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  • 特開-水門開閉装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114398
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】水門開閉装置
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/36 20060101AFI20240816BHJP
   E02B 7/20 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
E02B7/36
E02B7/20 109
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020147
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000196705
【氏名又は名称】西部電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】笹田 翔太
(72)【発明者】
【氏名】永田 省吾
【テーマコード(参考)】
2D019
【Fターム(参考)】
2D019AA59
2D019BA03
2D019BA21
(57)【要約】
【課題】従来のカウンターウエイトを不要とする水門開閉装置を提供する。
【解決手段】一側で扉体11を支持する索状物12と、索状物12の一側を巻き上げて、最下位置に配されて水門を閉じている扉体11を上昇させ、水門を開く巻回手段13とを有する水門開閉装置10において、索状物12は、他端部が固定され、扉体11が最下位置に配された状態で垂れ下がる、他端部に連続した垂下領域を有し、垂下領域には、単位長さあたりの重量が索状物12の他の部位より大きい重量部22が設けられ、扉体11が最下位置に配された状態で、重量部22は、索状物12に沿って索状物12の扉体11の支持位置に近い側の一端が、垂下領域において最も低い位置に配された最下部35を基準にして索状物12の他端部とは反対側に位置する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側で扉体を支持する索状物と、前記索状物の一側を巻き上げて、最下位置に配されて水門を閉じている前記扉体を上昇させ、該水門を開く巻回手段とを有する水門開閉装置において、
前記索状物は、他端部が固定され、前記扉体が前記最下位置に配された状態で垂れ下がる、該他端部に連続した垂下領域を有し、該垂下領域には、単位長さあたりの重量が該索状物の他の部位より大きい重量部が設けられ、
前記扉体が前記最下位置に配された状態で、前記重量部は、前記索状物に沿って該索状物の前記扉体の支持位置に近い側の一端が、前記垂下領域において最も低い位置に配された最下部を基準にして該索状物の他端部とは反対側に位置することを特徴とする水門開閉装置。
【請求項2】
請求項1記載の水門開閉装置において、前記重量部は、前記扉体が前記最下位置に配された状態で、前記索状物に沿って該索状物の他端部に近い側の他端が前記一端より低い位置に配されることを特徴とする水門開閉装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の水門開閉装置において、前記重量部は、複数のウエイト部材と、隣り合う前記ウエイト部材を連結するリンク部材とを具備し、前記各ウエイト部材は、前記リンク部材に回動可能に取り付けられていることを特徴とする水門開閉装置。
【請求項4】
請求項3記載の水門開閉装置において、前記各ウエイト部材は1又は複数の金属片によって構成されていることを特徴とする水門開閉装置。
【請求項5】
請求項4記載の水門開閉装置において、前記各ウエイト部材は複数の前記金属片によって構成されていることを特徴とする水門開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水門の扉体を昇降する水門開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水路や河川等には、チェーンの巻き上げにより扉体を上昇させて水門を開き、チェーンの巻き下げにより扉体を下降させて水門を閉じる水門開閉装置が設置されている。チェーンにカウンターウエイトが取り付けられた水門開閉装置は、カウンターウエイトによって、チェーンの弛みが防止され、チェーンの巻き上げ巻き下げ時のチェーンの動作を安定させることができる(特許文献1参照)。更に、カウンターウエイトによって扉体の上昇が補助される。図4(A)、(B)に示すように、カウンターウエイト100は、チェーン101に吊り下げられた状態で、扉体102の上昇と共に下降し、扉体102の下降と共に上昇する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-065625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そのため、カウンターウエイト100を設ける場合、カウンターウエイト100が昇降できるように鉛直方向に長いスペースを確保する必要があった。また、カウンターウエイト100の昇降を案内するガイド機構を設ける必要もあった。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、従来のカウンターウエイトを不要とする水門開閉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う本発明に係る水門開閉装置は、一側で扉体を支持する索状物と、前記索状物の一側を巻き上げて、最下位置に配されて水門を閉じている前記扉体を上昇させ、該水門を開く巻回手段とを有する水門開閉装置において、前記索状物は、他端部が固定され、前記扉体が前記最下位置に配された状態で垂れ下がる、該他端部に連続した垂下領域を有し、該垂下領域には、単位長さあたりの重量が該索状物の他の部位より大きい重量部が設けられ、前記扉体が前記最下位置に配された状態で、前記重量部は、前記索状物に沿って該索状物の前記扉体の支持位置に近い側の一端が、前記垂下領域において最も低い位置に配された最下部を基準にして該索状物の他端部とは反対側に位置する。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る水門開閉装置において、索状物は、他端部が固定され、扉体が最下位置に配された状態で垂れ下がる、他端部に連続した垂下領域を有し、垂下領域には、単位長さあたりの重量が索状物の他の部位より大きい重量部が設けられ、扉体が最下位置に配された状態で、重量部は、索状物に沿って索状物の扉体の支持位置に近い側の一端が、垂下領域において最も低い位置に配された最下部を基準にして索状物の他端部とは反対側に位置するので、重量部がカウンターウエイトとして機能でき、従来のカウンターウエイトを不要にすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】(A)は本発明の一実施の形態に係る水門開閉装置が水門を閉じている様子を示す説明図であり、(B)は同水門開閉装置が水門を全開にしている様子を示す説明図である。
図2】(A)、(B)はそれぞれ、同水門開閉装置の索状物の説明図である。
図3】同水門開閉装置の索状物の説明図である。
図4】(A)、(B)はそれぞれ、従来の水門開閉装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1(A)、(B)に示すように、本発明の一実施の形態に係る水門開閉装置10は、一側で扉体11を支持する索状物12と、索状物12の一側を巻き上げて、最下位置に配されて水門を閉じている扉体11を上昇させ、水門を開く巻回手段13とを有する装置である。以下、詳細に説明する。
【0009】
水門開閉装置10は、図1(A)に示すように、基礎体14に載置された筺体15を具備している。筺体15には、モータ16と、モータ16の回転力を図示しないギア等を介して与えられて回転駆動するスプロケット17とが取り付けられている。本実施の形態において、巻回手段13はモータ16及びスプロケット17等によって構成されている。
索状物12は、一端部に扉体11が連結され、一側がスプロケット17に掛けられ、他端部が固定具18によって基礎体14に固定されている。
【0010】
基礎体14には、スプロケット19、20が回転自在に取り付けられ、索状物12はスプロケット17に掛けられた箇所から他端部までスプロケット19、20によって順にガイドされている。
索状物12は、図1(A)、図2(A)、(B)に示すように、一端に扉体11が連結され、スプロケット17、19、20に掛けられた係止部21と、係止部21の他端に一端が連結された重量部22と、重量部22の他端に一端が連結され、他端が固定具18によって基礎体14に固定された固定側連結部23を有している。よって、係止部21、重量部22及び固定側連結部23は直列に配されている。
【0011】
本実施の形態において、係止部21は、図2(A)、(B)に示すように、一般的なチェーンと同様の構造を有し、複数の内リンク24及びそれぞれ4つの内リンク24が装着された複数の外リンク25を備えている。係止部21は、係止部21(索状物12)の長手方向に並べられた複数の内リンク24からなる内リンク列が2つ並列に配され、1つの外リンク25で、一の内リンク列において隣り合った2つの内リンク24を連結すると共に、他の内リンク列において隣り合った2つの内リンク24も連結している。なお、係止部21とは異なる構造の係止部を採用可能であり、例えば、内リンク列が1つ又は3つの係止部を採用してもよい。
【0012】
重量部22は、重量部22(索状物12)の長手方向に並べられた複数のウエイト部材26、及び、重量部22の長手方向に隣り合った2つのウエイト部材26をそれぞれ連結するリンク部材27を複数備えている。本実施の形態では、各ウエイト部材26が重量部22の幅方向に密着して配された複数の板状の金属片28によって構成されている。各金属片28は形状及び大きさが等しく、本実施の形態では、各金属片28が、重量部22(索状物12)の長手方向に長く、長手方向一側に貫通孔29が長手方向他側に貫通孔30がそれぞれ形成されている。
【0013】
リンク部材27は、連結している一方のウエイト部材26の各金属片28の貫通孔30を貫通したピン31、連結している他方のウエイト部材26の各金属片28の貫通孔29を貫通したピン32、ピン31、32の一側端部が取り付けられたリンクプレート33及びピン31、32の他側端部が取り付けられたリンクプレート34を有している。ピン31とピン32は平行であり、リンクプレート33とリンクプレート34は平行である。
【0014】
各金属片28はピン31、32それぞれに対して回動可能であり、ウエイト部材26はリンク部材27に回動可能に取り付けられている。従って、重量部22は、図2(B)、図3に示すように、チェーンのように直線状になること及び湾曲した状態になることができる。本実施の形態では、ウエイト部材26の配置ピッチと係止部21における内リンク24の配置ピッチ(長手方向の配置ピッチ)が等しいが、異なっていてもよい。
【0015】
また、固定側連結部23は、固定側連結部23に作用する力(固定側連結部23にかかる重力も含む)に応じて係止部21や重量部22のように直線状や湾曲状等になることができればよく、その構造は特に限定されない。例えば、チェーンやワイヤを固定側連結部23として採用可能である。
【0016】
重量部22は係止部21及び固定側連結部23と比較して長手方向の単位長さ(例えば、1m)あたりの重量が大きい(即ち、重量部22は単位長さあたりの重量が索状物12の他の部位より大きい)。そして、索状物12は、図1(A)に示すように、扉体11が最下位置に配された状態で、係止部21においてスプロケット20に係止されている箇所から重量部22に連結されている他端までの範囲、重量部22全体及び固定側連結部23の固定具18に取り付けられた他端を除く範囲からなる領域(以下、「垂下領域」とも言う)が垂れ下がる。よって、索状物12は、扉体11が最下位置に配された状態で垂れ下がる、索状物12の他端部に連続した垂下領域を有し、重量部22は垂下領域に設けられている。
【0017】
しかも、扉体11が最下位置に配された状態で、重量部22は、一端(索状物12の長手方向に沿って索状物12の扉体11の支持位置に近い側の一端)が、垂下領域において最も低い位置に配された最下部35を基準にして索状物12の他端部(固定側連結部23の他端)とは反対側に位置する。
【0018】
そのため、最下位置の扉体11をスプロケット17の回転駆動により上昇させる際の索状物12の巻き上げを、重量部22の自重を利用して円滑に行うことができる。更に、重量部22の自重によって垂下領域の弛みが防止され、索状物12を巻き上げたり巻き下げたりする際の垂下領域の動作を安定させることが可能である。よって、重量部22はカウンターウエイトとしての機能を担うことができる。
【0019】
また、重量部22は索状物の一部でありチェーンのように振舞う(例えば、作用される力に応じて直線状となったり、湾曲したりする)ことから、従来のカウンターウエイトの昇降を案内するガイド機構のような機構を要さない。しかも、重量部22は従来のカウンターウエイトとは異なり、複数の部材から構成されているので、分割でき、これにより、重量部22の運搬の容易化や、水門開閉装置10の設置現場での重量部22の長さ調整を可能とする。
【0020】
重量部22がカウンターウエイトとして機能するためには、重量部22の単位長さあたりの重量が係止部21の単位長さあたりの重量の1.3倍以上が好ましく、1.5倍以上がより好ましく、2.0倍以上が更に好ましい。係止部21の単位長さあたりの重量に対する重量部22の単位長さあたりの重量が大きくなるのに伴って、重量部22は基本的に太くなることを考慮すると、重量部22の単位長さあたりの重量は係止部21の単位長さあたりの重量の5倍以下が現実的であると考えられる。
【0021】
ここで、本実施の形態において、重量部22は、扉体11が最下位置に配された状態で、重量部22(索状物12)の長手方向に沿って索状物12の他端部に近い側の他端が遠い側の一端より低い位置に配されるので、重量部22がカウンターウエイトの機能を効率的に担うことが可能である。重量部22がカウンターウエイトの機能(索状物12の巻き上げ巻き下げ時の索状物12の動作の安定化や扉体11の上昇の補助)を安定的に担うという観点では、図1(A)に示すように、扉体11が最下位置に配された状態で、重量部22全体が最下部35を基準にして索状物12の他端部とは反対側に位置するのが好適である。本実施の形態では、図1(B)に示すように、扉体11が最上位置に配され水門が全開の状態で、索状物12の垂下領域において最も低い位置に配された部分を基準に、重量部22全体が索状物12の他端部とは反対側に位置する。
【0022】
本実施の形態のように索状物12が重量部22を備えることによって、図1(A)、(B)に示すように、索状物12の他端部を基礎体14等に固定でき、従来のカウンターウエイトの採用によって生じる当該カウンターウエイトを昇降可能にするスペースの確保を不要とする。
また、ウエイト部材26を構成する各金属片28は形状及び大きさが等しいことから、金属片28の数を変えることによって、重量部22の単位長さあたりの重量(ウエイト部材の重量)を容易に調整することや、幅が異なる重量部に対応するウエイト部材を容易に構成することができる。
【0023】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、索状物の一端部を基礎体に固定し、扉体を吊り下げている動滑車を索状物の一端部から距離を有する部分に掛けるようにして、索状物の一側で扉体を支持してもよい。
また、各ウエイト部材を金属片によって構成する必要はなく、例えば、液体が入れられた中空体をウエイト部材に採用することができる。ウエイト部材を金属片によって構成する場合、1つのウエイト部材を1つの金属片によって構成してもよい。
【符号の説明】
【0024】
10:水門開閉装置、11:扉体、12:索状物、13:巻回手段、14:基礎体、15:筺体、16:モータ、17:スプロケット、18:固定具、19、20:スプロケット、21:係止部、22:重量部、23:固定側連結部、24:内リンク、25:外リンク、26:ウエイト部材、27:リンク部材、28:金属片、29、30:貫通孔、31、32:ピン、33、34:リンクプレート、35:最下部
図1
図2
図3
図4