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特開2024-114376産業財産権維持費用予測システム、制御装置およびコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114376
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】産業財産権維持費用予測システム、制御装置およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20230101AFI20240816BHJP
   G06Q 50/18 20120101ALI20240816BHJP
【FI】
G06Q10/04
G06Q50/18 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020105
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】300010899
【氏名又は名称】NGB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 雄輝
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 哲史
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 航
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L010AA04
5L049AA04
5L049CC33
5L050CC33
(57)【要約】
【課題】複数の計算モデルの中からユーザに計算モデルを選択してもらうことで、ユーザの要求に即した産業財産権の維持費用の予測額を算出する。
【解決手段】制御装置は、費用予測対象の産業財産権を特定するための情報および費用予測に用いられる計算モデルに関する情報を受け付ける情報受付部と、費用予測に用いられる計算モデルを特定するモデル特定部と、書誌情報データベースから費用予測対象の産業財産権の維持費用を算出するために用いられる書誌情報を取得する情報取得部と、特定された計算モデルおよび取得された費用予測対象の産業財産権の書誌情報に基づいて費用予測対象の産業財産権について発生する維持費用の予測額を算出する費用予測部と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の産業財産権の各々を維持するために要する維持費用を算出するために用いられる書誌情報が記録された書誌情報データベースにアクセス可能であり、産業財産権の維持費用を予測する制御装置であって、
費用予測対象の産業財産権を特定するための情報および費用予測に用いられる計算モデルに関する情報を受け付ける情報受付部と、
前記産業財産権を放棄すると判定する指標の種類または前記指標の基準値の異なる複数の計算モデルのうちから、前記費用予測に用いられる計算モデルを特定するモデル特定部と、
前記書誌情報データベースに記録された前記複数の産業財産権の前記書誌情報の中から前記費用予測対象の産業財産権の維持費用を算出するために用いられる書誌情報を取得する情報取得部と、
特定された前記計算モデルおよび取得された前記費用予測対象の産業財産権の前記書誌情報に基づいて前記費用予測対象の産業財産権について発生する維持費用の予測額を算出する費用予測部と、
前記費用予測部により算出された前記維持費用の予測額を含む予測結果を出力する出力部と、
を備えている、制御装置。
【請求項2】
前記複数の計算モデルは、過去に各国で各年次において産業財産権を維持または放棄したかに基づいて算出された、各国で各年次において維持費用の支払いを不要とするかの確率を示す放棄率モデルを含んでいる、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記書誌情報データベースには、過去に各国で各年次において産業財産権を維持または放棄したかの情報が記録されており、
前記費用予測に用いられる計算モデルに関する情報が、各国で各年次において維持費用の支払いを不要とするかの確率を示す放棄率モデルを指定する情報を含む場合、前記モデル特定部は、前記書誌情報データベースに記録された前記過去に各国で各年次において産業財産権を維持または放棄したかの情報に基づき放棄率モデルを生成する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記複数の計算モデルは、産業財産権の価値に対応して放棄または維持あるいはその割合が設定された価値モデルを含んでいる、請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記複数の計算モデルは、産業財産権の産業分野に対応して放棄または維持あるいはその割合が設定された産業分野モデルを含んでいる、請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記複数の計算モデルは、一回の支払い手続きにおける所要金額に応じて放棄または維持あるいはその割合が設定された費用モデルを含んでいる、請求項1に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記複数の計算モデルが記録された計算モデルデータベースにアクセス可能であり、
前記出力部は、前記モデル特定部が生成した前記放棄率モデルを前記計算モデルデータベースへ出力する、請求項3に記載の制御装置。
【請求項8】
前記計算モデルを更新するモデル更新部を備えており、
前記情報受付部は、前記計算モデルを更新する情報を取得し、
前記モデル更新部は、前記計算モデルを更新する情報に基づき前記計算モデルを更新する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項9】
前記費用予測に用いられる計算モデルに関する情報は、少なくとも二つ以上の計算モデルに関する情報を含み、
前記費用予測部は、前記少なくとも二つ以上の計算モデルそれぞれに対応する前記予測額を算出し、
前記出力部は、算出された前記二つ以上の前記予測額を含む前記予算結果を出力する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項10】
前記情報受付部は、予算額に関する情報を取得し、
前記費用予測部は、前記予測額と前記予算額との比較を行い、
前記出力部は、前記予測額と前記予算額との比較結果を含む前記予測結果を出力する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項11】
複数の産業財産権の各々を維持するために要する維持費用を算出するために用いられる書誌情報が記録された書誌情報データベースと、
請求項1に記載の制御装置と、
前記制御装置から出力された費用予測対象の産業財産権について発生する維持費用の予測額を含む予測結果を表示する表示装置と、を備えている、
産業財産権維持費用予測システム。
【請求項12】
制御装置に搭載されたプロセッサにより実行可能なコンピュータプログラムであって、
実行されることにより、前記プロセッサは、
費用予測対象の産業財産権を特定するための情報および費用予測に用いられる計算モデルに関する情報を受け付け、
前記産業財産権を放棄すると判定する指標の種類または前記指標の基準値の異なる複数の計算モデルのうちから、前記費用予測に用いられる計算モデルを特定し、
複数の産業財産権の各々を維持するために要する維持費用を算出するために用いられる書誌情報が記録された書誌情報データベースにアクセスして、前記書誌情報データベースに記録された前記複数の産業財産権の前記書誌情報の中から前記費用予測対象の産業財産権の維持費用を算出するために用いられる書誌情報を取得し、
特定された前記計算モデルおよび取得された前記費用予測対象の産業財産権の前記書誌情報に基づいて前記費用予測対象の産業財産権について発生する維持費用の予測額を算出し、
算出された前記維持費用の予測額を含む予測結果を出力する、
コンピュータプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業財産権維持費用予測システムに関連する。また、本発明は、産業財産権維持費用予測システムにおいて用いられる制御装置に関連する。また、本発明は、制御装置により実行可能なコンピュータプログラムに関連する。
【背景技術】
【0002】
特許、実用新案、意匠、商標などの産業財産権については、その権利が登録された後も権利を維持するために権利の維持年数に応じた維持費用(いわゆる年金)を支払う必要がある。また、特定の国においては、産業財産権が登録される前においても出願の係属年数に応じて維持費用を支払う必要がある。
【0003】
特許文献1は、消滅した特許権の維持期間の実績に基づいて生成された維持期間算出モデルを用いて特許権の残存維持期間の推定値を算出している。また、算出した残存維持期間の推定値に基づいて維持費用の推定値を算出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-101425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のように消滅した特許権の維持期間の実績に基づいたモデルを用いて維持費用を予測する場合、維持費用予測対象の産業財産権に応じてモデルを選択・設定できないので、ユーザの要求に即した産業財産権の維持費用の予測額を算出できない。
【0006】
本発明の目的は、複数の計算モデルの中からユーザに計算モデルを選択してもらうことで、ユーザの要求に即した産業財産権の維持費用の予測額を算出することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための一態様は、複数の産業財産権の各々を維持するために要する維持費用を算出するために用いられる書誌情報が記録された書誌情報データベースにアクセス可能であり、産業財産権の維持費用を予測する制御装置であって、
費用予測対象の産業財産権を特定するための情報および費用予測に用いられる計算モデルに関する情報を受け付ける情報受付部と、
前記産業財産権を放棄すると判定する指標の種類または前記指標の基準値の異なる複数の計算モデルのうちから、前記費用予測に用いられる計算モデルを特定するモデル特定部と、
前記書誌情報データベースに記録された前記複数の産業財産権の前記書誌情報の中から前記費用予測対象の産業財産権の維持費用を算出するために用いられる書誌情報を取得する情報取得部と、
特定された前記計算モデルおよび取得された前記費用予測対象の産業財産権の前記書誌情報に基づいて前記費用予測対象の産業財産権について発生する維持費用の予測額を算出する費用予測部と、
前記費用予測部により算出された前記維持費用の予測額を含む予測結果を出力する出力部と、
を備えている。
【0008】
上記の目的を達成するための一態様は、産業財産権維持費用予測システムであって、
複数の産業財産権の各々を維持するために要する維持費用を算出するために用いられる書誌情報が記録された書誌情報データベースと、
請求項1に記載の制御装置と、
前記制御装置から出力された費用予測対象の産業財産権について発生する維持費用の予測額を含む予測結果を表示する表示装置と、を備えている。
【0009】
上記の目的を達成するための一態様は、制御装置に搭載されたプロセッサにより実行可能なコンピュータプログラムであって、
実行されることにより、前記プロセッサは、
費用予測対象の産業財産権を特定するための情報および費用予測に用いられる計算モデルに関する情報を受け付け、
前記産業財産権を放棄すると判定する指標の種類または前記指標の基準値の異なる複数の計算モデルのうちから、前記費用予測に用いられる計算モデルを特定し、
複数の産業財産権の各々を維持するために要する維持費用を算出するために用いられる書誌情報が記録された書誌情報データベースにアクセスして、前記書誌情報データベースに記録された前記複数の産業財産権の前記書誌情報の中から前記費用予測対象の産業財産権の維持費用を算出するために用いられる書誌情報を取得し、
特定された前記計算モデルおよび取得された前記費用予測対象の産業財産権の前記書誌情報に基づいて前記費用予測対象の産業財産権について発生する維持費用の予測額を算出し、
算出された前記維持費用の予測額を含む予測結果を出力する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の計算モデルの中からユーザに計算モデルを選択してもらうことで、ユーザの要求に即した産業財産権の維持費用の予測額を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態の産業財産権維持費用予測システムのブロック図を示している。
図2図1の管理データベースの一例を示している。
図3図1の計算モデルデータベースに蓄積されている国・年次別放棄率モデルの一例を示している。
図4図1の計算モデルデータベースに蓄積されている価値モデルの一例を示している。
図5図1の費用データベースに記憶されている費用テーブルを示している。
図6図1の制御装置により実行される維持費用予測処理の流れを例示している。 ある。
図7図1の表示装置の表示部に表示される維持費用予測画面の一例を示している。
図8図1の表示装置の表示部に表示される維持費用予測画面の一例を示している。
図9図1の表示装置の表示部に表示される維持費用予測画面の別例を示している。
図10図1の表示装置の表示部に表示される計算モデル内容表示画面の一例を示している。
図11図1の表示装置の表示部に表示される計算モデル内容表示画面の一例を示している。
図12図1の表示装置の表示部に表示される維持費用予測画面の一例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付の図面を参照しつつ、実施形態例について以下詳細に説明する。以下の説明に用いられる各図面においては、各要素を認識可能な大きさとするために縮尺が適宜変更されている。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る産業財産権維持費用予測システム1の構成を例示している。産業財産権維持費用予測システム1は、存続する1以上の産業財産権を維持するために要する維持費用(いわゆる年金)を予測するためのシステムである。産業財産権の維持費用には、産業財産権を更新するために要する費用も含まれる。以下、維持費用のことを、年金ともいう。
【0014】
本明細書において用いられる「産業財産権」という用語は、登録された産業財産権(特許権、実用新案権、意匠権、および商標権)だけでなく、申請中であって未登録の産業財産権(特許出願、実用新案出願、意匠出願、および商標出願)も含む。以下では、申請中の産業財産権も含めて、単に産業財産権と称する。
【0015】
また、本明細書において用いられる「産業財産権の権利者」という用語は、登録された産業財産権の権利者に限定されず、申請中であって未登録の産業財産権の出願人(特許、実用新案登録、意匠登録または商標登録を受ける権利を有する者)も含む。以下では、申請中であって未登録の産業財産権の権利者を、登録された産業財産権の権利者と区別するために、出願人と言うことがある。
【0016】
図1に示すように、産業財産権維持費用予測システム1は、制御装置2、記憶装置3、入力装置4、および表示装置5を備える。本実施形態では、記憶装置3は、制御装置2に接続されている。また、入力装置4および表示装置5は、インターネット100を介して制御装置2に接続されている。
【0017】
制御装置2は、存続する1以上の産業財産権を維持するために要する維持費用を予測するように構成されている。制御装置2は、例えば、産業財産権の維持費用の納付を管理する年金管理会社が管理する装置である。
【0018】
制御装置2は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などの記憶媒体21と、CPU(Central Processing Unit)等で構成された1つ又は複数のプロセッサ22と、を有する。ROMは、後述する処理を実行するコンピュータプログラムが記憶された非一時的なコンピュータ可読媒体の一例である。プロセッサ22は、ROM上に記憶されたコンピュータプログラムの少なくとも一部を指定してRAM上に展開し、RAMと協働して上述した処理を実行する。制御装置2は、物理的な計算機であってもよいし、仮想計算機(Virtual Machine:VM)、コンテナ(container)、又はこれらの組み合わせにより実現されるものであってもよい。
【0019】
記憶装置3は、管理情報データベース31、計算モデルデータベース32、および費用データベース33を備えている。制御装置2は、管理情報データベース31、計算モデルデータベース32、費用データベース33にそれぞれにアクセス可能である。
【0020】
管理情報データベース31は、1以上の産業財産権に関する書誌情報を記憶して蓄積している。年金管理会社が制御装置2を管理する場合、管理情報データベース31には、管理対象権利である1以上の産業財産権に関する書誌情報が記録されている。管理情報データベース31は、書誌情報データベースの一例である。
【0021】
産業財産権に関する書誌情報は、各々の産業財産権を識別可能な識別情報を含む。識別情報は、例えば、産業財産権の出願番号、登録番号、公開番号などを含む。
【0022】
産業財産権に関する書誌情報はまた、各々の産業財産権の維持費用を算出するために用いられる年金情報を含む。年金情報は、例えば、各々の産業財産権の出願国、法域、出願日、登録日、年金納付情報(年金納付状況(納付済みまたは未納付)、次回の年金納付期限日、直近の年金納付日など)、請求項数、意匠数、商標区分、共有に係る権利か否かの共有情報、共有に係る権利である場合の各権利者の持分割合、等を含む。
【0023】
産業財産権に関する書誌情報はまた、各々の産業財産権の価値を示す情報、産業分野を示す情報、権利者の事業種別を示す情報などを含んでいてもよい。
【0024】
産業財産権の価値は、例えば、権利者の事業を保護する観点、他社の事業への牽制となる観点などの1つまたは複数の観点から評価され、数値やアルファベットによりスコアで表される。各々の産業財産権のスコアは、ユーザが入力装置4を操作して設定入力されうる。あるいは、各々の産業財産権のスコアは、制御装置2により算出されうる。
【0025】
産業分野を示す情報としては、例えば、国際特許分類(International Patent Classification、以下IPCとも言う)、欧州米国共通特許分類(Cooperative. Patent Classification、以下CPCとも言う)、FI(File Index)、Fターム(File Forming Term)、等の分類情報が挙げられる。各々の産業財産権の分類情報は、後述する産業財産権情報データベース300から取得されうる。
【0026】
権利者の事業種別を示す情報としては、例えば、権利者が実施する事業の種類(例えば、自動車、家電、食品、医薬品等)を示す情報等である。各々の産業財産権の権利者の事業種別は、ユーザが入力装置4を操作して設定入力されうる。各々の産業財産権の権利者の事業種別は、後述する産業財産権情報データベース300から取得されうる。
【0027】
例えば、図2は、管理情報データベース31の一例を示している。本例においては、管理情報データベース31には、管理番号、出願国、種別(法域の種別)、出願番号、出願日、登録番号、登録日、権利者、請求項数、価値、産業分野、事業種別、年金納付状況が記録されている。
【0028】
計算モデルデータベース32は、維持費用を予測する際に用いられる複数の計算モデルを記憶して蓄積している。具体的には、計算モデルデータベース32には、産業財産権を放棄とすると判定するために用いられる指標の種類または当該指標の基準値が異なる計算モデルが記憶されている。
【0029】
本明細書において用いられる「放棄」という用語は、積極的に特許庁に対して放棄の手続きを行なうことにより産業財産権が放棄となる場合と、特許庁に対して維持費用の納付を行なわなかったことにより産業財産権が放棄となる場合とを含む。
【0030】
計算モデルは、産業財産権を放棄すると判定するモデルである。換言すれば、計算モデルは、産業財産権の放棄を予測するために用いられるモデルである。
【0031】
本明細書において用いられる「産業財産権を放棄とすると判定する」という表現は、各々の産業財産権を放棄するか否かを判定するだけでなく、産業財産権が放棄される確率を判定することも含む。
【0032】
産業財産権を放棄すると判定するために用いられる指標の種類としては、例えば、放棄率、価値、産業分野、費用等が挙げられる。指標が異なる複数の計算モデルには、放棄率モデル、価値モデル、産業分野モデル、費用モデル等が含まれる。
【0033】
指標の基準値が異なるとは、放棄または維持と判定するための閾値が異なる、設定される放棄または維持する割合が異なる、等が含まれうる。また、放棄率モデルの場合は、指標の基準値が異なるとは、放棄率を算出するために用いる産業財産権を特定するための情報(権利者、産業分野、権利者の事業種別、等)が異なる、等が含まれうる。
【0034】
放棄率モデルは、産業財産権の過去の維持費用の支払い状況(維持または放棄)のデータに基づいて算出されたモデルである。放棄率モデルは、予め算出されて計算モデルデータベース32に記録されている。または、放棄率モデルは、維持費用を予測する際に算出されて計算モデルデータベース32に記録されうる。
【0035】
例えば、放棄率モデルは、過去に各国で各年次において産業財産権を維持または放棄したかに基づいて算出された、各国で各年次において維持費用の支払いを不要とするかの確率を示す国・年次別放棄率モデルを含む。あるいは、例えば、放棄率モデルは、権利者ごとに、過去に各国で各年次において産業財産権を維持または放棄したかに基づいて算出された、各国で各年次において維持費用の支払いを不要とするかの確率を示す権利者・国・年次別放棄率モデルを含む。または、例えば、放棄率モデルは、権利者の事業種別ごとに、過去に各国で各年次において産業財産権を維持または放棄したかに基づいて算出された、各国で各年次において維持費用の支払いを不要とするかの確率を示す事業種別・国・年次別放棄率モデルを含む。
【0036】
例えば、図3は、国・年次別放棄率モデルの一例を示している。本例においては、日本とアメリカの特許権の年次別の放棄率が示されている。例えば、4年次の維持費用の放棄率とは、過去の4年次の維持費用を支払わなかった件数/(4年次の維持費用を支払った件数+支払わなかった件数)×100で算出される。
【0037】
価値モデルは、産業財産権の価値に対応して放棄または維持あるいはその割合が設定されたモデルである。例えば、図4は、価値モデルの一例を示している。本例においては、産業財産権の価値は、1~5までのスコアで評価されており、スコアの値に応じて放棄または維持が設定されている。なお、放棄または維持の代わりに、放棄率または維持率が設定されてもよい。放棄、維持あるいはその割合については、所定の値が適宜設定される。所定の値は、例えば、ユーザにより設定されうる。
【0038】
産業分野モデルは、産業財産権の産業分野に対応して放棄または維持あるいはその割合が設定されたモデルである。放棄、維持あるいはその割合については、所定の値が適宜設定されている。所定の値は、例えば、ユーザにより設定されうる。
【0039】
費用モデルは、一回の支払い手続きにおける所要金額に応じて放棄または維持あるいはその割合が設定されたモデルである。放棄、維持あるいはその割合については、所定の値が適宜設定されている。所定の値は、例えば、ユーザにより設定されうる。
【0040】
計算モデルデータベース32は、上述した、放棄率の値が異なる複数の放棄率モデル、放棄率を算出するために用いる産業財産権を特定するための情報が異なる複数の放棄率モデル、放棄と判定するためのスコアの値が異なる複数のスコアモデル、放棄と判定するための産業分野が異なる複数の技術分野モデル、および放棄と判定するための所要金額が異なる複数の費用モデルのうち、少なくとも二つ以上の計算モデルを記憶して蓄積している。
【0041】
費用データベース33は、維持費用の納付額に関する情報を記憶して蓄積している。具体的には、費用データベース33は、国・法域・年次ごとに庁費用、代理人費用、その他手数料等を含む費用テーブルが記録されている。費用データベース33には、さらに為替レートが記憶されていてもよい。為替レートの情報は、例えば、定期的にインターネット100を通じて外部から取得されて、費用データベース33に記録される。
【0042】
例えば、図5は、費用データベース33に記憶されている費用テーブルの一例を示している。本例においては、特許(P)と実用新案(U)に関する各年次の維持費用の庁費用および代理人費用が含まれている。代理人費用には、例えば、国内代理人費用に加えて現地代理人費用が含まれうる。なお、本例においては、アメリカの費用が現地通貨建てで示されているが、円建てで示されてもよい。
【0043】
入力装置4は、制御装置2へ提供する情報の入力をユーザから受け付ける装置である。表示装置5は、制御装置2から出力された情報を表示可能な装置である。表示装置5は、制御装置2から出力された情報を表示する表示部51を備える。本例においては、入力装置4および表示装置5は、ユーザが使用する端末200に搭載されている。端末200は、ユーザが所有する端末でもよく、ユーザがログイン可能な端末でもよい。年金管理会社が制御装置2を管理する場合、ユーザは、入力装置4を操作して、保有する産業財産権の管理の依頼や維持費用の納付指示を行う。
【0044】
端末200は、例えば、パーソナルコンピュータやスマートフォン等の情報端末である。入力装置4は、例えば、パーソナルコンピュータに接続されるキーボード、キーパッド及びマウス、スマートフォンのタッチパネル等である。表示装置5は、例えば、液晶ディスプレイやOLED(Organic Light-Emitting Diode)ディスプレイ等である。
【0045】
産業財産権維持費用予測システム1は、図1に例示されるように、さらに産業財産権情報データベース300を備える。産業財産権情報データベース300は、複数の産業財産権の出願関連情報を蓄積している。本例においては、制御装置2は、インターネット100を介して、産業財産権情報データベース300にアクセス可能である。産業財産権情報データベース300は、書誌情報データベースの一例である。
【0046】
産業財産権情報データベース300は、例えば、独立行政法人工業所有権情報・研修館が提供するJ-PlatPat(登録商標)、欧州特許庁及び欧州特許条約加盟国の特許庁が提供するEspacenet(登録商標)、世界知的所有権機関が提供するWIPO Patentscope(登録商標)、米国特許商標庁が提供するPatent Full-Text and Image Database等の無料データベースであってもよいし、民間企業が提供する商用データベースであってもよい。
【0047】
産業財産権情報データベース300には、日本、及び/又は、世界各国でなされた産業財産権の出願関連情報が蓄積されている。出願関連情報には、各々の出願に関する書誌情報が含まれている。
【0048】
産業財産権情報データベース300に蓄積されている各々の出願に関する書誌情報には、出願番号、公開番号、公表番号、登録番号を含む識別情報と、各出願の出願日、登録日、登録公報発行日を含む日付情報と、各出願の出願人名及び権利者名を含む出願人権利者情報と、国際特許分類、欧州米国共通特許分類、FI、及び、Fタームの各分類群について各出願に付与された分類に関する分類情報と、年金納付情報等が含まれている。
【0049】
産業財産権情報データベース300には、さらに産業財産権の価値を示す情報や権利者の事業種別を示す情報が蓄積されてもよい。
【0050】
次に、制御装置2の構成および機能について詳細に説明する。
【0051】
制御装置2は、図1に例示されるように、情報受付部221、モデル特定部222、情報取得部223、費用予測部224および出力部225を備えている。情報受付部221、モデル特定部222、情報取得部223、費用予測部224および出力部225は、制御装置2のプロセッサ22がコンピュータプログラムを実行することで実現される機能ブロックである。
【0052】
情報受付部221は、費用予測対象の産業財産権を特定するための情報および費用予測に用いられる計算モデルに関する情報を受け付ける。ユーザは、入力装置4を操作することにより、これらの情報を制御装置2に提供する。費用予測対象の産業財産権を特定するための情報としては、産業財産権の権利者、産業分野、権利者の事業種別などの情報が挙げられる。費用予測に用いられる計算モデルに関する情報としては、費用予測に用いる計算モデルを指定する情報などが挙げられる。
【0053】
モデル特定部222は、情報受付部221が受け付けた費用予測に用いられる計算モデルに関する情報に基づいて、指標の種類や指標の基準値が異なる複数の計算モデルの中から、費用予測に用いる計算モデルを特定する。
【0054】
例えば、モデル特定部222は、計算モデルデータベース32にアクセスして、計算モデルデータベース32に蓄積された計算モデルの中から、費用予測に用いる計算モデルを特定する。あるいは、例えば、モデル特定部222は、費用予測に用いる計算モデルが計算モデルデータベース32に蓄積されていない場合には、費用予測に用いる計算モデルを生成する。例えば、費用予測に用いる計算モデルとして放棄率モデルが指定されている場合は、モデル特定部222は、管理情報データベース31又は産業財産権情報データベース300にアクセスし、産業財産権の過去の維持費用の支払い状況(維持または放棄)のデータに基づいて、放棄率モデルを作成する。例えば、産業財産権の過去の維持費用の支払い状況(維持または放棄)のデータに基づいて、国・年次別放棄率モデルを作成する。あるいは、情報受付部221により取得した費用予測対象の産業財産権を特定するための情報(例えば、権利者や権利者の事業種別)に関連する産業財産権の過去の維持費用の支払い状況(維持または放棄)のデータに基づいて、権利者・国・年次別放棄率モデルや事業種別・国・年次別放棄率モデル等を作成する。なお、放棄率モデルを作成するために使用する産業財産権のデータとしては、例えば直近の所定期間の産業財産権の過去の維持費用の支払い状況(維持または放棄)のデータが用いられる。
【0055】
すなわち、本明細書において用いられる「計算モデルを特定する」という表現は、計算モデルデータベース32に蓄積された複数の計算モデルの中から指定された費用予測に用いられる計算モデルを選択するだけでなく、指定された費用予測に用いられる計算モデルを作成することも含む。
【0056】
情報取得部223は、管理情報データベース31または産業財産権情報データベース300にアクセスして、管理情報データベース31または産業財産権情報データベース300に蓄積された複数の産業財産権の中から費用予測対象となる1以上の産業財産権に関する書誌情報を取得する。
【0057】
費用予測部224は、特定された費用予測に用いる計算モデルと、取得された費用予測対象の産業財産権に関する書誌情報に含まれる維持費用を算出するために用いられる年金情報と、に基づいて、費用予測対象の産業財産権について将来発生する維持費用の予測額を算出する。
【0058】
具体的には、費用予測部224は、費用予測対象の産業財産権の年金情報と、費用データベース33に蓄積された維持費用の納付額に関する情報と、に基づいて、費用予測対象の産業財産権を維持する場合に将来発生する維持費用の支払額を算出する。
【0059】
続いて、費用予測部224は、費用予測に用いられる計算モデルに基づいて、算出された費用予測対象の産業財産権を維持する場合に将来発生する維持費用の支払額を修正し、修正した支払額を維持費用の予測額とする。産業財産権の予測額は、発生年毎、年次毎、法域毎、及び/又は国毎に合算されてもよい。
【0060】
出力部225は、費用予測部224により算出された維持費用の予測額を含む予測結果を出力する。予測結果は、表示装置5の表示部51に表示される。
【0061】
次に、図6から図8を参照して、制御装置2により実行される維持費用予測処理について説明する。
【0062】
例えば、表示装置5の表示部51に表示される不図示のホーム画面等において、ユーザが入力装置4を操作して、産業財産権の維持費用を予測することを示す情報が制御装置2に入力されると、制御装置2は、維持費用予測処理を開始する。
【0063】
まず、制御装置2は、情報受付部221により、費用予測対象の産業財産権を特定する情報および費用予測に用いられる計算モデルに関する情報を取得する(STEP1)。具体的には、ユーザが入力装置4を操作することにより、費用予測対象の産業財産権を特定する情報および費用予測に用いられる計算モデルに関する情報が制御装置2に入力される。
【0064】
図7は、表示装置5の表示部51に表示される維持費用予測画面の一例である。制御装置2は、ユーザによる入力装置4の維持費用予測操作を受け付けることを示す情報を出力部225から表示装置5に出力すると、表示装置5は、維持費用予測画面を表示部51に表示する。
【0065】
図7に例示されるように、維持費用予測画面は、費用予測対象の産業財産権を特定するための条件を選択するための条件選択部51Aと、選択された条件の詳細を設定するための条件設定部51Bを有している。条件選択部51Aは、例えば、プルダウンメニュー等であり、ユーザが入力装置4を操作して、複数の条件項目の中から費用予測対象を特定するための1つの条件項目をユーザが選択可能になっている。複数の条件項目としては、例えば、権利者、産業分野、権利者の事業種別などが挙げられる。条件設定部51Bは、例えば、ユーザが入力装置4を操作して、選択された条件の詳細を自由に入力可能となっている。本例においては、ユーザによる入力装置4の操作により、費用予測対象の産業財産権を特定するための条件として権利者が選択され、権利者の情報として権利者Aが入力されている。
【0066】
また、維持費用予測画面は、費用予測に用いられる計算モデルを選択するためのモデル選択部51Cを有する。本例においては、モデル選択部51Cは、第一モデル選択部51C1と第二モデル選択部51C2を有している。モデル選択部51Cは、例えば、プルダウンメニュー等であり、ユーザが入力装置4を操作して、複数のモデル項目の中から費用予測対象に用いるための1つのモデル項目をユーザが選択可能になっている。複数のモデル項目としては、例えば、放棄率モデル、価値モデル、産業分野モデル、費用モデルなどが挙げられる。本例においては、ユーザによる入力装置4の操作により、費用予測に用いられる計算モデルとして、放棄率モデルが選択されている。
【0067】
また、維持費用予測画面は、維持費用を算出する期間を設定するための期間設定51Dを有する。本例においては、維持費用を算出する期間として、5年が設定されている。
【0068】
続いて、制御装置2は、モデル特定部222により、費用予測に用いられる計算モデルを特定する(STEP2)。例えば、図7に示されるように、維持費用予測画面には、維持費用予測を実行するための実行アイコン51Eが表示されている。ユーザは、入力装置4を操作して、実行アイコン51Eをクリック等によって操作する。これにより、モデル特定部222は、計算モデルデータベース32にアクセスし、選択された計算モデルを特定する。例えば、本例においては、計算モデルとして放棄率モデルが選択されているので、モデル特定部222は、計算モデルデータベース32にアクセスし、複数の計算モデルの中から、図3に例示される放棄率モデルを特定する。なお、放棄率モデルとしては、図3の国・年次別放棄率モデルではなく、権利者Aの過去の放棄済みの産業財産権のデータをもとに生成された権利者・国・年次別放棄率モデルが特定されてもよい。
【0069】
また、制御装置2は、情報取得部223により、管理情報データベース31または産業財産権情報データベース300にアクセスし、費用予測対象の産業財産権に関する書誌情報を取得する(STEP3)。例えば、本例においては、情報取得部223は、図2に例示される管理情報データベース31から、権利者Aの産業財産権である管理番号001~003の維持費用を算出するために用いられる年金情報を取得する。なお、STEP3は、STEP2の前に実行されてもよい。
【0070】
続いて、制御装置2は、費用予測部224により、特定された計算モデルおよび取得された費用予測対象の産業財産権の年金情報に基づいて費用予測対象の産業財産権について発生する維持費用の予測額を算出する(STEP4)。例えば、費用予測部224は、費用データベース33にアクセスし、費用予測対象の産業財産権において発生する、期間設定51Dで設定された所定期間内で発生する納付年次の維持費用を算出する。
【0071】
本例においては、図2に例示されるように、管理番号001の産業財産権は、請求項の数が2つの日本の特許権であり、次回の年金は、4年次の年金である。費用予測部224は、費用データベース33にアクセスして、図5の費用テーブルから、請求項の数が2つの日本の4年次の年金の庁費用は、10,300円+(2×800円)であり、代理人費用は、10,000円であり、管理番号001の特許権を維持する場合の年金の支払額が10,300円+(2×800円)+10,000円=21,900円であると算出する。なお、請求項の数は、管理情報データベース31に記憶されてない場合は、産業財産権情報データベース300から取得してもよい。
【0072】
続いて、費用予測部224は、特定された計算モデルに基づいて、算出した費用予測対象の産業財産権において発生する次回の納付年次の年金の支払額を修正し、修正した年金の支払額を予測額とする。例えば、費用予測部224は、図3の放棄率モデルから、日本の特許権の4年次の放棄率は、10%であると特定する。そして、費用予測部224は、管理番号001の日本の特許権について発生する4年次の年金の予測額を、21,900円×0.9=19,710円として算出する。なお、0.9は、維持率であり、(100(%)-10(%))/100から算出される。
【0073】
費用予測部224は、権利者Aの残りの権利である管理番号002と管理番号003についても同様に、次回発生する年金の予測額を算出する。
【0074】
具体的には、管理番号002は、請求項の数2つの日本の特許権で、次の年金は5年次である。費用予測部224は、費用データベース33にアクセスして、管理番号002の日本の特許権を維持する場合の年金の支払額が10,300円+(2×800円)+10,000円=21,900円であると算出する。また、費用予測部224は、図3の放棄率モデルから、日本の5年次の放棄率は20%であると特定し、管理番号002の日本の特許権について発生する維持費用の予測額を、21,900円×0.8=17,520円として算出する。
【0075】
管理番号003は、アメリカの特許で、次の年金は7.5年次である。費用予測部224は、費用データベース33にアクセスして、管理番号003のアメリカの特許を維持する場合の年金の支払額が3,760ドル+100ドル=3,860ドルであると算出する。また、費用予測部224は、図3の放棄率モデルから、アメリカの特許権の7.5年次の放棄率は30%であると特定し、管理番号003の特許権について発生する維持費用の予測額を、3,860ドル×0.7=2,702ドルとして算出する。また、費用予測部224は、費用データベース33に記録された為替レートに基づいて、ドルを円に換算する。例えば、1ドルが¥130の場合、費用予測部224は、管理番号003のアメリカの特許権について発生する年金の予測額を、2,702ドル×130円=351,260円として算出する。
【0076】
費用予測部224は、期間設定51Dで設定された所定期間に応じて、管理番号001~管理番号003について、次回以降に発生する年金の予測額を算出する。本例においては、年金の予測額を算出する期間が5年に設定されているので、例えば管理番号001については、費用予測部224は、5年次~8年次の年金の予測額を算出する。
【0077】
例えば、管理番号001の5年次の年金の予測額は、21,900円×0.9×0.8=15,768円となる。なお、0.9は4年次の維持率であり、0.8は5年次の維持率((100(%)-20(%))/100)である。管理番号001の6年次~8年次の年金の予測額についても同様に算出される。
【0078】
なお、管理番号001~003以外にも権利者Aの産業財産権が存在する場合には、同様に維持費用の予測額が算出される。
【0079】
そして、費用予測部224は、費用予測対象の産業財産権の維持費用の予測額の総額を算出する。予測額は、発生年毎、納付年次毎、国毎、法域毎に基づいて合算されてもよい。
【0080】
本例においては、放棄率モデルに基づいて権利者Aの産業財産権の各々について算出された年金の予測額が合算される。なお、本例においては、費用予測部224は、各々の産業財産権について各年次の年金の支払額に放棄率を掛けている。しかしながら、例えば放棄率が同じである年次が複数存在する場合や放棄率が同じである複数の産業財産権が存在する場合は、これらの複数の産業財産権の年金の合算額を算出した後に、放棄率を掛けてもよい。
【0081】
本例のように放棄率モデルに基づいて算出される年金の予測額は、費用予測対象の産業財産権の各々(または複数)について、支払うべき年金(維持費用)に放棄率を乗じることにより重み付けを行い、重みづけした維持費用を合算することにより算出された期待値である。
【0082】
続いて、出力部225は、算出された年金の予測額を含む予測結果を出力する(STEP5)。予測結果には、納付予定日に関する情報等も含まれる。例えば図8に示されるように、維持費用予測画面は、予測結果表示領域51Fを有する。算出された年金の予測額は、予測結果表示領域51Fに表示される。本例においては、図8に例示されるように、2023年から2027年の5年間に発生する年金の予測額が発生年毎に表示されている。
【0083】
本実施形態に係る制御装置2によれば、ユーザは、複数の計算モデルの中から費用予測に用いる計算モデルを選択できるので、ユーザの要求に即した産業財産権の維持費用の予測額を算出できる。
【0084】
また、本実施形態においては、権利者の情報により費用予測対象の産業財産権を特定している。これにより、ユーザは、例えば自身を権利者として指定することにより、自身が保有する産業財産権において将来発生する維持費用の予測額を算出できる。あるいは、ユーザは、例えば他社を権利者として指定することにより、他社が保有する産業財産権において将来発生する維持費用の予測額を算出でき、競合企業の動向を示す一つの指針として利用することができる。
【0085】
費用予測対象の産業財産権を特定する情報としては、権利者の情報以外の情報が使用されてもよい。例えば、産業財産権の産業分野や権利者の事業種別の情報により費用予測対象の産業財産権が特定されてもよい。これにより、ユーザは、特定の産業分野または特定の業界において将来発生する維持費用の予測額を算出し、特定の産業分野または特定の業界の動向を示す一つの指針として利用できる。
【0086】
また、本実施形態においては、費用予測に用いる計算モデルとして選択された放棄率モデルに基づいて維持費用の予測額が算出されている。放棄率モデルを用いる場合には、維持費用の予算額として放棄率に基づいて放棄件数の期待値を計算するだけであるため、制御装置2の計算負荷が軽い。
【0087】
なお、本実施形態では、予測結果表示領域51Fには、発生年毎の維持費用の予測額が表示されている。しかしながら、図9に例示されるように、維持費用の予測額は、各発生年において国ごとの予測額が明確になるように表示されてもよい。あるいは、維持費用の予測額は、各発生年において年次ごとの予測額が明確になるように表示されてもよい。
【0088】
また、本実施形態では、STEP2において、モデル特定部222は、計算モデルデータベース32にアクセスし、計算モデルデータベース32に蓄積された複数の計算モデルの中から計算モデルを特定している。しかしながら、モデル特定部222は、例えば、計算モデルデータベース32にアクセスし、費用予測に用いる計算モデルが蓄積されていないと判断した場合には、管理情報データベース31または産業財産権情報データベース300にアクセスし、計算モデルを生成するように構成されてもよい。
【0089】
例えば、モデル特定部222は、管理情報データベース31からまたは産業財産権情報データベース300から、権利者Aの産業財産権に関する書誌情報を取得し、過去に権利者Aについて各国で各年次において産業財産権を維持または放棄したかの情報を取得する。そして、モデル特定部222は、過去の各国の各年次において維持費用の支払いを不要とした確率(放棄率)を算出し、算出された確率に基づき、権利者Aに関する放棄率モデルを生成する。モデル特定部222により生成された放棄率モデルは、出力部225により、計算モデルデータベース32に出力される。なお、モデル特定部222は、権利者Aに限定されず全ての権利者の産業財産権に関する書誌情報に基づいて、放棄率を算出してもよい。
【0090】
このような構成によれば、計算モデルデータベースに登録されていない計算モデルを適宜追加可能である。
【0091】
上記の実施形態において、制御装置2は、図1に例示されるように、計算モデルを更新するモデル更新部226を備えてもよい。モデル更新部226は、制御装置2のプロセッサ22がコンピュータプログラムを実行することで実現される機能ブロックである。モデル更新部226は、計算モデルを更新する情報に基づき計算モデルを更新するように構成されうる。計算モデルを更新する情報は、ユーザにより入力装置4を操作して入力され、情報受付部221により取得される。
【0092】
例えば図8に示されるように、維持費用予測画面には、計算モデルの内容を表示するための計算モデル表示アイコン51Gが表示されている。ユーザは、入力装置4を操作して、計算モデル表示アイコン51Gをクリック等によって操作する。これにより、図10に例示されるように、表示部51には計算モデルの内容が表示される計算モデル内容表示画面が表示される。本例においては、モデル特定部222により生成された放棄率モデルの内容が表示されている。
【0093】
例えば図10に示されるように、計算モデル内容表示画面には、計算モデルの内容を編集するための編集アイコン51Hが表示されている。ユーザは、入力装置4を操作して、編集アイコン51Hをクリック等によって操作する。これにより、ユーザは、入力装置4を操作して、放棄率の値を自由に入力・変更可能となっている。例えば、本例においては、ユーザは、入力装置4を操作して、日本の4年次の放棄率を10%から20%に編集する。そして、ユーザは、編集した値を登録したい場合は、入力装置4を操作して、登録アイコン51Iをクリック等によって操作する。これにより、計算モデルデータベース32に記録された放棄率モデルが、ユーザにより編集された放棄率モデルに更新される。具体的には、制御装置2は、モデル更新部226により、ユーザにより編集された計算モデルを出力部225から計算モデルデータベース32に出力する。これにより、計算モデルデータベース32に記憶された放棄率モデルは、編集された計算モデルに書きかえられる。
【0094】
なお、制御装置2は、編集した計算モデルを更新せずに、新たな計算モデルとして計算モデルデータベース32に登録できるように構成されてもよい。
【0095】
このような構成によれば、ユーザは、計算モデルの内容を編集できるので、ユーザの希望に沿った計算モデルに変更できる。
【0096】
なお、図10に例示されるように、計算モデル内容表示画面には、再計算アイコン51Jが表示されてもよい。ユーザが入力装置4を操作して、再計算アイコン51Jがクリック等されると、図11に例示されるように、例えば、計算モデル内容表示画面において、編集された計算モデルに基づいて再計算された年金の予測額が再計算結果表示領域51Kに表示される。これにより、ユーザは編集された計算モデルに基づいて再計算された年金の予測額を確認しながら計算モデルの編集や登録を行うことができる。なお、再計算後の年金の予測額の結果は、維持費用予測画面に表示されてもよい。
【0097】
上記の実施形態において、情報受付部221は、費用予測に用いられる計算モデルとして少なくとも二つ以上の計算モデルに関する情報を取得するように構成されてもよい。費用予測部224は、選択された二つ以上の計算モデルそれぞれに対応する予測額を算出するように構成される。出力部225は、算出された二つ以上の予測額を含む予算結果を出力するように構成される。
【0098】
例えば図12に示されるように、第一モデル選択部51C1に放棄率モデルが選択され、第二モデル選択部51C2に価値モデルが選択された場合、予測結果表示領域51Fには、放棄率モデルに基づいて算出された予測額と、価値モデルに基づいて算出された予測額が表示される。
【0099】
このような構成によれば、ユーザは、複数の計算モデルに基づいた予測額を確認できる。例えば、ユーザ自身の産業財産権の過去のデータに基づく放棄率モデルに加えて、第三者からの評価に基づく価値モデルに基づいて予測額を算出することにより、異なる視点から評価された予測額を確認できる。
【0100】
上記の実施形態において、情報受付部221は、予算額に関する情報を取得するように構成されてもよい。出力部225は、予測額と予算額との比較結果を含む予測結果を出力するように構成されうる。
【0101】
例えば図9に示されるように、維持費用予測画面は、予算額設定部51Lと比較結果表示領域51Mを有する。予算額設定部51Lは、例えば、ユーザが入力装置4を操作して、予算額を自由に入力可能となっている。本例においては、予算額として、1000万円が設定されている。比較結果表示領域51Mは、予測額と予算額との比較結果を表示する。本例においては、予算額よりも予測額の総額が上回っている旨のコメントが表示されている。
【0102】
このような構成によれば、ユーザは、予測額を予算と比較して確認できるので、必要に応じて計算モデルの変更や編集などができる。
【0103】
上記の実施形態において、制御装置2は、図1に例示されるように、放棄率モデルの放棄率を調整するための放棄率調整部227を備えてもよい。放棄率調整部227は、制御装置2のプロセッサ22がコンピュータプログラムを実行することで実現される機能ブロックである。放棄率調整部227は、ユーザに放棄率の調整を促すための情報を出力部225から出力する。例えば、放棄率調整部227は、維持費用の予測額が多い産業財産権群から優先的に放棄率の調整を行うことを提案する情報を出力部225から出力する。
【0104】
例えば図9に示されるように、維持費用予測画面は、放棄率の調整を促すリコメンド表示領域51Nを有する。リコメンド表示領域51Nには、例えば、各出願国の産業財産権案権を一つのグループとした場合に、予測額が大きい国から放棄率の調整を促すレコメンドが表示される。本例においては、2023~2027年に渡る予測額の総額が、日本よりもアメリカの方が高いため、アメリカの放棄率を優先して調整することがリコメンドされている。
【0105】
また、維持費用予測画面は、図9に例示されるように、調整された放棄率を表示する調整後放棄率表示領域51Oを有してもよい。例えば、放棄率調整部227は、現在の放棄率に所定の値が加算された値を調整後の放棄率として算出し、算出された調整後の放棄率を出力部225から出力するように構成されてもよい。本例においては、現在の放棄率に10%の放棄率を加算した値が調整後の放棄率として表示されている。調整後の放棄率は、ユーザが入力装置4を用いて任意の値に変更できるように構成されてもよい。また、放棄率調整部227は、ユーザが入力装置4を操作して入力した値に基づいて、調整後の放棄率を特定するように構成されてもよい。
【0106】
以上、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0107】
上記の実施形態では、放棄率モデルでは、放棄率が算出されている。しかしながら、放棄率モデルにおいて、放棄率の代わりに維持率が算出されてもよい。維持率が決まれば放棄率も決まるので、維持率は放棄率と等価である。すなわち、本明細書において、放棄率モデルが含む「放棄率」とは、「維持率」も含みうる。
【0108】
上記の実施形態では、記憶装置3は、制御装置2に接続されている。しかしながら、記憶装置3は、制御装置2とともに一つの装置をなす構成としてもよい。例えば、記憶装置3は、制御装置2の記憶媒体21により構成されてもよい。
【0109】
上記の実施形態では、入力装置4と表示装置5を搭載する一つのユーザの端末200が制御装置2に接続されているが、複数のユーザの端末がそれぞれ、インターネットを介して制御装置2に接続されてもよい。
【0110】
上記の実施形態では、入力装置4と表示装置5は、ユーザの端末200に搭載されている。しかしながら、図1に例示されるように、入力装置4と表示装置5は、制御装置2に搭載されてもよい。例えば、制御装置2を管理する年金管理会社の担当者(ユーザの一例)が、特定の権利者や特定の業界において将来発生する維持費用の予測額を算出するために、入力装置4と表示装置5を使用してもよい。例えば、年金管理会社の担当者は、技術分野毎に費用予測を行うことにより、技術分野間の予測額の比較や技術分野内での出願人比較が行えるようになるため、技術分野毎に適切な放棄方針をアドバイスできる。
【0111】
上記の実施形態では、存続する産業財産権として、登録済みの特許権および実用新案権を例に挙げて説明した。しかしながら、申請中で未登録の特許出願および実用新案出願の維持費用を予測するように構成されてもよい。さらに、申請中で未登録の意匠出願や商標出願の維持費用、意匠権や商標権の維持費用を予測するように構成されてもよい。
【0112】
上記の実施形態では、出願国としてて日本とアメリカの産業財産権の維持費用が算出されている。しかしながら、日本とアメリカ以外の国についても産業財産権の維持費用が算出されてもよい。
【0113】
上記の実施形態では、表示部51には、将来発生する維持費用の予測額のみが表示されている。しかしながら、将来発生する維持費用の予測額と共に、直近の維持費用の納付額が表示されてもよい。
【0114】
上記の実施形態では、制御装置2は、維持年金の納付を管理する管理会社により保有されているが、これに限定されない。例えば、制御装置2は、公報に記載された情報を検索及び閲覧可能な従来の特許実用新案検索システムであってもよい。この場合、制御装置2は、産業財産権情報データベース300を備えていてもよい。
【0115】
上記の実施形態では、モデル更新部226により、放棄率モデルが更新されている。しかしながら、価値モデル、産業分野モデル、または費用モデルが更新されてもよい。
【符号の説明】
【0116】
1 産業財産権維持費用予測システム
2 制御装置
3 記憶装置
4 入力装置
5 表示装置
21 記憶媒体
22 プロセッサ
31 管理情報データベース
32 計算モデルデータベース
33 費用データベース
51 表示部
51A 条件選択部
51B 条件設定部
51C モデル選択部
51C1 第一モデル選択部
51C2 第二モデル選択部
51D 期間設定
51E 実行アイコン
51F 予測結果表示領域
51G 計算モデル表示アイコン
51H 編集アイコン
51I 登録アイコン
51J 再計算アイコン
51K 再計算結果表示領域
51L 予算額設定部
51M 比較結果表示領域
51N リコメンド表示領域
51O 調整後放棄率表示領域
100 インターネット
200 端末
221 情報受付部
222 モデル特定部
223 情報取得部
224 費用予測部
225 出力部
226 モデル更新部
227 放棄率調整部
300 産業財産権情報データベース

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12