(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114344
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】スイッチの駆動装置
(51)【国際特許分類】
H02M 1/00 20070101AFI20240816BHJP
【FI】
H02M1/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020048
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】星野 修平
【テーマコード(参考)】
5H740
【Fターム(参考)】
5H740BA12
5H740BB09
5H740BB10
5H740BC01
5H740BC02
5H740HH05
5H740JA01
5H740JB01
5H740KK01
5H740MM08
5H740MM11
(57)【要約】
【課題】短絡電流が流れている旨の誤判定の発生を抑制しつつ、短絡電流が実際に流れる場合の保護を極力迅速に行うことができるスイッチの駆動装置を提供する。
【解決手段】駆動回路Drは、スイッチSWのドレイン及びソース間電圧を判定電圧Vdesatとして検出するダイオード60及びコンデンサ62と、第1,第2コンパレータ66,68とを備えている。第1コンパレータ66は、判定電圧Vdesatと短絡閾値Vthsc1とを比較し、第2コンパレータ68は、スイッチSWのゲート電圧Vgとマスク閾値Vthsc2とを比較する。判定回路70は、第2コンパレータ68の出力信号Sgvをフィルタ期間遅延させて出力する。AND回路71は、第1コンパレータ66の出力信号Sgcと、判定回路70の出力信号Sgfvとに基づいて、異常信号Sgtを出力する。判定回路70は、スイッチSWの温度Tjが高い場合にフィルタ期間を短くする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続された上下アームのスイッチ(SW)を駆動するスイッチの駆動装置において、
前記スイッチがオン状態とされている場合における前記スイッチの高電位側端子及び低電位側端子の間の電圧である端子間電圧(Vdesat)、又は前記スイッチがオン状態とされている場合における前記スイッチの高電位側端子及び低電位側端子の間に流れる電流のいずれかを検出するパラメータ検出部(60~65)と、
前記パラメータ検出部の検出値が短絡閾値(Vthsc1)を超えているか否かを判定する電流判定部(66,67)と、
前記スイッチのゲートに充電電流が供給され始めた後における前記スイッチのゲート電圧がマスク閾値(Vthsc2)を超えたか否かを判定する電圧判定部(68,69)と、
前記パラメータ検出部の検出値が前記短絡閾値を超えていると前記電流判定部により判定されている状態で、前記スイッチのゲート電圧が前記マスク閾値を超えたと前記電圧判定部により判定されてからフィルタ期間(Lf)経過したタイミングにおいて、前記スイッチに短絡電流が流れている旨の異常信号(Sgt)を出力する信号出力部(70,71;51a,51b,52a,52b,71,172)と、
前記スイッチの温度(Tj)、又は前記スイッチの高電位側端子及び低電位側端子の間の電圧である端子間電圧(VHr)のいずれかを検出する状態検出部(40,41;44,45)と、
を備え、
前記状態検出部の検出値が高い場合、前記状態検出部の検出値が低い場合よりも前記フィルタ期間を短くする、スイッチの駆動装置。
【請求項2】
前記電流判定部は、前記パラメータ検出部の現在の検出値が前記短絡閾値を超えているか否かの判定結果を2値の論理信号により出力し、
前記電圧判定部は、前記スイッチの現在のゲート電圧が前記マスク閾値を超えているか否かの判定結果を2値の論理信号により出力し、
前記信号出力部は、
前記電圧判定部から出力される論理信号を前記フィルタ期間だけ遅らして出力する判定回路(70)を有し、
前記判定回路から出力された論理信号と、前記電流判定部の論理信号とに基づいて、前記異常信号を出力し、
前記状態検出部の検出値が高い場合、前記状態検出部の検出値が低い場合よりも前記フィルタ期間を短くする、請求項1に記載のスイッチの駆動装置。
【請求項3】
前記電流判定部は、前記パラメータ検出部の現在の検出値が前記短絡閾値を超えているか否かの判定結果を2値の論理信号により出力し、
前記信号出力部は、前記スイッチのゲート電圧にローパスフィルタ処理を施して出力するフィルタ回路(51a,51b,52a,52b)を有し、
前記電圧判定部は、前記フィルタ回路において前記ローパスフィルタ処理が施されたゲート電圧が前記マスク閾値を超えているか否かの判定結果を2値の論理信号により出力し、
前記信号出力部は、
前記状態検出部の検出値が高い場合、前記状態検出部の検出値が低い場合よりも前記ローパスフィルタ処理の時定数を小さくすることにより前記フィルタ期間を短くし、
前記電圧判定部の論理信号と、前記電流判定部の論理信号とに基づいて、前記異常信号を出力する、請求項1に記載のスイッチの駆動装置。
【請求項4】
スイッチ保護部(23)を備え、
前記スイッチ保護部は、前記異常信号を受信した場合、前記スイッチに対する駆動信号をオフ指令に切り替える、請求項1~3のいずれか1項に記載のスイッチの駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、直列接続された上下アームのスイッチを駆動するスイッチの駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載されているように、上下アーム短絡が発生した場合にスイッチを短絡電流から保護する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
短絡電流からスイッチを保護する構成として、以下に説明する構成が挙げられる。スイッチの駆動装置は、スイッチ(例えばNチャネルMOSFET)がオンされている場合におけるスイッチの高電位側端子及び低電位側端子の間の電圧である端子間電圧(例えばソース及びドレイン間電圧)、又はスイッチがオンされている場合におけるスイッチの高電位側端子及び低電位側端子の間に流れる電流(例えばドレイン電流)のいずれかを検出するパラメータ検出部を備えている。
【0005】
駆動装置は、更に、電流判定部、電圧判定部及び信号出力部を備えている。電流判定部は、パラメータ検出部の検出値が短絡閾値を超えているか否かを判定する。電圧判定部は、スイッチのゲートに充電電流が供給され始めた後におけるスイッチのゲート電圧がマスク閾値を超えたか否かを判定する。信号出力部は、パラメータ検出部の検出値が短絡閾値を超えていると電流判定部により判定されている状態で、スイッチのゲート電圧がマスク閾値を超えたと電圧判定部により判定されてからフィルタ期間経過したタイミングにおいて、スイッチに短絡電流が流れている旨の信号である異常信号を出力する。
【0006】
ここで、フィルタ期間が設定されているのは、スイッチに短絡電流が流れていないにもかかわらず、短絡電流が流れている旨誤判定される事態の発生を抑制するためである。つまり、スイッチがオフ状態からオンに切り替えられる過渡期間におけるパラメータ検出部の検出値は、スイッチがオン定常状態になる場合におけるパラメータ検出部の検出値よりも一時的に大きくなり得る。この場合、短絡電流が流れていないにもかかわらず、パラメータ検出部の検出値が短絡閾値を一時的に超えてしまい、短絡電流が流れていると誤判定され得る。
【0007】
誤判定の発生を抑制する上では、フィルタ期間が長めに設定されることが望ましい。しかしながら、この場合、実際に短絡電流が流れる場合におけるスイッチの保護が遅れてしまうおそれがある。
【0008】
本開示は、短絡電流が流れている旨の誤判定の発生を抑制しつつ、短絡電流が実際に流れる場合のスイッチの保護を極力迅速に行うことができるスイッチの駆動装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、直列接続された上下アームのスイッチを駆動するスイッチの駆動装置において、
前記スイッチがオン状態とされている場合における前記スイッチの高電位側端子及び低電位側端子の間の電圧である端子間電圧、又は前記スイッチがオン状態とされている場合における前記スイッチの高電位側端子及び低電位側端子の間に流れる電流のいずれかを検出するパラメータ検出部と、
前記パラメータ検出部の検出値が短絡閾値を超えているか否かを判定する電流判定部と、
前記スイッチのゲートに充電電流が供給され始めた後における前記スイッチのゲート電圧がマスク閾値を超えたか否かを判定する電圧判定部と、
前記パラメータ検出部の検出値が前記短絡閾値を超えていると前記電流判定部により判定されている状態で、前記スイッチのゲート電圧が前記マスク閾値を超えたと前記電圧判定部により判定されてからフィルタ期間経過したタイミングにおいて、前記スイッチに短絡電流が流れている旨の異常信号を出力する信号出力部と、
前記スイッチの温度、又は前記スイッチの高電位側端子及び低電位側端子の間の電圧である端子間電圧のいずれかを検出する状態検出部と、
を備え、
前記状態検出部の検出値が高い場合、前記状態検出部の検出値が低い場合よりも前記フィルタ期間を短くする。
【0010】
本開示によれば、短絡電流が流れている旨の誤判定の発生を抑制しつつ、短絡電流が実際に流れる場合の保護を極力迅速に行うことができる。
【0011】
ここで、本開示の駆動装置は、例えば以下のように具体化できる。
【0012】
前記状態検出部は、前記スイッチの温度を検出し、
前記駆動装置は、前記状態検出部により検出された温度が高い場合、前記状態検出部により検出された温度が低い場合よりも前記フィルタ期間を短くする。
【0013】
スイッチは、スイッチの温度が高いほど、スイッチング速度が低くなり、短絡耐量が小さくなる特性を有している。スイッチング速度が低いほど、スイッチがオフ状態からオン状態に切り替えられる過渡期間において、パラメータ検出部の検出値のオン定常状態における検出値に対する一時的な増加期間は短くなる。増加期間が短くなることと、短絡耐量が小さくなることとを踏まえると、スイッチの温度が高い場合、フィルタ期間が短く設定されることが望ましい。
【0014】
一方、スイッチは、スイッチの温度が低いほど、スイッチング速度が高くなり、短絡耐量が大きくなる特性を有している。スイッチング速度が高いほど、スイッチがオフ状態からオン状態に切り替えられる過渡期間において、パラメータ検出部の検出値のオン定常状態における検出値に対する一時的な増加期間は長くなる。増加期間が長くなることと、短絡耐量が大きくなることとを踏まえると、スイッチの温度が低い場合、フィルタ期間が長く設定されることが望ましい。
【0015】
この点に鑑み、状態検出部により検出された温度が高い場合、状態検出部により検出された温度が低い場合よりもフィルタ期間を短くする。
【0016】
また、本開示の駆動装置は、例えば以下のようにも具体化できる。
【0017】
前記状態検出部は、前記スイッチの高電位側端子及び低電位側端子の間の電圧である端子間電圧を検出し、
前記駆動装置は、前記状態検出部により検出された端子間電圧が高い場合、前記状態検出部により検出された端子間電圧が低い場合よりも前記フィルタ期間を短くする。
【0018】
スイッチがオフ状態とされている場合における端子間電圧が高いほど、スイッチに短絡電流が流れる場合においてスイッチにかかる短絡エネルギが大きくなる。このことを踏まえると、端子間電圧が高い場合、スイッチ保護の観点からフィルタ期間が短く設定されることが望ましい。
【0019】
この点に鑑み、状態検出部により検出された端子間電圧が高い場合、状態検出部により検出された端子間電圧が低い場合よりもフィルタ期間を短くする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図6】第2実施形態に係る駆動回路及びその周辺構成を示す図。
【
図7】第3実施形態に係る駆動回路及びその周辺構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的に及び/又は構造的に対応する部分及び/又は関連付けられる部分には同一の参照符号、又は百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分及び/又は関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
【0022】
<第1実施形態>
以下、本開示に係るスイッチの駆動装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0023】
図1に示すように、制御システムは、回転電機10と、インバータ20と、制御部23とを備えている。本実施形態において、回転電機10は、星形結線された3相の巻線11を備えている。例えば、制御システムは、車両に搭載されている。この場合、回転電機10のロータは、車両の駆動輪と動力伝達が可能なように接続されている。回転電機10は、例えば同期機である。
【0024】
回転電機10は、インバータ20を介して、直流電源21に接続されている。本実施形態において、直流電源21は、リチウムイオン蓄電池又はニッケル水素蓄電池等の2次電池である。なお、インバータ20は、平滑コンデンサ22を備えている。
【0025】
インバータ20は、U,V,W相それぞれについて、上,下アームスイッチSWの直列接続体を備えている。本実施形態において、各スイッチSWは、電圧制御型の半導体スイッチング素子であり、具体的にはNチャネルMOSFETである。各スイッチSWは、ボディダイオードを有している。各スイッチSWにおいて、高電位側端子がドレインであり、低電位側端子がソースである。
【0026】
なお、各スイッチがIGBTであってもよい。この場合、各スイッチSWにフリーホイールダイオードが逆並列接続されていればよい。IGBTにおいて、高電位側端子がコレクタであり、低電位側端子がエミッタである。
【0027】
各相において、上アームスイッチSWの低電位側端子と下アームスイッチSWの高電位側端子との接続点には、巻線11の第1端が接続されている。各相の巻線11の第2端は、中性点で接続されている。
【0028】
制御部23は、マイコンを主体として構成されており、回転電機10の制御量(例えばトルク)を指令値に制御すべく、インバータ20の各スイッチSWのスイッチング制御を行う。制御部23は、デッドタイムを挟みつつ上,下アームスイッチSWを交互にオン状態とすべく、上,下アームスイッチSWに対応する駆動信号G*を、上,下アームスイッチSWに対して個別に設けられた駆動回路Drに出力する。駆動信号G*は、スイッチSWのオンを指示するオン指令と、オフを指示するオフ指令とのいずれかをとる。
【0029】
続いて、
図2を用いて、駆動回路Drについて説明する。本実施形態の上,下アームの各駆動回路Drは、基本的には同じ構成である。
【0030】
まず、スイッチSWのスイッチング制御機能について説明する。駆動回路Drは、充電スイッチ31及び放電スイッチ32を備えている。充電スイッチ31の第1端には、駆動回路Drの電源端子Tvccが接続されている。電源端子Tvccには、定電圧電源30が接続されている。定電圧電源30から電源端子Tvccに供給される直流電圧が、駆動回路Drの電源電圧VCC(例えば15V)となる。
【0031】
充電スイッチ31の第2端には、駆動回路Drの出力端子Tgを介して、スイッチSWのゲートに接続されている。電源電圧VCCは、スイッチSWのゲート電圧の上限値に相当する。出力端子Tgには、放電スイッチ32を介して、スイッチSWのソースが接続されている。スイッチSWのソースは、グランド部に相当する。
【0032】
駆動回路Drは、スイッチング駆動部33を備えている。スイッチング駆動部33は、制御部23から出力された駆動信号G*を取得する。スイッチング駆動部33は、取得した駆動信号G*がオン指令である場合、充電処理を行う。充電処理は、充電スイッチ31をオン状態にして、かつ、放電スイッチ32をオフにする処理である。充電処理によれば、スイッチSWのゲート電圧がスイッチSWの閾値電圧(スレッショルド電圧)Vth以上となり、スイッチSWがオンに切り替えられる。
【0033】
スイッチング駆動部33は、取得した駆動信号G*がオフ指令である場合、放電処理を行う。放電処理は、充電スイッチ31をオフにして、かつ、放電スイッチ32をオンにする処理である。放電処理によれば、スイッチSWのゲート電圧が閾値電圧Vth未満となり、スイッチSWがオフに切り替えられる。
【0034】
なお、スイッチング駆動部33が提供する機能は、例えば、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェア及びそれを実行するコンピュータ、ハードウェア、又はそれらの組み合わせによって提供することができる。
【0035】
続いて、スイッチSWの過熱保護機能について説明する。
【0036】
駆動回路Drは、温度検出回路41を備えている。温度検出回路41には、駆動回路Drの第1温度検出端子Tt1及び第2温度検出端子Tt2を介して、温度センサ40の出力信号が入力される。本実施形態の温度センサ40は、感温ダイオードであり、スイッチSWの温度に応じた信号を出力する。温度検出回路41は、温度センサ40の出力信号に基づいて、スイッチSWの温度を検出する。なお、本実施形態において、温度センサ40及び温度検出回路41が「状態検出部」に相当する。
【0037】
駆動回路Drは、過熱保護コンパレータ42、電源43及び異常信号出力回路50を備えている。過熱保護コンパレータ42の非反転入力端子には、温度検出回路41により検出されたスイッチSWの温度(以下、検出温度Tj)が入力される。過熱保護コンパレータ42の反転入力端子には、電源43から出力される直流電圧が入力される。電源43の出力電圧が過熱閾値Tthとなる。過熱閾値Tthは、スイッチSWの許容上限温度、又はスイッチSWの許容上限温度未満の値に設定されている。
【0038】
過熱保護コンパレータ42の出力端子は、異常信号出力回路50に接続されている。検出温度Tjが過熱閾値Tth未満の場合、過熱保護コンパレータ42から異常信号出力回路50への出力信号Stの論理がLとなる。一方、検出温度Tjが過熱閾値Tthを超えた場合、過熱保護コンパレータ42から異常信号出力回路50への出力信号Stの論理がHに切り替わる。異常信号出力回路50は、過熱保護コンパレータ42の出力信号Stの論理がLからHに切り替わったと判定した場合、異常が発生した旨の信号であるフェール信号Sfの論理を反転させる(例えば、LからHに切り替える)。フェール信号Sfは、駆動回路Drのフェール端子Tfから出力され、制御部23に入力される。
【0039】
続いて、スイッチSWの過電流(短絡電流)保護機能について説明する。この保護機能は、回転電機10や負荷の短絡時に発生する過電流から保護する機能である。具体的には例えば、この保護機能は、上,下アームのスイッチSWのうち、一方の対向アーム側のスイッチにショート故障が発生している状態で、他方の自アーム側のスイッチがオンに切り替えられる上下アーム短絡が発生する場合において、自アーム側のスイッチを短絡電流から保護する機能である。
【0040】
本実施形態の駆動回路Drは、Desat方式の過電流保護機能を備えており、詳しくは、ダイオード60、抵抗体61、コンデンサ62、定電流電源63、供給スイッチ64及びリセットスイッチ65を備えている。
【0041】
ダイオード60のカソードには、スイッチSWの高電位側端子であるドレインが接続されている。ダイオード60のアノードには、抵抗体61の第1端が接続されている。抵抗体61の第2端には、コンデンサ62の第1端と、駆動回路Drのモニタ端子Tdesatと接続されている。コンデンサ62の第2端には、スイッチSWの低電位側端子であるソースが接続されている。なお、抵抗体61は必須ではない。この場合、ダイオード60のアノードとコンデンサ62の第1端とが接続される。
【0042】
モニタ端子Tdesatには、供給スイッチ64を介して定電流電源63が接続されている。定電流電源63は、定電圧電源30から給電されて定電流を出力する機能を有している。また、モニタ端子Tdesatには、リセットスイッチ65を介してスイッチSWのソースが接続されている。なお、本実施形態において、ダイオード60、抵抗体61、コンデンサ62、供給スイッチ64及びリセットスイッチ65が「パラメータ検出部」に相当する。
【0043】
駆動回路Drは、過電流保護のための構成として、第1コンパレータ66、第1電源67、第2コンパレータ68、第2電源69、判定回路70及びAND回路71を備えている。第1コンパレータ66の非反転入力端子には、モニタ端子Tdesatが接続されている。これにより、第1コンパレータ66の非反転入力端子には、コンデンサ62の端子間電圧である判定電圧Vdesatが入力される。第1コンパレータ66の反転入力端子には、第1電源67の出力電圧である短絡閾値Vthsc1が入力される。短絡閾値Vthsc1は、上下アーム短絡が発生してスイッチSWに短絡電流が流れることを判定可能な値に設定されている。なお、本実施形態において、第1コンパレータ66及び第1電源67が「電流判定部」に相当する。
【0044】
第2コンパレータ68の非反転入力端子には、出力端子Tgに接続されている。これにより、第2コンパレータ68の非反転入力端子には、スイッチSWのゲート電圧Vgが入力される。第2コンパレータ68の反転入力端子には、第2電源69の出力電圧であるマスク閾値Vthsc2が入力される。本実施形態において、マスク閾値Vthsc2は、スイッチSWの閾値電圧Vth(具体化には例えば、スイッチSWのミラー電圧)以上であってかつ電源電圧VCC未満の値に設定されている。なお、本実施形態において、第2コンパレータ68及び第2電源69が「電圧判定部」に相当する。
【0045】
第2コンパレータ68の出力信号Sgvは、判定回路70に入力される。判定回路70の出力信号である電圧判定信号Sgfvと、第1コンパレータ66の出力信号である電流判定信号Sgcとは、AND回路71に入力される。AND回路71は、電圧判定信号Sgfv及び電流判定信号Sgcの双方の論理がHである場合に論理Hの異常信号Sgtを出力する。論理Hの異常信号Sgtは、スイッチSWのドレイン及びソース間に短絡電流が流れている旨を示す信号である。一方、AND回路71は、電圧判定信号Sgfv及び電流判定信号Sgcの少なくとも一方の論理がLである場合に論理Lの異常信号Sgtを出力する。論理Lの異常信号Sgtは、スイッチSWのドレイン及びソース間に短絡電流が流れていない旨を示す信号である。異常信号出力回路50は、AND回路71の異常信号Sgtの論理がLからHに切り替わったと判定した場合、フェール信号Sfの論理を反転させる(例えば、LからHに切り替える)。なお、本実施形態において、判定回路70及びAND回路71が「信号出力部」に相当する。
【0046】
スイッチング駆動部33は、供給スイッチ64及びリセットスイッチ65の駆動制御を行う。詳しくは、スイッチング駆動部33は、駆動信号G*がオン指令に切り替えられたと判定した場合、リセットスイッチ65をオフに維持した状態で、供給スイッチ64をオンに切り替える。これにより、定電流電源63からコンデンサ62へと電流が供給され始め、判定電圧Vdesatが0から上昇し始める。
【0047】
スイッチSWに短絡電流が流れない場合、オン指令がなされる期間において、判定電圧Vdesatは短絡閾値Vthsc1まで上昇しない。一方、スイッチSWに短絡電流が流れる場合、オン指令がなされる期間において、判定電圧Vdesatは短絡閾値Vthsc1を超える。この場合、第1コンパレータ66の電流判定信号Sgcの論理がLからHに切り替わる。
【0048】
スイッチング駆動部33は、駆動信号G*がオフ指令とされる期間において、リセットスイッチ65を一時的にオンする。これにより、判定電圧Vdesatが0にリセットされる。
【0049】
判定回路70は、第2コンパレータ68から出力される論理信号Sgvをフィルタ期間Lfだけ遅らして出力する処理回路である。判定回路70は、スイッチSWに短絡電流が流れている旨の誤判定の発生を抑制しつつ、短絡電流が実際に流れる場合のスイッチSWの保護を迅速に行うためのものである。
【0050】
つまり、充電処理によってスイッチSWがオフ状態からオンに切り替えられる過渡期間における判定電圧Vdesatは、例えばスイッチSWのドレイン電流のリンギングに起因して、スイッチSWがオン定常状態になる場合における判定電圧Vdesatよりも一時的に大きくなり得る。オン定常状態とは、例えば、スイッチSWのゲート電圧が電源電圧VCCに到達している状態である。この場合、短絡電流が流れていないにもかかわらず、判定電圧Vdesatが短絡閾値Vthsc1を一時的に超えてしまい、第1コンパレータ66の電流判定信号Sgcの論理が一時的にHになってしまう。
【0051】
ここで、充電処理が開始された後、ゲート電圧がマスク閾値Vthsc2を超える第2タイミングは、判定電圧Vdesatが短絡閾値Vthsc1を超える第1タイミングよりも後になる。第2タイミングが第1タイミングよりも後になることを利用して、判定電圧Vdesatが一時的に大きくなる期間において、第1コンパレータ66の電流判定信号Sgcが、短絡電流が流れているか否かの判定に用いられないようにする。このためには、フィルタ期間を適正に調整する必要がある。そこで、本実施形態では、駆動回路Drに判定回路70が備えられている。
【0052】
特に本実施形態の判定回路70は、検出温度Tjが温度閾値Tfth(<過熱閾値Tth)を超えている場合のフィルタ期間Lfを、検出温度Tjが温度閾値Tfth以下の場合のフィルタ期間Lfよりも短くする機能を有している。この機能は、スイッチSWに短絡電流が流れている旨の誤判定の発生を抑制しつつ、短絡電流が実際に流れる場合のスイッチSWの保護を迅速に行う効果を高めるためのものである。
【0053】
つまり、スイッチSWは、スイッチSWの温度が高いほど、スイッチング速度が低くなり、短絡耐量が小さくなる特性を有している。スイッチング速度が低いほど、スイッチSWがオフ状態からオン状態に切り替えられる過渡期間において、判定電圧Vdesatの一時的な増加期間は短くなる。増加期間が短くなることと、短絡耐量が小さくなることとを踏まえると、スイッチSWの温度が高い場合、フィルタ期間Lfが短く設定されることが望ましい。
【0054】
一方、スイッチSWは、スイッチSWの温度が低いほど、スイッチング速度が高くなり、短絡耐量が大きくなる特性を有している。スイッチング速度が高いほど、スイッチSWがオフ状態からオン状態に切り替えられる過渡期間において、判定電圧Vdesatの一時的な増加期間は長くなる。増加期間が長くなることと、短絡耐量が大きくなることとを踏まえると、スイッチSWの温度が低い場合、フィルタ期間Lfが長く設定されることが望ましい。そこで、判定回路70は、検出温度Tjに基づいて、フィルタ期間Lfの長さを調整する。
【0055】
図3を用いて、判定回路70の一例について説明する。
【0056】
判定回路70は、スイッチ部72、低温側処理回路80、高温側処理回路90、クロック生成回路73及びOR回路100を備えている。
【0057】
スイッチ部72には、検出温度Tjが入力される。スイッチ部72は、高温側スイッチ71H及び低温側スイッチ71Lを備えている。スイッチ部72は、検出温度Tjが温度閾値Tfth以下の場合、低温側スイッチ71Lをオンにして、かつ、高温側スイッチ71Hをオフにする。これにより、第2コンパレータ68の出力信号Sgvは、低温側処理回路80に入力される。一方、スイッチ部72は、検出温度Tjが温度閾値Tfthを超えている場合、低温側スイッチ71Lをオフにして、かつ、高温側スイッチ71Hをオンにする。これにより、第2コンパレータ68の出力信号Sgvは、高温側処理回路90に入力される。
【0058】
低温側処理回路80は、m個のD型フリップフロップ回路81を備えるシフトレジスタ回路である。各D型フリップフロップ回路81のC端子には、クロック生成回路73から出力されたクロック信号CLOCKが入力される。各D型フリップフロップ回路81のうち、最上段のD型フリップフロップ回路81のD端子には、スイッチ部72を介して第2コンパレータ68の出力信号Sgvが入力される。上段側のD型フリップフロップ回路81のQ端子には、下段側のD型フリップフロップ回路81のD端子が接続されている。各D型フリップフロップ回路81のうち、最下段のD型フリップフロップ回路81のQ端子には、OR回路100が接続されている。
【0059】
高温側処理回路90は、n個のD型フリップフロップ回路91を備えるシフトレジスタ回路である。高温側処理回路90は、低温側処理回路80と基本的には同じ構成である。ただし、「n<m」であり、
図3に示す例では、「n=2,m=3」とされている。高温側処理回路90における各D型フリップフロップ回路91のうち、最下段のD型フリップフロップ回路91のQ端子には、OR回路100が接続されている。なお、各処理回路80,90のフリップフロップ回路の個数は、
図3に示した個数に限らず、また、各処理回路80,90のいずれかのフリップフロップ回路の個数は1個であってもよい。
【0060】
低温側処理回路80の出力信号SgL(つまり、最下段のD型フリップフロップ回路81が有するQ端子の出力信号)と、高温側処理回路90の出力信号SgH(つまり、最下段のD型フリップフロップ回路91が有するQ端子の出力信号)とは、OR回路100に入力される。OR回路100は、低温側処理回路80の出力信号SgL及び高温側処理回路90の出力信号SgHの少なくとも一方の論理がHの場合、論理Hの電圧判定信号Sgfvを出力する。一方、OR回路100は、低温側処理回路80の出力信号SgL及び高温側処理回路90の出力信号SgHの双方の論理がLの場合、論理Lの電圧判定信号Sgfvを出力する。
【0061】
図4に、検出温度Tjが温度閾値Tfth以下の場合と温度閾値Tfthを超える場合とにおける判定回路70の出力信号等の推移を示す。
図4において、クロック生成回路73のクロック信号CLOCKの1周期をtckにて示している。なお、
図4に示す例において、第1コンパレータ66の電流判定信号Sgcの論理はHになっているものとする。
【0062】
まず、検出温度Tjが温度閾値Tfth以下の場合について説明する。
【0063】
時刻t0においてクロック信号CLOCKの論理がHに反転し、クロック信号CLOCKの論理がLに反転する前の時刻t1において、第2コンパレータ68の出力信号Sgvの論理がHに反転する。
【0064】
その後、時刻t0から「(n-1)×tck」(つまり、クロック信号CLOCKの1周期)だけ経過する時刻t2において、高温側処理回路90の出力信号SgHの論理がHに反転し、これにより、OR回路100の電圧判定信号Sgfvの論理もHに反転する。
【0065】
続いて、検出温度Tjが温度閾値Tfthを超えている場合について説明する。
【0066】
時刻t0においてクロック信号CLOCKの論理がHに反転し、クロック信号CLOCKの論理がLに反転する前の時刻t1において、第2コンパレータ68の出力信号Sgvの論理がHに反転する。
【0067】
その後、時刻t0から「(m-1)×tck」(つまり、クロック信号CLOCKの2周期)だけ経過する時刻t3において、低温側処理回路80の出力信号SgLの論理がHに反転し、これにより、OR回路100の電圧判定信号Sgfvの論理もHに反転する。
【0068】
続いて、
図5を用いて、スイッチSWを短絡電流から保護する処理について説明する。
【0069】
ステップS10において、スイッチ部72は、検出温度Tjが温度閾値Tfthを超えているか否かを判定する。
【0070】
スイッチ部72は、検出温度Tjが温度閾値Tfthを超えていると判定した場合、ステップS11に進み、高温側スイッチ71Hをオンし、低温側スイッチ71Lをオフする。一方、スイッチ部72は、検出温度Tjが温度閾値Tfth以下であると判定した場合、ステップS12に進み、低温側スイッチ71Lをオンし、高温側スイッチ71Hをオフする。
【0071】
続くステップS13において、AND回路71は、第1コンパレータ66の電流判定信号Sgcの論理がHであるか否かを判定する。
【0072】
続くステップS14において、AND回路71は、判定回路70から出力された電圧判定信号Sgfvの論理がHであるか否かを判定する。AND回路71は、第1コンパレータ66の電流判定信号Sgcの論理がHであり、かつ、判定回路70から出力された電圧判定信号Sgfvの論理がHであると判定した場合、異常信号Sgtの論理をHに反転させる。これにより、ステップS16において、異常信号出力回路50は、フェール信号Sfの論理をHに反転させる。
【0073】
ステップS17において、制御部23は、受信したフェール信号Sfの論理がHであると判定した場合、各駆動回路Drに出力する駆動信号G*をオフ指令にする短絡保護制御を行う。なお、本実施形態において、制御部23が「スイッチ保護部」に相当する。
【0074】
以上詳述した本実施形態によれば、スイッチSWに短絡電流が流れている旨の誤判定の発生を抑制しつつ、短絡電流が実際に流れる場合のスイッチSWの保護を迅速に行うことができる。
【0075】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、スイッチSWの温度に代えて、オフされているスイッチSWのドレイン及びソース間電圧Vdsに基づいて、フィルタ期間Lfの長さが調整される。
【0076】
図6に、本実施形態の駆動回路Dr及びその周辺構成を示す。
【0077】
制御システムは、ラダー検出回路としての複数の分圧抵抗体44を備え、駆動回路Drは、電圧検出回路45を備えている。分圧抵抗体44は、スイッチSWのドレインと駆動回路Drの電圧検出端子Tvdとを接続している。電圧検出回路45は、スイッチSWのドレイン及びソース間電圧の分圧値を検出する。なお、本実施形態において、分圧抵抗体44及び電圧検出回路45が「状態検出部」に相当する。
【0078】
駆動回路Drは、コンパレータ46と、電源47とを備えている。コンパレータ46の非反転入力端子には、電圧検出回路45の検出電圧VHrが入力される。コンパレータ46の反転入力端子には、電源47の出力電圧である電圧閾値VHthが入力される。
【0079】
本実施形態の判定回路70のうち、第1実施形態との相違点について説明する。
【0080】
判定回路70が備えるスイッチ部72には、コンパレータ46の出力信号と、駆動信号G*とが入力される。スイッチ部72は、駆動信号G*が前回オフ指令とされている期間においてコンパレータ46の出力信号の論理がHであると判定した場合、高温側スイッチ71Hをオンにして、かつ、低温側スイッチ71Lをオフにする。これにより、第2コンパレータ68の出力信号Sgvは、高温側処理回路90に入力される。
【0081】
一方、スイッチ部72は、駆動信号G*が前回オフ指令とされている期間においてコンパレータ46の出力信号の論理がLであると判定した場合、低温側スイッチ71Lをオンにして、かつ、高温側スイッチ71Hをオフにする。これにより、第2コンパレータ68の出力信号Sgvは、低温側処理回路80に入力される。
【0082】
以上説明した本実施形態によれば、例えば、回転電機10等の直流電源21の給電対象機器の使用電力が変化したり、インバータ20と直流電源21との間にDCDCコンバータが設けられる制御システムにおいてDCDCコンバータの出力電圧が変化したりする場合において、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0083】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、
図7に示すように、フィルタ期間の長さを調整する構成が変更されている。
【0084】
図7に示すように、インバータ20は、第1抵抗体51a及び第1コンデンサ51bを有する第1ローパスフィルタ回路と、第2抵抗体52a及び第2コンデンサ52bを有する第2ローパスフィルタ回路とを備えている。第1抵抗体51aの抵抗値をR1、第1コンデンサ51bの静電容量をC1、第2抵抗体52aの抵抗値をR2、第2コンデンサ52bの静電容量をC2とする。この場合、第1ローパスフィルタ回路の時定数τ1(=R1×C1)は、第2ローパスフィルタ回路の時定数τ2(=R2×C2)よりも小さい。
【0085】
スイッチSWのゲート電圧Vgは、第1ローパスフィルタ回路においてローパスフィルタ処理が施された後、駆動回路Drの第1検出端子TV1から取り込まれる。また、スイッチSWのゲート電圧Vgは、第2ローパスフィルタ回路においてローパスフィルタ処理が施された後、駆動回路Drの第2検出端子TV2から取り込まれる。
【0086】
駆動回路Drは、スイッチ部172を備えている。スイッチ部172は、高温側スイッチ173H、低温側スイッチ173L、反転回路174、コンパレータ175及び電源176を備えている。高温側スイッチ173Hは、第1検出端子TV1と第2コンパレータ68の非反転入力端子とを接続する。低温側スイッチ173Lは、第2検出端子TV2と第2コンパレータ68の非反転入力端子とを接続する。
【0087】
コンパレータ175の非反転入力端子には、検出温度Tjが入力される。コンパレータ175の反転入力端子には、電源176の出力電圧である温度閾値Tfthが入力される。コンパレータ175の出力信号は、高温側スイッチ173Hと、反転回路174とに供給される。反転回路174の出力信号は、低温側スイッチ173Lに供給される。なお、本実施形態において、第1抵抗体51a、第1コンデンサ51b、第2抵抗体52a、第2コンデンサ52b、AND回路71及びスイッチ部172が「信号出力部」に相当する。
【0088】
続いて、スイッチ部172の動作について説明する。
【0089】
検出温度Tjが温度閾値Tfthよりも低く、コンパレータ175の出力信号の論理がLになる場合、低温側スイッチ173Lがオンにされ、高温側スイッチ173Hがオフにされる。これにより、第2コンパレータ68の非反転入力端子には、時定数が相対的に小さい第1ローパスフィルタ回路においてローパスフィルタ処理が施されたゲート電圧Vgが入力される。
【0090】
一方、検出温度Tjが温度閾値Tfthを超え、コンパレータ175の出力信号の論理がHになる場合、低温側スイッチ173Lがオフにされ、高温側スイッチ173Hがオンにされる。これにより、第2コンパレータ68の非反転入力端子には、時定数が相対的に大きい第2ローパスフィルタ回路においてローパスフィルタ処理が施されたゲート電圧Vgが入力される。
【0091】
本実施形態において、AND回路71には、第2コンパレータ68の出力信号Sgvが入力される。AND回路71は、第2コンパレータ68の出力信号Sgv及び電流判定信号Sgcの双方の論理がHである場合に論理Hの異常信号Sgtを出力する。一方、AND回路71は、第2コンパレータ68の出力信号Sgv及び電流判定信号Sgcの少なくとも一方の論理がLである場合に論理Lの異常信号Sgtを出力する。
【0092】
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態に準じた効果を奏することができる。
【0093】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0094】
・フィルタ期間の長さの調整は、2段階に限らず、3段階以上であってもよい。また、フィルタ期間の長さの調整は、段階的ではなく、連続的であってもよい。
【0095】
・第1,第3実施形態において、温度センサは、例えばサーミスタであってもよい。
【0096】
・第2実施形態において、スイッチSWのドレイン及びソース間電圧を検出する電圧検出部である「状態検出部」としては、分圧抵抗体44及び電圧検出回路45に限らず、例えば、高電圧モニタICであってもよい。高電圧モニタICは、例えば、第1端子及び第2端子を有する1パッケージ化された集積回路であり、第1,第2端子間の電圧を直接検出する。第1端子がドレインに接続され、第2端子がソースに接続される。
【0097】
・オンされているスイッチSWに流れるドレイン電流を検出する構成としては、Desat方式の構成に限らない。例えば、スイッチSWのセンス端子と、センス端子に流れる電流に応じた電圧降下を生じさせるセンス抵抗体とを備え、センス抵抗体の電位差であるセンス電圧に基づいて、ドレイン電流を検出する構成であってもよい。この場合、センス電圧が例えば
図2の第1コンパレータ66の非反転入力端子に入力されればよい。
【0098】
・駆動回路Drが備える判定回路70等の構成は、アナログ回路に限らず、プロセッサと、プログラムが記憶されるメモリとを備え、プロセッサにより記憶されたプログラムが実行されるソフトウェアにて実現されていてもよい。
【0099】
・本開示の駆動装置の適用対象となる電力変換回路としては、インバータに限らず、例えば、上下アームスイッチを備えるDCDCコンバータ(例えば昇降圧DCDCコンバータ)であってもよい。
【符号の説明】
【0100】
20…インバータ、60…ダイオード、62…コンデンサ、66…第1コンパレータ、67…第1電源、68…第2コンパレータ、69…第2電源、SW…スイッチ、Dr…駆動回路。