(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114403
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】半導体発光装置、半導体発光モジュール、および半導体発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/023 20210101AFI20240816BHJP
H01S 5/02212 20210101ALI20240816BHJP
【FI】
H01S5/023
H01S5/02212
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020154
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】足立 知樹
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173MB01
5F173MC18
5F173MD03
5F173MD23
5F173ME22
5F173ME33
(57)【要約】
【課題】表面配線層と半導体基板とにオーミック接触を形成すること。
【解決手段】半導体発光装置は、n型不純物を含み、基板表面21と、基板表面21とは反対側の基板裏面22を有する半導体基板20と、基板表面21に形成された表面配線層40と、表面配線層40に接合される半導体発光素子30と、表面配線層40と半導体発光素子30とを接合する接合層80と、を備える。表面配線層40は、基板表面21に接し、半導体基板20の電子親和力よりも仕事関数が小さい第1配線層41と、第1配線層41上において第1配線層41に接する第2配線層42と、を含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
n型不純物を含み、基板表面と、前記基板表面とは反対側の基板裏面を有する半導体基板と、
前記基板表面に形成された表面配線層と、
前記表面配線層に接合される半導体発光素子と、
前記表面配線層と前記半導体発光素子とを接合する接合層と、
を備え、
前記表面配線層は、
前記基板表面に接し、前記半導体基板の電子親和力よりも仕事関数が小さい第1配線層と、
前記第1配線層上において前記第1配線層に接する第2配線層と、
を含む
半導体発光装置。
【請求項2】
前記半導体基板は、Siを含む材料によって形成されており、
前記第1配線層は、Tiを含む材料によって形成されている
請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項3】
p型不純物を含み、基板表面と、前記基板表面とは反対側の基板裏面を有する半導体基板と、
前記基板表面に形成された表面配線層と、
前記表面配線層に接合される半導体発光素子と、
前記表面配線層と前記半導体発光素子とを接合する接合層と、
を備え、
前記表面配線層は、
前記基板表面に接し、前記半導体基板の電子親和力よりも仕事関数が大きい第1配線層と、
前記第1配線層上において前記第1配線層に接する第2配線層と、
を含む
半導体発光装置。
【請求項4】
前記半導体基板は、Siを含む材料によって形成されており、
前記第1配線層は、Ptを含む材料によって形成されている
請求項3に記載の半導体発光装置。
【請求項5】
前記第1配線層の厚さは、前記第2配線層の厚さよりも小さい
請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項6】
前記第1配線層の厚さは、10nm以上300nm以下である
請求項5に記載の半導体発光装置。
【請求項7】
前記接合層は、
前記表面配線層に接する第1接合層と、
前記第1接合層に積層され、前記第1接合層と前記半導体発光素子との双方に接する第2接合層と、
によって構成されている
請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項8】
前記第1接合層は、Tiを含む材料によって形成されており、
前記第2接合層は、AuSnを含む材料によって形成されている
請求項7に記載の半導体発光装置。
【請求項9】
前記第1接合層の組成は、前記第1配線層の組成と同じである
請求項7に記載の半導体発光装置。
【請求項10】
前記表面配線層は、酸化膜が形成されることなく、前記接合層と接している
請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項11】
前記半導体基板の厚さ方向と直交する方向において、前記第1配線層の大きさ、前記第2配線層の大きさ、および前記第1接合層の大きさは互いに等しい
請求項7に記載の半導体発光装置。
【請求項12】
前記半導体基板の厚さ方向と直交する方向において、前記第2接合層の大きさは、前記第1接合層の大きさよりも大きい
請求項7に記載の半導体発光装置。
【請求項13】
前記半導体発光素子は、
前記基板表面と同じ側を向く素子表面と、
前記素子表面とは反対側の素子裏面と、
前記素子裏面に形成された素子裏面電極と、
を有し、
前記素子裏面電極は、前記接合層によって前記表面配線層と電気的に接続されている
請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項14】
前記基板裏面には、裏面配線層が形成されており、
前記裏面配線層は、前記半導体基板を介して前記表面配線層と電気的に接続されている
請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の半導体発光装置と、
前記半導体発光装置が取り付けられたステムと、
前記ステムに取り付けられ、前記半導体発光装置を覆うとともに前記半導体発光装置が出射した光が通過する開口部を有するキャップと、
前記半導体発光装置と電気的に接続された端子ピンと、
を備える、半導体発光モジュール。
【請求項16】
n型不純物を含み、基板表面と、前記基板表面とは反対側の基板裏面を有する半導体基板を用意する工程と、
前記基板表面に表面配線層を蒸着する工程と、
前記表面配線層上に接合層を蒸着する工程と、
前記接合層によって前記表面配線層に半導体発光素子を接合する工程と、
を備え、
前記表面配線層を蒸着する工程は、
前記半導体基板の電子親和力よりも仕事関数が小さい第1配線層を前記基板表面に蒸着する工程と、
前記第1配線層上に前記第1配線層に接するように第2配線層を蒸着する工程と、
を含む
半導体発光装置の製造方法。
【請求項17】
前記基板表面に前記表面配線層を蒸着する工程および前記表面配線層上に前記接合層を蒸着する工程は、真空環境下において連続して実施される
請求項16に記載の半導体発光装置の製造方法。
【請求項18】
前記第2配線層上に前記第2配線層と接するように第1接合層を蒸着する工程と、
前記第1接合層上に前記第1接合層と接するように第2接合層を蒸着する工程と、
によって前記表面配線層に接するように前記接合層を形成する
請求項17に記載の半導体発光装置の製造方法。
【請求項19】
前記第1配線層は、Tiを含む材料を前記基板表面に蒸着することによって形成され、
前記第2配線層は、Alを含む材料を前記第1配線層に蒸着することによって形成され、
前記第1接合層は、Tiを含む材料を前記第2配線層に蒸着することによって形成され、
前記第2接合層は、AuSnを含む材料を前記第1接合層に蒸着することによって形成される
請求項18に記載の半導体発光装置の製造方法。
【請求項20】
前記基板表面に、前記半導体発光素子とワイヤによって電気的に接続されるためのワイヤ配線層を形成する工程と、
前記基板裏面に裏面配線層を蒸着する工程と、
前記ワイヤ配線層および前記裏面配線層が形成された後に熱処理を実施する工程と、
をさらに備え、
前記基板表面に前記表面配線層を蒸着する工程および前記表面配線層上に前記接合層を蒸着する工程は、前記熱処理を実施する工程の後に実施される
請求項16に記載の半導体発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体発光装置、半導体発光モジュール、および半導体発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
サブマウントと、サブマウント上に配置された半導体発光素子と、を備える半導体発光装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、サブマウントとして半導体基板が用いられる場合がある。この場合、サブマウントには、半導体発光素子と電気的に接続される表面配線層が形成されている。サブマウントと半導体発光素子との導電経路の抵抗成分を小さくする観点からサブマウントと表面配線層とはオーミック接触を形成することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する半導体発光装置は、n型不純物を含み、基板表面と、前記基板表面とは反対側の基板裏面を有する半導体基板と、前記基板表面に形成された表面配線層と、前記表面配線層に接合される半導体発光素子と、前記表面配線層と前記半導体発光素子とを接合する接合層と、を備え、前記表面配線層は、前記基板表面に接し、前記半導体基板の電子親和力よりも仕事関数が小さい第1配線層と、前記第1配線層上において前記第1配線層に接する第2配線層と、を含む。
【0006】
上記課題を解決する半導体発光装置は、p型不純物を含み、基板表面と、前記基板表面とは反対側の基板裏面を有する半導体基板と、前記基板表面に形成された表面配線層と、前記表面配線層に接合される半導体発光素子と、前記表面配線層と前記半導体発光素子とを接合する接合層と、を備え、前記表面配線層は、前記基板表面に接し、前記半導体基板の電子親和力よりも仕事関数が大きい第1配線層と、前記第1配線層上において前記第1配線層に接する第2配線層と、を含む。
【0007】
上記課題を解決する半導体発光モジュールは、上記半導体発光装置と、前記半導体発光装置が取り付けられたステムと、前記ステムに取り付けられ、前記半導体発光装置を覆うとともに前記半導体発光装置が出射した光が通過する開口部を有するキャップと、前記半導体発光装置と電気的に接続された端子ピンと、を備える。
【0008】
上記課題を解決する半導体発光装置の製造方法は、基板表面と、前記基板表面とは反対側の基板裏面を有する半導体基板を用意する工程と、前記基板表面に表面配線層を蒸着する工程と、前記表面配線層上に接合層を蒸着する工程と、前記接合層によって前記表面配線層に半導体発光素子を接合する工程と、を備え、前記表面配線層を蒸着する工程は、前記半導体基板の電子親和力よりも仕事関数が小さい第1配線層を前記基板表面に蒸着する工程と、前記第1配線層上に前記第1配線層に接するように第2配線層を蒸着する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
上記半導体発光装置、半導体発光モジュール、および半導体発光装置の製造方法によれば、半導体基板と表面配線層とにオーミック接触を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る例示的な半導体発光モジュールの概略斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のF2-F2線で半導体発光モジュールを切断した概略断面図である。
【
図3】
図3は、
図2の半導体発光モジュールにおける半導体基板の平面図である。
【
図4】
図4は、
図2の半導体発光モジュールにおける半導体発光装置の概略平面図である。
【
図5】
図5は、
図4のF5-F5線で半導体発光装置を切断した概略断面図である。
【
図6】
図6は、
図4のF6-F6線で半導体発光装置を切断した概略断面図である。
【
図7】
図7は、
図4のF7-F7線で半導体発光装置を切断した概略断面図である。
【
図9】
図9は、
図8のF9-F9線で半導体発光素子を切断した概略断面図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態の半導体発光装置の例示的な製造工程を示す概略断面図である。
【
図12】
図12は、
図11に続く製造工程を示すワイヤ配線層およびその周辺の概略断面図である。
【
図13】
図13は、
図12に続く製造工程を示すワイヤ配線層およびその周辺の概略断面図である。
【
図14】
図14は、
図13に続く製造工程を示すワイヤ配線層およびその周辺の概略断面図である。
【
図15】
図15は、
図14に続く製造工程を示す第1配線層および第1検出層、ならびにそれら周辺の概略断面図である。
【
図16】
図16は、
図15に続く製造工程を示す表面配線層および検出配線層、ならびにそれら周辺の概略断面図である。
【
図17】
図17は、
図16に続く製造工程を示す表面配線層およびその周辺の概略断面図である。
【
図18】
図18は、
図17に続く製造工程を示す表面配線層およびその周辺の概略断面図である。
【
図19】
図19は、
図18に続く製造工程を示す表面配線層およびその周辺の概略断面図である。
【
図20】
図20は、第1比較例の半導体発光装置における表面配線層およびその周辺の概略断面図である。
【
図21】
図21は、第2比較例の半導体発光装置における表面配線層およびその周辺の概略断面図である。
【
図22】
図22は、第2実施形態の半導体発光装置における表面配線層およびその周辺の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本開示における半導体発光装置、半導体発光モジュール、および半導体発光装置の製造方法の実施形態について説明する。なお、説明を簡単かつ明確にするため、図面に示される構成要素は、必ずしも一定の縮尺で描かれていない。また、理解を容易にするため、断面図ではハッチング線が省略されている場合がある。添付図面は、本開示の実施形態を例示するに過ぎず、本開示を制限するものとみなされるべきではない。
【0012】
以下の詳細な説明は、本開示の例示的な実施形態を具体化する装置、システム、および方法を含む。この詳細な記載は本来説明のためのものに過ぎず、本開示の実施形態またはこのような実施形態の適用および使用を限定することを意図しない。
【0013】
<第1実施形態>
[半導体発光モジュールの全体構成]
図1および
図2を参照して、第1実施形態の半導体発光モジュール100の全体構成について説明する。
図1は半導体発光モジュール100の斜視構造を示し、
図2は
図1のF2-F2線で半導体発光モジュール100を切断した断面構造を示している。
図1では、図面の理解を容易にするため、後述するキャップ120を二点鎖線で示し、キャップ120内部の半導体発光モジュール100の構成を実線で示している。
【0014】
図1に示すように、半導体発光モジュール100は、半導体発光装置10、ステム110、キャップ120、および端子ピン130を備える。
半導体発光装置10は、半導体発光モジュール100の光源を構成している。半導体発光装置10は、半導体基板20および半導体発光素子30を備える。半導体発光素子30は、例えば半導体レーザチップである。半導体発光素子30は、例えば端面発光型半導体レーザ素子である。端面発光型半導体レーザ素子としては、例えばファブリ・ペロー型レーザダイオード素子が採用されている。半導体基板20は、半導体発光素子30を支持している。半導体基板20は、例えばSi(シリコン)を含む材料によって形成されている。一例では、半導体基板20は、Si基板である。なお、半導体基板20は、半導体基板に限られず、窒化アルミニウム(AlN)によって形成されていてもよい。ここで、半導体基板20は、「サブマウント」または「サブマウント基板」とも称することができる。
【0015】
ステム110には、半導体発光装置10が取り付けられている。これにより、ステム110は、半導体発光装置10を支持している。ステム110は、ベース111およびヒートシンク112を有する。一例では、ベース111およびヒートシンク112は、一体に形成されている。ステム110を形成する材料は特に限定されないが、例えば鉄(Fe)またはFe合金によって形成されている。
【0016】
ベース111は、平板状に形成されている。ベース111の厚さ方向から視て、ベース111は略円形状に形成されている。ベース111の大きさの一例として、直径は5.6mm程度、厚さは1mm~1.3mm程度である。ベース111は、その厚さ方向において互いに反対側を向く表面111Aおよび裏面111Bを有する。
【0017】
ベース111には、ベース111をその厚さ方向に貫通する2つの貫通孔113,114が形成されている。貫通孔113,114は、ベース111の厚さ方向から視て略円形状である。一例では、貫通孔113,114の直径は、1.0mm程度である。
【0018】
ベース111には、貫通孔113,114とは異なる位置に凹部115が形成されている。ベース111の厚さ方向から視て、凹部115は、ヒートシンク112と隣り合う位置に形成されている。凹部115は、ベース111の表面111Aからベース111の厚さ方向に凹んでいる。凹部115の底面は、ヒートシンク112から離れるにつれて深くなるように形成されている。凹部115には、例えば半導体発光モジュール100の外部からの光を受光する受光素子(図示略)が配置されていてもよい。
【0019】
ヒートシンク112は、ベース111の表面111Aに設けられている。ヒートシンク112は、ベース111の厚さ方向においてベース111の表面111Aから突出している。ヒートシンク112は、半導体発光装置10を搭載するための支持面116を有する。支持面116は、ベース111の厚さ方向に沿った平坦面として形成されている。支持面116には、半導体発光装置10の半導体基板20が取り付けられている。ヒートシンク112は、半導体発光装置10と電気的に接続されている。
【0020】
キャップ120は、例えば一端が開口した円筒形状に形成されている。キャップ120は、円盤状の端壁121と、端壁121の外周縁から端壁121の厚さ方向に延びる円筒状の周壁122と、周壁122の開口端部から外方に延びるフランジ123と、を含む。
【0021】
キャップ120は、ステム110に取り付けられている。より詳細には、キャップ120のフランジ123は、ベース111の表面111Aに取り付けられている。キャップ120は、ステム110に取り付けられた状態で半導体発光装置10を覆っている。つまり、ステム110およびキャップ120によって半導体発光装置10が収容されている。また、キャップ120は、ベース111に取り付けられた状態でヒートシンク112を覆っている。このため、ベース111およびキャップ120によってヒートシンク112が収容されている。このように、キャップ120は、半導体発光装置10およびヒートシンク112を収容する収容空間SP(
図2参照)をベース111とともに形成している。
【0022】
キャップ120は、遮光性を有する材料によって形成されている。遮光性を有する材料として、例えばFeまたはFe合金が用いられている。キャップ120は、半導体発光装置10が出射したレーザ光が通過する開口部124を有する。開口部124は、端壁121をその厚さ方向に貫通するように形成されている。端壁121には、開口部124を閉塞する透光板125(
図2参照)が取り付けられている。キャップ120および透光板125は、ベース111とともに収容空間SPを中空状態に気密にして中空封止構造を形成している。なお、透光板125は省略されてもよい。
【0023】
端子ピン130は、半導体発光装置10と電気的に接続されている。端子ピン130は、半導体発光モジュール100の外部端子を構成している。一例では、半導体発光モジュール100が実装基板に実装される場合、端子ピン130は実装基板のスルーホールに挿入された状態で、例えばはんだペーストによってスルーホールに接合される。端子ピン130は、例えばFe-Ni合金によって形成されている。
【0024】
端子ピン130は、2つの個別ピン131,132と、1つの共通ピン133と、を含む。
個別ピン131,132および共通ピン133は、半導体発光モジュール100を実装基板等に固定するために設けられ、かつ半導体発光装置10への電力供給経路を形成する。個別ピン131,132および共通ピン133の各々は、例えば互いに同じ直径を有する。個別ピン131,132および共通ピン133の各々は、例えば直径が0.45mm程度の棒状部材である。なお、個別ピン131,132および共通ピン133のうち少なくとも1つのピンの直径は他のピンの直径と異なっていてもよい。
【0025】
個別ピン131,132は、ベース111の貫通孔113,114に個別に挿入されている。個別ピン131,132と貫通孔113,114との間にはそれぞれ絶縁材117,118が充填されている。絶縁材117,118は、電気絶縁性を有する材料によって形成されている。この材料としては、例えばガラスが採用されている。個別ピン131,132は、絶縁材117,118によってベース111に対して電気的に絶縁された状態でベース111に支持されている。
【0026】
図2に示すように、個別ピン131は、接続部131Aおよび端子部131Bを有する。接続部131Aは、ベース111の表面111Aから突出した部分である。接続部131Aは、第1ワイヤWAを介して半導体発光装置10と接続される部分を含む。端子部131Bは、ベース111の裏面111Bから突出した部分である。端子部131Bは、半導体発光モジュール100を実装基板等に実装する際に用いられる。個別ピン131の長さは、例えば9.0mm程度である。接続部131Aの長さは、1.5mm程度である。端子部131Bの長さは、6.5mm程度である。
【0027】
個別ピン132は、接続部132Aおよび端子部132Bを有する。接続部132Aは、ベース111の表面111Aから突出した部分である。接続部132Aの長さは、個別ピン131の接続部131Aの長さよりも短い。接続部132Aは、例えば受光素子を搭載した場合にワイヤを介して受光素子と接続される部分である。端子部132Bは、半導体発光装置10を実装基板等に実装する際に用いられる。個別ピン132の長さは、8.0mm程度である。接続部132Aの長さは、0mm以上0.2mm程度である。端子部132Bの長さは、6.5mm程度である。
【0028】
共通ピン133は、ベース111に電気的に接続されている。共通ピン133は、ベース111の裏面111Bから突出している。一例では、ベース111の厚さ方向から視て、共通ピン133は、ヒートシンク112と重なる位置に配置されている。共通ピン133は、例えば銀ろう付け、抵抗溶接等によってベース111に接合されている。
【0029】
共通ピン133は、ベース111およびヒートシンク112を介して半導体発光装置10と電気的に接続されている。また、個別ピン131は、第1ワイヤWAを介して半導体発光装置10と電気的に接続されている。このため、共通ピン133、半導体発光装置10、および個別ピン131によって半導体発光素子30に電流を供給する導電経路が形成される。
【0030】
[半導体発光装置の構成]
図3~
図7を参照して、半導体発光装置10の構成の一例について説明する。
図3は、半導体発光装置10の半導体基板20の平面構造を示している。
図4は、半導体発光装置10の平面構造を示している。
図5は、
図4のF5-F5線で切った断面構造であって、半導体発光素子30およびその周辺の断面構造を示している。
図6は、
図4のF6-F6線で切った断面構造であって、後述するワイヤ配線層50およびその周辺の断面構造を示している。
図7は、
図4のF7-F7線で切った断面構造であって、後述する検出配線層60およびその周辺の断面構造を示している。
【0031】
図3に示すように、半導体基板20は、矩形平板状に形成されている。半導体基板20の厚さ方向から視て、半導体基板20は長手方向および短手方向を有する矩形状である。半導体基板20は、長手方向がヒートシンク112(
図2参照)の延びる方向と一致するようにヒートシンク112に取り付けられている。
【0032】
半導体基板20は、その厚さ方向において互いに反対側を向く基板表面21および基板裏面22(
図5参照)と、基板表面21と基板裏面22とを繋ぐ第1~第4基板側面23~26と、を有する。第1基板側面23および第2基板側面24は半導体基板20の長手方向の両端面を構成し、第3基板側面25および第4基板側面26は半導体基板20の短手方向の両端面を構成している。第1実施形態では、半導体基板20はn型不純物を含む。n型不純物として、例えばP(リン)、As(ヒ素)等が用いられる。n型不純物濃度は例えば1×10
19cm
-3以上3×10
19cm
-3以下である。なお、n型不純物濃度は任意に変更可能である。
【0033】
半導体基板20の基板表面21には、表面酸化膜27が形成されている。表面酸化膜27は、例えばSiO2を含む材料によって形成されている。表面酸化膜27は、基板表面21の全面にわたり形成されている。表面酸化膜27は、基板表面21の一部を露出する第1開口部27Aおよび第2開口部27Bを有する。
【0034】
第1開口部27Aは、半導体基板20の長手方向において基板表面21のうち第1基板側面23寄りの端部に形成されている。第1開口部27Aは、基板表面21の短手方向の中央に形成されている。半導体基板20の厚さ方向から視て、第1開口部27Aは矩形状に形成されている。一例では、半導体基板20の厚さ方向から視て、第1開口部27Aは長手方向および短手方向を有する矩形状に形成されている。第1開口部27Aは、その長手方向が半導体基板20の長手方向に一致し、その短手方向が半導体基板20の短手方向に一致するように形成されている。
【0035】
第2開口部27Bは、半導体基板20の長手方向において基板表面21のうち第1開口部27Aよりも第2基板側面24寄りの位置に形成されている。第2開口部27Bは、半導体基板20の短手方向において基板表面21のうち第1開口部27Aよりも第4基板側面26寄りの位置に形成されている。一例では、半導体基板20の厚さ方向から視て、第2開口部27Bは矩形状に形成されている。一例では、半導体基板20の厚さ方向から視て、第2開口部27Bは正方形状に形成されている。なお、第1開口部27Aおよび第2開口部27Bの各々の形状は任意に変更可能である。また、第1開口部27Aおよび第2開口部27Bの各々の位置は任意に変更可能である。
【0036】
半導体基板20の基板表面21には、表面配線層40が形成されている。つまり、半導体発光装置10は、基板表面21に形成された表面配線層40を備えるといえる。表面配線層40は、第1開口部27A内に配置されている。このため、表面配線層40は、半導体基板20の長手方向において基板表面21のうち第1基板側面23寄りの端部に配置されているといえる。表面配線層40は、基板表面21の短手方向の中央に配置されているといえる。
【0037】
図5に示すように、表面配線層40は、基板表面21に接している。このため、表面配線層40は、半導体基板20と電気的に接続されている。一例では、表面配線層40と半導体基板20とは、オーミック接触を形成している。
【0038】
図3に示すように、半導体基板20の厚さ方向から視て、表面配線層40は矩形状に形成されている。一例では、表面配線層40は、長手方向および短手方向を有する矩形状である。表面配線層40は、その長手方向が半導体基板20の長手方向と一致し、その短手方向が半導体基板20の短手方向と一致するように形成されている。一例では、半導体基板20の厚さ方向から視て、表面配線層40は、第1開口部27Aよりも一回り小さい。表面配線層40は、Alを含む材料によって形成されている。表面配線層40の詳細な構成については後述する。
【0039】
なお、表面配線層40の位置は任意に変更可能である。このため、表面配線層40の配置位置に応じて第1開口部27Aが形成される。また、半導体基板20の厚さ方向から視た表面配線層40の形状は任意に変更可能である。
【0040】
また、半導体基板20の基板表面21には、ワイヤ配線層50が形成されている。つまり、半導体発光装置10は、ワイヤ配線層50を備えるといえる。ワイヤ配線層50は、表面酸化膜27の第1開口部27Aおよび第2開口部27Bとは異なる位置に形成されている。
【0041】
図6に示すように、ワイヤ配線層50は、表面酸化膜27上に形成されている。このため、ワイヤ配線層50は、基板表面21の上に形成されているともいえる。ワイヤ配線層50と半導体基板20との間に表面酸化膜27が介在するため、ワイヤ配線層50は、半導体基板20と電気的に絶縁されている。ワイヤ配線層50は、例えばAlを含む材料によって形成されている。一例では、ワイヤ配線層50は、Al層である。
【0042】
図3に示すように、ワイヤ配線層50は、半導体基板20の厚さ方向から視て、L字状に形成されている。ワイヤ配線層50は、第1ワイヤボンディング領域51および第2ワイヤボンディング領域52に区分することができる。
【0043】
第1ワイヤボンディング領域51は、半導体基板20の長手方向の中央よりも第2基板側面24寄りに配置されている。第1ワイヤボンディング領域51は、半導体基板20の長手方向の中央と第2基板側面24との間の領域の大部分にわたり形成されている。第1ワイヤボンディング領域51は、表面配線層40よりも第2基板側面24寄りに配置されている。半導体基板20の厚さ方向から視て、第1ワイヤボンディング領域51は、略矩形状に形成されている。一例では、半導体基板20の厚さ方向から視て、第1ワイヤボンディング領域51は、半導体基板20の短手方向が長手方向となり、半導体基板20の長手方向が短手方向となる矩形状に形成されている。
【0044】
第2ワイヤボンディング領域52は、第1ワイヤボンディング領域51のうち第1基板側面23かつ第3基板側面25寄りの端部から第1基板側面23に向けて延びている。このため、第2ワイヤボンディング領域52は、表面配線層40よりも第3基板側面25寄りの位置に形成されている。半導体基板20の短手方向から視て、第2ワイヤボンディング領域52の先端部は、表面配線層40と重なる位置に形成されている。
【0045】
半導体基板20の厚さ方向から視て、第2ワイヤボンディング領域52は、その長手方向が半導体基板20の長手方向と一致し、その短手方向が半導体基板20の短手方向と一致する矩形状に形成されている。一例では、第2ワイヤボンディング領域52の幅寸法(第2ワイヤボンディング領域52の短手方向の寸法)は、表面配線層40の幅寸法(表面配線層40の短手方向の寸法)よりも大きい。なお、半導体基板20の厚さ方向から視たワイヤ配線層50の形状は任意に変更可能である。
【0046】
また、半導体基板20の基板表面21には、検出配線層60が形成されている。つまり、半導体発光装置10は、基板表面21に形成された検出配線層60を備えるといえる。検出配線層60は、半導体発光装置10の電気的特性を検出するための配線層である。検出配線層60は、第2開口部27B内に配置されている。このため、検出配線層60は、半導体基板20の長手方向において基板表面21のうち表面配線層40よりも第2基板側面24寄りの位置に形成されているといえる。一例では、検出配線層60は、半導体基板20の短手方向において基板表面21のうち表面配線層40よりも第4基板側面26寄りの位置に形成されているといえる。一例では、半導体基板20の短手方向から視て、検出配線層60は、第2ワイヤボンディング領域52と重なる位置に形成されている。
【0047】
半導体基板20の厚さ方向から視て、検出配線層60は矩形状に形成されている。一例では、半導体基板20の厚さ方向から視て、検出配線層60は正方形である。半導体基板20の厚さ方向から視て、検出配線層60は、表面酸化膜27の第2開口部27Bよりも一回り小さい。なお、検出配線層60の位置は任意に変更可能である。このため、検出配線層60の位置に応じて第2開口部27Bが形成される。
【0048】
図7に示すように、検出配線層60は、基板表面21に接している。このため、表面配線層40は、半導体基板20と電気的に接続されている。一例では、表面配線層40と半導体基板20とは、オーミック接触を形成している。検出配線層60は、例えばAlを含む材料によって形成されている。一例では、検出配線層60は、ワイヤ配線層50と同じ組成によって形成されている。一例では、検出配線層60は、Al層である。
【0049】
図5に示すように、半導体基板20の基板裏面22には、裏面配線層70が形成されている。つまり、半導体発光装置10は、基板裏面22に形成された裏面配線層70を備えるといえる。裏面配線層70は、例えば基板裏面22の全体にわたり形成されている。なお、裏面配線層70は、基板裏面22に対して部分的に形成されていてもよい。
【0050】
裏面配線層70は、基板裏面22に接している。このため、裏面配線層70は、半導体基板20と電気的に接続されている。一例では、裏面配線層70と半導体基板20とはオーミック接触を形成している。裏面配線層70は、例えば表面配線層40とは異なる材料によって形成されている。一例では、裏面配線層70は、Au(金)を含む材料によって形成されている。裏面配線層70は、半導体基板20を介して表面配線層40と電気的に接続されているといえる。
【0051】
表面配線層40には、半導体発光素子30が接合されている。つまり、半導体発光装置10は、表面配線層40に接合された半導体発光素子30を備えるといえる。半導体発光素子30は、表面配線層40と電気的に接続されている。
【0052】
図4に示すように、半導体発光素子30は、第2ワイヤWBによってワイヤ配線層50と電気的に接続されている。第2ワイヤWBは、ワイヤ配線層50の第2ワイヤボンディング領域52に接合されている。より詳細には、第2ワイヤWBは、第2ワイヤボンディング領域52のうち半導体発光素子30の近くの領域に接合されている。ここで、第2ワイヤWBは「ワイヤ」に対応している。
【0053】
なお、第1ワイヤWAは、ワイヤ配線層50の第1ワイヤボンディング領域51に接合されている。より詳細には、第1ワイヤWAは、第1ワイヤボンディング領域51のうち第4基板側面26寄りの領域に接合されている。
【0054】
[半導体発光素子の構成]
図8および
図9を参照して、半導体発光素子30の構成の一例について説明する。
図8は、半導体発光素子30の斜視構造を示している。
図9は、
図8のF9-F9線で切った半導体発光素子30の断面構造を示している。
【0055】
図8に示すように、半導体発光素子30は、その厚さ方向において互いに反対側を向く素子表面31および素子裏面32を有する。半導体発光素子30が表面配線層40に接合された状態(
図4参照)において、素子表面31は半導体基板20の基板表面21(
図5参照)と同じ側を向き、素子裏面32は基板裏面22(
図5参照)と同じ側を向いている。また、半導体発光素子30は、素子基板33、発光部34、絶縁膜35、素子表面電極36、および素子裏面電極37を有する。
【0056】
素子基板33は、例えば長方形板状に形成されている。素子基板33は、例えばGaAs(ガリウムヒ素)を含むn型の半導体基板(n-GaAs基板)によって構成されている。素子基板33は、n型不純物として例えばSi、Te(テルル)、およびSe(セレン)の少なくとも1種を含む。素子基板33は、その厚さ方向において互いに反対側を向く基板表面33Aおよび基板裏面33Bを有する。基板表面33Aは半導体基板20の基板表面21(
図5参照)と同じ側を向き、基板裏面33Bは半導体基板20の基板裏面22(
図5参照)と同じ側を向いている。
【0057】
発光部34は、素子基板33の基板表面33Aに設けられている。発光部34は、基板表面33Aから基板裏面33Bとは反対側に向けて突出している。発光部34は、メサ構造を有し、素子基板33の長手方向から視て、基板表面33Aから突出した台形状(リッジ状)に形成されている。
【0058】
図8に示すように、発光部34は、電極接続面34A、基板接続面34B、発光部端面34C,34D、および発光部側面34E,34Fを有する。
電極接続面34Aは基板表面33Aと同じ側を向いている。電極接続面34Aは、台形状の発光部34の上底を構成している。電極接続面34Aは、素子基板33の厚さ方向において、基板表面33Aに対して離隔して配置されている。基板接続面34Bは、素子基板33の側を向いており、基板表面33Aに接続されている。基板接続面34Bは、台形状の発光部34の下底を構成している。このため、電極接続面34Aの幅寸法が基板接続面34Bの幅寸法よりも小さくなる。
【0059】
発光部端面34C,34Dおよび発光部側面34E,34Fは、電極接続面34Aと基板接続面34Bとを繋ぐ面を構成している。発光部側面34E,34Fは、台形状の発光部34の傾斜側面を構成している。発光部端面34C,34Dは、発光部34の長手方向の両端面を構成している。発光部34の長手方向から視て、発光部端面34C,34Dは台形状(リッジ状)に形成されている。発光部端面34C,34Dは、共振器端面を構成している。一例では、発光部34は、発光部端面34Cからレーザ光LXを出射するように構成されている。なお、レーザ光LXは、
図2に示す透光板125を通過する。
【0060】
図9に示すように、発光部34は、素子基板33の基板表面33Aの上に積層された発光ユニット38を含む。発光ユニット38は、正孔および電子の結合によって光を生成する。一例では、発光部34は、3つの発光ユニット38を有する。なお、発光部34は、少なくとも1つの発光ユニット38を有する構成であってもよい。つまり、発光ユニット38の数は、1つ、2つ、または4つ以上であってもよい。
【0061】
発光部34は、互いに隣り合う発光ユニット38の間に配置されたトンネル層39を含む。トンネル層39は、トンネル効果に起因するトンネル電流を生成し、発光ユニット38に供給する。一例では、発光部34は、2つのトンネル層39を含む。トンネル層39は、互いに隣り合う2つの発光ユニット38の間に配置されている。なお、トンネル層39の数は、発光ユニット38の数に応じて変更されてよい。
【0062】
絶縁膜35は、素子基板33の基板表面33Aの一部を覆うように形成されている。また、絶縁膜35は、発光部34を覆うように形成されている。一例では、絶縁膜35は、発光部34の電極接続面34Aと発光部側面34E,34Fとを覆うように形成されている。絶縁膜35は、素子基板33の基板表面33Aを覆う基板被覆部35A,35Bと、発光部34を覆う発光部被覆部35Cと、を有する。絶縁膜35は、例えばSiN(窒化シリコン)、SiO2等によって形成されている。
【0063】
素子表面電極36は、電極接続面34Aを覆う絶縁膜35の上面35Dに設けられている。電極接続面34Aを覆う絶縁膜35は、電極接続面34Aの一部を露出する第1開口部35Eを有する。素子表面電極36は、第1電極層と第2電極層とを含む。第1電極層と第2電極層とは、電極接続面34Aの側からこの順番で積層されている。第1電極層は、例えばTi(チタン)/Auによって構成されている。第2電極層は、例えばAuを含むめっき層である。絶縁膜35の上面35Dおよび素子表面電極36の上面は、半導体発光素子30の素子表面31を構成している。
【0064】
素子裏面電極37は、素子基板33の基板裏面33Bに設けられている。一例では、素子裏面電極37は、基板裏面33Bの全体を覆っている。素子裏面電極37は、素子基板33に電気的に接続されている。素子裏面電極37は、半導体発光素子30の素子裏面32を構成している。
【0065】
素子裏面電極37は、複数の電極層によって構成されていてもよい。一例では、素子裏面電極37は、Ni(ニッケル)層、AuGe(金-ゲルマニウム合金)層、Ti層、およびAu層のうち少なくとも1つを含んでいてもよい。一例では、素子裏面電極37は、基板裏面33Bから順に積層されたNi層、AuGe層、Ti層、およびAu層を含んでいてもよい。
【0066】
なお、半導体発光素子30の構成は、
図8および
図9に示す半導体発光素子30の構成に限られない。半導体発光素子30の構成は任意に変更可能である。一例では、半導体発光素子30の発光部34は、素子基板33の長手方向から視て、台形状に限られず、矩形状であってもよい。また、半導体発光素子30は、素子基板33の長手方向から視て、矩形状であってもよい。
【0067】
[表面配線層の詳細な断面構造]
図5を参照して、表面配線層40の詳細な構成について説明する。
図5に示すように、表面配線層40は、第1配線層41および第2配線層42を含む。第1配線層41および第2配線層42は、基板表面21側からこの順に積層されている。
【0068】
第1配線層41は、半導体基板20の基板表面21と接している。第1配線層41は、Tiを含む材料によって形成されている。一例では、第1配線層41は、Ti層である。
第1配線層41は、半導体基板20とオーミック接触を形成している。より詳細には、第1配線層41は、半導体基板20の電子親和力よりも仕事関数が小さい。より詳細には、半導体基板20はn型不純物を含むSi基板であり、電子親和力が4.05eVとなる。一方、Ti層である第1配線層41の仕事関数は3.9eVとなる。金属層である第1配線層41においては、仕事関数は電子親和力と一致する。
【0069】
第2配線層42は、第1配線層41上において第1配線層41と接している。第2配線層42は、第1配線層41とは異なる組成によって形成されている。第2配線層42は、例えばAlを含む材料によって形成されている。一例では、第2配線層42は、Al層である。Al層である第2配線層42の仕事関数は4.2eVであり、半導体基板20の電子親和力(4.05eV)よりも大きい。
【0070】
第1配線層41がTi層であり、第2配線層42がAl層であるため、第1配線層41の熱伝導率は、第2配線層42の熱伝導率よりも小さい。また第1配線層41の電気抵抗は、第2配線層42の電気抵抗よりも大きい。このため、第1配線層41の厚さT1は、第2配線層42の厚さT2よりも薄いことが好ましい。第1配線層41の厚さT1は、第2配線層42の厚さT2の1/2よりも薄いことが好ましい。第1配線層41の厚さT1は、第2配線層42の厚さT2の1/10よりも薄いことが好ましい。第1配線層41の厚さT1は、第2配線層42の厚さT2の1/50よりも薄いことが好ましい。第1配線層41の厚さT1は、第2配線層42の厚さT2の1/100以下であることが好ましい。第1配線層41の厚さT1は、第2配線層42の厚さT2の1/200以下であることが好ましい。第1配線層41の厚さT1は、第2配線層42の厚さT2の1/300以上であることが好ましい。一例では、第1配線層41の厚さT1は、10nm以上300nm以下である。一例では、第2配線層42の厚さT2は、15000nm以上30000nm以下である。また一例では、第1配線層41の厚さT1は、表面酸化膜27の厚さT5と等しい。なお、第1配線層41の厚さT1は任意に変更可能である。一例では、第1配線層41の厚さT1は、表面酸化膜27の厚さT5よりも薄くてもよい。
【0071】
一例では、第1配線層41の幅寸法W1は、半導体発光素子30の幅寸法W5と等しい。ここで、第1配線層41の幅寸法W1は、表面配線層40の厚さ方向と直交する方向における第1配線層41の大きさによって定義できる。一例では、第1配線層41の幅寸法W1は、表面配線層40の短手方向における第1配線層41の大きさによって定義できる。また、半導体発光素子30の幅寸法W5は、半導体発光素子30の短手方向における大きさ、一例では素子基板33の短手方向における半導体発光素子30の大きさによって定義できる。また、第1配線層41の幅寸法W1と半導体発光素子30の幅寸法W5との差が例えば半導体発光素子30の幅寸法W5の10%以内であれば、第1配線層41の幅寸法W1が半導体発光素子30の幅寸法W5と等しいといえる。
【0072】
第2配線層42の厚さT2は、第1配線層41の厚さT1よりも厚い。第2配線層42の厚さT2は、表面酸化膜27の厚さT5よりも厚い。第2配線層42の幅寸法W2は、第1配線層41の幅寸法W1と等しい。第2配線層42の幅寸法W2は、半導体発光素子30の幅寸法W5と等しい。ここで、第2配線層42の幅寸法W2は、表面配線層40の厚さ方向と直交する方向における第2配線層42の大きさによって定義できる。一例では、第2配線層42の幅寸法W2は、表面配線層40の短手方向における第2配線層42の大きさによって定義できる。また、第2配線層42の幅寸法W2と第1配線層41の幅寸法W1との差が例えば第2配線層42の幅寸法W2の10%以内であれば、第2配線層42の幅寸法W2が第1配線層41の幅寸法W1と等しいといえる。また、第2配線層42の幅寸法W2と半導体発光素子30の幅寸法W5との差が例えば半導体発光素子30の幅寸法W5の10%以内であれば、第2配線層42の幅寸法W2が半導体発光素子30の幅寸法W5と等しいといえる。
【0073】
図示していないが、第2配線層42の長さ寸法は、第1配線層41の長さ寸法と等しい。ここで、第2配線層42の長さ寸法は、表面配線層40の厚さ方向に直交する方向における第2配線層42の大きさによって定義できる。一例では、第2配線層42の長さ寸法は、表面配線層40の長手方向における第2配線層42の大きさによって定義できる。また、第1配線層41の長さ寸法は、表面配線層40の厚さ方向に直交する方向における第1配線層41の大きさによって定義できる。一例では、第1配線層41の長さ寸法は、表面配線層40の長手方向における第1配線層41の大きさによって定義できる。また、第2配線層42の長さ寸法と第1配線層41の長さ寸法との差が例えば第2配線層42の長さ寸法の10%以内であれば、第2配線層42の長さ寸法が第1配線層41の長さ寸法と等しいといえる。
【0074】
[ワイヤ配線層の詳細な断面構造]
図6に示すように、ワイヤ配線層50の厚さT6は、表面酸化膜27の厚さT5よりも厚い。ワイヤ配線層50は、第2配線層42と同じ組成によって形成されている。ワイヤ配線層50の厚さT6は、第2配線層42(
図5参照)の厚さT2と等しい。ここで、ワイヤ配線層50の厚さT6と第2配線層42の厚さT2との差が例えば第2配線層42の厚さT2の10%以内であれば、ワイヤ配線層50の厚さT6が第2配線層42の厚さT2と等しいといえる。
【0075】
ワイヤ配線層50上には、ワイヤ配線層50と接するように酸化膜53が形成されている。より詳細には、ワイヤ配線層50は、半導体基板20の基板表面21と同じ側を向く層表面54を含む。層表面54には、酸化膜53が形成されている。酸化膜53は、例えばAl2O3(アルミナ)を含む材料によって形成されている。つまり、酸化膜53は、ワイヤ配線層50が自然酸化することによって形成された膜(自然酸化膜)である。このため、酸化膜53の厚さT7は、ワイヤ配線層50の厚さT6よりも薄い。酸化膜53の厚さT7は、表面酸化膜27の厚さT5よりも薄い。一例では、酸化膜53の厚さT7は、2nm以上6nm以下である。なお、酸化膜53は、アルミナに限られず、AlOを含む材料によって形成されていてよい。
【0076】
図3に示すとおり、ワイヤ配線層50には、第1ワイヤWAおよび第2ワイヤWBが接合されている。第1ワイヤWAおよび第2ワイヤWBは、ワイヤボンディング装置によってワイヤ配線層50に接合されたボンディングワイヤである。
図6に示すように、第2ワイヤWBは、ワイヤ配線層50に接合する際の圧力によって酸化膜53を貫通してワイヤ配線層50の層表面54に接合されている。なお、
図6では図示していないが、第1ワイヤWAも同様に酸化膜53を貫通してワイヤ配線層50の層表面54に接合されている。
【0077】
[検出配線層の詳細な断面構造]
図7に示すように、検出配線層60の厚さT8は、表面酸化膜27の厚さT5よりも厚い。検出配線層60は、第1検出層61および第2検出層62を含む。第1検出層61および第2検出層62は、基板表面21側からこの順に積層されている。
【0078】
第1検出層61は、半導体基板20の基板表面21と接している。より詳細には、第1検出層61は、半導体基板20とオーミック接触を形成している。第1検出層61は、Tiを含む材料によって形成されている。一例では、第1検出層61は、Ti層である。このように、第1検出層61は、第1配線層41と同じ組成によって構成されている。
【0079】
第1検出層61の厚さT9は、第1配線層41の厚さT1(
図5参照)と等しい。ここで、第1検出層61の厚さT9と第1配線層41の厚さT1との差が例えば第1配線層41の厚さT1の10%以内であれば、第1検出層61の厚さT9が第1配線層41の厚さT1と等しいといえる。
【0080】
第1検出層61の厚さT9は、表面酸化膜27の厚さT5と等しい。なお、第1検出層61の厚さT9は任意に変更可能である。一例では、第1検出層61の厚さT9は、表面酸化膜27の厚さT5よりも薄くてもよい。
【0081】
第2検出層62は、第1検出層61上において第1検出層61と接している。第2検出層62は、Alを含む材料によって形成されている。つまり、第2検出層62は、第1検出層61とは異なる組成によって形成されている。一例では、第2検出層62は、Al層である。このように、第2検出層62は、第2配線層42と同じ組成によって形成されている。
【0082】
第2検出層62の厚さT10は、第1検出層61の厚さT9よりも厚い。第2検出層62の厚さT10は、表面酸化膜27の厚さT5よりも厚い。第2検出層62の厚さT10は、第2配線層42の厚さT2と等しい。ここで、第2検出層62の厚さT10と第2配線層42の厚さT2との差が例えば第2配線層42の厚さT2の10%以内であれば、第2検出層62の厚さT10が第2配線層42の厚さT2と等しいといえる。
【0083】
第2検出層62の幅寸法W4は、第1検出層61の幅寸法W3と等しい。ここで、第2検出層62の幅寸法W4は、表面配線層40の厚さ方向と直交する方向における第2検出層62の大きさによって定義できる。一例では、第2検出層62の幅寸法W4は、表面配線層40の短手方向における第2検出層62の大きさによって定義できる。第1検出層61の幅寸法W3は、表面配線層40の厚さ方向と直交する方向における第1検出層61の大きさによって定義できる。一例では、第1検出層61の幅寸法W3は、表面配線層40の短手方向における第1検出層61の大きさによって定義できる。また、第2検出層62の幅寸法W4と第1検出層61の幅寸法W3との差が例えば第2検出層62の幅寸法W4の10%以内であれば、第2検出層62の幅寸法W4が第1検出層61の幅寸法W1と等しいといえる。
【0084】
検出配線層60上には、検出配線層60と接するように酸化膜63が形成されている。より詳細には、検出配線層60は、半導体基板20の基板表面21と同じ側を向く層表面64を含む。層表面64には、酸化膜63が形成されている。酸化膜63は、例えばAl2O3(アルミナ)を含む材料によって形成されている。つまり、酸化膜63は、検出配線層60が自然酸化することによって形成された膜(自然酸化膜)である。このため、酸化膜63の厚さT11は、検出配線層60の厚さT8よりも薄い。酸化膜63の厚さT11は、表面酸化膜27の厚さT5よりも薄い。一例では、酸化膜63の厚さT11は、2nm以上6nm以下である。なお、酸化膜63は、アルミナに限られず、AlOを含む材料によって形成されていてよい。
【0085】
図示していないが、第2検出層62の長さ寸法は、第1検出層61の長さ寸法と等しい。ここで、第2検出層62の長さ寸法は、表面配線層40の厚さ方向に直交する方向における第2検出層62の大きさによって定義できる。一例では、第2検出層62の長さ寸法は、表面配線層40の長手方向(半導体基板20の長手方向)における第2検出層62の大きさによって定義できる。また、第1検出層61の長さ寸法は、表面配線層40の厚さ方向に直交する方向における第1検出層61の大きさによって定義できる。一例では、第1検出層61の長さ寸法は、表面配線層40の長手方向(半導体基板20の長手方向)における第1検出層61の大きさによって定義できる。また、第2検出層62の長さ寸法と第1検出層61の長さ寸法との差が例えば第2検出層62の長さ寸法の10%以内であれば、第2検出層62の長さ寸法が第1検出層61の長さ寸法と等しいといえる。
【0086】
[表面配線層と半導体発光素子との接合構造]
表面配線層40と半導体発光素子30との接合構造について詳細に説明する。
図5に示すように、表面配線層40と半導体発光素子30とは接合層80によって接合されている。一例では、表面配線層40と半導体発光素子30とは共晶結合によって接合されている。つまり、半導体発光装置10は、表面配線層40と半導体発光素子30とを接合する接合層80を備えるといえる。接合層80は、表面配線層40上に形成されている。
【0087】
第1接合層81は、表面配線層40の第2配線層42上において第2配線層42に接している。つまり、第1接合層81と第2配線層42との間には酸化膜(自然酸化膜)は介在していない。第1接合層81は、第2接合層82が表面配線層40に拡散することを防止する拡散防止層である。第1接合層81は、例えばTiを含む材料によって形成されている。一例では、第1接合層81は、Ti層である。このように、第2配線層42は、接合層80に接している。
【0088】
第1接合層81の厚さT3は、第2配線層42の厚さT2よりも薄い。第1接合層81の厚さT3は、第1配線層41の厚さT1と等しい。ここで、第1接合層81の厚さT3と第1配線層41の厚さT1との差が例えば第1配線層41の厚さT1の10%以内であれば、第1接合層81の厚さT3が第1配線層41の厚さT1と等しいといえる。
【0089】
第1接合層81の幅寸法W5は、第2配線層42の幅寸法W2と等しい。第1接合層81の幅寸法W5は、第1配線層41の幅寸法W1と等しい。ここで、第1接合層81の幅寸法W5と第1配線層41の幅寸法W1との差が例えば第1接合層81の幅寸法W5の10%以内であれば、第1接合層81の幅寸法W5が第1配線層41の幅寸法W1と等しいといえる。
【0090】
第2接合層82は、第1接合層81上において第1接合層81と接している。第2接合層82は、AuSn(金-錫)を含む材料によって形成されている。一例では、第2接合層82は、AuSn層である。
【0091】
第2接合層82の厚さT4は、第1接合層81の厚さT3よりも厚い。一例では、第2接合層82の厚さT4は、第1配線層41の厚さT1よりも厚い。一例では、第2接合層82の厚さT4は、第2配線層42の厚さT2よりも薄い。
【0092】
第2接合層82の幅寸法W6は、第1配線層41の幅寸法W1と等しい。一例では、第2接合層82の幅寸法W6は、第1接合層81の幅寸法W5と等しい。ここで、第2接合層82の幅寸法W6は、表面配線層40の厚さ方向と直交する方向における第2接合層82の大きさによって定義できる。一例では、第2接合層82の幅寸法W6は、表面配線層40の短手方向における第2接合層82の大きさによって定義できる。また、第2接合層82の幅寸法W6と第1接合層81の幅寸法W5との差が例えば第1接合層81の幅寸法W5の10%以下であれば、第2接合層82の幅寸法W6が第1接合層81の幅寸法W5と等しいといえる。
【0093】
半導体発光素子30は、第2接合層82上に配置されている。一例では、半導体発光素子30の素子基板33が第2接合層82上に配置されている。素子基板33の基板裏面33Bに形成された素子裏面電極37は、第2接合層82上に第2接合層82と接するように配置されている。これにより、素子裏面電極37は、接合層80を介して表面配線層40と電気的に接続されている。
【0094】
一例では、半導体発光素子30の幅寸法W7は、第1接合層81の幅寸法W5と等しい。ここで、半導体発光素子30の幅寸法W7と第1接合層81の幅寸法W5との差が例えば半導体発光素子30の幅寸法W7の10%以下であれば、半導体発光素子30の幅寸法W7が第1接合層81の幅寸法W5と等しいといえる。
【0095】
一例では、半導体発光素子30の幅寸法W7は、第2接合層82の幅寸法W6と等しい。ここで、半導体発光素子30の幅寸法W7と第2接合層82の幅寸法W6との差が例えば半導体発光素子30の幅寸法W7の10%以下であれば、半導体発光素子30の幅寸法W7が第2接合層82の幅寸法W6と等しいといえる。
【0096】
[半導体発光装置の製造方法]
図10~
図20を参照して、半導体発光装置10の製造方法の一例について説明する。なお、説明の便宜上、以下では、半導体発光装置10と同一の構成要素には同一の符号を付して説明する。
【0097】
半導体発光装置10の製造方法は、半導体基板20を用意する工程と、半導体基板20の基板表面21に表面配線層40を蒸着する工程と、表面配線層40上に接合層80を蒸着する工程と、接合層80によって表面配線層40に半導体発光素子30を接合する工程と、を主に備える。また、半導体発光装置10の製造方法は、半導体基板20の基板裏面22に裏面配線層70を蒸着する工程と、基板表面21にワイヤ配線層50を蒸着する工程と、基板表面21に検出配線層60を蒸着する工程と、を備える。
【0098】
図10は、半導体基板20を用意する工程を示している。
図10は、半導体基板20の一部の断面構造を示している。半導体基板20は、基板表面21と、基板表面21とは反対側の基板裏面22を有する。半導体基板20は、例えばSi基板が用いられる。半導体基板20は、n型不純物を含む。n型不純物としては、例えばP、As等が用いられる。n型不純物濃度は、例えば1×10
19cm
-3以上3×10
19cm
-3以下である。
【0099】
図10に示すように、半導体基板20を用意する工程において、半導体基板20の基板表面21上には、表面酸化膜27が形成されている。表面酸化膜27は、基板表面21の全面にわたり形成される。表面酸化膜27は、SiO
2によって形成されている。表面酸化膜27は、例えば半導体基板20の熱処理によって形成される。続いて、例えばエッチングによって表面酸化膜27に第1開口部27Aおよび第2開口部27B(
図15参照)が形成される。第1開口部27Aおよび第2開口部27Bによって基板表面21が露出している。なお、
図10では、第1開口部27Aが示されている。
【0100】
図11および
図12は、
図10の次の工程における基板表面21にワイヤ配線層50を蒸着する工程を示している。
図11および
図12は、
図10とは異なり、半導体基板20のワイヤ配線層50が形成される領域のうちの一部の断面構造を示している。
【0101】
図11に示すように、半導体発光装置10の製造方法は、基板表面21上にワイヤ用金属層800を蒸着する工程を含む。つまり、基板表面21にワイヤ配線層50を形成する工程は、基板表面21上にワイヤ用金属層800を蒸着する工程を含む。
【0102】
一例では、基板表面21上にワイヤ用金属層800を蒸着する工程では、真空チャンバー(図示略)内に半導体基板20を配置した状態で基板表面21上にワイヤ用金属層800を蒸着する。この工程では、物理蒸着法(Physical Vapor Deposition:PVD)によって基板表面21上にワイヤ用金属層800を蒸着する。一例では、真空蒸着によって基板表面21上にワイヤ用金属層800を蒸着する。ワイヤ用金属層800としては、例えばAlを含む材料によって形成されている。一例では、ワイヤ用金属層800は、Al層である。なお、真空蒸着に代えて、スパッタリング法によって基板表面21上にワイヤ用金属層800を蒸着してもよい。
【0103】
ワイヤ用金属層800は、半導体基板20の厚さ方向から視て、基板表面21の全体にわたり形成されている。より詳細には、ワイヤ用金属層800は、表面酸化膜27上において表面酸化膜27と接するように形成されている。一方、ワイヤ用金属層800は、表面酸化膜27の第1開口部27Aおよび第2開口部27B(
図15参照)に入り込んでいる。
【0104】
続いて、
図12に示すように、半導体発光装置10の製造方法は、ワイヤ用金属層800をパターニングする工程を含む。つまり、基板表面21にワイヤ配線層50を形成する工程は、ワイヤ用金属層800をパターニングする工程を含む。
図12では、ワイヤ用金属層800をパターニングすることによってワイヤ配線層50が形成される工程が示されている。
【0105】
一例では、ワイヤ配線層50に対応する領域の各々を覆うマスク(図示略)がワイヤ用金属層800上に形成される。続いて、例えばエッチングによってマスクから露出したワイヤ用金属層800が除去される。これにより、ワイヤ配線層50が形成される。また、表面酸化膜27の第1開口部27Aおよび第2開口部27Bに入り込んだワイヤ用金属層800もマスクから露出されるため、除去される。
【0106】
図13は、
図12の次の工程における基板裏面22に裏面配線層70を蒸着する工程を示している。なお、基板裏面22に裏面配線層70を蒸着する工程は、基板表面21にワイヤ配線層50を蒸着する工程よりも前に実施されてもよい。
【0107】
基板裏面22に裏面配線層70を蒸着する工程では、例えば真空チャンバー内に半導体基板20を配置した状態で基板裏面22に裏面配線層70を蒸着する。この工程では、PVDによって基板裏面22に裏面配線層70を蒸着する。一例では、真空蒸着によって基板裏面22に裏面配線層70を蒸着する。裏面配線層70としては、例えばAuを含む材料によって形成されている。なお、真空蒸着に代えて、スパッタリング法によって基板裏面22に裏面配線層70を蒸着してもよい。
【0108】
図14は、
図13の次の工程における熱処理によって裏面配線層70と半導体基板20とがオーミック接触を形成する工程を示している。
一例では、半導体基板20を熱処理炉(図示略)によって予め設定された熱処理温度で加熱する。これにより、裏面配線層70と半導体基板20とが反応してシリサイド化する。その結果、裏面配線層70と半導体基板20とがオーミック接触を形成する。
【0109】
図14に示すように、半導体基板20が加熱されることによって、ワイヤ配線層50には表面酸化膜810が形成される。一方、裏面配線層70はAuを含む材料によって形成されるため、酸化膜が形成されない。その後、図示していないが、半導体発光装置10の製造方法は、半導体基板20を洗浄する工程を備える。この工程では、
図14に示すワイヤ配線層50に形成された表面酸化膜810が除去される。
【0110】
図15および
図16は、
図14の次の工程における基板表面21に表面配線層40を形成する工程と、基板表面21に検出配線層60を形成する工程とを示している。
図17および
図18は、
図16の次の工程における表面配線層40に接合層80を形成する工程を示している。
図15~
図18に示す工程は、真空チャンバー内に半導体基板20を配置した状態で実施する。つまり、表面配線層40、検出配線層60、および接合層80を形成する過程において、半導体基板20が大気に触れない環境が維持される。
【0111】
図15および
図16に示すとおり、基板表面21に表面配線層40を形成する工程と、基板表面21に検出配線層60を形成する工程とは同時に実施される。
図15に示すように、半導体発光装置10の製造方法は、基板表面21に第1配線層41を形成する工程を含む。つまり、基板表面21に表面配線層40を形成する工程は、基板表面21に第1配線層41を形成する工程を含むといえる。
【0112】
一例では、表面酸化膜27を覆うマスク820が形成される。マスク820は、表面酸化膜27の第1開口部27Aと同じ位置に設けられた第1開口部821を有する。マスク820は、第1開口部27Aを部分的に覆っている。換言すると、マスク820は、第1開口部27Aから露出した基板表面21を第1開口部821によって部分的に露出している。続いて、第1開口部821から露出した基板表面21に例えばPVDによってTiを含む材料を蒸着する。一例では、真空蒸着によって基板表面21にTiを含む材料を蒸着する。これにより、基板表面21に接する第1配線層41が形成される。このように、基板表面21に表面配線層40を蒸着する工程は、Tiを含む材料を基板表面21に蒸着することによって第1配線層41を形成する工程を含む。
【0113】
また、半導体発光装置10の製造方法は、基板表面21に第1検出層61を形成する工程を含む。つまり、基板表面21に検出配線層60を蒸着する工程は、基板表面21に第1検出層61を形成する工程を含むといえる。
【0114】
マスク820は、表面酸化膜27の第2開口部27Bと同じ位置に設けられた第2開口部822を有する。マスク820は、第2開口部27Bを部分的に覆っている。換言すると、マスク820は、第2開口部27Bから露出した基板表面21を第2開口部822によって部分的に露出している。そして、第2開口部822から露出した基板表面21に例えばPVDによってTiを含む材料を蒸着する。一例では、真空蒸着によって基板表面21にTiを含む材料を蒸着する。これにより、基板表面21に接する第1検出層61が形成される。このように、基板表面21に検出配線層60を蒸着する工程は、Tiを含む材料を基板表面21に蒸着することによって第1検出層61を形成する工程を含む。この工程は、Tiを含む材料を基板表面21に蒸着することによって第1配線層41を形成する工程と同時に実施される。
【0115】
図16に示すように、半導体発光装置10の製造方法は、第1配線層41上において第1配線層41と接する第2配線層42を形成する工程を含む。つまり、基板表面21に表面配線層40を蒸着する工程は、第1配線層41上において第1配線層41と接する第2配線層42を形成する工程を含むといえる。
【0116】
一例では、マスク820の第1開口部821から露出した第1配線層41に例えばPVDによってAlを含む材料を蒸着する。一例では、真空蒸着によって第1配線層41にAlを含む材料を蒸着する。これにより、第1配線層41上において第1配線層41に接する第2配線層42が形成される。
【0117】
また、半導体発光装置10の製造方法は、第1検出層61上において第1検出層61と接する第2検出層62を形成する工程を含む。つまり、基板表面21に検出配線層60を蒸着する工程は、第1検出層61上において第1検出層61と接する第2検出層62を形成する工程を含むといえる。
【0118】
一例では、マスク820の第2開口部822から露出した第1検出層61に例えばPVDによってAlを含む材料を蒸着する。一例では、真空蒸着によって第1検出層61にAlを含む材料を蒸着する。これにより、第1検出層61上において第1検出層61に接する第2検出層62が形成される。この工程は、Alを含む材料を第1配線層41に蒸着することによって第2配線層42を形成する工程と同時に実施される。このように、検出配線層60を形成する工程は、表面配線層40を形成する工程と同時に実施される。以上の工程を経て、表面配線層40および検出配線層60が形成される。
【0119】
図17に示すように、表面配線層40に接合層80を形成する工程は、第2配線層42上に第2配線層42と接するように第1接合層81を蒸着する工程を含む。この工程では、マスク820の第1開口部821から露出した第2配線層42にTiを含む材料を蒸着することによって第1接合層81が形成される。つまり、第1接合層81は、Tiを含む材料によって形成されている。一例では、第1接合層81は、Ti層である。第1接合層81は、例えば第2配線層42の上面の全体にわたり形成される。
【0120】
図18に示すように、表面配線層40に接合層80を形成する工程は、第1接合層81上に第1接合層81と接するように第2接合層82を蒸着する工程を含む。この工程では、マスク820の第1開口部821から露出した第1接合層81にAuSnを含む材料を蒸着することによって第2接合層82が形成される。つまり、第2接合層82は、AuSnを含む材料によって形成されている。一例では、第2接合層82は、AuSn層である。第2接合層82は、例えば第1接合層81の上面の全体にわたり形成される。以上の工程を経て、接合層80が形成される。
【0121】
このように、マスク820の第1開口部821から露出する部分において、第1配線層41、第2配線層42、第1接合層81、および第2接合層82が順に積層される。このため、第1配線層41の幅寸法W1、第2配線層42の幅寸法W2、第1接合層81の幅寸法W5、および第2接合層82の幅寸法W6は互いに等しくなる。また、図示していないが、第1配線層41の長さ寸法、第2配線層42の長さ寸法、第1接合層81の長さ寸法、および第2接合層82の長さ寸法は互いに等しくなる。
【0122】
また、表面配線層40に接合層80を形成する工程の実施後、マスク820が除去される。そして、半導体基板20は真空チャンバーから取り出される。そして、半導体基板20は次の工程で用いられる装置に搬送される。
【0123】
図19は、
図18の次の工程における接合層80によって表面配線層40に半導体発光素子30を接合する工程を示している。
一例では、まず半導体発光素子30が接合層80上に配置される。より詳細には、半導体発光素子30の素子裏面電極37が第2接合層82と接するように半導体発光素子30が接合層80に配置される。続いて、リフロー処理によって第2接合層82が溶融および固化することによって、素子裏面電極37と第2接合層82とが接合される。これにより、接合層80によって表面配線層40に半導体発光素子30が接合される。以上の工程を経て、半導体発光装置10が製造される。
【0124】
[作用]
図5、
図20、および
図21を参照して、第1実施形態の作用について説明する。
図20は、第1比較例の半導体発光装置10Xにおける表面配線層40Xおよびその周辺の一部の断面構造を示している。
図21は、第2比較例の半導体発光装置10Yにおける表面配線層40Xおよびその周辺の一部の断面構造を示している。なお、各比較例の半導体発光装置10X,10Yでは、本実施形態の半導体発光装置10と比較して、表面配線層40Xの構成が主に異なる。このため、各比較例の半導体発光装置10X,10Yに関する説明において、本実施形態の半導体発光装置10と共通の構成要素には同一符号を付す。
【0125】
図20に示すように、第1比較例の半導体発光装置10Xにおいては、表面配線層40Xは、Al層によって構成されている。ところで、半導体基板20はn型不純物を含むので、Al層となる表面配線層40Xは半導体基板20の電子親和力よりも仕事関数が大きくなる。その結果、表面配線層40Xと半導体基板20とにショットキー接触が形成される。このため、表面配線層40Xと半導体基板20との間の電気抵抗が高くなる。
【0126】
そこで、
図21に示すように、第2比較例の半導体発光装置10Yにおいては、熱処理によって表面配線層40Xと半導体基板20とにオーミック接触を形成している。この熱処理は、表面配線層40Xの形成後、接合層80を形成する前に実施される。そして、熱処理にともない表面配線層40Xには酸化膜が形成されるが、洗浄工程によってその酸化膜は除去される。しかし、洗浄工程の後、接合層80を形成する工程を実施するため、半導体基板20を搬送する際に半導体基板20は大気に触れる。これにより、表面配線層40Xには酸化膜43Xが形成される。第2比較例の半導体発光装置10Yにおいては、接合層80は、酸化膜43X上に酸化膜43Xと接するように蒸着されている。つまり、Ti層によって形成された第1接合層81が酸化膜43Xと接している。
【0127】
本願発明者は、各比較例の半導体発光装置10X,10Yに対して電流と電圧との関係(I-V特性)について実験し、以下の3つのI-V特性に関する現象を確認した。すなわち、本願発明者は、半導体発光装置10X,10Yにおいては、電流の増加に対する順方向電圧の増加量が予め設定された順方向電圧の増加量よりも高くなることを確認した。つまり、半導体発光装置10X,10Yは、半導体発光素子30の順方向電圧、例えば閾値電流における順方向電圧(閾値電圧)や所定の光出力を出すときの順方向電圧(動作電圧)が高くなる。また本願発明者は、各比較例の半導体発光装置10X,10Yにおいては、電流を増加したときに順方向電圧が途中で急激に変化するような不安定な挙動になることを確認した。また本願発明者は、閾値電流において半導体発光装置10X,10Yの半導体発光素子30が発光を開始せず、閾値電流よりも大きい順方向電流において突如、発光することを確認した。
【0128】
このような現象は、半導体基板20から半導体発光素子30に向けて電流が流れる導電経路における抵抗成分が大きいことが原因であると考えられる。つまり、第1比較例の半導体発光装置10Xでは表面配線層40Xと半導体基板20とのショットキー接触に起因して半導体基板20から半導体発光素子30に向けて電流が流れる導電経路における抵抗成分が大きくなる。第2比較例の半導体発光装置10Yでは、酸化膜43Xが半導体基板20から半導体発光素子30に向けて電流が流れる導電経路における抵抗成分となる。これにより、半導体発光装置10X,10Yでは、半導体発光素子30の動作電圧が大きくなったり、順方向電圧の挙動や発光が不安定になったりすると考えられる。
【0129】
図5に示すように、第1実施形態の半導体発光装置10において、表面配線層40は、Tiを含み、基板表面21に接する第1配線層41と、Alを含み、第1配線層41に接する第2配線層42とを含む。半導体基板20は、n型不純物を含む半導体基板である。Tiを含む第1配線層41は、半導体基板20の電子親和力よりも仕事関数が小さくなるため、第1配線層41と半導体基板20とはオーミック接触を形成する。このように、熱処理を用いることなく、表面配線層40と半導体基板20とにオーミック接触を形成することができる。そして熱処理が用いられないため、表面配線層40と接合層80との間には、酸化膜43X(
図21参照)が存在しない。つまり、第1実施形態では、半導体基板20から半導体発光素子30に向けて電流が流れる導電経路における抵抗成分となる酸化膜43Xが存在しない。これにより、半導体基板20と半導体発光素子30との間の導電経路は、比較例の半導体発光装置10Xにおける半導体基板20と半導体発光素子30との間の導電経路よりも低抵抗な導電経路となる。したがって、本実施形態の半導体発光装置10では、半導体発光素子30の動作電圧が大きくなったり、順方向電圧の挙動や発光が不安定になったりすることを抑制できる。
【0130】
[効果]
第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1-1)半導体発光装置10は、n型不純物を含み、基板表面21と、基板表面21とは反対側の基板裏面22を有する半導体基板20と、基板表面21に形成された表面配線層40と、表面配線層40に接合される半導体発光素子30と、表面配線層40と半導体発光素子30とを接合する接合層80と、を備える。表面配線層40は、基板表面21に接し、半導体基板20の電子親和力よりも仕事関数が小さい第1配線層41と、第1配線層41上において第1配線層41に接する第2配線層42と、を含む。
【0131】
この構成によれば、n型不純物を含む半導体基板20の基板表面21に接する第1配線層41の仕事関数が半導体基板20の電子親和力よりも小さいため、半導体基板20と第1配線層41とにオーミック接触を形成することができる。したがって、半導体基板20と第1配線層41とにショットキー接触が形成された場合と比較して、半導体基板20と半導体発光素子30との間の導電経路における抵抗成分を低減することができる。
【0132】
(1-2)半導体基板20は、Siを含む材料によって形成されている。第1配線層41は、Tiを含む材料によって形成されている。
この構成によれば、Tiを含む材料によって形成された第1配線層41が半導体基板20の基板表面21に接しているため、半導体基板20と表面配線層40との密着性の向上を図ることができる。
【0133】
(1-3)第1配線層41の厚さT1は、第2配線層42の厚さT2よりも小さい。
この構成によれば、Tiを含む第1配線層41はAlを含む第2配線層42よりも熱伝導率が小さく、電気抵抗が高い。第1配線層41の厚さT1を薄くすることによって表面配線層40の厚さ(T1+T2)に対する第1配線層41の厚さT1の割合が小さくなるため、表面配線層40の熱伝導率および電気抵抗への影響を低減することができる。
【0134】
(1-4)第1配線層41の厚さT1は、10nm以上300nm以下である。
この構成によれば、第1配線層41の厚さT1を薄くすることによって表面配線層40の厚さ(T1+T2)に対する第1配線層41の厚さT1の割合が小さくなるため、表面配線層40の熱伝導率および電気抵抗への影響を低減することができる。
【0135】
(1-5)接合層80は、表面配線層40に接する第1接合層81と、第1接合層81に積層され、第1接合層81と半導体発光素子30との双方に接する第2接合層82と、によって構成されている。第1接合層81は、Tiを含む材料によって形成されている。第2接合層82は、AuSnを含む材料によって形成されている。
【0136】
この構成によれば、表面配線層40(第2配線層42)と第2接合層82との間にTiを含む第1接合層81が介在することによって、表面配線層40(第2配線層42)と第2接合層82との密着性の向上を図ることができる。
【0137】
(1-6)表面配線層40は、酸化膜が形成されることなく、接合層80と接している。
この構成によれば、半導体基板20と半導体発光素子30との間の導電経路の途中で抵抗成分となる酸化膜が形成されていないため、半導体基板20と半導体発光素子30との間の導電経路における抵抗成分を低減することができる。
【0138】
(1-7)半導体基板20の厚さ方向と直交する方向において、第1配線層41の大きさ、第2配線層42の大きさ、および第1接合層81の大きさは互いに等しい。
この構成によれば、共通のマスク820によって第1配線層41、第2配線層42、および第1接合層81の各々を形成することができる。したがって、半導体発光装置10の製造工程の簡略化を図ることができる。
【0139】
(1-8)半導体発光素子30は、基板表面21と同じ側を向く素子表面31と、素子表面31とは反対側の素子裏面32と、素子裏面32に形成された素子裏面電極37と、を有する。素子裏面電極37は、接合層80によって表面配線層40と電気的に接続されている。
【0140】
この構成によれば、例えば半導体発光素子30と表面配線層40とがワイヤによって電気的に接続される構成と比較して、半導体発光素子30と表面配線層40との導電経路を短くすることができる。
【0141】
(1-9)半導体発光装置10は、基板裏面22に形成された裏面配線層70を備える。裏面配線層70は半導体基板20を介して表面配線層40と電気的に接続されている。
この構成によれば、裏面配線層70、半導体基板20、表面配線層40、接合層80、および半導体発光素子30によって導電経路を構成できる。
【0142】
(1-10)裏面配線層70と半導体基板20とはオーミック接触を形成している。
この構成によれば、裏面配線層70と半導体基板20との間の抵抗成分が小さくなるため、半導体発光素子30の動作電圧が大きくなることを抑制できる。
【0143】
(1-11)半導体発光装置10の製造方法は、基板表面21と、基板表面21とは反対側の基板裏面22を有する半導体基板20を用意する工程と、基板表面21に表面配線層40を蒸着する工程と、表面配線層40上に接合層80を蒸着する工程と、接合層80によって表面配線層40に半導体発光素子30を接合する工程と、を備える。表面配線層40を蒸着する工程は、半導体基板20の電子親和力よりも仕事関数が小さい第1配線層41を基板表面21に蒸着する工程と、第1配線層41上に第1配線層41に接するように第2配線層42を蒸着する工程と、を含む。
【0144】
この構成によれば、n型不純物を含む半導体基板20の基板表面21に接する第1配線層41の仕事関数が半導体基板20の電子親和力よりも小さいため、半導体基板20と第1配線層41とにオーミック接触を形成することができる。したがって、半導体基板20と第1配線層41とにショットキー接触が形成された場合と比較して、半導体基板20と半導体発光素子30との間の導電経路における抵抗成分を低減することができる。
【0145】
(1-12)基板表面21に表面配線層40を蒸着する工程および表面配線層40上に接合層80を蒸着する工程は、真空環境下において連続して実施される。
この構成によれば、表面配線層40および接合層80を形成する期間において、半導体基板20が大気に触れることを抑制できる。したがって、表面配線層40および接合層80内に酸化膜が形成されることが抑制されるため、半導体基板20と半導体発光素子30との間の導電経路における抵抗成分を低減することができる。
【0146】
(1-13)半導体発光装置10の製造方法は、基板表面21に、半導体発光素子30と第2ワイヤWBによって電気的に接続されるためのワイヤ配線層50を形成する工程と、基板裏面22に裏面配線層70を蒸着する工程と、ワイヤ配線層50および裏面配線層70が形成された後に熱処理を実施する工程と、をさらに備える。基板表面21に表面配線層40を蒸着する工程および表面配線層40上に接合層80を蒸着する工程は、熱処理を実施する工程の後に実施される。
【0147】
この構成によれば、熱処理によって裏面配線層70と基板裏面22とにオーミック接触を形成することができる。したがって、裏面配線層70と半導体基板20との間の抵抗成分を小さくすることができる。
【0148】
(1-14)基板表面21に表面配線層40を蒸着する工程および表面配線層40上に接合層80を蒸着する工程は、共通のマスク820を用いて実施される。
この構成によれば、表面配線層40および接合層80を共通のマスク820で形成することができるため、半導体発光装置10の製造工程の簡素化を図ることができる。
【0149】
(1-15)基板表面21に表面配線層40を蒸着する工程、基板表面21に検出配線層60を蒸着する工程、および表面配線層40上に接合層80を蒸着する工程は、共通のマスク820を用いて実施される。
【0150】
この構成によれば、表面配線層40、検出配線層60、および接合層80を共通のマスク820で形成することができるため、半導体発光装置10の製造工程の簡素化を図ることができる。
【0151】
(1-16)基板表面21に表面配線層40を蒸着する工程と、基板表面21に検出配線層60を蒸着する工程とは、共通の工程として実施される。
この構成によれば、表面配線層40および検出配線層60を同時に形成することができるため、半導体発光装置10の製造工程の簡素化を図るとともに半導体発光装置10の製造時間を短縮することができる。
【0152】
[第2実施形態]
図22を参照して、第2実施形態の半導体発光装置10について説明する。第2実施形態の半導体発光装置10は、第1実施形態の半導体発光装置10と比較して、半導体基板20Aおよび表面配線層40Aの構成が異なる。以下では、第1実施形態の半導体発光装置10と異なる点について詳細に説明し、第1実施形態の半導体発光装置10と共通する構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0153】
第2実施形態の半導体基板20Aは、p型不純物を含む。p型不純物として、例えばP(リン)、As(ヒ素)等が用いられる。p型不純物濃度は例えば1×1019cm-3以上1×1020cm-3以下である。なお、p型不純物濃度は任意に変更可能である。半導体基板20Aの電子親和力は、5.15eVである。
【0154】
第2実施形態の表面配線層40Aは、第1実施形態と比較して、第1配線層41の構成が異なる。第1配線層41は、半導体基板20Aの電子親和力よりも仕事関数が大きい。第1配線層41は、例えばPt(白金)を含む材料によって形成されている。一例では、第1配線層41は、Pt層である。この場合、第1配線層41の仕事関数は、5.3eVである。このように、第1配線層41の仕事関数がp型不純物を含む半導体基板20Aの電子親和力よりも大きくなるので、第1配線層41と半導体基板20Aとにオーミック接触が形成される。なお、第2実施形態の第1配線層41の厚さ、幅寸法、および長さ寸法は、第1実施形態の第1配線層41と同様である。
【0155】
第2実施形態の半導体発光装置10の製造方法は、第1実施形態と比較して、半導体基板20Aを用意する工程と、基板表面21に表面配線層40Aを蒸着する工程とが異なる。より詳細には、半導体基板20Aを用意する工程では、p型不純物を含む半導体基板20Aが用意される。基板表面21に表面配線層40Aを蒸着する工程では、半導体基板20Aの電子親和力よりも仕事関数が大きい第1配線層41が基板表面21に蒸着される。第1配線層41は、例えばPtを含む材料によって形成される。つまり、基板表面21に表面配線層40Aを蒸着する工程は、半導体基板20Aの電子親和力よりも仕事関数が大きい第1配線層41を基板表面21に蒸着する工程を含む。
【0156】
[効果]
第2実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(2-1)半導体発光装置10は、p型不純物を含み、基板表面21と、基板表面21とは反対側の基板裏面22を有する半導体基板20Aと、基板表面21に形成された表面配線層40Aと、表面配線層40Aに接合される半導体発光素子30と、表面配線層40と半導体発光素子30とを接合する接合層80と、を備える。表面配線層40Aは、基板表面21に接し、半導体基板20Aの電子親和力よりも仕事関数が大きい第1配線層41と、第1配線層41上において第1配線層41に接する第2配線層42と、を含む。
【0157】
この構成によれば、p型不純物を含む半導体基板20Aの基板表面21に接する第1配線層41の仕事関数が半導体基板20Aの電子親和力よりも大きいため、半導体基板20Aと第1配線層41とにオーミック接触を形成することができる。したがって、半導体基板20Aと第1配線層41とにショットキー接触が形成された場合と比較して、半導体基板20Aと半導体発光素子30との間の導電経路における抵抗成分を低減することができる。また、第2実施形態によれば、第1実施形態の(1-2)~(1-16)の効果も得られる。
【0158】
<変更例>
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。以下の変更例は、技術的に矛盾が生じない限り、互いに組み合わせることができる。
【0159】
・各実施形態において、第1配線層41の厚さT1と第2配線層42の厚さT2との関係は任意に変更可能である。一例では、第1配線層41の厚さT1は、第2配線層42の厚さT2以上であってもよい。
【0160】
・各実施形態において、第1配線層41の厚さT1と第1検出層61の厚さT9との関係は任意に変更可能である。一例では、第1配線層41の厚さT1は、第1検出層61の厚さT9よりも薄くてもよい。また一例では、第1配線層41の厚さT1は、第1検出層61の厚さT9よりも厚くてもよい。
【0161】
・各実施形態において、第1配線層41の組成と第1検出層61の組成との関係は任意に変更可能である。一例では、第1配線層41の組成は、第1検出層61の組成と異なっていてもよい。
【0162】
・各実施形態において、第2配線層42の厚さT2と第2検出層62の厚さT10との関係は任意に変更可能である。一例では、第2配線層42の厚さT2は、第2検出層62の厚さT10よりも薄くてもよい。また一例では、第2配線層42の厚さT2は、第2検出層62の厚さT10よりも厚くてもよい。
【0163】
・各実施形態において、第2配線層42の組成と第2検出層62の組成との関係は任意に変更可能である。一例では、第2配線層42の組成は、第2検出層62の組成と異なっていてもよい。
【0164】
・各実施形態では、接合層80は第1接合層81および第2接合層82を含む構成であったが、これに限られない。一例では、接合層80は、第2接合層82によって構成されていてもよい。つまり、接合層80は、AuSnを含む材料によって構成されていてもよい。この場合、第2接合層82は、第2配線層42上に第2配線層42に接するように形成されている。
【0165】
・各実施形態において、第1接合層81の組成は、第1配線層41の組成と同じであったが、これに限られない。第1接合層81の組成は、第1配線層41の組成と異なっていてもよい。
【0166】
・各実施形態において、第1配線層41の幅寸法W1、第2配線層42の幅寸法W2、および第1接合層81の幅寸法W3の関係は任意に変更可能である。第1配線層41の幅寸法W1、第2配線層42の幅寸法W2、および第1接合層81の幅寸法W3のうち1つまたは2つの幅寸法が他の幅寸法と異なっていてもよい。また、第1配線層41の幅寸法W1、第2配線層42の幅寸法W2、および第1接合層81の幅寸法W3が互いに異なっていてもよい。
【0167】
・各実施形態では、第2接合層82の幅寸法W6は第1接合層81の幅寸法W5と等しかったが、これに限られない。第2接合層82の幅寸法W6は、第1接合層81の幅寸法W5よりも大きくなる部分を含んでいてもよい。一例では、第2接合層82の厚さ方向の中央部分の幅寸法が第1接合層81の幅寸法W5よりも大きくてもよい。この場合、第2接合層82は、樽状に形成されているともいえる。また一例では、第2接合層82のうち素子裏面電極37寄りの部分の幅寸法が第1接合層81の幅寸法W5よりも大きくてもよい。この場合、第2接合層82は、第1接合層81から素子裏面電極37に向かうにつれて幅寸法が徐々に大きくなる形状であってもよい。
【0168】
・各実施形態において、半導体基板20の厚さ方向から視たワイヤ配線層50の形状は任意に変更可能である。一例では、ワイヤ配線層50のうち第1ワイヤボンディング領域51および第2ワイヤボンディング領域52のうちいずれかを省略してもよい。この場合、第1ワイヤWAおよび第2ワイヤWBの双方は、残りのワイヤボンディング領域に接合されている。
【0169】
・各実施形態において、ワイヤ配線層50を省略してもよい。この場合、半導体発光素子30の素子表面電極36と個別ピン131とはワイヤによって接続されている。またワイヤ配線層50の省略に応じて半導体基板20のサイズも小さくしてもよい。
【0170】
・各実施形態において、検出配線層60を省略してもよい。
・各実施形態では、裏面配線層70と半導体基板20とは、オーミック接触を形成していたが、これに限られない。裏面配線層70と半導体基板20とは、電気的に接続されていればよい。
【0171】
・各実施形態において、裏面配線層70を形成する材料は、Auに限られず、任意に変更可能である。一例では、裏面配線層70は、Cu(銅)、Ni、Alのうち少なくとも1つを含む材料であってもよい。
【0172】
・各実施形態において、基板表面21に表面配線層40を蒸着する工程は、基板表面21に検出配線層60を蒸着する工程と同時に実施しなくてもよい。基板表面21に表面配線層40を蒸着する工程は、基板表面21に検出配線層60を蒸着する工程よりも前に実施してもよい。また、基板表面21に表面配線層40を蒸着する工程は、基板表面21に検出配線層60を蒸着する工程よりも後に実施してもよい。
【0173】
・各実施形態において、表面配線層40を形成するためのマスクと、接合層80を形成するためのマスクとは互いに異なっていてもよい。つまり、第1マスクを用いて表面配線層40を蒸着した後、第1マスクを除去し、第2マスクを用いて接合層80を蒸着してもよい。
【0174】
・各実施形態において、検出配線層60の構成は任意に変更可能である。一例では、検出配線層60は、第1検出層61および第2検出層62のいずれかによって構成されていてもよい。つまり、検出配線層60から第1検出層61および第2検出層62のいずれかを省略してもよい。
【0175】
・各実施形態において、基板表面21に表面配線層40を蒸着する工程および表面配線層40上に接合層80を蒸着する工程を、真空環境下において連続して実施する場合、表面配線層40の構成は任意に変更可能である。
【0176】
一例では、n型不純物を含む半導体基板20において、第1配線層41の仕事関数は半導体基板20の電子親和力以上であってもよい。この場合、第1配線層41は、例えばCu、Au、Ni、Pt、およびAg(銀)の少なくとも1つを含む材料によって形成されていてもよい。また一例では、表面配線層40から第1配線層41を省略してもよい。この場合、第2配線層42が基板表面21と接している。
【0177】
また一例では、p型不純物を含む半導体基板20において、第1配線層41の仕事関数は半導体基板20の電子親和力以下であってもよい。この場合、第1配線層41は、例えばCu、Au、Ni、Ti、およびAgの少なくとも1つを含む材料によって形成されていてもよい。また一例では、表面配線層40から第1配線層41を省略してもよい。この場合、第2配線層42が基板表面21と接している。
【0178】
真空環境下において表面配線層40および接合層80が連続して形成されるため、表面配線層40および接合層80内に酸化膜が形成されることを抑制できる。したがって、半導体基板20と半導体発光素子30との間の導電経路における抵抗成分を低減することができる。
【0179】
・表面配線層40の厚さ方向と直交する方向のうち互いに直交する2方向を第1方向および第2方向としてもよい。表面配線層40の厚さ方向は半導体基板20の厚さ方向と一致するため、表面配線層40の厚さ方向と直交する方向は半導体基板20の厚さ方向と直交する方向と言い換えることもできる。第1方向は、例えば表面配線層40の短手方向である。第2方向は、例えば表面配線層40の長手方向である。表面配線層40の短手方向は半導体基板20の短手方向と一致するため、第1方向は、半導体基板20の短手方向であるともいえる。表面配線層40の長手方向は半導体基板20の長手方向と一致するため、第2方向は、半導体基板20の長手方向であるともいえる。この場合、例えば幅寸法は第1方向の大きさとなり、長さ寸法は第2方向の大きさとなる。
【0180】
本明細書に記載の様々な例のうち1つまたは複数を、技術的に矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
本開示で使用される「~上に」という用語は、文脈によって明らかにそうでないことが示されない限り、「~上に」と「~の上方に」の意味を含む。したがって、例えば「第1要素が第2要素上に実装される」という表現は、或る実施形態では第1要素が第2要素に接触して第2要素上に直接配置され得るが、他の実施形態では第1要素が第2要素に接触することなく第2要素の上方に配置され得ることが意図される。すなわち、「~上に」という用語は、第1要素と第2要素との間に他の要素が形成される構造を排除しない。
【0181】
<付記>
上記各実施形態および各変更例から把握できる技術的思想を以下に記載する。なお、各付記に記載された構成要素に対応する実施形態の構成要素の符号を括弧書きで示す。符号は、理解の補助のために例として示すものであり、各付記に記載された構成要素は、符号で示される構成要素に限定されるべきではない。
【0182】
[付記1]
n型不純物を含み、基板表面(21)と、前記基板表面(21)とは反対側の基板裏面(22)を有する半導体基板(20)と、
前記基板表面(21)に形成された表面配線層(40)と、
前記表面配線層(40)に接合される半導体発光素子(30)と、
前記表面配線層(40)と前記半導体発光素子(30)とを接合する接合層(80)と、を備え、
前記表面配線層(40)は、
前記基板表面(21)に接し、前記半導体基板(20)の電子親和力よりも仕事関数が小さい第1配線層(41)と、
前記第1配線層(41)上において前記第1配線層(41)に接する第2配線層(42)と、
を含む、半導体発光装置(10)。
【0183】
[付記2]
前記半導体基板(20)は、Siを含む材料によって形成されており、
前記第1配線層(41)は、Tiを含む材料によって形成されている
付記1に記載の半導体発光装置。
【0184】
[付記3]
p型不純物を含み、基板表面(21)と、前記基板表面(21)とは反対側の基板裏面(22)を有する半導体基板(20)と、
前記基板表面(21)に形成された表面配線層(40)と、
前記表面配線層(40)に接合される半導体発光素子(30)と、
前記表面配線層(40)と前記半導体発光素子(30)とを接合する接合層(80)と、を備え、
前記表面配線層(40)は、
前記基板表面(21)に接し、前記半導体基板(20)の電子親和力よりも仕事関数が大きい第1配線層(41)と、
前記第1配線層(41)上において前記第1配線層(41)に接する第2配線層(42)と、
を含む、半導体発光装置。
【0185】
[付記4]
前記半導体基板(20)は、Siを含む材料によって形成されており、
前記第1配線層(41)は、Ptを含む材料によって形成されている
付記3に記載の半導体発光装置。
【0186】
[付記5]
前記第1配線層(41)の厚さ(T1)は、前記第2配線層(42)の厚さ(T2)よりも小さい
付記1~4のいずれか1つに記載の半導体発光装置。
【0187】
[付記6]
前記第1配線層(41)の厚さ(T1)は、10nm以上300nm以下である
付記1~5のいずれか1つに記載の半導体発光装置。
【0188】
[付記7]
前記接合層(80)は、
前記表面配線層(40)に接する第1接合層(81)と、
前記第1接合層(81)に積層され、前記第1接合層(81)と前記半導体発光素子(30)との双方に接する第2接合層(82)と、
によって構成されている
付記1~6のいずれか1つに記載の半導体発光装置。
【0189】
[付記8]
前記第1接合層(81)は、Tiを含む材料によって形成されており、
前記第2接合層(82)は、AuSnを含む材料によって形成されている
付記7に記載の半導体発光装置。
【0190】
[付記9]
前記第1接合層(81)の組成は、前記第1配線層(41)の組成と同じである
付記7または8に記載の半導体発光装置。
【0191】
[付記10]
前記表面配線層(40)は、酸化膜が形成されることなく、前記接合層(80)と接している
付記1~9のいずれか1つに記載の半導体発光装置。
【0192】
[付記11]
前記半導体基板(20)の厚さ方向と直交する方向において、前記第1配線層(41)の大きさ(W1)、前記第2配線層(42)の大きさ(W2)、および前記第1接合層(81)の大きさ(W5)は互いに等しい
付記7~9のいずれか1つに記載の半導体発光装置。
【0193】
[付記12]
前記半導体基板(20)の厚さ方向と直交する方向において、前記第2接合層(82)の大きさ(W6)は、前記第1接合層(81)の大きさ(W5)よりも大きい
付記7~9、および11のいずれか1つに記載の半導体発光装置。
【0194】
[付記13]
前記半導体発光素子(30)は、
前記基板表面(21)と同じ側を向く素子表面(31)と、
前記素子表面(31)とは反対側の素子裏面(32)と、
前記素子裏面(32)に形成された素子裏面電極(37)と、
を有し、
前記素子裏面電極(37)は、前記接合層(80)によって前記表面配線層(40)と電気的に接続されている
付記1~12のいずれか1つに記載の半導体発光装置。
【0195】
[付記14]
前記基板裏面(22)には、裏面配線層(70)が形成されており、
前記裏面配線層(70)は、前記半導体基板(20)を介して前記表面配線層(40)と電気的に接続されている
付記1~13のいずれか1つに記載の半導体発光装置。
【0196】
[付記15]
付記1~14のいずれか1つに記載の半導体発光装置(10)と、
前記半導体発光装置(10)が取り付けられたステム(110)と、
前記ステム(110)に取り付けられ、前記半導体発光装置(10)を覆うとともに前記半導体発光装置(10)が出射した光が通過する開口部(124)を有するキャップ(120)と、
前記半導体発光装置(10)と電気的に接続された端子ピン(130)と、
を備える、半導体発光モジュール(100)。
【0197】
[付記16]
n型不純物を含み、基板表面(21)と、前記基板表面(21)とは反対側の基板裏面(22)を有する半導体基板(20)を用意する工程と、
前記基板表面(21)に表面配線層(40)を蒸着する工程と、
前記表面配線層(40)上に接合層(80)を蒸着する工程と、
前記接合層(80)によって前記表面配線層(40)に半導体発光素子(30)を接合する工程と、
を備え、
前記表面配線層(40)を蒸着する工程は、
前記半導体基板(20)の電子親和力よりも仕事関数が小さい第1配線層(41)を前記基板表面(21)に蒸着する工程と、
前記第1配線層(41)上に前記第1配線層(41)に接するように第2配線層(42)を蒸着する工程と、
を含む、半導体発光装置(10)の製造方法。
【0198】
[付記17]
前記基板表面(21)に前記表面配線層(41)を蒸着する工程および前記表面配線層(40)上に前記接合層(80)を蒸着する工程は、真空環境下において連続して実施される
付記16に記載の半導体発光装置の製造方法。
【0199】
[付記18]
基板表面(21)と、前記基板表面(21)とは反対側の基板裏面(22)を有する半導体基板(20)を用意する工程と、
前記基板表面(21)に表面配線層(41)を蒸着する工程と、
前記表面配線層(41)上に接合層(80)を蒸着する工程と、
前記接合層(80)によって前記表面配線層(41)に半導体発光素子(30)を接合する工程と、
を備え、
前記基板表面(21)に前記表面配線層(40)を蒸着する工程および前記表面配線層(40)上に前記接合層(80)を蒸着する工程は、真空環境下において連続して実施される
半導体発光装置(10)の製造方法。
【0200】
[付記19]
前記第2配線層(42)上に前記第2配線層(42)と接するように第1接合層(81)を蒸着する工程と、
前記第1接合層(81)上に前記第1接合層(81)と接するように第2接合層(82)を蒸着する工程と、
によって前記表面配線層(40)に接するように前記接合層(80)を形成する
付記17または18に記載の半導体発光装置の製造方法。
【0201】
[付記20]
前記第1配線層(41)は、Tiを含む材料を前記基板表面(21)に蒸着することによって形成され、
前記第2配線層(42)は、Alを含む材料を前記第1配線層(41)に蒸着することによって形成され、
前記第1接合層(81)は、Tiを含む材料を前記第2配線層(42)に蒸着することによって形成され、
前記第2接合層(82)は、AuSnを含む材料を前記第1接合層(81)に蒸着することによって形成される
付記19に記載の半導体発光装置の製造方法。
【0202】
[付記21]
前記基板表面(21)に、前記半導体発光素子(30)とワイヤ(W2)によって電気的に接続されるためのワイヤ配線層(50)を形成する工程と、
前記基板裏面(22)に裏面配線層(70)を蒸着する工程と、
前記ワイヤ配線層(50)および前記裏面配線層(70)が形成された後に熱処理を実施する工程と、
をさらに備え、
前記基板表面(21)に前記表面配線層(40)を蒸着する工程および前記表面配線層(40)上に前記接合層(80)を蒸着する工程は、前記熱処理を実施する工程の後に実施される
付記16~20のいずれか1つに記載の半導体発光装置の製造方法。
【0203】
[付記22]
p型不純物を含み、基板表面(21)と、前記基板表面(21)とは反対側の基板裏面(22)を有する半導体基板(20A)を用意する工程と、
前記基板表面(21)に表面配線層(40A)を蒸着する工程と、
前記表面配線層(40A)上に接合層(80)を蒸着する工程と、
前記接合層(80)によって前記表面配線層(40A)に半導体発光素子(30)を接合する工程と、
を備え、
前記表面配線層(40A)を蒸着する工程は、
前記半導体基板(20A)の電子親和力よりも仕事関数が大きい第1配線層(41)を前記基板表面(21)に蒸着する工程と、
前記第1配線層(41)上に前記第1配線層(41)に接するように第2配線層(42)を蒸着する工程と、
を含む、半導体発光装置(10)の製造方法。
【0204】
[付記23]
前記基板表面(21)に前記表面配線層(41)を蒸着する工程および前記表面配線層(40A)上に前記接合層(80)を蒸着する工程は、真空環境下において連続して実施される
付記22に記載の半導体発光装置の製造方法。
【0205】
以上の説明は単に例示である。本開示の技術を説明する目的のために列挙された構成要素および方法(製造プロセス)以外に、より多くの考えられる組み合わせおよび置換が可能であることを当業者は認識し得る。本開示は、特許請求の範囲を含む本開示の範囲内に含まれるすべての代替、変形、および変更を包含することが意図される。
【符号の説明】
【0206】
10…半導体発光装置
10X…第1比較例の半導体発光装置
10Y…第2比較例の半導体発光装置
20,20A…半導体基板
21…基板表面
22…基板裏面
23~26…第1~第4基板側面
27…表面絶縁層
27A…第1開口部
27B…第2開口部
30…半導体発光素子
31…素子表面
32…素子裏面
33…素子基板
33A…基板表面
33B…基板裏面
34…発光部
34A…電極接続面
34B…基板接続面
34C,34D…発光部端面
34E,34F…発光部側面
35…絶縁膜
35A,35B…基板被覆部
35C…発光部被覆部
35D…上面
35E…第1開口部
36…素子表面電極
37…素子裏面電極
38…発光ユニット
39…トンネル層
40,40A…表面配線層
40X…比較例の表面配線層
41…第1配線層
42…第2配線層
43X…酸化膜
50…ワイヤ配線層
51…第1ワイヤボンディング領域
52…第2ワイヤボンディング領域
53…酸化膜
54…層表面
60…検出配線層
61…第1検出層
62…第2検出層
63…酸化膜
64…層表面
70…裏面配線層
80…接合層
81…第1接合層
82…第2接合層
100…半導体発光モジュール
110…ステム
111…ベース
111A…表面
111B…裏面
112…ヒートシンク
113,114…貫通孔
115…凹部
116…支持面
117,118…絶縁材
120…キャップ
121…端壁
122…周壁
123…フランジ
124…開口部
125…透光板
130…端子ピン
131,132…個別ピン
131A,132A…接続部
131B,132B…端子部
133…共通ピン
800…ワイヤ用金属層
810…表面酸化膜
820…マスク
821…第1開口部
822…第2開口部
WA…第1ワイヤ
WB…第2ワイヤ
LX…レーザ光
SP…収容空間
T1…第1配線層の厚さ
T2…第2配線層の厚さ
T3…第1接合層の厚さ
T4…第2接合層の厚さ
T5…表面酸化膜の厚さ
T6…ワイヤ配線層の厚さ
T7…ワイヤ配線層の酸化膜の厚さ
T8…検出配線層の厚さ
T9…第1検出層の厚さ
T10…第2検出層の厚さ
T11…検出配線層の酸化膜の厚さ
W1…第1配線層の幅寸法
W2…第2配線層の幅寸法
W3…第1検出層の幅寸法
W4…第2検出層の幅寸法
W5…第1接合層の幅寸法
W6…第2接合層の幅寸法
W7…半導体発光素子の幅寸法