(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114336
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】窒化物半導体装置及び窒化物半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20240816BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L21/265 601J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020029
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】美濃浦 優一
(72)【発明者】
【氏名】山田 敦史
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 陽一
【テーマコード(参考)】
5F102
【Fターム(参考)】
5F102GB01
5F102GC01
5F102GD01
5F102GJ02
5F102GK04
5F102GK08
5F102GL04
5F102GM04
5F102GM08
5F102GQ01
5F102GR04
5F102GR07
5F102GT01
5F102GV05
5F102GV07
5F102GV08
5F102HC01
5F102HC02
5F102HC10
5F102HC15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】携帯電話通信用の基地局、電波天文学用の通信装置及び衛星通信用の通信装置に使用できる高い耐圧の確保及び高い電子の移動度の確保できる窒化物半導体装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】窒化物半導体装置1は、チャネル層22と、チャネル層の上のInを含むバリア層24と、n型の第1窒化物半導体層30Sと、n型の第2窒化物半導体層30Dと、ソース電極40Sと、ドレイン電極40Dと、平面視でソース電極とドレイン電極との間で、バリア層の上に設けられたゲート電極40Gと、を有する。バリア層及びチャネル層に、第1凹部20S及び第2凹部20Dが互いに離れて形成されている。第1窒化物半導体層は、第1凹部内に形成されるがバリア層の上には形成されておらず、第2窒化物半導体層は、平面視で第2凹部の上縁の内側にある第1領域31と、第1領域につながるバリア層の上の第2領域32と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャネル層と、
前記チャネル層の上のInを含むバリア層と、
n型の第1窒化物半導体層と、
n型の第2窒化物半導体層と、
前記第1窒化物半導体層の上に設けられたソース電極と、
前記第2窒化物半導体層の上に設けられたドレイン電極と、
平面視で前記ソース電極と前記ドレイン電極との間で、前記バリア層の上に設けられたゲート電極と、
を有し、
前記バリア層及び前記チャネル層に、第1凹部及び第2凹部が互いに離れて形成されており、
前記第1窒化物半導体層は、前記第1凹部内に形成され、前記バリア層の上には形成されておらず、
前記第2窒化物半導体層は、
平面視で第2凹部の上縁の内側にある第1領域と、
前記第1領域につながり、前記バリア層の上の第2領域と、
を有することを特徴とする窒化物半導体装置。
【請求項2】
前記バリア層は、
平面視で前記第2領域と重なる第3領域と、
平面視で前記第3領域よりも前記ゲート電極側の第4領域と、
を有し、
前記第3領域におけるInの濃度は、前記第4領域におけるInの濃度よりも低いことを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項3】
前記バリア層の組成は、In1-x-yAlxGayN(0≦x<1、0≦y<1、0<x+y<1)で表されることを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項4】
前記第2窒化物半導体層にピットが形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項5】
前記第2領域は単結晶を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項6】
前記第1窒化物半導体層及び前記第2窒化物半導体層は、前記バリア層よりも高濃度でn型不純物を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項7】
チャネル層の上にInを含むバリア層を形成する工程と、
前記バリア層及び前記チャネル層に、第1凹部及び第2凹部を互いに離れて形成する工程と、
前記第1凹部内にn型の第1窒化物半導体層を形成し、平面視で第2凹部の上縁の内側にある第1領域と、前記第1領域につながり、前記バリア層の上の第2領域と、を有するn型の第2窒化物半導体層を形成する工程と、
前記第1窒化物半導体層の上にソース電極を形成する工程と、
前記第2窒化物半導体層の上にドレイン電極を形成する工程と、
平面視で前記ソース電極と前記ドレイン電極との間で、前記バリア層の上にゲート電極を形成する工程と、
を有し、
前記第1窒化物半導体層は、前記バリア層の上には形成されないことを特徴とする窒化物半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、窒化物半導体装置及び窒化物半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
GaN系窒化物半導体を用いた高電子移動度トランジスタ(high electron mobility transistor:HEMT)は高出力動作が可能であり、無線通信及びレーダー等における送信側素子として用いられる。近年、無線の通信距離及びレーダーの検知距離を延伸するために、更なる高出力化が求められている。そして、高出力化のために、Inを含むInAlGaNをバリア層に用いた構造について検討されている。
【0003】
また、HEMTにおいて、ソース電極及びドレイン電極のオーミック抵抗の低減のために、高濃度で不純物を含有する低抵抗の再成長層として用いる技術についても検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2017-539073号公報
【特許文献2】米国特許第9252247号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2022/0140126号明細書
【特許文献4】特開2016-115931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
InAlGaNをバリア層に用いた構造に再成長層を組み合わせる場合、高い耐圧の確保及び高い電子の移動度の確保の両立が困難である。耐圧の低下は歩留まりの低下につながり得る。
【0006】
本開示の目的は、高い耐圧の確保及び高い電子の移動度の確保を両立することができる窒化物半導体装置及び窒化物半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一形態によれば、チャネル層と、前記チャネル層の上のInを含むバリア層と、n型の第1窒化物半導体層と、n型の第2窒化物半導体層と、前記第1窒化物半導体層の上に設けられたソース電極と、前記第2窒化物半導体層の上に設けられたドレイン電極と、平面視で前記ソース電極と前記ドレイン電極との間で、前記バリア層の上に設けられたゲート電極と、を有し、前記バリア層及び前記チャネル層に、第1凹部及び第2凹部が互いに離れて形成されており、前記第1窒化物半導体層は、前記第1凹部内に形成され、前記バリア層の上には形成されておらず、前記第2窒化物半導体層は、平面視で第2凹部の上縁の内側にある第1領域と、前記第1領域につながり、前記バリア層の上の第2領域と、を有する窒化物半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、高い耐圧の確保及び高い電子の移動度の確保を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る窒化物半導体装置の構造を示す断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図4】第1実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図5】第1実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図6】第1実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
【
図7】第1実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法を示す断面図(その5)である。
【
図8】第1実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法を示す断面図(その6)である。
【
図9】第1実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法を示す断面図(その7)である。
【
図10】第1実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法を示す断面図(その8)である。
【
図11】第1実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法を示す断面図(その9)である。
【
図12】第2実施形態に係るディスクリートパッケージを示す図である。
【
図13】第3実施形態に係るPFC回路を示す結線図である。
【
図14】第4実施形態に係る電源装置を示す結線図である。
【
図15】第5実施形態に係る増幅器を示す結線図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本願発明者らは、従来の再成長層を含む窒化物半導体装置において、バリア層がInを含む場合に高い耐圧の確保及び高い電子の移動度の確保の両立が困難となる原因を究明すべく鋭意検討を行った。この結果、既に形成されているバリア層からのInの離脱を回避するために再成長層を低温で形成した場合には、再成長層にピットが形成されやすいことが判明した。再成長層のピットが形成された部分は、設計値よりも薄くなるため、高抵抗となる。このため、再成長層のピットが形成された部分に電界が集中しやすくなり、耐圧が低下してしまうのである。一方、ピットの形成を回避するために再成長層を高温で形成した場合には、バリア層からInが離脱し、二次元電子ガス(two dimensional gas:2DEG)の濃度が低下し、電子の移動度が低下してしまう。本願発明者らは、これらの知見に基づき、高い耐圧の確保及び高い電子の移動度の確保を両立すべく鋭意検討を行い、下記の実施形態に想到した。
【0011】
以下、本開示の実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省くことがある。
【0012】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について説明する。第1実施形態は、GaN系HEMT、すなわち電界効果トランジスタ(field effect transistor:FET)を含む窒化物半導体装置に関する。
図1は、第1実施形態に係る窒化物半導体装置の構造を示す断面図である。
【0013】
第1実施形態に係る窒化物半導体装置1は、
図1に示すように、基板10と、エピタキシャル層20と、第1窒化物半導体層30Sと、第2窒化物半導体層30Dと、ソース電極40Sと、ドレイン電極40Dと、ゲート電極40Gと、パッシベーション膜50とを有する。
【0014】
エピタキシャル層20は基板10の上に設けられている。エピタキシャル層20は、例えば、バッファ層21と、チャネル層22と、スペーサ層23と、バリア層24とを有する。
【0015】
基板10は、例えばSiC基板である。バッファ層21は基板10の上に設けられている。バッファ層21は、例えば、AlN層、GaN層又はAlGaN層である。バッファ層21が、AlN層及びGaN層の両方を含む超格子構造を備えていてもよい。
【0016】
チャネル層22はバッファ層21の上に設けられている。チャネル層22は、例えば、導電型を付与する不純物の意図的なドーピングが行われていないGaN層(i-GaN層)である。チャネル層22の厚さは、例えば、1μm~5μmである。
【0017】
スペーサ層23はチャネル層22の上に設けられている。スペーサ層23は、例えば、AlN層又はAlGaN層である。スペーサ層23の厚さは、例えば、0.5nm~5nmである。
【0018】
バリア層24はスペーサ層23の上に設けられている。バリア層24はInを含む。バリア層24は、例えば、n型のInAlGaN層である。バリア層24の組成は、例えばIn1-x-yAlxGayN(0≦x<1、0≦y<1、0<x+y<1)で表される。バリア層24の厚さは、例えば、4nm~10nmである。エピタキシャル層20がバリア層24の上に、GaN層等のキャップ層を有してもよい。
【0019】
エピタキシャル層20に、素子領域を画定する素子分離領域が形成されており、素子領域内において、エピタキシャル層20に、ソース用の第1凹部20Sと、ドレイン用の第2凹部20Dとが形成されている。第1凹部20S及び第2凹部20Dは互いに離れている。第1凹部20S及び第2凹部20Dは、例えばバリア層24の上面からチャネル層22の上面よりも深い位置まで形成されている。つまり、第1凹部20S及び第2凹部20Dは、少なくともバリア層24、スペーサ層23及びチャネル層22に形成されている。
【0020】
第1窒化物半導体層30Sは第1凹部20S内に形成され、バリア層24の上には形成されていない。第1窒化物半導体層30Sは、平面視で第1凹部20Sの上縁の内側にある。
【0021】
第2窒化物半導体層30Dは、第1領域31と、第2領域32とを有する。第1領域31は、平面視で第2凹部20Dの上縁の内側にある。第1領域31の大部分は第2凹部20D内に形成されている。第1領域31の一部がエピタキシャル層20の上面より上方にあってもよい。第2領域32は、第1領域31につながり、バリア層24の上にある。第2領域32は、平面視でチャネル層22と重なる。
【0022】
第1窒化物半導体層30S及び第2窒化物半導体層30Dは、例えば、n型不純物としてSi又はGeを含む。第1窒化物半導体層30S及び第2窒化物半導体層30Dは、例えばバリア層24よりも高濃度でn型不純物を含む。第1窒化物半導体層30S及び第2窒化物半導体層30Dにおけるn型不純物の濃度は、例えば1×1019/cm3以上である。第1窒化物半導体層30S及び第2窒化物半導体層30Dは、例えばn型のGaN層又はInGaN層である。第1窒化物半導体層30S及び第2窒化物半導体層30Dは単結晶を含む。例えば、第1窒化物半導体層30S及び第2窒化物半導体層30Dの各々の大部分が単結晶から構成される。第1領域31及び第2領域32は単結晶を含む。第1領域31及び第2領域32の各々の大部分が単結晶から構成される。
【0023】
第1窒化物半導体層30Sの上にソース電極40Sが形成され、第2窒化物半導体層30Dの上にドレイン電極40Dが形成されている。バリア層24の上に、ソース電極40S及びドレイン電極40Dを覆うパッシベーション膜50が形成されている。パッシベーション膜50には、平面視でソース電極40S及びドレイン電極40Dの間に位置する開口部50Gが形成されており、開口部50Gを通じてバリア層24と接するゲート電極40Gがパッシベーション膜50の上に形成されている。
【0024】
ソース電極40S及びドレイン電極40Dは、例えば、Ti膜と、Ti膜の上のAl膜とを含む。ゲート電極40Gは、例えば、Ni膜を含む。ゲート電極40Gが、Ni膜の上のAu膜を更に含んでもよい。ソース電極40Sは第1窒化物半導体層30Sにオーミック接触し、ドレイン電極40Dは第2窒化物半導体層30Dにオーミック接触している。ゲート電極40Gはエピタキシャル層20にとショットキー接触している。パッシベーション膜50は、例えば、Si、Al、Hf、Zr、Ti、Ta又はWの酸化物、窒化物又は酸窒化物の膜であり、好ましくはSiN膜である。パッシベーション膜50の厚さは、例えば、2nm~500nmである。
【0025】
窒化物半導体装置1では、二次元電子ガス(2DEG)29がチャネル層22の上面の近傍に存在する。例えば、第1凹部20S及び第2凹部20Dの各底面は、2DEG29より深い位置にある。
【0026】
ここで、第2窒化物半導体層30D及びバリア層24について説明する。
図2は、
図1の一部を拡大して示す断面図である。
【0027】
図2に示すように、第1領域31の第2凹部20Dの内壁面の近傍にはピット30Xがあってもよい。詳細は後述するが、第2窒化物半導体層30Dの形成の際に、第2凹部20Dの底面及び内壁面から結晶成長が生じるため、ピット30Xが形成され得る。また、バリア層24が、平面視で第2領域32と重なる第3領域25と、平面視で第3領域25よりもゲート電極40G側の第4領域26とを有し、第3領域25におけるInの濃度が第4領域26におけるInの濃度より低くてもよい。また、2DEG29の濃度は、第3領域25の下方において、第4領域26の下方よりも低くなっている。
【0028】
第1窒化物半導体層30Sの第1凹部20Sの内壁面の近傍にピット30Xと同様のピットがあってもよい。
【0029】
次に、第1実施形態に係る窒化物半導体装置1の製造方法について説明する。
図3~
図11は、第1実施形態に係る窒化物半導体装置1の製造方法を示す断面図である。
【0030】
まず、
図3に示すように、基板10上に、バッファ層21、チャネル層22、スペーサ層23及びバリア層24を含むエピタキシャル層20を形成する。エピタキシャル層20は、例えば有機金属気相成長(metal organic chemical vapor deposition:MOCVD)法及び分子線エピタキシー(molecular beam epitaxy:MBE)法等の結晶成長法により形成することができる。
【0031】
MOCVD法によりエピタキシャル層20を形成する場合、例えば、Al源であるトリメチルアルミニウム(TMA)ガス、Ga源であるトリメチルガリウム(TMG)ガス、In源であるトリメチルインジウム(TMI)ガス及びN源であるアンモニア(NH3)ガスの混合ガスを用いる。このとき、成長させる窒化物半導体層の組成に応じて、TMAガス、TMGガス及びTMIガスの供給の有無及び流量を適宜設定する。各窒化物半導体層に共通の原料であるNH3ガスの流量は、例えば100ccm~10LM程度とする。
【0032】
次いで、エピタキシャル層20に、素子領域を画定する素子分離領域が形成する。素子分離領域の形成では、例えば、素子分離領域を形成する予定の領域を露出するフォトレジストのパターンをエピタキシャル層20の上に形成し、このパターンをマスクとしてAr等のイオン注入を行う。このパターンをエッチングマスクとして塩素系ガスを用いたドライエッチングを行ってもよい。
【0033】
その後、
図4に示すように、バリア層24の上にSiN膜71を形成し、SiN膜71の上にフォトレジストマスク72を形成する。フォトレジストマスク72には、開口部72S及び72Dが形成されている。第1窒化物半導体層30S及び第1凹部20Sが形成される領域が開口部72Sから露出する。第2窒化物半導体層30Dが形成される領域が開口部72Dから露出する。
【0034】
続いて、
図5に示すように、SF
6ガス等のフッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、SiN膜71の開口部72Sから露出している部分及び開口部72Dから露出している部分を除去する。この時、エピタキシャル層20はフッ素系ガスに耐性を有するため、エッチングされない。この結果、開口部72Sに連なる第1開口部71S及び開口部72Dに連なる第2開口部71DがSiN膜71に形成される。
【0035】
次いで、
図6に示すように、フォトレジストマスク72を除去し、バリア層24及びSiN膜71の上にフォトレジストマスク73を形成する。フォトレジストマスク73には、第3開口部73S及び第4開口部73Dが形成されている。第1開口部71Sの全体が第3開口部73Sから露出する。第3開口部73Sからは、SiN膜71の第1開口部71Sの周囲の一部分も環状に露出する。第2凹部20Dが形成される領域が第4開口部73Dから露出する。フォトレジストマスク73は、第2窒化物半導体層30Dの第2領域32が形成される領域を覆う。フォトレジストマスク73は第2開口部71Dの内壁面の少なくとも一部を覆う。
【0036】
その後、
図7に示すように、塩素系ガスを用いたドライエッチングにより、バリア層24と、スペーサ層23と、チャネル層22の一部との第3開口部73Sから露出している部分及び第4開口部73Dから露出している部分を除去する。この時、SiN膜71は塩素系ガスに耐性を有するため、エッチングされない。この結果、第1開口部71Sに連なる第1凹部20S及び第3開口部73Sに連なる第2凹部20Dがエピタキシャル層20に形成される。つまり、第1凹部20Sの第2凹部20D側の形状はSiN膜71の第1開口部71Sの形状に依存するのに対し、第2凹部20Dの第1凹部20S側の形状はフォトレジストマスク73の第4開口部73Dの形状に依存し、第1開口部71Sの形状に依存しない。
【0037】
続いて、
図8に示すように、フォトレジストマスク73を除去する。バリア層24の上面は、第1凹部20S側ではSiN膜71に覆われ、第1開口部71Sから露出していないのに対し、第2凹部20D側ではSiN膜71に覆われず、第2開口部71Dから露出している。
【0038】
次いで、
図9に示すように、エピタキシャル層20の上に第1窒化物半導体層30S及び第2窒化物半導体層30Dを形成する。第1窒化物半導体層30S及び第2窒化物半導体層30Dは、例えばMOCVD法により形成することができる。この時、SiN膜71が成長マスクとして機能する。このため、第1窒化物半導体層30Sは第1凹部20S内に形成され、第2窒化物半導体層30Dは、第2凹部20D内と、バリア層24の第2開口部71Dから露出した領域の上とに形成される。従って、第2窒化物半導体層30Dは、第1領域31及び第2領域32を有する。
【0039】
第2領域32の形成の際に、バリア層24の第3領域25中の結晶に不可避的に乱れが生じ、第3領域25の下方において、
図2に示すように、2DEG29の濃度が減少する。また、第1窒化物半導体層30S及び第2窒化物半導体層30Dの形成の際に、第3領域25に含まれるInの一部が第2開口部71Dを通じて離脱することもある。Inの一部の離脱に伴って第3領域25の下方において、2DEG29の濃度が減少することもある。
【0040】
第1窒化物半導体層30S及び第2窒化物半導体層30Dの形成後、
図10に示すように、SiN膜71をウェットエッチングにより除去する。次いで、第1窒化物半導体層30Sの上にソース電極40Sを形成し、第2窒化物半導体層30Dの上にドレイン電極40Dを形成する。ソース電極40S及びドレイン電極40Dは、例えばリフトオフ法により形成することができる。すなわち、ソース電極40S及びドレイン電極40Dを形成する各領域を露出するフォトレジストのパターンを形成し、このパターンを成長マスクとして蒸着法により金属膜を形成し、このパターンをその上の金属膜と共に除去する。金属膜の形成では、例えば、Ti膜を形成し、その上にAl膜を形成する。その後、例えば、窒素雰囲気中にて400℃~1000℃で熱処理を行い、オーミック接触を確立する。
【0041】
続いて、
図11に示すように、バリア層24の上にソース電極40S及びドレイン電極40Dを覆うパッシベーション膜50を形成する。パッシベーション膜50は、例えばプラズマCVD法により形成することができる。パッシベーション膜50を、ALD法又はスパッタ法により形成してもよい。次いで、パッシベーション膜50に開口部50Gを形成する。開口部50Gの形成では、例えば、フォトリソグラフィにより開口部50Gを形成する予定の領域を露出するフォトレジストのパターンをパッシベーション膜50の上に形成し、このパターンをエッチングマスクとして弗素系ガスを用いたドライエッチングを行う。その後、開口部50Gを通じてバリア層24と接するゲート電極40Gをパッシベーション膜50の上に形成する。ゲート電極40Gは、例えばリフトオフ法により形成することができる。すなわち、ゲート電極40Gを形成する領域を露出するフォトレジストのパターンを形成し、このパターンを成長マスクとして蒸着法により金属膜を形成し、このパターンをその上の金属膜と共に除去する。金属膜の形成では、例えば、Ni膜を形成する。
【0042】
このようにして、第1実施形態に係る窒化物半導体装置1を製造することができる。
【0043】
なお、SiN膜71に代えて、再成長マスクとして、以下の条件を満たす他の膜を用いてもよい。第一に、形成時にエピタキシャル層20へのダメージが小さい。第二に、第1開口部71S及び第2開口部71Dを形成することが可能である。第三に、第1窒化物半導体層30S及び第2窒化物半導体層30Dの形成時の温度に耐性を有する。第四に、エピタキシャル層20に対して選択的に除去できる。これらの条件を満たせば、SiN膜71に代えて、再成長マスクとして他の膜を用いてもよい。
【0044】
ゲート電極40Gの形成後に、更に上層のSiN膜等の絶縁膜を形成し、その上に金属膜を形成することでフィールドプレート構造を形成してもよい。
【0045】
窒化物半導体装置1では、バリア層24がInを含む。このため、高濃度の2DEG29が得られ、高い電子の移動度を確保することができる。また、スペーサ層23が設けられていることで、バリア層24に優れた結晶性を得やすい。更に、窒化物半導体装置1が第1窒化物半導体層30S及び第2窒化物半導体層30Dを有する。このため、スペーサ層23及びバリア層24があっても、ソース電極40S及びドレイン電極40Dと2DEG29との間のオーミック抵抗を低く抑えることができる。
【0046】
また、第2窒化物半導体層30Dが第1領域31及び第2領域32を有する。上記のように、第2領域32の形成時に、バリア層24の第3領域25中の結晶に不可避的に乱れが生じ、
図2に示すように、第3領域25の下方において、第4領域26の下方よりも2DEG29の濃度が低くなる。このため、第3領域25の下方では、第4領域26の下方よりも抵抗が高くなり、第3領域25の下方にも電界が集中しやすくなる。従って、第1領域31にピット30Xに起因する抵抗が高い部分が存在しても、電界が集中しやすい範囲が広がり、ピット30Xの近傍での電界集中が緩和される。このため、電界集中に伴う絶縁破壊が抑制され、高い耐圧を得ることができる。
【0047】
また、第3領域25におけるInの濃度が第4領域26におけるInの濃度よりも低い場合には、第3領域25の下方において2DEG29の濃度が更に低くなり、ピット30Xの近傍での電界集中が更に緩和される。このため、より高い耐圧を得ることができる。
【0048】
更に、第1窒化物半導体層30Sは、第1凹部20S内に形成され、バリア層24の上には形成されていない。ゲート電極40Gとドレイン電極40Dとの間の電位差と比較すれば、ゲート電極40Gとソース電極40Sとの間の電位差は小さい。従って、第1窒化物半導体層30Sにピット30Xと同様のピットが存在していても、このピットの近傍に電界は集中しにくく、絶縁破壊は生じにくい。また、第1窒化物半導体層30Sがバリア層24の上に形成されていないことで、2DEG29の減少が生じにくく、抵抗の上昇を抑制できる。更に、ソース電極40Sとゲート電極40Gとの間の距離が小さい場合に、第1窒化物半導体層30Sの一部がゲート電極40G側でバリア層24の上にも存在すると、第1窒化物半導体層30Sとゲート電極40Gとの間に大きな寄生容量が生じるおそれがある。これに対し、窒化物半導体装置1では、このような大きな寄生容量の発生を抑制することができる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、HEMTのディスクリートパッケージに関する。
図12は、第2実施形態に係るディスクリートパッケージを示す図である。
【0050】
第2実施形態では、
図12に示すように、第1実施形態と同様の構造を備えた半導体装置1210の裏面がはんだ等のダイアタッチ剤1234を用いてランド(ダイパッド)1233に固定されている。また、ドレイン電極40Dが接続されたドレインパッド1226dに、Alワイヤ等のワイヤ1235dが接続され、ワイヤ1235dの他端が、ランド1233と一体化しているドレインリード1232dに接続されている。ソース電極40Sに接続されたソースパッド1226sにAlワイヤ等のワイヤ1235sが接続され、ワイヤ1235sの他端がランド1233から独立したソースリード1232sに接続されている。ゲート電極40Gに接続されたゲートパッド1226gにAlワイヤ等のワイヤ1235gが接続され、ワイヤ1235gの他端がランド1233から独立したゲートリード1232gに接続されている。そして、ゲートリード1232gの一部、ドレインリード1232dの一部及びソースリード1232sの一部が突出するようにして、ランド1233及び半導体装置1210等がモールド樹脂1231によりパッケージングされている。
【0051】
このようなディスクリートパッケージは、例えば、次のようにして製造することができる。まず、半導体装置1210をはんだ等のダイアタッチ剤1234を用いてリードフレームのランド1233に固定する。次いで、ワイヤ1235g、1235d及び1235sを用いたボンディングにより、ゲートパッド1226gをリードフレームのゲートリード1232gに接続し、ドレインパッド1226dをリードフレームのドレインリード1232dに接続し、ソースパッド1226sをリードフレームのソースリード1232sに接続する。その後、トランスファーモールド法にてモールド樹脂1231を用いた封止を行う。続いて、リードフレームを切り離す。
【0052】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態は、HEMTを備えたPFC(Power Factor Correction)回路に関する。
図13は、第3実施形態に係るPFC回路を示す結線図である。
【0053】
PFC回路1250には、スイッチ素子(トランジスタ)1251、ダイオード1252、チョークコイル1253、コンデンサ1254及び1255、ダイオードブリッジ1256、並びに交流電源(AC)1257が設けられている。そして、スイッチ素子1251のドレイン電極と、ダイオード1252のアノード端子及びチョークコイル1253の一端子とが接続されている。スイッチ素子1251のソース電極と、コンデンサ1254の一端子及びコンデンサ1255の一端子とが接続されている。コンデンサ1254の他端子とチョークコイル1253の他端子とが接続されている。コンデンサ1255の他端子とダイオード1252のカソード端子とが接続されている。また、スイッチ素子1251のゲート電極にはゲートドライバが接続されている。コンデンサ1254の両端子間には、ダイオードブリッジ1256を介してAC1257が接続される。コンデンサ1255の両端子間には、直流電源(DC)が接続される。そして、本実施形態では、スイッチ素子1251に、第1実施形態と同様の構造を備えた半導体装置が用いられている。
【0054】
PFC回路1250の製造に際しては、例えば、はんだ等を用いて、スイッチ素子1251をダイオード1252及びチョークコイル1253等に接続する。
【0055】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。第4実施形態は、サーバ電源に好適な、HEMTを備えた電源装置に関する。
図14は、第4実施形態に係る電源装置を示す結線図である。
【0056】
電源装置には、高圧の一次側回路1261及び低圧の二次側回路1262、並びに一次側回路1261と二次側回路1262との間に配設されるトランス1263が設けられている。
【0057】
一次側回路1261には、第3実施形態に係るPFC回路1250、及びPFC回路1250のコンデンサ1255の両端子間に接続されたインバータ回路、例えばフルブリッジインバータ回路1260が設けられている。フルブリッジインバータ回路1260には、複数(ここでは4つ)のスイッチ素子1264a、1264b、1264c及び1264dが設けられている。
【0058】
二次側回路1262には、複数(ここでは3つ)のスイッチ素子1265a、1265b及び1265cが設けられている。
【0059】
本実施形態では、一次側回路1261を構成するPFC回路1250のスイッチ素子1251、並びにフルブリッジインバータ回路1260のスイッチ素子1264a、1264b、1264c及び1264dに、第1実施形態と同様の構造を備えた半導体装置が用いられている。一方、二次側回路1262のスイッチ素子1265a、1265b及び1265cには、シリコンを用いた通常のMIS型FET(電界効果トランジスタ)が用いられている。
【0060】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について説明する。第5実施形態は、HEMTを備えた増幅器に関する。
図15は、第5実施形態に係る増幅器を示す結線図である。
【0061】
増幅器には、ディジタル・プレディストーション回路1271、ミキサー1272a及び1272b、並びにパワーアンプ1273が設けられている。
【0062】
ディジタル・プレディストーション回路1271は、入力信号の非線形歪みを補償する。ミキサー1272aは、非線形歪みが補償された入力信号と交流信号とをミキシングする。パワーアンプ1273は、第1実施形態と同様の構造を備えた半導体装置を備えており、交流信号とミキシングされた入力信号を増幅する。なお、本実施形態では、例えば、スイッチの切り替えにより、出力側の信号をミキサー1272bで交流信号とミキシングしてディジタル・プレディストーション回路1271に送出できる。この増幅器は、高周波増幅器、高出力増幅器として使用することができる。高周波増幅器は、例えば、携帯電話基地局用送受信装置、レーダー装置及びマイクロ波発生装置に用いることができる。
【0063】
本開示において、基板として、炭化シリコン(SiC)基板、サファイヤ基板、シリコン基板、AlN基板、GaN基板又はダイヤモンド基板を用いてもよい。基板が、導電性、半絶縁性又は絶縁性のいずれであってもよい。
【0064】
ゲート電極、ソース電極及びドレイン電極の構造は上述の実施形態のものに限定されない。例えば、これらが単層から構成されていてもよい。また、これらの形成方法はリフトオフ法に限定されない。更に、オーミック特性が得られるのであれば、ソース電極及びドレイン電極の形成後の熱処理を省略してもよい。ゲート電極の形成後に熱処理を行ってもよい。
【0065】
ゲート電極の構造として、上記の実施形態ではショットキー型ゲート構造が用いられているが、MIS(metal-insulator-semiconductor)型ゲート構造が用いられてもよい。
【0066】
窒化物半導体装置は、例えば、携帯電話通信用の基地局、電波天文学用の通信装置、衛星通信用の通信装置に使用することができる。
【0067】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0068】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0069】
(付記1)
チャネル層と、
前記チャネル層の上のInを含むバリア層と、
n型の第1窒化物半導体層と、
n型の第2窒化物半導体層と、
前記第1窒化物半導体層の上に設けられたソース電極と、
前記第2窒化物半導体層の上に設けられたドレイン電極と、
平面視で前記ソース電極と前記ドレイン電極との間で、前記バリア層の上に設けられたゲート電極と、
を有し、
前記バリア層及び前記チャネル層に、第1凹部及び第2凹部が互いに離れて形成されており、
前記第1窒化物半導体層は、前記第1凹部内に形成され、前記バリア層の上には形成されておらず、
前記第2窒化物半導体層は、
平面視で第2凹部の上縁の内側にある第1領域と、
前記第1領域につながり、前記バリア層の上の第2領域と、
を有することを特徴とする窒化物半導体装置。
(付記2)
前記バリア層は、
平面視で前記第2領域と重なる第3領域と、
平面視で前記第3領域よりも前記ゲート電極側の第4領域と、
を有し、
前記第3領域におけるInの濃度は、前記第4領域におけるInの濃度よりも低いことを特徴とする付記1に記載の窒化物半導体装置。
(付記3)
前記バリア層の組成は、In1-x-yAlxGayN(0≦x<1、0≦y<1、0<x+y<1)で表されることを特徴とする付記1又は2に記載の窒化物半導体装置。
(付記4)
前記第2窒化物半導体層にピットが形成されていることを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
(付記5)
前記第2領域は単結晶を含むことを特徴とする付記1乃至4のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
(付記6)
前記第1窒化物半導体層及び前記第2窒化物半導体層は、前記バリア層よりも高濃度でn型不純物を含むことを特徴とする付記1乃至5のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
(付記7)
前記チャネル層と前記バリア層との間のスペーサ層を有することを特徴とする付記1乃至6のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
(付記8)
チャネル層の上にInを含むバリア層を形成する工程と、
前記バリア層及び前記チャネル層に、第1凹部及び第2凹部を互いに離れて形成する工程と、
前記第1凹部内にn型の第1窒化物半導体層を形成し、平面視で第2凹部の上縁の内側にある第1領域と、前記第1領域につながり、前記バリア層の上の第2領域と、を有するn型の第2窒化物半導体層を形成する工程と、
前記第1窒化物半導体層の上にソース電極を形成する工程と、
前記第2窒化物半導体層の上にドレイン電極を形成する工程と、
平面視で前記ソース電極と前記ドレイン電極との間で、前記バリア層の上にゲート電極を形成する工程と、
を有し、
前記第1窒化物半導体層は、前記バリア層の上には形成されないことを特徴とする窒化物半導体装置の製造方法。
(付記9)
付記1乃至7のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置を有する増幅器。
(付記10)
付記1乃至7のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置を有する電源装置。
【符号の説明】
【0070】
1:窒化物半導体装置
10:基板
20:エピタキシャル層
20S:第1凹部
20D:第2凹部
21:バッファ層
22:チャネル層
23:スペーサ層
24:バリア層
25:第3領域
26:第4領域
29:2DEG
30S:第1窒化物半導体層
30D:第2窒化物半導体層
30X:ピット
31:第1領域
32:第2領域
40D:ドレイン電極
40G:ゲート電極
40S:ソース電極