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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114374
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】濾過装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 24/00 20060101AFI20240816BHJP
   B01J 39/10 20060101ALI20240816BHJP
   C02F 1/32 20230101ALI20240816BHJP
   C02F 1/467 20230101ALI20240816BHJP
   C02F 1/02 20230101ALI20240816BHJP
   B01D 61/14 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
B01D29/08 520A
B01J39/10
C02F1/32
C02F1/467
C02F1/02 C
B01D61/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020102
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】523050737
【氏名又は名称】静岡SDGs株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 弘朗
【テーマコード(参考)】
4D006
4D034
4D037
4D061
4D116
【Fターム(参考)】
4D006GA07
4D006KA01
4D006KB01
4D006KB04
4D006KB11
4D006KB14
4D006KB15
4D006KB30
4D006PB02
4D006PC54
4D034AA26
4D034CA06
4D037AA01
4D037AB03
4D037BA18
4D037CA02
4D037CA03
4D037CA14
4D037CA15
4D061DA02
4D061DB01
4D061EA02
4D061ED12
4D061ED13
4D061FA08
4D061FA09
4D061FA11
4D061FA13
4D116AA13
4D116BA05
4D116BB01
4D116DD02
4D116EE04
4D116EE12
4D116FF02A
4D116FF20A
4D116GG01
4D116GG08
4D116GG09
4D116GG12
4D116GG13
4D116GG24
4D116HH14A
4D116KK04
4D116QA21A
4D116QA21D
4D116QA21G
4D116QA27C
4D116QA27E
4D116QA27F
4D116QA31C
4D116QA31E
4D116QA31F
4D116QA41D
4D116QA41F
4D116QA42C
4D116QA42E
4D116QA42F
4D116QA43C
4D116QA43E
4D116QA43F
4D116QA44C
4D116QA44E
4D116QA44F
4D116QA46C
4D116QA46D
4D116QA46F
4D116QA46G
4D116QA56C
4D116QA56E
4D116QA56F
4D116QC05A
4D116QC12A
4D116QC13A
4D116QC20A
4D116TT02
4D116TT04
4D116TT07
4D116UU07
4D116VV07
4D116VV15
4D116VV30
(57)【要約】
【課題】雨水の処理工程を多段階設けるとともに各段階の処理水の活用を可能とし、可搬性を備えて、家屋等への設置を容易にする濾過装置を提供する。
【解決手段】降雨した雨水を、通水部を介して原水として貯留する原水貯留部と、原水貯留部に貯留された原水を、濾過槽に備えられる濾床部の下方から通水して濾床部を透過させて濾床部の上方に浸透させて採水する濾過部と、原水を鉱石部材に曝露させて鉱石部材のイオン交換能により原水のpHを調整するイオン交換部と、濾過部を透過した原水を殺菌する殺菌部とを備え、濾過部と、イオン交換部と、殺菌部とが単一の筐体内に収容されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
降雨した雨水を、通水部を介して原水として貯留する原水貯留部と、
前記原水貯留部に貯留された原水を、濾過槽に備えられる濾床部の下方から通水して前記濾床部を透過させて前記濾床部の上方に浸透させて採水する濾過部と、
原水を鉱石部材に曝露させて前記鉱石部材のイオン交換能により原水のpHを調整するイオン交換部と、
前記濾過部を透過した原水を殺菌する殺菌部と、を備え、
前記濾過部と、前記イオン交換部と、前記殺菌部とが単一の筐体内に収容されている
ことを特徴とする濾過装置。
【請求項2】
前記イオン交換部は前記濾床部と一体化されている請求項1に記載の濾過装置。
【請求項3】
前記濾過部において、前記濾床部の上方に浸透した原水を攪拌する攪拌機が備えられる請求項1に記載の濾過装置。
【請求項4】
前記濾過部から採水される原水は、前記濾過槽からオーバーフローされる原水である請求項1に記載の濾過装置。
【請求項5】
前記通水部はフィルタを備える請求項1に記載の濾過装置。
【請求項6】
前記原水貯留部に貯留された原水を濾過部へ圧送する送水ポンプが備えられる請求項2に記載の濾過装置。
【請求項7】
原水を逆浸透膜により濾過する精密濾過部が備えられ、前記精密濾過部が前記筐体内に収容されている請求項1に記載の濾過装置。
【請求項8】
前記殺菌部を通過した原水を採水する第1採水部と、
前記濾過部を透過した原水を採水する第2採水部と、が備えられる請求項1に記載の濾過装置。
【請求項9】
前記精密濾過部を透過した原水を採水する第3採水部が備えられる請求項7に記載の濾過装置。
【請求項10】
前記殺菌部は、紫外線殺菌部、加熱殺菌部、または電解殺菌部のいずれかを備える請求項1に記載の濾過装置。
【請求項11】
前記原水貯留部に薬剤添加部が備えられる請求項1に記載の濾過装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は濾過装置に関し、特に雨水を濾過することにより生活用水を製造する濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
家屋等に降水した雨水はそのまま排水されてしまうため、有効活用される頻度は乏しい。
生活用水は専ら上水からの供給に依存しているため、生活用水の供給源を上水以外に分散化することにより、上水の調整及び供給のためのエネルギーコストは軽減され、環境負荷の抑制につながる。また、災害等の緊急時の生活用水の供給の代替手段が用意され、生活水準の低下が回避され、疾病、感染症等の予防にも貢献し得る。
【0003】
このような雨水の有効活用を目的として、雨水を浄化する装置が提案されている。例えば、貯留槽と、オゾン発生器と、循環経路と、ポンプと、ろ過器を含み、ろ過器にミネラル溶出材が充填される雨水利用システムが提案されている(引用文献1参照)。
【0004】
前出の引用文献1を始めとして、各種の濾過の手法が採用されて雨水の有効活用については、近年、特に関心が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従前の濾過装置では、濾過方法の組み合わせ方、また、雨水の処理の仕方が画一的である。このことから、生活用水の供給に対応することは可能ではあるものの、用途が限られていた。そこで、雨水を処理して得る処理水について、飲水の水準からその他の用途に応じての使い分けを可能とするべく、発明者は鋭意検討を重ねた。
【0007】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであり、雨水の処理工程を多段階設けるとともに、各段階の処理水の活用を可能とし、併せて、可搬性を備えて、家屋等への設置を容易にする濾過装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、実施形態の濾過装置は、降雨した雨水を、通水部を介して原水として貯留する原水貯留部と、原水貯留部に貯留された原水を、濾過槽に備えられる濾床部の下方から通水して濾床部を透過させて濾床部の上方に浸透させて採水する濾過部と、原水を鉱石部材に曝露させて鉱石部材のイオン交換能により原水のpHを調整するイオン交換部と、濾過部を透過した原水を殺菌する殺菌部とを備え、濾過部と、イオン交換部と、殺菌部とが単一の筐体内に収容されていることを特徴とする
【0009】
さらに、濾過装置のイオン交換部は濾床部と一体化されていてもよい。
【0010】
さらに、濾過装置の濾過部において、濾床部の上方に浸透した原水を攪拌する攪拌機が備えられることとしてもよい。
【0011】
さらに、濾過装置の濾過部から採水される原水は、濾過部からオーバーフローされる原水であることとしてもよい。
【0012】
さらに、濾過装置において、通水部はフィルタを備えることとしてもよい。
【0013】
さらに、濾過装置において、原水貯留部に貯留された原水を濾過部へ圧送する送水ポンプが備えられることとしてもよい。
【0014】
さらに、濾過装置において、原水を逆浸透膜により濾過する精密濾過部が備えられ、精密濾過部が筐体内に収容されていることとしてもよい。
【0015】
さらに、濾過装置において、殺菌部を通過した原水を採水する第1採水部と、濾過部を透過した原水を採水する第2採水部とが備えられることとしてもよい。
【0016】
さらに、濾過装置において、精密濾過部を透過した原水を採水する第3採水部が備えられることとしてもよい。
【0017】
さらに、濾過装置において、殺菌部は、紫外線殺菌部、加熱殺菌部、または電解殺菌部のいずれかを備えることとしてもよい。
【0018】
さらに、濾過装置において、原水貯留部に薬剤添加部が備えられることとしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の濾過装置によると、降雨した雨水を、通水部を介して原水として貯留する原水貯留部と、原水貯留部に貯留された原水を、濾過槽に備えられる濾床部の下方から通水して濾床部を透過させて濾床部の上方に浸透させて採水する濾過部と、原水を鉱石部材に曝露させて鉱石部材のイオン交換能により原水のpHを調整するイオン交換部と、濾過部を透過した原水を殺菌する殺菌部とを備え、濾過部と、イオン交換部と、殺菌部とが単一の筐体内に収容されているため、雨水の処理工程を多段階設け、各段階の処理水の活用を可能とし、併せて、可搬性を備えて家屋等への設置を容易にする濾過装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態の濾過装置の構成を示す模式図である。
図2】(A)は濾過部の第1の形態の模式図であり、(B)は濾過部の第2の形態の模式図である。
図3】(A)は濾過部の第3の形態の模式図であり、(B)は濾過部の第4の形態の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施形態の濾過装置は、主に一般家屋、小規模商業施設等の屋根面積が限られた建築物の敷地内への設置が想定され、当該設置場所において使用される生活用水の補填を目的とする。特には、屋根等への降水を濾過、殺菌することにより、必要とされる純度の処理水に調製し、上水の使用の低減につなげることを主眼とする。
【0022】
図1の模式図は実施形態の濾過装置1の全体概要を示す。濾過装置1は、主要構成として、家屋の屋根面等へ降雨した雨水を採水する通水部2、原水貯留部となる第1タンク11、濾過部20、イオン交換部30、殺菌部40、そして精密濾過部50が備えられる。実施形態の濾過装置1では、濾過部20、イオン交換部30、殺菌部40、精密濾過部50が筐体10の中に備える。各部については順に説明する。筐体10の中に必要な構成を一体に備え可搬性を確保し、家屋への設置を容易としている。また、濾過装置1の筐体10内に、電源(電池)、スイッチ類、制御用基盤等のポンプ、センサと駆動、制御に必要な機器(図示せず)が実装される。図中の細矢印は原水の流水順路を示す。あくまでも、図1の模式図は濾過装置1の1つの態様を開示しているに過ぎず、図示の態様には拘泥されない。
【0023】
濾過装置1への雨水の誘導に際しては、通水部2が用いられる。通水部2は家屋の屋根に降雨した雨水を誘導する雨樋等の公知の配管を備えた部材である。雨水をそのまま原水貯留部となる第1タンク11へ送ると、雨水に含まれる、砂、落ち葉等の異物が第1タンク11内に混入する。そこで、適宜のフィルタ3、あるいはストレーナ等の雨水を粗く漉す部材が通水部2内の管路に備えられる。
【0024】
濾過装置1の原水貯留部(第1タンク11)は、通水部2を経由した雨水を原水として貯留する。原水貯留部(第1タンク11)の大きさは処理能力に依存し概ね500ないし1000Lの容量である。原水貯留部の貯水量に応じて、濾過装置1の筐体10の外に他の原水を貯留するタンクが別途備えられても良い。実施形態の濾過装置1では、原水貯留部(第1タンク11)は筐体10の外部に設置される。原水貯留部(第1タンク11)の容量、設置場所、設置個数等に柔軟に対応し、筐体10が過大に大きくならないようにするためである。
【0025】
原水貯留部(第1タンク11)に貯留された原水は、異物のみが除去されたに過ぎない。そこで、原水の処理後の用途により清浄度、衛生度が求められる。そのため、原水貯留部(第1タンク11)に薬剤添加部11aが必要により備えられる。具体的には、次亜塩素酸カルシウム等の水道水用の薬剤が所定濃度となるように添加される。添加量は、原水貯留部(第1タンク11)に貯水されている原水の水量、水温、pH等がセンサ類により計測され、添加必要量が算出される。
【0026】
実施形態の濾過装置1は専ら雨水の濾過を目的とする。ただし、雨水の採水量が限られる場合、井戸水、河川水、さらには上水(水道水)が原水に加えられる。そのため、通水部2には井戸が接続されてもよい。渇水期等の雨水が無い時期に井戸水を揚水して補充することができる。また、図1中の符号61、62、63、64は三方弁である。その他、逆止弁(図示せず)が適宜箇所に設置される。
【0027】
原水貯留部(第1タンク11)に貯水された原水は、はじめに濾過部20に供給される。濾過部20は、原水貯留部(第1タンク11)に貯留された原水を、濾床部25を透過させて濾過する。濾過部20は原水貯留部(第1タンク11)に貯水された原水より、砂、埃等の異物を除去し、原水の清浄度を高める。濾過部20における濾過については、図2及び図3の模式図が参照される。
【0028】
濾過部20に備えられる濾床部25(濾過層)は、単一の材料としても、複数の材料としても良い。一般的には、粒径5ないし20mmの小石、砂利、さらに粒径1mm前後の砂等と、木炭、活性体等の天然素材により濾床が形成される。なお、ケーキ濾過の濾床部25を採用する場合、濾床部25を安定化(層構造化)させるため、原水は送水ポンプ15により濾過部20を循環される。そして、濾床部25中の粒度が層状に揃って使用可能となる。
【0029】
砂利及び活性炭を用いる濾床では、濾床の層構造の安定化に一定時間を要することから、濾床部25として、ガラス質の多孔質体が使用される。例えば、軽石、さらには多孔質化したガラス材が好ましく使用される。多孔質化したガラス材として、公知の発泡ガラス、ガラス瓶等の廃ガラスを加工したガラス発泡資材事業協同組合のスーパーソル(登録商標)、廃ガラスを加工したポーラスα(登録商標)等が好適である。加えて、凝灰岩の一種である伊豆若草石等も使用可能である。
【0030】
濾床部25の濾過能力は濾過装置1の使用時間(使用期間)に応じて低下する。そのため、濾床部25の交換は必須である。そのため、極力環境負荷の少ない材料として、廃ガラス由来の多孔質化したガラス材、天然石等が好ましい。
【0031】
さらに、実施形態の濾過装置1にはイオン交換部30が備えられる。イオン交換部30は、原水を鉱石部材に曝露させて鉱石部材のイオン交換能により原水のpHを調整する。原水は雨水由来であることから大気中の炭酸ガスを吸着している。また、大気中の窒素酸化物、硫黄酸化物に由来し、硝酸イオン、硫酸イオンが含まれる。また、枯葉等の分解に伴う有機酸が含まれると考えられる。加えて、薬剤添加部11aによる塩化物系の薬剤が添加される場合がある。これらの作用により、相対的に雨水は弱酸性になりやすい。生活用水の場合、洗浄が主な用途とされるため、むしろ、弱アルカリ性(塩基性)であることが望ましい。そこで、原水を中性領域に調製するために、イオン交換部30は設けられる。
【0032】
原水を中性領域に調製するに際しては、化学的にはイオン交換樹脂等が使用される。しかしながら、極力天然素材を用いて材料経費を抑制し、かつ環境負荷を軽減する観点から、鉱石部材が好ましく用いられる。例えば、鉱石部材は、大谷石、ゼオライト等である。また、鉱石部材を含有するマッドグリーン(ジェックス社製)等の加工物(無機質系汚濁排水浄化処理剤)も含まれる。これらの鉱石部材にはアルカリ金属、アルカリ土類金属等が含まれ、鉱石部材に曝露された原水は酸塩基反応等の作用により中性領域に調製される。
【0033】
また、濾床部25に使用される鉱石部材はpHの調整能力に限られず、例えば、微量なミネラル分の供給源となる鉱物種が含められる。敢えて水中のミネラル分を鉱物種により加減して原水の改質が可能となる。例えば、麦飯石等が挙げられる。
【0034】
図2に開示の実施形態では、イオン交換部30は濾床部25と一体化されている。イオン交換部30は前述のとおりの鉱石部材であるため、濾床部25の構成材料との親和性が高い。そこで、図2のとおり、イオン交換部30の鉱石部材は濾床部25内に分散されている。むろん、イオン交換部30は濾過部20から分離した配置形態としてもよい。この場合、イオン交換部30と濾床部25とを別々に新品に交換することができる。
【0035】
特に図2(A)の模式図から理解されるように、実施形態の濾過部20では、原水は濾床部25の下方から通水され、濾床部を透過させて濾床部25の上方に浸透した原水が採水される。つまり、重力の方向とは逆向きに原水は送水される。そのため、濾床部25への透過の圧力が必要となるため、原水貯留部(第1タンク11)に貯留され殺菌部40を通過した原水は濾過部20の濾床部25の下方から濾床部25へ圧送する送水ポンプ15が備えられる。
【0036】
また、濾過部20からの採水では、濾過槽21の濾床部25を浸透した上澄みの原水が用いられる。そこで、濾過部20からオーバーフローされる原水が採水される。図2(A)の濾過の仕方によると、濾床部25による濾過後の上澄み水を採水することになるため、濾過後の水に沈殿物が混入し難くなり、簡便に濾過後の水の清浄度を高めることができる。図2中の太矢印線は流水順路を示す。図中では、採水用の配管当は省略している。
【0037】
図2(B)の模式図では、濾過槽21の上部側に攪拌機24(プロペラ)が備えられる。攪拌機24(プロペラ)はシャフト23に接続され、シャフト23はモータ部22により回転駆動される。濾床部25による濾過後の上澄み水を採水するに際し、上澄み水は攪拌機24(プロペラ)により緩やかに攪拌され、濾床部25の上部側にて均質化される。なお、攪拌機の形態は図示のプロペラ以外としてもよく、濾過槽21の上部側を攪拌できる機器であれば適宜である。
【0038】
さらに図3の模式図は濾過部20に配置される濾床部25を濾材の材質ごとに層状とする配置を示す。図3(A)の濾過部20では、濾過槽21の下方から第1濾材26、第2濾材27と積層される。例えば、第1濾材26は多孔質化したガラス材、加えて、イオン交換部30であり、大谷石等のイオン交換能を備える鉱石部材等であり、第2濾材27は砂、砂利等である。第1濾材26と第2濾材27は、それぞれ袋状の被覆材29の中に収容される。被覆材29は木綿または麻布の袋、合成樹脂繊維の袋等であり、通気性の高い素材であれば適宜である。
【0039】
実施形態の濾過部20のように、濾過槽21の下方から原水を導入して濾床部25を透過させる濾過方式の場合、例えば、多孔質化したガラス材等の粒径は小さく、原水の流入時の水圧により水中に浮遊しやすくなる。そのため、粒径の細かい濾材の浮遊を抑制するための抑え込みの要素として砂、砂利等が用いられる。そこで、図3(A)の模式図のとおり、第1濾材26は被覆材29により袋詰めにされて濾過槽21の最下層に配置される。当該第1濾材26の直上に第1濾材26を抑え込むために被覆材29により袋詰めにされた第2濾材27が配置される。
【0040】
図3(B)は、第1濾材26と第2濾材27に加えて第3濾材28がさらに付加された例の模式図である。第3濾材28は、例えば、イオン交換部30であり、大谷石等のイオン交換能を備える鉱石部材である。第3濾材28も被覆材29により袋詰めにされる。図示の第3濾材28の鉱石部材は比重の軽い種類に属するため、相対的に水に浮きやすい。そこで、敢えて第3濾材28は被覆材29により袋詰めにされて濾過槽21の最下層に配置される。そして、第3濾材28の直上に袋詰めにされた第1濾材26、袋詰めにされた第2濾材27の順に配置される。この積層配置とすることにより、第3濾材28の浮遊は抑制され原水と接触量(表面積)は確保されやすくなる。
【0041】
濾過部20内の濾床部25を透過してオーバーフローにより採水される原水は、続いて殺菌部40に供給される。濾過部20の処理では、原水の清浄度は高められるものの、原水中に存在する細菌、原虫が除去しきれていないおそれがある。そのため、洗濯、食器洗浄、風呂、園芸用の散水等の直接人体に接する生活用水としては、安全性の観点から殺菌が必要である。殺菌部40に殺菌用ユニット41が備えられる。
【0042】
殺菌部40における殺菌方法として、1つ目に、330nm以下の波長の紫外線照射による紫外線殺菌がある。短波長の紫外線はLEDの照射により可能であるため、消費電力が少なく、濾過装置1の運転に要するエネルギーは少ない。そこで、殺菌用ユニット41は紫外線LEDを含む紫外線殺菌部である。
【0043】
2つ目の殺菌方法として加熱殺菌がある。加熱殺菌は、牛乳、飲料等の食品分野において広範に使用され、使用実績が最も多い。電熱線による加熱、電磁誘導による加熱等の適宜の加熱が採用される。例えば、120℃の加熱では2ないし3秒等の高速処理が可能であり、短時間で十分量の水の供給が必要な場合に適する。この場合、殺菌用ユニット41は、電熱線加熱、電磁誘導加熱の加熱殺菌部である。
【0044】
3つ目の殺菌方法として電解殺菌がある。電解殺菌の場合、塩化ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム等の塩素を含む化合物が水に添加され、電気分解を通じて酸性電解水及びアルカリ性電解水が調製される。電解殺菌の場合、電気分解を通じて目的別の水を得ることができる利点がある。この場合、殺菌用ユニット41は、電解水生成の装置を含む電解殺菌部である。
【0045】
殺菌部40に採用する殺菌方法は、前述の3つの中から1つとしても、2つを組み合わせてもよい。濾過装置1自体の大きさ、消費電力から仕様が定まる。なお、殺菌部40に電解殺菌部を殺菌用ユニット41に備え、特に飲料用を目的とする場合、濾過装置1から調製される濾過水の塩素分が気になることがある。そこで、さらに電解殺菌部を経由した水が加熱され、塩素分が水中から放出される。こうして飲料用水とする場合については、塩素臭が除去される。
【0046】
これまでの濾過部20、イオン交換部30、殺菌部40を経由することにより生活用水として十分な清浄度の濾過水を雨水から得ることができる。そして、さらに濾過水の清浄度を高めるため、殺菌部40の次に精密濾過部50が備えられる。精密濾過部50は殺菌部40を通過した原水を逆浸透膜(RO膜)により濾過する。そこで、残存する金属イオン、ウイルス等の微小物の濾過が可能となる。
【0047】
精密濾過部50内の逆浸透膜の透過には圧力が必要となるため、精密濾過部50の直前に送水ポンプ16が設置され、所定圧力により原水は精密濾過部50へ圧送される。さらに、精密濾過部50の直前に予備フィルタ51が備えられる。
【0048】
前述のとおり、濾過部20の濾床部25には、ガラス質、鉱石等が使用され、ガラス質、鉱石の微粒子が原水中に混入すると考えられる。そのまま、原水を精密濾過部50の逆浸透膜に導入すると、微粒子により逆浸透膜の劣化が早まる。つまり精密濾過部50の耐用時間が低下する。そのため、精密濾過部50の濾過の負荷を軽減するため精密濾過部50の直前に原水中の微粒子を捕集するために予備フィルタ51が備えられる。予備フィルタ51には公知のフィブリル化した樹脂繊維等の水濾過用のフィルタが用いられる。
【0049】
雨水は精密濾過部50まで経由して濾過されることにより、飲用水としても遜色のない清浄度となり得る。特に、金属イオンの除去が可能であるため、金属汚染の危険性が大幅に低下する。ただし、飲用水とするためには、成分分析等が必要であるため、直接飲用水とすることは差し控えられる。
【0050】
さらに、実施形態の濾過装置1は段階別の採水に対応して構成される。具体的には、第1採水部71、第2採水部72、及び第3採水部73が備えられる。第1採水部71は殺菌部40を透過した原水を採水する。第2採水部72は濾過部20を通過した原水を採水する。第3採水部73は精密濾過部50を透過した原水を採水する。
【0051】
図示から理解されるように、殺菌部40の下流に三方弁61が備えられ、三方弁61により濾過部20への供給、第2タンク12への供給の切り替えが行われる。さらに、三方弁62により、濾過部20における循環、精密濾過部50への供給の切り替えが行われる。第2タンク12へ供給される原水は第1採水部71から採水される。第2タンク12に貯水され第1採水部71から採水される原水(殺菌水)は、主に殺菌のみを経ている。例えば、水洗便所用の流水、打ち水、庭木、洗車用、太陽電池パネルの洗浄用等の用途が想定される。
【0052】
三方弁63により、精密濾過部50への供給、第3タンク13への供給の切り替えが行われる。第3タンク13へ供給される原水は第2採水部72から採水される。第3タンク13に貯水される原水は殺菌部40と濾過部20を通過するため、より原水の清浄度が高まる。そこで、第2採水部72から採水される原水(濾過水)は、例えば、食器洗浄用水、洗濯用水、風呂水、ドライミスト(冷却用)等の生活用水全般へ使用範囲が広がる。
【0053】
精密濾過部50の下流に三方弁64が備えられ、三方弁64により精密濾過部50を透過した原水(精密濾過水)を貯留する第4タンク14とドレイン(排水)の切り替えが行われる。第4タンク14へ供給される原水は第3採水部73から採水される。第4タンク14に貯水される原水は逆浸透膜を透過するため、イオン量が少なく極めて純水に近い。そこで、第3採水部73から採水される原水(精密濾過水)は、例えば、蓄電池(バッテリ)等の純水、さらには、工業用途の洗浄、溶解水としてもよく、条件次第では、飲用水に充当することも可能である。加えて、精密濾過水に由来する純度の高い精製水は、人工透析用の透析液供給装置等の医療用途にも適用可能である。
【0054】
一連の説明から明らかであるように、濾過装置は雨水を濾過の原水として利用するため、そのまま流していた雨水を生活用水、雑用水に充当することができ、これまでの上水(水道水)の消費量を抑制することができる。また、災害等の緊急時において必要となる生活用水の確保に役立てることが可能となる。特に、一般家庭への導入が可能なように、単一の筐体内に必要な装置構成がまとめられている。そのため、生活用水の生成の拠点を小型化して分散配置が可能となる。さらに、濾過、清浄度の段階別の水を得ることができるため、濾過装置の使用者の要望に柔軟に対応して、必要とする清浄度の水を得ることができる。
【実施例0055】
[実験例]
濾過部を構成する濾過槽内の濾床部に用いる濾材の選択に際し、発明者は、水の純度と水中の雑菌量の2つの観点から評価を試みた。(1)水の純度の測定に際しては、市販のTDSメーター(TDS:Total Dissolved Solids)を用い、電気伝導率の高低に基づいて水中に存在する成分の多少の比較とした。(2)水中の雑菌量に関しては、雑菌の産生するATP(アデノシン3リン酸)、ADP(アデノシン2リン酸)、AMP(アデノシン1リン酸)の総量として概算した。具体的には、キッコーマンバイオケミファ株式会社製のルミテスターSmart及び付属の試薬を用いた。
【0056】
[電気伝導率の測定]
静岡県浜松市に降水した雨水を採水し異物を除去して原水とした。同原水を液温15℃にて静置し、TDSメーターにより計測したところ、10ないし20ppmであった。
【0057】
次に、濾床部に用いる多孔質化したガラス材(発泡ガラス)を3種類用意した(ガラス材A、ガラス材B、及びガラス材C)。容器を3個用意し、各容器にガラス材A、ガラス材B、ガラス材Cのそれぞれを同重量投入した。そして、前出の原水を各容器に均等量ずつ注ぎ、液温15℃で約8時間静置した。その後、液温15℃として、ガラス材A、ガラス材B、ガラス材Cのそれぞれの原水をTDSメーターにより測定した。
【0058】
結果、ガラス材Aの原水は0.36ppm、ガラス材Bの原水は0.71ppm、ガラス材Cの原水は1.08ppmであった。
【0059】
TDSメーターによる測定結果を踏まえると、多孔質化したガラス材の用いることにより雨水の段階よりも明確に水中の残留物は除去された。従って、濾床部に用いる濾材としての多孔質化したガラス材(発泡ガラス)は極めて有効であることを確認した。なお、多孔質化したガラス材(発泡ガラス)の種類毎の相違も見られた。
【0060】
[雑菌量の測定]
発明者は電気伝導率の測定の結果から多孔質化したガラス材の有効性を確認した。そこで、実際の濾過装置に設置する濾過部の濾床部の構造を模して濾材を選択、配置した。具体的には、濾過槽に相当する約5L容量の容器の最下層に麦飯石を敷き、その直上に多孔質化したガラス材として「ガラス材A」を敷いた(試作例1)。試作例1の麦飯石とガラス材はそれぞれ1kgとした。さらに、試作例1とは別に、同容器の最下層に大谷石を敷き、その直上に麦飯石を敷き、その直上に多孔質化したガラス材として「ガラス材A」を敷いた(試作例2)。試作例2の大谷石、麦飯石、及びガラス材はそれぞれ1kgとした。
【0061】
試作例1及び試作例2のそれぞれの容器に約3Lの原水(前出の雨水)を注水して、液温を15℃として約8時間静置した。静置後、試作例1及び試作例2の各容器の濾材上の上清を分取し、前出の測定器に供し測定した。同時に対照として、同様の静置条件とした雨水も同様に測定した。計測は3回行い平均を求めた。
【0062】
結果、試作例1(濾材2層)の数値は154であり、試作例2(濾材3層、大谷石入り)の数値は44であった。また、雨水の数値は2780であった。
【0063】
[考察]
一連の測定の結果から、多孔質化したガラス材は雨水中の異物除去を確認した。さらに、雑菌の生育にも抑制的であった。このことから、濾過装置の濾過部を構成するに際し、濾床部の素材としての多孔質化したガラス材は有効に濾過の効果を発揮するといえる。また、イオン交換部となり得る大谷石の配合の結果から、イオン交換能を有する鉱石部材は雑菌の繁殖を抑制して清浄度を高める効果が高いことを確認した。このことから、濾床部の素材としての多孔質化したガラス材に、イオン交換能を有する鉱石部材を含めることにより、より濾過性能を向上できた。従って、濾過装置の濾過部に適用する材料として十分に期待される。
【符号の説明】
【0064】
1 濾過装置
2 通水部
3 フィルタ
10 筐体
11 第1タンク(原水貯留部)
11a 薬剤添加部
12 第2タンク
13 第3タンク
14 第4タンク
15,16 送水ポンプ
20 濾過部
21 濾過槽
25 濾床部
26 第1濾材
27 第2濾材
28 第3濾材
29 被覆材
30 イオン交換部
40 殺菌部
41 殺菌用ユニット
50 精密濾過部
51 予備フィルタ
61,62,63,64 三方弁
71 第1採水部
72 第2採水部
73 第3採水部
図1
図2
図3