(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114401
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】圧縮機ユニット
(51)【国際特許分類】
F04B 49/22 20060101AFI20240816BHJP
F17C 13/00 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
F04B49/22
F17C13/00 302A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020152
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【弁理士】
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】名倉 見治
(72)【発明者】
【氏名】久保 賢司
(72)【発明者】
【氏名】瀬山 勝広
(72)【発明者】
【氏名】手塚 智志
【テーマコード(参考)】
3E172
3H145
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA06
3E172AB01
3E172AB04
3E172BA06
3E172BB12
3E172BB17
3E172EB02
3E172EB08
3E172EB20
3E172HA08
3E172JA08
3H145AA02
3H145AA15
3H145AA25
3H145AA31
3H145BA02
3H145BA19
3H145CA02
3H145CA03
3H145CA19
3H145DA13
3H145DA16
3H145DA19
3H145DA47
3H145EA13
3H145EA16
3H145EA26
3H145EA38
3H145EA42
3H145EA44
(57)【要約】
【課題】極低温である液化水素のボイルオフガスからレシプロ式の圧縮機ユニットを適切に保護する。
【解決手段】圧縮機ユニット10は、第1スピルバック弁18bと、後続圧縮ステージ14による水素ガスの処理量を調整する調整手段41と、上流側温度センサ45と、制御部50と、を備える。制御部50は、上流側温度センサ45によって取得された吸込温度を参照し、吸込温度が予め定められた温度範囲内になるように、第1スピルバック弁18bを制御する第1制御と、前記第1制御により生じた中間流路22における圧力の変化量に応じて後続圧縮ステージ14の処理量が調整されるように調整手段41を制御する第2制御と、を実行可能である。前記予め定められた温度範囲は、空気の液化温度に基づく基準温度よりも高く、かつ、0℃未満の範囲で設定される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体水素貯槽からボイルオフガスである水素ガスを回収し、その少なくとも一部をエンジン、発電設備又はボイラの少なくとも一つを含む需要先に供給するレシプロ式の圧縮機ユニットであって、
水素ガスを圧縮する第1圧縮ステージと、
前記第1圧縮ステージから吐出された水素ガスをさらに圧縮する1又は2以上の後続圧縮ステージと、
前記第1圧縮ステージおよび前記後続圧縮ステージを駆動するクランク機構と、
前記第1圧縮ステージから吐出された後の水素ガスを吸込流路に戻す第1スピルバック流路、および、前記第1スピルバック流路においてスピルバック量を調整する第1スピルバック弁を含む第1スピルバック部と、
前記後続圧縮ステージによる水素ガスの処理量を調整する調整手段と、
前記第1圧縮ステージと前記後続圧縮ステージとの間の中間流路に配置される圧力センサと、
前記吸込流路において、前記第1スピルバック流路の接続部と前記第1圧縮ステージとの間に配置される上流側温度センサと、
前記第1スピルバック弁および前記調整手段をそれぞれ制御する制御部と、
を備え、
前記第1圧縮ステージおよび前記後続圧縮ステージはそれぞれ、
シリンダ部と、
ピストンと、
前記ピストンを前記クランク機構に接続するピストンロッドと、
前記ピストンロッドと前記シリンダ部との間をシールするロッドパッキンと、
を備え、
前記第1圧縮ステージは、空冷式かつ無給油式であり、
前記後続圧縮ステージの少なくとも一部は、ロッドパッキンから前記吸込流路へとリークガスを戻すリークガス排出部を有し、
前記制御部は、
前記上流側温度センサによって取得された吸込温度を参照し、前記吸込温度が予め定められた温度範囲内になるように、前記第1スピルバック弁を制御する第1制御と、
前記第1制御により生じた前記中間流路における圧力の変化量に応じて前記後続圧縮ステージの処理量が調整されるように前記調整手段を制御する第2制御と、
を実行可能であり、
前記予め定められた温度範囲は、空気の液化温度に基づく基準温度よりも高く、かつ、0℃未満の範囲で設定されている、圧縮機ユニット。
【請求項2】
前記中間流路に配置される下流側温度センサと、
前記後続圧縮ステージよりも吐出側の吐出流路に設けられた分岐点から分岐して、前記需要先で要求される水素ガスの圧力よりも低い水素ガスを処理できる低圧需要先に水素ガスを排出可能な低圧ガス排出路と、
前記低圧ガス排出路または前記分岐点に設けられる切替手段と、
前記分岐点よりも下流側に位置する逆止弁と、
を備え、
前記制御部は、
起動時であって前記下流側温度センサの検出温度が0℃より高い所定の第1温度T1よりも高い場合に、前記後続圧縮ステージから吐出された水素ガスを前記低圧ガス排出路に流通させる第1切替状態になるように前記切替手段を制御し、
前記下流側温度センサの検出温度が前記第1温度T1未満になった場合に、前記後続圧縮ステージから吐出された水素ガスを前記需要先に向けて前記吐出流路に送る第2切替状態になるように前記切替手段を制御し、
前記切替手段が前記第2切替状態にあることを条件として、前記第1制御と前記第2制御とを実行する、請求項1に記載の圧縮機ユニット。
【請求項3】
前記中間流路に配置される下流側温度センサと、
前記第1圧縮ステージと前記後続圧縮ステージとの間に設けられるクーラ部と、
前記クーラ部に水素ガスを流入させる経路と、前記クーラ部を経由させないで前記後続圧縮ステージに水素ガスを流入させる経路と、を切り替え可能なクーラ切替手段と、
をさらに備え、
前記制御部は、
起動時であって前記下流側温度センサの検出温度が0℃より高い所定の第1温度T1よりも高い場合に、前記第1圧縮ステージから吐出された水素ガスが前記クーラ部に流通して冷却される第1切替状態になるように前記クーラ切替手段を制御し、
前記下流側温度センサの検出温度が前記第1温度T1未満になった場合に、前記第1圧縮ステージから吐出された水素ガスが前記クーラ部を経由せずに前記後続圧縮ステージに送られる第2切替状態になるように前記クーラ切替手段を制御し、
前記クーラ切替手段が前記第2切替状態にあることを条件として、前記第1制御と前記第2制御とを実行する、請求項1に記載の圧縮機ユニット。
【請求項4】
前記調整手段が、
少なくとも1つの後続圧縮ステージにおいて、
当該後続圧縮ステージの吐出側を流れる水素ガスを当該後続圧縮ステージの吸込側に戻す第2スピルバック流路、および、前記第2スピルバック流路においてスピルバック量を調整する第2スピルバック弁を含む第2スピルバック部と、
当該後続圧縮ステージのシリンダ部に装着された吸込弁アンローダと、
を備え、
前記第2制御において、前記制御部は、前記第1制御により生じた前記中間流路における圧力の変化量に応じて前記第2スピルバック弁を制御し、前記第2スピルバック弁の開度があらかじめ設定された値に達したときには前記吸込弁アンローダの駆動を併用させることにより前記シリンダ部の処理量を低減させ、それによって前記第2スピルバック部を通して当該後続圧縮ステージの吸込側へ戻す量を削減させる、請求項1ないし3のいずれかに記載の圧縮機ユニット。
【請求項5】
前記調整手段が、
少なくとも1つの後続圧縮ステージにおいて、
前記後続圧縮ステージのシリンダ部に装着された吸込弁アンローダと、
前記吸込弁アンローダを開閉させる油圧式又は電気式の駆動装置と、
を有する無段階の容量調整装置を備え、
前記制御部は、前記クランク機構の中のクランク軸の回転運動に連動して前記吸込弁アンローダの動作タイミングが調整されるように前記駆動装置を駆動するものであり、
前記第2制御において、前記制御部は、前記第1制御により生じた前記中間流路における圧力の変化量に応じて前記駆動装置を制御し、前記後続圧縮ステージの処理量を調整する、請求項1ないし3のいずれかに記載の圧縮機ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レシプロ式の圧縮機ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境を考慮して、水素を発電や自動車等の燃料として用いることが考えられており、水素の需要が増大している。また、液化天然ガス(LNG)、液体水素(LH2)などの低温のボイルオフガス(BOG)を圧縮機によって回収してエンジン等の需要先に供給することが行われている。特にLH2から発生したボイルオフガスは非常に低温である。このため、圧縮機がそのままボイルオフガスを吸入する構成を採用すると、極低温に適した材料を選択する必要があったり、熱変形量を考慮した設計条件を採用したり、厳重な断熱処理を実施したりする必要がある等の制約がかかる。例えば、特許文献1には、水素ガスを圧縮するための往復動圧縮機が開示されている。
【0003】
また、特許文献2の
図9には、タンデム構造のスクリュー圧縮機ユニットであって、水素ガスを圧縮可能な圧縮機ユニットが開示されている。この圧縮機ユニットには、中間段スピルバック弁と後段スピルバック弁とが設けられている。中間段スピルバック弁は、中間段に配置された圧力センサの検出圧力に基づいて制御され、後段スピルバック弁は、吐出流路に配置された圧力センサの検出圧力に基づいて制御される。
【0004】
また、特許文献3には、液化天然ガスのボイルオフガスを圧縮するための多段圧縮機が開示されている。この多段圧縮機では、低圧段圧縮部と高圧段圧縮部との間にクーラが設けられ、低圧段圧縮機から吐出されたガスの温度が高くなった場合に、クーラが使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-172870号公報
【特許文献2】特許第7085079号公報
【特許文献3】特開平4-12178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1では次のような問題が指摘されている。「近年、新たなエネルギ源として、水素が注目されている。エネルギ源として水素を利用する場合にも、天然ガスのように、貯蔵および輸送時には、液化した状態とすることが想定されている。しかし、水素は、液化温度が空気の液化温度よりも低いという特性を有する。そのため、天然ガス等を対象とした往復動圧縮機といった設備をそのまま水素に適用すると、極低温の液体水素に起因する不具合が生じる可能性がある。例えば、液体水素が供給される装置の周辺に液化空気を生じさせてしまう。」
【0007】
これに対して、特許文献1では「この往復動圧縮機は、ガスを圧縮する圧縮部が容器部に収容されている。そして、この容器部は、圧縮部の周囲に真空領域を形成する。そうすると、圧縮部は、真空領域によって外部領域から熱的に絶縁される。つまり、圧縮部に極低温のガスが提供された場合にも、往復動圧縮機の周辺領域を過度に冷却することがない。従って、液化空気の発生を抑制できる。」と説明されている。
【0008】
しかしながら、一般的に、運転中の振動を伴う動機械や、点検開口部を通して定期的なメンテナンスを必要とする設備(例えば往復動圧縮機など)等では高性能な断熱が非常に難しい。このため、特許文献1に開示された技術では、レシプロ式の圧縮機ユニットを適切に保護することが難しい。
【0009】
そこで、本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、極低温である液化水素のボイルオフガスからレシプロ式の圧縮機ユニットを適切に保護することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る圧縮機ユニットは、液体水素貯槽からボイルオフガスである水素ガスを回収し、その少なくとも一部をエンジン、発電設備又はボイラの少なくとも一つを含む需要先に供給するレシプロ式の圧縮機ユニットであって、水素ガスを圧縮する第1圧縮ステージと、前記第1圧縮ステージから吐出された水素ガスをさらに圧縮する1又は2以上の後続圧縮ステージと、前記第1圧縮ステージおよび前記後続圧縮ステージを駆動するクランク機構と、前記第1圧縮ステージから吐出された後の水素ガスを吸込流路に戻す第1スピルバック流路、および、前記第1スピルバック流路においてスピルバック量を調整する第1スピルバック弁を含む第1スピルバック部と、前記後続圧縮ステージによる水素ガスの処理量を調整する調整手段と、前記第1圧縮ステージと前記後続圧縮ステージとの間の中間流路に配置される圧力センサと、前記吸込流路において、前記第1スピルバック流路の接続部と前記第1圧縮ステージとの間に配置される上流側温度センサと、前記第1スピルバック弁および前記調整手段をそれぞれ制御する制御部と、を備える。前記第1圧縮ステージおよび前記後続圧縮ステージはそれぞれ、シリンダ部と、ピストンと、前記ピストンを前記クランク機構に接続するピストンロッドと、前記ピストンロッドと前記シリンダ部との間をシールするロッドパッキンと、を備える。前記第1圧縮ステージは、空冷式かつ無給油式である。前記後続圧縮ステージの少なくとも一部は、ロッドパッキンから前記吸込流路へとリークガスを戻すリークガス排出部を有する。前記制御部は、前記上流側温度センサによって取得された吸込温度を参照し、前記吸込温度が予め定められた温度範囲内になるように、前記第1スピルバック弁を制御する第1制御と、前記第1制御により生じた前記中間流路における圧力の変化量に応じて前記後続圧縮ステージの処理量が調整されるように前記調整手段を制御する第2制御と、を実行可能である。前記予め定められた温度範囲は、空気の液化温度に基づく基準温度よりも高く、かつ、0℃未満の範囲で設定されている。
【0011】
本発明に係る圧縮機ユニットによれば、低温環境下において圧縮機ユニットを保護することができる。より具体的には、第1制御において、第1スピルバック部によって吸込流路に戻される水素ガスの流量を調整することにより、第1圧縮ステージに吸入される前の水素ガスの吸込温度を調整することができる。また、第1圧縮ステージに吸入される水素ガスの温度範囲が空気の液化温度に基づく基準温度よりも高くなるように調整されるため、第1圧縮ステージの吸込部または吸込流路において、支燃性ガスである酸素の液化が発生することを回避できる。また、吸込温度を空気の液化温度に基づく基準温度よりも高く、かつ、0℃未満の範囲で予め設定された温度範囲とすることにより、水素ガスの処理効率の低下を抑制できる。
【0012】
また、第1スピルバック部が第1圧縮ステージのみをバイパスするため、後続圧縮ステージの吐出流路から吸込流路へと水素ガスをスピルバックさせる場合、すなわち最も高圧の水素ガスを吸込流路21に戻す場合と比べて、圧縮機ユニットの動力の悪化を抑制することができる。
【0013】
また、第1スピルバック部によるスピルバック動作に対応して、調整手段による後続圧縮ステージの処理量が調整されるため、後続圧縮ステージでの過剰な圧縮動作を抑制できる。これにより、圧縮機ユニットの動力を軽減することができる。
【0014】
また、少なくとも第1圧縮ステージが無給油式であるため、油の凍結リスクを回避できる。さらに、後続の圧縮ステージほど圧力が高くなって、水素ガスがリークしやすくなるが、後続圧縮ステージにおいてリークした水素ガスがリークガス排出部により、吸込流路へ回収されるため、圧縮時の製品ガスのロスを低減することができる。
【0015】
前記圧縮機ユニットは、前記中間流路に配置される下流側温度センサと、前記後続圧縮ステージよりも吐出側の吐出流路に設けられた分岐点から分岐して、前記需要先で要求される水素ガスの圧力よりも低い水素ガスを処理できる低圧需要先に水素ガスを排出可能な低圧ガス排出路と、前記低圧ガス排出路または前記分岐点に設けられる切替手段と、前記分岐点よりも下流側に位置する逆止弁と、を備えてもよい。この場合、前記制御部は、起動時であって前記下流側温度センサの検出温度が0℃より高い所定の第1温度T1よりも高い場合に、前記後続圧縮ステージから吐出された水素ガスを前記低圧ガス排出路に流通させる第1切替状態になるように前記切替手段を制御し、前記下流側温度センサの検出温度が前記第1温度T1未満になった場合に、前記後続圧縮ステージから吐出された水素ガスを前記需要先に向けて前記吐出流路に送る第2切替状態になるように前記切替手段を制御し、前記切替手段が前記第2切替状態にあることを条件として、前記第1制御と前記第2制御とを実行してもよい。
【0016】
この態様では、起動時に液体水素貯槽側の配管内の水素ガスがプラスの温度領域まで上昇している場合に、後続圧縮ステージから吐出された水素ガスが低圧需要先に送出されるため、後続圧縮ステージにおける水素ガスの過度の温度上昇をより効果的に防止できる。すなわち、レシプロ式の圧縮機ユニットにおいては、水素ガスの供給先によって設定された圧力に応じた圧力の水素ガスが送出されるため、低圧需要先に水素ガスが送出されるように切替手段が制御されることにより、後続圧縮ステージによる吐出ガス圧力が低減される。これにより、後続圧縮ステージをより確実に保護することができる。また、圧縮機ユニットの立ち上げも速やかに行うことができる。また、低温環境下において圧縮機ユニットを保護することができる。
【0017】
前記圧縮機ユニットは、前記中間流路に配置される下流側温度センサと、前記第1圧縮ステージと前記後続圧縮ステージとの間に設けられるクーラ部と、前記クーラ部に水素ガスを流入させる経路と、前記クーラ部を経由させないで前記後続圧縮ステージに水素ガスを流入させる経路と、を切り替え可能なクーラ切替手段と、をさらに備えてもよい。この場合、前記制御部は、起動時であって前記下流側温度センサの検出温度が0℃より高い所定の第1温度T1よりも高い場合に、前記第1圧縮ステージから吐出された水素ガスが前記クーラ部に流通して冷却される第1切替状態になるように前記クーラ切替手段を制御し、前記下流側温度センサの検出温度が前記第1温度T1未満になった場合に、前記第1圧縮ステージから吐出された水素ガスが前記クーラ部を経由せずに前記後続圧縮ステージに送られる第2切替状態になるように前記クーラ切替手段を制御し、前記クーラ切替手段が前記第2切替状態にあることを条件として、前記第1制御と前記第2制御とを実行してもよい。
【0018】
この態様では、起動時に液体水素貯槽側の配管内の水素ガスがプラスの温度領域まで上昇している場合に、第1圧縮ステージから吐出された水素ガスをクーラ部により冷却するため、後続圧縮ステージにおける水素ガスの過度の温度上昇を防止できる。すなわち、後続圧縮ステージを保護することができる。また、圧縮機ユニットの立ち上げも速やかに行うことができる。また、低温環境下において圧縮機ユニットを保護することができる。
【0019】
前記調整手段は、少なくとも1つの後続圧縮ステージにおいて、当該後続圧縮ステージの吐出側を流れる水素ガスを当該後続圧縮ステージの吸込側に戻す第2スピルバック流路、および、前記第2スピルバック流路においてスピルバック量を調整する第2スピルバック弁を含む第2スピルバック部と、当該後続圧縮ステージのシリンダ部に装着された吸込弁アンローダと、を備えてもよい。この場合、前記第2制御において、前記制御部は、前記第1制御により生じた前記中間流路における圧力の変化量に応じて前記第2スピルバック弁を制御し、前記第2スピルバック弁の開度があらかじめ設定された値に達したときには前記吸込弁アンローダの駆動を併用させることにより前記シリンダ部の処理量を低減させ、それによって前記第2スピルバック部を通して当該後続圧縮ステージの吸込側へ戻す量を削減させてもよい。
【0020】
この態様では、ガスを圧縮する動力をより一層削減することが可能となる。
【0021】
前記調整手段は、少なくとも1つの後続圧縮ステージにおいて、前記後続圧縮ステージのシリンダ部に装着された吸込弁アンローダと、前記吸込弁アンローダを開閉させる油圧式又は電気式の駆動装置と、を有する無段階の容量調整装置を備えてもよい。この場合、前記制御部は、前記クランク機構の中のクランク軸の回転運動に連動して前記吸込弁アンローダの動作タイミングが調整されるように前記駆動装置を駆動するものでもよい。また、前記第2制御において、前記制御部は、前記第1制御により生じた前記中間流路における圧力の変化量に応じて前記駆動装置を制御し、前記後続圧縮ステージの処理量を調整してもよい。
【0022】
この態様では、吸込弁アンローダの動作のタイミングおよび動作時間がコントロールされて、シリンダ部内の水素ガスの一部が吸入側に戻されるため、後続圧縮ステージでのガス処理量を削減できる。これにより、より一層動力が削減できる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、極低温である液化水素のボイルオフガスからレシプロ式の圧縮機ユニットを適切に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1実施形態に係る圧縮機ユニットを概略的に示す図である。
【
図2】前記圧縮機ユニットにおける第1圧縮ステージを概略的に示す図である。
【
図3】前記圧縮機ユニットにおける後続圧縮ステージを概略的に示す図である。
【
図4】前記圧縮機ユニットの運転動作を説明するための図である。
【
図5】第1実施形態の変形例に係る圧縮機ユニットを概略的に示す図である。
【
図6】第1実施形態の変形例に係る圧縮機ユニットを概略的に示す図である。
【
図7】第1実施形態の変形例に係る圧縮機ユニットを概略的に示す図である。
【
図8】第2実施形態に係る圧縮機ユニットを概略的に示す図である。
【
図9】前記圧縮機ユニットの運転動作を説明するための図である。
【
図10】第3実施形態に係る圧縮機ユニットを概略的に示す図である。
【
図11】前記圧縮機ユニットの運転動作を説明するための図である。
【
図12】第4実施形態に係る圧縮機ユニットを概略的に示す図である。
【
図13】前記圧縮機ユニットの運転動作を説明するための図である。
【
図14】前記圧縮機ユニットの運転動作を説明するための図である。
【
図15】第5実施形態に係る圧縮機ユニットを概略的に示す図である。
【
図16】その他の実施形態に係る圧縮機ユニットを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
(第1実施形態)
本実施形態に係る圧縮機ユニットは、液体水素貯槽からボイルオフガスである水素ガスを回収し、回収した水素ガスを圧縮して需要先に供給するように構成されている。水素ガスであるボイルオフガスは約-253℃である。
【0027】
図1に示すように、圧縮機ユニット10は、吸込流路21の水素ガスを圧縮する第1圧縮ステージ12と、中間流路22を介して第1圧縮ステージ12に接続された後続圧縮ステージ14と、第1圧縮ステージ12および後続圧縮ステージ14を駆動するクランク機構16と、を備えている。
【0028】
第1圧縮ステージ12は、吸込流路21を介して液体水素貯槽23に接続される。したがって、液体水素貯槽23内で発生した液化ガスのボイルオフガスは吸込流路21を通して第1圧縮ステージ12に吸入される。
【0029】
第1圧縮ステージ12は、レシプロ式の圧縮機構によって構成されている。すなわち、
図2に示すように、第1圧縮ステージ12は、シリンダ部211と、シリンダ部211内に配置されたピストン212と、ピストン212に接続されたピストンロッド213と、一対の吸込弁214と、一対の吐出弁215と、を有している。シリンダ部211内には、フロントヘッド211aとピストン212との間、及び、リアヘッド211bとピストン212との間に圧縮室216が形成されている。第1圧縮ステージ12は、空冷式であり、かつ潤滑油を用いない無給油式の圧縮機構によって構成されている。
【0030】
シリンダ部211のリアヘッド211bには、圧縮室216からの水素ガスのリークを防止するためのロッドパッキン217が設けられている。ロッドパッキン217は、ピストンロッド213とシリンダ部211との間をシールするように構成されており、ピストンロッド213を取り囲むように配置されたパッキンリング217aと、パッキンリング217aを保持するケース217bと、を有する。
【0031】
ピストン212はピストンロッド213を介してクランク機構16に接続される。シリンダ部211内でピストン212が往復動することにより、圧縮室216内で水素ガスが圧縮される。
図2では、ダブルアクティング構造の第1圧縮ステージ12が示されているが、第1圧縮ステージ12は、フロントヘッド側またはリアヘッド側のみに圧縮室があるシングルアクティング構造が採用されてもよい。
【0032】
なお、
図1では便宜上第1圧縮ステージ12を1つの台形で示しているが、第1圧縮ステージ12は複数のシリンダ部211を有していてもよい。すなわち、第1圧縮ステージ12は、並列に接続された複数のシリンダ部211内においてそれぞれピストン212により水素ガスが圧縮されて昇圧される構成とされてもよい。他の実施形態においても同様である。
【0033】
後続圧縮ステージ14は、第1圧縮ステージから吐出された水素ガスをさらに圧縮するための圧縮機構であり、後続圧縮ステージ14によって圧縮された水素ガスは吐出流路24に吐出される。吐出流路24を流れる水素ガスは、直接的または他の設備を介在させて間接的に需要先26に送られる。需要先26としては、発電設備、ボイラ、船舶等のエンジン等が挙げられ、フレア設備、ベント等のガスを大気へ放出する設備が含まれていてもよい。
【0034】
後続圧縮ステージ14は、
図3に示すように、第1圧縮ステージ12と同様、レシプロ式の圧縮機構によって構成されている。後続圧縮ステージ14のピストン212も、ピストンロッド213を介してクランク機構16に接続されている。後続圧縮ステージ14は、第1圧縮ステージ12と同様に構成されているが、後続圧縮ステージ14においては、ロッドパッキン217から吸込流路21へとリークガスを戻すリークガス排出部29がさらに設けられている。リークガス排出部29は、ロッドパッキン217と吸込流路21とを互いに接続するように設けられた管部材によって構成されていてもよい。
【0035】
なお、
図1では便宜上後続圧縮ステージ14を1つの台形で示しているが、後続圧縮ステージ14は必ずしも1段式である必要はなく、複数の圧縮段の圧縮機構を有していてもよい。すなわち、後続圧縮ステージ14は、複数のシリンダ部211内においてそれぞれピストン212により水素ガスが順次圧縮されて昇圧される構成とされてもよい。他の実施形態においても同様である。後続圧縮ステージ14において、常温の水素ガスを吐出する圧縮段については、無給油式でも潤滑式でもよい。
【0036】
図1に示すように、圧縮機ユニット10は、第1圧縮ステージ12から吐出された水素ガスの一部を吸込流路21に戻す第1スピルバック部18を備えている。第1スピルバック部18は、第1スピルバック流路18aと、第1スピルバック流路18aに配置された開度調整可能な弁からなる第1スピルバック弁18bと、を有する。第1スピルバック流路18aの一端部は、中間流路22に接続され、他端部は、吸込流路21に接続されている。つまり、第1スピルバック流路18aを流れた水素ガスは、吸込流路21において、液体水素貯槽23からの水素ガスと合流する。第1スピルバック弁18bは、第1スピルバック流路18aにおいてスピルバック量を調整する。
【0037】
圧縮機ユニット10は、後続圧縮ステージ14による水素ガスの処理量を調整する調整手段41を備えている。調整手段41は、クランク機構16の回転数を調整する以外の方法によってガス処理量を調整するものであり、本実施形態では、後続圧縮ステージ14から需要先26に向けて送られるガス流量が調整されるように水素ガスの処理量を調整するスピルバック部(第2スピルバック部43)によって構成されている。
【0038】
第2スピルバック部43は、第2スピルバック流路43aと、第2スピルバック流路43aに配置された開度調整可能な弁からなる第2スピルバック弁43bと、を有する。第2スピルバック流路43aの一端部は、吐出流路24に接続され、他端部は、中間流路22に接続されている。したがって、後続圧縮ステージ14から吐出された水素ガスの一部は中間流路22に戻される。第2スピルバック弁43bは、第2スピルバック流路43aにおいてスピルバック量を調整する。
【0039】
吸込流路21には、吸込流路21を流れる水素ガスの温度を検出する温度センサ(上流側温度センサ45)が設けられている。上流側温度センサ45は、吸込流路21において、第1スピルバック流路18aの接続部と第1圧縮ステージ12との間に配置されている。したがって、上流側温度センサ45は、第1スピルバック流路18aを水素ガスが流れるときは、液体水素貯槽23からの水素ガスに第1スピルバック流路18aからの水素ガスが合流した後の水素ガスであって第1圧縮ステージ12に吸入される水素ガスの温度を取得することができる。
【0040】
中間流路22には、中間流路22を流れる水素ガスの圧力を検出する圧力センサ47が設けられている。圧力センサ47は、中間流路22において、第1スピルバック流路18aの接続部と後続圧縮ステージ14との間に位置している。したがって、圧力センサ47により、第1スピルバック部18によって圧力が調整された後の水素ガスであって後続圧縮ステージ14に導入される水素ガスの圧力を検出することができる。
【0041】
圧力センサ47は検出圧力を示す信号を出力し、上流側温度センサ45は取得温度(吸込温度TS2)を示す信号を出力する。圧力センサ47、上流側温度センサ45からの信号は、制御部50に入力される。制御部50は、圧縮機ユニット10の各種動作を制御するコンピュータであり、このコンピュータにより実行される制御部50の機能には、第1制御部50aと、第2制御部50bと、が含まれる。第1制御部50aは、上流側温度センサ45によって取得された吸込温度TS2を参照しつつ第1スピルバック弁18bを制御するように構成された機能部である。第2制御部50bは、圧力センサ47の検出圧力に基づいて調整手段41を制御するように構成された機能部である。
【0042】
ここで、本実施形態に係る圧縮機ユニット10の運転動作について、
図4を参照しつつ説明する。
【0043】
クランク機構16の作動により、第1圧縮ステージ12及び後続圧縮ステージ14において、シリンダ部211内においてピストン212が往復動する。これにより、第1圧縮ステージ12において、吸込流路21の水素ガスが第1圧縮ステージ12に吸い込まれ、また後続圧縮ステージ14において、中間流路22の水素ガスが後続圧縮ステージ14に吸い込まれ、水素ガスの圧縮が行われる(ステップST11)。
【0044】
第1圧縮ステージ12の動作時には、第1圧縮ステージ12に吸入される水素ガスの温度(吸込温度TS2)が上流側温度センサ45によって取得されている(ステップST12)。このとき第1制御部50aは、吸込温度TS2を参照しており、吸込温度TS2が予め定められた温度範囲内(TTH1≦TS2≦TTH2)になるように第1スピルバック弁18bを制御する第1制御を実行する(ステップST13)。
【0045】
より詳細には、第1制御において、TS2<TTH1の場合には、中間流路22のガスの一部が吸込流路21に戻されるように、または戻す量が増えるように、第2制御部50bが第1スピルバック弁18bを制御する。これにより、吸込温度TS2が上記温度範囲内とされる。なお、TS2>TTH2である場合には、中間流路22のガスの一部を吸込流路21に戻す動作は行われない、もしくは戻す量が減らされる。
【0046】
ここで、前記予め定められた温度範囲は、空気の液化温度に基づく基準温度よりも高く、かつ、0℃未満の範囲で設定されている。すなわち、前記予め定められた温度範囲の下限値TTH1および上限値TTH2は、上記基準温度よりも高く、かつ、0℃未満の範囲内に設定される。
【0047】
これにより、第1圧縮ステージ12に吸入される水素ガスの温度である吸込温度TS2を適切な範囲に収めることができる。第1圧縮ステージ12には、液体水素貯槽23からの水素ガスがそのまま導入されるのではなく、第1圧縮ステージ12で圧縮された水素ガスが合流して昇温した水素ガスが導入される。このため、第1圧縮ステージ12が極低温の水素ガスに晒されることを防止できる。しかも、吸込温度TS2が空気の液化温度に基づく基準温度よりも高くなるように調整されるため、酸素の液化が発生することも防止できる。また、0℃未満の範囲に調整されるため、第1圧縮ステージ12に吸入される水素ガスの密度が過度に低下することも防止できる。
【0048】
第1制御が行われることにより、第1圧縮ステージ12から吐出された水素ガスのうち、後続圧縮ステージ14に導入される水素ガスの流量が変化するため、後続圧縮ステージ14の動作中には、後続圧縮ステージ14に導入される水素ガスの圧力(中間圧力)が圧力センサ47によって検出されている(ステップST14)。
【0049】
このとき第2制御部50bは、第1制御により生じた中間流路22における圧力(中間圧力)の変化量に応じて後続圧縮ステージ14の処理量が調整されるように調整手段41を制御する第2制御を実行する(ステップST15)。具体的に、第2制御では、圧力センサ47による検出圧力が目標値よりも低い場合には、開度が所定値だけ大きくなるように第2スピルバック弁43bを制御し、検出圧力が目標値よりも高い場合には、開度が所定値だけ小さくなるように第2制御部50bが第2スピルバック弁43bを制御する。これにより、後続圧縮ステージ14の吸込口における圧力が所定範囲内に収まるため、後続圧縮ステージ14での過剰な圧縮動作を抑制できる。後続圧縮ステージ14において圧縮された水素ガスは、吐出流路24を通して需要先に送られる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態では、低温環境下において圧縮機ユニット10を保護することができるため、安定した水素ガスの回収に寄与する。具体的には、第1制御において、第1スピルバック部18によって吸込流路21に戻される水素ガスの流量が調整されるため、第1圧縮ステージ12に吸入される水素ガスの吸込温度TS2を調整することができる。また、第1圧縮ステージ12に吸入される水素ガスの温度範囲が空気の液化温度に基づく基準温度よりも高くなるように調整されるため、第1圧縮ステージ12における吸込部または吸込流路21において、支燃性ガスである酸素の液化が発生することを回避できる。すなわち、水素ガスの流入部の外表面(水素ガスが供給される装置の周辺)において酸素の液化が発生することを回避できる。また、吸込温度TS2が空気の液化温度に基づく基準温度よりも高く、かつ、0℃未満の範囲で予め設定された温度範囲に調整されるため、水素ガスの処理効率の低下を抑制できる。
【0051】
また、第1スピルバック部18が第1圧縮ステージ12のみをバイパスするため、後続圧縮ステージ14の吐出流路24から吸込流路21へと水素ガスをスピルバックさせる場合、すなわち最も高圧の水素ガスを吸込流路21に戻す場合と比べて、圧縮機ユニット10の動力の悪化を抑制することができる。
【0052】
また、少なくとも第1圧縮ステージ12が無給油式であるため、油の凍結リスクを回避できる。さらに、後続の圧縮ステージほど圧力が高くなって、水素ガスがリークしやすくなるが、後続圧縮ステージ14においてリークした水素ガスがリークガス排出部29により、吸込流路21へ回収されるため、圧縮時の製品ガスのロスを低減することができる。したがって、効率的な水素ガスの回収に寄与する。リークガス排出部29は第1圧縮ステージ12にも設けられてよい。
【0053】
なお、
図1に示す圧縮機ユニット10は、後続圧縮ステージ14が1段の圧縮機構を有しているが、複数の圧縮段の圧縮機構を有してもよいことは上述したとおりである。この場合、例えば、
図5に示すように、第2スピルバック部43が最前段の圧縮機構のみに設けられていてもよく、あるいは、
図6に示すように、第2スピルバック流路43aが後続圧縮ステージ14を構成する全ての圧縮機構をバイパスする構成であってもよく、あるいは、
図7に示すように、第2スピルバック部43が後続圧縮ステージ14の各圧縮機構にそれぞれ設けられていてもよい。圧縮機ユニット10は、第1圧縮ステージ12と後続圧縮ステージ14がピストン棒方向に配列される構成となる、いわゆるタンデム構造とされてもよい。
【0054】
(第2実施形態)
図8に示すように、第2実施形態の圧縮機ユニット10には、中間流路22には、中間流路22を流れる水素ガスの温度を検出する温度センサ(下流側温度センサ46)が設けられ、低圧需要先52に水素ガスを排出可能な低圧ガス排出路53が設けられている点で、第1実施形態と異なっている。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0055】
低圧需要先52としては、需要先26で要求される水素ガスの圧力よりも低い水素ガスを処理できる設備であれば種々のものが利用されてよい。例えばフレア設備、ベント等のガスを大気へ放出する設備や供給圧力が略大気圧が利用される他の設備でもよい。
【0056】
低圧ガス排出路53は、吐出流路24から分岐しており、吐出流路24において、低圧ガス排出路53が分岐する分岐点24aよりも下流側の部位には、逆止弁54が設けられている。この逆止弁54は、水素ガスが分岐点24aから需要先26に流れることを許容する一方で、その逆向きに流れることを阻止するための弁である。したがって、水素ガスが需要先26から分岐点24aに逆流して低圧ガス排出路53に流入することを防止することができる。
【0057】
圧縮機ユニット10には、低圧ガス排出路53における水素ガスの流通状態を切り替えるための切替手段56が設けられている。切替手段56は、開閉バルブ56aによって構成されるとともに低圧ガス排出路53に設けられている。切替手段56は、後続圧縮ステージ14から吐出された水素ガスが低圧ガス排出路53に流通する状態(第1切替状態)と、後続圧縮ステージ14から吐出された水素ガスが低圧ガス排出路53に流通しないで吐出流路24を通して需要先26に送られる状態(第2切替状態)と、の間で、低圧ガス排出路53における水素ガスの流通状態を切り替える。第1切替状態では、開閉バルブ56aが開かれるため、水素ガスが低圧ガス排出路53に流通する。その一方で、水素ガスは、需要先26での水素ガスの圧力は低圧需要先52での水素ガスの圧力より高いが逆止弁54の作用により、需要先26に向けて流れない。第2切替状態では、開閉バルブ56aが閉じられるため、水素ガスは低圧ガス排出路53を流れない。したがって、後続圧縮ステージ14から吐出された水素ガスは、需要先26に送られる。
【0058】
なお、切替手段56は、低圧ガス排出路53に設けられた開閉バルブ56aに限られるものではない。例えば、切替手段56は、図略の三方弁によって構成されるとともに分岐点24aに設けられてもよい。この場合、三方弁は、後続圧縮ステージ14から吐出された水素ガスが需要先26に向けて流れる状態(第2切替状態)、及び、後続圧縮ステージ14から吐出された水素ガスが低圧需要先52に向けて流れる状態(第1切替状態)の何れかの状態を取り得る。
【0059】
制御部50の機能には、切替手段56を制御する切替制御部50cが含まれている。
【0060】
切替制御部50cは、起動時であって下流側温度センサ46の検出温度TS1が、0℃より高い温度である所定の第1温度T1よりも高い場合に、切替手段56が第1切替状態になるように切替手段56を制御する。切替手段56が第1切替状態にある場合には、後続圧縮ステージ14から吐出された水素ガスが低圧ガス排出路53を流れることが許容されるため、比較的低い圧力の水素ガスが後続圧縮ステージ14から吐出される。これにより、起動時の後続圧縮ステージ14において、後続圧縮ステージ14の吸込ガスの温度が高い場合は、高い圧力まで昇圧することによる過度な吐出温度上昇から圧縮機を保護することができる。
【0061】
また切替制御部50cは、下流側温度センサ46の検出温度TS1が第1温度T1未満になった場合に、切替手段56が第2切替状態になるように切替手段56を制御する。切替手段56が第2切替状態にある場合には、低圧ガス排出路53には水素ガスは流通しないため、後続圧縮ステージ14から吐出された水素ガスは吐出流路24を通して需要先26に向けて流れる。この場合、後続圧縮ステージ14から吐出される水素ガスの圧力は比較的高くなるが、後続圧縮ステージ14に導入される水素ガスの温度が高くない場合であるため、後続圧縮ステージ14での温度が過度に高くなることはない。
【0062】
ここで、本実施形態に係る圧縮機ユニット10の運転動作について、
図9を参照しつつ説明する。
【0063】
圧縮機ユニット10を起動すると、第1圧縮ステージ12での水素ガスの圧縮が開始される(ステップST21)。圧縮機ユニット10の起動時においては、液体水素貯槽23から第1圧縮ステージ12までの間の配管の温度が常温になっていることがあるため、圧縮機ユニット10の起動時には、切替手段56が第1切替状態に切り替えられている。したがって、後続圧縮ステージ14から吐出される水素ガスは低圧ガス排出路53を通して低圧需要先52に送られる(ステップST22)。
【0064】
この状態で、下流側温度センサ46の検出温度TS1が第1温度T1未満になったかどうかが判断される(ステップST23)。検出温度TS1が第1温度T1以上である限り(ステップST23においてNO)、ステップST23が繰り返し実行され、検出温度TS1が第1温度T1未満になると(ステップST23においてYES)、制御部50の切替制御部50cは、切替手段56が第2切替状態になるように切替手段56を制御する(ステップST24)。これにより、後続圧縮ステージ14から吐出された水素ガスが低圧ガス排出路53に流れる状態(起動運転)が停止され、水素ガスが需要先26に供給される定常運転となる。
【0065】
定常運転においては、第1圧縮ステージ12に吸入される水素ガスの温度(吸込温度TS2)が上流側温度センサ45によって取得されている(ステップST12)。このとき第1制御部50aは、吸込温度TS2を参照し、第1実施形態と同様に、第1スピルバック弁18bを制御する第1制御を実行する(ステップST13)。
【0066】
第1制御が行われることにより、第1圧縮ステージ12から吐出された水素ガスのうち、後続圧縮ステージ14に導入される水素ガスの流量が変化するため、後続圧縮ステージ14に導入される水素ガスの圧力(中間圧力)が圧力センサ47によって検出されている(ステップST14)。このとき第2制御部50bは、第1実施形態と同様に、第1制御により生じた中間流路22における圧力(中間圧力)の変化量に応じて後続圧縮ステージ14の処理量が調整されるように調整手段41を制御する第2制御を実行する(ステップST15)。
【0067】
したがって、本実施形態では、起動時において液体水素貯槽23側の配管内の水素ガスがプラスの温度領域まで上昇している場合に、後続圧縮ステージ14から吐出された水素ガスが低圧需要先52に送出される。このため、後続圧縮ステージ14における水素ガスの過度の温度上昇をより効果的に防止できる。すなわち、レシプロ式の圧縮機ユニット10においては、水素ガスの供給先によって設定された圧力に応じた圧力の水素ガスが送出されるため、低圧需要先52に水素ガスが送出されるように切替手段56が制御されることにより、後続圧縮ステージ14による吐出ガス圧力が低減され高い圧力まで昇圧することによる過度な吐出温度上昇から圧縮機を保護する。これにより、後続圧縮ステージ14をより確実に保護することができる。また、圧縮機ユニット10の立ち上げも速やかに行うことができる。また、低温環境下において圧縮機ユニット10を保護することができる。
【0068】
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、第1実施形態の説明を第2実施形態に援用することができる。
【0069】
(第3実施形態)
図10に示すように、第3実施形態に係る圧縮機ユニット10には、クーラ部58と、クーラ切替手段59と、が設けられている点で第1実施形態と相違する。尚、ここでは第1実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0070】
クーラ部58は、第1圧縮ステージ12と後続圧縮ステージ14との間に配置されている。すなわち、第3実施形態では、中間流路22が、その途中部位において、分岐した流路(第1流路22aと第2流路22b)を有しており、クーラ部58はその一方の流路(第1流路22a)に配置されている。
【0071】
クーラ切替手段59は、第1圧縮ステージ12から吐出された水素ガスがクーラ部58を経由して後続圧縮ステージ14に流入する状態(第1切替状態)と、水素ガスがクーラ部58を経由しないで後続圧縮ステージ14に流入する状態(第2切替状態)との間で、水素ガスの経路を切り替え可能に構成されている。クーラ切替手段59は、第1流路22aに設けられた第1開閉バルブ59aと、第2流路22bに設けられた第2開閉バルブ59bと、を含む。なお、クーラ切替手段59は、2つの開閉バルブ59a,59bを有する構成に限られない。例えば、クーラ切替手段59は、第1流路22a及び第2流路22bの接続部に配置された三方弁によって構成されていてもよい。
【0072】
中間流路22における第1スピルバック流路18aの接続部は、第1圧縮ステージ12と後続圧縮ステージ14との間であれば、第1流路22a及び第2流路22bとの接続部分よりも上流側でも下流側でもよい。
【0073】
制御部50の機能には、クーラ切替手段59を切替制御可能なクーラ制御部50dが含まれている。
【0074】
クーラ制御部50dは、起動時において下流側温度センサ46の検出温度TS1が0℃より高い所定の第1温度T1よりも高い場合に、水素ガスがクーラ部58に流通するようにクーラ切替手段59を制御する。すなわち、下流側温度センサ46の検出温度TS1が第1温度T1よりも高い場合には、第1圧縮ステージ12から吐出された水素ガスが、後続圧縮ステージ14に吸入される前にクーラ部58によって冷却されるように、クーラ切替手段59が制御される。
【0075】
またクーラ制御部50dは、下流側温度センサ46の検出温度TS1が第1温度T1未満になった場合には、水素ガスがクーラ部58に流通しないようにクーラ切替手段59を制御する。
【0076】
ここで、本実施形態に係る圧縮機ユニット10の運転動作について、
図11を参照しつつ説明する。
【0077】
圧縮機ユニット10を起動すると、第1圧縮ステージ12での水素ガスの圧縮が開始される(ステップST31)。圧縮機ユニット10の起動時においては、液体水素貯槽23から第1圧縮ステージ12までの間の配管の温度が常温になっていることがあるため、圧縮機ユニット10の起動時には、クーラ切替手段59が第1切替状態に切り替えられている。このため、第1圧縮ステージ12から吐出される水素ガスは、中間流路22の第1流路22aに流れてクーラ部58において冷却された後、後続圧縮ステージ14に導入される(ステップST32)。
【0078】
この状態で、下流側温度センサ46の検出温度TS1が第1温度T1未満になったかどうかが判断される(ステップST33)。検出温度TS1が第1温度T1以上である限り(ステップST33においてNO)、ステップST33が繰り返し実行され、検出温度TS1が第1温度T1未満になると(ステップST33においてYES)、制御部50のクーラ制御部50dは、クーラ切替手段59が第2切替状態になるようにクーラ切替手段59を制御する(ステップST34)。これにより、第1圧縮ステージ12から吐出された水素ガスがクーラ部58によって冷却される状態(起動運転)が停止され、第1圧縮ステージ12から吐出された水素ガスが、クーラ部58によって冷却されないで後続圧縮ステージ14に導入される定常運転となる。
【0079】
定常運転においては、第1圧縮ステージ12に吸入される水素ガスの温度(吸込温度TS2)が上流側温度センサ45によって取得されている(ステップST12)。このとき第1制御部50aは、第1実施形態と同様に第1制御を実行する(ステップST13)。これにより、第1圧縮ステージ12に吸入される水素ガスの吸込温度TS2を適切な範囲に収めることができる。
【0080】
第1制御が行われることにより、第1圧縮ステージ12から吐出された水素ガスのうち、後続圧縮ステージ14に導入される水素ガスの流量が変化する。このため、後続圧縮ステージ14に導入される水素ガスの圧力(中間圧力)が圧力センサ47によって検出されており(ステップST14)、第2制御部50bは、第1実施形態と同様に、調整手段41を制御する第2制御を実行する(ステップST15)。
【0081】
したがって、本実施形態によれば、起動時に液体水素貯槽23側の配管内の水素ガスがプラスの温度領域まで上昇している場合に、第1圧縮ステージ12から吐出された水素ガスをクーラ部58により冷却するため、後続圧縮ステージ14における水素ガスの過度の温度上昇を防止できる。したがって、安定した水素ガスの回収に寄与する。すなわち、後続圧縮ステージ14を保護することができる。また、圧縮機ユニット10の立ち上げも速やかに行うことができる。また、低温環境下において圧縮機ユニット10を保護することができる。
【0082】
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、第1及び第2実施形態の説明を第3実施形態に援用することができる。
【0083】
(第4実施形態)
図12に示すように、第4実施形態に係る圧縮機ユニット10では、調整手段41が、第2スピルバック部43とオンオフ式の吸込弁アンローダ61と駆動装置62とを備える点において、第1実施形態と異なっている。尚、ここでは第1~第3実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0084】
吸込弁アンローダ61が駆動装置62によって駆動されると、吸込弁214の弁板が開状態に維持され逆止弁の機能ができない状態がつくられる。なお、アンローダ61を駆動させない状態でピストン212が吸込行程となった場合、圧縮室216の圧力が吸込側の通路である中間流路22の圧力よりも下がるため、吸込弁214は開の状態となる。これにより、圧縮室216側へガスが導入される。ピストン212が圧縮行程となった場合には、圧縮室216の圧力が中間流路22の圧力より上がるため、吸込弁214は閉の状態となる。
【0085】
調整手段41は、少なくとも1つの後続圧縮ステージ14に設けられ、吸込弁アンローダ61は、当該後続圧縮ステージ14の吸込弁214に装着されている。吸込弁アンローダは、シリンダ部211のフロントヘッド側圧縮室とリアヘッド側圧縮室それぞれに装着されており、それぞれ独立して作動させることができる。両方とも作動しない状態を100%ロード、いずれか一方を作動した場合を50%ロードと称する。
【0086】
吸込弁アンローダ61は、空気または窒素などのガスによる駆動装置62によって駆動される。吸込弁アンローダ61は、駆動装置62によって駆動されることにより、吸込弁214(
図3参照)を、圧縮室216と吸込流路21との差圧に応じて圧縮室216が吸込流路21に対して開閉される状態にしたり(ロード状態)、圧縮室216と吸込流路21との間を開状態で維持する状態にする(アンロード)。例えば、駆動装置62に空気または窒素などのガスがかけられていなければ、吸込弁アンローダ61は、圧縮室216と吸込流路21との差圧に応じて圧縮室216が開閉可能な状態になるように吸込弁214をフリーな状態とする。一方、駆動装置62に空気または窒素などのガスがかけられた場合には、本来圧縮室216と吸込流路21との差圧によって圧縮室216が閉じられるものを、吸込弁アンローダ61は、吸込弁214を強制的に開の状態に維持する。
【0087】
また、このアンローダの状態を示す信号と、第2スピルバック弁43bの開度信号とは、制御部50に送出され、制御部50での制御に利用される。すなわち、制御部50は、スピルバックするガス量を第2スピルバック弁43bの開度から推定するとともに、第2スピルバック弁43bの開度が予め設定される開度閾値(例えば、略50%)を超える場合には、制御部50は、後続圧縮ステージ14のロードを前記の吸込弁アンローダ61により50%へ下げる。これにより、後続圧縮ステージ14の吐出量が少なくなるため、第2スピルバック部43でのスピルバック量を少なくすることができる。これにより、吸込弁214がフリーな状態にあるときに比べ後続圧縮ステージ14の動力を削減することが可能となる。
【0088】
図13に示すように、制御部50の第1制御部50aは、吸込温度TS2を参照しており、吸込温度TS2が予め定められた温度範囲内になるように第1スピルバック弁18bを制御する第1制御を実行する(ステップST13)。第1制御が行われることにより、第1圧縮ステージ12から吐出された水素ガスのうち、後続圧縮ステージ14に導入される水素ガスの流量が変化するため、後続圧縮ステージ14の動作中には、後続圧縮ステージ14に導入される水素ガスの圧力(中間圧力)が圧力センサ47によって検出されている(ステップST14)。
【0089】
制御部50の第2制御部50bは、第1制御により生じた中間流路22における圧力の変化量に応じて第2スピルバック弁43bを制御する(ステップST15)。例えば、圧力センサ47による検出圧力が目標値よりも低い場合には、開度が所定値だけ大きくなるように第2スピルバック弁43bを制御する。そして、第2制御部50bは、第2スピルバック弁43bの開度が予め設定された値に達したときには吸込弁アンローダ61が併用されるように、駆動装置62を制御する(ステップST16)。
【0090】
具体的には
図14に示すように、制御部50は、制御部50に入力される第2スピルバック弁43bの開度と予め設定されている開度閾値b1との比較を行っており、第2スピルバック弁43bの状態(弁の開度)が、開度閾値b1より大きくなった場合(スピルバック量が多い)には(ステップST41でYes)、ロード量がダウンするように吸込弁アンローダ61(例えばフロントヘッド側の吸込弁アンローダ)を制御する(ステップST42)。これにより後続圧縮ステージ14のロード量がダウンする(100%から50%)。第2スピルバック弁43bの開度が開度閾値b2よりも小さくなった場合は(ステップST43でYes)、制御部50は、ロード量がアップするように吸込弁アンローダ61を制御する(ステップST44)。これにより後続圧縮ステージ14のロード量がアップ(50%から100%)する。これによって、スピルバックが過剰な場合において、後続圧縮ステージ14のロードを下げることにより、動力削減することができる。
【0091】
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、第1~第3実施形態の説明を第4実施形態に援用することができる。
【0092】
(第5実施形態)
第4実施形態では、調整手段41が、第2スピルバック部43とオンオフ式の吸込弁アンローダ61と駆動装置62とを備える。これに対し、第5実施形態に係る圧縮機ユニット10は、
図15に示すように、調整手段41が、第2スピルバック部43を備えておらず、無段階容量調整装置64bを備えている。制御部50の機能には、無段階容量調整装置64bを制御可能な無段階容量調整制御部50eが含まれている。尚、ここでは第1~第4実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0093】
無段階容量調整装置64bは、吸込弁アンローダ61bと、駆動装置62bと、クランク機構16におけるクランク軸の回転を検出する検出器63bと、を有する。吸込弁アンローダ61bは、油圧式または電気式の駆動装置62bによって駆動され、吸込弁214の弁板の開状態を維持又は解除をピストン212が往復にかかる時間よりも高速で実施することできる。また、クランク機構16に設置された検出器63bから送出される信号により、制御部50では、ピストン212の位置を推定する演算処理が行われている。
【0094】
後続圧縮ステージ14のシリンダ部211には、吸込側の流路である中間流路22と圧縮室216との間に設置された吸込弁214は、ガス通路を開閉する弁板とそれを収納する弁体などで構成されている。吸込弁214は、逆止弁と同様に、上流の圧力が下流側よりも高い場合に、その差圧で弁板が開状態となり、下流側の圧力の方が高い場合は、ガスが流れない構造である。
【0095】
吸込弁アンローダ61bが駆動装置62bによって駆動されると、吸込弁214の弁板が開状態に維持され逆止弁の機能ができない状態がつくられる。なお、アンローダ61bを駆動させない状態でピストン212が吸込行程となった場合、圧縮室216の圧力が吸込側の通路である中間流路22の圧力よりも下がるため、吸込弁214は開の状態となる。これにより、圧縮室216側へガスが導入される。ピストン212が圧縮行程となった場合には、圧縮室216の圧力が中間流路22の圧力より上がるため、吸込弁214は閉の状態となる。
【0096】
制御部50の無段階容量調整制御部50eは、クランク機構16の中のクランク軸の回転運動に連動して吸込弁アンローダ61bの動作タイミングが調整されるように駆動装置62bを駆動する。具体的に、圧縮行程が始まった初期において、無段階容量調整装置64bにより、吸込弁214の開状態を維持することにより、圧縮室216へ導入されたガスの一部を中間流路22側へ戻す。そして、圧縮行程の途中から開状態を解除することにより、吸込弁214が閉となり、その時に圧縮室216に残っているガスが圧縮され、送出される。次のピストン吸込行程時には、再び駆動装置62bを駆動させ、ピストン212の圧縮行程が始まってから開状態を解除する。これをピストンの往復運動にあわせて繰り返す。
【0097】
この解除のタイミングを早くすると、送出量が多くなり、遅くすると送出量が少なくなるので、第2スピルバック部43と同じ機能を果たすことができる。すなわち、第1制御により生じた中間流路22における圧力の変化量に応じて後続圧縮ステージ14の処理量を調整するので、動力を削減する効果は大きい。
【0098】
なお、その他の構成、作用及び効果はその説明を省略するが、第1~第4実施形態の説明を第5実施形態に援用することができる。
【0099】
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。
【0100】
例えば、
図1に示す圧縮機ユニット10は、
図16に示すように、第1圧縮ステージ12の上流側に先頭圧縮ステージ15をさらに有していてもよい。この場合、第1スピルバック部18は、第1圧縮ステージ12である先頭から2つ目の圧縮ステージの下流側に設けられる。
図16に示す形態であっても、後続圧縮ステージ14の吐出流路24から吸込流路21へと水素ガスをスピルバックさせるよりも、圧縮機ユニット10の動力の悪化を抑制することができる。なお、先頭圧縮ステージ15の数は2以上でもよい。他の図においても同様である。
【符号の説明】
【0101】
10 :圧縮機ユニット
12 :第1圧縮ステージ
14 :後続圧縮ステージ
16 :クランク機構
18 :第1スピルバック部
18a :第1スピルバック流路
18b :第1スピルバック弁
21 :吸込流路
22 :中間流路
23 :液体水素貯槽
24 :吐出流路
24a :分岐点
26 :需要先
29 :リークガス排出部
41 :調整手段
43 :第2スピルバック部
43a :第2スピルバック流路
43b :第2スピルバック弁
45 :上流側温度センサ
46 :下流側温度センサ
47 :圧力センサ
50 :制御部
50e :無段階容量調整制御部
52 :低圧需要先
53 :低圧ガス排出路
54 :逆止弁
56 :切替手段
58 :クーラ部
59 :クーラ切替手段
61 :吸込弁アンローダ
62 :駆動装置
64b :無段階容量調整装置