる。副拡幅部43は、副芯材40において、第1方向D1に垂直な断面形状が変化する部分である。
【0061】
図6に示されるように、副拡幅部43の内側端部43aの第1方向D1における位置を、副芯材応力集中位置P3という。本実施形態において、副芯材応力集中位置P3は、副拡幅部43と第2塑性化部41との境界である。副芯材応力集中位置P3における副芯材40の第2方向D2の一方側の端(すなわち、内側端部43aにおける第2方向D2の一方側の端)を、端p31という。副芯材応力集中位置P3における副芯材40の第2方向D2の他方側の端(すなわち、内側端部43aにおける第2方向D2の他方側の端)を、端p32という。副芯材応力集中位置P3は、副芯材40において、第1方向D1に垂直な断面形状が変化し始める位置であり、芯材2Aに引張軸力が作用した場合に応力が集中しやすい位置である。
【0062】
主芯材10と副芯材40との接合部分には、溶接部50が形成される。溶接部50は、第1方向D1で分散して配置された複数の部分溶接部51を有する。複数の部分溶接部51のうち第1方向D1で主芯材応力集中位置P1が位置する特定部分溶接部52は、主芯材応力集中位置P1の第1方向D1の両側に延在するように配置されている。すなわち、特定部分溶接部52は、主芯材応力集中位置P1の両側に長手方向に連続するよう形成されている。
【0063】
図6を参照して、主芯材応力集中位置P1および副芯材応力集中位置P3について詳細に説明する。
副芯材応力集中位置P3は、主芯材応力集中位置P1と第1方向D1において異なる位置に設定される。副芯材応力集中位置P3は、主芯材応力集中位置P1よりも第1方向D1の外側に位置するよう設定される。これにより、塑性化部11の端部に応力が集中することを防止することができる。
【0064】
主芯材応力集中位置P1における主芯材10の板幅をL1とする。
副芯材応力集中位置P3における主芯材10の板幅をL2とする。
主芯材応力集中位置P1における主芯材10の第2方向D2の両端p11、p12を、副芯材応力集中位置P3を経由して結ぶ屈曲線の長さをL3とする。具体的には、第3方向D3に沿って見て、端p11と端p31との距離をl1とし、端p31と端p32との距離をl2とし、端p32と端p12との距離をl3とする。上記屈曲線の長さL3は、距離l1と、距離l2と、距離l3との合計である。
主芯材応力集中位置P1と副芯材応力集中位置P3との第1方向D1における離間距離をL4とする。
【0065】
離間距離L4は、板幅L1よりも短い(すなわち、L4<L1)。
板幅L2は、板幅L1に1.2を乗じた値よりも大きい(すなわち、L1×1.2<L2)。
板幅L1に対する、上記屈曲線の長さL3の比は、1.2から1.4の範囲内である(すなわち、1.2≦L3/L1≦1.4)。
また、端p11と端p12とを通る直線と、端p11と端p31とを通る直線とのなす角θは、30°より大きく、45°より小さい(すなわち、30°<θ<45°)。
【0066】
以上説明したように、本実施形態に係る座屈拘束ブレース1Aにおいても、第1実施形態と同様に、主拡幅部13と塑性化部11との境界である主芯材応力集中位置P1と、副拡幅部43の塑性化部11側の端部である内側端部43aの第1方向D1における位置である副芯材応力集中位置P3とが、第1方向D1で副芯材応力集中位置P3が主芯材応力集中位置P1よりも外方に位置するように異なる位置に設定される。主芯材応力集中位置P1と副芯材応力集中位置P3との離間距離L4が塑性化部11の板幅L1よりも短い。
主芯材応力集中位置P1と、副芯材応力集中位置P3とを、第1方向D1で異なる位置に設定することで、塑性化部11の端部に応力が集中することを防止することができる。この結果、塑性化部11の全体が塑性化する前に、塑性化部11の端部が破断することが防止でき、座屈拘束ブレース1Aによる構造物の耐震・制振性能を十分に確保することができる。また、主芯材応力集中位置P1と副芯材応力集中位置P3との離間距離L4を塑性化部の板幅L1よりも短くすることで、芯材2Aに占める塑性化部11の第1方向D1の長さを確保することができ、芯材2Aの破断までのエネルギー吸収能力を向上させることができる。
以上より、本実施形態に係る座屈拘束ブレース1Aによれば、塑性化部11の端部における応力集中を回避しつつ、塑性化部11の長さを確保して、芯材2Aの破断までのエネルギー吸収能力を向上させることができる。
【0067】
また、座屈拘束ブレース1Aは、主芯材10と副芯材40とを接合する溶接部50をさらに備える。副芯材40は、第1方向D1で塑性化部11と重複する部分を有する。溶接部50は、第1方向D1で分散して配置された複数の部分溶接部51を有する。複数の部分溶接部51のうち第1方向D1で主芯材応力集中位置P1が位置する特定部分溶接部52は、主芯材応力集中位置P1の第1方向D1の両側に延在するように配置されている。
溶接部50の端部には応力が集中しやすいが、特定部分溶接部52を、主芯材応力集中位置P1の第1方向D1の両側に延在するように配置することで、主芯材応力集中位置P1(すなわち、塑性化部11の端部)への応力集中の発生を防止することができる。また、特定部分溶接部52を、主芯材応力集中位置P1の第1方向D1の両側に延在するように配置することで、主芯材応力集中位置P1における、芯材2Aの断面二次モーメントを向上させることができ、塑性化部11の端部が破断することをより効果的に防止することができる。
【0068】
なお、本発明は、図面を参照して説明した上記実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において様々な変形例が考えられる。
【0069】
例えば、第1実施形態および第2実施形態において、主接続部12は、板幅が第1方向D1の全域に亘って均一である。しかしながら、主接続部12は、外側端部の板幅が内側端部の板幅よりも大きくなる、二段構造を有していてもよい。
第1実施形態および第2実施形態において、副接続部22、42は、板幅が第1方向D1の全域に亘って均一である。しかしながら、副接続部22、42は、外側端部の板幅が内側端部の板幅よりも大きくなる、二段構造を有していてもよい。
【0070】
また、上記実施形態においては、管体30として鋼管を用いたが、本発明はこれに限られない。管体30は木製であってもよい。この場合、例えば、木製の管体30は一対の拘束材により構成され、これら拘束材が芯材2に直接接触する。したがって、充填材は管体30の内側に充填されない。一対の拘束材により芯材2の第3方向D3への変位を規制する。また、一対の拘束材の間に規制部材を設け、規制部材により芯材2の第2方向D2への変位を規制する。これにより、芯材2の第1方向D1を除く方向への変形が規制される。なお、木製の管体30の一対の拘束材と芯材2とが直接接触しておらず、一対の拘束材と芯材2との間に、アンボンド材32が設けられていてもよい。
【0071】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1、1A 座屈拘束ブレース
2、2A 芯材
2a 接続部
10 主芯材
11 塑性化部
12 主接続部
13 主拡幅部
20、40 副芯材
21、43 副拡幅部
21a、43a 内側端部(端部)
22、42 副接続部
30 管体
31 充填材
32 アンボンド材
34、50 溶接部
34a 回し溶接部
51 部分溶接部
52 特定部分溶接部
P1 主芯材応力集中位置
P2、P3 副芯材応力集中位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-06-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に接続部を備えた長尺状の芯材と、
前記接続部の双方が突出した状態で前記芯材が挿通された管体と、
を備え、
前記芯材は、
長手方向の中央部に塑性化部が配置されている板状の主芯材と、
前記主芯材の長手方向の少なくとも両端に配置されかつ前記主芯材の板幅方向の中央において前記主芯材に直交する姿勢で接合される板状の副芯材と、を備え、
前記接続部は、前記主芯材の端部で構成される主接続部と、前記副芯材の端部で構成される副接続部と、を備える座屈拘束ブレースであって、
前記主芯材は、前記塑性化部の両端部に隣接して配置され前記塑性化部の板幅よりも大きな板幅に変化して前記主接続部に連続する一対の主拡幅部を備え、
前記副芯材は、前記副接続部に連続する位置に設けられ、前記副接続部に向かい板幅が大きくなるよう板幅が変化する副拡幅部を備え、
前記主拡幅部と前記塑性化部との境界である主芯材応力集中位置と、前記副拡幅部の前記塑性化部側の端部の長手方向における位置である副芯材応力集中位置とが、長手方向で前記副芯材応力集中位置が前記主芯材応力集中位置よりも外方に位置するように異なる位置に設定され、かつ、前記主芯材応力集中位置と前記副芯材応力集中位置との離間距離が前記塑性化部の板幅よりも短い、座屈拘束ブレース。
【請求項2】
前記主芯材と前記副芯材とを接合する溶接部、をさらに備え、
前記副芯材は、長手方向で前記塑性化部と重複する部分を有し、
前記溶接部は、長手方向で分散して配置された複数の部分溶接部を有し、
前記複数の部分溶接部のうち長手方向で前記主芯材応力集中位置が位置する特定部分溶接部は、前記主芯材応力集中位置の長手方向の両側に延在するように配置されている、請求項1に記載の座屈拘束ブレース。
【請求項3】
前記主芯材と前記副芯材とを接合する溶接部、をさらに備え、
前記副芯材は、長手方向で前記塑性化部と重複する部分を有さず、
前記溶接部は、前記副拡幅部の前記塑性化部側の端部を囲うように配置された回し溶接部を有し、
前記回し溶接部の熱影響部は、長手方向で前記塑性化部から前記接続部側に離間している、請求項1に記載の座屈拘束ブレース。
【請求項4】
前記主芯材応力集中位置における前記主芯材の板幅をL1とし、前記副芯材応力集中位置における前記主芯材の板幅をL2としたとき、L1×1.2<L2である、請求項1~3のいずれか一項に記載の座屈拘束ブレース。
【請求項5】
前記主芯材応力集中位置における前記主芯材の板幅をL1とし、前記主芯材応力集中位置における前記主芯材の板幅方向の両端を、前記副芯材応力集中位置を経由して結ぶ屈曲線の長さをL3としたとき、1.2≦L3/L1≦1.4である、請求項1~3のいずれか一項に記載の座屈拘束ブレース。
ただし、L3は、以下の長さl1とl2とl3との合計である。
l1:前記主芯材の板厚方向から見て、前記主芯材応力集中位置における前記主芯材の板幅方向の一方側の端と、前記副芯材応力集中位置における前記副芯材の、前記主芯材の板幅方向における一方側の端とを結ぶ直線の長さ
l2:前記主芯材の板厚方向から見て、前記副芯材応力集中位置における前記副芯材の、前記主芯材の板幅方向における一方側の端と他方の端とを結ぶ直線の長さ
l3:前記主芯材の板厚方向から見て、前記副芯材応力集中位置における前記副芯材の、前記主芯材の板幅方向における他方側の端と、前記主芯材応力集中位置における前記主芯材の板幅方向の他方側の端とを結ぶ直線の長さ
【請求項6】
前記主芯材応力集中位置における前記主芯材の板幅方向の一方側の端と他方側の端とを通る直線と、前記主芯材応力集中位置における前記主芯材の板幅方向の一方側の端と前記副芯材応力集中位置における前記副芯材の、前記主芯材の板幅方向における一方側の端とのなす角をθとしたとき、30°<θ<45°である、請求項1~3のいずれか一項に記載の座屈拘束ブレース。