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特開2024-1144組織メタロプロテイナーゼ阻害物質3型(TIMP-3)の変異体、組成物、及び方法
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  • 特開-組織メタロプロテイナーゼ阻害物質3型(TIMP-3)の変異体、組成物、及び方法 図1
  • 特開-組織メタロプロテイナーゼ阻害物質3型(TIMP-3)の変異体、組成物、及び方法 図2
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  • 特開-組織メタロプロテイナーゼ阻害物質3型(TIMP-3)の変異体、組成物、及び方法 図5
  • 特開-組織メタロプロテイナーゼ阻害物質3型(TIMP-3)の変異体、組成物、及び方法 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001144
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】組織メタロプロテイナーゼ阻害物質3型(TIMP-3)の変異体、組成物、及び方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/15 20060101AFI20231226BHJP
   C07K 14/46 20060101ALI20231226BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231226BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20231226BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231226BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20231226BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 19/06 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 15/08 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 31/06 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 33/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 5/40 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 38/57 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
C12N15/15 ZNA
C07K14/46
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P43/00 111
A61P29/00
A61P19/02
A61P19/08
A61P9/10
A61P9/04
A61P11/06
A61P11/00
A61P1/04
A61P17/06
A61P9/00
A61P29/00 101
A61P17/00
A61P19/06
A61P1/02
A61P27/02
A61P35/00
A61P17/02
A61P19/10
A61P37/02
A61P37/08
A61P15/08
A61P1/16
A61P25/00
A61P9/12
A61P31/06
A61P7/00
A61P11/02
A61P33/00
A61P31/14
A61P31/16
A61P5/40
A61P37/06
A61P21/00
A61K38/57
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023172572
(22)【出願日】2023-10-04
(62)【分割の表示】P 2022075798の分割
【原出願日】2014-03-13
(31)【優先権主張番号】61/782,613
(32)【優先日】2013-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/798,160
(32)【優先日】2013-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/802,988
(32)【優先日】2013-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/940,673
(32)【優先日】2014-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョンフン・スン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン・チャールズ・オニール
(72)【発明者】
【氏名】ランドル・アール・ケッチェム
(72)【発明者】
【氏名】ランデイー・アイラ・ヘクト
(72)【発明者】
【氏名】エドワード・ジェイ・ベロウスキ
(72)【発明者】
【氏名】マーク・レオ・マイケルズ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】MMP活性の治療的阻害剤としてのTIMP-3を提供する。
【解決手段】ある特定のアミノ酸配列を有するTIMP-3突然変異タンパク質、変異体、及び誘導体と、それらをコードする核酸と、それらの作成方法及び使用方法とが開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2に示されるTIMP-3の成熟領域に対してアミノ酸配列が少なくとも95%同一である成熟領域を有し、少なくとも1つの突然変異を有し、前記突然変異がK45E;K45N;K45S;V47T;K49N;K49E;K49S;K50N;L51T;L51N;V52T;K53T;P56N;F57N;G58T;T63E;T63N;K65T;K65N;M67T;K68S;T74E;K75N;P77T;H78D;H78E;H78N;Q80E;Q80T;K94N;E96T;E96N;V97N;N98T;K99T;D110N;K112T;Q126N;K133S;R138T;R138N;H140T;T158N;K160T;T166N;M168T;G173T;H181N;A183T;R186N;R186Q、R186E、K188T;K188Q、K188E、P201N;K203T;I205F、I205Y、A208G、A208V、及びA208Yからなる群より選択される、単離されたTIMP-3突然変異タンパク質。
【請求項2】
配列番号2に示されるTIMP-3の成熟領域に対してアミノ酸配列が少なくとも95%同一の成熟領域を有し、突然変異F57N及び少なくとも1つのさらなる突然変異を有し、前記突然変異はTIMP-3の1つ以上のK残基での置換である、単離されたTIMP-3突然変異タンパク質。
【請求項3】
前記さらなる突然変異が前記アミノ酸配列中にN結合型グリコシル化部位を導入する、請求項2に記載のTIMP-3突然変異タンパク質。
【請求項4】
配列番号2に示されるTIMP-3の成熟領域に対してアミノ酸配列が少なくとも90%同一の成熟領域を有し、前記突然変異タンパク質が、少なくとも1つのN結合型グリコシル化部位を前記アミノ酸配列の中に導入する少なくとも1つの突然変異を有する、単離されたTIMP-3突然変異タンパク質。
【請求項5】
2、3、4、5、または6のN結合型グリコシル化部位が導入された、請求項4に記載のTIMP-3突然変異タンパク質。
【請求項6】
前記N結合型グリコシル化部位が、アミノ酸48~54を含む領域;アミノ酸93~100を含む領域;アミノ酸121~125を含む領域;アミノ酸143~152を含む領域;アミノ酸156~164を含む領域;アミノ酸183~191を含む領域;及びその組合せからなる群より選択される前記TIMP-3アミノ酸配列の領域で導入される、請求項3に記載のTIMP-3突然変異タンパク質。
【請求項7】
2、3、4、5または6(以上)のN結合型グリコシル化部位が導入される、請求項6に記載のTIMP-3突然変異タンパク質。
【請求項8】
配列番号2に示されるTIMP-3の成熟領域に対してアミノ酸配列が少なくとも95%同一の成熟領域を有する単離されたTIMP-3突然変異タンパク質であって、前記突然変異タンパク質が
(a)TIMP-1、TIMP-2またはTIMP-4の電荷表面を模する、TIMP-3表面に露出した正電荷パッチの特性に変化を引き起こす、前記TIMP-3電荷パッチにおける1つ以上の突然変異;
(b)タンパク質切断の受けやすさを低減する1つ以上の突然変異;
(c)前記TIMP-3突然変異タンパク質とスカベンジャー受容体LRP-1の相互作用の低下を引き起こす1つ以上の突然変異;
(d)前記TIMP-3突然変異タンパク質のヘパリンまたは細胞外マトリクス成分の相互作用の低下を引き起こす1つ以上の突然変異;
(e)前記天然TIMP-3配列への1つ以上のシステイニル残基の追加;
(f)薬物動態学的及び/または薬力学的特性の向上;
(g)少なくとも1つのN結合型グリコシル化部位を導入する1つ以上の突然変異;及び
(h)(a)~(g)に示される前記突然変異の組合せ、
からなる群より選択される少なくとも1つの突然変異を有する、前記単離されたTIMP-3突然変異タンパク質。
【請求項9】
i. K45E、K49S;(配列番号5)
ii. K45E、K49E;(配列番号6)
iii. K45E、T63E;(配列番号7)
iv. K45E、Q80E;(配列番号8)
v. K45E、T63E、H78E;(配列番号10)
vi. T63E、H78E、Q80E;(配列番号11)
vii. K45E、T63E、H78E、Q80E;(配列番号12)
viii. T63E、T74E、H78E;(配列番号13)
ix. T63E、T74E、H78D;(配列番号14)
x. L51T、T74E、H78D;(配列番号53)
xi. T74E、H78E、Q80E;(配列番号16)
xii. T74E、H78D、Q80E;(配列番号17)
xiii. K45N、V47T;(配列番号26)
xiv. K65N、M67T;(配列番号37)
xv. K45N、V47T、T63E、T74E、H78E;(配列番号18)
xvi. K49N、L51T、T63E、T74E、H78E;(配列番号19)
xvii. K45E、K49N、L51T、T63E;(配列番号20)
xviii. K49N、L51T、T74E、H78E;(配列番号21)
xix. K49N、L51T;(配列番号27)
xx. K50N、V52T;(配列番号30)
xxi. L51N、K53T;(配列番号54)
xxii. F57N;(配列番号33)
xxiii. P56N、G58T;(配列番号31)
xxiv. T63N、K65T;(配列番号36)
xxv. P56N、G58T、T63N、K65T;(配列番号32)
xxvi. K75N、P77T;(配列番号38)
xxvii. H78N、Q80T;(配列番号39)
xxviii. K94N、E96T;(配列番号40)
xxix. E96N、N98T;(配列番号41)
xxx. V97N、K99T;(配列番号42)
xxxi. D110N、K112T;(配列番号43)
xxxii. Q126N;(配列番号44)
xxxiii. R138N、H140T;(配列番号46)
xxxiv. R138T;(配列番号45)
xxxv. T158N、K160T;(配列番号47)
xxxvi. T166N、M168T;(配列番号48)
xxxvii. G173T;(配列番号49)
xxxviii. H181N、A183T;(配列番号50)
xxxix. R186N、K188T;(配列番号51)
xl. P201N、K203T;(配列番号52)
xli. A208Y;(配列番号55)
xlii. A208V;(配列番号56)
xliii. K45S、F57N;(配列番号23)
xliv. K49S、F57N;(配列番号28)
xlv. K68S、F57N;(配列番号34)
xlvi. K133S、F57N;(配列番号35)
xlvii. K45S、K133S、F57N;(配列番号24)
xlviii. K49S、K68S、F57N(配列番号29)
xlix. K45S、F57N、I205F、A208G(配列番号57)
l. K45S、F57N、A208G(配列番号58)
li. K45S、F57N、I205Y(配列番号59)
lii. K45S、F57N、I205Y、A208G(配列番号60)
liii. K45N、V47T、F57N、K75N、P77T、K94N、E96T、R138T、G173T(配列番号61)
liv. K45N、V47T、F57N、K94N、E96T、R138T、G173T(配列番号62):
lv. K45N、V47T、K50N、V52T、F57N、V97N、K99T(配列番号63)
lvi. K45S、K50N、V52T、F57N、V97N、K99T、R186N、K188T(配列番号64)
lvii. K45S、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T、R138T、G173T(配列番号65)
lviii. K45S、F57N、T63N、K65T、K94N、E96T、G173T(配列番号66)
lix. K45N、V47T、K50N、V52T、F57N、V97N、K99T、R138T、R186N、K188T(配列番号67)
lx. K45S、F57N、T63N、K65T、K94N、E96T、Q126N、R138T(配列番号68)
lxi. K45N、V47T、K50N、V52T、F57N、V97N、K99T、R186N、K188T(配列番号69)
lxii. K45N、V47T、K50N、V52T、V97N、K99T、R138T、R186N、K188T(配列番号70)
lxiii. K45S、F57N、H78N、Q80T、K94N、E96T、R138T、G173T(配列番号71)
lxiv. K45S、F57N、K75N、P77T、K94N、E96T、R138T、G173T(配列番号72)
lxv. K45N、V47T、K50N、V52T、V97N、K99T、G173T、R186N、K188T(配列番号73)
lxvi. K45E、F57N、Q126N、R138T、G173T(配列番号74)
lxvii. K45S、F57N、T63N、K65T、K94N、E96T、R138T、G173T(配列番号75)
lxviii. K45S、K50N、V52T、F57N、V97N、K99T、R138T、R186N、K188T(配列番号76)
lxix. K45S. K50N、V52T、F57N、V97N、K99T、G173T、R186N、K188T(配列番号77)
lxx. K45N、V47T、F57N、K94N、E96T、G173T、R186N、K188T(配列番号78)
lxxi. K45N、V47T、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T、R186N、K188T(配列番号79)
lxxii. K45N、V47T、F57N、V97N、K99T、R138T、G173T(配列番号80)
lxxiii. K45N、V47T、F57N、K99E G173T、R186N、K188T(配列番号81)
lxxiv. K45E、K49E、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T、G173T、R186N、K188T(配列番号82)
lxxv. K50N、V52T、K94N、E96T、R138T、G173T(配列番号83)
lxxvi. K45E、K50N、V52T、K94N、E96T、D110N、K112T、R138T、G173T(配列番号84)
lxxvii. K50N、V52T、K94N、E96T、R138T、G173T、R186N、K188T(配列番号85)
lxxviii. K45E、F57N、T63N、K65T、K94N、E96T、G173T、R186N、K188T(配列番号86)
lxxix. K45N、V47T、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T、G173T、R186Q、K188Q(配列番号87)
lxxx. K45S F57N K94N、E96T R138T G173T(配列番号88)
lxxxi. K45E F57N K94N、E96T R138T G173T(配列番号89)
lxxxii. K45E F57N K94N、E96T D110N、K112T R138T G173T(配列番号90)
lxxxiii. K45E F57N K94N、E96T R138T G173T R186Q、K188Q(配列番号91)
lxxxiv. K45E F57N K94N、E96T R138T G173T R186E(配列番号92)
lxxxv. K45E F57N K94N、E96T R138T G173T K188E(配列番号93)
lxxxvi. K45E F57N K94N、E96T R138T G173T R186N、K188T(配列番号94)
lxxxvii. K45E K50N、V52T K94N、E96T D110N、K112T R138T G173T(配列番号95)
lxxxviii. K45E K50N、V52T K94N、E96T R138T G173T K188E(配列番号96)
lxxxix. K50N、V52T F57N K94N、E96T R138T G173T(配列番号97)
xc. K50N、V52T F57N K94N、E96T D110N、K112T R138T(配列番号98)、及び
xci. K45E F57N K94N、E96T D110N、K112T R138T(配列番号99)
からなる群より選択される、請求項8に記載のTIMP-3突然変異タンパク質。
【請求項10】
K49E、K50E、K53E、K99E、R186Q、K188Q;K49S、K50N/V52T、K53E、V97N/K99T、R186N/K188T;K50N/V52T、V97N/K99T、R186N/K188T;K49E、K53E、K188Q;K50N/V52T、R186N/K188T;K50N/V52T、F57N、R186N/K188T;K45S、K50N/V52T、F57N、R186N/K188T;K50N/V52T、F57N、T63N/K65T、R186N/K188T;K45S、K50N/V52T、F57N R186N/K188T;K45S、K49S、K50N/V52T、F57N R186N/K188T;K49S、K50N/V52T、F57N、V97N/K99T、R186N/K188T;K45S、K50N/V52T、F57N、V97N/K99T、R186N/K188T;K45S、F57N、D110N、K112T;K45S、F57N、H78N、Q80T、D110N、K112T;K45S、F57N、H78N、Q80T、D110N、K112T、Q126N;K45S、F57N、H78N、Q80T、K94N、E96T Q126N;K45S、F57N、H78N、Q80T、Q126N、G173T;K45S、F57N、T63N、K65T;K45S、F57N、T63N、K65T、K94N、E96T;K45S、F57N、T63N、K65T、R138T、G173T;K45N、V47T、F57N、T63N、K65T、R138T、G173T;K45S、F57N、T63N、K65T、K94N、E96T、R138T;K45N、V47T、F57N、T63N、K65T、K94N、E96T、R138T;K45S、F57N、Q126N、R138T、G173T;P56N、G58T、T63N、K65T、K94N、E96T、Q126N、G173T;P56N、G58T、T63N、K65T、D110N、K112T、Q126N、G173T;K49S、K50N、V52T、K53E、V97N、K99T、R186N、K188T;K50N、V52T、V97N、K99T、R186N、K188T;K49E、K53E、K188Q;K50N、V52T、R186N、K188T;K50N、V52T、F57N、R186N、K188T;K45S、K50N、V52T、F57N、R186N、K188T;K50N、V52T、F57N、T63N、K65T、R186N、K188T;K45S、K50N、V52T、F57N R186N、K188T;K45S、K49S、K50N、V52T、F57N R186N、K188T;K49S、K50N、V52T、F57N、V97N、K99T、R186N、K188T;K45S、K50N、V52T、F57N、V97N、K99T、R186N、K188T;K45E、K50N、V52T、D110N、K112T、R138T、G173T、K188E;K45E、F57N、D110N、K112T、R138T、G173T、K188E;K45E、K50N、V52T、K94N、E96T、D110N、K112T、G173T、K188E;K45E、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T、G173T、K188E;K45E、K50N、V52T、D110N、K112T、R138T、G173T、R186N、K188T;K45E、F57N、D110N、K112T、R138T、G173T、R186N、K188T;K45E、K50N、V52T、K94N、E96T、D110N、K112T、G173T、R186N、K188T;K45E、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T、G173T、R186N、K188T;K45E、K50N、V52T、D110N、K112T、R138T、G173T、R186Q、K188Q;K45E、F57N、D110N、K112T、R138T、G173T、R186Q、K188Q;K45E、K50N、V52T、K94N、E96T、D110N、K112T、G173T、R186Q、K188Q;K45E、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T、G173T、R186Q、K188Q;K45E、K50N、V52T、D110N、K112T、R138T、K188E;K45E、F57N、D110N、K112T、R138T、K188E;K45E、K50N、V52T、K94N、E96T、D110N、K112T、K188E;K45E、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T、K188E;K45E、K50N、V52T、D110N、K112T、R138T、R186N、K188T;K45E、F57N、D110N、K112T、R138T、R186N、K188T;K45E、K50N、V52T、K94N、E96T、D110N、K112T、R186N、K188T;K45E、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T、R186N、K188T;K45E、K50N、V52T、D110N、K112T、R138T、R186Q、K188Q;K45E、F57N、D110N、K112T、R138T、R186Q、K188Q;K45E、K50N、V52T、K94N、E96T、D110N、K112T、R186Q、K188Q;K45E、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T、R186Q、K188Q;K50N、V52T、D110N、K112T、R138T、G173T、K188E;K45S、F57N、D110N、K112T、R138T、G173T、K188E;K50N、V52T、K94N、E96T、D110N、K112T、G173T、K188E;K45S、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T、G173T、K188E;K50N、V52T、D110N、K112T、R138T、G173T、R186N、K188T;K45S、F57N、D110N、K112T、R138T、G173T、R186N、K188T;K50N、V52T、K94N、E96T、D110N、K112T、G173T、R186N、K188T;K45S、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T、G173T、R186N、K188T;K50N、V52T、D110N、K112T、R138T、G173T、R186Q、K188Q;K45S、F57N、D110N、K112T、R138T、G173T、R186Q、K188Q;K50N、V52T、K94N、E96T、D110N、K112T、G173T、R186Q、K188Q;K45S、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T、G173T、R186Q、K188Q;K50N、V52T、D110N、K112T、R138T、K188E;K45S、F57N、D110N、K112T、R138T、K188E;K50N、V52T、K94N、E96T、D110N、K112T、K188E;K45S、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T、K188E;K50N、V52T、D110N、K112T、R138T、R186N、K188T;K45S、F57N、D110N、K112T、R138T、R186N、K188T;K50N、V52T、K94N、E96T、D110N、K112T、R186N、K188T;K45S、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T、R186N、K188T;K50N、V52T、D110N、K112T、R138T、R186Q、K188Q;K45S、F57N、D110N、K112T、R138T、R186Q、K188Q;K50N、V52T、K94N、E96T、D110N、K112T、R186Q、K188Q;K45S、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T、R186Q、K188Q;K50N、V52T、K94N、E96T、D110N、K112T、R138T、G173T;K50N、V52T、K94N、E96T、R138T、G173T;K45E、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T、R138T、G173T;K45E、F57N、K94N、E96T、R138T、G173T;K45S、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T、R138T、G173T;K45S、F57N、K94N、E96T、R138T、G173T;K45N、V47T、、H78N、Q80T、Q126N、R186Q、K188Q;K45N、V47T、F57N、H78N、Q80T、Q126N、R186Q、K188Q;K45N、V47T、F57N、H78N、Q80T、K94N、E96T、Q126N、;K45N、V47T、F57N、H78N、Q80T、Q126N、R138T;K45N、V47T、F57N、H78N、Q80T、R138T、R186Q、K188Q;K45N、V47T、F57N、H78N、Q80T、K94N、E96T、D110N、K112T、R186Q、K188Q;K50N、V52T、K94N、E96T、H78N、Q80T、R138T;K50N、V52T、K94N、E96T、H78N、Q80T、R138T、R186Q、K188Q;K45E、F57N、Q126N、R138T、R186Q、K188Q;K45N、V47T、F57N、Q126N、R138T、R186Q、K188Q;K45N、V47T、F57N、H78N、Q80T、R186Q、K188Q;K45S、F57N、H78N、Q80T、Q126N、R138T、R186Q、K188Q;K45S、F57N、H78N、Q80T、K94N、E96T、R138T、R186Q、K188Q;K50N、V52T、K94N、E96T、H78N、Q80T、R138T、;K45N、V47T、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T、R186Q、K188Q;及びK45S、F57N、H78N、Q80T、K94N、E96T、R138T;K45N、V47T、F57N、K94N、E96T
からなる群より選択される、請求項8に記載のTIMP-3突然変異タンパク質。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載のTIMP-3突然変異タンパク質をコードする、単離された核酸。
【請求項12】
請求項11に記載の単離された核酸を含む発現ベクター。
【請求項13】
請求項12に記載の発現ベクターにより形質転換またはトランスフェクトされた、単離された宿主細胞。
【請求項14】
組換えTIMP-3突然変異タンパク質の産生方法であって、請求項13に記載の形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞を前記TIMP-3突然変異タンパク質の発現を促進する条件下で培養することと、前記TIMP-3突然変異タンパク質を回収することとを含む、前記方法。
【請求項15】
請求項1~10のいずれか一項に記載のTIMP-3突然変異タンパク質と、生理学的に許容できる希釈剤、賦形剤、または担体とを含む組成物。
【請求項16】
TIMP-3によって阻害されるか阻害され得るマトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)及び/または他のプロテイナーゼが原因的または増悪的働きをする状態の治療方法であって、前記状態を治療するのに十分な量の請求項15の組成物をかかる状態に罹った個人に投与することを含む、前記方法。
【請求項17】
前記状態が、炎症性状態、骨関節炎、心筋虚血、再潅流傷害、及び、鬱血性心不全への進行からなる群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記状態が、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び特発性肺線維症(IPF)、炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病、及びセリアック病)、乾癬、ウイルス性心筋炎を含む心筋炎、アテローム性動脈硬化症に関連した炎症、並びに、関節リウマチ及び乾癬性関節炎を含む関節炎状態からなる群より選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記状態が、栄養障害型表皮水疱症、骨関節炎、偽痛風、若年性関節リウマチを含む関節リウマチ、強直性脊椎炎、歯周病、角膜潰瘍、表皮潰瘍、胃潰瘍を含む潰瘍、手術後の創傷治癒、再狭窄、肺気腫、骨パジェット病、骨粗鬆症、強皮症、褥瘡などの骨または組織の圧迫萎縮、真珠腫、創傷治癒異常、少関節性リウマチ様関節炎、多関節性リウマチ様関節炎、全身性発症関節リウマチ、強直性脊椎炎、腸疾患性関節炎、反応性関節炎、ライター症候群、SEA症候群(血清陰性、腱付着部症、関節症症候群)、皮膚筋炎、乾癬性関節炎、強皮症、全身性エリテマトーデス、脈管炎、マイオリティス(myolitis)、ポリマイオリティス(polymyolitis)、ダーマトマイオリティス(dermatomyolitis)、骨関節炎、結節性多発動脈炎、ウェゲナー肉芽腫症、動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、サルコイドーシス、硬化症、原発性胆汁性硬化症、硬化性胆管炎、シェーグレン症候群、乾癬、尋常性乾癬、滴状乾癬、倒置乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、アテローム性動脈硬化症、ループス、スチル病、全身性エリテマトーデス(SLE)、重症筋無力症、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、セリアック病(非熱帯性スプルー)、血清反応陰性関節症に関連した腸疾患、顕微鏡的大腸炎またはコラーゲン形成大腸炎、好酸球性胃腸炎、または直腸結腸切除及び回腸肛門吻合の後に起こる嚢炎、膵炎、インスリン依存性糖尿病、乳腺炎、胆嚢炎、胆管炎、胆管周囲炎、多発性硬化症(MS)、喘息(外因性喘息及び内因性喘息、並びに、関連する気道の慢性炎症性状態または応答性亢進、を含む)、慢性閉塞性肺疾患(COPD、即ち、慢性気管支炎、肺気腫)、急性呼吸器疾患症候群(ARDS)、呼吸促迫症候群、嚢胞性線維症、肺高血圧症、肺血管収縮、急性肺傷害、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、過敏性肺炎、好酸球性肺炎、気管支炎、アレルギー性気管支炎気管支拡張症、結核、過敏性肺炎、職業性喘息、喘息様障害、サルコイド、反応性気道疾患(または機能不全)症候群、綿肺、間質性肺疾患、好酸球増加症候群、鼻炎、副鼻腔炎、及び肺寄生虫症、ウイルス誘発性状態に関連した気道過敏(例えば、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、パラインフルエンザウイルス(PIV)、ライノウイルス(RV)、及びアデノウイルス)、ギラン・バレー疾患、グレーブス病、アジソン病、レイノー現象、自己免疫性肝炎、移植片対宿主病(GVHD)、脳虚血、外傷性脳損傷、多発性硬化症、神経障害、ミオパチー、脊髄損傷、及び筋萎縮性側索硬化症(ALS)からなる群より選択される、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2013年3月14日出願の米国仮特許出願第61/782,613号;2013年3月15日出願の米国仮特許出願第61/798,160号;2013年3月18日出願の米国仮特許出願第61/802,988号;及び2014年2月17日出願の米国仮特許出願第61/940,673号の利益を主張し、これらの文献はその全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
配列表の参照
本願は、電子フォーマットの配列表と一緒に提出されている。この配列表は、2014年3月11日作成のA-1827WOPCT_SL31314という表題のファイルとして提供されており、サイズが306KBである。その配列表に関する電子フォーマットの情報は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0003】
本発明は一般に、メタロプロテイナーゼ阻害物質に関する。詳しくは、本発明は、組織メタロプロテイナーゼ阻害物質3(「TIMP-3」)及びその新規で有用な変異体、突然変異タンパク質、及び誘導体に関する。
【背景技術】
【0004】
結合組織と関節軟骨は、細胞外マトリクスの合成と分解という互いに反対の作用によって動的な平衡状態に維持される。マトリクスの分解は、主に、マトリクスメタロプロテイナーゼ(MMP)や、トロンボスポンジンモチーフを有するディスインテグリンメタロプロテイナーゼ(ADAMTS)を含むメタロプロテイナーゼの酵素作用によって、引き起こされる。これらの酵素は多くの自然な過程(発育、形態形成、骨再形成、創傷治癒、及び血管形成を含む)において重要である一方、これらの酵素が調節不全になるとそのレベルの上昇につながり、関節リウマチ及び骨関節炎を含む結合組織の崩壊性疾患、並びにがん及び心血管病態を起こす有害な働きをすると考えられる。
【0005】
内因性のメタロプロテイナーゼ阻害物質としては、プラズマα2-マクログロブリンや、組織メタロプロテイナーゼ阻害物質(TIMP)があり、そのうち、ヒトゲノムでコードされると知られているものが4つある。TIMP-3は、全ての主な軟骨退化メタロプロテアーゼを阻害し、複数の方面の検証により、それが軟骨を保護することが示されている。軟骨移植片へのこのタンパク質の付加はサイトカイン誘発性分解を予防し、骨関節炎のラット内側半月板断裂モデルにおける関節内注射では、軟骨損傷が低減される。
【0006】
MMPの調節不全はまた、鬱血性心不全で起こり、多くの炎症誘発性過程で一因となっていると考えられる。しかしながら、MMP活性の治療的阻害剤としてTIMP-3を開発することは、組換えタンパク質の産生における難題や、組換え形式のTIMP-3の短い半減期によって妨げられてきた。そのため、当分野には、有利な産生特性、精製特性、薬物動態学的/薬力学的特性を示す形式のTIMP-3に対する必要性がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】天然の全長ヒトTIMP-3と突然変異型の全長ヒトTIMP-3の配列比較を示し、後者では、配列内の特定のアミノ酸を文字「X」に置き換えてある。シグナル配列には下線が引いてあり、したがって、それは本明細書に記載のとおりに他のシグナル配列に置換することができる。
図2】天然の全長ヒトTIMP-3と変異体のTIMP-3の配列比較を示し、後者では、所定のアミノ酸の置換が行われている。シグナル配列が存在し、天然の全長TIMP-3配列のそれに下線を引いて番号付けの一貫性を維持するようにし、したがって、それは本明細書に記載のとおりに他のシグナル配列に置換することができる。
図3】二次元的ポリペプチドマップを示し、TIMP-3のN-領域(残基23~143)及びC-領域(144~211)を含むアミノ酸残基と、ジスルフィド結合を形成するシステイン位置とが特定できるようにアミノ酸が配列されている。
図4】天然のヒトN末端TIMP3と突然変異型のヒトN末端TIMP3の配列比較を示し、後者では、配列内の特定のアミノ酸を文字「X」に置き換えてある。シグナル配列には下線が引いてあり、したがって、それは本明細書に記載のとおりに他のシグナル配列に置換することができる。所定の置換が成熟型のN末端TIMP-3において考えられ、本明細書中に「n#m」として表されており、そこで、「n」はTIMP-3の天然のN末端領域に見出されるアミノ酸を表し、「#」はアミノ酸残基数を表し、「m」は、置換されたアミノ酸(「‐」は、アミノ酸が欠失したことを示す)を表す。このようにして、例えば、「K45I」は、アミノ酸45にあるリジン(K)がイソロイシン(I)で置換されたことを示す。M67の欠失は、M67-によって示される。一対のグリシンによる残基71~77の置換は、Y70-GG-H78によって示される。本明細書に例示される突然変異型のヒトTIMP-3は、次の突然変異を含む(単独または組合せで):R43F、K45I、K45T、K53T、E54Y、K65T、M67-、K68T、K68I、Y70-GG-H78、H78W。突然変異の具体的な組合せとしては、K45I、K53T、E54Y、K65T、M67-、K68T;K45I、K53T、E54Y、M67-、K68I;K45I、K53T、K65T、M67-、K68T;K45I、K53T、M67-、K68I;K45I、K53T、M67-、K68I、H78W;K45I、K65T、K68I;K45I、K65T、M67-、K68T;K45I、K65T、M67-、K68T、H78W;K45I、M67-、K68I、H78W;K45I、M67-、K68T;K45T、K65T、M67-、K68I;K45T、K65T、M67-、K68T;K53T、E54Y;K53T、H78W;R43F、K45I、K65T、K68Iが挙げられる。
図5】天然のヒトN末端TIMP3と突然変異型のヒトN末端TIMP3の配列比較を示し、後者では、配列内の特定のアミノ酸を文字「X」に置き換えてある。シグナル配列には下線が引いてあり、したがって、それは本明細書に記載のとおりに他のシグナル配列に置換することができる。所定の置換が成熟型のN末端TIMP-3において考えられ、本明細書中に「n#m」として表されており、そこで、「n」はTIMP-3の天然のN末端領域に見出されるアミノ酸を表し、「#」はアミノ酸残基数を表し、「m」は、置換されたアミノ酸(「‐」は、アミノ酸が欠失したことを示す)を表す。このようにして、例えば、「K45E」は、アミノ酸45にあるリジン(K)がグルタミン(E)で置換されたことを示す。本明細書に例示される突然変異型のヒトTIMP-3は、次の突然変異を含む(単独または組合せで):T25G;T25H;T25K;T25P;T25R;T25S;T25W;C26A;S27V;S27A;P28A;P28D;P28L;P28S;S29I;H30A;P31A;Q32A;F35A;C36A;N37A;D39A;V41A;I42A;R43A;R43E;R43T;K45E;V46A;G48A;G48S;K49S;K49E;L51E;L51T;K53D;E54S;P56N;L60I;V61Q;T63E;T74E;H78D;H78E;Q80E;G116T;C118A;N119D;C143A;及び144N-。突然変異の具体的な組合せとしては、S27V S29I;V46A G48S K49E L51E K53D E54S P56N L60I V61Q G116T N119D;C26A C118A;C36A C143A;K45E K49E;K45E K49S;K45E Q80E;K45E T63E;K45E T63E H78E;K45E T63E H78E Q80E;L51T T74E H78D;R43E T74E H78D Q80E;R43T T74E H78D Q80E;T63E H78D;T63E H78E;T63E H78E Q80E;T63E T74E H78D;T63E T74E H78E;T74E H78D Q80E;T74E H78E Q80E;Y70-GG-78Hが挙げられる。
図6】天然のTIMP-2と天然のTIMP-3の配列比較を表す。対応する残基におけるアミノ酸の同一性は、配列の下のアスタリスクによって示される。
【発明の概要】
【0008】
一実施形態では、本発明は、配列番号2に示されるTIMP-3の成熟領域に対してアミノ酸配列が少なくとも95%同一である成熟領域を有し、少なくとも1つの突然変異を有する単離されたTIMP-3突然変異タンパク質を提供し、突然変異は、K45E;K45N;K45S;V47T;K49N;K49E;K49S;K50N;L51T;L51N;V52T;K53T;P56N;F57N;G58T;T63E;T63N;K65T;K65N;M67T;K68S;T74E;K75N;P77T;H78D;H78E;H78N;Q80E;Q80T;K94N;E96T;E96N;V97N;N98T;K99T;D110N;K112T;Q126N;K133S;R138T;R138N;H140T;T158N;K160T;T166N;M168T;G173T;H181N;A183T;R186N;R186Q、R186E、K188T;K188Q、K188E、P201N;K203T;I205F、I205Y、A208G、A208V、及びA208Yからなる群より選択される。
【0009】
本発明の別の実施形態では、配列番号2に示されるTIMP-3の成熟領域に対してアミノ酸配列が少なくとも95%同一の成熟領域を有し、突然変異F57N及び少なくとも1つのさらなる突然変異を有する単離されたTIMP-3突然変異タンパク質が提供され、その突然変異はTIMP-3のK残基の1つ以上での置換である。本発明のさらなる態様では、上記さらなる突然変異はN結合型グリコシル化部位をアミノ酸配列の中に導入する。
【0010】
また、本発明において具体化されるのは、配列番号2に示されるTIMP-3の成熟領域に対してアミノ酸配列が少なくとも90%同一の成熟領域を有する単離されたTIMP-3突然変異タンパク質であり、この突然変異タンパク質は、少なくとも1つのN結合型グリコシル化部位をアミノ酸配列の中に導入する少なくとも1つの突然変異を有する。追加的な実施形態では、TIMP-3突然変異タンパク質は、2、3、4、5、または6のN結合型グリコシル化部位を有し;なおもさらなる実施形態では、導入されるN結合型グリコシル化部位の数は、7、8、9、または10である。
【0011】
本発明の一実施形態では、N結合型グリコシル化部位は、次からなる群より選択される、TIMP-3アミノ酸配列の領域で導入される:アミノ酸48~54を含む領域;アミノ酸93~100を含む領域;アミノ酸121~125を含む領域;アミノ酸143~152を含む領域;アミノ酸156~164を含む領域;アミノ酸183~191を含む領域;及びその組合せ。追加的な実施形態では、TIMP-3突然変異タンパク質は2、3、4、または5のN結合型グリコシル化部位を有し;なおもさらなる実施形態では、導入されるN結合型グリコシル化部位の数は6、7、8、9、または10である。
【0012】
さらに提供されるのは、配列番号2に示されるTIMP-3の成熟領域に対してアミノ酸配列が少なくとも95%同一の成熟領域を有する単離されたTIMP-3突然変異タンパク質であり、この突然変異タンパク質は、次からなる群より選択される少なくとも1つの突然変異を有する:(a)TIMP-3表面に露出した正電荷パッチにおいてTIMP-2電荷表面を模する特性に変化を引き起こす、そのTIMP-3電荷パッチにおける1つ以上の突然変異;(b)タンパク質切断の受けやすさを低減する1つ以上の突然変異;(c)TIMP-3突然変異タンパク質とスカベンジャー受容体LRP-1の相互作用の低下を引き起こす1つ以上の突然変異;(d)TIMP-3突然変異タンパク質ヘパリンまたは細胞外マトリクス成分の相互作用の低下を引き起こす1つ以上の突然変異;(e)天然TIMP-3配列への1つ以上のシステイニル残基の付加;(f)薬物動態学的及び/または薬力学的特性の向上;及び(g)(a)~(f)に示される突然変異の組合せ。一実施形態では、1つ以上の突然変異は、次からなる群より選択されるTIMP-3アミノ酸配列の領域において導入される:アミノ酸48~54を含む領域;アミノ酸93~100を含む領域;アミノ酸121~125を含む領域;アミノ酸143~152を含む領域;アミノ酸156~164を含む領域;アミノ酸183~191を含む領域;及びその組合せ。
【0013】
本発明の一態様は、上述のTIMP-3突然変異タンパク質のいずれか1つのTIMP-3突然変異タンパク質をコードする単離された核酸である。本発明の他の態様は、かかる単離された核酸を含む発現ベクターと;上記発現ベクターにより形質転換またはトランスフェクトされた単離された宿主細胞と;組換えTIMP-3突然変異タンパク質の産生方法とであり、上記方法は、形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞をTIMP-3突然変異タンパク質の発現を促進する条件下で培養することと、TIMP-3突然変異タンパク質を回収することとを含む。
【0014】
さらに提供されるのは、本明細書に記載のTIMP-3突然変異タンパク質を含む組成物と、TIMP-3によって阻害されるか阻害され得るマトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)及び/または他のプロテイナーゼが原因的または増悪的働きをする状態の治療方法とであり、上記方法は、かかる状態に罹った個人に状態の治療に十分な量のかかる組成物を投与することを含む。
【0015】
一実施形態では、状態は、炎症性状態、骨関節炎、心筋虚血、再潅流傷害、及び、鬱血性心不全への進行からなる群より選択される。別の実施形態では、状態は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び特発性肺線維症(IPF)、炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病、及びセリアック病)、乾癬、ウイルス性心筋炎を含む心筋炎、アテローム性動脈硬化症に関連した炎症、並びに、関節リウマチ及び乾癬性関節炎を含む関節炎状態からなる群より選択される。
【0016】
さらなる実施形態では、状態は、次からなる群より選択される:栄養障害型表皮水疱症、骨関節炎、ライター症候群、偽痛風、若年性関節リウマチを含む関節リウマチ、強直性脊椎炎、強皮症、歯周病、角膜潰瘍、表皮潰瘍、胃潰瘍を含む潰瘍、手術後の創傷治癒、再狭窄、肺気腫、骨パジェット病、骨粗鬆症、強皮症、褥瘡などの骨または組織の圧迫萎縮、真珠腫、創傷治癒異常、関節リウマチ、少関節性リウマチ様関節炎、多関節性リウマチ様関節炎、全身性発症関節リウマチ、強直性脊椎炎、腸疾患性関節炎、反応性関節炎、ライター症候群、SEA症候群(血清陰性、腱付着部症、関節症症候群)、皮膚筋炎、乾癬性関節炎、強皮症、全身性エリテマトーデス、脈管炎、マイオリティス(myolitis)、ポリマイオリティス(polymyolitis)、ダーマトマイオリティス(dermatomyolitis)、骨関節炎、結節性多発動脈炎、ウェゲナー肉芽腫症、動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、サルコイドーシス、硬化症、原発性胆汁性硬化症、硬化性胆管炎、シェーグレン症候群、乾癬、尋常性乾癬、滴状乾癬、倒置乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、アテローム性動脈硬化症、ループス、スチル病、全身性エリテマトーデス(SLE)、重症筋無力症、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、セリアック病(非熱帯性スプルー)、血清反応陰性関節症に関連した腸疾患、顕微鏡的大腸炎またはコラーゲン形成大腸炎、好酸球性胃腸炎、または直腸結腸切除及び回腸肛門吻合の後に起こる嚢炎、膵炎、インスリン依存性糖尿病、乳腺炎、胆嚢炎、胆管炎、胆管周囲炎、多発性硬化症(MS)、喘息(外因性喘息及び内因性喘息、並びに、関連する気道の慢性炎症性状態または応答性亢進、を含む)、慢性閉塞性肺疾患(COPD、即ち、慢性気管支炎、肺気腫)、急性呼吸器疾患症候群(ARDS)、呼吸促迫症候群、嚢胞性線維症、肺高血圧症、肺血管収縮、急性肺傷害、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、過敏性肺炎、好酸球性肺炎、気管支炎、アレルギー性気管支炎気管支拡張症、結核、過敏性肺炎、職業性喘息、喘息様障害、サルコイド、反応性気道疾患(または機能不全)症候群、綿肺、間質性肺疾患、好酸球増加症候群、鼻炎、副鼻腔炎、及び肺寄生虫症、ウイルス誘発性状態に関連した気道過敏(例えば、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、パラインフルエンザウイルス(PIV)、ライノウイルス(RV)、及びアデノウイルス)、ギラン・バレー疾患、グレーブス病、アジソン病、レイノー現象、自己免疫性肝炎、移植片対宿主病(GVHD)、脳虚血、外傷性脳損傷、多発性硬化症、神経障害、ミオパチー、脊髄損傷、及び筋萎縮性側索硬化症(ALS)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、TIMP-3ポリペプチド、変異体、誘導体または突然変異タンパク質に関連する組成物、キット、及び方法を提供する。また、提供されるのは、核酸とその誘導体及び断片(これは、かかるTIMP-3ポリペプチド、変異体、誘導体、または突然変異タンパク質の全てまたは一部をコードする一連のヌクレオチド、例えば、かかるTIMP-3ポリペプチド、変異体、誘導体、または突然変異タンパク質の全てまたは一部をコードする核酸を含む)と;かかる核酸を含むプラスミド及びベクター、並びに、かかる核酸及び/もしくはベクター及びプラスミドを含む細胞または細胞株と、である。例えば、提供される方法は、望ましい特性を示すTIMP-3ポリペプチド、変異体、誘導体、または突然変異タンパク質を作製し、同定し、単離する方法を含む。
【0018】
哺乳動物中に内因性TIMP-3を増大させること、または特定の組織にTIMP-3のレベルを増加させることが有益であると考えられる多くの状態が存在する。したがって、また、本明細書で提供されるのは、医薬組成物など、TIMP-3ポリペプチド、変異体、誘導体、または突然変異タンパク質を含む組成物を作製する方法と、TIMP-3ポリペプチド、変異体、誘導体、または突然変異タンパク質を含む組成物を対象、例えば、マトリクスメタロプロテイナーゼ活性の調節不全が過剰または不適切な組織修復を引き起こす状態に罹った対象に投与する方法と、である。
【0019】
本明細書で他に定義されていなければ、本発明に関連して用いられる科学技術用語は、当業者に共通に理解される意味を有するものとする。さらに、文脈によって他のように要求されていなければ、単数形の用語は複数を包含し、複数形の用語は単数を包含するものとする。一般に、本明細書に記載の、細胞及び組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、並びに、タンパク質及び核酸の化学及びハイブリダイゼーションに関連して用いられる術語やそれらの技術は、当分野で周知な一般に用いられるものである。本発明の方法及び技術は一般に、他に断りがなければ、当分野で周知の従来方法に従って実行され、かつ、本明細書全体を通して引用され考察される種々の一般的な参考文献及びより専門的な参考文献に記載される通りに実行される。例えば、Sambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)、及びAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates(1992)、及びHarlow and Lane Antibodies:A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1990)を参照されたく、なお、これらの文献は参照により本明細書に援用される。酵素反応及び精製技術は、製造者の仕様に従って、当分野で一般に行われる通りに、あるいは本明細書に記載される通りに実行される。本明細書に記載の、分析化学、有機合成化学、並びに医薬品化学及び製薬化学に関連して用いられる用語法やその実験法及び実験技術は、当分野で周知な一般に用いられるものである。化学合成、化学分析、薬剤調製、製剤化、及び送達、並びに患者の治療に標準的な技術を用いることができる。
【0020】
他に断りがなければ、次の用語は次の意味を有するように理解されるものとする。
【0021】
分子(例えば、分子はポリペプチド、ポリヌクレオチド、または抗体である)の特徴を表すために用いられる用語「単離された」は、分子がその発生源または誘導源の点で、(1)天然状態のものではそれに付随している天然会合成分に、会合していないか、(2)同じ種に由来する他の分子が実質的にないか、(3)異なる種に由来する細胞によって発現されるか、または、(4)ヒトの介在がなければ全く発生しない、ということを示す。このようにして、分子は、化学的に合成するか、その分子を天然に発生させる細胞とは異なる細胞系で合成するかする場合、その天然会合成分から「単離された」ことになる。分子はまた、当分野で周知の精製技術を用いて、天然会合成分を単離によって実質的になくしてもよい。分子の純度または均一性は、当分野で周知のいくつかの手段によってアッセイしてもよい。例えば、ポリペプチド試料の純度は、当分野で周知の技術を用い、ポリアクリルアミドゲル電気泳動とゲルの染色法でポリペプチドを視覚化してアッセイしてもよい。所定の目的のために、HPLCまたは当分野で周知の他の精製手段を用いることによって、より高い分解能を得てもよい。
【0022】
用語「ペプチド」、「ポリペプチド」、及び「タンパク質」はそれぞれ、ペプチド結合によって互いに結合された2つ以上のアミノ酸残基を含む分子を指す。これらの用語は、例えば、天然及び人工タンパク質と、タンパク質断片と、タンパク質配列のポリペプチド類似体(突然変異タンパク質、変異体、及び融合タンパク質など)と、翻訳後に修飾されたタンパク質または他のように共有結合的もしくは非共有結合的に修飾されたタンパク質とを包含する。ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質はモノマーであってもポリマーであってもよい。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「ポリペプチド断片」とは、対応する全長タンパク質と比べた場合に、アミノ末端欠失及び/またはカルボキシ末端欠失を有するポリペプチドを指す。断片は、例えば、長さが少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、50、70、80、90、100、150、または200アミノ酸であってもよい。断片はまた、例えば、長さが最長で1,000、750、500、250、200、175、150、125、100、90、80、70、60、50、40、30、20、15、14、13、12、11、または10アミノ酸であってもよい。断片はさらに、その両端またはどちらか一端に、1つ以上の追加的アミノ酸、例えば、異なる天然のタンパク質(例えば、Fcまたはロイシンジッパー領域)または人工アミノ酸配列(例えば、人工リンカー配列またはタグタンパク質(tag protein))に由来する一連のアミノ酸を含んでもよい。
【0024】
ポリペプチドの「変異体」または「突然変異タンパク質」(例えば、TIMP-3変異体または突然変異タンパク質)は、別のポリペプチド配列と比較すると、アミノ酸配列に1つ以上のアミノ酸残基の挿入、欠失、及び/または置換のなされているアミノ酸配列を含む。本発明の変異体は融合タンパク質を含む。
【0025】
「保存的アミノ酸置換」は、親配列の構造的特性を実質的に変えないものである(例えば、置換アミノ酸は、親配列に生じるヘリックスを破壊する傾向、または親配列を特徴づけるかもしくはその機能に必要である他の型の二次構造を破壊する傾向がないものである)。当分野で認められているポリペプチド二次及び三次構造の例が、Proteins,Structures and Molecular Principles(Creighton,Ed.,W.H.Freeman and Company,New York(1984));Introduction to Protein Structure (C.Branden and J. Tooze,eds.,Garland Publishing,New York,N.Y.(1991));及びThornton et at.Nature 354:105(1991)に記載されており、なお、それらの文献はそれぞれ参照により本明細書に援用される。
【0026】
天然タンパク質に対する変異体または突然変異タンパク質の類似度を示すひとつの方法は、2つ(またはそれ以上)のポリペプチド配列の間またはコードする核酸配列の間の同一性のパーセントを比較して示すことによる。2つのポリヌクレオチドまたは2つのポリペプチド配列の「同一性パーセント」は、GAPコンピュータープログラム(GCGウィスコンシンパッケージ、バージョン10.3(Accelrys,San Diego,CA)の一部)をその初期パラメーターで用いて配列を比較することによって決定する。
【0027】
ポリペプチドの「誘導体」は、例えば、別の化学的成分(例えば、ポリエチレングリコールまたはアルブミン、例えば、ヒト血清アルブミンなど)への共役、リン酸化、及び/またはグリコシル化によって化学的に修飾されたポリペプチド(例えば、TIMP-3ポリペプチド、変異体、または突然変異タンパク質)である。
【0028】
ポリヌクレオチド及びポリペプチド配列は、標準的な1字または3字の略語を用いて示される。他に断りがなければ、各ポリペプチド配列は左にアミノ末端を、右にカルボキシ末端を有し;各一本鎖核酸配列と、各二本鎖核酸配列の上側の鎖とは、左に5’末端を、右に3’末端を有する。特定のポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列はまた、それが参照配列とどのように異なるかを説明することによって記載することができる。例えば、本明細書でアミノ酸の置換は「n#m」として表され、この「n」は天然の全長ポリペプチドに見られるアミノ酸を表し、「#」はアミノ酸残基数を表し、「m」は置換されたアミノ酸を表す。
【0029】
用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、及び「核酸」は本明細書全体を通して互換的に用いられ、DNA分子(例えば、cDNAまたはゲノムのDNA)、RNA分子(例えば、mRNA)、ヌクレオチド類似体を用いて生成されたDNAまたはRNAの類似体(例えば、ペプチド核酸及び非天然ヌクレオチド類似体)、及びそれらのハイブリッドを含む。核酸分子は一本鎖であっても二本鎖であってもよい。一実施形態では、本発明の核酸分子は、本発明のTIMP-3ポリペプチド、断片、変異体、誘導体、または突然変異タンパク質をコードする隣接読み取り枠を含む。
【0030】
2つの一本鎖ポリヌクレオチドは、その配列が逆平行向きに配列され得る場合に互いに「補完的なもの」であり、1つのポリヌクレオチドの各ヌクレオチドは、もう一方のポリヌクレオチドの相補的ヌクレオチドに相対するようになっており、ギャップの導入もなく、各配列の5’または3’末端に不対ヌクレオチドもない。ポリヌクレオチドは、2つのポリヌクレオチドが中程度にストリンジェントな条件の下でお互いにハイブリダイズし得る場合、別のポリヌクレオチドに「相補的」である。したがって、ポリヌクレオチドは、別のポリヌクレオチドに対して、それが補完する相手でなくても、相補的であり得る。
【0031】
「ベクター」は、それに結合させた別の核酸を細胞の中へ導入するために用いることのできる核酸である。ベクターの一種が「プラスミド」であり、これは、直鎖状または環状の二本鎖DNA分子を指し、この中へ追加的核酸セグメントを連結することができる。別の種類のベクターとしてはウイルス性ベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルス、及びアデノ随伴ウイルス)があり、追加的DNAセグメントがウイルスゲノムの中に導入できる。所定のべクターは、それを導入した宿主細胞中で自己複製が可能である(例えば、細菌性複製起点を含む細菌性ベクターや、エピソーム性哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム性哺乳動物ベクター)は、宿主細胞へ導入すると宿主細胞のゲノムに組みこまれ、それにより宿主ゲノムとともに複製される。「発現ベクター」は、選ばれたポリヌクレオチドの発現を司ることのできる一種のベクターである。
【0032】
ヌクレオチド配列は、調節配列がヌクレオチド配列の発現(例えば、発現のレベル、タイミング、位置)に影響する場合、調節配列に「作用可能に結合されて」いる。「調節配列」は、それが作用可能に結合された核酸の発現(例えば、発現のレベル、タイミング、位置)に影響する核酸である。調節配列は、例えば、その作用を、調節された核酸に直接及ぼすか、1つ以上の他の分子(例えば、調節配列及び/または核酸に結合する、ポリペプチド)の作用を介して及ぼすことができる。調節配列の例としては、プロモーター、エンハンサー、及び他の発現調節要素(例えば、ポリアデニル化信号)が挙げられる。調節配列のさらなる例が、例えば、Goeddel,1990,Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,CA、及びBaron et al.,1995,Nucleic Acids Res.23:3605-06に記載される。
【0033】
天然の細胞外タンパク質は典型的に「シグナル配列」を含み、これは、タンパク質を細胞経路の中に送り込んでタンパク質が分泌されるようにするが、成熟タンパク質には存在しない。シグナル配列はまた、「シグナルペプチド」または「リーダーペプチド」と称してもよく、細胞外タンパク質から酵素的に切断される。そのように処理された(即ち、シグナル配列を除去された)タンパク質はしばしば「成熟」タンパク質と称される。本発明のタンパク質またはポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、当分野で多くが既知である天然のシグナル配列または異種シグナル配列をコードしてもよい。
【0034】
当業者に理解されるように、本実施形態による組換えタンパク質またはポリペプチドは、哺乳動物細胞株を含む、細胞株で発現することができる。特定のタンパク質をコードする配列を、適切な哺乳動物宿主細胞の形質転換に用いることができる。形質転換は、ポリヌクレオチドを宿主細胞の中に導入するいずれの既知の方法によることもでき、例えば、ポリヌクレオチドをウイルス(または、ウイルス性ベクター)の中に包み込んでウイルス(またはベクター)で宿主細胞に形質導入を行うこと、または、米国特許第4,399,216号、同第4,912,040号、同第4,740,461号、及び同第4,959,455号(これらの特許は本記載によって参照により本明細書に援用される)に例示されるような当分野で既知のトランスフェクション手順によることも含められる。用いられる形質転換手順は、形質転換される宿主による。異種ポリヌクレオチドを哺乳動物細胞に導入する方法は当分野で周知であり、例えば、デキストラン媒介によるトランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介によるトランスフェクション、原形質融合、電気穿孔法、リポソームの中へのポリヌクレオチドの封入、及び核の中へのDNAの直接微量注入などが挙げられる。
【0035】
「宿主細胞」は、核酸、例えば、本発明の核酸を発現するように用いることのできる細胞である。宿主細胞は、原核生物、例えば、大腸菌であってもよく、真核生物、例えば、単細胞の真核生物(例えば、酵母菌または他の真菌)、植物細胞(例えば、タバコまたはトマト植物細胞)、動物細胞(例えば、ヒト細胞、サル細胞、ハムスター細胞、ラット細胞、マウス細胞、または昆虫細胞)、またはハイブリドーマであってもよい。宿主細胞の例としては、サル腎臓由来細胞のCOS-7株(ATCC CRL 1651)(Gluzman et al.,1981,Cell 23:175を参照)、L細胞、C127細胞、3T3細胞(ATCC CCL 163)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはベジー(Veggie)CHOなど、その誘導体及び無血清培地で増殖する関連細胞株(Rasmussen et al.,1998,Cytotechnology 28:31を参照)またはDHFRが欠けるCHO菌株DX-B11(Urlaub et al.,1980,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216-20を参照)、HeLa細胞、BHK(ATCC CRL10)細胞株、アフリカミドリザル腎臓由来細胞株CV1(ATCC CCL 70)に由来するCV1/EBNA細胞株(McMahan et al.,1991,EMBO J.10:2821を参照)、293、293EBNA、またはMSR293などのヒト胎児由来腎臓細胞、ヒト表皮A431細胞、ヒトColo205細胞、他の形質転換した霊長類細胞株、正常2倍体細胞、原発性組織の生体外培養に由来する細胞菌株、原発性移植片、HL-60、U937、HaK、またはジャーカット細胞が挙げられる。
【0036】
典型的には宿主細胞は、ポリペプチドをコードする核酸で形質転換またはトランスフェクトされ得る培養細胞であり、次いでその核酸が宿主細胞で発現され得る。「一過性トランスフェクション」では、核酸は、当分野で既知のいくつかの方法の1つによって宿主細胞の中に導入され、組換えタンパク質は、例えば、宿主細胞が有糸分裂するとき、核酸が消失または分解される前に、有限期間の間、典型的には約4日間までの間、発現される。「安定トランスフェクション」が望まれる場合、ポリペプチドをコードする核酸は、選択可能なマーカーをコードする核酸とともに宿主細胞の中に導入してもよい。選択可能なマーカーの使用により当業者は、ポリペプチドをコードする核酸が有糸分裂の間ずっと維持されて子孫細胞によって発現され得るように、ポリペプチドをコードする核酸が宿主細胞ゲノムの中に組み込まれた、トランスフェクトされた宿主細胞を選択することができる。
【0037】
語句「組換え宿主細胞」は、発現させる核酸で形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞を表すように用いることができる。宿主細胞はまた、核酸を含むがしかし、調節配列が核酸と作用可能に結合されるようにその調節配列が宿主細胞に導入されない限り、核酸を所望のレベルで発現しないような細胞であってもよい。宿主細胞という用語は、特定の対象細胞だけでなく、かかる細胞の子孫または潜在的子孫をも指すということを理解されたい。例えば、突然変異または環境の影響による何らかの変異が後継世代に起こり得るので、かかる子孫は、実際には親細胞と同一でないことがあるが、本明細書で使用される用語の範囲の内にやはり含まれる。
【0038】
本明細書で使用される場合、「TIMP-3DNA」、「TIMP-3をコードするDNA」、及び同種の語は、TIMP-3をコードする選択された核酸を指し、それから発現されるTIMP-3は、本明細書に記載の天然TIMP-3またはTIMP-3変異体もしくは突然変異タンパク質のいずれかであり得る。同様に、「TIMP-3」、「TIMP-3タンパク質」、及び「TIMP-3ポリペプチド」は、天然TIMP-3タンパク質、または、1つもしくは複数の突然変異を含むTIMP-3タンパク質(即ち、TIMP-3ポリペプチド、変異体、誘導体、または突然変異タンパク質)のいずれかを表すために用いられる。TIMP-3の特定の突然変異タンパク質は、1つ以上の突然変異によって表してもよく、例えば、「K45N TIMP-3」または「K45N TIMP-3ポリペプチド」とは、天然TIMP-3のアミノ酸45にあるリジン(K)がアスパラギン(N)で置換されたポリペプチドを示す。
【0039】
用語「天然TIMP-3」は、本明細書で使用される場合、野生型TIMP-3を指す。TIMP-3は哺乳動物の種々の細胞または組織によって発現され、細胞外マトリクスに存在し、そのように発現されたTIMP-3はまた本明細書で「内因性」TIMP-3と称される。TIMP-3のアミノ酸配列、及びTIMP-3をコードするDNAの核酸配列は、2003年5月13日発行の米国特許第6,562,596号に開示されており、なお、その開示は参照により本明細書に援用される。米国特許第6,562,596号で用いられるアミノ酸番号方式は、シグナル(またはリーダー)ペプチドのアミノ酸を負数で表しており、成熟タンパク質(即ち、シグナルまたはリーダーペプチドを除去したタンパク質)をアミノ酸1~188と称している。本明細書で用いる番号方式は、天然リーダーペプチドの1番目のアミノ酸を#1と表してTIMP-3を指し、したがって、全長TIMP-3は、アミノ酸1~211を含み、成熟型はアミノ酸24~211である。当業者は、これらの相異なる番号方式の使用によって起こり得るアミノ酸番号の異同を容易に理解し、したがって、本明細書で使用される番号方式を、例えば、TIMP-3ポリペプチドに容易に適用でき、それにおいては成熟型の1番目のアミノ酸を#1と称する。このようにして、例えば、本明細書で表されるK45Nは、米国特許第6,562,596号の番号方式を用いればK22Nと表される。
【0040】
TIMP-3は2つの領域、即ち、TIMP-3のアミノ酸24~143(即ち、分子の約3分の2)を含むN末端領域と、アミノ酸144~211を含むC末端領域と、から形成される。図3は、TIMP-3の二次元的ポリペプチド配列を示し、二次及び三次構造TIMP-3の形成を促進するジスルフィド結合の複雑な性質を強調する。しばしば「N-TIMP-3」と称される、TIMP-3のN末端領域は、TIMP-3の生物活性の少なくともいくつかを示すことが分かっており、したがって、本明細書に記載のTIMP-3変異体、誘導体、及び突然変異タンパク質は、N末端領域を含むTIMP-3断片の変異体、誘導体、及び突然変異タンパク質を包含する。
【0041】
天然のTIMP-3タンパク質は、治療的分子として用いる場合にいくつかの困難を生じさせる。例えば、標準的な哺乳動物発現技術を用いてTIMP-3タンパク質を求めた場合の哺乳動物発現力価は低過ぎるために、治療的タンパク質に適切な規模で十分な量のTIMP-3を産生させることができない。さらに、TIMP-3は細胞外マトリクスへ結合するので、細胞培養培地にヘパリン(または、細胞外マトリクスへのTIMP-3の結合を低減させる類似の剤)を含むことが必要となり、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1(LRP1)スカベンジャータンパク質へ結合させることは、生産規模のプロセスの開発を可能とするようなレベルで組換えTIMP-3を培地の中に分泌させるという難題をさらに困難にする。全長TIMP-3の原核生物細胞における微生物産生は、タンパク質の不正確なフォールディングにより困難であることが判明してきた。
【0042】
これに対応して、これらの難問の1つ以上を克服するために、本発明のTIMP-3変異体または突然変異タンパク質は修飾されている。本発明のポリペプチドとしては、何らかの方法で、何らかの理由により、例えば、(1)タンパク質加水分解の受けやすさを低減する、(2)酸化の受けやすさを低減する、(3)細胞培養で細胞外マトリクスへのTIMP-3の結合を阻害する剤に対する必要性を低減する、(4)他の成分、例えば、LRP-1などのスカベンジャー受容体に対する結合親和性を変化させる、(5)薬物動態学及び/または薬力学を含む、他の物理化学的または官能的特性を与えるか改変する、(6)組換えタンパク質の発現及び/または精製を促進するように修飾されたポリペプチドが挙げられる。類似体としては、ポリペプチドの突然変異タンパク質が挙げられる。例えば、単一または複数のアミノ酸置換(例えば、保存的アミノ酸置換)は、天然の配列において(例えば、ポリペプチドの、分子間接触を形成する領域の外側の部分で)行ってもよい。共通配列を用いて、置換のためのアミノ酸残基を選択することができ、当業者は、さらなるアミノ酸残基の置換もできることを認識している。
【0043】
本発明の一態様では、TIMP-3突然変異タンパク質または変異体の発現レベルのほうが天然TIMP-3で観察されるものよりも増加していることを示すTIMP-3突然変異タンパク質または変異体が提供され、本発明の別の態様では、発現の増加は哺乳動物細胞発現系で起こる。発現レベルは、細胞培養上清液、即ち、馴化培地(CM)において量または組換えTIMP-3(天然、変異体、または突然変異タンパク質)の定量的または半定量的分析を可能とするいずれの適切な方法によって決定してもよい。一実施形態では、試料またはCMはウエスタンブロットによって評価され、別の実施形態では、CM試料は標準的なヒトTIMP-3 ELISAによって評価される。
【0044】
一実施形態では、発現の増加は一過性発現系で観察され、別の実施形態では、発現の増加は安定トランスフェクション系で観察される。一実施形態は、TIMP-3突然変異タンパク質または変異体を提供し、それに対して観察される発現が天然TIMP-3に対して観察されるものの2倍(2×)に増加し、別の実施形態は、TIMP-3突然変異タンパク質または変異体を提供し、それに対して観察される発現が天然TIMP-3に対して観察されるものの5倍(5×)に増加する。さらなる実施形態は、発現の増加が3倍(3×)、4倍(4×)、または6倍(6×)であるTIMP-3突然変異タンパク質または変異体を包含する。一実施形態では、TIMP-3突然変異タンパク質または変異体の発現は、天然TIMP-3で観察されるものの10倍(10×)であり、別の実施形態では、観察される発現は天然TIMP-3で観察されるものの10倍以上、例えば、20倍(20×)以上である。
【0045】
本発明の別の態様では、細胞培養培地へのヘパリン(または、細胞外マトリクスへのTIMP-3の結合を阻害する別の剤)の添加に対する必要性の低下を示すTIMP-3突然変異タンパク質(または変異体)が提供される。ヘパリン(または他の剤)の量の低減は、半定量的に記載することができ、即ち、低減は部分的、中程度、実質的、または完全であるとしてもよい。別の実施形態では、低減はパーセントで表現され、例えば、ヘパリン(または類似の剤)の量は、10%、20%、30%、40%、50%、またはそれ以上(例えば、60%、70%、80%、90%、または100%)低減されるとしてもよい。
【0046】
一実施形態では、挿入されたグリコシル化部位を含むTIMP-3変異体または突然変異タンパク質が提供される。当分野で既知となっている通り、グリコシル化パターンは、タンパク質の配列(例えば、下に考察される、特定のグリコシル化アミノ酸残基の存在もしくは不存在)か、またはタンパク質が産生される宿主細胞もしくは生体かの両方に左右され得る。具体的な発現系は下に考察される。グリコシル化の存在、不存在、または程度は、例えば、ウエスタンブロットによって観察される分子量(MW)またはクーマシー染色SDS-PAGEゲルから得られる分子量の変化の半定性的測定方法を含む、当業者に既知のいずれの方法によって決定してもよく、一方、定量的測定方法としては、質量分光光度計技術を利用し、アスパラギン結合グリコシル化の追加に相当するmw変化の観察、または、ペプチド-N-グリコシダーゼF(PNGase-F;SigmaAldrich,St.Louis,MO)などの酵素によってアスパラギン結合グリコシル化を除去しての質量変化の観察によることが挙げられる。
【0047】
ポリペプチドのグリコシル化は典型的にはN結合またはO結合のいずれかである。N結合とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物成分の付加を指す。トリペプチド配列であるアスパラギン-X-セリン(NXS)及びアスパラギン-X-スレオニン(NXT)においてXがプロリン以外のいずれかのアミノ酸であるものは、アスパラギン側鎖への炭水化物成分の酵素的付加に対する認識配列である。このようにして、ポリペプチドにおけるこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在は潜在的グリコシル化部位を作り出す。O結合グリコシル化とは、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリンまたはスレオニンへの、糖であるN-アセチルガラクトサミン、ガラクトース、またはキシロースの1つの付加を指すが、5-ヒドロキシプロリンまたは5-ヒドロキシリジンも使われ得る。
【0048】
抗原結合タンパク質へのグリコシル化部位の付加は、アミノ酸配列が(N結合型グリコシル化部位に対する)上述のトリペプチド配列の1つ以上を含有するようにそのアミノ酸配列を変化させることによって、便宜的に達成される。変化はまた、(O結合グリコシル化部位に対する)開始配列への1つ以上のセリンまたはスレオニン残基の付加またはそれによる置換によって行ってもよい。簡単にするために、タンパク質アミノ酸配列は好ましくは、DNAレベルでの変化を通して変化され、具体的には、所望のアミノ酸へ翻訳されるコドンが生成されるように、標的ポリペプチドをコードするDNAをあらかじめ選択された塩基で突然変異させることによって変化される。
【0049】
したがって、N結合型グリコシル化部位は、単一アミノ酸に対するコドンを変化させることによって付加してもよい。例えば、N-X-z(式中、zはいずれのアミノ酸であってもよい)は、N-X-T(またはN-X-S)をコードするように変化させることができ、あるいは、y-X-T/Sをコードするコドンは、N-X-T/Sをコードするように変化させることができる。あるいは、2つのアミノ酸をコードするコドンは、N結合型グリコシル化部位を導入するように同時に変化させることができる(例えば、y-X-zに対するコドンはN-X-T/Sをコードするように変化させることができる)。このようにして、1~10のN結合型グリコシル化部位を挿入することができる。
【0050】
N結合型グリコシル化部位をTIMP-3の中に挿入することに加えて、天然TIMP-3に存在するいずれのグリコシル化部位も、例えば、分子の構造を安定化させるために、修飾することができる。このようにして、例えば、残基208におけるAは、Y、V、またはGなど、異なる残基で置換してもよい。残基206~208における「N-X-T」部位での追加的変異としては、残基208における上述の置換の1つと組み合わせて、残基205でIをFに置換すること、または残基205でYをIに置換すること、が挙げられる。
【0051】
別の実施形態では、タンパク質切断に感受性であるまたは容易にタンパク質切断が起こりやすい領域が同定され、突然変異される。本発明の別の態様では、スカベンジャー受容体LRP-1との相互作用の低下を示すTIMP-3突然変異タンパク質または変異体が提供される。一実施形態では、かかる突然変異タンパク質は、TIMP-3及びLRP-1の間の相互作用において重要であると仮定されるリジン残基を同定し突然変異させることによって作製される。
【0052】
その上、TIMP-3突然変異タンパク質または変異体はこれらの特性の2つ以上を示し得る(例えば、グリコシル化部位が挿入されると、細胞培養培地でのヘパリンの必要性が低下し、LRP-1との相互作用が低下し、タンパク質加水分解への抵抗性が向上するということがあり得る)ことが認識される。追加的な実施形態としては、突然変異の組合せが上述の特性または作用の2つ以上を生じさせるように2つ以上の突然変異を有するTIMP-3突然変異タンパク質または変異体が挙げられる。
【0053】
望ましいTIMP-3突然変異タンパク質はいくつかの方法で同定することができる。第1の方法では、インシリコ分析を用い、TIMP-3と関連メタロプロテイナーゼ阻害物質TIMP-2との間で電荷の再バランスを促進する(後者は良好な哺乳動物の発現プロファイルを示すことが観察されている)。本発明の一実施形態では、TIMP-3表面に露出した正電荷のパッチを、TIMP-2電荷表面を摸するように再分布させる。別の実施形態では、TIMP-2とTIMP-3の電荷の差異を、グリコシル化部位の挿入によってマスクする。グリコシル化挿入もまた、発現の向上に有用であり得る(例えば、Enhancing the Secretion of Recombinant Proteins by Engineering N-Glycosylation Sites.Liu Y.et al,Amer Inst Chem Eng 2009,pg.1468を参照)。
【0054】
このようにして、別の実施形態では、コンピューター分析によって明らかにされた溶媒曝露部位のサブセットをふるいにかけて、N-グリコシル化の見込みを調べる。グリコシル化部位の挿入が関係する方法の場合、潜在的N結合型グリコシル化を促進するよう突然変異され得る部位を、例えば、基準のN-x-Tグリコシル化部位(Nはアスパラギンであり、xはいずれかのアミノ酸であり、Tはスレオニンである)を形成するように突然変異され得る残基を同定することによって選定し、これにN-グリコシル化予測ツールが有用である。更なる実施形態では、構造に基づく方法を用いて、溶媒に曝露されたアミノ酸(側鎖の曝露が20Åより大きいアミノ酸を含む)全てを同定する。追加的な実施形態としては、TIMP-3に対して相互作用RAPリジンがマップされたLRP1/RAP(受容体付随タンパク質)の結晶構造に基づき、TIMP-3上にLRP1相互作用リジンを突然変異させることが挙げられる。
【0055】
本明細書では、追加的組合せが企図される。例えば、F57N突然変異を、リジン残基での突然変異と組み合わせて作製することができ、リジン残基はTIMP-3のなかのいずれかのリジンである。一実施形態では、単一のリジンが突然変異され、別の実施形態では、2、3、4、または5のリジン残基が突然変異される。所定の実施形態では、アミノ酸45及び/または133におけるリジン残基は、突然変異させることができる。別の例では、F57N突然変異は、単一N結合型グリコシル化部位を導入し、この突然変異は、追加的グリコシル化部位を導入する追加的突然変異、または、TIMP-3の上述の特性の1つ以上に影響するように設計された他の突然変異で作製することができる。本明細書では、1つの導入されたN結合型グリコシル化部位を含むTIMP-3突然変異タンパク質または変異体、2、3、または4のN結合グリコシル化部位を含むTIMP-3突然変異タンパク質または変異体、及び5以上のN結合型グリコシル化部位を含むTIMP-3突然変異タンパク質または変異体が企図される。
【0056】
具体的な突然変異を図1及び2に示す。図1は、天然の全長ヒトTIMP-3と突然変異型の全長ヒトTIMP-3の配列比較を示し、後者では、配列内の特定のアミノ酸を文字「X」に置き換えてある。シグナル配列には下線が引いてあり、したがって、それは本明細書に記載のとおりに他のシグナル配列に置換することができる。所定の置換が成熟型のTIMP-3において考えられ、本明細書中に「n#m」として表されており、そこで、「n」は天然の全長TIMP-3に見出されるアミノ酸を表し、「#」はアミノ酸残基数を表し、「m」は、置換されたアミノ酸を表す。このようにして、例えば、「K45N」は、アミノ酸45にあるリジン(K)がアスパラギン(N)で置換されたことを示す。本明細書に例示される突然変異型のヒトTIMP-3は、次の突然変異を含む(単独または組合せで):K45N;K45S;V47T;K50N;V52T;P56N;F57N;G58T;T63E;T63N;K65T;T74E;H78E;H78E;H78N;Q80T;K94N;E96T;D110N;K112T;Q126N;R138T;及びG173T。これらの突然変異の組合せも企図され、上述の置換の2~10(即ち、2、3、4、5、6、7、8、9、または10)を含むことができる。
【0057】
突然変異の具体的な組合せとしては、K45E、K49S;K45E、K49E;K45E、T63E;K45E、Q80E;K45E、T63E、H78E;T63E、H78E、Q80E;K45E、T63E、H78E、Q80E;L51T、T74E、H78D;T74E、H78E、Q80E;T74E、H78D、Q80E;K45N、V47T;K49N、L51T;K75N、P77T;K45E、K49N、L51T、T63E;E96N、N98T;V97N、K99T;R138N、H140T;T158N、K160T;T166N、M168T;H181N、A183T;R186N、K188T;P201N、K203T;A208Y;A208V;T63E、T74E、H78E;T63E、T74E、H78D;K65N、M67T;K45N、V47T、T63E、T74E、H78E;K49N、L51T、T63E、T74E、H78E;K49N、L51T、T74E、H78E;K49N、L51T;K50N、V52T;L51N、K53T;T63N、K65T;H78N、Q80T;K94N、E96T;D110N、K112T;Q126N;R138T;G173T;F57N;P56N、G58T;P56N、G58T;T63N、K65T;K45S、F57N;K49S、F57N;K68S、F57N;K133S、F57N;K45S、K133S、F57N;及びK49S、K68S、F57Nが挙げられる。
【0058】
追加的な組合せとしては、K45S、F57N、D110N、K112T;K45S、F57N、H78N、Q80T、D110N、K112T;K45S、F57N、H78N、Q80T、D110N、K112T、Q126N;K45S、F57N、H78N、Q80T、K94N、E96T Q126N;K45S、F57N、H78N、Q80T、Q126N、G173T;K45S、F57N、T63N、K65T;K45S、F57N、T63N、K65T、K94N、E96T;K45S、F57N、T63N、K65T、K94N、E96T、G173T;K45S、F57N、T63N、K65T、R138T、G173T;K45N、V47T、F57N、T63N、K65T、R138T、G173T;K45S、F57N、T63N、K65T、K94N、E96T、R138T;K45N、V47T、F57N、T63N、K65T、K94N、E96T、R138T;K45S、F57N、Q126N、R138T、G173T;P56N、G58T、T63N、K65T、K94N、E96T、Q126N、G173T;P56N、G58T、T63N、K65T、D110N、K112T、Q126N、G173T;及びK45S、F57N、Q126N、R138T、G173Tが挙げられる。
【0059】
更なる突然変異としては、K49S、K50N/V52T、K53E、V97N/K99T、R186N/K188T;K50N/V52T、V97N/K99T、R186N/K188T;K49E、K53E、K188Q;K50N/V52T、R186N/K188T;K50N/V52T、F57N、R186N/K188T;K45S、K50N/V52T、F57N、R186N/K188T;K50N/V52T、F57N、T63N/K65T、R186N/K188T;K45S、K50N/V52T、F57N R186N/K188T;K45S、K49S、K50N/V52T、F57N R186N/K188T;K49S、K50N/V52T、F57N、V97N/K99T、R186N/K188T;及びK45S、K50N/V52T、F57N、V97N/K99T、R186N/K188Tが挙げられる。
【0060】
図2は、天然の全長ヒトTIMP-3と変異体のTIMP-3の配列比較を示し、後者では、配列をTIMP-2の配列にさらに類似させる所定のアミノ酸の置換が行われている。シグナル配列が存在し、天然の全長TIMP-3配列のそれに下線を引いて番号付けの一貫性を維持するようにし、したがって、それは本明細書に記載のとおりに他のシグナル配列に、置換することができる。TIMP-3変異体の配列では、特定のアミノ酸を「X」に置き換え、成熟型のTIMP-3において置換が考えられる残基を示している。これらの置換としては、残基25におけるH、K、P、R、S、またはW;残基27におけるA;残基28におけるD、L、またはS;残基32におけるN;残基39におけるT;残基43におけるT、F、A又、はN;残基45におけるI、またはT;残基46におけるD;残基48におけるS;残基49におけるS;残基51におけるT;残基63におけるN;残基67におけるN;残基68におけるI;残基78におけるD、またはW;残基96におけるT;残基202におけるN、及び残基207におけるSが挙げられる。置換は単独で行われても、組合せて行われてもよい。このようにして、図1に対して記載される記号化を用いると、図2で例示される1つの変異体はA27T、I68Kである。追加的な組合せも企図され、上述の置換の2~10を含むことができる。さらに、図2に記載される置換を図1に記載される置換、例えば、A27T、P56N、G58Tと組み合わせることができる。
【0061】
Leeら(J.Biol.Chem.282:6887;2007)は、TIMP-3における細胞外マトリクス結合モチーフを同定すると主張した研究を開示する。彼らは、TIMP-3における既知のヘパリン結合配列の同定に失敗したとき、11のリジン及びアルギニン残基を同定し、その位置が、これらの塩基性アミノ酸残基の側鎖がかなりの高密度でTIMP-3の表面に露出されると考えられることを示唆した。これらの残基は、K26、K27、K30、K71、K76、R100、K123、K125、K137、R163、K165であった(本明細書で使用される番号方式では、これらの残基は、K49、K50、K53、K94、K99、R123、K146、K148、K160、R186、K188という番号になる)。したがって、追加的なTIMP-3突然変異タンパク質としては、下に示されるものが挙げられる。これらの突然変異タンパク質は、部分的または完全なヘパリンへの非依存性を示すと考えられる。表面露出した塩基性アミノ酸側鎖の変異に追加的である。一定の突然変異はまた、TIMP-3突然変異タンパク質の中にN結合型グリコシル化部位を導入する(即ち、K94N/E96T)。
【0062】
ヘパリン非依存性を低減するように作製された突然変異タンパク質としては、K49E、K50E、K53E、K99E、R186Q、K188Q;K49E、K50E、K53E、F57N、K99E、R186Q、K188Q;K45S、K50E、K53E、F57N、K99E、R186Q、K188Q;K49S、K50N/V52T、K99E、K188Q;K50N/V52T、K99E、K188Q;K50N/V52T、K94N/E96T、K188Q;K50N/V52T、K94N/E96T、G173T;K50N/V52T、R186N/K188T;K50N/V52T、K94N/E96T、R186N、K188T;K50N/V52T、F57N、K94N/E96T、R186N/K188T;K45S、K50N/V52T、F57N、K94N/E96T、R186N/K188T;K50N/V52T、T63N/K65T、K94N/E96T、R186N/K188T;K45S、K50N/V52T、T63N/K65T、K94N/E96T、R186N/K188Tが挙げられる。本発明によれば、これらの突然変異タンパク質のいくつかは、複数の有利な特性を示し得る。例えば、突然変異タンパク質には、挿入されたN結合型グリコシル化部位を含有するものもあれば、哺乳動物の細胞系における発現を向上させる突然変異を含むものもある。
【0063】
TIMP-3変異体、突然変異タンパク質、または誘導体は、天然TIMP-3の配列にかなり類似したアミノ酸配列を有することになる。一実施形態では、TIMP-3変異体、突然変異タンパク質、または誘導体は天然TIMP-3と少なくとも85%同一であることになり;別の実施形態では、TIMP-3変異体、突然変異タンパク質、または誘導体は天然TIMP-3と少なくとも90%同一であることになり;別の実施形態では、TIMP-3変異体、突然変異タンパク質、または誘導体は天然TIMP-3と少なくとも95%同一であることになる。さらなる実施形態では、TIMP-3変異体、突然変異タンパク質、または誘導体は天然TIMP-3と少なくとも96%同一、97%同一、98%同一、または99%同一である。本明細書で使用される場合、パーセントで表される同一性は、成熟全長型天然TIMP-3、即ち、シグナルペプチド(TIMP-3のアミノ酸24~211)を欠くTIMP-3に対する成熟全長型の変異体、突然変異タンパク質、または誘導体の比較を指す。当業者であれば、TIMP-3のN末端領域の変異体、突然変異タンパク質、または誘導体と、天然TIMP-3のN末端領域との間で類似の比較が行えることを容易に理解するものである。
【0064】
類似性はまた、突然変異タンパク質または変異体と天然TIMP-3との間で異なるアミノ酸の数によっても表現できる。例えば、TIMP-3変異体または突然変異タンパク質は、1つのアミノ酸、2つのアミノ酸、3つのアミノ酸、4つのアミノ酸、5つのアミノ酸、6つのアミノ酸、7つのアミノ酸、8つのアミノ酸、9つのアミノ酸、または10のアミノ酸だけ、天然TIMP-3と異なり得る。天然TIMP-3とは10のアミノ酸で異なる変異体または突然変異タンパク質は、天然TIMP-3と約95%同一であることになる。さらなる実施形態では、TIMP-3変異体または突然変異タンパク質は、天然成熟TIMP-3とは11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20のアミノ酸で異なる。
【0065】
TIMP-3ポリペプチド(天然、突然変異タンパク質、変異体、または誘導体のいずれか)をコードする核酸に追加的な変更を行って発現を容易にすることができる。例えば、天然TIMP-3のシグナルペプチドは、異なるシグナルペプチドで置換することができる。
【0066】
本発明の範囲内に入るTIMP-3ポリペプチドの他の誘導体としては、TIMP-3ポリペプチドまたはその断片と他のタンパク質またはポリペプチドとの共有結合性または集合性共役体が挙げられ、例えば、TIMP-3ポリペプチドのN末端またはC末端に融合された異種ポリペプチドを含む組換え融合タンパク質の発現によるものなどである。例えば、共役ペプチドは、異種シグナル(またはリーダー)ペプチド、例えば、酵母菌α因子リーダーや、エピトープタグなどのペプチドであってもよい。異種シグナルペプチドは、天然TIMP-3シグナルペプチドとは長さが異なるが、異種シグナルペプチドを用いて産生されたTIMP-3ポリペプチドのN末端システイン残基を整列させることによって、成熟TIMP-3のアミノ酸配列に対する突然変異タンパク質の位置を正しく同定することができる、ということを当業者は理解する。
【0067】
TIMP-3ポリペプチドを含有する融合タンパク質は、TIMP-3ポリペプチドの精製または同定を容易にするために付加されるペプチド(例えば、ポリHis)を含んでもよい。別のタグペプチドとしては、Hopp et al.,Bio/Technology 6:1204,1988、及び米国特許第5,011,912号に記載されるFLAG(登録商標)ペプチドがある。FLAG(登録商標)ペプチドは抗原性が高く、特定のモノクローナル抗体(mAb)によって可逆的に結合されるエピトープを提供し、発現された組換えタンパク質の迅速なアッセイと容易な精製を可能にする。FLAG(登録商標)ペプチドが所与のポリペプチドに融合されている融合タンパク質を調製するのに有用な試薬は市販されている(Sigma,St.Louis,MO)。
【0068】
共有結合修飾物もまた、TIMP-3ポリペプチドの誘導体と考えられ、本発明の範囲内に含まれ、必ずという訳ではないが概ね翻訳後に作られる。例えば、選ばれた側鎖またはN末端残基もしくはC末端残基と反応できる有機誘導体化剤に抗原結合タンパク質の特定のアミノ酸残基を反応させることによって、抗原結合タンパク質の共有結合修飾物のいくつかの型のものが分子の中に導入される。
【0069】
システイニル残基は最も一般的には、クロロ酢酸またはクロルアセトアミドなどのαハロアセテート(及び対応するアミン)と反応してカルボキシメチルまたはカルボキシアミドメチルの誘導体を生じる。システイニル残基はまた、ブロモトリフルオロアセトン、α-ブロモ-β-(5-イミドゾイル(imidozoyl))プロピオン酸、クロロアセチルリン酸塩、N-アルキルマレイミド、3-ニトロ-2-ピリジルジスルフィド、メチル2-ピリジルジスルフィド、p-クロロ第二水銀安息香酸、2-クロロ水銀-4-ニトロフェノール、またはクロロ-7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾールとの反応によって誘導体化される。したがって、本発明の一態様では、システイニル残基は、例えば、選ばれたコドンを変化させてCysをコードするようにすることによって、天然TIMP-3配列に付加される。かかるCys置換は、発現、フォールディング、または本明細書に示す他の特性に重要であることが明らかになっている、TIMP-3中の領域でなされ得る。
【0070】
本発明のタンパク質の炭水化物成分の数は、タンパク質へのグリコシドの化学的カップリングまたは酵素カップリングによって増やすことができる。これらの手順は、N及びO結合グリコシル化のためのグリコシル化能力を有する宿主細胞でタンパク質を産生することを必要としない点で有利である。用いられる結合モードによっては、糖は、(a)アルギニン及びヒスチジン、(b)遊離カルボキシル基、(c)システインの遊離スルフヒドリル基など、遊離スルフヒドリル基、(d)セリン、スレオニン、またはヒドロキシプロリンの遊離ヒドロキシル基など、遊離ヒドロキシル基、(e)フェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンの芳香族残基など、芳香族残基、または(f)グルタミンのアミド基、に付加されてもよい。これらの方法は、1987年9月11日公開のWO87/05330、並びにAplin及びWriston,1981,CRC Crit.Rev.Biochem.,pp.259-306に記載される。
【0071】
開始組換えタンパク質に存在する炭水化物成分の除去を、化学的または酵素的に行ってもよい。化学的脱グリコシル化は、化合物トリフルオロメタンスルホン酸または同等の化合物へのタンパク質の曝露を必要とする。この処理は、連結糖(N-アセチルグルコサミンまたはN-アセチルガラクトサミン)を除くほとんどまたは全ての糖の切断という結果になり、一方、ポリペプチドを無傷なままとする。化学的脱グリコシル化は、Hakimuddin et al.,1987,Arch.Biochem.Biophys.259:52、及びEdge et al.,1981,Anal.Biochem.118:131に記載される。ポリペプチドの炭水化物成分の酵素切断は、Thotakura et al.,1987,Meth.Enzymol.138:350に記載されるような種々のエンドグリコシダーゼ及びエキソグリコシダーゼの使用によって達成できる。潜在的グリコシル化部位でのグリコシル化を、Duskin et al.,1982,J.Biol.Chem.257:3105に記載されるように化合物ツニカマイシンの使用によって防いでもよい。ツニカマイシンは、タンパク質-N-グリコシド結合の形成を妨げる。
【0072】
抗原結合タンパク質の共有結合修飾物の別の型は、米国特許第4,640,835号;同第4,496,689号;同第4,301,144号;同第4,670,417号;同第4,791,192号、または同第4,179,337号に示される方法による、蛋白質でない種々のポリマー、例えば、以下に限定されないが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、またはポリオキシアルキレンなど、種々のポリオールへのタンパク質の結合を含む。加えて、当分野で既知である通り、アミノ酸置換をタンパク質内の種々の位置で行い、PEGなど、ポリマーの付加を促進してもよい。
【0073】
TIMP-3ポリペプチドの発現
当分野で既知のいずれの発現系をも用いて本発明の組換えポリペプチドを作製することができる。一般に、宿主細胞は、所望のTIMP-3ポリペプチド(TIMP-3突然変異タンパク質または変異体を含む)をコードするDNAを含む組換え発現ベクターにより形質転換される。用いることのできる宿主細胞としては、原核生物、酵母菌またはより高等な真核生物細胞がある。原核生物としては、グラム陰性菌またはグラム陽性菌、例えば、大腸菌または桿菌が挙げられる。より高等な真核生物細胞としては、昆虫細胞及び哺乳動物起源の樹立細胞株が挙げられる。適切な哺乳動物の宿主細胞株の例としては、サル腎臓由来細胞のCOS-7株(ATCC CRL 1651)(Gluzman et al.,1981,Cell 23:175)、L細胞、293細胞、C127細胞、3T3細胞(ATCC CCL 163)、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、BHK(ATCC CRL 10)細胞株、及びMcMahan et al.,1991,EMBO J.10:2821に記載されるようなアフリカミドリザル腎臓由来細胞株CVI(ATCC CCL 70)に由来するCVI/EBNA細胞株が挙げられる。細菌、真菌、酵母菌、及び哺乳動物の細胞宿主と使用するのに適切なクローニング及び発現ベクターが、Pouwels et al.(Cloning Vectors:A Laboratory Manual,Elsevier,New York,1985)に記載される。
【0074】
哺乳動物の細胞発現は、天然TIMP-3の産生に非常によく似た高次構造のフォールディングと適合を容易にするという点で、TIMP-3ポリペプチドの産生に利点を提供することができる。数多くの哺乳動物細胞発現系が当分野で既知であり、かつ/または市販されており、後者の系としては、例えば、Gibco(登録商標)Freedom(登録商標)CHO-S(登録商標)(チャイニーズハムスター卵巣(CHO)由来懸濁培養液における組換えタンパク質のクローニングと発現の全ての側面で容易に使用できるよう設計された製品;ProBioGen,Life Technologies;Carlsbad,CA)、GS Gene Expression System(商標)(高収率で安定したcGMP適合性哺乳動物細胞株の発生を提供するように設計されたトランスフェクション系;Lonza Biologics,Slough,UK)、PER.C6(登録商標)技術(単一の不死化ヒト細胞に由来する連続的に分かれる一式の細胞を利用して、組換えタンパク質の大規模産生を容易にするよう設計されたツールの一揃い;Crucell Leiden,The Netherlands)、または、CAP及びCAP-T(複合タンパク質の発現と産生のための、ヒト細胞に基づく発現系;Cevec,Cologne,Germany)などの不死化羊膜細胞、が挙げられる。
【0075】
追加的な細胞発現系としては、例えば、Selexis SUREtechnology Platform(商標)(組換えタンパク質を産生するよう発生細胞株を促すために種々の細胞株に適用できる技術基盤;Selexis Inc.,Switzerland);ProFection(登録商標)Mammalian Transfection Systems(組換えタンパク質の産生のために細胞の高効率トランスフェクションを提供するトランスフェクション系;Promega,Madison WI);the Expi293(商標)Expression System(高密度な、哺乳動物の一過性タンパク質発現系,Life Technologies,Grand Island,NY);及び、MaxCyte(登録商標)VLX(商標)及びSTX(商標)Transient Transfection Systems(抗体も含む組換えタンパク質の産生において用いられる拡大可能なトランスフェクション系;MaxCyte,Gaithersburg,MD)が挙げられる。当業者はさらに、例えば、Wigler et al.(Cell 1979:777)に最初に記載された技術、及び、例えば、カナダ国立研究機構(the National Research Council of Canada)のウェブサイトに記載される追加的技術など、他の発現系を知っている。
【0076】
形質転換された細胞の培養及び組換えタンパク質の産生に適切な種々の容器が当分野で既知である。これらとしては、24ディープウェルプレート、250mlと1Lの振とうフラスコ、及び種々のサイズの種々のバイオリアクター、例えば、2L、5L、10L、30L、100L、1000L、10000L、及びそれより大きいバイオリアクターが挙げられる。細胞培養のための他の適切な容器は当分野で既知であり、また、本明細書に記載されるようにも用いることができる。
【0077】
細胞培地調合物が当分野で周知であり、典型的には、培地は、最低限の増殖及び/または生存のために細胞が必要とする必須アミノ酸及び可欠アミノ酸、ビタミン、エネルギー源、脂質、及び微量元素、並びに緩衝液、及び塩を提供する。培養培地はまた、増殖及び/または生存を最低限の進度以上で向上させる補足成分、例えば、以下に限定されないが、ホルモン及び/または他の増殖因子、特定のイオン(ナトリウム、塩化物、カルシウム、マグネシウム、及びリン酸塩など)、緩衝液、ビタミン、ヌクレオシドまたはヌクレオチド、微量元素(通常非常に低い最終濃度で存在する無機化合物)、アミノ酸、脂質、及び/またはグルコースもしくは他のエネルギー源を含有してもよく;本明細書に記載される通り、培養培地に細胞周期阻害剤を加えてもよい。所定の実施形態では、培地は、細胞の生存及び増殖に最適なpH及び塩濃度に有利に調合される。所定の実施形態では、培地は、細胞培養の初期の後に加えられる流加培地である。所定の実施形態では、細胞培養培地は、出発栄養液と、細胞培養の初期の後に加えられる何らかの流加培地との混合物である。
【0078】
定義された培地を含め、種々の組織培地が市販されており、例えば、次の細胞培地のいずれか1つまたは組合せをとりわけ用いることができる:RPMI-1640培地、RPMI-1641培地、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、Minimum Essential Medium Eagle、F-12K培地、Ham’s F12培地、イスコフ改変ダルベッコ培地、McCoy’s 5A培地、Leibovitz’s L-15培地、及びEX-CELL(商標)300シリーズ(JRH Biosciences,Lenexa,Kansas)などの無血清培地。かかる培地の無血清版もまた市販されている。培養する細胞に必要な事柄及び/または所望の細胞培養パラメーターによっては、アミノ酸、塩、糖、ビタミン、ホルモン、増殖因子、緩衝液、抗生物質、脂質、微量元素、及び同種のものなど、追加の成分またはより濃度の高い成分を細胞培地に追加してもよい。
【0079】
形質転換された細胞はポリペプチドの発現を促進する条件下で培養でき、ポリペプチドは従来のタンパク質精製手法によって回収できる。1つのかかる精製手法としては、親和性クロマトグラフィー並びに当分野で既知の他の方法の使用が挙げられる。哺乳動物の上清から親TIMP-3またはTIMP-3突然変異タンパク質を単離する1つの方法は、カルボキシ末端6x-ヒスチジンタグに融合したTIMP-3を6x-ヒスチジン親和性Ni-セファロース樹脂と組み合わせて利用することである(例えば、固定化金属親和性クロマトグラフィー(IMAC)であり;一般的な手法は当分野で既知であり、かかる手法のための試薬や例がQIAGEN,Germantown,MD及びGE Healthcare,Pittsburg,PAによって概説されている)。陽イオン交換クロマトグラフィー(例えば、SP-HP Sepharose(登録商標),GE Healthcare)を利用して、IMAC溶出後にTIMP-3をさらに単離することができ、あるいは、代替的手段としてIMACを用いずに哺乳動物の上清からTIMP-3を捉えることができる(塩化ナトリウム勾配を中性pHで用いると、TIMP-3及びその突然変異タンパク質の溶出が起こる)。サイズ排除クロマトグラフィー(例えば、Superdex 200(登録商標),GE Healthcare(移動相の例:10mM NaHPO、1.8mM KH2PO4、137mM NaCl、2.7mM KCl))が、TIMP-3またはその突然変異タンパク質をさらに単離するのに用いることのできる一般的な手段である(IMAC方法またはイオン交換クロマトグラフィーと組み合わせて)。これらの方法及び他の方法は当分野で既知であり、例えば、Protein Purification:Principles:High Resolution Methods,and Applications,Third Edition (2012,John Wiley and Sons;Hoboken,NJ)を参照されたい。
【0080】
ポリペプチド(天然TIMP-3またはTIMP-3突然変異タンパク質もしくは変異体)の量は、細胞培養上清液、即ち馴化培地(CM)における組換えTIMP-3(天然、変異体、または突然変異タンパク質)の量の分析ができるいずれの適切な定量的または半定量的方法によっても決定できる。適切な定性的または半定量的方法としては、ウエスタンブロット及びクーマシー染色SDS PAGEゲルが挙げられる。定量的な測定方法としては、例えば、ヒトTIMP-3 ELISA(R&D Systems Inc.,Minneapolis,MN)、または、抗体の媒介によってTIMP-3を捕捉するForteBio Octet(登録商標)(Pall ForteBio Corp,Menlo Park,CA)、または、精製TIMP-3に対する直接UV(紫外線)吸光度(280nm)測定などの酵素免疫測定法などの使用が挙げられる。
【0081】
このようにして、TIMP-3における特定の突然変異の作用を、作製された組換え突然変異タンパク質の量と、類似の培養条件下で作製された天然タンパク質の量とを比較することによって評価することができる。TIMP-3突然変異タンパク質または変異体は、天然TIMP-3に対して観察されるレベルの1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、またはそれ以上のレベルで発現させることができる。所望であれば、種々の形式のTIMP-3に対する比較または比産生能(specific productivity)を可能とするよう、形質転換またはトランスフェクトされた特定の細胞株の比産生能を決定することができる。比産生能、即ちqPは、1日1細胞当りの組換えタンパク質のピコグラム数(pg/c/d)で表現され、培養液の細胞を定量化する当分野で既知の方法、及び組換えタンパク質を定量化する上述の方法を適用することによって容易に決定できる。
【0082】
TIMP-3ポリペプチドの用途
TIMP-3ポリペプチド、変異体、突然変異タンパク質、または誘導体は、例えば、アッセイにおいて用いることができ、あるいは、それらはより多いレベルのTIMP-3活性が望まれるいずれかの状態(即ち、TIMP-3によって阻害されるか阻害され得るマトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)及び/または他のプロテイナーゼが原因的または増悪的働きをする状態)の治療でも用いることができ、それとしては、以下に限定されないが、炎症性状態、骨関節炎、及び過剰もしくは不適切なMMP活性が起こる他の状態(例えば、心筋虚血、再潅流傷害、及び鬱血性心不全への進行途中)が挙げられる。炎症性状態としては、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び特発性肺線維症(IPF)、炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病、及びセリアック病)、乾癬、ウイルス性心筋炎を含む心筋炎、アテローム性動脈硬化症に関連した炎症、並びに、関節リウマチ、乾癬性関節炎及び同種のものを含む関節炎の状態が挙げられる。
【0083】
本明細書に記載されるTIMP-3ポリペプチド、変異体突然変異タンパク質、または誘導体組成物は、病原を改変し、マトリクス分解及び/または炎症、即ちメタロプロテイナーゼが有害な働きをするそれらの状態によって特徴づけられる疾患または状態に対して有益な治療法を提供する。組成物は、単独で用いてもよく、かかる状態の治療で用いられる1つ以上の剤と組み合わせて用いてもよい。したがって、本発明のTIMP-3ポリペプチド、変異体突然変異タンパク質、または誘導体組成物は、メタロプロテイナーゼ活性によって過剰なマトリクス損失が引き起こされるいずれの障害の治療においても有用であり得る。本発明のTIMP-3変異体突然変異タンパク質、または誘導体組成物は、コラゲナーゼ、アグリカナーゼ、または他のマトリクス分解性または炎症促進性酵素の過剰産生に関連する種々の障害、例えば、栄養障害型表皮水疱症、骨関節炎、ライター症候群、偽痛風、若年性関節リウマチを含む関節リウマチ、強直性脊椎炎、強皮症、歯周病、角膜潰瘍、表皮潰瘍、胃潰瘍を含む潰瘍、手術後の創傷治癒、及び再狭窄の治療において、単独でも有用であり、他の薬物と組み合せられても有用である。過剰なコラーゲン及び/またはプロテオグリカン分解が一因であり得て、したがって、TIMP-3ポリペプチド、変異体突然変異タンパク質、または誘導体組成物の適用が可能な他の病状としては、肺気腫、骨パジェット病、骨粗鬆症、強皮症、褥瘡などの骨もしくは組織の圧迫萎縮、真珠腫、及び創傷治癒異常が挙げられる。直接的または間接的に(例えば、心筋虚血,再潅流傷害における場合及び鬱血性心不全への進行における場合の)TIMP-3の量の低下またはメタロプロテアーゼの量の上昇の結果であるさらなる状態はまた、本明細書に記載の組成物を単独で用いるか、または、かかる状態に罹った個人の治療に一般的に用いられる他の薬物と併せて用いて、治療することができる。TIMP-3ポリペプチド、変異体、突然変異タンパク質、または誘導体組成物は、他の創傷治癒促進剤の補助剤として、例えば、治癒過程中にコラーゲンの代謝回転を調節するために、追加的に適用できる。
【0084】
多くのメタロプロテイナーゼはまた、炎症誘発性活性を示し、このことに応じた追加的実施形態としては、炎症及び/または自己免疫障害を治療する方法が挙げられ、障害としては、以下に限定されないが、軟骨炎症、及び/または骨分解、関節炎、関節リウマチ、少関節性リウマチ様関節炎、多関節性リウマチ様関節炎、全身性発症関節リウマチ、強直性脊椎炎、腸疾患性関節炎、反応性関節炎、ライター症候群、SEA症候群(血清陰性、腱付着部症、関節症症候群)、皮膚筋炎、乾癬性関節炎、強皮症、全身性エリテマトーデス、脈管炎、マイオリティス、ポリマイオリティス、ダーマトマイオリティス、骨関節炎、結節性多発動脈炎、ウェゲナー肉芽腫症、動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、サルコイドーシス、硬化症、原発性胆汁性硬化症、硬化性胆管炎、シェーグレン症候群、乾癬、尋常性乾癬、滴状乾癬、倒置乾癬、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、アテローム性動脈硬化症、ループス、スチル病、全身性エリテマトーデス(SLE)、重症筋無力症、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、セリアック病(非熱帯性スプルー)、血清反応陰性関節症に関連した腸疾患、顕微鏡的大腸炎またはコラーゲン形成大腸炎、好酸球性胃腸炎、または直腸結腸切除及び回腸肛門吻合の後に起こる嚢炎、膵炎、インスリン依存性糖尿病、乳腺炎、胆嚢炎、胆管炎、胆管周囲炎、多発性硬化症(MS)、喘息(外因性喘息及び内因性喘息、並びに、関連する気道の慢性炎症性状態または応答性亢進、を含む)、慢性閉塞性肺疾患(COPD、即ち、慢性気管支炎、肺気腫)、急性呼吸器疾患症候群(ARDS)、呼吸促迫症候群、嚢胞性線維症、肺高血圧症、肺血管収縮、急性急性肺傷害、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症、過敏性肺炎、好酸球性肺炎、気管支炎、アレルギー性気管支炎気管支拡張症、結核、過敏性肺炎、職業性喘息、喘息様障害、サルコイド、反応性気道疾患(または機能不全)症候群、綿肺、間質性肺疾患、好酸球増加症候群、鼻炎、副鼻腔炎、及び肺寄生虫症、ウイルス性誘発性状態に関連した気道過敏(例えば、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、パラインフルエンザウイルス(PIV)、ライノウイルス(RV)及びアデノウイルス)、ギラン・バレー疾患、グレーブス病、アジソン病、レイノー現象、自己免疫性肝炎、GVHD、及び同種のものが挙げられる。TIMP-3ポリペプチド、変異体、突然変異タンパク質、または誘導体はまた、TIMP-3の相対的レベルの低下(即ち、TIMP-3の量の低下またはメタロプロテアーゼの量の増加の結果であり得る、メタロプロテアーゼに対する内因性TIMP-3の割合の低下)が、例えば、心筋虚血、再潅流傷害における病理的作用、及び鬱血性心不全への進行中における病理的作用に関連する場合に用途がある。
【0085】
TIMP-3が結合組織分解を阻害する能力に基づき、TIMP-3ポリペプチド、変異体、突然変異タンパク質、または誘導体は、血管形成の阻害が、例えば、腫瘍成長の予防または抑制、及び、寄生虫の侵入の予防において有用である場合に用途がある。例えば、腫瘍の浸潤と転移に関する分野では、いくつかの特定の腫瘍の転移能は、コラゲナーゼを合成し分泌する能力の向上に相関し、相当量のメタロプロテイナーゼ阻害物質を合成し分泌する能力のなさに相関する。本開示のTIMP-3タンパク質はまた、原発性腫瘍の除去の間、化学療法及び放射線療法の間、汚染された骨髄の採取の間、及びがん性腹水のシャンティングの間、腫瘍細胞転移を阻害する場合に治療用途がある。診断的には、腫瘍試料におけるTIMP-3産生の不在とその転移能の相関関係は、予後指標として、また、可能な予防治療のための指標として、有用である。
【0086】
MMPはまた、血液脳関門(BBB)を開けるための経路の一部として、脳の基底層及び密着結合タンパク質に作用し、炎症の細胞及び可溶性メディエーターが脳に入ることを促進する。したがって、本発明の組成物及び方法は、BBBの過剰な透過化または不適切な透過化によって特徴づけられる神経系の障害の治療において有用であり得る。加えて、ニューロンの回りのマトリクスタンパク質が分解すると、接触の損失及び細胞死が起こり得、したがって、開示されるTIMP-3組成物は、神経細胞を取り囲む基底膜を保存することによって、神経細胞を損傷から保護することができる。本発明のTIMP-3組成物は、傷害、例えば、脳虚血、または外傷性脳損傷に対する神経炎症性応答の治療または改善に有用である。本明細書に開示される組成物はまた、炎症が疾患、例えば、多発性硬化症の根本原因である神経変性疾患の治療において有用であり、同様に、種々の形式の神経障害及び/またはミオパチー、脊髄損傷、並びに筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療において有用であろう。したがって、本発明の組成物の使用は、BDNF、NT-3、NGF、CNTF、NDF、SCF、または他の神経細胞の成長もしくは増殖調節因子との併用があり得る。加えて、本発明の組成物及び方法は、結合組織破壊の局所性阻害が組織の外観を変化させ得るという点で美容目的にも適用可能であり得る。
【0087】
TIMP-3ポリペプチド、変異体、突然変異タンパク質、または誘導体は、生体外処置での使用または生体内での投与を行って、内因性TIMP-3活性の増大及び/またはTIMP-3誘発性生物活性の向上が可能である。本発明のTIMP-3ポリペプチド、変異体、突然変異タンパク質、または誘導体は、内因性TIMP-3が下方制御されるか低レベルで存在する状況の下、生体内で用いてもよい。そうして、TIMP-3阻害可能プロテイナーゼが(直接的または間接的に)発生または悪化させる障害が治療でき、その例が本発明に提供される。一実施形態では、本発明は、TIMP-3誘発性生物活性を増加させるのに有効な量でTIMP-3ポリペプチド、変異体、突然変異タンパク質、または誘導体をそれを必要とする哺乳動物に生体内投与することを含む治療的方法を提供する。別の実施形態では、本発明は、TIMP-3の内在レベルを上昇させるのに有効な量でTIMP-3ポリペプチド、変異体、突然変異タンパク質、または誘導体をそれを必要とする哺乳動物に生体内投与することを含む治療的方法を提供する。
【0088】
別の態様では、本発明は、改善された半減期を生体内に有するTIMP-3ポリペプチド、変異体、突然変異タンパク質、または誘導体を提供する。一実施形態では、TIMP-3突然変異タンパク質の半減期は、天然TIMP-3のそれの少なくとも2倍であり;別の実施形態では、半減期は、天然TIMP-3のそれより少なくとも3倍、4倍、5倍、6倍、8倍、または10倍大きい。一実施形態では、半減期は、非ヒト哺乳動物において決定され、別の実施形態では、半減期はヒト対象において決定される。さらなる実施形態は、(例えば、ヒト対象に投与された場合に)少なくとも1日の半減期を生体内に有するTIMP-3突然変異タンパク質または変異体を提供する。一実施形態では、TIMP-3ポリペプチド、変異体、突然変異タンパク質、または誘導体は少なくとも3日の半減期を有する。他の実施形態では、TIMP-3ポリペプチド、変異体、突然変異タンパク質、または誘導体は、4日以上の半減期を有する。別の実施形態では、TIMP-3ポリペプチド、変異体、突然変異タンパク質、または誘導体は、8日以上の半減期を有する。
【0089】
別の実施形態では、TIMP-3ポリペプチド、変異体、または突然変異タンパク質は、それが非誘導体化または未修飾のTIMP-3結合タンパク質と比較して、より長い半減期を有するように誘導体化または修飾される。誘導体化ポリペプチドは、特定の使用において半減期を伸ばすなど、所望の特性をポリペプチドに付与するいずれの分子または物質をも含むことができる。誘導体化ポリペプチドは、例えば、検出可能(または標識)成分(例えば、放射性、比色性、抗原性、もしくは酵素性の分子、検出可能なビーズ(電磁ビーズまたは高電子密度(例えば、金)ビーズなど)、または別の分子に結合する分子(例えば、ビオチンまたはストレプトアビジン))、治療用または診断用成分(例えば、放射性、細胞毒性、もしくは薬剤的活性の成分)、または特定の使用に対するポリペプチドの適性を向上させる分子(例えば、ヒト対象などの対象への投与、または他の生体内または生体外使用)を含むことができる。
【0090】
一つのかかる例として、ポリペプチドは、例えば、WO2008063291及び/またはRothenfluh et al.,Nature Materials 7:248(2008)に開示される通り、関節軟骨組織に特異的に結合するリガンドで誘導体化される。ポリペプチドを誘導体化するために用いることのできる分子の例として、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)及びポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。ポリペプチドのアルブミン結合誘導体及びペグ化誘導体は、当分野に周知の技術を用いて調製できる。一実施形態では、ポリペプチドは、トランスサイレチン(TTR)またはTTR変異体と共役するかまたは別の方法で結合される。TTRまたはTTR変異体は、例えば、デキストラン、ポリ(n-ビニルピロリドン(vinyl pyurrolidone))、ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール、及びポリビニルアルコール(米国特許出願第20030195154号)からなる群より選択される化学薬品で化学的に修飾することができる。
【0091】
組成物
また、本発明に包含されるのは、有効量の本発明のポリペプチド産生物(即ち、TIMP-3ポリペプチド、変異体、突然変異タンパク質、または誘導体)を、TIMP-3治療法(即ち、TIMP-3の内在レベルを増やすことまたは内因性TIMP-3の活性を増大することが有用である状態)に有用な薬剤的に許容できる希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバント、及び/または担体とともに含む医薬組成物である。かかる組成物としては、様々な緩衝液含有量(例えば、トリスHCl、酢酸塩、リン酸塩)、pH、及びイオン強度の希釈剤;洗浄剤及び可溶化剤などの添加剤(例えば、トウィーン80、ポリソルベート80)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、保存剤(例えば、チメルソル(Thimersol)、ベンジルアルコール)及び充填物質(例えば、ラクトース、マンニトール);タンパク質へポリエチレングリコールなどのポリマーを共有結合的に付加したもの(上に考察の通りであり、例えば、米国特許第4,179,337号を参照されたく、なお、この文献は参照により本明細書に援用される);ポリ乳酸、ポリグリコール酸などのポリマー化合物の粒子状調製物またはリポソームに材料を組み込んだもの、が挙げられる。かかる組成物は、TIMP-3結合タンパク質の物理的状態、安定性、生体内放出速度、及び生体内排除速度に影響を与えることができる。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Ed.(1990,Mack Publishing Co.,Easton,PA 18042)1435-1712ページを参照されたく、なお、この文献は参照により本明細書に援用される。
【0092】
一般に、本発明のポリペプチドの有効量は、受容者の年齢、体重、状態、または疾患の重症度によって決めることになる。前掲のRemingtons Pharmaceutical Sciences,697~773ページを参照されたく、なお、この文献は参照により本明細書に援用される。典型的には、約0.001g/体重1kg~約1g/体重1kgの用量を用いてもよく、しかし、当分野の医師が認めるものであればそれより多い量も少ない量も用いることができる。局所適用または関節内適用など、局所的(即ち、非全身的)適用には、投薬は約0.001g/cm~約1g/cmであってもよい。投薬は、1日に1回または複数回でも、それより少なくてもよく、本明細書に記載の他の組成物と併用してもよい。本発明は本明細書に記載される用量に限定されないことに留意されたい。
【0093】
当分野で理解される通り、本発明の分子を含む医薬組成物は適応症に合った方法で対象に投与される。医薬組成物は、以下に限定されないが、非経口的投与、局在的投与、局所的投与、または吸入を含む、いずれの適切な手段によって投与してもよい。注射する場合、この医薬組成物は、例えば、静脈内、筋肉内、病巣内、腹腔内、または皮下の経路で、ボーラス注入または持続注入によって投与してもよい、
【0094】
例えば、疾患または傷害の部位における、経皮性送達及び移植片からの徐放であるような局在的投与が企図される。他の代替的方法としては、点眼剤が挙げられ、経口剤としては、丸剤、シロップ剤、菓子錠剤、またはチューインガムが挙げられ、局所用調製物としてはローション、ゲル、スプレー、及び軟膏が挙げられる。例えば、関節または筋骨格系への局在的投与としては、関節周囲、関節内、嚢内(intrabursal)、軟骨内、滑液包内、及び腱内(intratendinous)の投与が挙げられる。呼吸器系への投与としては、肺内、胸膜内(intraplural)、肺内、気管内、副鼻腔内、及び気管支内送達が挙げられ、例えば、吸入器または噴霧器によって促進することができる。脳及び/または神経系に組成物を導入するのに有用な髄腔内送達及び他の方法もまた本明細書で企図され、例えば、硬膜外、硬膜内、または硬膜外の投与、並びに神経周囲、仙骨内(intracaudal)、脳内、嚢内、及び脊髄内の投与がある。
【0095】
局所的投与のさらなる例としては、手術または別の医療処置との併用による組織への送達が挙げられる。例えば、医薬組成物は、心臓症状の治療または改善のために行われる手術の間、または、心臓カテーテルなどの処置(例えば、経皮的冠動脈形成術)の間、心臓組織に投与してもよい。送達は、例えば、冠内、心臓内、心筋内、及び/または経心内膜の経路によってでもよく、心臓の注射対象領域の心内膜性または電気機械的マップまたは他の技術、例えば、磁気共鳴画像法(MRI)の使用によって導いてもよい。組成物はまた、心臓パッチへの封入によるか、ステントや心臓状態に有用な他の装置のコーティングとして送達することができる。
【0096】
点眼剤に加えて、本発明の組成物を目に投与するために軟膏、クリーム、またはゲルを用いることもまた企図される。目の内部への直接投与を、眼窩周囲、結膜、角膜内、結膜下、テノン嚢下(subtenons)、眼球後、眼内、及び/または硝子体内への注射または投与によって実施してもよい。これら及び他の技術は、例えば、Gibaldi’s Drug Delivery Systems in Pharmaceutical Care (2007,American Society of Health-System Pharmacists,Bethesda,MD)に考察される。
【0097】
複数の剤が、細胞外のマトリクスと組織の動的平衡を維持するために協力して作用する。平衡が崩れている状態の治療においては、他の剤の1つ以上を、本発明のポリペプチドと組み合わせて用いてもよい。これらの他の剤は、同時投与してもよく、順次投与してよく、それらを組み合せて投与してもよい。一般的に、これらの他の剤は、メタロプロテイナーゼ、セリンプロテアーゼ、マトリクス分解酵素の阻害剤、細胞内酵素、細胞接着調節剤、並びに、細胞外マトリクス分解プロテイナーゼの発現を調節する因子及びその阻害剤からなるリストより選択してもよい。具体的な例は下に列記されるが、当業者であれば、追加的な剤または他の形式のその列記された剤(合成的に産生されたものや、組換えDNA技術によるもの、並びに類似体及び誘導体など)を含む、同等の機能を果たす他の剤を認識するものである。
【0098】
細胞外マトリクス分解の予防の向上またはより具体的な予防が望まれる場合に、他の分解阻害剤もまた用いてもよい。阻害剤は、α2マクログロブリン、妊娠領域タンパク質、オボスタチン、α1-プロテイナーゼ阻害剤、α2-抗プラスミン、アプロチニン、プロテアーゼネキシン-1、プラスミノーゲン活性化因子阻害剤(PAI)-1、PAI-2、TIMP-1、及びTIMP-2からなる群より選択してもよい。当業者が認める場合は、他のものを用いてもよい。
【0099】
細胞内酵素もまた、本発明のポリペプチドと併用してもよい。細胞内酵素はまた、細胞外マトリクス分解に影響することがあり、例えば、リソゾーマル(lysozomal)酵素、グリコシダーゼ、及びカテプシンが挙げられる。
【0100】
細胞接着調節剤もまた、本発明のポリペプチドと組み合わせて用いてもよい。例えば、本発明のポリペプチドを用いた、細胞外マトリクスの分解阻害の前、間、または後に細胞外マトリクスへの細胞接着を調節することが望まれることがある。細胞外マトリクスへの細胞接着を示した細胞としては、破骨細胞、マクロファージ、好中球、好酸球、キラーT細胞、及びマスト細胞が挙げられる。細胞接着調節剤としては、「RGD」モチーフもしくは類似体を含有するペプチドまたは模倣性アンタゴニストもしくはアゴニストが挙げられる。
【0101】
細胞外マトリクス分解プロテイナーゼの発現を調節する因子及びその阻害剤としては、サイトカイン、例えば、IL-1及びTNF-α、TGF-β、グルココルチコイド、及びレチノイドが挙げられる。細胞増殖及び/または分化を起こす他の増殖因子を用いてもよい場合があり、それは、所望の作用が、かかる細胞作用の関与の下、本発明のポリペプチドを用いて細胞外マトリクスの分解を阻害することである場合である。例えば、炎症の際、(酵素活性の阻害によって)細胞外マトリクスの維持が望まれる可能性があるが、さらに好中球の産生が望まれる可能性があり、したがって、G-CSFが投与されてもよい。他の因子としては、エリスロポエチン、インターロイキンファミリーメンバー、SCF、M-CSF、IGF-I、IGF-II、EGF、FGFファミリーメンバー、例えばKGFなど、PDGF、及びその他が挙げられる。インターフェロンα,β,γ,またはコンセンサスインターフェロンなど、インターフェロンの活性がさらに望まれることがある。細胞内の剤としては、Gタンパク質、タンパク質キナーゼC、及びイノシトールホスファターゼが挙げられる。本発明のポリペプチドの使用は、炎症治療法に関係する1つ以上の剤とともに治療的利益を提供することができる。
【0102】
細胞輸送剤を使用してもよい、例えば、炎症は、細胞外マトリクスの分解と、細胞の傷害部位への動きまたは輸送とが関与する。細胞外マトリクスの分解の予防はかかる細胞輸送を予防することができる。本発明のポリペプチドを、細胞輸送調節剤のアゴニストまたはアンタゴニストと併用することは、したがって、炎症の治療において望ましいことがある。細胞輸送調節剤は、内皮細胞表面受容体(E-セレクチン及びインテグリンなど);白血球細胞表面受容体(L-セレクチン);ケモカイン及び化学誘引物質からなるリストより選択される。炎症に関与する組成物の総説については、Carlos et al.,Immunol.Rev.114:5-28(1990)を参照されたく、なお、この文献は参照により本明細書に援用される。
【0103】
さらに、組成物としてはneu分化因子「NDF」が挙げられ、治療方法としては、TIMP-3の投与前、投与時、投与後にNDFを投与することが挙げられる。NDFは、TIMP-2の産生を刺激することが分かっており、NDF、TIMP-1、-2、及び/または-3の組合せは腫瘍の治療において利益を提供できる。
【0104】
本発明のポリペプチド産生物は、検出可能なマーカー物質(例えば、125Iによる放射標識をしたもの、または、AlexaFluor(登録商標)[Life Technologies,Grand Island NY]などの蛍光体による標識をしたもの)との会合によって「標識」して、固体組織及び血液または尿などの流体の試料におけるTIMP-3の検出及び定量化に有用である試薬を提供してもよい。本発明の核酸産生物はまた、例えば、関連する遺伝子を同定するために、検出可能マーカー(例えば、放射標識、及び非同位体標識、例えば、ビオチン)で標識し、ハイブリダイゼーション処理で用いてもよい。
【0105】
上に記載の通り、本発明のTIMP-3ポリペプチド、変異体突然変異タンパク質、または誘導体組成物は、種々の障害に幅広い用途を有する。このようにして、本明細書で企図される別の実施形態は、本発明の組成物と、任意で、細胞外マトリクスの分解が関与する障害の治療を対象とした上述の追加的組成物の1つ以上とを含むキットである。追加的な実施形態は、包装材料と、その包装材料内の医薬品とを含む製品であり、その医薬品は本発明のポリペプチド、変異体、突然変異タンパク質、または誘導体を含有し、その包装材料は、TIMP-3に対する治療的使用を示す表示を含む。一実施形態では、医薬剤は、がん、炎症、関節炎(骨関節炎及び同種のものを含む)、栄養障害型表皮水疱症、歯周病、潰瘍、肺気腫、骨障害、強皮症、創傷治癒、赤血球欠乏、美容組織再構築、受精または胚着床調節、及び神経細胞障害からなる群より選択される適応症に用いてもよい。この製品は、任意で、他の組成物または他の組成物の表示説明を含んでもよい。
【実施例0106】
以下の実施例は、本発明の具体的な実施形態または特徴を例示する目的で提供され、その範囲を限定しない。
【0107】
実施例1
この実施例は、哺乳動物の発現系での発現に対してTIMP-3の1つ以上の突然変異の作用があればそれを決定するために用いられる方法を説明する。この実施例は、一般的なベクター及び宿主細胞系について記載しており、多くのベクター及び宿主細胞系は当分野で既知であり、本明細書に記載されており、組換えタンパク質の発現に対してTIMP-3配列中の特定の突然変異の作用がもしあればその決定に適切である。
【0108】
概略的に言えば、TIMP-3をコードするDNAを通常の条件下で発現ベクターに連結させ(即ち、TIMP-3をコードするDNAを、発現できるようにベクターの他の配列に作用可能に連結させ)、適切な哺乳動物の細胞をベクターにより形質転換またはトランスフェクトする。形質転換またはトランスフェクトされた細胞を適切な条件下で培養し、組換えタンパク質を発現させ、その量を、例えば、ウエスタンブロットまたはSDS=PAGEによって定性的もしくは半定量的に評価するか、または、ELSA(R&D Systems,Minneapolis MN)もしくはForteBio Octet(登録商標)(Pall ForteBio Corp,Menlo Park,CA)などのアッセイを用いてより定量的に評価する。このようにして、哺乳動物細胞によるTIMP-3タンパク質、突然変異タンパク質、または変異体を発現する能力に対する種々の突然変異の作用を決定することができる。
【0109】
1つ以上の突然変異を、TIMP-3ポリペプチドにN結合型グリコシル化部位を導入するよう作製する場合、または天然グリコシル化部位を増強するよう作製する場合、グリコシル化の存在及び/または程度を評価することが望ましいことがある。細胞は、先に記載された通り形質転換またはトランスフェクトし、半定量的計測方法(例えば、ウエスタンブロット)を用い、N結合型グリコシル化がうまく組み込まれなかったか、部分的に組み込まれたか、または十分に組み込まれたかを決定することができる。
【0110】
実施例2
この実施例は、TIMP-3の1つ以上の突然変異がヘパリン非依存性の増加を引き起こしたかどうかを決定するのに用いられる方法を記載する。細胞は、先に記載された通り形質転換またはトランスフェクトし、ヘパリンの存在または不存在下で培養する。ヘパリンを種々の量で加えて、ヘパリン依存性の程度が半定量的に分かるようにすることができる。次いで、種々の条件下で発現されるTIMP-3タンパク質、突然変異タンパク質、または変異体の量を決定し、ヘパリンが細胞外マトリクスからのTIMP-3タンパク質、突然変異タンパク質、もしくは変異体の放出に必要とされるか否か、または、必要とされる量もしくはヘパリンが低減されるか否かに特定の突然変異がいくらかでも作用を及ぼすかどうかを決定する比較を行う。
【0111】
実施例3
この実施例は、蛍光分析を用いてMMP活性を測定するMMP阻害アッセイについて記載し、他の方法は当分野で既知である。例えば、消光されたMMPサブタイプ5-FAM/QXL520蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)ペプチド基質を活性化MMPサブタイプまたはサブタイプ特異的触媒領域によって切断すると、蛍光シグナルが増加する。いくつかの種々のMMPに対するFRETペプチドが、例えば、Anaspec,Fremont,CAから市販される。本明細書で使用される場合、TIMP-3タンパク質とは、天然TIMP-3またはTIMP-3突然変異タンパク質、変異体、もしくは誘導体であってもよく、試験されるタンパク質は試験分子と称される。
【0112】
MMP2活性アッセイについては、ヒト潜在型MMP2(human pro-MMP2)(Anaspec,Fremont,CA)を1mM 酢酸4-アミノフェニル水銀(APMA,Anaspec,Fremont,CA)で37℃で1時間活性化し、その後、黒色384ウェルOptiplate(PerkinElmer,Waltham,MA)中種々の濃度の試験分子に対して、納入業者によって供給されたアッセイ緩衝液に入れたMMP2感応性5-FAM/QXL 520 FRETペプチドで37℃でインキュベーションを行う。2時間のインキュベーションの後、反応プレートからの蛍光シグナルをEnVisionマルチラベル(multilabel)マイクロプレートリーダー(PerkinElmer,Waltham,MA)にて励起(490nm)及び発光(520nm)で測定する。相対蛍光単位(RFU)のデータを、GraphPad Prism 5.0(GraphPad,SanDiego,CA)で試験される試験分子濃度に対してプロットして半最大阻害定数(IC50)を推定する。
【0113】
MMP9活性測定については、ヒトMMP9(Anaspec,Fremont,CA)の触媒領域を黒色384ウェルOptiplate(PerkinElmer,Waltham,MA)中MMP9感応性5-FAM/QXL 520 FRETペプチド及び種々の濃度の試験分子で37℃でインキュベートする。2時間のインキュベーションの後、蛍光シグナルをEnVisionマルチラベル(multilabel)マイクロプレートリーダー(PerkinElmer,Waltham,MA)にて励起(490nm)及び発光(520nm)で測定する。相対蛍光単位(RFU)のデータを、GraphPad Prism 5.0(GraphPad,SanDiego,CA)で試験される試験分子濃度に対してプロットして半最大阻害定数(IC50)を推定する。
【0114】
MMP13活性については、試験分子をアッセイ緩衝液(20mMトリス、10mM CaCl、10uM ZnCl、0.01%ブリッジ35(Calbiochem/EMD,SanDiego,CA)、pH7.5)中滴定し、黒色ポリスチレン96または384ウェルアッセイプレート(Griener Bio-One,Germany)に添加する。活性MMP13(Calbiochem/EMD)をアッセイ緩衝液中に希釈し、試験分子滴定に加え、最終濃度50マイクロLにて室温で10分間インキュベートする。あるいは、潜在型MMP-13(R&D Systems,Minneapolis,MN)をAPMAで37℃で2時間活性化し、アッセイで用いる。Mca-PLGL-Dpa-AR-NH2蛍光発生MMP基質またはMca-KPLGL-Dpa-AR-NH2蛍光発生ペプチド基質(R&D Systems)などの蛍光発生基質を調製し、MMP-13酵素/huTIMP-3/試験分子溶液に添加する。MMP-13活性を、例えば20分間、Molecular Devices蛍光プレートリーダー(または同等物)を用いて動力学的に測定する。
【0115】
試験されている分子の作用は、MMP酵素活性に対して予想される最大TIMP-3阻害のパーセントで表現することができる。あるいは、MMP阻害活性の定量的な評価は必要でないことがあり、むしろ、個々の試験分子をそれがMMPを阻害するかどうかについて評価することができる。当業者は、本明細書に概説されるパラメーターを日常的実験の応用によって変えることができることを認識する。例えば、先に試験されたTIMP-3と他の材料を用いて予備実験を行い、MMPまたは潜在型MPPの適切な濃度を決定する。同様に、基質の種類と適切な濃度も決定することができる。こうして、例えば、MMPを滴定し、先に試験されたMMPのバッチと比較し、アッセイパラメーターを最適化することができる。加えて、当業者は類似のアッセイを利用し、TIMP-3突然変異タンパク質または変異体の他のMMPを阻害する能力に対する作用があればその作用、または種々のTIMP-3突然変異を評価することができる。
【0116】
実施例4
分子生物学の標準的な技術を用いて、TIMP-3の多くの突然変異タンパク質をコードする核酸を調製し、実質的に先に記載した通りに哺乳動物の細胞中に発現させた。コードされたTIMP-3突然変異タンパク質の発現に対する突然変異の作用を評価した。作製された突然変異のリストは次のものを含む:
G115T、N118D;K45E、K49S;K45E、K49E;K45E、T63E;K45E、Q80E;T63E、H78E;K45E、T63E、H78E;T63E、H78E、Q80E;K45E、T63E、H78E、Q80E;T63E、H78D;T63E、T74E、H78E;T63E、T74E、H78D;L51T、T74E、H78D;T74E、H78E、Q80E;T74E、H78D、Q80E;R43T、T74E、H78D、Q80E;R43E、T74E、H78D、Q80E;R43N、K45T;K45N、V47T;K49N、L51T;K65N、M67T;K75N、P77T;R43N、K45T、K49N、L51T;K45N、V47T、K49N、L51T;R43N、K45T、T63E、T74E、H78E;K45N、V47T、T63E、T74E、H78E;K49N、L51T、T63E、T74E、H78E;K45E、K49N、L51T、T63E;R43T、K49N、L51T、T74E、H78D;R43N、K45T、T74E、H78E;K49N、L51T、T74E、H78E;R43N、K45T、K49N、L51T、T74E、H78E;Q32N、A34T;S38D、D39T;R43N、K45T;V47N、K49T;K49N、L51T;K50N、V52T;L51N、K53T;F57N;P56N、G58T;T63N、K65T;P56N、G58T、T63N、K65T;M67N、M69T;H78N、Q80T;T84N、A86T;K94N、E96T;E96N、N98T;V97N、K99T;K99N、Q101T;T105N、R107T;D110N、K112T;E122N、W124T;R123N、D125T;Q126N;T128N;Q131N、K133T;R132N G134T;R138N、H140T;R138T;H140N、G142T;K142T;K146N、K148T;T158N、K160T;T166N、M168T;M168N;G173T;HS179N、H181T;H181N、A183T;R186N、K188T;R196N、W198T;P200N、D202T;P201N、K203T;D202N;A208Y;A208V;K45S、F57N;K49S、F57N;K68S、F57N;K133S、F57N;K45S、K133S、F57N;及びK49S、K68S、F57N。
【0117】
発現した突然変異タンパク質のさらなる評価を実施したので、下に記載する。追加的突然変異タンパク質が企図され、以下を含む:K49E、K50E、K53E、K99E、R186Q、K188Q;K49S、K50N/V52T、K53E、V97N/K99T、R186N/K188T;K50N/V52T、V97N/K99T、R186N/K188T;K49E、K53E、K188Q;K50N/V52T、R186N/K188T;K50N/V52T、F57N、R186N/K188T;K45S、K50N/V52T、F57N、R186N/K188T;K50N/V52T、F57N、T63N/K65T、R186N/K188T;K45S、K50N/V52T、F57N R186N/K188T;K45S、K49S、K50N/V52T、F57N R186N/K188T;K49S、K50N/V52T、F57N、V97N/K99T、R186N/K188T;K45S、K50N/V52T、F57N、V97N/K99T、R186N/K188T。これらの突然変異タンパク質を作製し、本明細書に記載の通りに試験することができる。
【0118】
実施例5
この表は、哺乳動物の細胞中に実際に発現した多くのTIMP-3突然変異タンパク質で得られた、発現とMMP阻害の結果をまとめている。「哺乳動物での発現対WT」について、データは、発現が野生型(即ち、天然)TIMP-3のそれと実質的に同じであったことを示す「+」;発現が野生型TIMP-3で観察されたそれの2~4倍に増加したことを示す「++」;発現が野生型TIMP-3の4倍より多くに増加したことを示す「+++」、として記録されている。酵素阻害を示す列の記号「---」は、かかる試験がなされなかったことを示す。野生型TIMP-3に対して観察した発現との比較で発現の倍数的増加を例証する発現レベルの増加を、ウエスタンブロットもしくはSDS-PAGE Coomassie染色ゲルを用いて定性的に決定するか、抗TIMP-3抗体(かかる抗体は、例えば、EMD Millipore,Billerica,MA:AbCam(登録商標),Cambridge,MA、もしくはR&D Systems,Minneapolis,MNから市販される)を用いてTIMP-3を捉えるForteBio Octet(登録商標)の読み取りで測定される発現力価の測定を通して定性的に決定する。
【表1】
【0119】
一定のこれらの突然変異は哺乳動物細胞において、野生型TIMP-3に比較して発現の増加を示した:T63E、T74E、H78E;T63E、T74E、H78D;K65N、M67T;K45N、V47T、T63E、T74E、H78E;K49N、L51T、T63E、T74E、H78E;K49N、L51T、T74E、H78E;K49N、L51T;K50N、V52T;L51N、K53T;T63N、K65T;K75N、P77T;H78N、Q80T;K94N、E96T;D110N、K112T;Q126N;R138T;G173T;F57N;P56N、G58T;P56N、G58T;T63N、K65T;K45S、F57N;K49S、F57N;K68S、F57N;K133S、F57N;K45S、K133S、F57N;及びK49S、K68S、F57N。これらのうち、サブセット(F57N;P56N、G58T;P56N、G58T;T63N、K65T;K45S、F57N;K49S、F57N;K68S、F57N;K133S、F57N;K45S、K133S、F57N;及びK49S、K68S、F57N)は、野生型TIMP-3で観察されたレベルの4倍以上のレベルで発現した。
【0120】
突然変異タンパク質のいくつかと野生型TIMP-3(WT)に対するMMP活性の結果について詳細な比較を実施し、これらの結果を下に示す。
【表2】
【0121】
実施例6
この実施例は、蛍光活性化細胞選別器(FACS)分析によって、TIMP-3タンパク質のHTB-94(商標)細胞(米国菌培養収集所(the American Type Culture Collection),Manassas,VAより市販される軟骨細胞株)に結合する能力を評価するアッセイについて記載する。HTB-94細胞を、HTB-94培地(10%ウシ胎児血清[FBS]及び2mM Lグルタミンを含有する高グルコースDMEM)中、5%CO下37℃で培養する。細胞は、染色6~12週間前に、標準細胞培養フラスコ中2.5×10細胞/mlの細胞密度で播種しておき、トリプシン処理によってフラスコから除去した後3~4日ごとに継代培養する。FACS染色約16時間前に、HTB-94細胞をウェルあたり100,000細胞にて標準組織培養12ウェルプレートで2ml体積HTB94培地に播種し、5%CO下37℃でインキュベートする。細胞は染色前に80~90%コンフルエントである。
【0122】
約16時間後、HTB94培地を吸引によって12ウェルプレートから除去し、4C染色緩衝液(リン酸緩衝食塩水[PBS]2%FBS 0.15%NaN)をウェル当り1ml適用する。細胞プレートを氷上1時間インキュベートする。染色緩衝液を吸引し、染色緩衝液中80マイクログラム/mlに希釈したTIMP-3 HIS-Myc標識タンパク質(天然TIMP-3またはTIMP-3変異体のいずれか)を0.9ml/ウェルにて加え、同じ体積の緩衝液のみを負の対照のウェルに加える。細胞プレートを氷上30分間インキュベートし、吸引し、染色緩衝液1ml/ウェルで2回洗浄する。2回目の洗浄の後、緩衝液を吸引し、染色緩衝液中20μg/mlに希釈したマウス抗ペンタHIS AlexaFluor 488結合抗体(Qiagen、Valencia、CA)を0.9mL/ウェルにて加えた。並行して、染色緩衝液中20マイクログラム/mlに希釈した関連性のないmIgG AlexaFluor488結合抗体(eBioscience,SanDiego,CA)負の対照染色試薬を、既知のバインダーTIMP3 HIS-Myc(例えば、K45S、F57N、配列番号23)で染色した複製ウェルに並行して加える。
【0123】
細胞プレートを光から保護しながら氷上30分間インキュベートし、吸引し、ウェル染色緩衝液1ml/ウェルで2回洗浄する。2回目の洗浄の後、緩衝液を吸引し、ウェルあたり1mLの細胞解離緩衝液(酵素なし、PBS、カタログ番号13151-014;Life Technologies,Grand Island NY)を加える。細胞プレートを37℃で5分間インキュベートし、細胞を4mlのFACSチューブに移す。プレートウェルを25CPBS 1ml/ウェルですすぎ、すすぎ落としたものを、細胞解離緩衝液中に細胞を含有した対応するFACSチューブに加える。チューブを1000RPMで5分間遠心分離し、細胞ペレットを形成し、吸引する。細胞をPBS(PFA)中4%パラホルムアルデヒド300マイクロLで再懸濁し、FACSにかけるまでは光から保護して4℃で保存してもよい。
【0124】
TIMP3染色後2日以内に、例えば、AlexaFluor488蛍光を検出するためにBecton Dickinson FACS CaliburでFL1を用いて8000固定(Fixed)HTB94細胞イベントを獲得する。前方散乱(FSC)検出器電圧をE00で設定し、側方散乱(SSC)検出器電圧を316で設定する。これらの検出器を組み合わせて用い、細胞から反射される光を「前方散乱」及び「側方散乱」として測定し、これにより、HTB-94細胞ゲート(gate)を定義することができ、なお、これは「ゲート設定される(gated)」とも呼ばれるが、そして、細胞の大きさと粒度に基づいてチューブ中の非細胞材料から分離することができる。FL1検出器電圧は370で設定する。分析を、例えば、FlowJo vX.0.6を用いて行う。
【0125】
いくつかのTIMP-3変異体を分析し、HTB-94細胞への結合をこのような方法で調べたので、2つの異なる実験に関する結果を下の表3に示す(n.a.=該当せず;n.d.=実施せず)。9つのTIMP3 HIS-Myc標識糖変異体(glycovariant)は、既述の方法でのバックグラウンドに対してFL1シグナルが検出されなかったという点で、HTB-94細胞への結合を示さなかった。結果を下の表3に示す。
【0126】
実施例7
この表は、哺乳動物細胞中に実際に発現した多くのTIMP-3突然変異タンパク質で得られた、発現とMMP阻害の結果をまとめている。
【表3】
【0127】
この表は、哺乳動物の細胞中に発現した多くのTIMP-3突然変異タンパク質のグリコシル化部位と他の特性をまとめている。
【0128】
【0129】
追加的な突然変異タンパク質が企図され、K45S、F57N、D110N、K112T;K45S、F57N、H78N、Q80T、D110N、K112T;K45S、F57N、H78N、Q80T、D110N、K112T、Q126N;K45S、F57N、H78N、Q80T、K94N、E96T Q126N;K45S、F57N、H78N、Q80T、Q126N、G173T;K45S、F57N、T63N、K65T;K45S、F57N、T63N、K65T、K94N、E96T;K45S、F57N、T63N、K65T、R138T、G173T;K45N、V47T、F57N、T63N、K65T、R138T、G173T;K45S、F57N、T63N、K65T、K94N、E96T、R138T;K45N、V47T、F57N、T63N、K65T、K94N、E96T、R138T;K45S、F57N、Q126N、R138T、G173T;P56N、G58T、T63N、K65T、K94N、E96T、Q126N、G173T;P56N、G58T、T63N、K65T、D110N、K112T、Q126N、G173T;K49S、K50N、V52T、K53E、V97N、K99T、R186N、K188T;K50N、V52T、V97N、K99T、R186N、K188T;K49E、K53E、K188Q;K50N、V52T、R186N、K188T;K50N、V52T、F57N、R186N、K188T;K45S、K50N、V52T、F57N、R186N、K188T;K50N、V52T、F57N、T63N、K65T、R186N、K188T;K45S、K50N、V52T、F57N R186N、K188T;K45S、K49S、K50N、V52T、F57N R186N、K188T;K49S、K50N、V52T、F57N、V97N、K99T、R186N、K188T;K45S、K50N、V52T、F57N、V97N、K99T、R186N、K188T;K45E、K50N、V52T、D110N、K112T、R138T、G173T、K188E;K45E、F57N、D110N、K112T、R138T、G173T、K188E;K45E、K50N、V52T、K94N、E96T、D110N、K112T、G173T、K188E;K45E、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T、G173T、K188E;K45E、K50N、V52T、D110N、K112T、R138T、G173T、R186N、K188T;K45E、F57N、D110N、K112T、R138T、G173T、R186N、K188T;K45E、K50N、V52T、K94N、E96T、D110N、K112T、G173T、R186N、K188T;K45E、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T、G173T、R186N、K188T;K45E、K50N、V52T、D110N、K112T、R138T、G173T、R186Q、K188Q;K45E、F57N、D110N、K112T、R138T、G173T、R186Q、K188Q;K45E、K50N、V52T、K94N、E96T、D110N、K112T、G173T、R186Q、K188Q;K45E、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T、G173T、R186Q、K188Q;K45E、K50N、V52T、D110N、K112T、R138T、K188E;K45E、F57N、D110N、K112T、R138T、K188E;K45E、K50N、V52T、K94N、E96T、D110N、K112T、K188E;K45E、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T、K188E;K45E、K50N、V52T、D110N、K112T、R138T、R186N、K188T;K45E、F57N、D110N、K112T、R138T、R186N、K188T;K45E、K50N、V52T、K94N、E96T、D110N、K112T、R186N、K188T;K45E、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T、R186N、K188T;K45E、K50N、V52T、D110N、K112T、R138T、R186Q、K188Q;K45E、F57N、D110N、K112T、R138T、R186Q、K188Q;K45E、K50N、V52T、K94N、E96T、D110N、K112T、R186Q、K188Q;K45E、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T、R186Q、K188Q;K50N、V52T、D110N、K112T、R138T、G173T、K188E;K45S、F57N、D110N、K112T、R138T、G173T、K188E;K50N、V52T、K94N、E96T、D110N、K112T、G173T、K188E;K45S、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T、G173T、K188E;K50N、V52T、D110N、K112T、R138T、G173T、R186N、K188T;K45S、F57N、D110N、K112T、R138T、G173T、R186N、K188T;K50N、V52T、K94N、E96T、D110N、K112T、G173T、R186N、K188T;K45S、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T、G173T、R186N、K188T;K50N、V52T、D110N、K112T、R138T、G173T、R186Q、K188Q;K45S、F57N、D110N、K112T、R138T、G173T、R186Q、K188Q;K50N、V52T、K94N、E96T、D110N、K112T、G173T、R186Q、K188Q;K45S、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T、G173T、R186Q、K188Q;K50N、V52T、D110N、K112T、R138T、K188E;K45S、F57N、D110N、K112T、R138T、K188E;K50N、V52T、K94N、E96T、D110N、K112T、K188E;K45S、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T、K188E;K50N、V52T、D110N、K112T、R138T、R186N、K188T;K45S、F57N、D110N、K112T、R138T、R186N、K188T;K50N、V52T、K94N、E96T、D110N、K112T、R186N、K188T;K45S、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T、R186N、K188T;K50N、V52T、D110N、K112T、R138T、R186Q、K188Q;K45S、F57N、D110N、K112T、R138T、R186Q、K188Q;K50N、V52T、K94N、E96T、D110N、K112T、R186Q、K188Q;K45S、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T、R186Q、K188Q;K50N、V52T、K94N、E96T、D110N、K112T、R138T、G173T;K50N、V52T、K94N、E96T、R138T、G173T;K45E、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T、R138T、G173T;K45E、F57N、K94N、E96T、R138T、G173T;K45S、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T、R138T、G173T;K45S、F57N、K94N、E96T、R138T、G173T;K45N、V47T、H78N、Q80T、Q126N、R186Q、K188Q;K45N、V47T、F57N、H78N、Q80T、Q126N、R186Q、K188Q;K45N、V47T、F57N、H78N、Q80T、K94N、E96T、Q126N、;K45N、V47T、F57N、H78N、Q80T、Q126N、R138T;K45N、V47T、F57N、H78N、Q80T、R138T、R186Q、K188Q;K45N、V47T、F57N、H78N、Q80T、K94N、E96T、D110N、K112T、R186Q、K188Q;K50N、V52T、K94N、E96T、H78N、Q80T、R138T;K50N、V52T、K94N、E96T、H78N、Q80T、R138T、R186Q、K188Q;K45E、F57N、Q126N、R138T、R186Q、K188Q;K45N、V47T、F57N、Q126N、R138T、R186Q、K188Q;K45N、V47T、F57N、H78N、Q80T、R186Q、K188Q;K45S、F57N、H78N、Q80T、Q126N、R138T、R186Q、K188Q;K45S、F57N、H78N、Q80T、K94N、E96T、R138T、R186Q、K188Q;K50N、V52T、K94N、E96T、H78N、Q80T、R138T、;K45N、V47T、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T、R186Q、K188Q;K45S、F57N、H78N、Q80T、K94N、E96T、R138T;K45N、V47T、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T、R186Q;及びK45N、V47T、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T、K188Qが挙げられる。さらなる突然変異タンパク質としては、K50N、V52T、P56N、G58T、R186N、K188T;K45S、K50N、V52T、P56N、G58T、R186N、K188T;K50N、V52T、P56N、G58T、T63N、K65T、R186N、K188T;K45S、K50N、V52T、P56N、G58T R186N、K188T;K45S、K49S、K50N、V52T、P56N、G58T R186N、K188T;K49S、K50N、V52T、P56N、G58T、V97N、K99T、R186N、K188T;K45S、K50N、V52T、P56N、G58T、V97N、K99T、R186N、K188T;K45E、P56N、G58T、D110N、K112T、R138T、G173T、K188E;K45E、P56N、G58T、K94N、E96T、D110N、K112T、G173T、K188E;K45E、K50N、V52T、D110N、K112T、R138T、G173T、R186N、K188T;K45E、P56N、G58T、D110N、K112T、R138T、G173T、R186N、K188T;K45E、P56N、G58T、K94N、E96T、D110N、K112T、G173T、R186N、K188T;K45E、P56N、G58T、D110N、K112T、R138T、G173T、R186Q、K188Q;K45E、P56N、G58T、K94N、E96T、D110N、K112T、G173T、R186Q、K188Q;K45E、P56N、G58T、D110N、K112T、R138T、K188E;K45E、P56N、G58T、K94N、E96T、D110N、K112T、K188E;K45E、P56N、G58T、D110N、K112T、R138T、R186N、K188T;K45E、P56N、G58T、K94N、E96T、D110N、K112T、R186N、K188T;K45E、P56N、G58T、D110N、K112T、R138T、R186Q、K188Q;K45E、P56N、G58T、K94N、E96T、D110N、K112T、R186Q、K188Q;K45S、P56N、G58T、D110N、K112T、R138T、G173T、K188E;K45S、P56N、G58T、K94N、E96T、D110N、K112T、G173T、K188E;K45S、P56N、G58T、D110N、K112T、R138T、G173T、R186N、K188T;K45S、P56N、G58T、K94N、E96T、D110N、K112T、G173T、R186N、K188T;K45S、P56N、G58T、D110N、K112
T、R138T、G173T、R186Q、K188Q;K45S、P56N、G58T、K94N、E96T、D110N、K112T、G173T、R186Q、K188Q;K45S、P56N、G58T、D110N、K112T、R138T、K188E;K45S、P56N、G58T、K94N、E96T、D110N、K112T、K188E;K45S、P56N、G58T、D110N、K112T、R138T、R186N、K188T;K45S、P56N、G58T、K94N、E96T、D110N、K112T、R186N、K188T;K45S、P56N、G58T、D110N、K112T、R138T、R186Q、K188Q;K45S、P56N、G58T、K94N、E96T、D110N、K112T、R186Q、K188Q;K45E、P56N、G58T、K94N、E96T、D110N、K112T、R138T、G173T;K45E、P56N、G58T、K94N、E96T、R138T、G173T;K45S、P56N、G58T、K94N、E96T、D110N、K112T、R138T、G173T;K45S、P56N、G58T、K94N、E96T、R138T、G173T;K45N、V47T、P56N、G58T、H78N、Q80T、Q126N、R186Q、K188Q;K45N、V47T、P56N、G58T、H78N、Q80T、K94N、E96T、Q126N、;K45N、V47T、P56N、G58T、H78N、Q80T、Q126N、R138T;K45N、V47T、P56N、G58T、H78N、Q80T、R138T、R186Q、K188Q;K45N、V47T、P56N、G58T、H78N、Q80T、K94N、E96T、D110N、K112T、R186Q、K188Q;K45E、P56N、G58T、Q126N、R138T、R186Q、K188Q;K45N、V47T、P56N、G58T、Q126N、R138T、R186Q、K188Q;K45N、V47T、P56N、G58T、H78N、Q80T、R186Q、K188Q;K45S、P56N、G58T、H78N、Q80T、Q126N、R138T、R186Q、K188Q;K45S、P56N、G58T、H78N、Q80T、K94N、E96T、R138T、R186Q、K188Q;K45N、V47T、P56N、G58T、K94N、E96T、D110N、K112T、R186Q、K188Q;K45S、P56N、G58T、H78N、Q80T、K94N、E96T、R138T;K45N、V47T、P56N、G58T、K94N、E96T、D110N、K112T、R186Q;及びK45N、V47T、P56N、G58T、K94N、E96T、D110N、K112T、K188Qが挙げられる。これらの突然変異タンパク質は、本明細書に記載の通りに作製し試験することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
2024001144000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2023-11-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)阻害活性を有する、単離された組織メタロプロテイナーゼ阻害物質3型(TIMP-3)突然変異タンパク質であって、前記突然変異タンパク質は、野生型TIMP-3と比較して、MMP2又はMMP9阻害活性を示し、前記突然変異タンパク質は、少なくとも1つの突然変異を有する配列番号2に示されるTIMP-3の成熟領域を有し、前記突然変異は、
F57N、
K45S及びF57N、
K49S及びF57N、
K68S及びF57N、
K133S及びF57N、
K45S、K133S及びF57N、
K49S、K68S及びF57N、
K45N、V47T、F57N、K94N、E96T、R138T及びG173T、
K45S、F57N、H78N、Q80T、K94N、E96T、R138T及びG173T、
K45E、F57N、Q126N、R138T及びG173T、
K45S、F57N、T63N、K65T、K94N、E96T、R138T及びG173T、
K45N、V47T、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T、R186N及びK188T、
K45N、V47T、F57N、V97N、K99T、R138T及びG173T、
K45N、V47T、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T、G173T、R186Q及びK188Q、
K50N、V52T、F57N、K94N、E96T、R138T及びG173T、
K50N、V52T、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T及びR138T、又は
K45E、F57N、K94N、E96T、D110N、K112T及びR138T
である、突然変異タンパク質。
【請求項2】
K45Sが、アミノ酸配列中にN結合型グリコシル化部位を導入する、請求項1に記載のTIMP-3突然変異タンパク質。
【請求項3】
MMP阻害活性を有し、少なくとも1つのN結合型グリコシル化部位をアミノ酸配列の中に導入する少なくとも1つの突然変異を有する、請求項1又は2に記載の単離されたTIMP-3突然変異タンパク質。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のTIMP-3突然変異タンパク質をコードする、単離された核酸。
【請求項5】
請求項4に記載の単離された核酸を含む発現ベクター。
【請求項6】
請求項5に記載の発現ベクターにより形質転換またはトランスフェクトされた、単離された宿主細胞。
【請求項7】
組換えTIMP-3突然変異タンパク質の産生方法であって、請求項6に記載の形質転換またはトランスフェクトされた宿主細胞を、前記TIMP-3突然変異タンパク質の発現を促進する条件下で培養することと、前記TIMP-3突然変異タンパク質を回収することとを含む、方法。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか一項に記載のTIMP-3突然変異タンパク質と、生理学的に許容できる希釈剤、賦形剤、または担体とを含む組成物。
【請求項9】
マトリクスメタロプロテアーゼ(MMP)及び/又はTIMP-3によって阻害されるか阻害され得る他のプロテイナーゼが原因的または増悪的働きをする状態の治療のための、請求項8の組成物を含む医薬組成物。
【請求項10】
前記状態が、乾癬性関節炎並びに関節リウマチ(若年性関節リウマチ、少関節性関節リウマチ、多関節性関節リウマチ及び全身性発症関節リウマチを含む)を含む関節炎状態、骨関節炎、鬱血性心不全への進行、アテローム性動脈硬化症に関連した炎症、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病、及びセリアック病を含む)、及び喘息(外因性喘息及び内因性喘息、並びに、関連する気道の慢性炎症性状態または応答性亢進を含む)からなる群より選択される、請求項9に記載の医薬組成物。