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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114347
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】検査装置、および、検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/28 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
G01R31/28 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020051
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萩原 晃平
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 美之
【テーマコード(参考)】
2G132
【Fターム(参考)】
2G132AA20
2G132AB14
2G132AF02
(57)【要約】
【課題】液媒体を高効率に回収可能な検査装置、および、検査方法を提供する。
【解決手段】検査装置1は、所定の検査温度にてワークWの電気検査を行うものであって、高温検査槽20と、電気検査部30と、回収部50と、を備える。高温検査槽20は、ワークWの液媒体LMによる調温、および、槽内部の真空引きが可能である。電気検査部30は、ワークWの電気検査を行う。回収部50は、高温検査槽20から排出された液媒体LM、および、真空引きにより排出された揮発ガスを回収する。検査装置1は、高温検査槽20において、ワークWの電気検査および真空乾燥を行う。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の検査温度にてワーク(W)の電気検査を行う検査装置であって、
前記ワークの液媒体による調温、および、槽内部の真空引きが可能である調温槽(20)と、
前記ワークの電気検査を行う電気検査部(30、85)と、
前記調温槽から排出された液媒体、および、真空引きにより排出された揮発ガスを回収する回収部(50)と、
を備え、
前記調温槽において、前記ワークの電気検査および真空乾燥を行う、検査装置。
【請求項2】
前記調温槽は、槽本体(21)の内部空間を、液媒貯留室(212)と、前記ワークが配置されるワーク室(213)とに区画する隔壁(215)を有し、
前記ワーク室は、前記ワークが配置された状態にて、液媒体で満たされている状態と真空状態とを切替可能である請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記電気検査部は、前記ワーク室の真空引きと並行して電気検査を行う請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記調温槽は、前記ワークを加熱する高温槽であって、
前記高温槽とは別に、前記ワークを冷却する低温槽(10)を備え、
前記低温槽で冷却された前記ワークの低温での電気検査を真空引きされた前記ワーク室にて行った後、前記ワーク室を液媒体で満たして前記ワークを加熱し、高温での電気検査を行う請求項2または3に記載の検査装置。
【請求項5】
前記調温槽は、前記ワークを加熱する高温槽であって、
前記高温槽とは別に、前記ワークを冷却する低温槽(80)を備え、
前記低温槽で冷却された前記ワークの低温での電気検査を前記低温槽で行った後、前記ワークを前記高温槽に搬送して液媒体にて前記ワークを加熱し、高温での電気検査を前記高温槽で行う請求項1~3のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項6】
前記回収部は、揮発ガスを凝縮する凝縮器(51)、および、揮発ガスを貯留するガスホルダ(60)を有し、前記調温槽の復圧時に揮発ガスを戻す請求項1~3のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項7】
所定の検査温度にてワーク(W)の電気検査を行う検査方法であって、
液媒体にて前記ワークを調温する調温工程(S13、S17、S33、S37)と、
前記ワークの電気検査を行う電気検査工程(S16、S18、S34、S38)と、
前記ワークの真空乾燥を行う真空乾燥工程(S18、S39)と、
を含む検査方法。
【請求項8】
前記調温工程には、前記ワークを冷却する冷却工程(S13、S33)、および、前記ワークを加熱する加熱工程(S17、S37)が含まれ、
低温槽(10)にて前記冷却工程を行い、
冷却された前記ワークを高温槽(20)に搬送し、真空引きされた前記高温槽にて低温での前記電気検査工程を行った後、前記加熱工程にて前記ワークを加熱し、当該高温槽にて高温での前記電気検査工程および前記真空乾燥工程を行う請求項7に記載の検査方法。
【請求項9】
前記調温工程には、前記ワークを冷却する冷却工程(S13、S33)、および、前記ワークを加熱する加熱工程(S17、S37)が含まれ、
低温槽(80)にて前記冷却工程、および、低温での前記電気検査工程を行い、
低温での前記電気検査工程の後、前記ワークを高温槽(20)に搬送し、前記高温槽にて前記加熱工程、高温での前記電気検査工程、および、前記真空乾燥工程を行う請求項7に記載の検査方法。
【請求項10】
前記電気検査工程と前記真空乾燥工程とは、同時並行で実施される請求項7~9のいずれか一項に記載の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置、および、検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置等の被測定物の温度特性を所定温度下で試験を行う温度特性試験装置が知られている。例えば特許文献1では、測定室内に所定温度に温度制御された熱媒体であるフッ素系不活性液体を注入し、ハンドラにより半導体装置を搬送して熱媒体に浸漬して加熱、冷却し、電気的な温度特性試験を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-11017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
温度処理を行う液媒体は、熱伝導性、電気絶縁性に優れる流体である一方、地球温暖化係数が高いというデメリットがある。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、液媒体を高効率に回収可能な検査装置、および、検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の検査装置は、所定の検査温度にてワーク(W)の電気検査を行うものであって、調温槽(20)と、電気検査部(30、85)と、回収部(50)と、を備える。調温槽は、ワークの液媒体による調温、および、槽内部の真空引きが可能である。電気検査部は、ワークの電気検査を行う。回収部は、調温槽から排出された液媒体、および、真空引きにより排出された揮発ガスを回収する。検査装置は、調温槽において、ワークの電気検査および真空乾燥を行う。これにより、ワークの調温に用いる液媒体を高効率に回収可能である。
【0007】
本発明の検査方法は、所定の検査温度にてワーク(W)の電気検査を行うものであって、調温工程(S13、S17、S33、S37)と、電気検査工程(S16、S18、S34、S38)と、真空乾燥工程(S18、S39)と、を含む。調温工程では、液媒体にてワークを調温する。電気検査工程では、ワークの電気検査を行う。真空乾燥工程では、ワークの真空乾燥を行う。これにより、検査装置と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態による検査装置を示すシステム図である。
図2】第1実施形態による低温処理槽および高温検査槽を示す模式図である。
図3】第1実施形態による高温検査槽を示す平面図である。
図4図3のIV-IV線断面図である。
図5】第1実施形態による高温検査槽において、下治具設置前の状態を示す図である。
図6】第1実施形態による高温検査槽において、上蓋ユニット設置前の状態を示す図である。
図7】第1実施形態による高温検査槽において、上室の真空引きを行っているときの状態を示す図である。
図8】第1実施形態による検査方法を示すフローチャートである。
図9】第1実施形態による低温処理槽内におけるワークの温度推移を示すタイムチャートである。
図10】第1実施形態による高温検査槽内におけるワークの温度推移を示すタイムチャートである。
図11】第2実施形態による低温検査槽および高温検査槽を示す模式図である。
図12】第2実施形態による検査方法を示すフローチャートである。
図13】第2実施形態による低温検査槽内におけるワークの温度推移を示すタイムチャートである。
図14】第2実施形態による高温検査槽内におけるワークの温度推移を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明による検査装置を図面に基づいて説明する。以下、複数の実施形態において、実質的に同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0010】
(第1実施形態)
第1実施形態による検査装置を図1図10に示す。図1に示すように、検査装置1は、低温処理槽10と、高温検査槽20と、電気検査部30と、回収部50と、を備え、ECU基板製品やセンセミ製品等であるワークWの温度特性検査を行う。
【0011】
低温処理槽10は、槽内に搬送されたワークWを液媒体LM中にて冷却可能に構成されている。液媒体LMは、液供給部11から低温処理槽10に供給される。液面高さは、液面計71により検出される。低温処理槽10の液媒体LMは、配管131に設けられる循環ポンプ13により循環され、ミキシングノズル15を経由して低温処理槽10に戻される。配管131には、ストレーナ132およびフィルタ133が設けられている。また、低温処理槽10内の液媒体LMは、低温チラー17および冷却蛇管18により冷却される。
【0012】
低温処理槽10にて冷却されたワークWは、高温検査槽20に搬送される。ドライエア発生装置90にて生成されるドライエア中を搬送することで、搬送中におけるワークWの結露を防ぐことができる。配管には、流量センサ(図中「FS」)や圧力センサ(図中「PS」)等のセンサ類が適宜設けられている。
【0013】
高温検査槽20は、槽内に搬送されたワークWの温度特性に係る電気検査、液媒体LMを用いての昇温、真空引きを実施可能に構成されている。高温検査槽20には、液面計72、および、真空計73が設けられている。高温検査槽20内の液媒体LMは、高温検査槽20内の液媒体LMは、循環ポンプ42を用いて攪拌される。
【0014】
高温検査槽20は、吸引ポンプ45により真空引き可能に構成されている。揮発した液媒体LMを主体とするガス(以下、「揮発ガス」とする。)は、凝縮器51に回収される。また、ワークWへの付着等にて高温検査槽20に持ち込まれた液媒体LMは、戻し配管46にて低温処理槽10に戻される。戻し配管46には、熱交換器461が設けられている。
【0015】
高温検査槽20には、圧送ポンプ47にてバックアップ槽48から液媒体LMが供給される。また、高温検査槽20内の液媒体LMは、配管53を経由して凝縮器51に排出可能である。高温検査槽20の詳細は、後述する。
【0016】
バックアップ槽48には、ポンプ49により凝縮器51から液媒体LMが供給される。バックアップ槽48には、ヒータ485が設けられており、液媒体LMを所定温度(例えば90℃)に昇温する。バックアップ槽48には、液面計、温調計および過昇温計等のセンサが設けられている。
【0017】
回収部50は、凝縮器51、ガスホルダ60、および、分離槽65等を有する。凝縮器51は、高温検査槽20から排出された液媒体LMを貯留するとともに、真空引きされた揮発ガスを凝縮可能に構成されている。凝縮された液媒体LMは、凝縮器51の鉛直方向下側に貯留される。凝縮器51には、液媒体LMを加熱するヒータ52が設けられており、液媒体LMの液面上方は、液媒体LMの飽和蒸気にて満たされる。また、凝縮器51には、液供給部55から液媒体LMが供給される。凝縮器51には、液面計、温調計および過昇温計等のセンサが設けられている。
【0018】
ガスホルダ60は、例えば吸着等により揮発ガスを保持可能である。高温検査槽20の真空引きを行う際、凝縮器51の内圧が高まるのを防ぐべく、乾燥揮発ガスを凝縮器51の鉛直方向上側から排出し、ガスホルダ60にて保持する。また、ガスホルダ60に貯留された乾燥揮発ガスは、高温検査槽20の復圧時に供給部27を経由して高温検査槽20に戻される。すなわち本実施形態の回収部50は、揮発ガスも含めて完全密封のクローズドシステムとなっている。また、ガスホルダ60から排出された乾燥媒体ガスは、吸引ポンプ45にも供給される。
【0019】
分離槽65には、凝縮器51から排出された媒体と水との混合蒸気が供給される。混合蒸気は、分離槽65にて、比重により液媒体LMと水とに分離される。分離された水は系外に排出され、液媒体LMは凝縮器51に戻される。
【0020】
ここで、ECU基板製品やセンセミ製品の製造工程では、ECU基板製品等であるワークWを低温および高温にした状態にて電気プローブを接触させ、低温状態および高温状態それぞれでの電気応答性を確認する温度特性検査が行われる。例えば参考例として、検査装置の耐熱仕様をなくすべく、冷風炉および熱風炉を検査装置とは別体構造にする場合、熱媒体として気体を用いており、特に冷風炉では大量のドライエアが必要であるので、ワークWの冷加熱以外への熱ロスが大きい。
【0021】
また、気体での冷加熱に替えて、例えばフッ素系の液媒体LMを用いることができる。液媒体LMは、熱伝達性や電気絶縁性に優れる反面、地球温暖化係数が高い。そこで本実施形態では、液媒体LMを用いてワークWの調温を行い、ワークWに付着した液媒体LMの乾燥および揮発ガスの回収を、回収ポテンシャルの高い真空乾燥方式にて行う。
【0022】
本実施形態では、高温検査槽20は、真空引き可能に構成されている。また、高温検査槽20には、電気検査部30が組み込まれており、高温検査槽20にてワークWの電気検査が可能である。一方、低温処理槽10には電気検査に係る装置が組み込まれておらず、低温処理槽10で冷却されたワークWの低温での電気検査は、真空引きした高温検査槽20にて実施する。真空引きすることで、熱伝導の3形態(対流、輻射、伝導)のうち、影響の大きい対流と伝導による熱移動を遮断可能であるので、高温検査槽20内であっても、冷却したワークWの温度変化を常温の大気中と略同等に抑えることができる。
【0023】
高温検査槽20の詳細を、図2図7に示す。図3等はいずれも模式的な図であって、図4図7では煩雑になることを避けるため、一部のハッチングを省略した。図4に示すように、高温検査槽20は、槽本体21、槽本体の外側に設けられる断熱材23、および、ヒータ25等を有している。
【0024】
槽本体21は、溶接構造であって略有底筒状に形成されており、バックアップ槽48(図1参照)から液媒体LMが供給される。槽本体21の内底面211は、傾斜して形成されている。槽本体21は、内部空間を鉛直方向下側の下室212と、鉛直方向上側の上室213に区画する隔壁215を有する。隔壁215には、下治具32の一端側を挿通可能な貫通穴216が設けられている。
【0025】
下室212と上室213とは、配管41、43を経由して連通している。配管41には、循環ポンプ42、ストレーナ411、バルブ412、413、フィルタ415、416等が設けられている。循環ポンプ42を駆動することで、液媒体LMを下室212から上室213へ供給可能である。また、配管43には、バルブ431が設けられている。
【0026】
下室212には、ヒータ25が配置されている。ヒータ25は、内底面211の傾斜上部側に配置されており、液媒体LMを加熱可能である。下室212の最下部側には、凝縮器51と連通する配管53が接続されている。配管53に設けられたバルブ531を開とすることで、槽本体21内の液媒体LMを凝縮器51側に排出可能である。
【0027】
電気検査部30は、下側共通コネクタ31、下治具32、および、上蓋ユニット35等を有する。上蓋ユニット35は、蓋36、ワーク保持部37、上側共通コネクタ38、および、上治具39を有する。
【0028】
下側共通コネクタ31は、下室212に配置されている。下側共通コネクタ31は、テスト配線311と接続されており、電気検査の検出値を系外に設けられる図示しない制御部に出力する。下治具32は、コネクタ部321、鍔部322、および、プローブピン325等を有する。コネクタ部321は、貫通穴216に挿通される一端側に設けられており、下側共通コネクタ31と接続される。
【0029】
鍔部322は、外周側に突出して形成されており、コネクタ部321側が貫通穴216に挿通された状態にて、隔壁215と当接する。鍔部322と隔壁215との間には、Oリング219が設けられる。これにより、下治具32が配置された状態にて、下室212と上室213とが液密に隔離される。
【0030】
プローブピン325は、コネクタ部321とは反対側の端部に、検査対象のワークWに応じて設けられている。下治具32が槽本体21に組み付けられているとき、プローブピン315は、上室213に露出した状態であり、上治具39に保持されたワークWと当接可能に設けられている。
【0031】
上蓋ユニット35は、搬送装置95(図2参照)により、ワークWを保持した状態にて搬送可能に設けられている。蓋36には、上側共通コネクタ38が設けられており、槽本体21上部の開口217を塞ぐように設けられている。蓋36と槽本体21との間には、Oリング368が設けられている。また、蓋36と上側共通コネクタ38との間には、Oリング369が設けられている。
【0032】
上治具39は、コネクタ部391、および、プローブピン395等を有する。コネクタ部391は、上側共通コネクタ38と接続される。プローブピン395は、ワークWがワーク保持部37に保持された状態にて、ワークWと当接可能に設けられている。下治具32および上治具39は、検査を行うワークWに応じたものが用いられる。
【0033】
各工程における高温検査槽20の状態を図4図7に示す。なお、図5図7では、配管41および循環ポンプ42等の液媒体LMの上下室循環に係る構成は省略した。図4は、高温検査槽20に電気検査部30が組み付けられており、上室213にてワークWが液媒体LMに浸漬されている状態を示している。図5は、下治具32を組み付ける前の状態を示しており、検査を行うワークWに応じた下治具32を槽本体21に設置する。
【0034】
図6に示すように、高温検査槽20には、バックアップ槽48(図1参照)から液媒体LMが供給される。詳細には、バックアップ槽48からの液媒体LMは、上室213に供給され、配管43を経由して、下室212に送られる。また、上室213には低温処理槽10にて冷却されたワークWが搬送される。本実施形態では、下治具32と隔壁215とで下室212が液密となるように槽本体21が二重底構造となっており、ワーク搬送時には、下室212が液媒体LMで満たされており、上室213には液媒体LMがない状態となっている。
【0035】
図7に示すように、蓋36が閉じられて上室213が気密状態になると、真空引きを行い、真空状態にて、低温での電気検査を行う。このとき、下室212には高温の液媒体LMで満たされている状態が維持される。
【0036】
低温での電気検査が終了すると、乾燥揮発ガスが供給部27から供給されることで上室213を復圧させるとともに、予め加熱された液媒体LMが上室213側に供給され、ワークWを液媒体LMに浸漬する(図4参照)。また、ヒータ25および循環ポンプ42を駆動し、液媒体LMを保温する。ワークWの昇温が完了すると、高温での電気検査と、液排出および真空乾燥とを並行して行う。電気検査と真空乾燥とを同時並行で行うことで、工程時間を短縮可能である。真空乾燥が完了すると、ワークWを搬出する。なお、高温検査が終了した後に、上室213の液排出および真空乾燥を行うようにしてもよい。
【0037】
同一の下治具32を用いて検査可能なワークWの検査を繰り返す場合、ワーク搬入(図6)、真空での低温検査(図7)、ワーク昇温(図4)、高温検査および真空乾燥(図7)、ワーク搬出(図6)が繰り返される。
【0038】
本実施形態の検査方法を図8のフローチャートに基づいて説明する。S11では、ワークWを搬送し、S12にて、低温処理槽10に投入される。S13では、低温処理槽10にてワークWの低温処理が行われる。ワークWが冷却終了温度Tc(例えば-35℃)まで冷却されると、S14にて低温処理槽10から排出され、S15にて高温検査槽20に投入される。
【0039】
S16では、ワークWが配置されている状態にて上室213の真空引きを行い、低温での電気検査が行われる。S17では、ワークWを移動させることなく上室213にて液媒体LMに浸漬し、高温処理を行う。ワークWが加熱終了温度Th(例えば75℃)まで昇温されると、S18にて、高温での電気検査が行われる。また電気検査と並行して、上室213からの液媒体LMの排出および真空乾燥が行われる。真空乾燥が完了すると、S19にてワークWが高温検査槽20から排出される。
【0040】
低温処理槽10におけるワークWの温度プロファイルを図9に示す。図9では、横軸を時間、縦軸を温度とする。図10、および、後述の図13図14も同様である。低温処理槽10では、時刻x11にて、冷却開始温度Tn(例えば20℃)から冷却終了温度Tc(例えば-35℃)までワークWを冷却する。時刻x12にて冷却終了温度Tcに到達すると、時刻x13にてワークWが低温処理槽10から排出される。排出時の温度は成り行きである。冷却終了温度Tcは、低温検査開始温度Tdより低く、液媒体LMの凝固点よりも高い温度に設定される。本実施形態では、低温処理槽10では電気検査を行わない。そのため、検査サイクルとは独立して冷却時間を確保することができるので、冷凍能力を抑えることで省エネを実現可能である。
【0041】
高温検査槽20におけるワークWの温度プロファイルを図10に示す。ワークWが低温処理槽10からドライエア環境中を経由して高温検査槽20に投入されると、上室213が真空引きされ、時刻x13から検査実施時間(例えば数十秒)に亘り、低温での電気検査が行われる。低温検査開始温度Td(例えば-25℃)は、低温での電気検査性能を保証可能な温度である。
【0042】
時刻x14にて、電気検査が終了すると、真空引きを停止して槽本体21内を復圧させ、上室213に高温(例えば90℃)の液媒体LMを供給し、ワークWを加熱する。加熱開始温度は成り行きである。
【0043】
時刻x15にて、加熱終了温度Th(例えば75℃)になると、高温での電気検査を行う。また、上室213の液媒体LMを排出し、真空乾燥を行う。時刻x16にて高温検査が終了し、時刻x17にて工程が終了すると、ワークWが高温検査槽20から排出される。
【0044】
以上説明したように、検査装置1は、所定の検査温度にてワークWの電気検査を行うものであって、高温検査槽20と、電気検査部30と、回収部50と、を備える。高温検査槽20は、ワークWの液媒体LMによる調温、および、槽内部の真空引きが可能である。電気検査部30は、ワークWの電気検査を行う。回収部50は、高温検査槽20から排出された液媒体LM、および、真空引きにより排出された揮発ガスを回収する。検査装置1は、高温検査槽20において、ワークWの電気検査および真空乾燥を行う。
【0045】
液媒体LMを用いることで、ワークWを効率よく調温可能であり、温度処理に要するエネルギや放熱、ドライエア使用量が抑制される。したがって、冷風炉での冷却や熱風炉での加熱を行う場合と比較し、大幅な省エネ効果が見込める。また、回収部50を設け、ワークWを真空乾燥することで、ワークWの温度処理に用いる液媒体LMを高効率に回収することができる。また、真空乾燥方式とすることで、フリーボードが不要になるため、高温検査槽20の液槽高さを低くすることができる。
【0046】
高温検査槽20は、槽本体21の内部空間を、ヒータ25が設けられる下室212と、ワークWが配置される上室213とに区画する隔壁215を有する。上室213は、ワークWが配置された状態にて、液媒体LMで満たされている状態と真空状態とを切替可能である。本実施形態では、高温検査槽20を二重底構造とし、上室213の液媒体LMの入れ替えを行うことで、高効率に上室213の真空引きを行うことができる。
【0047】
電気検査部30は、上室213の真空引きと並行して電気検査を行う。これにより、工程時間を短縮することができる。
【0048】
検査装置1は、ワークWを加熱する高温検査槽20とは別に、ワークWを冷却する低温処理槽10を備える。検査装置1は、低温処理槽10で冷却されたワークWの低温での電気検査を真空引きされた上室213で行った後、上室213を液媒体LMで満たしてワークWを加熱し、高温での電気検査を行う。
【0049】
これにより、相対的に低温での低温検査、および、相対的に高温での高温検査を適切に行うことができる。また、低温処理槽10側にも検査治具を設ける場合と比較し、テスタや検査治具の台数を削減することができる。さらにまた、電気検査とは別途で冷却を行うことで、冷却に時間を確保することができるため、冷凍能力を落とすことが可能であって、更なる省エネ効果が見込める。
【0050】
回収部50は、揮発ガスを凝縮する凝縮器51、および、揮発ガスを貯留するガスホルダ60を有し、高温検査槽20の復圧時に乾燥した揮発ガスを高温検査槽20に戻す。すなわち本実施形態では、回収した液媒体LMを復圧時に高温検査槽20に戻すクローズドの循環システムとしているため、液媒体LMの消費量を削減可能である。
【0051】
本実施形態の検査方法は、所定の検査温度にてワークWの電気検査を行う方法であって、液媒体LMにてワークWを調温する調温工程と、ワークWの電気検査を行う電気検査工程と、ワークWの真空乾燥を行う真空乾燥工程と、を含む。
【0052】
調温工程には、ワークWを冷却する冷却工程、および、ワークWを加熱する加熱工程が含まれる。本実施形態では、低温処理槽10にて冷却工程を行い、冷却されたワークWを高温検査槽20に搬送し、真空引きされた高温検査槽20にて低温での電気検査工程を行った後、加熱工程にてワークWを加熱し、高温検査槽20にて高温での電気検査工程および真空乾燥工程を行う。高温での電気検査工程と真空乾燥工程とは、同時並行で実施される。このような検査方法において、上記検査装置1と同様の効果を奏する。
【0053】
本実施形態では、低温処理槽10が「低温槽」、高温検査槽20が「調温槽」および「高温槽」、下室212が「液媒貯留室」、上室213が「ワーク室」に対応する。また、S13およびS17が「調温工程」、S13が「冷却工程」、S17が「加熱工程」、S16、S18が「電気検査工程」、S18が「真空乾燥工程」に対応する。
【0054】
(第2実施形態)
第2実施形態を図11図14に示す。図11は、第1実施形態の図2に対応する図であって本実施形態の検査装置2は、低温検査槽80と、高温検査槽20と、電気検査部85と、回収部50(図11では不図示)と、を備える。
【0055】
電気検査部85は、上記実施形態の電気検査部30の各構成に加え、下側共通コネクタ86、および、下治具87を有する。下側共通コネクタ86、および、下治具87は、低温検査槽80に設けられており、低温検査槽80にて、低温での電気検査を実施可能に構成されている。なお、上治具39等は、高温検査槽20における高温での電気検査と共用される。低温検査槽80では、液媒体LMの蒸発速度の観点から真空引きは行わないため、真空槽にはなっておらず、真空引きや液の入れ替えに係る構成等は設けられていない。したがって、低温検査後のワークWは、真空乾燥せずに高温検査槽20に投入される。
【0056】
本実施形態の検査方法を図12のフローチャートに基づいて説明する。S31~S33の処理は、図8中のS11~S13の処理と同様である。ワークWの温度が低温検査開始温度Tdまで低下すると、S34にて低温検査槽80内にて低温での電気検査を行う。本実施形態では、低温検査は低温検査槽80内で行うため、搬送等による昇温を考慮して低温検査を行う温度よりも温度を低下させる必要がない。
【0057】
低温検査が終了すると、S35にてワークWを低温検査槽80から排出し、S36にて高温検査槽20に投入する。S37では、ワークWを液媒体LMにて加熱する高温処理を行う。ワークWが加熱終了温度Thまで昇温されると、S38にて高温での電気検査が行われる。電気検査が終了すると、S39にて液媒体LMの排出および真空乾燥が行われる。真空乾燥が完了すると、S40にてワークWが高温検査槽20から排出される。
【0058】
低温検査槽80におけるワークWの温度プロファイルを図13に示す。低温検査槽80では、温度x21にて、冷却開始温度Tnから低温検査開始温度TdまでワークWを液媒体LMに浸漬し冷却する。時刻x22にて低温検査開始温度Tdになると、低温での電気検査を行う。時刻x23にて電気検査が終了すると、時刻x24にてワークWが低温検査槽80から排出される。
【0059】
高温検査槽20におけるワークWの温度プロファイルを図14に示す。ワークWが高温検査槽20に投入されると、時刻x25にてワークWを液媒体LMに浸漬し加熱する。時刻x26にて加熱終了温度Thになると、高温での電気検査を行う。時刻x27にて電気検査が終了すると、液媒体LMを排出し、真空乾燥を行う。時刻x28にて真空乾燥を行う。時刻x29にて工程が終了すると、ワークWが高温検査槽20から排出される。
【0060】
本実施形態の検査装置2は、低温検査槽80で冷却されたワークWの低温での電気検査を低温検査槽80で行った後、ワークWを高温検査槽20に搬送して液媒体LMにてワークWを加熱し、高温での電気検査を高温検査槽20で行う。
【0061】
本実施形態の検査方法では、低温検査槽80にて冷却工程、および、低温での電気検査工程を行い、低温での電気検査工程の後、ワークWを高温検査槽20に搬送し、高温検査槽20にて加熱工程、高温での電気検査工程、および、真空乾燥工程を行う。
【0062】
本実施形態では、低温での電気検査および高温での電気検査を、それぞれ低温検査槽80および高温検査槽20にて行うので、より適切な温度条件での電気検査を行うことができる。また上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0063】
本実施形態では、低温検査槽80が「低温槽」に対応する。また、S33およびS37が「調温工程」、S33が「冷却工程」、S37が「加熱工程」、S34およびS38が「電気検査工程」、S39が「真空乾燥工程」に対応する。
【0064】
(他の実施形態)
上記実施形態では、低温処理と高温処理にて同種の液媒体を用いている。他の実施形態では、低温処理に用いる液媒体と高温処理に用いる液媒体とが異なっていてもよい。第1実施形態では、高温での電気検査と同時並行に真空乾燥を行い、第2実施形態では、高温での電気検査後に真空乾燥を行っている。他の実施形態では、第1実施形態の検査装置にて、電気検査後に真空乾燥を行ってもよいし、第2実施形態の検査装置にて、高温での電気検査と真空乾燥を同時並行に行ってもよい。
【0065】
他の実施形態では、低温槽を真空引き可能な「調温槽」としてもよく、調温槽にて電気検査および真空乾燥が可能であれば、装置の詳細等は上記実施形態と異なっていてもよい。また、実施形態に例示した温度プロファイルは一例であって、任意に設定可能である。以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0066】
1、2・・・検査装置
10・・・低温処理槽(低温槽)
20・・・高温検査槽(調温槽、高温槽)
30、85・・・電気検査部
50・・・回収部
80・・・低温検査槽(低温槽)
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14