(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114362
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】水封式真空ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 25/02 20060101AFI20240816BHJP
F04C 19/00 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
F04C25/02 P
F04C19/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020086
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 健児
(72)【発明者】
【氏名】下拂 佑太
(72)【発明者】
【氏名】笹尾 智浩
【テーマコード(参考)】
3H129
【Fターム(参考)】
3H129AA07
3H129AA15
3H129AB06
3H129AB12
3H129BB21
3H129CC03
3H129CC04
3H129CC09
3H129CC39
(57)【要約】
【課題】合成樹脂製のポンプケーシングを用いた場合であっても、ポンプ本体の振動および騒音を抑制することが可能な水封式真空ポンプを提供すること。
【解決手段】水封式真空ポンプ1は、モータ90の回転軸92に連結され、軸線94回りに回転するインペラ10と、インペラ10を収容するポンプ室60を構成するポンプケーシング20と、ポンプ室60に封水を供給するための給水口3と、ポンプ室60に気体を吸入するための吸入口5と、ポンプ室60から気体を排出するための排出口6と、を備え、ポンプケーシング20は、合成樹脂で形成されると共に、インペラ10の回転領域12の少なくとも一部を覆う金属製リング部材14を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの回転軸に連結され、軸線回りに回転するインペラと、
前記インペラを収容するポンプ室を構成するポンプケーシングと、
前記ポンプ室に封水を供給するための給水口と、
前記ポンプ室に気体を吸入するための吸入口と、
前記ポンプ室から気体を排出するための排出口と、を備え、
前記ポンプケーシングは、合成樹脂で形成されると共に、前記インペラの回転領域の少なくとも一部を覆う金属製リング部材を備える、水封式真空ポンプ。
【請求項2】
前記インペラは、前記回転軸に連結され、軸線回りに同期回転する第1インペラおよび第2インペラを含み、
前記ポンプケーシングは、
前記第1インペラを収容する第1ポンプ室を構成する第1ポンプケーシングと、
前記第2インペラを収容する第2ポンプ室を構成する第2ポンプケーシングと、を含み、
前記第1ポンプ室および前記第2ポンプ室は、内部流体の流通孔を介して相互に連通され、
前記給水口および前記吸入口は、前記第1ポンプ室に対して設けられ、
前記排出口は、前記第2ポンプ室に対して設けられ、
前記金属製リング部材は、前記第1ポンプケーシングおよび前記第2ポンプケーシングのうちの少なくとも1つに備えられる、請求項1に記載の水封式真空ポンプ。
【請求項3】
前記金属製リング部材は、前記ポンプケーシングの内周部に配置されている、請求項1または2に記載の水封式真空ポンプ。
【請求項4】
前記ポンプケーシングは、前記モータの配置側とは反対側に、前記ポンプ室の開口部を有し、
前記開口部は、前記給水口および前記吸入口を有する吸入側ケーシングにより閉塞され、
前記吸入側ケーシングにおいて、前記ポンプケーシングに臨む側とは逆側には、金属製カバーが装着されている、請求項1または2に記載の水封式真空ポンプ。
【請求項5】
前記金属製カバーは、平板形状であり、
前記前記吸入側ケーシングにおいて、前記金属製カバーが装着される領域は、平坦である、請求項4に記載の水封式真空ポンプ。
【請求項6】
前記吸入口および前記排出口のうちの少なくとも1つの入出口には、継手が設けられており、
前記継手は、
前記入出口の周囲に接合されるフランジ部と、
前記フランジ部を基端として延びる管状体あって、内部に前記入出口に連通する貫通穴を有するポート部と、を備え、
前記フランジ部の厚さをAとし、前記貫通穴の最大内径をBとした場合に、両値の比率が0.1≦A/B≦2.0の条件を満たす、請求項1または2に記載の水封式真空ポンプ。
【請求項7】
前記ポンプケーシングは、前記ポンプ室が開口する側の面の複数箇所に肉盗みが設けられており、
前記肉盗みに対してリブが設けられる、請求項1または2に記載の水封式真空ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水封式真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ポンプケーシング内に封水と呼ばれる水を注入すると共に、インペラの回転に伴う遠心力によって水リングを形成させ、水リングとインペラの間の空間体積を変化させることで真空状態を生み出す水封式真空ポンプが知られている。例えば、エルモポンプと呼ばれるタイプの水封式真空ポンプは、ポンプケーシングに対して偏心させたインペラが半回転するごとに、空間体積の膨張過程における気体の吸入と、空間体積の圧縮過程における気体の排出を繰り返すように動作する。特許文献1は、吸気側ケーシングおよび排気側ケーシングを備え、吸気側ケーシングおよび排気側ケーシングにそれぞれインペラが収納された二段形の水封式真空ポンプを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポンプケーシング内に注入される封水としては、清水である水道水を使用することが推奨されているが、水道水には、残留塩素や腐食性イオン(塩化物イオンおよび硫酸イオン)が含まれていることが多い。そこで、接液部分の腐食を抑制するために、ポンプケーシングに耐食性の高い金属材料(例えば、オーステナイト系ステンレス鋼)を使用するのが一般的であった。
【0005】
ポンプケーシングに耐食性の高い金属材料を使用した場合、ポンプ室の段数が増えるほど製品の原価が高くなるうえ、重量も大きくなるため輸送費も余計に掛かるようになる。そこで、本出願の発明者らは、ポンプケーシングに合成樹脂材料を使用することで、接液部分の腐食を抑制しつつ、軽量化を図ることを検討してきた。ところが、合成樹脂製のポンプケーシングを用いた場合には、ポンプ本体の振動および騒音が大きくなることが判明した。
【0006】
そこで本発明は、合成樹脂製のポンプケーシングを用いた場合であっても、ポンプ本体の振動および騒音を抑制することが可能な水封式真空ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の水封式真空ポンプは、モータの回転軸に連結され、軸線回りに回転するインペラと、前記インペラを収容するポンプ室を構成するポンプケーシングと、前記ポンプ室に封水を供給するための給水口と、前記ポンプ室に気体を吸入するための吸入口と、前記ポンプ室から気体を排出するための排出口と、を備え、前記ポンプケーシングは、合成樹脂で形成されると共に、前記インペラの回転領域の少なくとも一部を覆う金属製リング部材を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、合成樹脂製のポンプケーシングを用いた場合であっても、ポンプ本体の振動および騒音を抑制することが可能な水封式真空ポンプを提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態の水封式真空ポンプの斜視図である。
【
図2】本実施形態の水封式真空ポンプの分解斜視図である。
【
図4】第1ポンプケーシングを平面視した図である。
【
図7】他の実施形態の水封式真空ポンプの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
発明を実施するための形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態の水封式真空ポンプ1の斜視図である。
図1に示すように、水封式真空ポンプ1は、モータ90、ポンプケーシング20、および吸入側ケーシング30を含む。本実施形態の水封式真空ポンプ1は、二段形の水封式真空ポンプである。二段形とは、後に説明するインペラ、および、インペラが配置されるポンプ室が、2つ含まれている形式をいう。水封式真空ポンプ1が二段形であるため、ポンプケーシング20は、第1ポンプケーシング20Aおよび第2ポンプケーシング20Bを含む。第1ポンプケーシング20Aおよび第2ポンプケーシング20Bの内部には、それぞれインペラが配置されている。
【0011】
吸入側ケーシング30および第2ポンプケーシング20Bには、それぞれに、継手80が配置されている。継手80とは、外部の配管を水封式真空ポンプ1に接続する際に、つなぎ目として機能する部品である。吸入側ケーシング30に配置されている継手80を、第1継手80Aとする。第2ポンプケーシング20Bに配置されている継手80を、第2継手80Bとする。
【0012】
本実施形態の水封式真空ポンプ1では、ポンプケーシング20および吸入側ケーシング30は、合成樹脂によって形成されている。これらの部品に使用される合成樹脂は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変成ポリフェニレンエーテル(m-PPE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)等のエンジニアリングプラスチックが好適である。例示された合成樹脂は、ガラス繊維や炭素繊維等で強化されていてもよい。
【0013】
図2に基づいて、水封式真空ポンプ1の主要な構成部材の配置を説明する。
図2は、本実施形態の水封式真空ポンプ1の分解斜視図である。モータ90の回転は、モータ90の回転軸92を介して、インペラ10に伝達される。
図2の破線94は、回転軸92の軸線を示す。軸線94に平行な方向を、X方向とする。
図2のY方向は、X方向に垂直な方向である。X方向を水平方向とした場合、Y方向は、高さ方向となる。
【0014】
水封式真空ポンプ1においては、回転軸92から、軸線94に沿って、第2ポンプケーシング20B、第1ポンプケーシング20A、および吸入側ケーシング30が順に配置されている。第2ポンプケーシング20B、第1ポンプケーシング20A、および吸入側ケーシング30は、モータ90における回転軸92の突出面に対して、所定本数の長ボルト50で締結されることにより固定される。
【0015】
長ボルト50の締結位置は、軸線94を中心とする同心円上に配置され、隣接する締結位置の中心角が均等になるように設定される。長ボルト50は、ケーシングの大きさに応じて例えば4~10本が使用され、本実施形態では6本が使用されている。長ボルト50の使用本数及び締付トルクを調節して各ケーシングどうしの締結力を高めることにより、固定不足等に起因する振動の発生が抑制されるので、騒音値を低減させる効果が期待できる。
【0016】
(第2ポンプケーシング)
第2ポンプケーシング20Bは、二段形の水封式真空ポンプ1における二段目に対応する部品である。第2ポンプケーシング20Bの内部には、ポンプ室60が形成されている。第2ポンプケーシング20Bに形成されているポンプ室60を、第2ポンプ室60Bとする。第2ポンプ室60Bの形状は、おおよそ円筒形状である。
【0017】
第2ポンプ室60Bには、インペラ10が配置されている。第2ポンプ室60Bに配置されているインペラ10を、第2インペラ10Bとする。ポンプ室60において、インペラ10が回転する領域を、回転領域12とする。第2ポンプ室60Bにおいては、第2インペラ10Bが回転する領域が、回転領域12となる。
【0018】
本実施形態の第2ポンプケーシング20Bには、金属製リング部材14が配置されている。金属製リング部材14は、回転領域12の少なくとも一部を覆うように配置されている。金属製リング部材14は、第2ポンプケーシング20Bの内周部24に配置されている。金属製リング部材14は、内周部24に沿うような形状に形成されている。本実施形態では、金属製リング部材14の形状は、円筒形状である。金属製リング部材14については、後に説明する。
【0019】
第2ポンプケーシング20Bの外周部25には、排出口6が形成されている。排出口6は、第2ポンプケーシング20Bの外部と、第2ポンプ室60Bとをつなぐ貫通穴である。排出口6からは、第2ポンプ室60Bの気体が排出される。
【0020】
第2ポンプケーシング20Bの外周部25には、第2継手80Bが配置されている。第2継手80Bは、排出口6を覆うように配置されている。継手80については、後に説明する。
【0021】
(第1ポンプケーシング)
軸線94の方向において、第2ポンプケーシング20Bのモータ90に臨む側とは逆側には、第1ポンプケーシング20Aが配置されている。第1ポンプケーシング20Aは、二段形の水封式真空ポンプ1における一段目に対応する部品である。第2ポンプ室60Bの開口部26は、第1ポンプケーシング20Aによって塞がれている。
【0022】
第1ポンプケーシング20Aの内部には、ポンプ室60が形成されている。第1ポンプケーシング20Aに形成されているポンプ室60を、第1ポンプ室60Aとする。第1ポンプ室60Aの形状は、およそ円筒形状である。
【0023】
第1ポンプケーシング20Aには、流通孔22が形成されている。流通孔22は、第1ポンプケーシング20Aにおける、第2ポンプケーシング20Bの開口部26に臨む面に形成されている。流通孔22は、貫通孔である。第1ポンプ室60Aは、流通孔22を介して、第2ポンプ室60Bにつながっている。
【0024】
第1ポンプ室60Aには、インペラ10が配置されている。第1ポンプ室60Aに配置されているインペラ10を、第1インペラ10Aとする。第1ポンプ室60Aにおいては、第1インペラ10Aが回転する領域が、回転領域12となる。
【0025】
本実施形態の第1ポンプケーシング20Aには、前述の第2ポンプケーシング20Bと同様に、回転領域12の少なくとも一部を覆う金属製リング部材14が配置されている。金属製リング部材14は、第1ポンプケーシング20Aの内周部24に配置されている。金属製リング部材14の形状は、円筒形状である。
【0026】
第1ポンプケーシング20Aには、第2ポンプケーシング20Bとは異なり、外周部25に継手80は配置されていない。
【0027】
(吸入側ケーシング)
軸線94の方向において、第1ポンプケーシング20Aの第2ポンプケーシング20Bに臨む側とは逆側には、吸入側ケーシング30が配置されている。第2ポンプ室60Bの開口部26は、吸入側ケーシング30によって塞がれる。
【0028】
第1ポンプケーシング20Aの外周部25には、第1ポンプ室60Aにつながる吸入口5が形成されている。吸入口5は、第1ポンプ室60Aに気体を吸入するための貫通穴である。
【0029】
第1ポンプケーシング20Aの外周部25には、第1継手80Aが配置されている。第1継手80Aは、吸入口5を覆うように配置されている。
【0030】
吸入側ケーシング30には、吸入側ケーシング30をX方向に貫通する給水口3が形成されている。給水口3は、封水を第1ポンプ室60Aに供給するための貫通穴である。
【0031】
吸入側ケーシング30における、第1ポンプケーシング20Aに臨む側とは逆側には、金属製カバー40が装着されている。吸入側ケーシング30における金属製カバー40が装着される面を、金属製カバー装着面32とする。金属製カバー40については、後に説明する。
【0032】
(金属製リング部材)
以下、本実施形態の水封式真空ポンプ1の特徴的な部分を順に説明する。まず、金属製リング部材14について説明する。
図3は、第2ポンプケーシング20Bの斜視図である。
図3に示すように、第2ポンプケーシング20Bの内周部24には、金属製リング部材14が配置されている。
【0033】
図2に基づいて説明したように、金属製リング部材14は、第1ポンプケーシング20Aの内周部24にも配置されている。
図4は、第1ポンプケーシング20Aおよび金属製リング部材14を、
図2に示す矢印Iの方向から見た図である。
【0034】
図4に示すように、金属製リング部材14の形状は、円筒形状である。金属製リング部材14は、内周部24に沿うように配置されている。
【0035】
金属製リング部材14の形状は、内周部24の形状に対応した形状である。内周部24の形状に対応した形状とは、例えば、内周部24に、ほぼ隙間なくはめ込むことができるような形状を意味する。本実施形態では、内周部24の形状は、円筒形状である。そのため、金属製リング部材14の形状は、円筒形状となっている。
【0036】
ここで、インペラ10が回転することによって占める空間を、回転領域12とする。金属製リング部材14は、第2ポンプケーシング20Bの内周部24に配置されることによって、第2インペラ10Bの回転領域12の少なくとも一部を覆う。同様に、金属製リング部材14は、第1ポンプケーシング20Aの内周部24に配置されることによって、第1インペラ10Aの回転領域12の少なくとも一部を覆う。
【0037】
回転領域12の形状は、一般的に円柱形状である。金属製リング部材14は、円柱形状の回転領域12における側面の少なくとも一部を覆う。側面とは、円柱形状における、向かい合う2面以外の表面をいう。すなわち、金属製リング部材14は、回転領域12の表面のなかで、曲面の部分の少なくとも一部を覆う。
【0038】
ポンプケーシング20が合成樹脂によって形成されている場合、水封式真空ポンプ1の振動および騒音は大きくなる傾向にある。本実施形態の水封式真空ポンプ1では、回転領域12の少なくとも一部を覆うように、金属製リング部材14が配置されている。そのため、第1ポンプケーシング20Aおよび第2ポンプケーシング20Bが合成樹脂によって形成されている場合であっても、水封式真空ポンプ1の振動および騒音を抑制することができる。金属製リング部材14が振動の発生を抑制し、また、金属製リング部材14が騒音の伝搬を低減させるからである。
【0039】
図5は、金属製リング部材14を配置した場合と、金属製リング部材14を配置しない場合とにおける、騒音値を示す図である。
図5のグラフの横軸は吸込圧力[kPa]を示し、縦軸は騒音値[dB]を示す。
図5の黒三角は金属製リング部材なしを示し、黒丸は金属製リング部材ありを示す。
【0040】
図5に示すように、金属製リング部材14を配置することによって、騒音値が低下していることが分かる。例えば、吸込圧力が100kPaの近傍では、騒音値は約2.7dB低下している。
【0041】
金属製リング部材14の材料は、例えばステンレス鋼とすることができる。ポンプケーシング内に注入される封水には、残留塩素や腐食性イオンなどが含まれる場合がある。そのため、金属製リング部材14の材料を、オーステナイト系ステンレス鋼のような耐食性の高い材料とすることによって、金属製リング部材14の耐久性を向上させることができる。
【0042】
図3に示す実施形態では、金属製リング部材14は、第2ポンプケーシング20Bの内周部24に配置されていた。金属製リング部材14を配置する位置は、第2ポンプケーシング20Bの内周部24に限定されない。金属製リング部材14は、第2インペラ10Bの回転領域12の少なくとも一部を覆う位置であれば任意の位置に配置することができる。例えば、金属製リング部材14は、第2ポンプケーシング20Bの内周部24と外周部25との間の位置に配置されてもよい。また、金属製リング部材14は、第2ポンプケーシング20Bの外周部25の外側に配置されてもよい。
【0043】
金属製リング部材14を第2ポンプケーシング20Bに配置する方法は、特に限定されない。例えば、まず第2ポンプケーシング20Bを成形し、その後、金属製リング部材14を第2ポンプケーシング20Bにはめ込むことで、金属製リング部材14を第2ポンプケーシング20Bに配置することができる。または、例えばインサート成形法などを用いて、第2ポンプケーシング20Bを成形する際に、第2ポンプケーシング20Bと金属製リング部材14とを一体成形してもよい。金属製リング部材14を第2ポンプケーシング20Bの内周部24に配置する場合には、金属製リング部材14を第2ポンプケーシング20Bにはめ込むこと、および、第2ポンプケーシング20Bと金属製リング部材14とを一体成形することが容易になる。
【0044】
上述の説明では、第2ポンプケーシング20Bを例にして金属製リング部材14の配置位置および配置方法について説明した。上に説明した内容は、第1ポンプケーシング20Aに対しても同様に妥当する。第1ポンプケーシング20Aについては、上述の説明における第2ポンプケーシング20Bを第1ポンプケーシング20Aとし、第2インペラ10Bを第1インペラ10Aとする。
【0045】
水封式真空ポンプ1が、インペラを2つ含む二段形の水封式真空ポンプである場合には、水封式真空ポンプの振動および騒音が大きくなりがちである。しかし、本実施形態の水封式真空ポンプ1によれば、第1ポンプケーシング20Aおよび第2ポンプケーシング20Bのそれぞれに金属製リング部材14が配置されている。そのため、水封式真空ポンプが二段形であっても、振動および騒音を抑制することができる。
【0046】
なお、水封式真空ポンプ1は、二段形には限定されない。例えば、水封式真空ポンプ1が一段形であっても、そのポンプケーシング20に金属製リング部材14を配置することによって、振動および騒音を抑制することができる。
【0047】
(金属製カバー)
金属製カバー40について説明する。本実施形態の水封式真空ポンプ1においては、
図1および
図2に示すように、吸入側ケーシング30における第1ポンプケーシング20Aに臨む側とは逆側に、金属製カバー40が装着されている。すなわち、吸入側ケーシング30の金属製カバー装着面32に、金属製カバー40が配置されている。
【0048】
金属製カバー40は、おおよそ円盤形状の金属板である。金属製カバー40をX方向から平面視した場合の形状は、吸入側ケーシング30をX方向から平面視した場合の形状とほぼ同じである。平面視において、金属製カバー40の形状が吸入側ケーシング30の形状とほぼ同じであるため、金属製カバー40は、吸入側ケーシング30の一つの端面のほぼ全体を覆うことができる。
【0049】
本実施形態の水封式真空ポンプ1では、吸入側ケーシング30における第1ポンプケーシング20Aに臨む側とは逆側、すなわち、水封式真空ポンプ1における露出している側の端面が金属製カバー40によって覆われている。そのため、水封式真空ポンプ1の端面の振動、および端面からの騒音の漏れ出し抑制することができる。その結果、水封式真空ポンプ1の振動および騒音を抑制することができる。
【0050】
例えば金属製カバー40の厚さを6mmにした場合、騒音値は約2dB低下した。
【0051】
図6は、吸入側ケーシング30の斜視図である。
図6に示すように、金属製カバー40が装着される金属製カバー装着面32は、ほぼ平坦である。詳しくは、金属製カバー装着面32における金属製カバー40が装着される領域は、ほぼ平坦である。
【0052】
金属製カバー装着面32において、金属製カバー40と接する部分を平坦にすることによって、水封式真空ポンプ1の端面と、金属製カバー40との密着性を向上させることができる。その結果、振動および騒音をより抑制することができる。
【0053】
なお、金属製カバー40には、吸入側ケーシング30との密着性を向上させるために、例えば
図2に示すような、吸入側ケーシング30の形状に対応した切り欠き部42を形成してもよい。
【0054】
また、金属製カバー40には、吸入側ケーシング30の給水口3に対応する位置に、貫通穴44が形成されている。
【0055】
金属製カバー40は、振動および騒音の抑制に加えて、吸入側ケーシング30の破損を抑制することができる。吸入側ケーシング30が合成樹脂で形成されている場合には、吸入側ケーシング30の温度が上昇すると、吸入側ケーシング30が熱膨張し、長ボルト50の締結箇所への応力集中により吸入側ケーシング30が破損する可能性がある。吸入側ケーシング30に装着された金属製カバー40は、吸入側ケーシング30が熱膨張した場合でも、長ボルト50の締結箇所に発生する応力を分散させることができる。その結果、金属製カバー40は、吸入側ケーシング30の破損を抑制することができる。
【0056】
金属製カバー40を形成する材料は特には限定されない。金属製カバー40を形成する材料は、例えば、ステンレス鋼とすることができる。
【0057】
以上、金属製カバー40が、吸入側ケーシング30の金属製カバー装着面32に装着されている構成を説明した。金属製カバー40が吸入側ケーシング30に備えらえる構成はこれには限定されない。金属製カバー40は、吸入側ケーシング30を成形する際に、例えばインサート成形によって、吸入側ケーシング30と一体として、吸入側ケーシング30に備えられてもよい。
【0058】
(継手)
継手80について説明する。前述のように、継手80は、第2ポンプケーシング20Bおよび吸入側ケーシング30に各々配置されている。第2ポンプケーシング20Bに配置される継手80が、第2継手80Bである。吸入側ケーシング30に配置される継手80が、第1継手80Aである。第2継手80Bは、
図3に詳しく示されている。第1継手80Aは、
図6に詳しく示されている。
【0059】
図3および
図6に示す継手80の形状は、おおよそ直方体形状である。継手80は、フランジ部82およびポート部83を含む。ポート部83は、そこに円筒形状の貫通穴84が形成される部分である。フランジ部82は、ポート部83を取り囲む部分である。フランジ部82は、継手80を2ポンプケーシング20Bまたは吸入側ケーシング30に固定するために用いられる。フランジ部82には、ボルトの通し穴86が形成されている。継手80は、通し穴86を挿通する六角穴付ボルト(
図7参照)により、第2ポンプケーシング20Bまたは吸入側ケーシング30に取り付けられる。
【0060】
図3に基づいて、第2継手80Bを例にして、継手80について説明する。第2継手80Bは、第2ポンプケーシング20Bの外周部25における高さ方向Yの頂きに配置されている。第2ポンプケーシング20Bの外周部25における高さ方向Yの頂きには、排出口6が形成されている。排出口6は、第2ポンプ室60Bと、第2ポンプケーシング20Bの外部とをつなぐ、第2ポンプケーシング20Bに形成された貫通穴である。排出口6の、第2ポンプケーシング20Bの外周部25側の端部を、入出口7とする。
【0061】
第2継手80Bは、ポート部83の貫通穴84の開口が入出口7に一致するように、外周部25に配置されている。第2継手80Bは、フランジ部82の通し穴86を挿通する六角穴付ボルト(図示省略)により、第2ポンプケーシング20Bに固定される。
【0062】
以上のように、継手80は、入出口7の周囲に接合されるフランジ部82と、フランジ部82を基端として延びる管状体あって、内部に入出口7に連通する貫通穴84を有するポート部83と、を備える。
【0063】
ここで、フランジ部82の厚さをAとする。フランジ部82の厚さとは、フランジ部82の、通し穴86が伸びる方向に沿った長さを意味する。また、貫通穴84の最大内径をBとする。本実施形態の水封式真空ポンプ1では、フランジ部82の厚さAを厚くしている。フランジ部82の厚さAを厚くすることによって、継手80の振動、および継手80からの騒音を抑制することができる。
【0064】
なお、上述の
図3に基づく第2継手80Bについての説明は、
図4に示す第1継手80Aについても妥当する。
図3の第2ポンプケーシング20Bが
図4の吸入側ケーシング30に対応し、
図3の排出口6が
図4の吸入口5に対応する。
【0065】
継手80のフランジ部82の厚さA、およびポート部83の貫通穴84の最大内径Bについて、
図7から
図9に基づいて説明する。
図7は、他の実施形態の水封式真空ポンプ1の斜視図である。
図8は、
図7のII-II線断面図である。
図9は、
図7に示す継手80を、
図7に示す矢印IIIの方向から見た図である。
【0066】
前述のように、フランジ部82の厚さAとし、貫通穴84の最大内径をBとした場合、両値の比率は、0.1≦A/B≦2.0の条件を満たすことが好ましい。また、両値の比率は、0.2≦A/B≦1.0の条件を満たすことが、より好ましい。
【0067】
両値が上述の条件を満たす場合、フランジ部82の厚さAは、貫通穴84の最大内径Bの少なくとも10%以上の厚さである。貫通穴84の最大内径Bが大きいことは、一般的にその貫通穴84を通る気体の量が多いことを意味する。多くの気体が貫通穴84を通るということは、水封式真空ポンプ1の出力が大きいことを意味する。水封式真空ポンプ1の出力が大きくなると、水封式真空ポンプ1の振動および騒音が大きくなる。また、振動および騒音は、継手80の近傍でより大きくなる傾向がある。
【0068】
ここで、本実施形態のフランジ部82の厚さAは、上記の条件に従い、貫通穴84の最大内径Bが大きくなることに伴って増加するよう調整される。そのため、水封式真空ポンプ1の出力が大きい場合でも、継手の振動および騒音を抑制することができる。フランジ部82の厚さAが大きくなることによって気体の吸入・排出に伴う振動が起きにくくなり、また、音の透過損失が増加するからである。
【0069】
さらに、本実施形態のフランジ部82の厚さAは、少なくとも貫通穴84の最大内径Bの10%以上、好ましくは20%以上の厚さである。本実施形態のフランジ部82の厚さAは、強度などの観点からフランジ部82に通常設定される厚さよりも厚い。そのため、継手の振動、および継手からの騒音を、確実に抑制することができる。
【0070】
また、両値が上述の条件を満たす場合、フランジ部82の厚さAは、貫通穴84の最大内径Bの2倍以下、好ましくは1倍以下の厚さである。フランジ部82の厚さAが大きくなりすぎると、継手の振動が増大する場合がある。本実施形態のフランジ部82の厚さAは、大きくとも貫通穴84の最大内径Bの2倍を超えない。そのため、フランジ部82の厚さAが適切な範囲に設定され、フランジ部82を厚くすることによる弊害に発生を抑制することができる。
【0071】
継手80を形成する材料は、例えばステンレス鋼などの金属とすることができる。
【0072】
(リブ構造)
図3に示される第2ポンプケーシング20Bにおいて、第2ポンプ室60Bが開口する側の面には、樹脂成形時のヒケを防止するため、周方向の複数箇所に肉盗み27が設けられている。これらの肉盗み27は、第2ポンプケーシング20Bの内周部24の表面、及び外周部25の表面に設けられている。また、それぞれの肉盗み27に対しては、強度アップ及び変形防止を目的として、複数箇所にリブ28が設けられている。肉盗み27の空隙部分にリブ28を存在させることにより、変形等に起因する振動の発生が抑制されるので、騒音値が低減することになる。
【0073】
上述の肉盗み27及びリブ28は、
図4に示されるように、第1ポンプケーシング20Aの内周部24及び外周部25にも設けられている。また、肉盗み27及びリブ28は、
図6に示されるように、吸入側ケーシング30の金属製カバー装着面32に設けることもできる。複数のケーシングに対してリブ構造を付与することで、振動抑制に対する相乗効果が得られる。例えば第1ポンプケーシング20A及び第2ポンプケーシング20Bのそれぞれにリブ構造を付与した場合、騒音値は約1.3dB低下した。
【0074】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限定されることなく、種々の変更、変形及び組み合わせが可能である。
【0075】
<1>
モータの回転軸に連結され、軸線回りに回転するインペラと、
前記インペラを収容するポンプ室を構成するポンプケーシングと、
前記ポンプ室に封水を供給するための給水口と、
前記ポンプ室に気体を吸入するための吸入口と、
前記ポンプ室から気体を排出するための排出口と、を備え、
前記ポンプケーシングは、合成樹脂で形成されると共に、前記インペラの回転領域の少なくとも一部を覆う金属製リング部材を備える、水封式真空ポンプ。
【0076】
<2>
前記インペラは、前記回転軸に連結され、軸線回りに同期回転する第1インペラおよび第2インペラを含み、
前記ポンプケーシングは、
前記第1インペラを収容する第1ポンプ室を構成する第1ポンプケーシングと、
前記第2インペラを収容する第2ポンプ室を構成する第2ポンプケーシングと、を含み、
前記第1ポンプ室および前記第2ポンプ室は、内部流体の流通孔を介して相互に連通され、
前記給水口および前記吸入口は、前記第1ポンプ室に対して設けられ、
前記排出口は、前記第2ポンプ室に対して設けられ、
前記金属製リング部材は、前記第1ポンプケーシングおよび前記第2ポンプケーシングのうちの少なくとも1つに備えられる、<1>に記載の水封式真空ポンプ。
【0077】
<3>
前記金属製リング部材は、前記ポンプケーシングの内周部に配置されている、<1>または<2>に記載の水封式真空ポンプ。
【0078】
<4>
前記ポンプケーシングは、前記モータの配置側とは反対側に、前記ポンプ室の開口部を有し、
前記開口部は、前記給水口および前記吸入口を有する吸入側ケーシングにより閉塞され、
前記吸入側ケーシングにおいて、前記ポンプケーシングに臨む側とは逆側には、金属製カバーが装着されている、<1>から<3>のいずれかに記載の水封式真空ポンプ。
【0079】
<5>
前記金属製カバーは、平板形状であり、
前記前記吸入側ケーシングにおいて、前記金属製カバーが装着される領域は、平坦である、<4>に記載の水封式真空ポンプ。
【0080】
<6>
前記吸入口および前記排出口のうちの少なくとも1つの入出口には、継手が設けられており、
前記継手は、
前記入出口の周囲に接合されるフランジ部と、
前記フランジ部を基端として延びる管状体あって、内部に前記入出口に連通する貫通穴を有するポート部と、を備え、
前記フランジ部の厚さをAとし、前記貫通穴の最大内径をBとした場合に、両値の比率が0.1≦A/B≦2.0の条件を満たす、<1>から<5>のいずれかに記載の水封式真空ポンプ。
【0081】
<7>
前記ポンプケーシングは、前記ポンプ室が開口する側の面の複数箇所に肉盗みが設けられており、
前記肉盗みに対してリブが設けられる、<1>から<6>のいずれかに記載の水封式真空ポンプ。
【符号の説明】
【0082】
1 水封式真空ポンプ
3 給水口
5 吸入口
6 排出口
7 入出口
10 インペラ
10A 第1インペラ
10B 第2インペラ
12 回転領域
14 金属製リング部材
20 ポンプケーシング
20A 第1ポンプケーシング
20B 第2ポンプケーシング
22 流通孔
24 内周部
25 外周部
26 開口部
27 肉盗み
28 リブ
30 吸入側ケーシング
32 金属製カバー装着面
40 金属製カバー
50 長ボルト
60 ポンプ室
60A 第1ポンプ室
60B 第2ポンプ室
80 継手
80A 第1継手
80B 第2継手
82 フランジ部
83 ポート部
84 貫通穴
86 通し穴
90 モータ
92 回転軸
94 軸線