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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114375
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】無線通信装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/04 20060101AFI20240816BHJP
   H04W 88/06 20090101ALI20240816BHJP
   H04B 1/00 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
H04B1/04 Z
H04W88/06
H04B1/00 264
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020103
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】313006647
【氏名又は名称】セイコーソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004244
【氏名又は名称】弁理士法人仲野・川井国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100096655
【弁理士】
【氏名又は名称】川井 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100091225
【弁理士】
【氏名又は名称】仲野 均
(72)【発明者】
【氏名】蘇武 昌弘
【テーマコード(参考)】
5K060
5K067
【Fターム(参考)】
5K060BB07
5K060CC04
5K060HH11
5K060HH39
5K060JJ23
5K060LL16
5K067EE04
5K067LL11
(57)【要約】
【課題】干渉することなく、異なる周波数による複数の無線通信を同時に行う。
【解決手段】無線通信装置1はLTE(B18)の送信系のパワーアンプ50とデュープレクサ60の間に、2つの高周波スイッチIC81、82を挿入する。また、高周波スイッチIC81、82の間に、800MHzのみを通す高周波除去装置70を通る通過系Pと、高周波除去装置70を通らない不通系Qを設ける。LTEとWLANを同時使用のとき、最初はLTEは不通系Qで送信し、WLANのスループットの劣化を通信制御部30が検出した際には、LTEの送信を通過系Pでの送信に切替える。その後、WLANのスループットが改善された場合や、WLANの通信がない場合に、LTE(B18)は不通系Qに切替えて送信する。本実施形態によれば、LTE(B18)とWLAN(2.4GHz)の同時動作を干渉なしに実現することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1周波数での無線通信を行う第1無線手段と、
前記第1周波数の3倍波である第2周波数での無線通信を行う第2無線手段と、
前記第1無線手段の無線通信により発生する3倍波を除去する高周波除去手段と、
前記第1無線手段による送信波の送信を、前記高周波除去手段を通過させた送信と、通過させない送信とを切替える切替手段と、
を具備したことを特徴とする無線通信装置。
【請求項2】
前記切替手段は、前記第2無線手段による通信が行われている場合に、前記第1無線手段による送信波の送信を、前記高周波除去手段を通過させた送信に切替える、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記切替手段は、前記第1無線手段による通信の指示があった場合に、前記第2無線手段による通信が行われていれば、前記第1無線手段による送信波の送信を、前記高周波除去手段を通過させた送信に切替える、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記第2無線手段による通信のスループットの劣化を判定する判定手段と、
前記切替手段は、前記判定手段が劣化していると判定した場合に、前記第1無線手段による送信波の送信を、前記高周波除去手段を通過させた送信に切替える、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記第2無線手段による通信が、位相偏移変調方式である場合にスループットが劣化していると判定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記判定手段は、MCSの番号が予め決められた番号よりも小さい場合に、スループットが劣化していると判定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記第1無線手段は、前記第1周波数が800MHzの無線通信を行うLTE通信であり、
前記第2無線手段は、前記第2周波数が2.4GHzの無線通信を行うWLAN通信である、
ことを特徴とする請求項1から請求項6のうちの何れか1の請求項に記載の無線通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置に係り、異なる周波数による複数の無線通信を行う無線通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ルータやスマートフォンなどの、異なる周波数による複数の無線通信を行う、小型の無線通信装置が広く普及している。
例えば、通信規格のLTE(Long Term Evolution)と、WLAN(Wireless Local Area Network)を使用した無線通信装置では、両通信による干渉をなくすために、LTE用のアンテナとWLAN用のアンテナを物理的に離してアイソレーションを確保する対策がとられる。
しかし、小型の無線通信装置の場合、両アンテナ間の位置を十分に離すことができない。
このため、周波数800MHzのB(バンド)18によるLTEと、周波数2.4GHzのWLANを同時使用すると、LTEの送信(800MHz)による3倍波(=2.4GHz)が、WLAN(2.4GHz)の妨害波となり、WLANのスループットを劣化させ、場合によってはWLANの通信ができなくなるという問題がある。
【0003】
このような複数種類の無線通信による干渉をなくすための提案がなされている。
例えば、特許文献1の記載では、WLAN-GSMマルチモード通信機器において、GSMの受信時はWLANの送信を停止する(電源を落す)ことで、GSMがWLANから干渉されることを回避している。
しかし、特許文献1記載技術では、電源を落したWLANの通信ができず、2種類の通信を同時に行うことができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2009-526428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、干渉することなく、異なる周波数による複数の無線通信を同時に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1周波数での無線通信を行う第1無線手段と、前記第1周波数の3倍波である第2周波数での無線通信を行う第2無線手段と、前記第1無線手段の無線通信により発生する3倍波を除去する高周波除去手段と、前記第1無線手段による送信波の送信を、前記高周波除去手段を通過させた送信と、通過させない送信とを切替える切替手段と、を具備したことを特徴とする無線通信装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第1無線手段による送信波の送信を、3倍波を除去する高周波除去手段を通過させた送信と、通過させない送信とを切替える切替手段を有するので、第1周波数の3倍波である第2周波数での無線通信を、干渉することなく、同時に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】無線通信装置の回路構成図である。
図2】第1実施形態における監視切替処理について表したフローチャートである。
図3】第2実施形態における監視切替処理について表したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の無線通信装置における好適な実施の形態について、図1から図3を参照して詳細に説明する。
(1)実施形態の概要
本実施形態の無線通信装置1は、図1に示すように、LTE(B18)の送信系のパワーアンプ50とデュープレクサ60の間に、2つの高周波スイッチIC81、82を挿入する。
また、高周波スイッチIC81、82の間に、高周波除去装置70を通る通過系Pと、高周波除去装置70を通らない不通系Qを設ける。
高周波除去装置70としては、800MHzのみを通すバンドパスフィルタが使用される。
【0010】
LTE(B18)とWLANを同時使用のとき、最初はLTE(B18)は不通系Qで送信し、WLANのスループットの劣化を通信制御部30が検出した際には、LTE(B18)の送信を通過系Pでの送信に切替える。
その後、WLANのスループットが改善された場合や、WLANの通信がない場合に、LTE(B18)は不通系Qに切替えて送信する。
通過系Pと不通系Qとの切替えは、通信制御部30から切替信号31が高周波スイッチIC81、82に供給されることで行われる。
本実施形態によれば、LTE(B18)とWLAN(2.4GHz)の同時動作を干渉無しに実現することができる。
【0011】
(2)実施形態の詳細
図1は、第1実施形態における無線通信装置1の回路構成を表したものである。
図1に示すように、無線通信装置1は、Wアンテナ10、Lアンテナ20、通信制御部30、RFIC(高周波集積回路)40、パワーアンプ50、デュープレクサ(Duplexer)60、高周波除去装置70、切替スイッチ80を備えている。
本実施形態の無線通信装置1は、少なくとも、バンド18(以下、単にB18という)による周波数800MHzのLTEと、周波数2.4GHzのWLANによる無線通信を行う装置である。このため図1では、LTE(B18)とWLAN(2.4GHz)用の構成について示しているが、図視しない他の無線通信、例えば、B18以外のバンドによる通信を行うための構成を備えることも可能である。
【0012】
Wアンテナ10は、WLAN(2.4GHz)による通信を行うためのアンテナである。
Lアンテナ20は、LTE(B18)による通信を行うためのアンテナである。
RFIC(高周波集積回路)40は、Wアンテナ10、Lアンテナ20から送受信する、LTE(B18)とWLAN(2.4GHz)の電波、その他の電波についての送受信するためのICチップである。
以下、バンド18による周波数800MHzのLTEの無線通信については単にLTEといい、周波数2.4GHzのWLANによる無線通信については単にWLANという。
【0013】
通信制御部30は、BBIC(ベースバンドIC)などを備えた、無線通信における各種制御を行う装置で、図示しないCPU(中央処理装置)、ROM、RAM、記憶部等を備えている。
本実施形態の通信制御部30は、記憶部やROMに格納された、監視切替えプログラム等の各種プログラムに従って、無線通信の監視や制御を行うようになっている。例えばCPUは、監視切替えプログラムに従って、LTEとWLANとによる無線通信状態を監視しながら、互いに干渉することなく同時通信を可能にするために、切替スイッチ80を適宜切替えている。
すなわち、通信制御部30は、通信情報の監視結果に応じて、LTEの送信を、高周波除去装置70を通る通過系Pでの送信と、高周波除去装置を通らない不通系Qでの送信とに切替える切替信号31を切替スイッチ80に供給する。
ここで通信制御部30が監視する通信状態としては、WLANとLTEが同時通信中か否か、WLANのスループットの劣化があるか否か(低スループットか否か)である。
【0014】
パワーアンプ50は、LTEの送信波の増幅用に用いられる。
デュープレクサ60は、LTEの送信系、受信系と接続されるとともに、Lアンテナ20と接続される。デュープレクサ60は、LTEによる送信と受信を1つのLアンテナ20で行うためのアンテナ共用器(分波器)である。
高周波除去装置70は、パワーアンプ50とデュープレクサ60を通る送信系の途中に配設され、本実施形態の高周波除去装置70は800MHzだけを通すバンドパスフィルタが使用される。但し、高周波除去装置70として2.4GHzを通さないバンドイリミネートフィルタを使用することも可能である。
【0015】
切替スイッチ80は、パワーアンプ50と高周波除去装置70の間に配設される高周波スイッチIC81と、高周波除去装置70とデュープレクサ60の間に配設される高周波スイッチIC82を有している。
仮に、パワーアンプ50側を入力側、デュープレクサ60側を出力側とした場合、高周波スイッチIC81は1入力、2出力の端子が使用され、高周波スイッチIC82は2入力、1出力の端子が使用される。
そして、高周波スイッチIC81は、入力端子がパワーアンプ50に接続され、一方の出力端子(図面上側)が高周波除去装置70に接続され、他方の出力端子(図面下側)が高周波スイッチIC82の他方の入力端子に接続される。
また、高周波スイッチIC82は、一方の入力端子が高周波除去装置70に接続され、他方の入力端子が高周波スイッチIC81の他方の出力端子に接続され、出力端子がデュープレクサ60に接続されている。
【0016】
切替スイッチ80(高周波スイッチIC81と高周波スイッチIC82)の切替えにより、LTEによる送信は、高周波除去装置70を通過する通過系Pと、通過しない不通系Qが存在する。
切替スイッチ80は、通信制御部30から供給される切替信号31により、通過系Pと不通系Qを切替える。すなわち切替スイッチ80は、切替信号31がハイ(H)である場合に通過系P側に切替え(オン状態)、切替信号31がロウ(L)である場合に不通系Qに切替える(オフ状態)。
【0017】
なお、図1に示すように、LTEによる通信では、周波数分割複信(FDD)方式であるため、送信系と受信系が区別されているが、時分割複信(TDD)方式であるWLANでは、送信系と受信系が同一になっている。
【0018】
以上の通り構成された無線通信装置1による、監視切替処理について説明する。
図2は、第1実施形態における監視切替処理について表したフローチャートである。
この監視切替処理は、通信制御部30のCPUが、記憶部に保存されている監視切替えプログラムを実行することにより行われる。
通信制御部30は、RFIC40からの信号により、LTEとWLANによる通信状態を常時監視している。
【0019】
最初に、通信制御部30は、LTEによる通信中であるか否かを確認し(ステップ10)、LTEの通信中ではない場合(ステップ10;N)、切替スイッチ80をオフにする(ステップ11)。
即ち、この状態ではWLANがLTEによる影響を受けないので、通信制御部30は、ロウ(L)の切替信号31を切替スイッチ80(高周波スイッチIC81と高周波スイッチIC82)に供給する。
これにより、切替スイッチ80は、高周波スイッチIC81と高周波スイッチIC82を、高周波除去装置70を通らない不通系Qに切替える。
【0020】
一方、LTEによる通信中である場合(ステップ10;Y)、通信制御部30は、WLANの通信中であるか否かを確認する(ステップ12)。
そしてWLANによる通信中でない場合(ステップ12;N)、この場合にもWLANが影響を受けることを考慮する必要がないので、通信制御部30はロウ(L)の切替信号31を切替スイッチ80に供給して、切替スイッチ80をオフにする(ステップ11)。
これにより、LTEは、高周波除去装置70を通らない不通系Qでの通信になる。
【0021】
WLANが通信中である場合、すなわち、LTEとWLANが同時に通信中である場合(ステップ12;Y)、通信制御部30は、WLANのスループットを確認し(ステップ13)、低スループットであるか否かを判断する(ステップ14)。
【0022】
ここで、通信制御部30による、WLANが低スループットの状態か否かについての判断方法について説明する。
WLANによる通信では、スループットの高低に応じて、変調方式を変更しながら最適な状態での通信が行われるようになっている。例えば、通信中にWLANの近くで電子レンジが作動することでエラーが発生し易くなった場合には、スループットが低くなるが通信を維持するために、より正確に復調可能な別の変調方式に変更し、電子レンジ動作が終了した場合には別の変調方式に変更して高いスループットでの通信を可能としている。
このように、WLANでは、種々の変調方式が適宜変更されながら通信が行われていて、各変調方式に対してMCS番号(Modulation and Coding Scheme)がつけられている。そして、MCS番号が高いほどスループットが高く、低いほどスループットが低くなる。
【0023】
本実施形態の通信制御部30は、WLAN通信のMCS番号を確認し、MCS番号が低い(小さい)場合にスループットが低いと判断している。
具体的には、WLANによる変調方式を確認し、BPSK、QPSKなどの位相偏移変調方式に対応したMCS番号である場合に、当該MCS番号が小さい、即ちスループットが低いと判断する。
一方、16QAM、64QAM、256QAMなどの直交振幅変調方式に対応したMCS番号である場合に、当該MCS番号が大きい、即ちスループットが高いと判断する。
【0024】
通信制御部30は、WLANのスループットが高いと判断した場合(ステップ14;N)、LTEによる通信(送信)の3倍波は、WLANによる通信に影響を与えてはいないと判断して、ロウ(L)の切替信号31を供給することで切替スイッチ80をオフにする(ステップ11)。
これにより、LTEは、高周波除去装置70を通らない不通系Qでの通信が行われる。
高周波除去装置70を通過する通過系Pの場合、高周波除去装置70を通過することで損失分が生じ、その損失分を補うためにパワーアンプ50が出力を上げ、その結果、消費電流が増加することになる。
本実施形態では、LTEとWLANが同時通信している場合でも、スループットが低くなければ、高周波除去装置70を通らない不通系Qでの通信を行うことで、高周波除去装置70による損失がない状況での通信が可能になる。
【0025】
一方、WLANのスループットが低いと判断した場合(ステップ14;Y)、通信制御部30は、LTEによる通信(送信)の3倍波が、WLANに影響を与えているものと判断し、ハイ(H)の切替信号31を供給することで切替スイッチ80をオンにする(ステップ15)。
これにより、LTEは、高周波除去装置70を通る通過系Pでの通信になる。
その結果、LTEは3倍波(2.4GHz)が除去された800MHzの通信(送信)となり、干渉することなくWLANとの同時通信を維持することができる。
【0026】
ステップ11又はステップ15において、切替スイッチ80を切替えた後、通信制御部30は、無線通信装置1がオフ(電源オフ、通信終了信号の入力等)になったか否かを確認し(ステップ16)、オフであれば(ステップ16;Y)処理を終了し、オフでなければ(ステップ16;N)、ステップ10に戻り処理を継続する。
そして、LTEとWLANの少なくとも一方の通信が終了した場合に(ステップ10;N、ステップ12;N)、及び、WLANのスループットが改善された場合(ステップ14;N)、通信制御部30はロウ(L)の切替信号31を切替スイッチ80に供給して、高周波除去装置70を通らない不通系Qに切替える。
【0027】
次に第2実施形態について説明する。
説明した第1実施形態では、LTEとWLANが同時に通信している場合のWLANのスループットが低い場合に、LTEによる送信を高周波除去装置70を通らない不通系Qに切替える場合について説明した。
これに対して第2実施形態では、WLANのスループットに係わらず、LTEとWLANとが同時に通信を開始した際に、LTEによる送信を高周波除去装置70を通る通過系Pに切替るものである。
【0028】
図3は、第2実施形態における監視切替処理について表したフローチャートである。
なお、第2実施形態における無線通信装置1は図1で説明した第1実施形態と同様である。また、第2実施形態においても通信制御部30は、RFIC40からの信号により、LTEとWLANによる通信状態を常時監視している。
【0029】
以下の監視切替処理については、第1実施形態と同様な処理については同じステップ番号を付して適宜その説明を省略する。
通信制御部30は、LTEとWLANが同時通信中であるか否かを確認し(ステップ10、12)、同時通信中でない場合(ステップ10;N、ステップ12;N)、切替スイッチ80をオフにする(ステップ11)。
すなわち、この状態ではLTEの3倍波によるWLANへの影響は生じないので、通信制御部30は、ロウ(L)の切替信号31を切替スイッチ80に供給することで、高周波スイッチIC81と高周波スイッチIC82を、高周波除去装置70を通らない不通系Qに切替える。
【0030】
一方、LTEとWLANとが同時通信中である場合(ステップ10;Y、ステップ12;Y)、通信制御部30は、LTEによる通信(送信)の3倍波が、WLANに影響を与えるのを抑止するために、ハイ(H)の切替信号31を供給することで切替スイッチ80をオンにする(ステップ15)。
これにより、LTEは、高周波除去装置70を通る通過系Pでの通信になり、3倍波(2.4GHz)が除去された800MHzの通信(送信)となるため、WLANへの干渉なく同時通信を維持することができる。
【0031】
ステップ11又はステップ15において、切替スイッチ80を切替えた後、通信制御部30は、無線通信装置1がオフ(電源オフ、通信終了信号の入力等)になったか否かを確認し(ステップ16)、オフであれば(ステップ16;Y)処理を終了する。
一方、オフでなければ(ステップ16;N)、通信制御部30は、ステップ10に戻り処理を継続する。
そして、LTEとWLANの少なくとも一方の通信が終了した場合に(ステップ10;N、ステップ12;N)、通信制御部30はロウ(L)の切替信号31を切替スイッチ80に供給して、高周波除去装置70を通らない不通系Qに切替える。
【0032】
以上説明したように第2実施形態の無線通信装置1によれば、LTEとWLANの同時通信時において、LTEは常に高周波除去装置70を通る通過系Pで送信することができるので、パワーアンプ50での消費電流が増加するが、LTEの3倍波によるWLANへの干渉を無くし、確実にLTEとWLANの同時通信を行うことができる。
【0033】
以上説明したように、第1、第2実施形態によれば、LTEによる送信を高周波除去装置70を通る通過系Pと、通らない不通系Qに切替スイッチ80で切替えるので、LTEのLアンテナ20と、WLANのWアンテナ10との、アンテナ間アイソレーションを確保することができない小型端末でも、干渉なしにLTEとWLAN(2.4GHz)の同時動作を実現することができる。
【0034】
以上、各実施形態、変形例について説明したが、無線通信装置1としては発明の範囲内において各種の変形を適用することが可能である。
例えば、説明した実施形態等では、高周波除去装置70として、800MHzのみを通すバンドパスフィルタを使用する場合について説明した。
これに対し、高周波除去装置70として、2.4GHzを通さないバンドイリミネートフィルタを使用することも可能である。
【0035】
また説明した各実施形態および変形例では、B18のLTE(800MHz)と、WLAN(2.4GHz)による通信を例に説明した。
これに対して、他の周波数帯によるLTEとWLANの場合に対しても、LTEの3倍波によるWLANへの影響を解消するために、LTEの送信系に高周波除去装置70を通る通過系Pと、通らない不通系Qを設けることも可能である。
(イ)バンド18(端末送信815~830MHz)のLTEと、2.4GHz帯のWLAN
(ロ)バンド1(端末送信1920~1980MHz)のLTEと、5GHz帯のWLAN
(ハ)バンド39(1880~1920MHz)のLTEと、5GHz帯のWLAN
なお、バンド39はTDM(時分割多重化)であるため、送信と受信の周波数が同じである。
【0036】
また説明した第2実施形態とその変形例では、LTE(B18)とWLAN(2.4GHz)とが同時に通信している場合に、切替スイッチ80で不通系Qに切替える場合について説明した。
これに対して、次の場合には、LTE(B18)による通信を開始する前に、切替スイッチ80で通過系Pに切替えるようにしてもよい。
(a)LTE(B18)以外のバンドでの通信中において、LTE(B18)にハンドオーバーの指示があった場合
(b)基地局からの指示によりLTE(B18)での通信指示があった場合
以上の(a)、(b)の場合に、予め通過系Pに切替えておくことで、LTE(B18)の通信が開始してWLANとの同時通信状態になっても、確実に3倍波の影響を除くことができる。
この第2実施形態の変形例は、上述した変形例(イ)、(ロ)、(ハ)についても同様に適用することができる。
【0037】
以上、実施形態および各種変形例について説明したが、各実施形態や変形例に対応して、無線通信装置1を次のように構成することも可能である。
(1)構成1
第1周波数での無線通信を行う第1無線手段と、
前記第1周波数の3倍波である第2周波数での無線通信を行う第2無線手段と、
前記第1無線手段の無線通信により発生する3倍波を除去する高周波除去手段と、
前記第1無線手段による送信波の送信を、前記高周波除去手段を通過させた送信と、通過させない送信とを切替える切替手段と、
を具備したことを特徴とする無線通信装置。
(2)構成2
前記切替手段は、前記第2無線手段による通信が行われている場合に、前記第1無線手段による送信波の送信を、前記高周波除去手段を通過させた送信に切替える、
ことを特徴とする構成1に記載の無線通信装置。
(3)構成3
前記切替手段は、前記第1無線手段による通信の指示があった場合に、前記第2無線手段による通信が行われていれば、前記第1無線手段による送信波の送信を、前記高周波除去手段を通過させた送信に切替える、
ことを特徴とする構成1に記載の無線通信装置。
(4)構成4
前記第2無線手段による通信のスループットの劣化を判定する判定手段と、
前記切替手段は、前記判定手段が劣化していると判定した場合に、前記第1無線手段による送信波の送信を、前記高周波除去手段を通過させた送信に切替える、
ことを特徴とする構成1に記載の無線通信装置。
(5)構成5
前記判定手段は、前記第2無線手段による通信が、位相偏移変調方式である場合にスループットが劣化していると判定する、
ことを特徴とする構成4に記載の無線通信装置。
(6)構成6
前記判定手段は、MCSの番号が予め決められた番号よりも小さい場合に、スループットが劣化していると判定する、
ことを特徴とする構成4に記載の無線通信装置。
(7)構成7
前記第1無線手段は、前記第1周波数が800MHzの無線通信を行うLTE通信であり、
前記第2無線手段は、前記第2周波数が2.4GHzの無線通信を行うWLAN通信である、
ことを特徴とする構成1から構成6のうちの何れか1の構成に記載の無線通信装置。
【符号の説明】
【0038】
1 無線通信装置
10 Wアンテナ
20 Lアンテナ
30 通信制御部
31 切替信号
40 RFIC(高周波集積回路)
50 パワーアンプ
60 デュープレクサ
70 高周波除去装置
80 切替スイッチ
81 高周波スイッチIC
82 高周波スイッチIC
P 通過系
Q 不通系
図1
図2
図3