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特開2024-114396スクリュープレス汚泥脱水装置及びその運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114396
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】スクリュープレス汚泥脱水装置及びその運転方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/125 20190101AFI20240816BHJP
【FI】
C02F11/125 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020142
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002451
【氏名又は名称】積水アクアシステム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500038352
【氏名又は名称】柳河エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】玉田 友厚
(72)【発明者】
【氏名】楢井 淳一
【テーマコード(参考)】
4D059
【Fターム(参考)】
4D059AA03
4D059BE04
4D059BE54
4D059BJ01
4D059EA20
4D059EB20
(57)【要約】
【課題】スクリュープレス汚泥脱水装置において、安定した脱水運転を行い、かつ、装置の損傷も少ない、運転制御方法を実現する。
【解決手段】スクリュープレス汚泥脱水装置(100)の制御部(30)は、スクリュー軸(12a)の駆動モータ(20)の電流値を計測し、計測された電流値が、定格電流値以下の設定電流値を超えるときは、スクリュー軸(12a)の回転数を増加させる制御を行う。
【選択図】図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
汚泥を脱水して排水するスクリュープレス汚泥脱水装置であって、
汚泥の投入口と、脱水された汚泥の排出口と、汚泥より脱水された水の排出口とを備えた本体と、
前記本体内に配置され、スクリュー軸とスクリュー羽根とを備えたスクリューと、
前記本体内で、前記スクリューの外周に配置され、水をろ過するスクリーンと、
前記スクリュー軸を駆動する駆動モータと、
前記駆動モータを制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記駆動モータの電流値を計測し、計測された電流値が、定格電流値以下の設定電流値を超えるときは、前記スクリュー軸の回転数を増加させる制御を行う、スクリュープレス汚泥脱水装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記駆動モータの電流値を計測し、計測された電流値が、前記設定電流値未満のときは、前記スクリュー軸の回転数を減少させる制御を行う、請求項1に記載のスクリュープレス汚泥脱水装置。
【請求項3】
前記設定電流値は、前記駆動モータの定格電流値の70%以上95%以下である、請求項1に記載のスクリュープレス汚泥脱水装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記駆動モータをPID制御する、請求項1~3のいずれか1項に記載のスクリュープレス汚泥脱水装置。
【請求項5】
汚泥を脱水して排水するスクリュープレス汚泥脱水装置の運転制御方法であって、前記スクリュープレス汚泥脱水装置は、
汚泥の投入口と、脱水された汚泥の排出口と、汚泥より脱水された水の排出口とを備えた本体と、
前記本体内に配置され、スクリュー軸とスクリュー羽根とを備えたスクリューと、
前記本体内で、前記スクリューの外周に配置され、水をろ過するスクリーンと、
前記スクリュー軸を駆動する駆動モータを備え、
前記運転制御方法は、
前記駆動モータの電流値をモニターし、前記駆動モータの電流値が、定格電流値以下の設定電流値を超えるときは、前記スクリュー軸の回転数を増加させる、スクリュープレス汚泥脱水装置の運転制御方法。
【請求項6】
スクリュープレス汚泥脱水装置の運転開始後、前記駆動モータの電流値が、前記設定電流値を超えた後で、前記設定電流値未満となったときは、前記スクリュー軸の回転数を減少させる、請求項5に記載のスクリュープレス汚泥脱水装置の運転制御方法。
【請求項7】
前記設定電流値は、前記駆動モータの定格電流値の70%以上95%以下である、請求項5に記載のスクリュープレス汚泥脱水装置の運転制御方法。
【請求項8】
PID制御により、前記駆動モータは制御される、請求項5~7のいずれか1項に記載のスクリュープレス汚泥脱水装置の運転制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スクリュープレス汚泥脱水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理、産業廃棄物処理などにおいて発生する汚泥を、脱水処理を行って減量化し、埋立処分、焼却、又は再利用することが行われている。脱水された汚泥は、脱水ケーキと呼ばれる。脱水ケーキに対して、埋立、焼却などを行うためには、出来る限り低い含水率とすることが好ましい。スクリュープレス脱水装置は、一般的に低い含水率まで脱水できることが知られており、汚泥脱水装置として使用される例が増加している(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平4-105795号公報
【特許文献2】特許第6008288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スクリュープレス脱水装置は、パンチングプレート(スクリーン)で構成された筐体内にスクリューシャフトを配置している。スクリューシャフトの回転に伴い、汚泥は筐体内をスクリューシャフトの軸方向に搬送され、その間にスクリューシャフトと筐体内周との間で圧搾され、汚泥内の水分がパンチングプレートの穴から筐体外に排出される。
【0005】
脱水処理される汚泥には、下水汚泥、産業廃水の活性汚泥などのように有機物の比率が比較的高い汚泥(以下、有機性汚泥と呼ぶ)や、浄水汚泥、無機系廃水の凝集沈殿汚泥などのように有機物の比率が比較的低い汚泥(以下、無機性汚泥と呼ぶ)がある。
【0006】
特に無機性汚泥の場合、含水率が低下しやすい反面、スクリュープレス内の圧力が高まり、スクリューシャフトを駆動するモータに大きなトルクがかかり、モータ電流値が定格電流値を超えて、モータが停止する場合がある。駆動モータが再起動できない場合には、スクリュープレス脱水装置を分解して、内部の汚泥を取り除かなければならない場合がある。そうなると、長時間スクリュープレス脱水装置の運転を停止する必要が生じる。また、トルクが高いと、パンチングプレートやスクリューシャフトのスクリューが変形、破損する場合がある。この場合には、修理に費用と時間がかかる。
【0007】
一般的な機器においては、モータの負荷が大きすぎる場合には、モータの回転数を低下させることによって、モータの負荷を低下させることができる。
【0008】
しかし、汚泥をスクリュープレス脱水装置によって処理する場合、モータの回転数を下げることによって、汚泥の滞留時間が長くなるため、含水率が低下し、逆にモータの負荷が大きくなり、モータ電流値は増加する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1観点のスクリュープレス汚泥脱水装置は、汚泥を脱水して排水する。スクリュープレス汚泥脱水装置は、
汚泥の投入口と、脱水された汚泥の排出口と、汚泥より脱水された水の排出口とを備えた本体と、
前記本体内に配置され、スクリュー軸とスクリュー羽根とを備えたスクリューと、
前記本体内で、前記スクリューの外周に配置され、水をろ過するスクリーンと、
前記スクリュー軸を駆動する駆動モータと、
前記駆動モータを制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記駆動モータの電流値をモニターし、前記駆動モータの電流値が、定格電流値以下の設定電流値を超えるときは、前記スクリュー軸の回転数を増加させる制御を行う。
【0010】
第2観点のスクリュープレス汚泥脱水装置は、第1観点の脱水装置において、前記制御部は、前記駆動モータの電流値を計測し、計測された電流値が、前記設定電流値未満のときは、前記スクリュー軸の回転数を減少させる制御を行う。
第3観点のスクリュープレス汚泥脱水装置は、第1又は第2観点の脱水装置において、前記設定電流値は、前記駆動モータの定格電流値の70%以上95%以下である。
第4観点のスクリュープレス汚泥脱水装置は、第1~第3観点のいずれかの脱水装置において、前記制御部は、前記駆動モータをPID制御する。
第5観点のスクリュープレス汚泥脱水装置の運転制御方法は、汚泥を脱水して排水するスクリュープレス汚泥脱水装置の運転制御方法であって、前記スクリュープレス汚泥脱水装置は、
汚泥の投入口と、脱水された汚泥の排出口と、汚泥より脱水された水の排出口とを備えた本体と、
前記本体内に配置され、スクリュー軸とスクリュー羽根とを備えたスクリューと、
前記本体内で、前記スクリューの外周に配置され、水をろ過するスクリーンと、
前記スクリュー軸を駆動する駆動モータを備え、
前記運転制御方法は、
前記駆動モータの電流値をモニターし、前記駆動モータの電流値が、定格電流値以下の設定電流値を超えるときは、前記スクリュー軸の回転数を増加させる。
第6観点のスクリュープレス汚泥脱水装置の運転制御方法は、第5観点の方法であって、スクリュープレス汚泥脱水装置の運転開始後、前記駆動モータの電流値が、前記設定電流値を超えた後で、前記設定電流値未満となったときは、前記スクリュー軸の回転数を減少させる。
第7観点のスクリュープレス汚泥脱水装置の運転制御方法は、第5観点の方法であって、前記設定電流値は、前記駆動モータの定格電流値の70%以上95%以下である。
第8観点のスクリュープレス汚泥脱水装置の運転制御方法は、第5~第7観点のいずれかの方法であって、PID制御により、前記駆動モータは制御される。
【発明の効果】
【0011】
本開示のスクリュープレス汚泥脱水装置は、駆動モータの電流値が、定格電流値以下の設定電流値を超えるときは、前記スクリュー軸の回転数を増加させるので、汚泥の滞留時間が短くなり、汚泥の含水率が上がり、駆動モータの負荷が下がり、電流値が低下する。したがって、駆動モータが停止しにくくなり、かつ、スクリーン(パンチングプレート)やスクリューが変形、破損するリスクが低下する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】スクリュープレス汚泥脱水装置100の概略構成を示す図である。
図2A】スクリュープレス汚泥脱水装置100の運転制御方法を示すフローチャート。
図2B】スクリュープレス汚泥脱水装置100の運転制御方法を示すフローチャート(図2Aの続き)。
図3】比較例1のスクリュー駆動モータ20の電流値の時間依存性を示す図である。
図4】実施例1のスクリュー駆動モータ電流値(A)とスクリュー駆動モータ制御周波数(Hz)の時間依存性を示す図である。
図5】実施例2のスクリュー駆動モータ電流値(A)とスクリュー駆動モータ制御周波数(Hz)の時間依存性を示す図である。
図6】実施例3のスクリュー駆動モータ電流値(A)とスクリュー駆動モータ制御周波数(Hz)の時間依存性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.スクリュープレス汚泥脱水装置の構成
本開示のスクリュープレス汚泥脱水装置100は、図1に示すように、汚泥貯槽40と、汚泥供給ポンプ41と、反応槽43と、凝集槽44と、脱水機10とを備えている。
【0014】
汚泥は、汚泥貯槽40より、汚泥供給ポンプ41により、反応槽43に運ばれ、さらに、凝集槽44を経て、脱水機10の汚泥投入口46に供給される。反応槽43及び凝集槽44は、それぞれ撹拌機42を備えている。ここでは、汚泥には凝集剤が添加され調質される。
【0015】
脱水機10は、脱水機本体11と、スクリーン13と、スクリュー12と、スクリーンと、背圧板16と、シリンダ17と、汚泥投入口46と、汚泥排出口51と、スクリュー駆動モータ20と、制御部30とを備えている。
【0016】
汚泥投入口46には、汚泥の量又はレベルを計測する汚泥レベル計45が配置されている。
【0017】
脱水機本体11の中に、円筒状のスクリーン13が配置され、さらに、スクリーン13の中に、スクリュー12が配置されている。スクリーン13は、穴の開いた、メッシュ状の金属材料で構成されている。スクリーン13は、パンチングメタルで構成されている。スクリュー12は、スクリュー軸12aと、スクリュー軸12aの外側に配置されたスクリュー羽根12bとを含んでいる。スクリュー軸12aは、汚泥投入口46から汚泥排出口51に向かって次第に太くなっている。スクリュー羽根12bは、スクリュー軸12aの回りに、連続的に、かつ、らせん状に、取り付けられている。汚泥は、汚泥投入口46より脱水機10に投入されると、スクリュー12の回転によって、スクリーン13の内部を汚泥投入口46から汚泥排出口51側に運搬される。この過程で汚泥はスクリュー軸12aとスクリーン13との間で圧搾される。スクリュー軸12aとスクリーン13との間の隙間は、汚泥排出口51側に向かって次第に狭くなっている。これにより、汚泥内の水分がスクリーンの穴から排出される一方で、汚泥排出口51から脱水ケーキが押し出される。
【0018】
汚泥排出口51は、脱水機本体11の脱水リング15と、背圧板16の間に設けられている。背圧板16はシリンダ17によって、汚泥排出口51を通過する汚泥に圧力を調整して印加できるように構成されている。シリンダ17は、エアーシリンダ、又は油圧シリンダである。
【0019】
スクリュー駆動モータ20は、スクリュー軸12aを回転させる。モータ20の回転は、チェーン21、スプロケット18を経て、スクリュー軸12aに伝達される。
【0020】
本実施形態のスクリュー駆動モータ20は、例えば、三相モータ(200V、60Hz)である。モータ20の定格電流値は、例えば、0.75kW:3.58A、1.5kW:6.43A、2.2kW:8.96A、3.7kW:14.3A、5.5kW:20.9A、7.5kW:28.8A、11kW:42.0A、である。
【0021】
制御部30は、スクリュー駆動モータ20を制御する。制御方法としては、シーケンス制御、比例制御、PID制御が適用可能である。応答性の観点から、PID制御が最も好ましい。
【0022】
図1の制御部30は、PID制御を行う場合である。制御部30は、PID調節計31とインバーター32とを有する。PID調節計31は、運転指令周波数信号(回転指示)をインバーター32に送る。インバーター32は、モータ20を駆動する。インバーター32は、スクリュー駆動モータ20の電流信号(負荷)を計測(モニター)し、PID調節計31に送る。PID調節計31は、スクリュー駆動モータ20の電流信号に基づいてPIDを決定し、運転指令周波数信号(回転指示)をインバーター32に送る。このようなループが繰り返すことにより、スクリュー駆動モータ20の回転数が制御される。
【0023】
2.スクリュープレス汚泥脱水装置の運転制御方法
スクリュープレス汚泥脱水装置100の運転制御方法を、図2A、2Bのフローチャートを用いて、説明する。
【0024】
汚泥供給ポンプ41が駆動し、反応槽43、凝集槽44を経て、汚泥投入口に汚泥供給が開始される(S110)。汚泥レベル計45によって汚泥レベルが検出され、汚泥レベルが所定量に達しているか否かが判断される(S111)。汚泥レベルが所定量に達している場合、又は汚泥レベル計が汚泥を検知した場合には、スクリュー駆動モータ20が、初動運転される(S112)。初動運転とは、一定時間、モータ20の一定周波数での運転をいう。たとえば、10分間、20Hzでスクリュー駆動モータ20を駆動する。
【0025】
脱水機10の運転中、スクリュー駆動モータ20の駆動中は、制御部30は、スクリュー駆動モータ20の電流値(負荷)を、常時モニター(計測)する。制御部30は、モータ20の電流値が、モータ20の定格電流値以下となるように、モータ20の制御周波数を制御する。
【0026】
具体的には、ステップS113において、計測(モニター)されたスクリュー駆動モータ20の電流値が設定電流値と比較される。そして計測された電流値が設定電流値を超える場合には、モータ20の制御周波数を増加させる(S114)。モータ20の制御周波数を増加させることによって、脱水機10の内部の脱水ケーキを迅速に脱水機10の外に排出するとともに、脱水ケーキの含水率を高め、負荷を低下させることができる。
【0027】
逆に、ステップS113において、計測されたスクリュー駆動モータ20の電流値が設定電流値以下の場合には、モータ20の制御周波数を減少させる(S115)。モータ20の制御周波数を減少させることによって、脱水機10の内部の脱水ケーキの搬送速度を遅くして、脱水ケーキの含水率を低下させ、負荷を増加させることができる。
【0028】
スクリュー駆動モータ20の設定電流値は、定格電流値以下に設定する。脱水ケーキの含水率を低下させるためには、定格電流値に近い程よい。設定電流値は、望ましくは定格電流値の70~95%である。設定電流値を定格電流値の95%以上に設定すると、モータ20へ常時大きな負荷が掛かるため、モータ20の寿命が短くなり好ましくない。また、設定電流値を定格電流値の95%以上に設定すると、制御によっては、一時的に定格電流値を超える可能性がある。逆に設定電流値を定格電流値の70%未満とすると、脱水機10の負荷が低すぎて、脱水ケーキの含水率が十分低下しないことが考えられる。汚泥の処理量は、脱水ケーキの含水率に反比例する傾向にある。設定電流値が定格電流値に近い程、汚泥の処理量は増加する傾向にある。
【0029】
ステップS114、ステップS115のいずれの場合であっても、次は、ステップS116に進む。ステップS116では、汚泥レベルを確認して、汚泥レベルが所定量以上の場合(又は汚泥レベル計が汚泥を検知した場合)は、脱水機10の運転を継続して、ステップS113に戻る。このように、汚泥レベルが所定量以下となるまで、ステップS113~S116が繰り返される。言い換えれば、脱水機10の運転が継続される。
【0030】
3.スクリュープレス汚泥脱水装置を用いた汚泥の処理例
(1)比較例1
スクリュープレス汚泥脱水装置100を用いて、無機の凝集沈殿汚泥を脱水した。モータ20の制御周波数を、一定の10Hzに設定して、運転を実施した。その時のスクリュー駆動モータの電流値の時間依存性を図3に示す。時間の経過とともに、徐々にモータの電流値が上昇し、定格電流値の8.96A以上になった。
【0031】
(2)実施例1(シーケンス制御)
スクリュープレス汚泥脱水装置100を用いて、無機の凝集沈殿汚泥を脱水した。スクリュー駆動モータの定格電流値は8.96Aで、上限電流値を8.2A、下限電流値を7.8Aに設定した。シーケンス制御により、スクリューシャフトの初期回転数(周波数)を0.4rpm(20Hz)とし、回転数(周波数)は電流値により10分間ごとに10%増減するように運転した。スクリュー駆動モータ電流値(A)とスクリュー駆動モータ制御周波数(Hz)の時間依存性を図4に示す。回転数(周波数)は徐々に低下し約1時間後上限電流値8.2Aに達し、以後電流値は7.6~8.5A、回転数(周波数)は0.20~0.30rpm(10~15Hz)で安定した運転を達成できた。脱水ケーキの含水率は50%前後であった。
【0032】
回転数(周波数)を増減する時間間隔が短い程速やかに制御できるが、回転数(周波数)を変更した影響が表れる迄にある程度時間がかかるため、短い程良いというものではなく、適切な範囲がある。また、回転数(周波数)の増減幅も大きい程速やかに制御できるが、これも影響が表れるのに時間がかかるため、増減幅が大きすぎると逆に不安定になる場合がある。
【0033】
スクリュー駆動モータ20の回転数(周波数)は電流値により、望ましくは2~20分間程度毎に、より望ましくは5~10分毎に、望ましくは現状の5~20%程度、より望ましくは8~12%増減させるように設定する。
【0034】
実施例1の制御方法では、一定時間ごとにスクリュー駆動モータの周波数を増減させるため、PID制御のような速やかな制御ができない欠点がある
【0035】
(3)実施例2(運転開始時からPID制御)
スクリュープレス汚泥脱水装置100を用いて、無機の凝集沈殿汚泥を脱水した。運転開始時から、スクリュー駆動モータ電流値によるスクリュー駆動モータ制御周波数のPID制御運転を行った。スクリュー駆動モータ電流値(A)とスクリュー駆動モータ制御周波数(Hz)の時間依存性を、図5に示す。駆動モータの設定電流値は7.50Aである。制御周波数の下限は6Hzに設定しているため、しばらくの間6Hzでの運転が継続した。スクリュープレス内に汚泥が充満するのに従い、スクリュー駆動モータの電流値が上昇傾向になったため、制御周波数も上昇し、スクリュー駆動モータの回転数も増加した。運転開始後15分程度で設定値の7.50Aに達し、以降電流値は6.8~7.7Aの範囲で、制御周波数は10~18Hzの間で変動しながらも、以降安定した運転を継続することができた。脱水ケーキの含水率は、実施例1と同等の50%前後であった。
【0036】
PID制御を実施することにより、実施例1の場合より短時間で安定運転を実施することができた。
【0037】
(4)実施例3(定速回転からPID制御)
スクリュープレス汚泥脱水装置100を用いて、無機の凝集沈殿汚泥を脱水した。
【0038】
実施例3では、比較例1と同様に、モータ20の制御周波数を一定の20Hzに設定して運転を開始した。スクリュー駆動モータ20の電流値が定格電流値以上になったときに、PID制御運転に切り替えた。実施例3のスクリュー駆動モータ電流値(A)とスクリュー駆動モータ制御周波数(Hz)の時間依存性を、図6に示す。モータの設定電流値は7.20Aとした。またモータの上限周波数は20Hzに設定した。
【0039】
運転開始当初は、電流値が8.0A以上と設定値を越えていたため、スクリュー駆動モータの回転数が上限の20Hz迄上昇した。その後電流値が7.2Aを下回ると周波数は徐々に低下し、以降周波数は10~17Hzを上下し、電流値は6.8~7.5Aの範囲で安定した。
【0040】
4.特徴
本開示のスクリュープレス汚泥脱水装置は、スクリュー軸12aを駆動するモータ20の電流値を常時モニターする。モニターした電流値が、モータ20の定格電流値以下の設定電流値に近づくように、スクリュー軸12aの回転数を制御する。
【0041】
具体的には、モニター(計測)した電流値が、設定電流値を超えるときは、スクリュー軸12aの回転数を増加させる制御を行う。
【0042】
モータ20が定格電流値以上になるのを防ぐことができ、これに伴うモータ20の停止や、スクリーン13とスクリュー12の変形または破損等のトラブルを防止することができる。
【0043】
逆に、モニター(計測)した電流値が、設定電流値以下のときは、スクリュー軸12aの回転数を減少させる制御を行う。
【0044】
スクリュー軸12aを駆動するモータ20の電流値を、モータ20の定格電流値以下で、かつ、設定電流値に近い値に制御することにより、脱水ケーキの含水率が低い状態で、安定した脱水機の運転が継続できる。
【0045】
以上、本開示の複数の実施例について説明したが、本開示は上記実施例、実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本開示のスクリュープレス汚泥脱水装置は、有機性汚泥及び無機性汚泥の脱水処理において、モータ電流値の安定した状態で長時間、装置の破損少なく運転することができ、含水率の低い脱水ケーキを製造できる。
【符号の説明】
【0047】
10 脱水機
11 脱水機本体
12 スクリュー
12a スクリュー軸
12b スクリュー羽根
13 スクリーン
15 脱水リング
16 背圧板
17 シリンダ
18 スプロケット
20 スクリュー駆動モータ
30 制御部
31 PID調節部
32 インバーター
40 汚泥貯留槽
41 汚泥供給ポンプ
42 撹拌機
43 反応槽
44 凝集槽
45 汚泥レベル計
46 汚泥投入口
51 汚泥排出口
100 スクリュープレス汚泥脱水装置
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6