(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114405
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】情報処理装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/08 20120101AFI20240816BHJP
【FI】
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020156
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】512288330
【氏名又は名称】株式会社TSグループ
(74)【代理人】
【識別番号】100190621
【弁理士】
【氏名又は名称】崎間 伸洋
(74)【代理人】
【識別番号】100212510
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 翔
(72)【発明者】
【氏名】吉松 良平
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC07
5L050CC07
(57)【要約】
【課題】作業者の技能を作業内容から評価することが可能な情報処理装置を提供する。
【解決手段】情報処理装置1は、職人技能試験装置として実現されている。この職人技能試験装置は、職人として作業する作業者SGの技能を評価する技能試験に対応する。作業者SGが作業を行っている様子をカメラ3で動画撮影して得られる映像情報、或いはマイク2による録音で得られる音情報を用いて、定められた評価項目毎に、評価項目に対応する作業を適切に行っているか否か評価し、適切に作業が行われていないと評価した場合に、その作業を、作業全体で要する時間を長くさせる原因とし、その時間に加算すべき加算時間に換算する。それにより、技能試験では、加算時間を含む作業時間が、作業者SGの技能を表す指標として評価される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の職人の試験対象とする作業に関する映像情報又は音情報に基づいて、所定の評価項目に対応する前記作業を評価し、該評価結果を表す評価情報を出力する作業評価手段と、
前記評価情報に基づいて、前記所定の評価項目に対応する前記作業に前記所定の職人が要した完了時間に加算すべき加算時間を出力する加算時間換算手段と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記加算時間換算手段は、前記所定の評価項目に対応する前記作業の重要度に応じた前記加算時間を算出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記映像情報によって表される再生映像中、又は前記音情報によって放音される再生音中について、前記所定の評価項目に対応する部位を出力させる評価部位出力手段、
を更に備える請求項1、または2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記加算時間換算手段は、前記所定の評価項目毎に、前記加算時間を出力する、
請求項1、または2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記所定の評価項目毎に、前記所定の職人の前記作業時に関する映像情報又は音情報と、前記所定の職人のベンチマークとなる職人の前記作業に関する映像情報又は音情報と、を比較可能な態様で出力するベンチマーク情報出力手段、
を更に備える請求項1、または2に記載の情報処理装置。
【請求項6】
情報処理装置に、
所定の職人の試験対象とする作業に関する映像情報又は音情報に基づいて、所定の評価項目に対応する前記作業を評価し、該評価結果を表す評価情報を出力させ、
前記評価情報に基づいて、前記所定の評価項目に対応する前記作業に前記所定の職人が要した完了時間に加算すべき加算時間を出力させる、
処理を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築現場などで働く作業者を動画撮影し、撮影した動画を用いて、作業員の技能を自動的に評価することが行われている。例えば動画から、作業者が行った動作の種類、例えば歩く、持ち上げる、滞留等を検出し、検出した動作の種類に基づいて、作業者の運搬に関する技能を客観的に評価する指標を生成することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業者が行った動作の種類の検出結果を用いて生成される指標は、その動作の内容自体が反映されるものではない。しかし、作業者によって行われる作業の大部分には、速さだけでなく、作業内容の精度も求められるのが実情である。これは、不適切な作業を行った場合、その作業のやり直し、或いは別の作業の実施等が発生するようなことが少なくないからである。依頼者に悪い心証を与える可能性も高い。このようなことから、作業者の技能の評価は、作業内容自体に着目して行うのが望ましいと考えられる。
【0005】
本発明は、作業者の技能を作業内容から評価することが可能な情報処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の情報処理装置は、所定の職人の試験対象とする作業に関する映像情報又は音情報に基づいて、所定の評価項目に対応する前記作業を評価し、該評価結果を表す評価情報を出力する作業評価手段と、前記評価情報に基づいて、前記所定の評価項目に対応する前記作業に前記所定の職人が要した完了時間に加算すべき加算時間を出力する加算時間換算手段と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、作業者の技能を作業内容から評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る情報処理装置による職人技能試験方法の例を説明する図である。
【
図2】作業者による塗装作業の例を説明する図である。
【
図3】塗装作業に使用される部材、及び道具の例を説明する図である。
【
図4】本発明の情報処理装置の一実施形態に係る職人技能試験装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】本発明の情報処理装置の一実施形態に係る職人技能試験装置上に実現される機能的構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図6】試験結果情報、及びベンチマーク情報の再生画面の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について、図を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、あくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。本発明の技術的範囲には、様々な変形例も含まれる。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係る情報処理装置による職人技能試験方法の例を説明する図である。
図1では、情報処理装置1は、職人技能試験装置として実現されている。この職人技能試験装置は、職人として作業する作業者SGの技能を評価する技能試験のためのものである。このことから、以降、情報処理装置1は、「職人技能試験装置1」とも表記する。
【0011】
職人技能試験装置1は、被験者である作業者SGが作業を行っている様子を動画撮影して得られる映像情報、或いは録音して得られる音情報を用いて、作業者SGが行っている作業の技能を評価する。
図1では、録音のための機器としてマイクロフォン(以降「マイク」と略記)2、動画撮影のための機器としてカメラ3をそれぞれ複数、示している。マイク2、及びカメラ3は、無線通信機能が搭載され、職人技能試験装置1と直接、或いは間接的に通信可能なものであっても良いが、PC(Personal Computer)4等と接続され、PC4等を介して、情報を職人技能試験装置1に送信可能なものであっても良い。マイク2、及びカメラ3を接続させる情報処理装置は、PC4に限定されない。なお、カメラ3による動画撮影は、比較的に短い時間間隔での静止画撮影であっても良い。
【0012】
マイク2、及びカメラ3はともに、複数、
図1に示している。これは、1つのマイク2、及び1つのカメラ3だけを用いた場合、録音すべき音を適切に録音できない、或いは撮影すべき箇所を必ずしも撮影できない、等の不具合が生じる可能性があるためである。マイク2、及びカメラ3の数、設置の仕方等は、技能を評価する作業に応じて、決定する必要がある。マイク2、及びカメラ3のうちの一方を状況に応じて移動させる者(例えば試験官。以降「試験官」と表記)SKを一人以上、担当させるようにしても良い。
【0013】
図1に示す5は、実技による作業を行う対象となる部材である。この部材5は、例えば建物の外壁材、或いは外壁の下地材である。それにより、
図1は、部材5を取り付ける取付作業、或いは取り付けられた部材を塗装する塗装作業を作業者SGが実技として行っている様子を表している。
【0014】
図2は、作業者による塗装作業の例を説明する図であり、
図3は、塗装作業に使用される部材、及び道具の例を説明する図である。作業者SGが行う作業は多いことから、理解を容易にするために、塗装作業を例にとって、
図2、及び
図3を参照し、塗装作業で行われる作業、及びその作業内容について具体的に説明する。なお、技能を評価する作業は、塗装作業に限定されない。
【0015】
図2に例を示す塗装作業は、例えば建物の外壁GHを塗装する場合のものである。外壁GHには、その外壁GHと同じ塗料で塗装すべきでない箇所も存在する。その箇所として、
図2には、雨戸を収納する戸袋TBを示している。それにより、ここでは、戸袋TBと隣接した形の外壁GHを塗装する場合を想定している。
【0016】
この場合、塗装作業には、例えば戸袋TBを塗装しないようにする養生作業、外壁GHとする部材同士の継ぎ目、或いは外壁GHと戸袋TBとの間の継ぎ目である目地MZに目地材を詰める目地補修作業、及び外壁GHを塗装する塗り作業、が含まれる。ここでは、外壁GHを塗装する作業は、「塗り作業」、全体の作業を「塗装作業」とそれぞれ表記し、それらを区別する。
【0017】
この場合、養生作業には、外壁GHの塗装時、戸袋TBを塗装しないようにするものと、目地MZに目地材を詰める際に、外壁GHに目地材が付かないようにするものと、が含まれる。戸袋TBに対する養生作業には、例えば2種類の養生テープTYT、及びYTが用いられる。カッターCTは、養生テープTYT、或いはYTの切断に用いられる。また、高い場所での作業のために、作業台SDが必要に応じて用いられる。これは、目地補修作業、塗り作業でも同様である。
【0018】
養生テープTYTは、粘着性を有する粘着部分と、その部分から延びる透明な膜状の樹脂部分とを備えたものである。膜状の樹脂の部分は、折れ畳まれた状態となっている。それにより、養生テープTYTを用いて養生作業は、例えば戸袋TBの端に沿って、粘着部分を貼り付け、その後、樹脂部分を広げ、広げた状態を養生テープYTにより固定させるようにして行われる。TYTHは、戸袋TBの養生のために、戸袋TBの端に沿って貼り付けられ、養生テープTYTから切り離された養生テープ片である。YTH1は、養生テープ片TYTHの樹脂部分を広げた状態に維持させるために、養生テープYTから切り出され、その樹脂部分と戸袋TBに貼り付けられた養生テープ片である。
【0019】
この養生テープYTは、例えば紙テープであり、目地材用の養生にも用いられる。YTH2は、目地MZに沿って外壁GHに貼り付けられ、養生テープYTから切り離された養生テープ片である。ここでは、目地MZは、養生テープ片TYTH、YTH2により養生されるものと想定している。
【0020】
養生テープ片TYTHの貼り方は、塗り作業の質に大きく影響する。これは、その貼り方が不適切であった場合、戸袋TBの一部を塗装する、或いは外壁GHで塗装していない部分が生じる、等の不具合が起こりやすいからである。そのため、養生テープ片TYTHは、戸袋TBの端に沿って、適切に貼る必要がある。
【0021】
一方、養生テープ片YTH2の貼り方は、目地補修作業に要する作業時間に大きく影響する。例えば目地MZの縁から離れた位置に養生テープ片YTH2を貼った場合、外壁GHに目地材が付着してしまい、付着した目地材を除去しなければならなくなって、作業時間が長くなる。目地MZの一部を覆うように養生テープ片YTH2を貼った場合、目地材を適切に詰めるのが困難となり、作業時間が長くなる。
【0022】
このように、養生作業は、塗装作業の一部として行われるとしても、作業全体の質、或いは作業時間に大きく影響する。そのため、質を高く維持させつつ、作業時間をより短くするうえで、養生座業は適切に行わなければならない。このことから、本実施形態では、各作業で評価項目を1つ以上、設定し、設定した評価項目毎に、その評価項目に対応する作業内容結果を評価するようにしている。
【0023】
図2において、破線で示す楕円、或いは円は、評価項目となる作業内容結果の例を表している。
図2に示すように、養生作業では、養生テープ片TYTH、及びYTH2の各貼り方はともに、評価項目となっている。カメラ3による動画撮影で得られる映像情報は、その評価項目での評価を可能にする。そのため、職人技能試験装置1は、カメラ3により得られる映像情報を取得するようになっている。
【0024】
目地材が劣化している場合、望ましい防水機能が得られない恐れが高いとして、目地MZ内に存在する目地材を除去することが行われるのが普通である。そのため、目地補修作業では、目地材を除去する除去作業が行われる場合がある。
この除去作業は、例えばカッターCTを用いて行われる。カッターCTを用いて、目地MZ内の目地材を切断し、目地材を目地MZから取り除きし易くして、目地材を取り除くことが行われる。
【0025】
このような目地材の切断作業が適切に行われている否かの評価は、映像からは困難な面がある。カッターCTによって実際に切断された目地材内の箇所は、カメラ3の撮影により得られる映像から適切に特定するのは困難である。しかし、目地材を適切に切断できている場合、適切に切断できていない場合とでは切断時に発生する音が異なる。例えば目地材を適切に切断できている場合、カッターCTを動かしても殆ど音がしないのに対し、適切に切断できていない場合、カッターCTを動かすことにより、何らかの変化する音が発生する。このことから、本実施形態では、マイク2により得られる音情報を取得し、評価項目での評価に必要に応じて用いるようにしている。なお、カメラ3の撮影により得られる映像から、目地MZ内で除去されていない目地材、及びその量等を特定するのは可能である。
【0026】
作業のうちには、熟練により、リズミカルな音を出すようになる作業も少なくない。例えば刷毛HKを使った塗り作業は、その作業の1つである。塗装ローラTRを用いた塗り作業では、塗装ローラTRを動かすことでリズミカルな音が出るだけでなく、塗装ローラTRに含ませる塗料の量により、音の高さも変化する。例えば塗料が適量であれば、グチュグチュというような音であるのに対し、塗料が少なすぎであれば、ビチャビチャというようなより高い音に変化する。このようなことから、録音する音は、塗り作業の練度を評価するうえでも有用である。
【0027】
目地補修作業では、目地MZに目地材を詰めるコーキングを行わなければならない。目地材を詰める作業は、より短い時間内に、適切に行うことが求められる。目地材を詰めた目地MZの長さ、目地材の詰め方の適切さ、等は、映像により確認することができる。そのため、目地材を詰めた目地MZの長さ、目地材の詰め方の適切さは、評価項目となり得る。目地MZで除去されなかった目地材の有無、及びその量等も評価項目となり得る。
【0028】
目地材を詰める作業は、例えばハンドシリンダーガンHCGを用いて行うことができる。このハンドシリンダーガンHCGには、目地材が充填された目地材容器MHを装填することができ、レバーへの操作により、目地材容器MH内の目地材を射出させることができる。目地材を目地MZに適切に充填するうえで、ハンドシリンダーガンHCGに装填された目地材容器MHの先端の目地MZへの当て方も重要である。そのため、この当て方も評価項目とすることができる。
【0029】
目地補修作業の終了後、養生のために貼り付けられた養生テープ片YTH2が除去され、塗り作業が行われる。
図2では、その塗り作業を作業者SGが行っている様子を表している。外壁GHに溝があることから、作業者SGは、刷毛HKを用いて塗り作業を行っている。刷毛HKを用いていることから、作業者SGは、塗料が入った塗料缶PKを持って塗り作業を行っている。なお、塗装ローラTRを用いた塗り作業の場合、作業者SGは、塗料缶PKを持たない。不図示のローラバケット等に入れた塗料を塗装ローラTRに含ませ、塗り作業を行うことになる。
【0030】
刷毛HKを用いた塗り作業では、塗装対象物である外壁GHへの刷毛HKの当て方も重要な評価項目となり得る。効率的な塗り作業を行ううえで、塗料缶PKの持ち方も重要な評価項目となり得る。横方向の移動をよりスムーズに行ううえで、作業者SGの姿勢、特に足の配置も重要な評価項目となり得る。塗りムラ、及び液だれは何れも、発生しないようにする必要がある。それにより、塗った後の状態も非常に重要な評価項目となる。
【0031】
刷毛HKの当て方、姿勢等は、実際に要した作業時間に影響を及ぼす。このことから、実際の作業時間は、そのような評価項目における評価結果が反映されたものと見なすことができる。しかし、評価項目のうちには、実際の作業時間に反映されないものも存在する。例えば塗り作業後に残った塗りムラ、液だれは、それに応じた作業を行う必要がある。例えば塗りムラは、塗り直し等により、塗りムラを解消させなければならない。液だれは、例えば液だれ部分を除去し、塗り直さなければならない。このような作業を作業者SGが行わなかった場合、その作業に要する時間は、実際の作業時間には含まれていない。
このことから、本実施形態では、実際の作業時間に影響を及ぼさない、或いは及ぼす程度が比較的に低い評価項目に着目した評価を行うようにしている。それにより、作業者SGが行うべき作業を行わなかったことを評価項目とし、その作業を行わないことに対する影響を評価するようにしている。
【0032】
刷毛HKの持ち方、当て方、及び動かし方(以降、これらは「扱い方」と総称する)は、塗りムラ、或いは液だれを発生しないようにするうえで重要である。例え技能試験時、塗りムラ、或いは液だれが発生していないとしても、刷毛HKの扱い方が不適切であれば、実際の塗り作業では、塗りムラ、或いは液だれが発生することは少なくないと考えられる。このことから、刷毛HK、及び刷毛HKとは異なる各種道具の扱い方は評価項目とし、道具を使った作業への影響を評価するようにしている。
【0033】
カッターCTの扱い方では、基本的にカッターCTの刃を動かす方向に手等を置かないようにする必要がある。これは、カッターCTにより、作業者SG自身が怪我をしないようにするためである。このようなことから、安全性を確保するという視点で、道具の扱い方を評価項目として評価するようにしても良い。この評価項目は、カッターCTの持ち方、刃の当て方、及び動かし方等とは別の評価項目とするのが望ましい。
【0034】
評価項目の評価結果は、実際の作業時間とは別に、行うべき作業のために必要と考えられる時間(加算時間)に換算するようにして、定性的な評価項目であっても定量化し評価している。時間に換算するのは、作業の熟練度(スキル)を判断するうえで作業時間は有用な指標であるためである。そのような指標をベースにできることから、作業者SGの実際の技能の把握、及び対比がよりし易くなる。
【0035】
塗りムラ、及び液だれは、それが発生した箇所の全てが特定される。これは、例えば塗りムラでは、塗り直しを行うべき箇所毎に、塗り直しを行う必要があるからである。例えば3箇所の塗り直しを行う場合、1箇所の塗り直しを行う場合と比較し、塗り直しに3倍程度の時間が必要になると考えることができる。
【0036】
液だれへの対応では、塗りムラへの対応とは異なり、液だれを除去する作業も必要になる。そのため、液だれへの対応には、より長い時間を要する作業を行うことになる。このことから、加算時間への換算の仕方は、評価項目毎に設定している。それにより、本実施形態では、作業への影響の度合いが高いほど、評価項目の重要度も高いものと見なし、換算すべき加算時間を設定している。なお、加算時間としては、例えば塗りムラは1箇所につき3秒程度、液だれは1箇所につき10秒程度とすることが考えられる。
【0037】
道具の扱い方、姿勢、作業後の後片付け等は、技能試験全体に影響を及ぼすものと言える。このことから、これらは全て、数を計数しない評価項目として扱うことが考えられる。本実施形態では、作業者SGが実際に作業を適切に行うようにするうえで必要な評価項目とし、比較的に長い加算時間を設定している。何れの加算時間も、例えば10秒以上とすることが考えられる。
このようなことから、評価項目は、数を計数するものと、数を計数しないものと、に大別することができる。
【0038】
図2において、養生テープ片TYTH、及びYTH2の貼り付けは何れも、定性的な評価項目となる。目地材の充填状態も、定性的な評価項目となる。これは、仮に養生テープ片TYTH、及びYTH2の貼り付け方が不適切であった場合、例えば貼る位置がずれている、或いは不要な曲がりがある等の場合、目地材の充填作業、及び塗り作業に悪影響を及ぼすからである。目地材の充填が不適切に行われた場合、見栄えが悪いだけでなく、必要な防水機能等が実現されない恐れもある。このようなことから、評価結果を加算時間に換算すべき評価項目となる。
【0039】
塗装作業には、
図3に示すように、塗り作業の他に、養生作業、及び目地補修作業が含まれる場合がある。各作業は何れも、他の作業のうちの一部として行われる場合がある。例えば塗り作業は、部材の交換作業に伴い、交換後の部材の保護のために行われる場合がある。このようなことから、実際の作業時間の計時は、独立していると言える作業、言い換えれば同じ作業者SGが行うべきと言える範囲の作業を単位として行うようにしている。単位となる作業は、以降「単位作業」と表記する。養生作業、目地補修作業、及び塗り作業は、何れも単位作業である。
【0040】
養生作業は、主に養生テープTYT、或いはYTを貼る作業である。この養生作業のスキルは、養生作業に要した作業時間と、実際に貼られた養生テープ片TYTH、或いはYTH2の状態とから把握することができる。そのため、養生作業は単位作業と見なすことができる。その養生作業の評価項目としては、実際に貼られた養生テープ片TYTH、或いはYTH2の状態を設定することができる。
【0041】
一方、目地材の除去を伴う目地補修作業では、目地材の除去作業、及び目地材の充填作業のそれぞれで評価する必要がある。そのため、この目地補修作業は、単位作業と見なせるだけでなく、複数の単位作業が行われる作業と見なすこともできる。このことから、評価項目が設定される作業は、以降「評価対象作業」と表記し、単位作業と区別する。
このように区別する場合、養生作業は、単位作業であるとともに、評価対象作業である。目地材の除去を伴う目地補修作業は、単位作業であっても、評価対象作業ではなく、評価対象作業群ということになる。
【0042】
各単位作業は、技能を評価すべき試験対象である。本実施形態では、作業者SG間の対比が容易なように、各単位作業の内容は同じとしている。各単位作業の内容を同じとすることで、作業時間を計時する範囲、評価項目毎の評価の仕方、評価結果の加算時間への換算の仕方、等を同じにすることができる。それにより、作業者SGにとっては、技能試験の結果から、自身のスキルレベル、他の作業者SGとのスキルの差、及びスキルの向上具合等を確認することができる。目標となるスキルを具体的に設定することもできる。このようなことから、作業者SGのモチベーションをより高めることも期待できる。なお、技能試験は、単位作業別ではなく、
図3に例を示すような複数の単位作業をまとめて行うものであっても良い。
【0043】
単位作業別に技能試験を行う場合、各作業者SGが得手、不得手とする単位作業をより容易に確認することができる。そのため、作業者SGを管理する立場の者にとっては、現場等への作業者SGの割り当て(人工計算)、割り当てた作業者SGの作業分担等をより的確、且つより容易に行えるようになる。この結果、複数の現場に作業者SGをそれぞれ割り当てる立場の管理者にとっては、各現場に適した作業者SGをそれぞれ割り当てられることから、各現場での作業効率を高く維持させることが容易に行えるようになる。
【0044】
技能試験の結果は、例えば以下のような項目の提示により行うことが考えられる。
(1)実際の作業時間(後述する試験作業時間)
(2)不適切と評価した評価項目
(3)評価項目で不適切と評価した箇所の数
(4)1箇所当たりの加算時間
(5)総加算時間
(6)評価を反映させた場合の作業時間(=実際の作業時間+総加算時間)
ここで、(2)~(4)は、評価項目毎に提示される項目である。また、評価項目によっては、(3)は省くことができる。
【0045】
不適切と評価された評価項目に限定し、その詳細な情報を提示することにより、作業者SGにとっては、自身の改善すべき点、その改善すべき点の存在が作業に及ぼす影響の度合い、等の把握がより容易に行えるようになる。改善すべき点等を把握することにより、作業者SGは、その点等を意識した作業を行うことが容易となる。そのため、結果として、改善すべき点等の改善をより効果的、且つより効率的に行えるようになる。このようなことから、不適切と評価された評価項目に限定し、その詳細な情報を提示することは有用である。
【0046】
以降は、上記のように、映像情報、或いは/及び、音情報を用いて技能試験の結果を評価する職人技能試験装置1について、
図4~
図6を参照し、詳細に説明する。
図4は、本発明の情報処理装置の一実施形態に係る職人技能試験装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。始めに
図4を参照し、職人技能試験装置1として使用可能な情報処理装置のハードウェア構成例について具体的に説明する。なお、この構成例は一例であり、職人技能試験装置1として使用可能な情報処理装置のハードウェア構成はこれに限定されない。
【0047】
職人技能試験装置1は、
図4に示すように、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、バス14、入出力インターフェース15、出力部16、入力部17、記憶部18、通信部19、及びドライブ20、を備えている。
【0048】
CPU11は、例えばROM12に記録されているプログラム、或いは/及び記憶部18に記録されているプログラムを実行し、各種の処理を実現させる。何れのプログラムも、RAM13にロードされて実行される。記憶部18からRAM13にロードされるプログラムには、例えばOS(Operating System)、及びそのOS上で動作する各種アプリケーション・プログラムが含まれる。各種アプリケーション・プログラムには、情報処理装置を職人技能試験装置1として機能させるために開発されたものが1つ以上、含まれる。以降、この開発されたアプリケーション・プログラムは、「開発アプリケーション」と表記する。
【0049】
RAM13には、CPU11が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。そのデータには、CPU11が実行する各種プログラムで用いられるものも含まれる。
【0050】
CPU11、ROM12及びRAM13は、バス14を介して相互に接続されている。このバス14にはまた、入出力インターフェース15も接続されている。入出力インターフェース15には、出力部16、入力部17、記憶部18、通信部19、及びドライブ20が接続されている。
【0051】
出力部16は、例えば液晶等のディスプレイを含む構成である。出力部16は、CPU11の制御により、各種画像、或いは各種画面を表示する。出力部16は、職人技能試験装置1に搭載されたものであっても良いが、必要に応じて接続されるものであっても良い。それにより、出力部16は、必須の構成要素ではない。
【0052】
入力部17は、例えばキーボード等の各種ハードウェア釦等を含む構成のものである。その構成には、マウス等のポインティングデバイスが1つ以上、含まれていても良い。操作者は、入力部17を介して各種情報を入力することができる。この入力部17も、職人技能試験装置1に搭載されたものであっても良いが、必要に応じて接続されるものであっても良い。それにより、入力部17も、必須の構成要素ではない。なお、操作者には、技能試験を実施する試験実施者が含まれる。
【0053】
記憶部18は、例えばハードディスク装置、或いはSSD(Solid State Drive)等の補助記憶装置である。データ量の大きいデータは、この記憶部18に記憶される。
通信部19は、例えば通信用の通信装置である。通信部19は、
図1に示すように、例えばマイク2、カメラ3、及びPC4等との間の直接的な通信を可能にさせる。PC4は、端末として用いることが可能な情報処理装置である。実際には、通信部19は、PC4以外の端末等との送信を可能にさせる。ここでは、PC4は、映像情報、或いは音情報の送信に用いられる情報処理装置の総称として用い、端末と区別することとする。
【0054】
なお、通信部19は、無線、或いは有線での通信を可能にする通信装置であっても良いが、有線、及び無線の両方での通信を可能にするものであっても良い。マイク2、カメラ3、或いはPC4との間の通信は、直接ではなく、間接的に行われても良い。これは、端末等であっても同様である。ここでは便宜的に、通信部19は、マイク2、カメラ3、及びPC4との間の通信を直接、行うのを可能にするものと想定する。
【0055】
ドライブ20は、例えば磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリカード等のリムーバブルメディア25が着脱可能な装置である。ドライブ20は、例えば装着されたリムーバブルメディア25からの情報の読み取り、及びリムーバブルメディア25への情報の書き込みが可能である。それにより、リムーバブルメディア25に記録されたプログラムは、ドライブ20を介して、記憶部18に記憶させることができる。また、ドライブ20に装着されたリムーバブルメディア25は、記憶部18に記憶されている各種データのコピー先、或いは移動先として用いることができる。
【0056】
開発アプリケーションは、情報処理装置を職人技能試験装置1として機能させることを想定し開発されたものである。この開発アプリケーションは、リムーバブルメディア25に記録させて配布しても良い。インターネット等のネットワークを介して配布可能にしても良い。このことから、開発アプリケーションを記録した記録媒体としては、インターネット等のネットワークに直接的、若しくは間接的に接続された情報処理装置に搭載、若しくは装着されたものか、或いは外部のアクセス可能な装置に搭載、若しくは装着されたものであっても良い。
【0057】
職人技能試験装置1が備えるハードウェア資源は、アプリケーション・プログラムを含む各種プログラムによって制御される。その結果、情報処理装置は、マイク2、カメラ3、或いはPC4等との通信を行い、必要な映像情報、或いは/及び、音情報を取得し、技能試験の結果を評価する職人技能試験装置1として機能する。
【0058】
図5は、本発明の情報処理装置の一実施形態に係る職人技能試験装置上に実現される機能的構成の一例を示す機能ブロック図である。次に
図5を参照しつつ、職人技能試験装置1上に実現される機能的構成の例について詳細に説明する。
【0059】
職人技能試験装置1のCPU11上には、機能的構成として、
図5に示すように、試験結果情報取得部111、設定部112、作業評価部113、加算時間換算部114、及び情報出力処理部115が実現される。そのCPU11は、通信部19を介して、マイク2、カメラ3、PC4、及び端末6等との間でデータの送受信を行い、映像情報、及び音情報を試験結果情報として取得することができる。
【0060】
マイク2、カメラ3、PC4、及び端末6等の何れも、ネットワークに接続されたものであっても良い。つまり、職人技能試験装置1は、ネットワークと接続され、そのネットワークを介して送信される映像情報、及び/或いは、音情報を用いて、技能試験の結果を評価するものであっても良い。
【0061】
CPU11上の機能的な構成要素は、開発アプリケーションを含む各種プログラムをCPU11が実行することにより実現される。その結果として、記憶部18には、試験結果情報格納部181、評価項目情報格納部182、減点対象情報格納部183、採点結果情報格納部184、及びベンチマーク情報格納部185が情報格納用に確保される。
【0062】
本実施形態では、被試験者である作業者SGに技能試験として実際に作業を行わせ、その作業の様子を動画撮影して得られる映像情報、或いは/及び、その作業時の録音によって得られる音情報を、試験結果情報として取得する。
図5に示すように、映像情報は、例えばカメラ3から直接に、或いはPC4を介して間接的に送信され、音情報は、例えばマイク2から直接に、或いはPC4を介して間接的に送信される。試験結果情報取得部111は、そのようにして送信され受信される映像情報、及び音情報を処理し、試験結果情報として、記憶部18に確保された試験結果情報格納部181に格納する。
【0063】
映像情報、及び音情報が職人技能試験装置1に送信させるタイミングは任意で良い。しかし、映像情報と音情報の時間上の対応関係は特定可能にする必要がある。例えば作業者SGが刷毛HKを使って塗り作業を行っている際に得られる映像情報は、その塗り作業を行っている際に得られる音情報に正確に対応づける必要がある。このことから、例えば動画撮影、及び音の録音は、同時に開始させるか、或いはリアルタイムに映像情報、及び音情報の送信を行わせるようにすることが考えられる。試験官SKにより、映像情報、及び音情報の送信を管理させ、映像情報中の位置と音情報中の位置との間の対応関係を特定可能にさせても良い。ここでは便宜的に、映像情報、及び音情報の送信は、技能試験の開始時に同時に開始されるものと想定する。なお、映像情報、及び音情報は、それぞれファイルの形で職人技能試験装置1に取得させても良い。
【0064】
技能試験自体は、複数、存在する。そのため、作業者SGに受けさせる技能試験を指定する必要がある。また、試験結果は、技能試験を受けた作業者SGに対応付ける必要がある。このことから、映像情報、及び音情報はともに、技能試験、及び作業者SGに対応付けられる。ここでは、映像情報、及び音情報の送信が開始される前に、技能試験の指定、及び作業者SGの氏名等の指定が行われるものと想定する。
【0065】
技能試験の対応付けでは、例えば技能試験の識別情報として試験ID(Identification)を用意し、この試験IDを対応付けることが考えられる。作業者SGの対応付けでは、氏名の他に、作業者SGに割り当てられた識別情報、例えば従業員ID、或いは社員ID等を対応付けることが考えられる。ここでは、試験結果情報として取得された映像情報、及び音情報に対し、試験ID、作業者氏名、更には試験実施日時(例えば技能試験開始日時)が対応付けられ、試験結果情報格納部181に格納されるものと想定する。
【0066】
設定部112は、端末6を用いた各種設定を可能にする。この端末6を操作する操作者としては、職人技能試験装置1を管理する立場の管理者、及び作業者SGを想定する。
技能試験では、上記のように、評価項目が設定され、評価項目毎に、その評価項目で不適切な作業と評価された場合に加算すべき加算時間が設定される。評価項目で不適切な作業か否かの評価が可能なように、不適切と評価すべき作業結果も設定される。これらの設定は、設定部112によって可能になる。記憶部18にそれぞれ確保された評価項目情報格納部182、及び減点対象情報格納部183への評価項目情報、及び減点対象情報の格納は、設定部112によって行われる。技能試験に用いることが可能なように、例えば評価項目情報、及び減点対象情報にはともに試験IDに対応付けられる。
【0067】
評価項目情報は、評価対象となる評価対象作業、及びその評価対象作業で評価の対象となる評価作業内容を表す。例えば養生作業では、養生作業自体が評価対象作業とされ、養生テープ片TYTH、或いはYTHを貼った状態は評価作業内容とされる。目地材の除去を伴う目地補修作業では、例えば目地材の除去作業、及び目地材の充填作業はともに評価対象作業とされ、目地材の除去状態、及び目地材の充填状態はともに評価作業内容とされる。塗り作業では、例えば塗り作業自体が評価対象作業とされ、塗りムラ、液だれはともに評価作業内容とされる。
また、道具の扱い方、姿勢、及び安全性の確保等も、評価作業内容とされる。
なお、これらは1例であり、評価対象作業、及び評価作業内容は、技能試験で想定される単位作業の内容に応じて設定すれば良いものであり、特に限定されない。
【0068】
減点対象情報は、例えば評価項目毎に、評価作業内容の適正条件、計数方法、及びその評価内容に応じて加算すべき加算時間を指定する。例えば養生作業では、養生テープ片TYTH、或いはYTHを貼った状態が評価作業内容とされた場合、養生テープ片TYTH、或いはYTHが貼られた位置のズレの許容範囲、曲がりの許容範囲、浮きの有無、等が適正条件として設定される。加算時間は、例えば適正条件全体で一つが設定されるか、或いは適正条件毎に設定される。
【0069】
ここでの適正条件全体とは、何れか1つ以上の適正条件が満たされない場合に、同じ加算時間を1つのみ加算させる設定である。適正条件毎とは、満たしていない適正条件に応じて、加算時間を加算させる設定である。1つでも満たされない適正条件が存在する場合に、養生テープ片TYTH、或いはYTHを全体的に貼り直す貼り直し作業をさせるという想定では、適正条件全体で1つの加算時間を設定すれば良い。これは、全ての適正条件の重要度を同じと見なしていることを意味する。適正条件によって重要度が異なる場合、つまり適正条件によって加算時間を異ならせる場合、適正条件毎に加算時間を設定する必要がある。貼り直し作業のような適正条件を満たすようにさせるために行われる作業は、以降「修正作業」と総称する。
【0070】
目地材の除去を伴う目地補修作業では、例えば目地材の除去状態、及び目地材の充填状態のそれぞれで許容範囲が適正条件として設定され、加算時間もそれぞれ設定される。目地材の除去が不適切であった場合、既に充填された目地材を取り除かなければならない。そのため、重要度は、目地材の除去状態で設定する適正条件のほうを高くし、加算時間をより長くさせるようにすれば良い。
【0071】
塗り作業では、例えば塗りムラ、及び液だれの各許容範囲がそれぞれ適正条件として設定される。液だれでは、液だれとなった部分の塗料を除去する作業も行う必要がある。そのため、重要度は、液だれで設定する適正条件のほうを高くし、加算時間をより長くさせるようにすれば良い。
【0072】
修正作業が行われる範囲は、通常、実際に適正条件を満たしていない箇所よりも大きい。例えば塗りムラでは、塗りムラが生じている箇所を含むより広い範囲が塗り直しされる。このことから、適正条件を満たさないとする箇所は、修正作業が行われる範囲を考慮して計数される。そのため、例えば細かい塗りムラが比較的に狭い範囲内に存在している場合、塗りムラが生じている箇所は1箇所とすれば良い。減点対象情報中の計数方法は、適正条件を満たさないとする箇所の計数の仕方、例えば1箇所と見なすべき範囲の大きさ、形状、或いは長さ等を指定する。
【0073】
道具の扱い方、姿勢、及び安全性の確保等は、例えば数を計数しない評価項目として評価される。例えば、道具の扱い方、例えば刷毛HKの扱い方では、技能試験の内容、或いは状況により、一時的に不適切と言える扱い方をせざるを得ない場合があり得る。このこともあり、道具の扱い方、及び姿勢等では、例えば技能試験の作業を行っている間、全体的に評価される。一方、安全性の確保では、例えば安全性が確保されないと見なす行動が1回でも確認できた場合、安全性の確保が行われていないと見なされる。安全性の確保は非常に重要であるから、加算時間は非常に長いものとするのが望ましい。
【0074】
上記評価項目情報、及び減点対象情報は、映像情報を想定したものである。評価項目情報、及び減点対象情報には、音情報を想定したものも登録可能である。
例えば刷毛HKを用いた塗り作業では、上記のように、熟練者はリズミカルな音が出るように刷毛HKを動かすことが多い。例えば塗装ローラTRを用いた塗り作業では、塗装ローラTRに含ませる塗料の量により、音の高さが変化する。このことから、塗り作業に用いる道具別に、評価項目情報、及び減点対象情報を用意し、音情報から作業者SGが適正条件を満たす作業を行っているか否かの評価を行うようにするのが望ましい。
【0075】
刷毛HKによる塗り作業では、熟練者であっても刷毛HKを常にリズミカルに動かさない。塗装ローラTRによる塗り作業では、塗装ローラTRを動かすことで塗料が塗り対象に塗られ、塗装ローラTRに含まれる塗料の量が変化する。そのため、常に適切な音が維持されるとは限らない。このようなことから、塗り作業では、作業全体を評価対象作業とし、適正条件を満たすか否かの評価を行うことが考えられる。
カメラ3で動画撮影が困難な箇所の塗り作業が含まれる技能試験では、音情報により適正条件を満たすか否かを評価する必要がある。このようなこともあり、音情報により技能試験の結果を評価できるようにするのが望ましい。
【0076】
設定部112は、端末6からの要求に対応し、評価項目情報の評価項目情報格納部182への格納、減点対象情報の減点対象情報格納部183への格納、それらの情報の削除を含む更新等を管理者が行うのを可能にする。それにより、職人技能試験装置1は、格納された評価項目情報、及び減点対象情報を用いて、実施された技能試験、つまり作業者SGが技能試験として実際に行った作業の内容を評価することができる。
【0077】
映像情報、及び音情報は、試験結果情報として、試験結果情報格納部181に格納される。作業評価部113は、評価項目情報、及び減点対象情報を参照し、試験結果情報を確認することにより、評価項目毎に、評価を行う。この評価を行う結果、評価項目毎に、適正条件を満たしているか否かが判定され、評価項目によっては、適正条件を満たしていない箇所の数が計数される。また、適正条件を満たしていない箇所を確認した時間的な位置を表す時間情報、及びその箇所が確認された映像上の位置を少なくとも表す位置情報の特定も行われる。この時間情報は、試験結果情報中の対応箇所を指定するものであれば良い。リアルタイムで試験結果情報が受信されるのであれば、現在時刻情報としても良い。
【0078】
作業評価部113は、評価項目毎の評価のために、作業者SGが行っている評価対象作業を認識する。その認識には、画像解析技術、及び音解析技術のうちの少なくとも一方が用いられる。技能試験は、1つ以上の評価対象作業である。作業評価部113は、評価対象作業の認識により、技能試験に要した時間の計時を行うことが可能である。その時間は以降「試験作業時間」と表記する。なお、この試験作業時間は、試験官SKに技能試験の開始、及びその終了を指示する操作をPC4等に行わせるようにし、それらの通知が行われる時間間隔を計時させるようにして、得られるものであっても良い。
【0079】
評価項目毎の適正条件を満たしているか否かの確認結果は、加算時間換算部114に渡される。設定項目によっては、適正条件を満たしていないと確認された箇所の計数結果、その箇所毎の時間情報、及び位置情報も加算時間換算部114に渡される。加算時間換算部114は、減点対象情報を参照し、評価項目毎、適正条件毎に、加算時間を決定する。それにより、適正条件に満たさない作業は、その作業を行ったことに伴う修正作業に必要と見なす加算時間か、或いはその作業内容に応じた加算時間に換算される形で減点される。道具の扱い方、姿勢、及び安全性の確保等が適正条件に満たされない場合、作業内容に応じた加算時間に換算されることになる。
実際の作業では、作業後に後片付け、例えばゴミ等を除去する掃除、道具の片付け等を行う必要がある。そのような作業後の後片付けも、評価項目とし、不適切な後片付けを作業者SGが行った場合に、作業内容に応じた加算時間を換算するようにしても良い。
【0080】
加算時間換算部114は、このようにして得られる加算時間を、例えば評価項目毎に、適正条件、時間情報、及び位置情報とともに採点結果情報として、記憶部18に確保された採点結果情報格納部184に格納させる。この採点結果情報は、試験ID、作業者SGの氏名、及び試験実施日時等と対応付けられる。
【0081】
時間情報、及び位置情報は、作業者SGが評価項目の評価により不適切とされる評価対象作業、及びその作業が行われた箇所(部位)を表す情報である。このような時間情報、及び位置情報を評価項目毎に保存することにより、作業者SGは、試験結果情報から、自身が行った不適切な評価対象作業、及びその作業が行われた箇所を試験結果情報の再生時に容易に確認できるようになる。このような確認を容易に行えるようにすることは、作業者SGが自身のスキルをより効率的に向上させることができるようにするうえで有用である。なお、実際には、例えば不適切とされた評価項目、或いは評価項目毎の時間情報、若しくは位置情報を提示し、提示した評価項目、或いは時間情報、若しくは位置情報を指定させることが考えられる。それにより、指定された評価項目、或いは時間情報、若しくは位置情報に対応する位置から、試験結果情報を再生させるようにしても良い。或いは試験結果情報の再生中に、不適切とされた作業、或いは評価項目についての通知を自動的に行わせるようにしても良い。
【0082】
スキルが未熟な作業者SGにとっては、熟練者が行う作業は参考になる。このことから、本実施形態では、同じ技能試験を熟練者が行った際の動画撮影、及び録音によって得られる映像情報、及び音情報をベンチマーク情報として登録し、作業者SGが確認するのを可能にしている。設定部112は、端末6からの要求により、例えば端末6から送信されるベンチマーク情報を、記憶部18に確保されたベンチマーク情報格納部185に格納することが可能である。ベンチマーク情報格納部185に格納されるベンチマーク情報には、対応する技能試験の試験IDが対応付けられる。
【0083】
情報出力処理部115は、端末6から要求された、或いは要求により必要となった情報を端末6に出力(送信)させるための処理を行う。
例えば作業者SGは、自身が技能試験を行っている際の様子を確認するために、試験結果情報の送信(再生)を要求することができる。試験結果情報は、上記のように、試験ID、氏名、及び試験実施日時により指定するのが可能である。また、時間情報、及び位置情報の保存により、再生される映像中、或いは音中で、適正条件を満たしていないとされた作業、及びその作業が行われた箇所を確認可能な形態で表すことができる。例えば
図2に破線で示す楕円、或いは円を映像中に、適正条件を満たしていない箇所(部位)を囲むように配置させるようなことも行える。ベンチマーク情報の再生、及び試験結果情報とベンチマーク情報の比較可能な形態での再生も行わせることができる。
【0084】
試験ID、氏名、及び試験実施日時は、技能試験の結果の指定が可能である。試験ID、氏名、及び試験実施日時の指定により、作業者SGを含む関係者は、その作業者SGが受けた技能試験の結果を確認することができる。ベンチマーク情報は、試験IDにより指定することができる。
情報出力処理部115は、端末6からの要求により、その要求で指定された情報を出力させるための処理を行う。
【0085】
図6は、試験結果情報、及びベンチマーク情報の再生画面の例を説明する図である。この再生画面は、試験結果情報とベンチマーク情報の比較可能な形態での再生を可能にする画面の例である。
再生画面には、
図6に示すように、2つの再生エリアSA1、及びSA2が並べた形で配置されている。再生エリアSA1は、例えば試験結果情報の再生用であり、再生エリアSA2は、ベンチマーク情報の再生用である。
【0086】
各再生エリアSA1、及びSA2の下方には、それぞれ、早戻しボタンRB、再生ボタンSB、停止ボタンPB、及び早送りボタンFBが配置されている。それにより、試験結果情報、及びベンチマーク情報は、同時に再生させるだけでなく、個別に再生させることが可能となっている。個別に再生させるのを可能にさせたのは、作業者SGと、熟練者とでは、作業スピードが異なるのが普通だからである。個別に再生させるのを可能にすることにより、同じ評価対象作業を行っている際の作業者SG、及び熟練者の作業内容の比較を容易に行えるようになる。
【0087】
その比較をより容易に行えるように、例えば不適切とされた評価項目、或いは評価項目毎の時間情報、若しくは位置情報をリンクボタンとして、再生画面の左側のスペースに配置するようにしても良い。評価項目単位での比較をより容易に行えるように、ベンチマーク情報では、評価項目毎に、時間情報、及び位置情報を付加するようにすることが望ましい。時間情報、及び位置情報をベンチマーク情報に付加することにより、試験結果情報とベンチマーク情報との対比が、不適切とされた評価項目単位でより容易に行えるようになる。
【0088】
なお、再生画面の例は、
図6に示すようなものに限定されない。例えば試験結果情報が音情報のみであった場合、再生位置を表すとともに、再生位置の指定が可能な再生エリアを1つのみ配置させ、ボタンとして、再生対象を試験結果情報、及びベンチマーク情報のうちから選択するための選択ボタンを配置させるようにしても良い。また、再生箇所の指定については、評価対象作業単位で行えるようにしても良い。このようなことを含め、再生画面の構成、及び搭載させる機能等は、各種変形が可能である。
【0089】
図5に例を示す機能的構成において、作業評価部113は、本実施形態における作業評価手段に相当する。加算時間換算部114は、本実施形態における加算時間加算手段に相当する。情報出力処理部115は、本実施形態における評価部位出力手段、及びベンチマーク情報出力手段に相当する。
【0090】
本実施形態では、技能試験の対象となる単位作業の例として、塗装作業に係わるものを挙げているが、技能試験の対象となる単位作業は、特に限定されない。つまり、映像、或いは音により技能試験の結果を評価できる単位作業は、技能試験の対象としても良い。材料を加工する加工作業、部材の取付作業、屋根の葺き替え作業等を技能試験の対象としても良い。
【0091】
本実施形態では、評価項目の作業が適切に行われたか否かを確認することで評価するようにしているが、評価は、そのような2値的なものに限定されない。つまりより多段階で評価するようにして、換算する加算時間も2以上とさせても良い。例えば塗り作業における液だれでは、その液だれが生じている範囲、その程度等から、多段階評価を行うようにしても良い。そのようにした場合、作業者SGのスキルをより高精度に評価することが可能になる。
【0092】
評価項目については、同じ技能試験であっても、着目する対象により、評価項目を複数のグループに分け、各評価項目を1つ以上のグループに属するようにさせても良い。つまり、そのようなグループ化を行い、作業者SG等が確認可能な評価項目の評価結果を制限できるようにしても良い。これは、的を絞った形で作業者SGのスキル、作業内容等を確認できるようにするうえで有用である。
【0093】
熟練者は、例えば刷毛HKを使う塗り作業では、リズミカルな音を発生させる。塗装ローラTRを使う塗り作業では、塗料を塗装ローラTRに含ませる量に応じて、発生する音の高さ等が変化する。このことから、熟練者が塗り作業により発生させる音は、作業者SGにとって、自身が塗り作業を行った際に発生させるべき目標となる音であるとともに、自身が塗り作業を適切に行っているか否かを判断するうえでの材料となり得る。そのため、ベンチマーク情報の再生は、内容が不適切とされた作業を作業者SGに改善させるための情報提供として行うようにしても良い。
【0094】
この情報提供は、技能試験の結果から、より作業を適切に行うように作業者SGを支援するために、自動的に行うようにしても良い。その情報提供とともに、作業者SGへの注意事項、或いはアドバイスをメッセージとして、或いは音声として更に自動的に出力させるようにしても良い。これは、ベンチマーク情報に評価項目毎の時間情報、及び位置情報を付加させる場合、例えば評価項目毎に、メッセージ、或いは音声を出力するための情報を用意することにより、行うことができる。
【符号の説明】
【0095】
1 情報処理装置(職人技能試験装置)、2 マイク、3 カメラ、4 PC、6 端末、11 CPU、18 記憶部、19 通信部、111 試験結果情報取得部、112 設定部、113 作業評価部、114 加算時間換算部、115 情報出力処理、181 試験結果情報格納部、182 評価項目情報格納部、183 減点対象情報格納部、184 採点結果情報格納部、185 ベンチマーク情報格納部、SG 作業者。