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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114316
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20240816BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20240816BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240816BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
H01L29/78 301H
H01L29/78 301P
H01L29/78 301B
H01L29/78 301S
H01L29/78 626A
H01L29/78 653C
H01L29/78 652E
H01L29/78 656A
H01L29/78 652T
H01L29/78 658E
H01L29/78 658F
H01L29/78 658G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023019999
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100148323
【弁理士】
【氏名又は名称】川▲崎▼ 通
(74)【代理人】
【識別番号】100168860
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 充史
(72)【発明者】
【氏名】中川 洋平
【テーマコード(参考)】
5F110
5F140
【Fターム(参考)】
5F110AA05
5F110AA06
5F110AA07
5F110BB12
5F110CC09
5F110DD01
5F110DD04
5F110EE02
5F110EE08
5F110EE22
5F110EE42
5F110EE43
5F110EE45
5F110FF02
5F110FF27
5F110FF28
5F110FF29
5F110GG04
5F110GG22
5F110GG42
5F110QQ11
5F140AA25
5F140AA30
5F140AC23
5F140BA01
5F140BA02
5F140BA06
5F140BB03
5F140BB04
5F140BB06
5F140BC12
5F140BC15
5F140BD05
5F140BE09
5F140BE10
5F140BF04
5F140BF05
5F140BF42
5F140BG27
5F140BG28
5F140BH06
5F140BK18
5F140CC11
5F140CC12
5F140CC16
(57)【要約】
【課題】オフ状態のリーク電流を低減できる半導体装置を提供する。
【解決手段】互いに同じ導電型を有する半導体で構成されたソース部およびドレイン部と、前記ソース部と前記ドレイン部との間に設けられ、前記ソース部および前記ドレイン部よりも不純物濃度が低い半導体で構成されたチャネル部と、を有する柱状部と、前記チャネル部における前記柱状部の側壁に絶縁部を介して設けられ、前記チャネル部の電流を制御するゲート電極と、を有し、前記チャネル部の前記ソース部側の端の第1位置における前記柱状部の径は、前記チャネル部の前記第1位置と異なる第2位置における前記柱状部の径よりも小さい、半導体装置。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに同じ導電型を有する半導体で構成されたソース部およびドレイン部と、前記ソース部と前記ドレイン部との間に設けられ、前記ソース部および前記ドレイン部よりも不純物濃度が低い半導体で構成されたチャネル部と、を有する柱状部と、
前記チャネル部における前記柱状部の側壁に絶縁部を介して設けられ、前記チャネル部の電流を制御するゲート電極と、
を有し、
前記チャネル部の前記ソース部側の端の第1位置における前記柱状部の径は、前記チャネル部の前記第1位置と異なる第2位置における前記柱状部の径よりも小さい、半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第2位置は、前記チャネル部の前記ドレイン部側の端の位置である、半導体装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記柱状部は、前記チャネル部と前記ドレイン部との間に設けられたドリフト部を有する、半導体装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記チャネル部の前記第1位置における不純物濃度は、前記チャネル部の前記第2位置における不純物濃度よりも高い、半導体装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記チャネル部は、第1部分と、第2部分と、で構成され、
前記第1部分における前記柱状部の径は、前記第2部分における前記柱状部の径よりも小さい、半導体装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記チャネル部は、前記第1位置から前記第2位置に向かって、径が漸増する部分を有する、半導体装置。
【請求項7】
請求項1において、
前記ゲート電極は、前記チャネル部を囲んでいる、半導体装置。
【請求項8】
請求項1において、
基板を有し、
前記柱状部は、前記基板に設けられ、
前記ソース部は、前記基板と前記チャネル部との間に設けられている、半導体装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項において、
パワーデバイスである、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ナノコラムは、次世代ナノデバイスの構成として、トランジスターなどの半導体装置への適用が期待されている。
【0003】
例えば特許文献1には、ナノワイヤーと、ナノワイヤーを取り囲むゲートと、を備えたトランジスターデバイスが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2014-503998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなトランジスターデバイスでは、オフ状態のリーク電流を低減することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る半導体装置の一態様は、
互いに同じ導電型を有する半導体で構成されたソース部およびドレイン部と、前記ソース部と前記ドレイン部との間に設けられ、前記ソース部および前記ドレイン部よりも不純物濃度が低い半導体で構成されたチャネル部と、を有する柱状部と、
前記チャネル部における前記柱状部の側壁に絶縁部を介して設けられ、前記チャネル部の電流を制御するゲート電極と、
を有し、
前記チャネル部の前記ソース部側の端の第1位置における前記柱状部の径は、前記チャネル部の前記第1位置と異なる第2位置における前記柱状部の径よりも小さい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係る半導体装置を模式的に示す断面図。
図2】本実施形態に係る半導体装置の柱状部を模式的に示す断面図。
図3】柱状部における不純物濃度と空乏層領域との関係を説明するための図。
図4】本実施形態に係る半導体装置の製造工程を模式的に示す断面図。
図5】本実施形態に係る半導体装置の製造工程を模式的に示す断面図。
図6】本実施形態に係る半導体装置の製造工程を模式的に示す断面図。
図7】本実施形態に係る半導体装置の製造工程を模式的に示す断面図。
図8】本実施形態に係る半導体装置の製造工程を模式的に示す断面図。
図9】本実施形態に係る半導体装置の製造工程を模式的に示す断面図。
図10】本実施形態の第1変形例に係る半導体装置の柱状部を模式的に示す断面図。
図11】本実施形態の第2変形例に係る半導体装置の柱状部を模式的に示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に
説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0009】
1. 半導体装置
まず、本実施形態に係る半導体装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る半導体装置100を模式的に示す断面図である。
【0010】
半導体装置100は、図1に示すように、例えば、基板10と、バッファー層20と、柱状部30と、第1絶縁層40と、絶縁部50と、ゲート電極60と、第2絶縁層70と、を有している。半導体装置100は、例えば、縦型の金属酸化膜半導体電界効果トランジスター(Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor:MOSFET)である。
【0011】
基板10は、例えば、Si基板、GaN基板、サファイア基板、SiC基板などである。
【0012】
バッファー層20は、基板10上に設けられている。バッファー層20は、例えば、Siがドープされたn型のGaN層である。なお、図示はしないが、バッファー層20上に、柱状部30を成長させるためのマスク層が形成されていてもよい。マスク層は、例えば、チタン層、酸化シリコン層、酸化チタン層、酸化アルミニウム層などである。
【0013】
なお、本明細書では、柱状部30のソース部32とチャネル部34との積層方向において(以下、単に「積層方向」ともいう)、チャネル部34を基準とした場合、チャネル部34からドレイン部38に向かう方向を「上」とし、チャネル部34からソース部32に向かう方向を「下」として説明する。
【0014】
柱状部30は、バッファー層20上に設けられている。柱状部30は、バッファー層20を介して、基板10に設けられている。柱状部30は、バッファー層20から上方に突出した柱状の形状を有している。換言すると、柱状部30は、バッファー層20を介して、基板10から上方に突出している。柱状部30は、例えば、ナノコラム、ナノワイヤー、ナノロッド、ナノピラーとも呼ばれる。柱状部30の平面形状は、例えば、六角形などの多角形、円である。
【0015】
柱状部30の径は、例えば、50nm以上500nm以下であり、好ましくは100nm以上300nm以下である。柱状部30の径を500nm以下とすることによって、高品質な結晶の柱状部30を得ることができる。
【0016】
なお、「柱状部30の径」とは、柱状部30の平面形状が円の場合は、直径であり、柱状部30の平面形状が円ではない形状の場合は、最小包含円の直径である。例えば、柱状部30の径は、柱状部30の平面形状が多角形の場合、該多角形を内部に含む最小の円の直径であり、柱状部30の平面形状が楕円の場合、該楕円を内部に含む最小の円の直径である。
【0017】
柱状部30は、例えば、複数設けられている。柱状部30が複数設けられることにより、半導体装置100は、大電流化を図ることができ、パワーデバイスとして、好適に用いられる。複数の柱状部30は、互いに離隔している。隣り合う柱状部30の間隔は、例えば、10nm以上1μm以下であり、好ましくは25nm以上750nm以下である。複数の柱状部30は、積層方向からみて、例えば、所定の方向に所定のピッチで配列されている。複数の柱状部30は、例えば、三角格子状、正方格子状に配列されている。
【0018】
なお、「柱状部30のピッチ」とは、所定の方向に隣り合う柱状部30の中心間の距離である。「柱状部30の中心」とは、柱状部30の平面形状が円の場合は、該円の中心であり、柱状部30の平面形状が円ではない形状の場合は、最小包含円の中心である。例えば、柱状部30の中心は、柱状部30の平面形状が多角形の場合、該多角形を内部に含む最小の円の中心であり、柱状部30の平面形状が楕円の場合、該楕円を内部に含む最小の円の中心である。
【0019】
柱状部30は、例えば、ソース部32と、チャネル部34と、ドリフト部36と、ドレイン部38と、を有している。ソース部32、チャネル部34、ドリフト部36、およびドレイン部38は、例えば、III族窒化物半導体で構成され、ウルツ鉱型結晶構造を有している。
【0020】
ソース部32は、バッファー層20上に設けられている。ソース部32は、基板10とチャネル部34との間に設けられている。ソース部32は、バッファー層20とチャネル部34との間に設けられている。ソース部32の材質は、例えば、Siがドープされたn型のGaNである。ソース部32の不純物濃度は、バッファー層20の不純物濃度と同じであってもよい。
【0021】
チャネル部34は、ソース部32上に設けられている。チャネル部34は、ソース部32とドレイン部38との間に設けられている。チャネル部34は、ソース部32とドリフト部36との間に設けられている。チャネル部34の不純物濃度は、ソース部32の不純物濃度およびドレイン部38の不純物濃度よりも低い。チャネル部34の不純物濃度は、例えば、ドリフト部36の不純物濃度よりも低い。ソース部32、チャネル部34、ドリフト部36、およびドレイン部38の不純物濃度は、例えば、アトムプローブ分析法によって測定される。
【0022】
チャネル部34の材質は、例えば、不純物が意図的にドープされていないUID(unintentionally doped)型のGaN、n型のGaNである。チャネル部34には、ゲート電極60に所定の電圧が印加されることにより、チャネルが形成される。チャネル部34には、例えば、Nチャネルが形成される。
【0023】
ここで、図2は、柱状部30のチャネル部34近傍を模式的に示す断面図である。
【0024】
チャネル部34の第1位置P1における柱状部30の径D1は、図2に示すように、チャネル部34の第2位置P2における柱状部30の径D2よりも小さい。第1位置P1は、チャネル部34のソース部32側の端の位置である。図示の例では、第1位置P1は、チャネル部34のソース部32との境界の位置である。第2位置P2は、積層方向において、第1位置P1と異なる位置である。第2位置P2は、チャネル部34のドレイン部38側の端の位置である。図示の例では、第2位置P2は、チャネル部34のドリフト部36との境界の位置である。径D1,D2は、例えば、SEM(Scanning Electron Microscope)、TEM(Transmission Electron Microscope)によって測定される。チャネル部34の第1位置P1における不純物濃度は、例えば、チャネル部34の第2位置P2における不純物濃度よりも高い。
【0025】
チャネル部34は、図2に示すように、例えば、第1部分34aと、第2部分34bと、で構成されている。
【0026】
チャネル部34の第1部分34aは、ソース部32上に設けられている。第1部分34aは、ソース部32と第2部分34bとの間に設けられている。図示の例では、第1部分
34aにおける柱状部30の径は、積層方向において一定である。柱状部30は、第1部分34aにおける柱状部30の径は、D1である。図示の例では、径D1は、チャネル部34における柱状部30の最小の幅である。第1部分34aにおける柱状部30の径は、例えば、ソース部32における柱状部30の径と同じである。
【0027】
チャネル部34の第2部分34bは、第1部分34a上に設けられている。第2部分34bは、第1部分34aとドリフト部36との間に設けられている。図示の例では、第2部分34bにおける柱状部30の径は、積層方向において一定である。第2部分34bにおける柱状部30の径は、D2である。図示の例では、径D2は、チャネル部34における柱状部30の最大の幅である。第1部分34aにおける柱状部30の径は、第2部分34bにおける柱状部30の径よりも小さい。第2部分34bにおける柱状部30の径は、例えば、ドリフト部36における柱状部30の径と同じである。
【0028】
ドリフト部36は、チャネル部34上に設けられている。ドリフト部36は、図1に示すように、チャネル部34とドレイン部38との間に設けられている。ドリフト部36の導電型は、例えば、ソース部32およびドレイン部38の導電型と同じである。ドリフト部36の材質は、例えば、Siがドープされたn型のGaNである。
【0029】
ドリフト部36の不純物濃度は、ソース部32の不純物濃度およびドレイン部38の不純物濃度よりも低い。ドリフト部36は、半導体装置100のオフ状態の耐圧を向上させる。
【0030】
ドリフト部36における柱状部30の径は、例えば、ソース部32における柱状部30の径よりも大きい。そのため、例えば、ドリフト部における柱状部の径がソース部における柱状部の径と同じ場合に比べて、オン抵抗を低くすることができる。さらに、ソース部32における柱状部30の径がドリフト部36における柱状部30の径よりも小さいため、例えば、基板10とバッファー層20との格子定数の差に起因する転位がチャネル部34に到達する可能性を小さくすることができる。
【0031】
ドレイン部38は、ドリフト部36上に設けられている。ドレイン部38の導電型は、ソース部32の導電型と同じである。ドレイン部38の材質は、例えば、Siがドープされたn型のGaNである。ドレイン部38における柱状部30の径は、例えば、ドリフト部36における柱状部30の径と同じである。
【0032】
ドレイン部38の不純物濃度は、ソース部32の不純物濃度と同じであってもよい。ソース部32、チャネル部34、ドリフト部36、およびドレイン部38は、この順で、積層方向に並んでいる。
【0033】
第1絶縁層40は、例えば、バッファー層20上に設けられている。第1絶縁層40は、バッファー層20とゲート電極60との間に設けられている。第1絶縁層40は、隣り合う柱状部30のソース部32の間に設けられている。第1絶縁層40は、積層方向からみて、ソース部32を囲んでいる。第1絶縁層40は、例えば、SOG(spin on glass)層である。
【0034】
絶縁部50は、チャネル部34、ドリフト部36、およびドレイン部38における柱状部30の側壁30aに設けられている。絶縁部50は、さらに、第1絶縁層40の上面、および柱状部30の上面に設けられている。側壁30aは、例えば、m面で構成されている。側壁30aには、チャネル部34の第1部分34aおよび第2部分34bの径の違いによる段差が形成されている。図示の例では、積層方向において、絶縁部50と第1絶縁層40との境界の位置は、チャネル部34とソース部32との境地の位置と同じである。
絶縁部50は、チャネル部34とゲート電極60との間に設けられている。チャネル部34とゲート電極60との間に設けられている絶縁部50の部分は、ゲート絶縁層として機能する。絶縁部50は、積層方向からみて、チャネル部34を囲んでいる。絶縁部50の材質は、例えば、酸化シリコンである。
【0035】
ゲート電極60は、チャネル部34における柱状部30の側壁30aに、絶縁部50を介して設けられている。ゲート電極60は、隣り合う柱状部30のチャネル部34の間に設けられている。図示の例では、積層方向において、ゲート電極60と第2絶縁層70との境界の位置は、チャネル部34とドリフト部36との境界の位置と同じである。ゲート電極60は、積層方向からみて、柱状部30および絶縁部50を囲んでいる。半導体装置100は、GAA(Gate All Around)構造を有している。ゲート電極60の材質は、例えば、リンやボロンなどの不純物がドーピングされたポリシリコン、金属である。ゲート電極60は、チャネル部34の電流を制御する。
【0036】
第2絶縁層70は、ゲート電極60上に設けられている。第2絶縁層70は、隣り合う柱状部30のドリフト部36の間およびドレイン部38の間に設けられている。第2絶縁層70は、積層方向からみて、ドリフト部36およびドレイン部38を囲んでいる。第2絶縁層70の材質は、例えば、第1絶縁層40と同じである。
【0037】
半導体装置100は、例えば、電気エネルギーの制御や供給に用いられるパワーデバイスである。半導体装置100は、例えば、インバーター、充電器、昇圧器、降圧器、DC(Direct Current)/DCコンバーター、電気飛行機、電気自動車などに適用される。
【0038】
半導体装置100は、例えば、以下の作用効果を有する。
【0039】
半導体装置100では、互いに同じ導電型を有する半導体で構成されたソース部32およびドレイン部38と、ソース部32とドレイン部38との間に設けられ、ソース部32およびドレイン部38よりも不純物濃度が低い半導体で構成されたチャネル部34と、を有する柱状部30を有する。さらに、半導体装置100は、チャネル部34における柱状部30の側壁30aに絶縁部50を介して設けられ、チャネル部34の電流を制御するゲート電極60を有する。チャネル部34のソース部32側の端の第1位置P1における柱状部30の径D1は、チャネル部34の第1位置P1と異なる第2位置P2における柱状部30の径D2よりも小さい。
【0040】
そのため、半導体装置100では、第2位置P2よりも不純物濃度の高い第1位置P1において、チャネル部34を完全に空乏化させ易い。
【0041】
ここで、図3は、柱状部Tにおける不純物濃度と空乏層領域A1との関係を説明するための図である。
【0042】
図3に示すように、チャネル部Cのソース部S側の端の第1位置P1は、不純物濃度が高い。これは、ソース部Sの不純物が、熱などによってチャネル部Cに拡散するためである。通常、チャネル部Cとドレイン部との間には、ドレイン部よりも不純物濃度が低いドリフト部が設けられている。そのため、ドレイン部およびドリフト部からチャネル部Cに拡散する不純物の量は、ソース部Sからチャネル部Cに拡散する不純物の量に比べて少ない。したがって、チャネル部Cのソース部S側の端の第1位置P1における不純物濃度は、チャネル部Cのドレイン部側の端の第2位置P2における不純物濃度よりも高くなる。
【0043】
ソース部Sの不純物がチャネル部Cに拡散すると、チャネル部Cのソース部S側では、図3に示すように、柱状部Tの中心が空乏化せず、導電領域A2となる。不純物濃度が高
いほど、導電領域A2の幅は大きくなり、空乏層領域A1の幅は小さくなる。そのため、オフ状態のリーク電流が増大する。
【0044】
上記のような問題に対し、半導体装置100では、チャネル部34のソース部32側の端の第1位置P1における柱状部30の径D1は、チャネル部34の第1位置P1と異なる第2位置P2における柱状部30の径D2よりも小さいため、第1位置P1の不純物濃度が高くても、第1位置P1において、チャネル部34を完全に空乏化させ易い。したがって、オフ状態のリーク電流を低減できる。半導体装置100は、例えば、ゲート電圧0Vでオフ状態となるノーマリーオフを実現できる。
【0045】
さらに、半導体装置100では、径D2は径D1よりも大きいため、オン状態の電流を増大させることができる。
【0046】
半導体装置100では、第2位置P2は、チャネル部34のドレイン部38側の端の位置である。そのため、半導体装置100では、不純物が拡散され難いチャネル部34のドレイン部38側の端における柱状部30の径を、大きくすることができる。これにより、オン状態の電流を増大させることができる。
【0047】
半導体装置100では、柱状部30は、チャネル部34とドレイン部38との間に設けられたドリフト部36を有する。そのため、半導体装置100では、耐圧を向上できる。
【0048】
半導体装置100では、チャネル部34の第1位置P1における不純物濃度は、チャネル部34の第2位置P2における不純物濃度よりも高い。半導体装置100では、径D1は径D2よりも小さいため、不純物濃度が高い第1位置P1においても、チャネル部34を完全に空乏化させ易い。
【0049】
半導体装置100では、チャネル部34は、第1部分34aと、第2部分34bと、で構成され、第1部分34aにおける柱状部30の径は、第2部分34bにおける柱状部30の径よりも小さい。そのため、半導体装置100では、第1部分34aにおける柱状部30の径をD1とすることができ、第2部分34bにおける柱状部30の径をD2とすることができる。
【0050】
半導体装置100では、ゲート電極60は、チャネル部34を囲んでいる。そのため、半導体装置100では、チャネル部34を完全に空乏化し易い。
【0051】
半導体装置100では、基板10を有し、柱状部30は、基板10に設けられ、ソース部32は、基板10とチャネル部34との間に設けられている。そのため、半導体装置100では、ソース部32を成長させた後にチャネル部34を成長させるので、ソース部32の上面には不純物が残留する。これにより、チャネル部34の第1位置P1における不純物濃度は、高くなるが、半導体装置100では、径D1は径D2よりも小さいため、不純物濃度が高い第1位置P1においても、チャネル部34を完全に空乏化させ易い。
【0052】
2. 半導体装置の製造方法
次に、本実施形態に係る半導体装置100の製造方法について、図面を参照しながら説明する。図4図9は、本実施形態に係る半導体装置100の製造工程を模式的に示す断面図である。
【0053】
図4に示すように、基板10上に、バッファー層20をエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長させる方法としては、例えば、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法などが挙げられる。
【0054】
次に、バッファー層20上に、図示せぬマスク層を形成する。次に、マスク層をマスクとしてバッファー層20上に、ソース部32、チャネル部34、ドリフト部36、およびドレイン部38を、この順でエピタキシャル成長させる。エピタキシャル成長させる方法としては、例えば、MOCVD法、MBE法などが挙げられる。本工程により、複数の柱状部30を形成できる。エピタキシャル成長の成膜温度や成膜速度などの成膜条件を調整することにより、径D1,D2等の柱状部30の径を制御できる。
【0055】
図5に示すように、隣り合う柱状部30の間に第1絶縁層40を形成する。図示の例では、第1絶縁層40は、隣り合う柱状部30のソース部32の間、チャネル部34の間、およびドリフト部36の間に形成される。第1絶縁層40は、例えば、SOG法、ALD(Atomic Layer Deposition)法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などによって形成される。
【0056】
図6に示すように、第1絶縁層40をエッチングして、隣り合う柱状部30のドリフト部36の間およびチャネル部34の第2部分34bの第1絶縁層40を除去する。エッチングとしては、例えば、ドライエッチングを用いる。これにより、ウェットエッチングを用いる場合に比べて、エッチングの処理時間を短縮できる。さらに、エッチングされた第1絶縁層40の形状の再現性を、高めることができる。
【0057】
図7に示すように、第1絶縁層40をエッチングして、隣り合う柱状部30のチャネル部34の第1部分34aの間の第1絶縁層40を除去する。エッチングとしては、例えば、ウェットエッチングを用いる。これにより、ドライエッチングを用いる場合に比べて、第1部分34aに与えるダメージを低減できる。ソース部32における柱状部30の径は、第2部分34bにおける柱状部30の径よりも小さいため、本工程のウェットエッチングにおいて、第1部分34aの周囲にエッチング液を滞留させ易い。これにより、隣り合う柱状部30の第1部分34aの間の第1絶縁層40を、効率よくエッチングできる。
【0058】
図8に示すように、第1絶縁層40上であって、柱状部30を覆うように、絶縁部50を形成する。絶縁部50は、例えば、ALD法、CVD法によって形成される。
【0059】
図9に示すように、第1絶縁層40上であって、隣り合う柱状部30のチャネル部34の間に、ゲート電極60を形成する。ゲート電極60は、例えば、ALD法、CVD法、真空蒸着法によって形成される。
【0060】
図1に示すように、ゲート電極60上であって、隣り合う柱状部30のドリフト部36の間およびドレイン部38の間に、第2絶縁層70を形成する。第2絶縁層70は、例えば、SOG法、ALD法、CVD法などによって形成される。
【0061】
以上の工程により、半導体装置100を製造できる。
【0062】
上記では、バッファー層20上に複数の柱状部30をエピタキシャル成長させるボトムアップ法について説明した。なお、柱状部30の形成方法は、特に限定されず、例えば、複数の半導体層を積層して積層体を形成し、該積層体をエッチングすることによって複数の柱状部30を形成するトップダウン法であってもよい。
【0063】
3. 半導体装置の変形例
3.1. 第1変形例
次に、本実施形態の第1変形例に係る半導体装置について、図面を参照しながら説明する。図10は、本実施形態の第1変形例に係る半導体装置200の柱状部30を模式的に
示す断面図である。
【0064】
以下、本実施形態の第1変形例に係る半導体装置200において、上述した本実施形態に係る半導体装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。このことは、後述する本実施形態の第2変形例に係る半導体装置おいて、同様である。
【0065】
上述した半導体装置100では、図2に示すように、チャネル部34の第1部分34aの径は、積層方向において一定であった。
【0066】
これに対し、半導体装置200では、図10に示すように、チャネル部34の第1部分34aは、第1位置P1から第2位置P2に向かって、径が漸増している。図示の例では、第1部分34aは、例えば、逆テーパー形状を有している。
【0067】
半導体装置200では、チャネル部34は、第1位置P1から第2位置P2に向かって、径が漸増する第1部分34aを有する。そのため、半導体装置100では、例えば不純物濃度が低くなるに従って、チャネル部34の柱状部30における径を大きくすることができる。
【0068】
さらに、半導体装置200では、チャネル部の第1部分の径が積層方向において一定である場合に比べて、チャネル部34における柱状部30の側壁30aの平坦性が高い。これにより、チャネル部34における柱状部30の側壁30aに対する絶縁部50の付き回りを向上できる。
【0069】
3.2. 第2変形例
次に、本実施形態の第2変形例に係る半導体装置について、図面を参照しながら説明する。図11は、本実施形態の第2変形例に係る半導体装置300の柱状部30を模式的に示す断面図である。
【0070】
上述した半導体装置100では、図2に示すように、チャネル部34は、第1部分34aおよび第2部分34bを有し、第1部分34aの径は、積層方向において一定であり、第2部分34bの径は、積層方向において一定であった。
【0071】
これに対し、半導体装置300では、図11に示すように、チャネル部34は、第1位置P1から第2位置P2に向かって、径が漸増している。図示の例では、チャネル部34は、例えば、逆テーパー形状を有している。チャネル部34は、第1部分および第2部分を有していない。
【0072】
半導体装置300では、チャネル部34は、第1位置P1から第2位置P2に向かって、径が漸増している。そのため、半導体装置300では、チャネル部34において成膜条件を変える必要がなく、容易にチャネル部34を形成できる。
【0073】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0074】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加し
た構成を含む。
【0075】
上述した実施形態および変形例から以下の内容が導き出される。
【0076】
半導体装置の一態様は、
互いに同じ導電型を有する半導体で構成されたソース部およびドレイン部と、前記ソース部と前記ドレイン部との間に設けられ、前記ソース部および前記ドレイン部よりも不純物濃度が低い半導体で構成されたチャネル部と、を有する柱状部と、
前記チャネル部における前記柱状部の側壁に絶縁部を介して設けられ、前記チャネル部の電流を制御するゲート電極と、
を有し、
前記チャネル部の前記ソース部側の端の第1位置における前記柱状部の径は、前記チャネル部の前記第1位置と異なる第2位置における前記柱状部の径よりも小さい。
【0077】
この半導体装置によれば、オフ状態のリーク電流を低減できる。
【0078】
半導体装置の一態様において、
前記第2位置は、前記チャネル部の前記ドレイン部側の端の位置であってもよい。
【0079】
この半導体装置によれば、オン状態の電流を増大させることができる。
【0080】
半導体装置の一態様において、
前記柱状部は、前記チャネル部と前記ドレイン部との間に設けられたドリフト部を有してもよい。
【0081】
この半導体装置によれば、耐圧を向上できる。
【0082】
半導体装置の一態様において、
前記チャネル部の前記第1位置における不純物濃度は、前記チャネル部の前記第2位置における不純物濃度よりも高くてもよい。
【0083】
この半導体装置によれば、不純物濃度が高い第1位置においても、チャネル部を完全に空乏化させ易い。
【0084】
半導体装置の一態様において、
前記チャネル部は、第1部分と、第2部分と、で構成され、
前記第1部分における前記柱状部の径は、前記第2部分における前記柱状部の径よりも小さくてもよい。
【0085】
この半導体装置によれば、第1部分における柱状部の径を、第1位置における柱状部の径と同じにすることができ、第2部分における柱状部の径を、第2位置における柱状部の径と同じにすることができる。
【0086】
半導体装置の一態様において、
前記チャネル部は、前記第1位置から前記第2位置に向かって、径が漸増する部分を有してもよい。
【0087】
この半導体装置によれば、例えば不純物濃度が低くなるに従って、チャネル部の柱状部における径を大きくすることができる。
【0088】
半導体装置の一態様において、
前記ゲート電極は、前記チャネル部を囲んでいてもよい。
【0089】
この半導体装置によれば、チャネル部を完全に空乏化し易い。
【0090】
半導体装置の一態様において、
基板を有し、
前記柱状部は、前記基板に設けられ、
前記ソース部は、前記基板と前記チャネル部との間に設けられていてもよい。
【0091】
この半導体装置によれば、不純物濃度が高い第1位置においても、チャネル部を完全に空乏化させ易い。
【0092】
半導体装置の一態様において、
パワーデバイスであってもよい。
【符号の説明】
【0093】
10…基板、20…バッファー層、30…柱状部、30a…側壁、32…ソース部、34…チャネル部、34a…第1部分、34b…第2部分、36…ドリフト部、38…ドレイン部、40…第1絶縁層、50…絶縁部、60…ゲート電極、70…第2絶縁層、100,200,300…半導体装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11