(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114363
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】燃料循環方法、燃料供給システム及びガス化設備
(51)【国際特許分類】
F23K 1/00 20060101AFI20240816BHJP
C10J 3/46 20060101ALI20240816BHJP
C10J 3/50 20060101ALI20240816BHJP
F23K 3/02 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
F23K1/00 B
C10J3/46 F
C10J3/50
F23K3/02 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020087
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】林 智弥
(72)【発明者】
【氏名】藤井 貴
(72)【発明者】
【氏名】西村 幸治
(72)【発明者】
【氏名】浦方 悠一郎
(72)【発明者】
【氏名】稲田 皓介
(57)【要約】
【課題】設備の不具合を生じるほどの不均一な微粉含有流体がガス化炉に供給されることを回避するための燃料循環方法、燃料供給システム及びガス化設備を提供する。
【解決手段】炭素を含有する微粉燃料を貯留する供給ビン230と、供給ビン230から供給された微粉燃料がイナートガスによって内部で加圧され、微粉燃料がイナートガスとともに外部に排出される供給ホッパ240a,240b,240cと、を備えている燃料供給システム200における燃料循環方法であって、微粉燃料が基準時間以上供給ホッパ240a,240b,240cに貯留された場合、供給ホッパ240a,240b,240cと供給ビン230との間で微粉燃料を循環させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粉燃料を貯留する第1容器と、
前記第1容器から供給された微粉燃料がイナートガスによって内部で加圧され、微粉燃料がイナートガスとともに外部に排出される第2容器と、
を備えている燃料供給システムにおける燃料循環方法であって、
微粉燃料が基準時間以上前記第2容器に貯留された場合、前記第2容器と前記第1容器との間で微粉燃料を循環させる
燃料循環方法。
【請求項2】
前記燃料供給システムは、
前記第1容器と前記第2容器とを接続している第1ラインと、
前記第2容器とガス化炉とを接続している第2ラインと、
前記第2ラインと前記第1容器とを接続している循環ラインと、
を備え、
微粉燃料が基準時間以上前記第2容器に貯留された場合、前記第2容器、前記第2ライン、前記循環ライン、前記第1容器、前記第1ライン及び前記第2容器の経路で微粉燃料を循環させる
請求項1に記載の燃料循環方法。
【請求項3】
循環している微粉燃料の密度に応じて微粉燃料の循環を停止させる
請求項1又は2に記載の燃料循環方法。
【請求項4】
第1容器と、
第2容器と、
前記第1容器と前記第2容器とを接続している第1ラインと、
前記第2容器とガス化炉とを接続している第2ラインと、
前記第2ラインと前記第1容器とを接続している循環ラインと、
前記第2ラインに設けられた第2ラインバルブと、
前記循環ラインに設けられた循環ラインバルブと、
制御部と、
を備え、
前記第1容器は、炭素を含有する微粉燃料を貯留するものとされ、
前記第2容器は、前記第1ラインを介して前記第1容器から供給された微粉燃料がイナートガスによって内部で加圧され、微粉燃料がイナートガスとともに外部に排出されるものとされ、
前記制御部は、微粉燃料が基準時間以上前記第2容器に貯留された場合、前記第2容器、前記第2ライン、前記循環ライン、前記第1容器、前記第1ライン及び前記第2容器の経路で微粉燃料が循環するように前記第2ラインバルブ及び/又は前記循環ラインバルブを制御する
燃料供給システム。
【請求項5】
前記循環ラインは、分岐部にて前記第2ラインと接続され、
前記第2容器と前記分岐部との間の前記第2ライン又は前記循環ラインには、流通する微粉燃料の密度を測定する密度計が設けられ、
前記制御部は、前記密度計からの情報に基づいて微粉燃料の循環を停止させるように前記第2ラインバルブ及び/又は前記循環ラインバルブを制御する
請求項4に記載の燃料供給システム。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の燃料供給システムと、
微粉燃料をガス化する前記ガス化炉と、
を備えている
ガス化設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料循環方法、燃料供給システム及びガス化設備に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素を含有する固体燃料(例えば石炭を粉砕した微粉燃料)を加圧条件下でガス化するガス化炉を備えたガス化設備を起動するに際して、まずは軽油や灯油等の起動用燃料でガス化炉を起動して、その後、炉内圧力や炉内温度等の条件が整ったら微粉燃料の加圧供給を開始して燃料を切り替える。
【0003】
微粉燃料の加圧供給には、例えばロックホッパ方式が採用される(例えば特許文献1)。
ロックホッパ方式とは、微粉燃料が貯留されているビンから常圧下にある供給ホッパに微粉燃料を供給して、供給ホッパを系外と遮断した後に窒素等のイナートガスで供給ホッパ内を加圧して、ガス化炉に微粉燃料を供給し得る圧力に供給ホッパ内の圧力が到達した後、供給ホッパ内で貯留されている微粉燃料をイナートガスで気流搬送してガス化炉に供給する方式である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
定期点検を実施するときのように長期間にわたってガス化炉の運転を停止する際には、供給ホッパから微粉燃料を抜き出すことがある。
一方で、1~2週間以内の運転停止後にガス化炉の再起動が予定されている場合には、微粉燃料の抜き出しを実施しないことがある。この場合、供給ホッパに貯留されている微粉燃料は、自重によって圧密され、また粉体そのものの凝集性も相まって、経時的に微粉燃料の凝集物(いわゆる「ダマ」)を生じることがある。
【0006】
ダマが生成された状態でガス化炉を起動して微粉燃料の供給を開始すると、均一な微粉含有流体(微粉燃料が含まれたイナートガス)がガス化炉に供給されるべきところが、ダマの存在により起動直後は過渡的に不均一な微粉含有流体がガス化炉に供給されることになる。
微粉燃料を酸化させる空気や酸素等の酸化剤は、均一な微粉含有流体が供給される前提で所望の量だけ供給されているので、不均一な微粉含有流体を供給することは意図しない空気比の変動に繋がる。そうすると、本来、還元雰囲気では生成されない硫黄酸化物(SOx)やSOxを起点とした他の化合物が生成されるといった状況が発生する可能性がある。これらは通常のガス化炉としては想定されていない状況であり、ガス化炉そのものの不具合や生成されたガスが通過する設備(例えばガス精製設備)の不具合の原因となり得る。
【0007】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、設備の不具合を生じるほどの不均一な微粉含有流体がガス化炉に供給されることを回避するための燃料循環方法、燃料供給システム及びガス化設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の燃料循環方法、燃料供給システム及びガス化設備は、以下の手段を採用する。
本開示の一態様に係る燃料循環方法は、炭素を含有する微粉燃料を貯留する第1容器と、前記第1容器から供給された微粉燃料がイナートガスによって内部で加圧され、微粉燃料がイナートガスとともに外部に排出される第2容器と、を備えている燃料供給システムにおける燃料循環方法であって、微粉燃料が基準時間以上前記第2容器に貯留された場合、前記第2容器と前記第1容器との間で微粉燃料を循環させる。
【0009】
また、本開示の一態様に係る燃料の燃料供給システムは、第1容器と、第2容器と、前記第1容器と前記第2容器とを接続している第1ラインと、前記第2容器とガス化炉とを接続している第2ラインと、前記第2ラインと前記第1容器とを接続している循環ラインと、前記第2ラインに設けられた第2ラインバルブと、前記循環ラインに設けられた循環ラインバルブと、制御部と、を備え、前記第1容器は、炭素を含有する微粉燃料を貯留するものとされ、前記第2容器は、前記第1ラインを介して前記第1容器から供給された微粉燃料がイナートガスによって内部で加圧され、微粉燃料がイナートガスとともに外部に排出されるものとされ、前記制御部は、微粉燃料が基準時間以上前記第2容器に貯留された場合、前記第2容器、前記第2ライン、前記循環ライン、前記第1容器、前記第1ライン及び前記第2容器の経路で微粉燃料が循環するように前記第2ラインバルブ及び/又は前記循環ラインバルブを制御する。
【0010】
また、本開示の一態様に係る燃料のガス化設備は、上記の燃料供給システムと、微粉燃料をガス化する前記ガス化炉と、を備えている。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、設備の不具合を生じるほどの不均一な微粉含有流体がガス化炉に供給されることを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の一実施形態に係る石炭ガス化複合発電設備の概略構成図である。
【
図2】
図1に示されているガス化炉の縦断面図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る給炭設備(燃料供給システム)の概略構成図である。
【
図4】本開示の一実施形態に係る循環運転の開始及び終了に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[全体の構成について]
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本開示の一実施形態に係るガス化設備を備えている石炭ガス化複合発電設備10(IGCC:Integrated Coal Gasification Combined Cycle)の概略構成図である。
図2は、
図1に示すガス化炉101の縦断面図である。
以降の説明では、上方とは鉛直上側の方向を示し、下方とは鉛直下側の方向を示している。また、上部や上面などの“上”とは鉛直上側の部分を示し、下面や下部などの“下”とは鉛直下側の部分を示すものである。ただし、鉛直方向は厳密ではなく誤差を含むものである。
【0014】
石炭ガス化複合発電設備10は、空気を主とする酸化剤を用いており、ガス化炉101において燃料から可燃性ガス(生成ガス)を生成する空気燃焼方式を採用している。
そして、石炭ガス化複合発電設備10は、ガス化炉101で生成した生成ガスを、ガス精製設備16で精製して燃料ガスとした後、ガスタービン17に供給して発電を行っている。すなわち、石炭ガス化複合発電設備10は、空気燃焼方式(空気吹き)の発電設備となっている。
なお、本実施形態では空気燃焼方式の石炭ガス化複合発電設備10を例にして説明するが、石炭ガス化複合発電設備10は酸素を主とする酸化剤を用いる酸素燃焼方式(酸素吹き)であってもよい。
ガス化炉101に供給する燃料としては、例えば、石炭等の炭素含有固体燃料が用いられる。
【0015】
石炭ガス化複合発電設備(ガス化複合発電設備)10は、
図1に示すように、給炭設備200と、ガス化炉101と、チャー回収設備15と、ガス精製設備16と、ガスタービン17と、蒸気タービン18と、発電機19と、排熱回収ボイラ20(HRSG:Heat Recovery Steam Generator)とを備えている。
【0016】
給炭設備200は、炭素含有固体燃料として供給された原炭(石炭)をミル210などで粉砕することで細かい粒子状に粉砕した微粉燃料を製造し、後述する空気分離設備42から供給される搬送用イナートガスとしての窒素ガスによって加圧した状態で微粉燃料を燃料供給ライン(ガス化炉供給ライン280)を介してガス化炉101に供給する設備である。給炭設備200の詳細については後述する。
イナートガスとは、酸素含有率が約5体積%以下の不活性ガスであり、窒素ガスや二酸化炭素ガスやアルゴンガスなどが代表例であるが、必ずしも約5体積%以下に制限されるものではない。
【0017】
ガス化炉101には、給炭設備200で製造された微粉燃料が供給されると共に、エネルギーとして再利用する目的で、チャー回収設備15で回収されたチャー(微粉燃料の未反応分と灰分)が供給されている。
【0018】
ガス化炉101には、ガスタービン17(圧縮機61)からの圧縮空気供給ライン41が接続されており、ガスタービン17で圧縮された圧縮空気の一部が昇圧機68で所定圧力に昇圧されてガス化炉101に供給可能となっている。
空気分離設備42は、大気中の空気から窒素と酸素を分離生成するものであり、第1窒素供給ライン43によって給炭設備200(詳細には、後述する供給ホッパ240)と接続されている。
第1窒素供給ライン43からは第2窒素供給ライン45が分岐している。第2窒素供給ライン45は、チャー回収設備15の供給ホッパ52に接続されている。
空気分離設備42は、酸素供給ライン47によって、圧縮空気供給ライン41と接続されている。そして、空気分離設備42によって分離された窒素は、第1窒素供給ライン43及び第2窒素供給ライン45を流通することで、石炭やチャーの搬送用ガスとして利用される。また、空気分離設備42によって分離された酸素は、酸素供給ライン47及び圧縮空気供給ライン41を流通することで、ガス化炉101において酸化剤(酸素が富化された空気)として利用される。
【0019】
ガス化炉101は、例えば、2段噴流床形式で構成されており、内部に供給された微粉燃料およびチャーを酸化剤により部分燃焼させることでガス化させ生成ガスとする。なお、ガス化炉101は、石炭中の灰分(石炭灰)などを外部に排出する異物除去設備48が設けられている。そして、このガス化炉101には、チャー回収設備15に向けて生成ガスを供給する第1生成ガスライン49が接続されており、チャーを含む生成ガスが排出可能となっている。この場合、
図2に示すように、第1生成ガスライン49に生成ガスクーラ102(ガス冷却器)を設けることで、生成ガスを所定温度まで冷却してからチャー回収設備15に供給してもよい。
【0020】
チャー回収設備15は、集塵装置51と供給ホッパ52とを備えている。この場合、集塵装置51は、1つまたは複数のサイクロンやポーラスフィルタにより構成され、ガス化炉101で生成された生成ガスに含有するチャーを分離することができる。そして、チャーが分離された生成ガスは、第2生成ガスライン53を通してガス精製設備16に送られる。供給ホッパ52は、集塵装置51で生成ガスから分離されたチャーを貯留するものである。なお、集塵装置51と供給ホッパ52との間にビンを配置し、このビンに複数の供給ホッパ52を接続するように構成してもよい。そして、供給ホッパ52からのチャー戻しライン46がガス化炉101に接続されている。
【0021】
ガス精製設備16は、チャー回収設備15によりチャーが分離された生成ガスに対して、硫黄化合物や窒素化合物などの不純物を取り除くことで、ガス精製を行うものである。そして、ガス精製設備16は、生成ガスを精製して燃料ガスを製造し、これをガスタービン17に供給する。なお、チャーが分離された生成ガス中には硫黄化合物(H2Sなど)が含まれているため、ガス精製設備16では、アミン吸収液などによって硫黄化合物を除去回収して、石膏等として有効利用する。
【0022】
ガスタービン17は、圧縮機61、燃焼器62、タービン63を備えており、圧縮機61とタービン63とは、回転軸64により連結されている。燃焼器62には、圧縮機61からの圧縮空気供給ライン65が接続されると共に、ガス精製設備16からの燃料ガス供給ライン66が接続され、また、タービン63に向かって延びる燃焼ガス供給ライン67が接続されている。また、ガスタービン17は、圧縮機61からガス化炉101に延びる圧縮空気供給ライン41が設けられており、中途部に昇圧機68が設けられている。従って、燃焼器62では、圧縮機61から供給された圧縮空気の一部とガス精製設備16から供給された燃料ガスの少なくとも一部とを混合して燃焼させることで燃焼ガスを発生させ、発生させた燃焼ガスをタービン63へ向けて供給する。そして、タービン63は、供給された燃焼ガスにより回転軸64を回転させることで発電機19を回転駆動させる。
【0023】
蒸気タービン18は、ガスタービン17の回転軸64に連結されるタービン69を備えており、発電機19は、この回転軸64の基端部に連結されている。なお、蒸気タービン18とガスタービン17は同一軸として1つの発電機19を回転駆動しなくてもよく、別の軸として複数の発電機を回転駆動させても良い。排熱回収ボイラ20は、ガスタービン17(タービン63)からの排ガスライン70が接続されており、排熱回収ボイラ20への給水とタービン63の排ガスとの間で熱交換を行うことで、蒸気を生成するものである。
【0024】
そして、排熱回収ボイラ20は、蒸気タービン18のタービン69との間に蒸気供給ライン71が設けられると共に給水ライン72が設けられ、給水ライン72に復水器73が設けられている。また、排熱回収ボイラ20で生成する蒸気には、ガス化炉101の生成ガスクーラ102で生成ガスと熱交換して生成された蒸気を含んでもよい。従って、蒸気タービン18では、排熱回収ボイラ20から供給された蒸気によりタービン69が回転駆動し、回転軸64を回転させることで発電機19を回転駆動させる。
【0025】
ここで、本実施形態の石炭ガス化複合発電設備10の動作について説明する。
【0026】
本実施形態の石炭ガス化複合発電設備10において、給炭設備200に原炭(石炭)が供給されると、石炭は、ミル210において細かい粒子状に粉砕されることで微粉燃料となる。微粉燃料は、空気分離設備42から第1窒素供給ライン43を流通して供給される窒素により気流搬送されて、ガス化炉供給ライン280を流通してガス化炉101に供給される。微粉燃料の供給の詳細については後述する。
【0027】
また、後述するチャー回収設備15で回収されたチャーが、空気分離設備42から第2窒素供給ライン45を流通して供給される窒素により気流搬送されて、チャー戻しライン46を流通してガス化炉101に供給される。更に、後述するガスタービン17から抽気された圧縮空気が昇圧機68で昇圧された後、空気分離設備42から供給される酸素と共に圧縮空気供給ライン41を通してガス化炉101に酸化剤として供給される。
【0028】
ガス化炉101では、供給された微粉燃料及びチャーが酸化剤により部分燃焼し、微粉燃料及びチャーがガス化することで、生成ガスを生成する。そして、この生成ガスは、ガス化炉101から第1生成ガスライン49を通って排出され、チャー回収設備15に送られる。
【0029】
このチャー回収設備15にて、生成ガスは、まず、集塵装置51に供給されることで、生成ガスに含有する微粒のチャーが分離される。そして、チャーが分離された生成ガスは、第2生成ガスライン53を通してガス精製設備16に送られる。一方、生成ガスから分離した微粒のチャーは、供給ホッパ52に一時的に貯留され、チャー戻しライン46を通ってガス化炉101に戻されてリサイクルされる。
【0030】
チャー回収設備15によりチャーが分離された生成ガスは、ガス精製設備16にて、硫黄化合物や窒素化合物などの不純物が取り除かれてガス精製され、燃料ガスが製造される。圧縮機61が圧縮空気を生成して燃焼器62に供給する。この燃焼器62は、圧縮機61から供給される圧縮空気と、ガス精製設備16から供給される燃料ガスを燃焼することで燃焼ガスを生成する。この燃焼ガスによりタービン63を回転駆動することで、回転軸64を介して圧縮機61及び発電機19を回転駆動する。このようにして、ガスタービン17は発電を行うことができる。
【0031】
そして、排熱回収ボイラ20は、ガスタービン17におけるタービン63から排出された排ガスと排熱回収ボイラ20への給水とで熱交換を行うことにより蒸気を生成し、この生成した蒸気を蒸気タービン18に供給する。蒸気タービン18では、排熱回収ボイラ20から供給された蒸気によりタービン69を回転駆動することで、回転軸64を介して発電機19を回転駆動し、発電を行うことができる。なお、ガスタービン17と蒸気タービン18は同一軸として1つの発電機19を回転駆動しなくてもよく、別の軸として複数の発電機を回転駆動しても良い。
【0032】
その後、浄化された排気ガスが煙突75から大気へ放出される。
【0033】
次に、
図1に示すガス化炉101について
図2を参照して説明する。
ガス化炉101は、鉛直方向に延びて形成されており、鉛直方向の下方側に微粉燃料及び酸素が供給され、部分燃焼させてガス化した生成ガスが鉛直方向の下方側から上方側に向かって流通している。ガス化炉101は、圧力容器110と、圧力容器110の内部に設けられるガス化炉壁(炉壁)111とを有している。
【0034】
そして、ガス化炉101は、圧力容器110とガス化炉壁111との間の空間にアニュラス部115を形成している。また、ガス化炉101は、ガス化炉壁111の内部空間154において、鉛直方向の下方側(つまり、生成ガスの流通方向の上流側)から順に、コンバスタ部116、ディフューザ部117、リダクタ部118を形成している。
【0035】
圧力容器110は、内部が中空空間となる筒形状に形成され、上端部にガス排出口121が形成される一方、下端部(底部)にスラグホッパ122が形成されている。ガス化炉壁111は、内部が中空空間となる筒形状に形成され、その外壁面が圧力容器110の内壁面と対向して設けられている。
【0036】
ガス化炉壁111は、圧力容器110の内部を内部空間154と外部空間(アニュラス部115)に分離する。ガス化炉壁111は、横断面形状がコンバスタ部116とリダクタ部118との間のディフューザ部117で変化する形状とされている。ガス化炉壁111は、鉛直上方側となるその上端部が、圧力容器110のガス排出口121に接続され、鉛直下方側となるその下端部が圧力容器110の底部と隙間を空けて設けられている。そして、圧力容器110の底部に形成されるスラグホッパ122には、貯留水が溜められており、ガス化炉壁111の下端部が貯留水に浸水することで、ガス化炉壁111の内外を封止している。ガス化炉壁111には、各種バーナが挿入され、内部空間154に生成ガスクーラ102が配置されている。
【0037】
アニュラス部115は、圧力容器110の内側とガス化炉壁111の外側に形成された空間であり、例えば空気分離設備42で分離された不活性ガスである窒素が、図示しない窒素供給ラインを通って供給される。このため、アニュラス部115は、窒素が充満する空間となる。なお、このアニュラス部115の鉛直方向の上部付近には、ガス化炉101内を均圧にするための図示しない炉内均圧管が設けられている。炉内均圧管は、ガス化炉壁111の内外を連通して設けられ、圧力容器110の内部空間154(コンバスタ部116、ディフューザ部117及びリダクタ部118)と外部空間(アニュラス部115)との圧力差を所定圧力以内となるよう略均圧にしている。
【0038】
コンバスタ部116は、本実施形態では、コンバスタ部116におけるガス化炉壁111には、炉内上方側から順に設けられた、例えば、複数のチャーバーナ125、複数のコンバスタ系微粉炭バーナ(バーナ)126が設けられ、コンバスタより下方にある起動用燃焼室には複数のスラグ溶融バーナ128、点火トーチ129及び起動用バーナ130からなる燃焼装置が配置されている。スラグ溶融バーナ128は、生成された固化スラグを溶融するためのものである。スラグ溶融バーナ128の先端は、固化したスラグを溶融除去するために使用される。複数の点火トーチ129及び起動用バーナ130は、ガス化炉101の起動に使用されるものである。コンバスタ部116で微粉燃料及びチャーの一部を燃焼した高温の燃焼ガスは、ディフューザ部117を通過してリダクタ部118に流入する。コンバスタ部116で微粉燃料及びチャーの一部を燃焼した高温の燃焼ガスは、ディフューザ部117を通過してリダクタ部118に流入する。
【0039】
リダクタ部118は、ガス化反応に必要な高温状態に維持されコンバスタ部116からの燃焼ガスに微粉燃料を供給し部分酸化燃焼させて、微粉燃料をガス化し分解することによって揮発分(一酸化炭素、水素、低級炭化水素等)である生成ガスを生成する空間となっており、リダクタ部118におけるガス化炉壁111には、複数のリダクタ系微粉炭バーナ(バーナ)127からなる燃焼装置が配置されている。
【0040】
生成ガスクーラ102は、ガス化炉壁111の内部に設けられると共に、リダクタ部118のバーナ127の鉛直方向の上方側に設けられている。生成ガスクーラ102は熱交換器であり、ガス化炉壁111の鉛直方向の下方側(生成ガスの流通方向の上流側)から順に、蒸発器(エバポレータ)131、過熱器(スーパーヒータ)132、節炭器(エコノマイザ)134が配置されている。これらの生成ガスクーラ102は、リダクタ部118において生成された生成ガスと熱交換を行うことで、生成ガスを冷却する。なお、蒸発器(エバポレータ)131、過熱器(スーパーヒータ)132、節炭器(エコノマイザ)134は、
図2に記載されたその配置や数量を限定するものではない。
【0041】
次に、上述のガス化炉101の動作について説明する。
ガス化炉101は、複数の点火トーチ129及び起動用バーナ130より、酸化剤と起動用燃料(軽油、灯油、都市ガス、LPG、LNG等)が供給され点火される。すると、起動用燃焼室部(図示なし)において、高温燃焼ガスが発生し、コンバスタ部116は、微粉燃料やチャーが燃焼可能な所定の温度に加温される。
【0042】
ガス化炉101において、リダクタ部118のバーナ127により窒素と微粉燃料(粉砕された炭素含有燃料)が投入されて点火されると共に、コンバスタ部116のチャーバーナ125及びバーナ126により微粉燃料及びチャーと酸化剤が投入されて点火される。すると、コンバスタ部116では、微粉燃料とチャーの燃焼により高温燃焼ガスが発生する。また、コンバスタ部116では、微粉燃料とチャーの燃焼により灰分が高温ガス中で溶融してスラグが生成され、ガス化炉壁111をつたって流下し、コンバスタ部116の下部に設けられたスラグホールHを通って、最終的にスラグホッパ122内の貯水へ排出される。そして、コンバスタ部116で発生した高温燃焼ガスは、ディフューザ部117を通ってリダクタ部118に上昇する。このリダクタ部118では、ガス化反応に必要な高温状態に維持されて、微粉燃料が高温燃焼ガスと混合し、高温の還元雰囲気において微粉燃料を部分燃焼させてガス化反応が行われ、生成ガスが生成される。ガス化した生成ガスが鉛直方向の下方側から上方側に向かって流通する。また、微粉燃料及びチャーが点火し、ガス化反応が開始し、微粉燃料及びチャーによる自己着火による安定運転が確保された後、点火トーチ129及び起動用バーナ130は消火される。
【0043】
[給炭設備について]
図1に示すように、給炭設備200(燃料供給システム)は、供給された原炭(石炭等の炭素含有固体燃料)から微粉燃料を製造して、ガス化炉供給ライン280を介してガス化炉101に供給する設備である。また、本実施形態の給炭設備200は、その機能に加えて、所定の場合に微粉燃料を給炭設備200の系内で循環させることができる。
以下、その詳細について説明する。
【0044】
図1及び
図3に示すように、給炭設備200は、ミル210、フィルタ220、供給ビン230及び少なくとも1つ以上の供給ホッパ240(240a,240ab,240c)を備えている。
【0045】
また、給炭設備200は、上記の各機器を接続するラインとして、フィルタ供給ライン251、ビン供給ライン261、供給ホッパ240の数に応じた数のホッパ供給ライン271、ガス化炉供給ライン280及び循環ライン290を備えている。
【0046】
また、給炭設備200は、制御部201を備えている。
制御部201は、各ラインに設けられたバルブの開閉状態や開度の決定、各ラインに設けられたバルブ及び密度計や重量計等の計器との通信及びバルブや計器からの情報に基づいた演算、その他の給炭設備200の運転に必要な制御を実行する部分である。
制御部201は、例えば、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)、主記憶装置(Main Memory)、二次記憶装置(Secondary storage:メモリ)等を備えている。更に、制御部201は、他の装置と情報の送受信を行うための通信部を備えていてもよい。
主記憶装置は、例えば、キャッシュメモリ、RAM(Random Access Memory)等の書き込み可能なメモリで構成され、CPUの実行プログラムの読み出し、実行プログラムによる処理データの書き込み等を行う作業領域として利用される。
二次記憶装置は、非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体(non-transitory computer readable storage medium)である。二次記憶装置は、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどである。
各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で二次記憶装置に記憶されており、このプログラムをCPUが主記憶装置に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、二次記憶装置に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0047】
ミル210は、供給された原炭を粉砕することで微粉燃料を製造する設備である。
ミル210は、フィルタ供給ライン251、フィルタ220及びビン供給ライン261を介して、供給ビン230と接続されている。
【0048】
供給ビン230(第1容器)は、ミル210で粉砕された微粉燃料を常圧で貯留する設備である。
供給ビン230には図示しない重量計が設けられており、貯留されている微粉燃料の重量が必要に応じて計測されるようになっている。
供給ビン230は、ホッパ供給ライン271を介して、供給ホッパ240と接続されている。
図3に示すように、本実施形態の場合、供給ホッパ240は、供給ホッパ240a、供給ホッパ240b及び供給ホッパ240cを含んでいる。そのため、供給ビン230から延びるホッパ供給ライン271は、各供給ホッパ240に対応するように、ホッパ供給ライン271a,ホッパ供給ライン271b及びホッパ供給ライン271cを含んでいる。
なお、供給ホッパ240及びホッパ供給ライン271の数は、1又は2、或いは4以上であってもよい。
【0049】
以下、必要に応じて、供給ホッパ240a、供給ホッパ240b及び供給ホッパ240cをまとめて「供給ホッパ240」と記載し、ホッパ供給ライン271a,ホッパ供給ライン271b及びホッパ供給ライン271cをまとめて「ホッパ供給ライン271」と記載する。
【0050】
供給ホッパ240は、供給ビン230から供給された微粉燃料を貯留する設備である。
供給ホッパ240には図示しない重量計が設けられており、貯留されている微粉燃料の重量が必要に応じて計測されるようになっている。
供給ホッパ240は、ガス化炉供給ライン280を介して、ガス化炉101と接続されている。
供給ホッパ240は、第1窒素供給ライン43と接続されており、第1窒素供給ライン43から供給されたイナートガス(例えば窒素)によって内部が加圧されるように構成されている。供給ホッパ240は、供給ビン230から常圧下で受け入れた微粉燃料をイナートガスで加圧し、加圧された状態の微粉燃料をイナートガスと共にガス化炉供給ライン280を介して気流搬送によりガス化炉101に供給するように構成されている。微粉燃料の供給の詳細については後述する。
以下、微粉燃料を含むイナートガスを「微粉含有流体」という。
【0051】
ガス化炉供給ライン280は、供給ホッパ240からガス化炉101に微粉含有流体を供給するためのラインである。
ガス化炉供給ライン280は、上流供給ライン281a,281b,281c、分配部283及び下流供給ライン282a,282bを有している。
なお、上流供給ライン281a,281b,281cの数は、供給ホッパ240の数に対応している。また、下流供給ラインの数は、1又は3以上であってもよい。
【0052】
上流供給ライン281a,281b,281cは、それぞれ供給ホッパ240a,240b,240cと分配部283とを接続するラインであり、供給ホッパ240a,240b,240cから分配部283に微粉含有流体を導くことができる。
上流供給ライン281a,281b,281cには、それぞれストレーナ288a,288b,288cが設けられていてもよい。
【0053】
分配部283は、3本の上流供給ライン281a,281b,281cと2本の下流供給ライン282a,282bとを接続する部分であり、3本の上流供給ライン281a,281b,281cから導かれた微粉含有流体を2本の下流供給ライン282a,282bに分配供給する。
【0054】
下流供給ライン282a,282bは、分配部283とガス化炉101とを接続するラインであり、分配部283に導かれた微粉含有流体をガス化炉101に導くことができる。詳細には、下流供給ライン282aは微粉含有流体をコンバスタ部116に設けられたバーナ126に導き、下流供給ライン282bは微粉含有流体をリダクタ部118に設けられたバーナ127に導く。
下流供給ライン282aには、上流から順に、バルブ284a(第2ラインバルブ)、密度計285a及びバルブ286a(第2ラインバルブ)が設けられている。また、下流供給ライン282bには、上流から順に、バルブ284b(第2ラインバルブ)、密度計285b及びバルブ286b(第2ラインバルブ)が設けられている。
バルブ284a及びバルブ284bは、ラインを流れる微粉含有流体の流量を調節する機器である。
密度計285a及び密度計285bは、ラインを流れる微粉含有流体中の微粉燃料の濃度、すなわち、イナートガスによって搬送されている微粉燃料の密度を計測する計器である。
バルブ286a及びバルブ286bは、微粉含有流体が流れる流路を遮断/開通する機器である。
【0055】
循環ライン290は、ガス化炉供給ライン280と供給ビン230とを接続するラインであり、ガス化炉供給ライン280から供給ビン230に微粉含有流体を導くことができる。
循環ライン290は、上流循環ライン291a,291b及び下流循環ライン292を有している。
なお、上流循環ライン291a,291bの数は、下流供給ライン282a,282bの数に対応している。
【0056】
上流循環ライン291aは、下流供給ライン282aに設けられたバルブ284aとバルブ286aとの間に位置している分岐部287aに対して接続されたラインである。
【0057】
上流循環ライン291bは、下流供給ライン282bに設けられたバルブ284bとバルブ286bとの間に位置している分岐部287bに対して接続されたラインである。
上流循環ライン291bは、合流部294にて上流循環ライン291aと接続され合流した後、下流循環ライン292として供給ビン230と接続されている。
【0058】
上流循環ライン291aには、バルブ293a(循環ラインバルブ)が設けられている。また、上流循環ライン291bには、バルブ293b(循環ラインバルブ)が設けられている。
バルブ293a及びバルブ293bは、微粉含有流体が流れる流路を遮断/開通する機器である。
【0059】
なお、上記で説明した循環ライン290の構成は例示であって、ガス化炉供給ライン280から供給ビン230に微粉含有流体を供給できるラインであれば、その具体的な構成は特に限定されない。
【0060】
[微粉燃料の供給について]
通常の運転時、微粉燃料は、供給ビン230からガス化炉101に供給される。
【0061】
具体的には、まず、ミル210で粉砕され供給ビン230に貯留されている微粉燃料は、ホッパ供給ライン271を介して供給ホッパ240に供給される。
なお、この供給は、常圧下で行われる。
【0062】
供給ビン230から微粉燃料が供給されたら、供給ホッパ240は、供給ビン230と遮断される。
遮断は、例えばホッパ供給ライン271に設けられたバルブ(図示せず)によって実現される。
【0063】
供給ホッパ240が供給ビン230と遮断されたら、微粉燃料が貯留された供給ホッパ240には第1窒素供給ライン43からイナートガスが供給され、供給ホッパ240の内部が加圧される。
この加圧は、供給ホッパ240の内部の圧力が、微粉燃料(微粉含有流体)をガス化炉101に供給できる程度に達するまで行われる。
【0064】
供給ホッパ240の内部がイナートガスで加圧されたら、供給ホッパ240に貯留された微粉燃料は、供給ホッパ240から排出され、イナートガスと共にガス化炉供給ライン280を介してガス化炉101に供給される。
このとき、バルブ286a,286bは、開状態とされている。また、バルブ284a,284bの開度を調節することで、ガス化炉101に供給される微粉含有流体の量が調節される。
なお、バルブ293a,293bは、閉状態とされている。そのため、ガス化炉供給ライン280を流れている微粉含有流体は、循環ライン290を介して供給ビン230に供給されない。
各バルブの操作は、制御部201によって管理される。
【0065】
ここで、供給ホッパ240は、供給ホッパ240a、供給ホッパ240b及び供給ホッパ240cを含んでいる。そのため、微粉燃料(微粉含有流体)を供給ホッパ240a、供給ホッパ240b、供給ホッパ240c、供給ホッパ240a・・・の順に繰り返し排出することで、ガス化炉101には絶え間なく微粉含有流体が供給されることになる。
【0066】
[微粉燃料の循環方法について]
所定の時間以上供給ホッパ240に貯留されている微粉燃料は、自重によって圧密され、また粉体そのものの凝集性も相まって、経時的に微粉燃料の凝集物(いわゆる「ダマ」)を生じることがある。
本実施形態においては、このダマをほぐす(微粉粒子が分散している状態に戻す)ために、ガス化炉101の起動前に、ダマを含んでいる可能性がある微粉含有流体の循環運転を行うこととした。
【0067】
循環運転時、微粉燃料は、供給ホッパ240と供給ビン230との間を循環する。詳細には、微粉燃料は、供給ホッパ240、ガス化炉供給ライン280、循環ライン290、供給ビン230、ホッパ供給ライン271及び供給ホッパ240の経路で循環する。
【0068】
具体的には、まず、微粉燃料が貯留された供給ホッパ240には第1窒素供給ライン43からイナートガスが供給され、供給ホッパ240の内部が加圧される。このとき、供給ホッパ240は、供給ビン230と遮断されている。
【0069】
供給ホッパ240の内部がイナートガスで加圧されたら、供給ホッパ240に貯留された微粉燃料は、供給ホッパ240から排出され、イナートガスと共にガス化炉供給ライン280及び循環ライン290を介して供給ビン230に供給される。
このとき、バルブ293a,293bは、開状態とされている。また、バルブ284a,284bの開度を調節することで、循環する微粉含有流体の量が調節される。
なお、バルブ286a,286bは、閉状態とされている。そのため、ガス化炉供給ライン280を流れている微粉含有流体は、ガス化炉101に供給されない。
各バルブの操作は、制御部201によって管理される。
【0070】
供給ビン230に供給された微粉含有流体は、供給ビン230の内部において、重力沈降によって微粉燃料とイナートガスとに分離される。分離されたイナートガスは、フィルタ戻りライン262介してフィルタ220に導かれた後、系外に放出される。一方で、残された微粉燃料は、供給ビン230に貯留される。
なお、フィルタ220で捕集されたイナートガス中の微粉燃料は、ビン供給ライン261を介して供給ビン230に戻される。
【0071】
供給ビン230に貯留されている微粉燃料は、ホッパ供給ライン271を介して供給ホッパ240に供給される。なお、この供給は、常圧下で行われる。
【0072】
以下、このサイクルを繰り返すことで、微粉燃料(微粉含有流体)の循環が行われることになる。
これによって、微粉含有流体に微粉燃料のダマが含まれていたとしても、循環運転をしている間にダマがほぐれる。
【0073】
以上の通り説明した循環運転は、例えば、以下の場合に開始され、また、終了される。
<循環運転の開始及び終了についての実施例1>
循環運転は、例えば、ガス化炉101の起動前において、微粉燃料が基準時間以上供給ホッパ240に貯留されていた場合に行われる。微粉燃料が基準時間以上供給ホッパ240に貯留されていなければ循環運転を行わなくてもよい。基準時間とは、供給ホッパ240に貯留された微粉燃料の自重や粉体そのものの凝集性によって微粉燃料のダマが生じる可能性がある時間であり、例えば2日以上である。
そして、循環運転は、所定回数だけ繰り返されたときに終了される。所定回数は、例えば、予試験によって決定される。
【0074】
<循環運転の開始及び終了についての実施例2>
図4に示すように、循環運転は、例えば、ガス化炉101の起動前において、微粉燃料が基準時間以上供給ホッパ240に貯留されていた場合に行われる(S101)。微粉燃料が基準時間以上供給ホッパ240に貯留されていなければ循環運転を行わなくてもよい(S101)。
そして、循環運転の終了は、微粉含有流体の均一性の確認をもって判断される(S102)。均一性とは、微粉含有流体中の微粉燃料の濃度、すなわち、加圧されたイナートガスによって搬送されている微粉燃料の密度のばらつきの度合のことである。微粉含有流体が不均一であれば循環運転は継続され、微粉含有流体が均一であれば循環運転は継続される。ここで、「不均一な微粉含有流体」とは、微粉燃料のダマの存在により微粉含有流体中の微粉燃料の濃度にばらつきがある状態の微粉含有流体を意味して、「均一な微粉含有流体」とは、不均一な微粉含有流体と比べてダマが少なく、微粉含有流体中の微粉燃料の濃度にばらつきが少ない状態の微粉含有流体を意味する。
【0075】
微粉含有流体中の微粉燃料の濃度は、例えば、下流供給ライン282aに設けられた密度計285a及び下流供給ライン282bに設けられた密度計285bによって判断される。なお、上流循環ライン291aに密度計285aを設けてもよく、また、上流循環ライン291bに密度計285bを設けてもよい。また、下流循環ライン292に密度計を設けてもよい。
【0076】
また、微粉含有流体の均一性は、例えば、上流供給ライン281aに設けられたストレーナ288a、上流供給ライン281bに設けられたストレーナ288b及び上流供給ライン281cに設けられたストレーナ288cによって判断されてもよい。
具体的には、ストレーナ288a,288b,288cの入口と出口の差圧が通常運転時に比べて大きい場合に、微粉含有流体は不均一であると判断される(ダマが多いと判断される)。
【0077】
更には、密度計285a,285bによる判断とストレーナ288a,288b,288cの差圧による判断とを組み合わせてもよい。
【0078】
<変形例>
上記の実施形態では微粉燃料系統の循環方法について説明したが、チャー系統(供給ホッパ52及びチャー戻しライン46を含むチャー回収設備15)にも同様の循環方法を適用してもよい。
【0079】
また、本実施形態の微粉燃料系統の循環方法は、複合発電設備以外の設備(例えば化学合成用ガス化炉等)や常圧ガス化炉に適用してもよい。
【0080】
本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0081】
微粉燃料が基準時間以上供給ホッパ240に貯留された場合、供給ホッパ240と供給ビン230との間で微粉燃料を循環させるので、循環している間に微粉燃料のダマをほぐすことができる。これによって、不均一な微粉含有流体がガス化炉101に供給されることを回避することができる。
【0082】
このとき、微粉燃料の循環は、供給ホッパ240、ガス化炉供給ライン280、循環ライン290、供給ビン230、ホッパ供給ライン271及び供給ホッパ240の経路で行われる。
【0083】
また、循環している微粉燃料の密度に応じて微粉燃料の循環を停止させるので、イナートガスによって搬送されている微粉燃料の密度に基づき微粉含有流体の均一さを判断することができる。
【0084】
以上の通り説明した本開示の一実施形態に係る燃料循環方法、燃料供給システム及びガス化設備は、例えば、以下のように把握される。
【0085】
本開示の第1態様に係る燃料循環方法は、炭素を含有する微粉燃料を貯留する第1容器(230)と、前記第1容器(230)から供給された微粉燃料がイナートガスによって内部で加圧され、微粉燃料がイナートガスとともに外部に排出される第2容器(240)と、を備えている燃料供給システム(200)における燃料循環方法であって、微粉燃料が基準時間以上前記第2容器(240)に貯留された場合、前記第2容器(240)と前記第1容器(230)との間で微粉燃料を循環させる。
【0086】
本態様に係る燃料循環方法によれば、微粉燃料が基準時間以上第2容器(240)に貯留された場合、第2容器(240)と第1容器(230)との間で微粉燃料を循環させるので、循環している間に微粉燃料のダマをほぐすことができる。これによって、不均一な微粉含有流体がガス化炉(101)に供給されることを回避することができる。
【0087】
また、本開示の第2態様に係る燃料循環方法は、第1態様において、前記燃料供給システム(200)は、前記第1容器(230)と前記第2容器(240)とを接続している第1ライン(271)と、前記第2容器(240)とガス化炉(101)とを接続している第2ライン(280)と、前記第2ライン(280)と前記第1容器(230)とを接続している循環ライン(290)と、を備え、微粉燃料が基準時間以上前記第2容器(240)に貯留された場合、前記第2容器(240)、前記第2ライン(280)、前記循環ライン(290)、前記第1容器(230)、前記第1ライン(271)及び前記第2容器(240)の経路で微粉燃料を循環させる。
【0088】
本態様に係る燃料循環方法によれば、微粉燃料が基準時間以上第2容器(240)に貯留された場合、第2容器(240)、第2ライン(280)、循環ライン(290)、第1容器(230)、第1ライン(271)及び第2容器(240)の経路で微粉燃料を循環させるので、循環している間に微粉燃料(微粉燃料)のダマをほぐすことができる。これによって、不均一な微粉含有流体がガス化炉(101)に供給されることを回避することができる。
【0089】
また、本開示の第3態様に係る燃料循環方法は、第1態様又は第2態様において、循環している微粉燃料の密度に応じて微粉燃料の循環を停止させる。
【0090】
本態様に係る燃料循環方法によれば、循環している微粉燃料の密度に応じて微粉燃料の循環を停止させるので、イナートガスによって搬送されている微粉燃料の密度で微粉含有流体の均一さを判断することができる。
【0091】
また、本開示の第4態様に係る燃料供給システム(200)は、第1容器(230)と、2容器(240)と、前記第1容器(230)と前記第2容器(240)とを接続している第1ライン(271)と、前記第2容器(240)とガス化炉(101)とを接続している第2ライン(280)と、前記第2ライン(280)と前記第1容器(230)とを接続している循環ライン(290)と、前記第2ライン(280)に設けられた第2ラインバルブ(284a,284b,286a,286b)と、前記循環ライン(290)に設けられた循環ラインバルブ(293a,293b)と、制御部(201)と、を備え、前記第1容器(230)は、炭素を含有する微粉燃料を貯留するものとされ、前記第2容器(240)は、前記第1ライン(271)を介して前記第1容器(230)から供給された微粉燃料がイナートガスによって内部で加圧され、微粉燃料がイナートガスとともに外部に排出されるものとされ、前記制御部(201)は、微粉燃料が基準時間以上前記第2容器(240)に貯留された場合、前記第2容器(240)、前記第2ライン(280)、前記循環ライン(290)、前記第1容器(230)、前記第1ライン(271)及び前記第2容器(240)の経路で微粉燃料が循環するように前記第2ラインバルブ(284a,284b,286a,286b)及び/又は前記循環ラインバルブ(293a,293b)を制御する。
【0092】
また、本開示の第5態様に係る燃料供給システム(200)は、第4態様において、前記循環ライン(290)は、分岐部(287a,287b)にて前記第2ライン(280)と接続され、前記第2容器(240)と前記分岐部(287a,287b)との間の前記第2ライン(280)又は前記循環ライン(290)には、流通する微粉燃料の密度を測定する密度計(285a,285b)が設けられ、前記制御部(201)は、前記密度計(285a,285b)からの情報に基づいて微粉燃料の循環を停止させるように前記第2ラインバルブ(284a,284b,286a,286b)及び/又は前記循環ラインバルブ(293a,293b)を制御する。
【0093】
また、本開示の第6態様に係るガス化設備(10)は、第4態様又は第5態様の燃料供給システム(200)と、微粉燃料をガス化する前記ガス化炉(101)と、を備えている。
【符号の説明】
【0094】
10 石炭ガス化複合発電設備(ガス化複合発電設備)
15 チャー回収設備
16 ガス精製設備
17 ガスタービン
18 蒸気タービン
19 発電機
20 排熱回収ボイラ
41 圧縮空気供給ライン
42 空気分離設備
43 第1窒素供給ライン
45 第2窒素供給ライン
46 チャー戻しライン
47 酸素供給ライン
49 第1生成ガスライン
51 集塵装置
52 供給ホッパ(チャー系統)
53 第2生成ガスライン
61 圧縮機
62 燃焼器
63 タービン
64 回転軸
65 圧縮空気供給ライン
66 燃料ガス供給ライン
67 燃焼ガス供給ライン
68 昇圧機
69 タービン
70 排ガスライン
71 蒸気供給ライン
72 給水ライン
75 煙突
101 ガス化炉
102 生成ガスクーラ
110 圧力容器
111 ガス化炉壁(炉壁)
115 アニュラス部(外部空間)
116 コンバスタ部
117 ディフューザ部
118 リダクタ部
121 ガス排出口
122 スラグホッパ
125 チャーバーナ
126 バーナ
127 バーナ
128 スラグ溶融バーナ
129 点火トーチ
130 起動用バーナ
131 蒸発器(エバポレータ)
132 過熱器(スーパーヒータ)
134 節炭器(エコノマイザ)
154 内部空間
200 給炭設備(燃料供給システム)
201 制御部
210 ミル
220 フィルタ
230 供給ビン
240(240a,240b,240c) 供給ホッパ(微粉燃料系統)
251 フィルタ供給ライン
261 ビン供給ライン
262 フィルタ戻りライン
271(271a,271b,271c) ホッパ供給ライン(第1ライン)
280 ガス化炉供給ライン(第2ライン)
281a,281b,281c 上流供給ライン
282a,282b 下流供給ライン
283 分配部
284a,284b バルブ(第2ラインバルブ)
285a,285b 密度計
286a,286b バルブ(第2ラインバルブ)
287a,287b 分岐部
288a,288b,288c ストレーナ
290 循環ライン
291a,291b 上流循環ライン
292 下流循環ライン
293a,293b バルブ(循環ラインバルブ)
294 合流部