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特開2024-114325リード導体、およびパウチ型リチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114325
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】リード導体、およびパウチ型リチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/557 20210101AFI20240816BHJP
   H01M 50/178 20210101ALI20240816BHJP
   H01M 50/533 20210101ALI20240816BHJP
【FI】
H01M50/557
H01M50/178
H01M50/533
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020011
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【弁理士】
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】井上 明子
(72)【発明者】
【氏名】桑原 鉄也
(72)【発明者】
【氏名】後藤 健吾
(72)【発明者】
【氏名】相澤 駿介
【テーマコード(参考)】
5H011
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA06
5H011EE04
5H011FF02
5H011KK01
5H011KK03
5H043AA19
5H043BA19
5H043CA09
5H043DA09
5H043JA06D
5H043JA06E
5H043LA02D
5H043LA02E
5H043LA03D
5H043LA03E
(57)【要約】
【課題】電極との接触面積を十分に確保しつつ、パウチの損傷を抑制できるリード導体を提供する。
【解決手段】板状の形状を有するリード導体であって、電極を収納するパウチの内部に配置される第一端部を備え、前記第一端部は、表裏を構成する第一面および第二面と、前記第一面と前記第二面とにつらなり前記第一端部の端面を構成する第三面と、を備え、前記第一面は、前記電極に面して配置される面であり、前記第二面は、前記パウチに面して配置される面であり、前記第三面は、前記第一面につらなる第一曲面部と、前記第二面につらなる第二曲面部と、を備え、前記第一曲面部の第一曲率半径は、前記第二曲面部の第二曲率半径よりも小さい、リード導体。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の形状を有するリード導体であって、
電極を収納するパウチの内部に配置される第一端部を備え、
前記第一端部は、
表裏を構成する第一面および第二面と、
前記第一面と前記第二面とにつらなり前記第一端部の端面を構成する第三面と、を備え、
前記第一面は、前記電極に面して配置される面であり、
前記第二面は、前記パウチに面して配置される面であり、
前記第三面は、前記第一面につらなる第一曲面部と、前記第二面につらなる第二曲面部と、を備え、
前記第一曲面部の第一曲率半径は、前記第二曲面部の第二曲率半径よりも小さい、
リード導体。
【請求項2】
前記第一曲率半径は、前記リード導体の厚さの30%以上300%以下である、請求項1に記載のリード導体。
【請求項3】
前記第一曲面部における第一方向に沿った長さは、前記リード導体の厚さの20%以上120%以下であり、
前記第一方向は、前記第一端部から第二端部に向かう方向であり、
前記第二端部は、前記リード導体における前記パウチの外に配置される端部である、請求項1に記載のリード導体。
【請求項4】
前記第二曲率半径は、前記リード導体の厚さの80%以上1000%以下である、請求項1に記載のリード導体。
【請求項5】
前記第二曲面部における第二方向に沿った長さは、前記リード導体の厚さの5%以上であり、
前記第二方向は、前記第一面から前記第二面に向かう方向である、請求項1に記載のリード導体。
【請求項6】
前記第一面と前記第一曲面部との境界点は、前記第二面と前記第二曲面部との境界点よりも前記第一端部の先端に近い箇所に位置する、請求項1に記載のリード導体。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のリード導体を備える、パウチ型リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リード導体、およびパウチ型リチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、パウチ型のケース内に組み込まれる電極組立体を開示する。この電極組立体は、電極板のタブに連結される電極リードを備える。この電極リードは、上面、下面、側面、および端面を有する平板である。この電極リードにおける端面と側面との交差部位、側面と上面との交差部位、または側面と下面との交差部位は、ラウンド構造とされている。以下では、電極リードをリード導体、電極板を電極、ケースをパウチと呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-27893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リード導体は、電極との接触面積を十分に確保しつつ、パウチの損傷を抑制することが望ましい。特許文献1の技術は、リード導体における各面の交差部位をラウンド構造とすることで、電極のタブおよびパウチの損傷を抑制している。しかし、特許文献1の技術は、リード導体と電極との接触面積の十分な確保とリード導体によるパウチの損傷の抑制との両立の点で、改善の余地がある。
【0005】
本開示は、電極との接触面積を十分に確保しつつ、パウチの損傷を抑制できるリード導体を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のリード導体は、板状の形状を有するリード導体であって、電極を収納するパウチの内部に配置される第一端部を備え、前記第一端部は、表裏を構成する第一面および第二面と、前記第一面と前記第二面とにつらなり前記第一端部の端面を構成する第三面と、を備え、前記第一面は、前記電極に面して配置される面であり、前記第二面は、前記パウチに面して配置される面であり、前記第三面は、前記第一面につらなる第一曲面部と、前記第二面につらなる第二曲面部と、を備え、前記第一曲面部の第一曲率半径は、前記第二曲面部の第二曲率半径よりも小さい。
【発明の効果】
【0007】
本開示のリード導体は、電極との接触面積を十分に確保しつつ、パウチの損傷を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態のパウチ型リチウム二次電池の一部を拡大して示す概略断面図である。
図2図2は、実施形態のリード導体と電極との結合箇所を分解して示す概略斜視図である。
図3図3は、実施形態のリード導体の一部を拡大して示す概略断面図である。
図4図4は、実施形態のリード導体を製造する方法の第一工程を示す説明図である。
図5図5は、実施形態のリード導体を製造する方法の第二工程を示す説明図である。
図6図6は、実施形態のリード導体を製造する方法の第三工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
(1)本開示の実施形態に係るリード導体は、板状の形状を有するリード導体であって、電極を収納するパウチの内部に配置される第一端部を備え、前記第一端部は、表裏を構成する第一面および第二面と、前記第一面と前記第二面とにつらなり前記第一端部の端面を構成する第三面と、を備え、前記第一面は、前記電極に面して配置される面であり、前記第二面は、前記パウチに面して配置される面であり、前記第三面は、前記第一面につらなる第一曲面部と、前記第二面につらなる第二曲面部と、を備え、前記第一曲面部の第一曲率半径は、前記第二曲面部の第二曲率半径よりも小さい。
【0011】
本開示のリード導体は、電極との接触面積を十分に確保しつつ、パウチの損傷を抑制できる。第三面が第一曲面部および第二曲面部を備えることで、リード導体による電極およびパウチの損傷が抑制される。第一曲面部は第二曲面部よりも電極の近位に配置される。第一曲率半径が第二曲率半径よりも小さいと、リード導体と電極との接触面積が十分に確保される。第二曲面部は第一曲面部よりもパウチの近位に配置される。パウチは、一般的に薄い膜またはシートで構成されており、電極よりも損傷し易い。第一曲率半径が第二曲率半径よりも小さい、つまり第二曲率半径が第一曲率半径よりも大きいと、リード導体によるパウチの損傷が効果的に抑制される。
【0012】
(2)上記(1)のリード導体において、前記第一曲率半径は、前記リード導体の厚さの30%以上300%以下であってもよい。
【0013】
第一曲率半径が上記厚さの30%以上であれば、リード導体による電極の損傷が抑制され易い。第一曲率半径が上記厚さの300%以下であれば、リード導体と電極との接触面積が確保され易い。
【0014】
(3)上記(1)または上記(2)のリード導体において、前記第一曲面部における第一方向に沿った長さは、前記リード導体の厚さの20%以上120%以下であってもよい。前記第一方向は、前記第一端部から第二端部に向かう方向であり、前記第二端部は、前記リード導体における前記パウチの外に配置される端部である。
【0015】
第一曲面部の上記長さが上記厚さの20%以上であれば、第一曲面部が大きくなり易く、リード導体による電極の損傷が抑制され易い。第一曲面部の上記長さが上記厚さの120%以下であれば、第一曲面部が大きくなり過ぎず、リード導体と電極との接触面積が確保され易い。
【0016】
(4)上記(1)から上記(3)のいずれかのリード導体において、前記第二曲率半径は、前記リード導体の厚さの80%以上1000%以下であってもよい。
【0017】
第二曲率半径が上記厚さの80%以上であれば、リード導体によるパウチの損傷が抑制され易い。第二曲率半径が上記厚さの1000%以下であれば、第二曲面部を構成し易い。第二曲率半径が上記厚さの1000%以下であれば、相対的に第二面が大きく確保され易い。第二面が大きく確保されることで、第二面の一部とパウチとが良好に密着される。そのため、上記リード導体を備えるパウチ型リチウム二次電池を大型化することなく、パウチが適切に密閉される。第二曲率半径が上記厚さの1000%以下であれば、第三面における第一曲面部と第二曲面部との間に平面部が構成され易い。第三面に平面部が構成されると、リード導体によるパウチの損傷が抑制され易い。
【0018】
(5)上記(1)から上記(4)のいずれかのリード導体において、前記第二曲面部における第二方向に沿った長さは、前記リード導体の厚さの5%以上であってもよい。前記第二方向は、前記第一面から前記第二面に向かう方向である。
【0019】
第二曲面部の上記長さが上記厚さの5%以上であれば、リード導体によるパウチの損傷が抑制され易い。
【0020】
(6)上記(1)から上記(5)のいずれかのリード導体において、前記第一面と前記第一曲面部との境界点は、前記第二面と前記第二曲面部との境界点よりも前記第一端部の先端に近い箇所に位置してもよい。
【0021】
上記の構成によれば、リード導体と電極との接触面積が確保され易い。
【0022】
(7)本開示の実施形態に係るパウチ型リチウム二次電池は、上記(1)から上記(6)のいずれかのリード導体を備える。
【0023】
本開示のパウチ型リチウム二次電池は、本開示のリード導体を備えるため、リード導体と電極との接触面積を十分に確でき、かつリード導体によるパウチの損傷を抑制できる。
【0024】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のリード導体およびパウチ型リチウム二次電池の具体例を、図面を参照して説明する。図中の同一符号は同一または相当部分を示す。各図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張または簡略化して示す場合がある。図面における各部の寸法比も実際と異なる場合がある。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0025】
<リード導体>
図1から図3を参照して、実施形態のリード導体10を説明する。リード導体10は、図1に示すパウチ型リチウム二次電池100の構成要素であり、パウチ型リチウム二次電池100の電池セルから電気を取り出すためのリード線である。リード導体10は、パウチ型リチウム二次電池100の電極110に連結される。リード導体10と電極110とは、例えば溶接によって、直接的に接続される。リード導体10は、一般的に電極110のタブ111に連結される。
【0026】
リード導体10は、板状の形状を有する金属プレートである。リード導体10の厚さT10は、一般的に0.2mm以上0.6mm以下である。リード導体10の構成金属は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、または銅合金である。リード導体10は、本体部と被覆層とを備えていてもよい。本体部の構成金属が上述したリード導体10の構成金属である。被覆層の構成金属は、本体部の構成金属よりも耐食性に優れるとよい。本体部の構成金属が銅または銅合金である場合、被覆層の構成金属は例えばニッケルである。被覆層は、例えばめっき法によって形成される。
【0027】
リード導体10は、第一端部11と第二端部12とを備える。第一端部11は、パウチ型リチウム二次電池100のパウチ150の内部に配置される。第二端部12は、パウチ型リチウム二次電池100のパウチ150の外に配置される。
【0028】
リード導体10の第一端部11は、図3に示すように、第一面1と第二面2と第三面3とを備える。第一面1と第二面2とは、リード導体10の表裏面を構成する。第一面1は、電極110に面して配置される面である。第二面2は、パウチ150に面して配置される面である。第三面3は、第一面1と第二面2とにつらなり第一端部11の端面を構成する。実施形態のリード導体10の特徴の一つは、第三面3が非対称な第一曲面部31と第二曲面部32とを備える点にある。非対称とは、曲率半径が異なることをいう。本例の第三面3は、第一曲面部31と第二曲面部32とをつなぐ平面部33をさらに備える。
【0029】
≪第一曲面部≫
第一曲面部31は第一面1につらなる。第一曲面部31の第一曲率半径は、第二曲面部32の第二曲率半径よりも小さい。第一曲率半径は、変曲点を含む3点を通過する円の半径である。本例での3点は、第一面1と第一曲面部31との境界点71、第一曲面部31と平面部33との境界点72、および中間点75である。中間点75は、後述する長さL11を二等分する直線上の点である。平面部33を備えない場合、3点は、第一面1と第一曲面部31との境界点71、第一曲面部31と第二曲面部32との境界点、および中間点75である。
【0030】
第一曲率半径は、例えば、リード導体10の厚さT10の30%以上300%以下である。第一曲率半径が厚さT10の30%以上であれば、リード導体10による電極110の損傷が抑制され易い。第一曲率半径が厚さT10の300%以下であれば、リード導体10と電極110との接触面積が確保され易い。第一曲率半径は、厚さT10の50%以上200%以下であってもよい。
【0031】
第一曲面部31における第一方向D1に沿った長さL11は、例えば、リード導体10の厚さT10の20%以上120%以下である。第一方向D1は、第一端部11から第二端部12に向かう方向である。長さL11が厚さT10の20%以上であれば、第一曲面部31が大きくなり易く、リード導体10による電極110の損傷が抑制され易い。長さL11が厚さT10の120%以下であれば、第一曲面部31が大きくなり過ぎず、リード導体10と電極110との接触面積が確保され易い。長さL11は、厚さT10の40%以上80%以下であってもよい。
【0032】
第一曲面部31における第二方向D2に沿った長さL12は、例えば、厚さT10の5%以上である。第二方向D2は、第一面1から第二面2に向かう方向である。長さL12が厚さT10の5%以上であれば、リード導体10による電極110の損傷が抑制され易い。長さL12は、第一曲率半径および長さL11が上記各範囲を満たすいかなる長さであってもよい。
【0033】
第一面1と第一曲面部31との境界点71は、第一端部11の先端に近いとよい。境界点71は、例えば、後述する境界点73よりも第一端部11の先端に近い箇所に位置する。境界点71が第一端部11の先端に近いと、リード導体10と電極110との接触面積が確保され易い。
【0034】
≪第二曲面部≫
第二曲面部32は第二面2につらなる。第二曲面部32の第二曲率半径は、第一曲面部31の第一曲率半径よりも大きい。第二曲率半径は、変曲点を含む3点を通過する円の半径である。本例での3点は、第二面2と第二曲面部32との境界点73、第二曲面部32と平面部33との境界点74、および中間点76である。中間点76は、後述する長さL21を二等分する直線上の点である。平面部33を備えない場合、3点は、第二面2と第二曲面部32との境界点73、第一曲面部31と第二曲面部32との境界点、および中間点76である。
【0035】
第二曲率半径は、例えば、リード導体10の厚さT10の80%以上1000%以下である。第二曲率半径が厚さT10の80%以上であれば、リード導体10によるパウチ150の損傷が抑制され易い。第二曲率半径が厚さT10の1000%以下であれば、第二曲面部32を構成し易い。第二曲率半径が厚さT10の1000%以下であれば、相対的に第二面2が大きく確保され易い。第二面2が大きく確保されることで、第二面2の一部とパウチ150とが良好に密着される。そのため、パウチ型リチウム二次電池100を大型化することなく、パウチ150が適切に密閉される。第二曲率半径が厚さT10の1000%以下であれば、第三面3に平面部33が構成され易い。第三面3に平面部33が構成されると、リード導体10によるパウチ150の損傷が抑制され易い。第二曲率半径は、厚さT10の100%以上800%以下であってもよい。
【0036】
第二曲面部32における第二方向D2に沿った長さL22は、例えば、リード導体10の厚さT10の5%以上である。長さL22が厚さT10の5%以上であれば、リード導体10によるパウチ150の損傷が抑制され易い。長さL22は、例えば、厚さT10の30%以下である。長さL22が厚さT10の30%以下であれば、第二曲面部32が構成され易い。長さL22が厚さT10の30%以下であれば、第三面3に平面部33が構成され易い。第三面3に平面部33が構成されると、リード導体10によるパウチ150の損傷が抑制され易い。第三面3に平面部33が構成されると、第一端部11の薄肉化を抑制でき、第一端部11の変形を抑制し易い。長さL22は、厚さT10の5%以上30%以下、または5%以上20%以下であってもよい。
【0037】
第二曲面部32における第一方向D1に沿った長さL21は、例えば、厚さT10の20%以上500%以下である。長さL21が厚さT10の20%以上であれば、リード導体10によるパウチ150の損傷が抑制され易い。長さL21が厚さT10の500%以下であれば、相対的に第二面2が大きく確保され易く、第二面2とパウチ150とが良好に密着され易い。長さL21は、厚さT10の50%以上250%以下であってもよい。
【0038】
第二面2と第二曲面部32との境界点73は、境界点71よりも第一端部11の先端から遠位の箇所に位置するとよい。境界点73が境界点71よりも第一端部11の先端から遠位の箇所に位置する、言い換えると境界点71が第一端部11の先端に近いと、リード導体10と電極110との接触面積が確保され易い。境界点71と境界点73とは、第一方向D1に沿った同じ位置にあってもよい。
【0039】
≪平面部≫
平面部33は、第三面3における第一曲面部31および第二曲面部32を除いた領域である。平面部33は、第一端部11の先端面を構成する。本例の平面部33は、第一面1および第二面2に直交する方向に沿った面である。第三面3は、平面部33を備えなくてもよい。第三面3が平面部33を備えない場合、第三面3は第一曲面部31と第二曲面部32とで構成される。
【0040】
≪その他≫
リード導体10の第一端部11は、図2に示すように、互いに向かい合った二つの第四面4を備える。第四面4は、第一面1と第二面2とにつらなり第一端部11の側面を構成する。第四面4は、図示しない第三曲面部と第四曲面部とを備えていてもよい。第三曲面部は第一面1につらなる。第三曲面部は、例えば第一曲面部31と同様の構成を備える。第四曲面部は第二面2につらなる。第四曲面部は、例えば第二曲面部32と同様の構成を備える。第三曲面部の第三曲率半径は、例えば、第四曲面部の第四曲率半径よりも小さい。
【0041】
<リード導体の製造方法>
図4から図6を参照して、上述したリード導体10を製造する方法を説明する。リード導体の製造方法は、第一工程と第二工程と第三工程とを備える。第一工程と第二工程と第三工程とは順に行われる。
【0042】
≪第一工程≫
第一工程では、図4に示すように、ダイ310とパンチ320を用いて、金属プレート200に半抜き加工を行う。金属プレート200は、上述したリード導体10の材料である。半抜き加工では、金属プレート200からリード導体10となる主要部分211を完全に抜くのではなく、主要部分211を周辺部分212から浮き上がらせた状態で抜き加工を止める。半抜き加工では、ダイ310とパンチ320とを相対的に移動させている。本例では、ダイ310を固定し、パンチ320をダイ310に近づけたり離したりしている。
【0043】
ダイ310の内寸およびパンチ320の外寸は、クリアランスC1が構成されるように設定されている。クリアランスC1は、ダイ310の内面の延長面とパンチ320の外面の延長面との間の長さである。クリアランスC1が設けられることで、半抜き加工によって主要部分211と周辺部分212との間に亀裂が生じることを抑制しつつ、主要部分211に所定の第一角部213Rが構成される。クリアランスC1は、後述する第二工程において主要部分211に所定の第二角部214Rを構成でき、かつ第二工程または後述する第三工程において主要部分211を周辺部分212から分離できる範囲で設定される。
【0044】
ダイ310の内寸は、例えば、パンチ320の外寸よりも小さい。このような状態でのクリアランスC1は、マイナスクリアランスと呼ばれ、「-」表記されることがある。ダイ310の内寸は、パンチ320の外寸よりも大きくてもよい。つまり、クリアランスC1は、プラスの値およびマイナスの値のいずれでもよい。
【0045】
金属プレート200にパンチ320を押し込むと、ダイ310の角部310Rによって、金属プレート200の第一角部213Rにダレが形成される。ダレの大きさは、例えば、上記クリアランスC1によって決まる。ダレは、図3に示す第一曲面部31の第一曲率半径に寄与する。
【0046】
パンチ320の押し込みは、クリアランスC2を設けるように行う。クリアランスC2は、ダイ310の下面の延長面とパンチ320の上面の延長面との間の長さである。クリアランスC2が設けられることで、半抜き加工によって主要部分211と周辺部分212との間に亀裂が生じることを抑制しつつ、後述する第二工程において主要部分211に所定の第二角部214Rが構成される。クリアランスC2は、第二工程において主要部分211に所定の第二角部214Rを構成でき、かつ第二工程または後述する第三工程において主要部分211を周辺部分212から分離できる範囲で設定される。
【0047】
≪第二工程≫
第二工程では、図5に示すように、第一プレート331と第二プレート332を用いて、半抜き加工された金属プレート200に平押し加工を行う。平押し加工では、半抜き加工された金属プレート200を第一プレート331と第二プレート332で挟み、第一プレート331と第二プレート332とが互いに近づくように力を加える。本例では、第一プレート331で周辺部分212を第二プレート332に向かって押し、第二プレート332で主要部分211を第一プレート331に向かって押している。第一プレート331によって周辺部分212が第二プレート332に向かって動き、第二プレート332によって主要部分211が第一プレート331に向かって動く。図5に示す矢印は、主要部分211および周辺部分212がそれぞれ動く向きを示している。平押し加工によって、主要部分211が周辺部分212で囲まれる領域内に嵌まり、上下にずれていた主要部分211と周辺部分212とが平坦になる。主要部分211が周辺部分212で囲まれる領域内に嵌まると、主要部分211の第二角部214Rが周辺部分212に引っ張られて、主要部分211の第二角部214Rにダレが形成される。第二角部214Rは図6に示す。ダレの大きさは、例えば、上記クリアランスC1および上記クリアランスC2によって決まる。ダレは、図3に示す第二曲面部32の第二曲率半径に寄与する。
【0048】
第二工程では、主要部分211と周辺部分212とがつながったままであってもよいし、主要部分211と周辺部分212とが分離されてもよい。例えば、上記クリアランスC1または上記クリアランスC2が大きいと、主要部分211と周辺部分212とがつながったままになり易い。上記クリアランスC1または上記クリアランスC2が小さいと、主要部分211と周辺部分212とが分離され易い。
【0049】
≪第三工程≫
第三工程は、第二工程において主要部分211と周辺部分212とがつながったままである場合に行われる。第三工程では、図6に示すように、主要部分211を周辺部分212の内側に押し込み、主要部分211を周辺部分212から抜き取る。図6に示す白抜き矢印は、主要部分211を押し込む向きを示している。
【0050】
上述した第一工程、第二工程、および第三工程を行うと、図6に示すように、板状の形状を有する金属プレート210が形成される。この金属プレート210は、図4および図5に示す主要部分211からなる。この金属プレート210は、図1から図3に示すリード導体10である。金属プレート210は、第一角部213Rと第二角部214Rとを備える。第一角部213Rは、第一工程の半抜き加工で形成されたダレによって曲面で構成されている。この第一角部213Rは、図1から図3に示す第一曲面部31である。第二角部214Rは、第二工程の平押し加工で形成されたダレによって曲面で構成されている。この第二角部214Rは、図1から図3に示す第二曲面部32である。
【0051】
≪その他≫
上述したリード導体10は、金属プレートの所定箇所に切削加工を施して製造してもよい。金属プレートは、上述したリード導体10の材料である。金属プレートは、第一面、第二面、および第三面を備える。第一面と第二面とは表裏面を構成する。第三面は、第一面と第二面とにつらなり金属プレートの端面を構成する。第一面と第三面との角部に切削加工を施すことで、第一曲面部31が構成される。第一曲面部31が所定の第一曲率半径となるように切削加工を行う。第二面と第三面との角部に切削加工を施すことで、第二曲面部32が構成される。第二曲面部32が所定の第二曲率半径となるように切削加工を行う。
【0052】
<パウチ型リチウム二次電池>
図1および図2を参照して、実施形態のパウチ型リチウム二次電池100を説明する。実施形態のパウチ型リチウム二次電池100の特徴の一つは、上述した実施形態のリード導体10を備える点にある。パウチ型リチウム二次電池100は、電池セル、パウチ150、およびリード導体10を備える。電池セルは、正極120、負極130、分離膜140、および図示しない電解液を備える。図2では、説明の便宜上、リード導体10を電池セルから離して図示している。
【0053】
正極120は、図示しない正極集電体と正極活物質層とを備える。正極集電体は、本体部と正極タブ121とを備える。正極活物質は、本体部の表面に設けられている。正極活物質は、正極タブ121には設けられていない。正極タブ121は、リード導体10との連結箇所である。
【0054】
負極130は、図示しない負極集電体と負極活物質層とを備える。負極集電体は、本体部と負極タブ131とを備える。負極活物質は、本体部の表面に設けられている。負極活物質は、負極タブ131には設けられていない。負極タブ131は、リード導体10との連結箇所である。
【0055】
図2に示す正極120および負極130の各々は、図1に示す電極110と同じ構成を有する。図2に示す正極タブ121および負極タブ131の各々は、図1に示すタブ111と同じ構成を有する。
【0056】
分離膜140は、正極120と負極130との間に配置されている。正極120と分離膜140と負極130との積層体は、電解液に含浸されている。
【0057】
パウチ150は、上記積層体と電解液とを収納する容器である。パウチ150は、一般的に、第一樹脂層151と第二樹脂層152との間に金属層153が挟まれた複合部材で構成されている。パウチ150は、図1に示すように、上記複合部材の周縁部分が熱融着されて袋状に構成されている。
【0058】
リード導体10は、第一端部11がパウチ150の内部に配置され、第二端部12がパウチ150の外に配置されるように、パウチ150の開口部に熱融着されて固定されている。リード導体10の第一端部11は、第一面1が電極110のタブ111に面して配置され、第二面2がパウチ150に面して配置されるように、パウチ150の内部に配置されている。
【0059】
[試験例]
リード導体を作製し、そのリード導体を用いてパウチ型リチウム二次電池を組立てて、電極およびパウチの各損傷具合を調べた。
【0060】
<試料の作製>
〔試料No.1-1から試料No.1-3、試料No.2-1から試料No.2-3〕
金型を用いて、上述したリード導体の製造方法における第一工程、第二工程、および第三工程を順に行い、リード導体を作製した。
【0061】
≪第一工程≫
第一工程では、ダイとパンチを用いて、金属プレートに半抜き加工を行った。試料No.1-1から試料No.1-3では、ニッケルめっきされた銅からなる金属プレートを用いた。試料No.1-1から試料No.1-3では、金属プレートの厚さは0.3mmであった。試料No.2-1から試料No.2-3では、アルミニウムからなる金属プレートを用いた。試料No.2-1から試料No.2-3では、金属プレートの厚さは0.6mmであった。各試料における金属プレートの材質および厚さを表1に示す。
【0062】
ダイの内面の延長面とパンチの外面の延長面との間が所定のクリアランスC1となるようなダイとパンチを用いた。各試料におけるクリアランスC1を表1に示す。表1において、数値の前に「-」が付されているのは、ダイの内寸がパンチの外寸よりも小さい状態でのクリアランスを示す。表1において、数値の前に「-」が付されていないのは、ダイの内寸がパンチの外寸よりも大きい状態でのクリアランスを示す。
【0063】
ダイを固定して、パンチをダイに近づくように押し込んだ。パンチの押し込みは、ダイの下面の延長面とパンチの上面の延長面との間が所定のクリアランスC2となるように行った。各試料におけるクリアランスC2を表1に示す。この押し込みによって、金属プレートの主要部分を周辺部分から浮き上がらせた状態とした。
【0064】
≪第二工程≫
第二工程では、半抜き加工された金属プレートを第一プレートと第二プレートで挟み、第一プレートと第二プレートとが互いに近づくように力を加えて平押し加工を行った。平押し加工によって、金属プレートの主要部分を周辺部分で囲まれる領域内に嵌め、上下にずれていた主要部分と周辺部分とを平坦にした。
【0065】
≪第三工程≫
第三工程では、金属プレートの主要部分を押し込み、主要部分を周辺部分から抜き取った。抜き取った主要部分をリード導体とした。
【0066】
〔試料No.2-11から試料No.2-14〕
金属プレートに切削加工を行い、リード導体を作製した。試料No.2-11から試料No.2-14では、アルミニウムからなる金属プレートを用いた。試料No.2-11から試料No.2-14では、金属プレートの厚さは0.6mmであった。各試料における金属プレートの材質および厚さを表1に示す。金属プレートの第一面と第三面との角部に切削加工を施すことで、第一曲面部を構成した。金属プレートの第二面と第三面との角部に切削加工を施すことで、第二曲面部を構成した。
【0067】
〔試料No.1-21、試料No.2-21〕
試料No.1-21および試料No.2-21では、抜き打ち加工を行い、リード導体を作製した。試料No.1-21および試料No.2-21では、金属プレートに上述した半抜き加工、平押し加工、および切削加工を行っていない。試料No.1-21および試料No.2-21では、金属プレートから所定の形状および所定の大きさのリード導体を一回で抜き取った。試料No.1-21では、ニッケルめっきされた銅からなる金属プレートを用いた。試料No.1-21では、金属プレートの厚さは0.3mmであった。試料No.2-21では、アルミニウムからなる金属プレートを用いた。試料No.2-21では、金属プレートの厚さは0.6mmであった。
【0068】
<第一曲面部および第二曲面部>
試料No.1-1から試料No.1-3、試料No.2-1から試料No.2-3、および試料No.2-11から試料No.2-14の各リード導体は、第一面、第二面、第三面、および第四面を有し、第三面が非対称な第一曲面部と第二曲面部とを備えていた。第一面と第二面とは、リード導体の表裏面を構成する面である。第三面は、第一面と第二面とにつらなりリード導体の端面を構成する面である。第一曲面部は、第一面につらなる面である。第二曲面部は、第二面につらなる面である。第四面は、第一面と第二面とにつらなり第一端部の側面を構成する面である。
【0069】
第一曲面部について、第一曲率半径、長さL11、および長さL12を測定した。第一曲率半径は、実測値、およびリード導体の厚さに対する比率で示す。リード導体の厚さは、上記金属プレートの厚さである。リード導体の厚さに対する比率は、表1では「板厚比」と表記している。長さL11は、第一曲面部における第一方向に沿った長さである。長さL11も、実測値、およびリード導体の厚さに対する比率で示す。長さL12は、第一曲面部における第二方向に沿った長さである。長さL12も、実測値、およびリード導体の厚さに対する比率で示す。第一曲率半径、長さL11、および長さL12は、表2に示す。
【0070】
第二曲面部について、第二曲率半径、長さL21、および長さL22を測定した。第二曲率半径、長さL21、および長さL22は、第一曲面部と同様に、実測値、およびリード導体の厚さに対する比率で示す。長さL21は、第二曲面部における第一方向に沿った長さである。長さL22は、第二曲面部における第二方向に沿った長さである。第二曲率半径、長さL21、および長さL22も、表2に示す。
【0071】
試料No.1-21および試料No.2-21の各リード導体は、第一面、第二面、第三面、および第四面を有し、第三面に曲面部を備えない。試料No.1-21および試料No.2-21の各リード導体では、第三面は平面であり、第三面と第一面とでピン角形状の角部が構成され、第三面と第二面とでピン角形状の角部が構成されている。表2では、第一曲面部および第二曲面部の欄に「ピン角形状」と表記している。
【0072】
<損傷した個数>
得られた各試料のリード導体を用いて、パウチ型リチウム二次電池を組み立てた。正極にはアルミニウム箔を用いた。負極には銅箔を用いた。正極と負極との間には分離膜を配置した。正極には正極タブを設けた。負極には負極タブを設けた。各試料のリード導体は二つあり、一つを正極タブに接続し、もう一つを負極タブに接続した。正極タブまたは負極タブには、リード導体の第一端部の第一面を接続した。リード導体が接続された正極および負極をパウチで包囲した。パウチは、ポリオレフィン樹脂フィルムとポリアミド樹脂フィルムとの間にアルミ箔を挟んだ複合部材で構成した。ポリオレフィン樹脂フィルムがリード導体および電極に向くようにパウチを構成した。このとき、リード導体の第一端部の第二面がパウチに面して配置された。
【0073】
各試料のパウチ型リチウム二次電池を10個作製した。10個のパウチ型リチウム二次電池の各々について、1.5mの高さからリード導体が下を向くようにパウチ型リチウム二次電池を自由落下させた。自由落下させた後、パウチ型リチウム二次電池を分解し、リード導体周辺の電極およびパウチの各損傷具合を観察した。10個のパウチ型リチウム二次電池のうち損傷した個数を表2に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
表2に示すように、第三面に第一曲面部および第二曲面部を備えるリード導体では、電極およびパウチともに損傷が少なかった。第一曲率半径の板厚比が30%以上300%以下であれば、電極の損傷がゼロであった。第二曲率半径の板厚比が80%以上1000%以下であれば、パウチの損傷がゼロであった。第一曲率半径の板厚比が30%以上300%以下であり、かつ第二曲率半径の板厚比が80%以上1000%以下であれば、電極およびパウチともに損傷をゼロにできると考えられる。第一曲面部の第一曲率半径が第二曲面部の第二曲率半径よりも小さいと、リード導体と電極との接触面積が十分に確保されると期待できる。
【符号の説明】
【0077】
10 リード導体
11 第一端部、12 第二端部
1 第一面
2 第二面
3 第三面
31 第一曲面部、32 第二曲面部
33 平面部
4 第四面
71,72,73,74 境界点
75,76 中間点
L11,L12,L21,L22 長さ
T10 厚さ
D1 第一方向、D2 第二方向
100 パウチ型リチウム二次電池
110 電極、111 タブ
120 正極、121 正極タブ
130 負極、131 負極タブ
140 分離膜
150 パウチ
151 第一樹脂層、152 第二樹脂層、153 金属層
200,210 金属プレート
211 主要部分、212 周辺部分
213R 第一角部、214R 第二角部
310 ダイ、310R 角部、320 パンチ
331 第一プレート、332 第二プレート
C1,C2 クリアランス
図1
図2
図3
図4
図5
図6