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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114406
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/12 20200101AFI20240816BHJP
   G01R 31/52 20200101ALI20240816BHJP
   G01R 27/02 20060101ALI20240816BHJP
   G01R 31/56 20200101ALI20240816BHJP
【FI】
G01R31/12
G01R31/52
G01R27/02 R
G01R31/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020157
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100176371
【弁理士】
【氏名又は名称】笹田 健
(72)【発明者】
【氏名】北澤 正美
(72)【発明者】
【氏名】村上 貴浩
(72)【発明者】
【氏名】中村 洋一
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 裕徳
【テーマコード(参考)】
2G014
2G015
2G028
【Fターム(参考)】
2G014AA03
2G014AA17
2G014AA33
2G014AB01
2G014AC02
2G014AC18
2G015AA06
2G015CA01
2G015CA04
2G028CG03
2G028DH03
2G028FK01
2G028GL07
2G028GL09
2G028JP03
2G028LR02
2G028LR09
(57)【要約】
【課題】より使い易い試験装置を低コストで提供する。
【解決手段】試験装置10において、制御回路3は、電圧測定部4による電圧の測定値の時間的な変化と電流測定部5による電流の測定値の時間的な変化に基づいて、試験対象物11の絶縁抵抗の値の時間的な変化を算出する算出部32と、電圧測定部4による電圧の測定値の時間的な変化を示す波形、電流測定部5による電流の測定値の時間的な変化を示す波形、および絶縁抵抗の値の時間的な変化を示す波形の少なくとも一つを含む波形データ38を生成し、記憶部36に記憶する波形データ生成部33と、波形データ38に基づいて、絶縁抵抗の値が閾値を超えているか否かの判定と漏れ電流の値が閾値を超えているか否かの判定の少なくとも一方を行う判定部34と、を含むことを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1外部端子および第2外部端子と、
操作入力部と、
試験開始の指示が前記操作入力部に入力された場合に、前記第1外部端子と前記第2外部端子との間に試験電圧を出力する電圧生成回路と、
前記第1外部端子と前記第2外部端子との間の電圧を測定する電圧測定部と、
前記第1外部端子と前記第2外部端子との間に接続された試験対象物の電流を測定する電流測定部と、
前記電圧測定部による電圧の測定値と前記電流測定部による電流の測定値とに基づいて演算を行う制御回路と、
情報を表示する表示部と、を備え、
前記制御回路は、
記憶部と、
前記電圧測定部による電圧の測定値の時間的な変化と前記電流測定部による電流の測定値の時間的な変化に基づいて、前記試験対象物の絶縁抵抗の値の時間的な変化を算出する算出部と、
前記電圧測定部による電圧の測定値の時間的な変化を示す波形、前記電流測定部による電流の測定値の時間的な変化を示す波形、および前記絶縁抵抗の値の時間的な変化を示す波形の少なくとも一つを含む波形データを生成し、前記記憶部に記憶する波形データ生成部と、
前記波形データに基づいて、前記絶縁抵抗の値が閾値を超えているか否かの判定と漏れ電流の値が閾値を超えているか否かの判定の少なくとも一方を行う判定部と、を含む
試験装置。
【請求項2】
請求項1に記載の試験装置において、
前記判定部は、前記第1外部端子と前記第2外部端子との間に前記試験電圧を印加しているときの前記電圧測定部による電圧の測定値の変動および前記電流測定部による電流の測定値の変動の少なくとも一方を検出し、検出結果に基づいて放電の有無を判定する
試験装置。
【請求項3】
請求項2に記載の試験装置において、
前記判定部は、前記第1外部端子と前記第2外部端子との間に前記試験電圧を印加しているときの前記電圧測定部による電圧の測定値の時間的な変化を示す波形の変動幅が許容変動範囲を超えた場合に、放電が発生したと判定する
試験装置。
【請求項4】
請求項3に記載の試験装置において、
前記記憶部には、前記許容変動範囲を指定する情報が記憶され、
前記許容変動範囲を指定する情報は、前記操作入力部を介して設定可能である
試験装置。
【請求項5】
請求項3に記載の試験装置において、
前記判定部によって放電が発生したと判定した場合に、前記表示部は、前記放電が発生したことを示す情報を表示する
試験装置。
【請求項6】
請求項5に記載の試験装置において、
放電が発生したことを示す情報は、前記電圧の測定値の時間的な変化を示す波形および前記電流測定部による電流の測定値の時間的な変化を示す波形の少なくとも一方の変動幅が前記許容変動範囲を超えた時点の前後の範囲の波形を含む
試験装置。
【請求項7】
請求項3に記載の試験装置において、
前記記憶部には、試験の停止条件を指定する停止条件情報が記憶され、
前記停止条件情報として第1値または前記第1値と異なる第2値が前記操作入力部を介して設定可能であり、
前記電圧生成回路は、前記判定部によって放電が発生したと判定したとき、前記停止条件情報として前記第1値が設定されている場合には、前記第1外部端子と前記第2外部端子との間への前記試験電圧の出力を継続し、前記停止条件情報として前記第2値が設定されている場合には、前記第1外部端子と前記第2外部端子との間への前記試験電圧の出力を停止する
試験装置。
【請求項8】
請求項1に記載の試験装置において、
前記記憶部には、前記表示部に情報をするための条件を指定する表示条件情報が記憶され、
前記表示条件情報は、前記操作入力部を介して設定可能であり、
前記表示部は、前記表示条件情報として設定された条件を満足した場合に、前記波形データに含まれる波形を表示する
試験装置。
【請求項9】
請求項1に記載の試験装置において、
前記制御回路は、前記記憶部に記憶されている前記波形データに含まれる波形を前記表示部に表示させる表示制御部を更に含む
試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験装置に関し、例えば、電気機器等の安全性評価に用いられる試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気機器、電子部品、およびバッテリ等の出荷前には、感電や火災等に対する安全性能を評価するために、耐電圧試験および絶縁抵抗試験が行われる。耐電圧試験は、試験対象物(以下、「DUT:Device Under Test」とも称する。)の絶縁部分に高電圧を規定された時間だけ印加したときに閾値以上の漏れ電流(放電電流)が流れるか否か否かを判定する試験である。絶縁抵抗試験は、DUTの絶縁部分に高電圧を印加したときの当該絶縁部分の絶縁抵抗の値が基準値(閾値)以上であるか否かを判定する試験である。これらの試験方法や基準値(閾値)等は、IEC規格、UL規格、電気用品取締法などの各種安全規格により、定められている。
【0003】
上述した耐電圧試験と絶縁抵抗試験を行うための試験装置として、耐電圧試験器が知られている。従来の耐電圧試験器の多くは、DUTに高電圧を印加したときにDUTに流れる電流を測定し、その測定値を用いて各種演算を行うことにより、漏れ電流の値が基準値以上であるか否かを判定し、判定結果を画面に表示している(特許文献1,2,3等参照)。また、従来の耐電圧試験器の多くは、放電の発生の有無を検出するための専用回路を搭載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-90495号公報
【特許文献2】特開2007-101194号公報
【特許文献3】特開2005-315759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、耐電圧試験および絶縁抵抗試験において、良否の判定結果のみならず、DUTの電圧および電流等の物理量(電気的特性)の時間的な変化を知りたいというニーズがある。例えば、従来の耐電圧試験器を用いてDUTの電圧や電流の時間的な変化を測定する場合には、ユーザは、耐電圧試験器とは別に、高電圧に対応したプローブやオシロスコープを用意し、DUTに接続する必要があった。また、上述したように、放電の発生の有無を判定するために、専用回路が必要であり、コストの増大を招いていた。
【0006】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、より使い易い試験装置を低コストで提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の代表的な実施の形態に係る試験装置は、第1外部端子および第2外部端子と、操作入力部と、試験開始の指示が前記操作入力部に入力された場合に、前記第1外部端子と前記第2外部端子との間に試験電圧を出力する電圧生成回路と、前記第1外部端子と前記第2外部端子との間の電圧を測定する電圧測定部と、前記第1外部端子と前記第2外部端子との間に接続された試験対象物の電流を測定する電流測定部と、前記電圧測定部による電圧の測定値と前記電流測定部による電流の測定値とに基づいて演算を行う制御回路と、情報を表示する表示部と、を備え、制御回路は、記憶部と、前記電圧測定部による電圧の測定値の時間的な変化と前記電流測定部による電流の測定値の時間的な変化に基づいて、前記試験対象物の絶縁抵抗の値の時間的な変化を算出する算出部と、前記電圧測定部による電圧の測定値の時間的な変化を示す波形、前記電流測定部による電流の測定値の時間的な変化を示す波形、および前記絶縁抵抗の値の時間的な変化を示す波形の少なくとも一つを含む波形データを生成し、前記記憶部に記憶する波形データ生成部と、前記波形データに基づいて、前記絶縁抵抗の値が基準値を超えているか否かの判定と漏れ電流の値が閾値を超えているか否かの判定の少なくとも一方を行う判定部と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る試験装置によれば、より使い易い試験装置を低コストで提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態に係る試験装置の外観を模式的に示す図である。
図2】実施の形態に係る試験装置の構成の一例を示す図である。
図3】表示部に表示される情報の一例を示す図である。
図4】表示部に表示される情報の別の一例を示す図である。
図5】耐電圧試験においてDUTに漏れ電流(放電電流)が発生したときの電圧波形および電流波形の一例を示す図である。
図6】実施の形態に係る試験装置による処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0011】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係る試験装置(10)は、第1外部端子(T1)および第2外部端子(T2)と、操作入力部(1)と、試験開始の指示が前記操作入力部に入力された場合に、前記第1外部端子と前記第2外部端子との間に試験電圧を出力する電圧生成回路(2)と、前記第1外部端子と前記第2外部端子との間の電圧を測定する電圧測定部(4)と、前記第1外部端子と前記第2外部端子との間に接続された試験対象物の電流を測定する電流測定部(5)と、前記電圧測定部による電圧の測定値と前記電流測定部による電流の測定値とに基づいて演算を行う制御回路(3)と、情報を表示する表示部(6)と、を備え、前記制御回路は、記憶部(36)と、前記電圧測定部による電圧の測定値の時間的な変化と前記電流測定部による電流の測定値の時間的な変化に基づいて、前記試験対象物の絶縁抵抗の値の時間的な変化を算出する算出部(32)と、前記電圧測定部による電圧の測定値の時間的な変化を示す波形(電圧波形)、前記電流測定部による電流の測定値の時間的な変化を示す波形(電流波形)、および前記絶縁抵抗の値の時間的な変化を示す波形(絶縁抵抗波形)の少なくとも一つを含む波形データ(38)を生成し、前記記憶部に記憶する波形データ生成部(33)と、前記波形データに基づいて、前記絶縁抵抗の値が閾値を超えているか否かの判定と漏れ電流の値が閾値を超えているか否かの判定の少なくとも一方を行う判定部(34)とを含むことを特徴とする。
【0012】
〔2〕上記〔1〕に記載の試験装置において、前記判定部は、前記第1外部端子と前記第2外部端子との間に前記試験電圧を印加しているときの前記電圧測定部による電圧の測定値の変動および前記電流測定部による電流の測定値の変動の少なくとも一方を検出し、検出結果に基づいて放電の有無を判定してもよい。
【0013】
〔3〕上記〔2〕に記載の試験装置において、前記判定部は、前記第1外部端子と前記第2外部端子との間に前記試験電圧を印加しているときの前記電圧測定部による電圧の測定値の時間的な変化を示す波形の変動幅が許容変動範囲を超えた場合に、放電が発生したと判定してもよい。
【0014】
〔4〕上記〔3〕に記載の試験装置において、前記記憶部には、前記許容変動範囲を指定する情報(40)が記憶され、前記許容変動範囲を指定する情報は、前記操作入力部を介して設定可能であってもよい。
【0015】
〔5〕上記〔3〕または〔4〕に記載の試験装置において、前記判定部によって放電が発生したと判定した場合に、前記表示部は、放電が発生したことを示す情報(640,641,612,613)を表示してもよい。
【0016】
〔6〕上記〔5〕に記載の試験装置において、放電が発生したことを示す情報は、前記電圧の測定値の時間的な変化を示す波形(640)および前記電流測定部による電流の測定値の時間的な変化を示す波形(641)の少なくとも一方の変動幅が前記許容変動範囲を超えた時点の前後の範囲の波形を含んでもよい。
【0017】
〔7〕上記〔3〕乃至〔6〕の何れか一つに記載の試験装置において、前記記憶部には、試験の停止条件を指定する停止条件情報(42)が記憶され、前記停止条件情報として第1値(“1”)または前記第1値と異なる第2値(“0”)が前記操作入力部を介して設定可能であり、前記電圧生成回路は、前記判定部によって放電が発生したと判定したとき、前記停止条件情報として前記第1値が設定されている場合には、前記第1外部端子と前記第2外部端子との間への前記試験電圧の出力を継続し、前記停止条件情報として前記第2値が設定されている場合には、前記第1外部端子と前記第2外部端子との間への前記試験電圧の出力を停止してもよい。
【0018】
〔8〕上記〔1〕乃至〔7〕の何れか一つに記載の試験装置において、前記記憶部には、前記表示部に情報をするための条件を指定する表示条件情報(43)が記憶され、前記表示条件情報は、前記操作入力部を介して設定可能であり、前記表示部は、前記表示条件情報として設定された条件を満足した場合に、前記波形データに含まれる波形を表示してもよい。
【0019】
〔9〕上記〔1〕乃至〔8〕の何れか一つに記載の試験装置において、前記制御回路は、前記記憶部に記憶されている前記波形データに含まれる波形を前記表示部に表示させる表示制御部(35)を更に含んでいてもよい。
【0020】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0021】
図1は、実施の形態に係る試験装置10の外観を模式的に示す図である。
【0022】
図1に示す試験装置10は、電気機器等の安全性評価の試験に用いることが可能な装置であって、例えば、耐電圧試験および絶縁抵抗試験を行うことが可能な装置である。
【0023】
図1に示すように、試験装置10は、外部端子T1,T2と、操作入力部1と、表示部6とを有している。試験装置10は、外部端子T1と外部端子T2との間に配線を介して接続された試験対象物(DUT)11に電圧を印加したときにDUT11に流れる電流等を測定することにより、DUT11の絶縁抵抗値の測定と放電の発生を検出し、耐電圧試験または絶縁抵抗試験に基づく基準を満たしているか否かを判定する判定機能を有している。更に、試験装置10は、上記判定機能に加え、測定した電圧、電流、および絶縁抵抗値等の物理量(電気的特性)の時間的な変化を示す波形を表示部6に表示する波形表示機能を有している。
【0024】
図2は、実施の形態に係る試験装置10の構成の一例を示す図である。
【0025】
試験装置10は、上述した機能を実現するための構成として、例えば、図2に示すように、外部端子T1,T2、操作入力部1、電圧生成回路2、制御回路3、電圧測定部4、電流測定部5、および表示部6を有している。
【0026】
外部端子T1,T2は、試験対象物(DUT)11を接続するための端子である。例えば、外部端子T1には、配線を介してDUT11の試験対象部に接続され、外部端子T2には、配線を介してDUT11の別の試験対象部に接続される。
【0027】
電圧生成回路2は、外部端子T1,T2間に接続されたDUT11に対して所望の電圧を印加するための回路である。以下、耐電圧試験時および絶縁抵抗試験時に電圧生成回路2から出力される電圧を「試験電圧」とも称する。
【0028】
電圧生成回路2は、試験電圧を生成し、外部端子T1と外部端子T2との間に出力する。電圧生成回路2は、例えば、商用電源(AC)から供給された交流電圧を直流電圧に変換して出力するPWMアンプ(不図示)と、PWMアンプから出力された直流電圧に基づいて、指定された電圧指令値に応じた直流電圧を生成し、試験電圧として外部端子T1と外部端子T2との間に出力する高電圧生成回路(不図示)と、を有している。
【0029】
試験装置10がDUT11の耐電圧試験または絶縁抵抗試験を行うとき、電圧生成回路2は、例えば、後述する試験条件情報39によって指定された立ち上がり時間で、試験電圧を試験条件情報39によって指定された電圧指令値まで変化させるとともに、電圧指令値に基づく一定の試験電圧を試験条件情報39によって指定された試験時間だけ印加する。
【0030】
操作入力部1は、試験装置10に対する操作を受け付ける機能部である。操作入力部1は、例えば、ユーザによる試験装置10への操作を受け付ける操作ボタンやタッチパネル等の公知の入力インターフェース装置である(図1参照)。操作入力部1は、入力された操作に応じた信号を制御回路3に与える。
【0031】
なお、操作入力部1には、外部の機器と公知の有線通信または無線通信によってデータの送受信を行う通信装置が含まれていてもよい。例えば、操作入力部1は、試験装置10と有線または無線のネットワークによって接続された情報処理装置(例えば、PCやタブレット端末等)から送信された信号(データ)を受信し、受信した信号を制御回路3に与えてもよい。
【0032】
表示部6は、ユーザに対して各種情報を提示するための機能部である。表示部6は、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の表示装置によって実現されている。表示部6は、例えば、試験条件と、電圧、電流、および絶縁抵抗値等の測定値と、電圧、電流、および絶縁抵抗値等の時間的な変化を示す波形と、耐電圧試験および絶縁抵抗試験における判定結果等の情報とを組み合わせて、または選択的に画面に表示する。
【0033】
電圧測定部4は、外部端子T1と外部端子T2との間の電圧(端子間電圧)Vを測定する機能部である。電圧測定部4による電圧Vの測定値は、後述する制御回路3の記憶部36に記憶される。
【0034】
具体的に、電圧測定部4は、電圧Vを所定のサンプリング周期でサンプリングすることにより、電圧Vの測定値を取得する。電圧測定部4は、例えば、外部端子T1と外部端子T2との間の電圧Vを分圧する抵抗分圧回路(不図示)と、抵抗分圧回路によって分圧された電圧を所定のサンプリング周期でデジタル信号に変換するA/D変換回路(不図示)と、を含んで構成されている。
【0035】
電圧測定部4において、例えば、A/D変換回路が抵抗分圧回路によって分圧された電圧を所定のサンプリング周期でサンプリングし、サンプリングした値(サンプリングデータ)を測定時刻の情報と組み合わせて、電圧Vの測定値(電圧測定値)の時系列データとして制御回路3に与える。なお、サンプリング周期は、例えば、予め試験装置10に設定されていてもよいし、ユーザが操作入力部1を操作することによって設定してもよい。あるいは、外部装置が有線通信または無線通信によって操作入力部1(通信装置)を介して設定してもよい。
【0036】
電流測定部5は、外部端子T1と外部端子T2との間に接続されたDUT11に流れる電流Iを測定する機能部である。電流測定部5による電流Iの測定値は、後述する制御回路3の記憶部36に記憶される。
【0037】
具体的に、電流測定部5は、電流Iを所定のサンプリング周期でサンプリングすることにより、電流Iの測定値を取得する。電流測定部5は、例えば、DUT11と直列に接続された電流検出部としての抵抗回路(不図示)と、抵抗回路に電流が流れることによって抵抗回路に発生する電圧を所定のサンプリング周期でデジタル信号に変換するA/D変換回路(不図示)と、を含んで構成されている。上記抵抗回路は、例えば、シャント抵抗を含む。
【0038】
電流測定部5において、例えば、A/D変換回路が抵抗回路によって発生した電圧を所定のサンプリング周期でサンプリングし、サンプリングした値(サンプリングデータ)を測定時刻の情報と組み合わせて、電流Iの測定値(電流測定値)の時系列データとして制御回路3に与える。なお、電流測定部5のサンプリング周期は、例えば、上述した電圧測定部4のサンプリング周期と同様に、予め試験装置10に設定されていてもよいし、ユーザ等が操作入力部1を操作することによって設定してもよい。
【0039】
制御回路3は、試験装置10の統括的な制御および各種演算を行う。制御回路3は、例えば、CPU等のプロセッサと、RAM、ROM等の各種記憶装置と、カウンタ(タイマ)、A/D変換回路、D/A変換回路、クロック発生回路、および入出力インターフェース回路等の周辺回路とがバスや専用線を介して互いに接続された構成を有するマイクロコントローラ(MCU:Micro Controller Unit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラム処理装置によって実現されている。
【0040】
図2に示すように、制御回路3は、各種制御および演算を実現するための機能ブロックとして、指示受付部31、算出部32、波形データ生成部33、判定部34、表示制御部35、および記憶部36を有する。これらの機能ブロックは、例えば、上述したプログラム処理装置において、プロセッサがメモリに記憶されているプログラムに従って各種演算を実行し、その演算結果に基づいて上記周辺回路を制御することによって実現される。
【0041】
指示受付部31は、操作入力部1を介して入力された指示を受け付ける。例えば、指示受付部31は、操作入力部1を介して、試験開始の指示(耐電圧試験および絶縁抵抗試験の実行の指示)を受け付ける。指示受付部31は、上記指示とともに、または上記指示とは別に、操作入力部1を介して、耐電圧試験および絶縁抵抗試験における試験条件に関する試験条件情報39、停止条件情報42、および表示条件情報43の少なくとも一つを受け付けて、記憶部36に設定する。なお、試験条件情報39、停止条件情報42、および表示条件情報43の詳細については後述する。
【0042】
指示受付部31は、試験開始の指示を受け付けた場合に、各機能部に対して、試験に係る動作(処理)の開始を指示する。例えば、指示受付部31は、電圧生成回路2に対して電圧の出力を指示するとともに、電圧測定部4および電流測定部5に対して電圧および電流の測定の開始を指示する。更に、指示受付部31は、波形データ生成部33、判定部34、および表示制御部35に対して処理の開始を指示する。
【0043】
記憶部36は、試験装置10が耐電圧試験および絶縁抵抗試験を行うためのプログラムや各種パラメータ、試験結果等を記憶するための機能部である。記憶部8には、例えば、時系列データ37、波形データ38、試験条件情報39、停止条件情報42、および表示条件情報43が記憶される。
【0044】
時系列データ37は、耐電圧試験および絶縁抵抗試験において測定されたDUT11の電気的特性の測定値の単位時間毎のデータである。例えば、電圧測定部4による電圧の測定値(電圧測定値)、電流測定部5による電流の測定値(電流測定値)、および絶縁抵抗値の少なくとも一つの測定値と、その測定値の測定時刻の情報とが組み合わされたデータ対が時系列データ37として記憶される。
【0045】
波形データ38は、耐電圧試験および絶縁抵抗試験において測定されたDUT11の電気的特性の測定値の時間的な変化を示すデータである。例えば、電圧測定部4による電圧の測定値の時間的な変化を示す波形、電流測定部5による電流の測定値の時間的な変化を示す波形、および絶縁抵抗値の時間的な変化を示す波形の少なくとも一つが含まれる。
【0046】
試験条件情報39は、試験条件を指定する情報である。試験条件には、例えば、DUTに印加する試験電圧の電圧指令値(最大値)、DUTに印加する試験電圧の立ち上がり時間td、一定の試験電圧を印加し続ける時間(試験時間)、および電圧測定部4および電流測定部5によるサンプリング周波数等の情報が含まれる。なお、指定される試験時間は、試験電圧の立ち上がり時間を含んだ時間であってもよいし、試験電圧の立ち上がり時間を含まない一定の試験電圧を印加する時間であってもよい。
【0047】
更に、試験条件情報39には、耐電圧試験および絶縁抵抗試験の異常判定の判定基準の情報が含まれる。耐電圧試験の異常判定の判定基準の情報には、放電の発生の有無を判定するための情報として、例えば、電圧または電流の測定値の変動幅の許容変動範囲Xを示す許容変動範囲情報40が含まれる。また、絶縁抵抗試験の良否判定の基準となる情報には、絶縁抵抗値の下限の閾値を示す絶縁抵抗閾値情報41が含まれる。
【0048】
停止条件情報42は、試験中にDUT11の電気的特性の測定値が所定の条件を満足した場合に試験を停止するか否かを指定する情報である。ここで、試験の停止とは、電圧生成回路2からの電圧の出力とDUT11の電気的特性の測定を停止することを意味する。また、所定の条件とは、例えば、耐電圧試験において放電が発生したこと、絶縁抵抗試験において絶縁抵抗値が閾値より低下したこと等である。
【0049】
停止条件情報42として、例えば、第1値、または第1値とは異なる第2値が設定される。第1値および第2値は、例えば、2値論理の値である。例えば、第1値は“1”であり、第2値は“0”である。例えば、第1値(1)は、試験中にDUT11の電気的特性の測定値が所定の条件を満足した場合に試験を停止することを示し、第2値(0)は、試験中にDUT11の電気的特性の測定値が所定の条件を満足した場合でも試験を継続することを示す。
【0050】
表示条件情報43は、試験中に当該試験に係る情報を表示部6に表示するための表示条件を指定する情報である。表示条件としては、“試験の終了条件を満足したこと”(設定された試験時間を経過したこと等)、および“試験において異常を検出したこと”を例示することができる。ここで、“試験において異常を検出したこと”は、例えば、耐電圧試験において放電の発生を検出したこと、絶縁抵抗試験において絶縁抵抗値が閾値より低下したこと等を例示することができる。
【0051】
更に、表示条件として、例えば、“試験を開始してから一定期間経過したこと”、“試験時間の終了直前の所定の時刻に到達したこと”、“測定値が異常判定の閾値に近づいたこと(例えば、測定値が閾値の80%に到達したこと)”、および“操作入力部1を介して表示部6に情報表示の指示が入力されたこと”が設定されてもよい。
【0052】
上述した試験条件情報39、停止条件情報42、および表示条件情報43は、操作入力部1を介して記憶部36に設定可能である。
【0053】
算出部32は、絶縁抵抗試験における絶縁抵抗値の算出を行う機能部である。具体的には、算出部32は、電圧測定部4による電圧の測定値の時間的な変化と電流測定部5による電流の測定値の時間的な変化とに基づいて、DUT11の絶縁抵抗の値の時間的な変化を算出する。
【0054】
例えば、絶縁抵抗試験において、算出部32は、単位時間毎に、電圧測定部4による電圧の測定値を電流測定部5による電流の測定値によって除算することにより、単位時間毎のDUT11の絶縁抵抗値を算出し、時系列データ37として記憶部36に記憶する。なお、算出部32は、耐電圧試験においても絶縁抵抗値を算出してもよい。
【0055】
波形データ生成部33は、波形データ38を生成する機能部である。波形データ生成部33は、電圧測定部4による電圧の測定値の時間的な変化を示す波形(電圧波形)、電流測定部5による電流の測定値の時間的な変化を示す波形(電流波形)、および絶縁抵抗の値の時間的な変化を示す波形(絶縁抵抗波形)の少なくとも一つを含む波形データ38を生成し、記憶部36に記憶する。
【0056】
例えば、波形データ生成部33は、時系列データ37として記憶部36に記憶されている電圧測定値とその電圧測定値の測定時刻とを一組とするデータ対を単位時間毎に時間軸に沿って並べて電圧波形を生成し、波形データ38として記憶部36に記憶する。波形データ生成部33は、時系列データ37として記憶部36に記憶されている電流測定値と当該電流測定値の測定時刻とを一組とするデータ対を単位時間毎に時間軸に沿って並べて電流波形を生成し、波形データ38として記憶部36に記憶する。波形データ生成部33は、時系列データ37として記憶部36に記憶されている絶縁抵抗値と絶縁抵抗値の測定時刻とを一組とするデータ対を単位時間毎に時間軸に沿って並べて絶縁抵抗波形を生成し、波形データ38として記憶部36に記憶する。
【0057】
表示制御部35は、表示部6における情報の表示を制御する機能部である。表示制御部35は、記憶部36に記憶されている波形データ38に含まれる波形を表示部6に表示させる。
【0058】
図3は、表示部6に表示される情報の一例を示す図である。
図3には、耐電圧試験または絶縁抵抗試験において、試験電圧を立ち上がり時間tdで電圧指令値Vmaxまで変化させたときの、第1外部端子T1と第2外部端子T2との間の電圧(DUT11の両端の電圧)の電圧波形601の表示例が示されている。
【0059】
図4は、表示部6に表示される情報の別の一例を示す図である。
図4には、耐電圧試験において、試験電圧を立ち上がり時間tdで電圧指令値Vmaxまで変化させた後の時刻t1においてDUT11に放電が発生したときの試験結果に関する情報の表示例が示されている。
【0060】
表示制御部35は、操作入力部1を介して入力されたユーザからの指示、または判定部34から指示に応じて、当該指示で指定された波形および測定値を表示部6の画面60に表示させる。
【0061】
例えば、耐電圧試験において表示条件情報43で指定された表示条件を満足した場合に、表示制御部35は、判定部34からの指示に応じて、波形を表示部6の画面60に表示させる。例えば、表示制御部35は、第1外部端子T1と第2外部端子T2との間の電圧の測定値の波形(電圧波形)を表示することを指示された場合、図3に示すように、電圧波形601を表示部6の画面60に表示させる。
【0062】
また、表示制御部35は、試験結果等に関する情報を画面60に表示してもよい。例えば、図4に示すように、表示制御部35は、画面60の表示領域610に、電圧波形640および電流波形641を表示してもよい。表示制御部35は、画面60の表示領域611に、所望の時刻における電圧の測定値を表示してもよい。表示制御部35は、画面60の表示領域612に、所望の時刻における電流の測定値を表示してもよい。表示制御部35は、画面60の表示領域613に、後述する判定部34による耐電圧試験または絶縁抵抗試験の判定結果(PASS(良品)またはFAIL(不良品))を表示してもよい。表示制御部35は、画面60の表示領域614に、耐電圧試験または絶縁抵抗試験において測定されたDUT11の絶縁抵抗値や電流の最大値等を表示してもよい。表示制御部35は、画面60の表示領域615に、耐電圧試験または絶縁抵抗試験の開始から終了までに要した時間(試験時間)を表示してもよい。表示制御部35は、画面60の表示領域616に、耐電圧試験または絶縁抵抗試験の試験条件(試験条件情報39)を表示してもよい。
【0063】
判定部34は、耐電圧試験および絶縁抵抗試験における各種の判定処理を行う機能部である。判定部34は、試験条件情報39および停止条件情報42に基づく試験終了判定処理と、試験条件情報39に基づく異常判定処理と、表示条件情報43に基づく表示条件判定処理とを行う。
【0064】
具体的に、判定部34は、試験条件情報39に基づく試験終了判定処理として、試験開始後に、試験の終了条件を満足したか否かを判定し、判定結果に基づいて試験の終了または継続を決定する。例えば、判定部34は、試験の開始とともに時間の計測を開始し、その計測時間が試験条件情報39として設定された試験時間に到達した場合に、試験の終了条件を満足したと判定し、電圧生成回路2に電圧出力の停止を指示するとともに、電圧測定部4および電流測定部5に電圧および電流の測定の停止を指示することにより、試験を停止する。ここで、上記時間の計測は、試験の開始とともに開始してもよいし、試験電圧が一定(電圧指令値)になったことを検出したときに開始してもよい。
【0065】
また、判定部34は、試験条件情報39に基づく異常判定処理として、DUT11の電気的特性の測定値の時間的な変化、すなわち波形データ38に基づいて、DUT11の異常の有無(PASS/FAIL)を判定する。具体的には、判定部34は、記憶部36に記憶されている波形データ38に基づいて、絶縁抵抗値が基準値(閾値)を超えているか否かの判定と漏れ電流が閾値を超えているか否かの判定の少なくとも一方を行う。
【0066】
より具体的には、絶縁抵抗試験において、判定部34は、例えば、絶縁抵抗波形が、絶縁抵抗閾値情報41として記憶部36に設定されている閾値(基準値)より大きい場合にDUT11が良品(PASS)と判定し、絶縁抵抗波形が閾値(基準値)以下の場合にDUT11が不良品(FAIL)と判定する。
【0067】
また、耐電圧試験において、判定部34は、第1外部端子T1と第2外部端子T2との間に一定の試験電圧を印加しているときの漏れ電流の値が閾値を超えているか否かの判定を行う。なお、判定部34は、漏れ電流の値が閾値を超えた場合に、漏れ電流の値が閾値を超えたことを表示部6に表示させてもよい。また、判定部34は、漏れ電流の値が閾値を超えた場合に、放電が発生したと判定してもよい。
【0068】
判定部34は、更に、第1外部端子T1と第2外部端子T2との間に一定の試験電圧を印加しているときの電圧測定部4による電圧の測定値の変動および電流測定部5による電流の測定値の変動の少なくとも一方を検出し、検出結果に基づいて放電の有無を判定する。
【0069】
図5は、耐電圧試験において、DUT11に放電が発生したときの電圧波形および電流波形の一例を示す図である。
【0070】
図5には、図4における時刻t1付近を拡大した電圧波形および電流波形が示されている。
【0071】
図5に示すように、耐電圧試験によってDUT11に高電圧を印加している状態において、何らかの原因でDUT11に放電が発生した場合、DUT11に非常に大きな電流が流れる。このとき、図5に示すように、電流測定部5による電流の測定値が急激に上昇し、DUT11の電圧(第1外部端子T1と第2外部端子T2との間の電圧)が、過渡的に、電圧指令値に基づく電圧を基準(中心)として大きく変動する。
【0072】
そこで、本実施の形態に係る試験装置10では、第1外部端子T1と第2外部端子T2との間に試験電圧を印加しているときの電圧測定部4による電圧の測定値の変動および電流測定部5による電流の測定値の変動の少なくとも一方を検出し、検出結果に基づいて放電の有無を判定する。
【0073】
例えば、判定部34は、第1外部端子T1と第2外部端子T2との間に一定の試験電圧を印加しているときの電圧波形(電圧測定値)の変動幅が許容変動範囲Xを超えた場合に、放電が発生したと判定する。ここで、許容変動範囲Xは、記憶部36に設定されている許容変動範囲情報40で指定された範囲である。
【0074】
図5に示すように、耐電圧試験では、許容変動範囲情報40として、電圧または電流の測定値の変動幅の許容変動範囲Xが設定される。例えば、許容変動範囲Xは、試験電圧の電圧指令値を基準(中心)として±α%(αは正の整数)の範囲として設定される。許容変動範囲情報40としての許容変動範囲Xの値は、操作入力部1を介して設定可能となっている。
【0075】
判定部34は、例えば、第1外部端子T1と第2外部端子T2との間の電圧の測定値が電圧指令値に到達した後に、電圧の測定値の変動幅が電圧指令値の±α%以上となった場合に、DUT11に放電(が発生したと判定する。例えば、図5に示す例の場合、判定部34は、時刻t1において電圧波形640が許容変動範囲Xを超える変動を検出したとき、DUT11に放電が発生したと判定する。
【0076】
判定部34は、停止条件情報42に基づく試験終了判定処理として、試験開始後に、異常を検出したか否かを判定する。例えば、判定部34は、放電の発生を検出したとき、停止条件情報42に基づいて試験を停止するか否かを判定する。例えば、停止条件情報42として第1値(“1”)が設定されている場合、判定部34は、放電の発生の検出後に、電圧生成回路2に対して電圧出力の停止を指示するとともに、電圧測定部4および電流測定部5に対して測定の停止を指示する。これにより、電圧生成回路2が電圧出力を停止し、電圧測定部4および電流測定部5が測定を停止して、試験が終了する。
【0077】
一方、停止条件情報42として第2値(“0”)が設定されている場合、判定部34は、放電の発生の検出後においても試験を継続する。すなわち、放電の発生の検出後においても、電圧生成回路2は電圧出力を継続し、電圧測定部4および電流測定部5は電圧および電流の測定を継続する。
【0078】
判定部34は、表示条件情報43に基づく表示条件判定処理として、試験開始後に、表示条件を満足したか否かを判定し、判定結果に基づいて表示部6の画面60に情報を表示するか否かを決定する。
【0079】
例えば、表示条件情報43として、“放電の発生を検出したこと”が設定されている場合には、判定部34は、放電が発生したことを示す情報を表示部6に表示するように、表示制御部35に対して指示する。例えば、図5に示すように、判定部34は、電圧の測定値の変動幅が許容変動範囲Xを超えた時点(時刻t1)の前後の範囲における電圧波形および電流波形の少なくとも一方を表示部6に表示させることを表示制御部35に対して指示する。なお、判定部34は、図4に示すように、電圧波形および電流波形に加えて(または、代えて)、耐電圧試験の判定結果(PASS/FAIL)の情報等を表示部6に表示させるように、表示制御部35に対して指示してもよい。
【0080】
例えば、表示条件情報43として、“設定された試験時間を経過したこと”が設定されている場合には、判定部34は、試験が終了したことを示す情報を表示部6に表示するように、表示制御部35に対して指示する。例えば、図4に示すように、判定部34は、電圧波形および電流波形に加えて(または、代えて)、耐電圧試験の判定結果(PASS/FAIL)の情報等を表示部6に表示させるように、表示制御部35に対して指示する。
【0081】
なお、停止条件情報42として第2値(“0”)が設定され、且つ表示条件情報43として“放電の発生の検出したこと”が設定されている場合には、判定部34は、試験を継続させつつ(電圧出力と電圧および電流の測定を停止させずに)、放電の発生の検出時に波形等の情報を表示部6に表示させる。この場合、表示部6に表示される波形等の情報は、試験が継続している間、時間経過とともに更新されてもよい。
【0082】
次に、試験装置10による耐電圧試験および絶縁抵抗試験の流れについて説明する。
【0083】
図6は、実施の形態に係る試験装置10による処理の一例を示すフローチャートである。
【0084】
例えば、試験装置10の電源の投入後、試験装置10は待機状態となる。待機状態において、先ず、試験装置10に、実行すべき試験の試験条件等が設定される(ステップS1)。例えば、耐電圧試験を行う場合、ユーザが操作入力部1を操作して、試験電圧の電圧指令値、試験電圧の立ち上がり時間td、試験時間、および許容変動範囲X(±α%)等の値を試験装置10に入力すると、指示受付部31がそれらの情報を試験条件情報39として記憶部36に設定する。絶縁抵抗試験の場合も同様である。
【0085】
次に、DUT11を試験装置10に接続する(ステップS2)。具体的には、ユーザが試験装置10の第1外部端子T1と第2外部端子T2との間に、DUT11を配線ケーブル等を介して接続する。
【0086】
試験装置10は、試験開始の指示が入力されたか否かを判定する(ステップS3)。操作入力部1を介して試験開始の指示が入力されていない場合(ステップS3:NO)、試験装置10は待機状態を維持する。
【0087】
操作入力部1を介して試験開始の指示が入力された場合(ステップS3:YES)、試験装置10は試験を実行する(ステップS4)。具体的には、指示受付部31が試験条件情報39に基づく電圧の生成を電圧生成回路2に指示するとともに、電圧測定部4および電流測定部5に対して電圧および電流の測定の開始を指示する。また、指示受付部31は、算出部32に対して試験内容に応じたDUT11の電気的特性(絶縁抵抗値および漏れ電流値)の時系列データの生成を指示するとともに、波形データ生成部33に対して波形データ38の生成を指示する。更に、指示受付部31は、判定部34に対して、上述した各判定処理の実行を指示する。
【0088】
試験において、判定部34は、波形データ38等を監視し、上述した手法により、異常(放電の発生等)の有無を判定する(ステップS5)。異常が検出された場合(ステップS5:YES)、判定部34は、記憶部36に設定されている停止条件情報42が“1”であるか否かを判定する(ステップS6)。
【0089】
停止条件情報42が“1”である場合(ステップS6:YES)、判定部34が、電圧生成回路2に対して電圧出力の停止を指示するとともに、電圧測定部4および電流測定部5に対して電圧および電流の測定の停止を指示することにより、試験を停止する(ステップS8)。
【0090】
一方、停止条件情報42が“0”である場合(ステップS6:NO)、またはステップS5において異常が検出されなかった場合(ステップS5:NO)、判定部34は、記憶部36に設定された試験条件情報39に基づく試験の停止条件を満足したか否かを判定する(ステップS7)。例えば、上述したように、判定部34は、試験開始後からの計測時間が設定された試験時間に到達したか否かを判定する。
【0091】
試験の停止条件を満足していない場合(ステップS7:NO)、判定部34は、ステップS5に戻り、上述したステップS5~S7の処理を繰り返し行う。試験の停止条件を満足した場合(ステップS7:YES)、判定部34は、電圧生成回路2に対して電圧出力の停止を指示するとともに、電圧測定部4および電流測定部5に対して電圧および電流の測定の停止を指示することにより、試験を停止する(ステップS8)。
【0092】
試験の停止後、判定部34は、記憶部36に設定された表示条件情報43に基づく表示条件を満足したか否かを判定する(ステップS9)。例えば、表示条件として“試験の終了条件を満足したこと”が設定されている場合、判定部34は、試験の終了条件を満足したか否かを判定する。
【0093】
表示条件を満足している場合(ステップS9)、判定部34は、波形を含む判定結果の情報を表示部6に表示させるように、表示制御部35に指示する(ステップS10)。これにより、表示部6の画面60に波形を含む判定結果が表示され、試験に係る一連の処理が終了する。一方、表示条件を満足していない場合(ステップS9:NO)、判定部34は、波形を含む判定結果の情報を表示部6に表示させず、試験に係る一連の処理を終了する。
【0094】
なお、表示条件として“異常を検出したこと”が設定されている場合には、上述したステップS6の前または後に、判定部34が、異常が検出されたことを示す情報(波形を含む)を表示部6に表示させるように、表示制御部35に指示してもよい。
【0095】
以上、実施の形態に係る試験装置10は、第1外部端子T1と第2外部端子T2との間に接続されたDUT1に電圧を印加したときの電圧測定部4による電圧の測定値の時間的な変化と電流測定部5による電流の測定値の時間的な変化とに基づいて、DUT11の絶縁抵抗の値の時間的な変化を算出する。試験装置10は、電圧測定部4による電圧の測定値の時間的な変化を示す電圧波形、電流測定部5による電流の測定値の時間的な変化を示す電流波形、および絶縁抵抗の値の時間的な変化を示す絶縁抵抗波形の少なくとも一つを含む波形データ38を生成し、記憶部36に記憶する。試験装置10は、波形データ38に基づいて、絶縁抵抗の値が閾値を超えているか否かの判定と放電が発生したか否かの判定(例えば、漏れ電流が閾値を超えているか否かの判定等)の少なくとも一方を行うとともに、波形データ38に含まれる波形を表示部6に表示させる。
【0096】
これによれば、試験装置10が、試験によって得られたDUT11における電圧、電流、および絶縁抵抗値の測定値の時系列データから波形データ38を生成して、試験装置10の表示部6に表示させるので、従来の試験装置のように、ユーザがオシロスコープ等を別途用意する必要がない。
【0097】
また、試験装置10は、波形データ38に基づいて、絶縁抵抗の値が閾値を超えているか否かの判定と放電が発生したか否かの判定を行った上で、判定に用いた波形データ38の波形を表示部6に表示させるので、試験においてDUT11に異常が発生した場合に、DUT11の電気的特性がどのように変化して異常状態に陥ったかをユーザが容易に認識することができる。また、放電の発生の検出を波形データ38に基づいて行うので、従来の耐電圧試験器のように専用回路を設ける必要がない。
【0098】
このように、試験装置10によれば、より使いやすい試験装置を低コストで実現することができる。
【0099】
また、従来の耐電圧試験器の多くは、耐電圧試験における放電の発生を検出するために専用のハードウェア回路が組み込まれており、コストの増大を招いていた。これに対し、本実施の形態に係る試験装置10によれば、電流測定部5によって測定したDUT11に流れる電流の測定値の時系列データに基づいて生成した電流波形を用いて放電の発生の有無を判定するので、専用のハードウェア回路が不要となり、製造コストを抑えることが可能となる。
【0100】
具体的には、試験装置10は、第1外部端子T1と第2外部端子T2との間に試験電圧を印加しているときの電圧測定部4による電圧の測定値の変動および電流測定部5による電流の測定値の変動の少なくとも一方を検出し、検出結果に基づいて放電の有無を判定する。
【0101】
上述したように、DUT11に試験電圧を印加している状態において漏れ電流(放電電流)が発生した場合には、電流および電圧の測定値が大きく変動する。したがって、電流および電圧の測定値の変動を検出することにより、放電の発生を容易に検出することができる。
【0102】
特に、試験装置10は、第1外部端子T1と第2外部端子T2との間に試験電圧を印加しているときの電圧測定部4による電圧の測定値の時間的な変化を示す波形の変動幅が許容変動範囲Xを超えた場合に、放電が発生したと判定してもよい。
【0103】
上述したように、DUT11に放電が発生した場合、電流と電圧の双方が変動する。このとき、電流(漏れ電流)の大きさは事前に予測し難い。これに対し、DUT11に一定の試験電圧(直流電圧)を印加しているときに電圧測定部4によって測定される電圧は、指定した電圧指定値に対応する電圧となる。そのため、放電が発生した場合には電圧指定値を基準として測定電圧が変動することから、電圧測定値を監視して当該電圧測定値(電圧波形)の変動を検出することにより、電流を監視する方法に比べて、精度よく、且つ容易に放電の発生を検出することが可能となる。
【0104】
試験装置10において、記憶部36には、許容変動範囲Xを指定する許容変動範囲情報40が記憶され、許容変動範囲情報40は、操作入力部1を介して設定可能である。これによれば、ユーザが試験装置10を操作することによって任意の許容変動範囲Xを設定し、試験を行うことが可能となる。
【0105】
試験装置10は、放電が発生したと判定した場合に、放電が発生したことを示す情報を表示部6に表示する。これによれば、ユーザは、試験中に放電が発生したことを速やかに認識できる。
【0106】
試験装置10において、放電が発生したことを示す情報は、電圧の測定値の時間的な変化を示す波形および電流測定部による電流の測定値の時間的な変化を示す波形の少なくとも一方における、電圧の測定値の変動幅が許容変動範囲Xを超えた時点の前後の範囲の波形を含んでもよい。
これによれば、放電が発生したときのDUT11の電気的特性の状態を確認することが容易となる。
【0107】
試験装置10において、試験の停止条件を指定する停止条件情報42が記憶部36に記憶され、停止条件情報42として第1値(例えば“1”)または第1値と異なる第2値(例えば“0”)が操作入力部1を介して設定可能となっている。試験装置10は、放電が発生したと判定したとき、停止条件情報と42して第1値が設定されている場合には、第1外部端子T1と第2外部端子T2との間への試験電圧の出力を継続し、停止条件情報42として第2値が設定されている場合には、第1外部端子T1と第2外部端子T2との間への試験電圧の出力を停止する。
これによれば、放電が発生した後に試験を継続するか否かをユーザが任意に設定できるので、より使い勝手のよい試験装置を提供することができる。
【0108】
試験装置10において、表示部6に情報をするための条件を指定する表示条件情報43が記憶部36に記憶され、表示条件情報43は、操作入力部1を介して設定可能となっている。試験装置10は、表示条件情報43として設定された条件を満足した場合に、波形データ38に含まれる波形を表示部6に表示させる。
これによれば、波形を表示させる条件をユーザが任意に設定できるので、より使い勝手のよい試験装置を提供することができる。
【0109】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本願発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0110】
例えば、上記実施の形態では、判定部34が、第1外部端子T1と第2外部端子T2との間に試験電圧を印加しているときの電圧波形おける電圧変動を検出することによって、放電の発生を検出する場合を例示したが、これに限られない。具体的には、判定部34は、第1外部端子T1と第2外部端子T2との間に試験電圧を印加しているときの電流波形の変動を検出することにより、放電の発生を検出してもよい。例えば、予め電流の閾値を設定しておき、電流波形が閾値を超えた場合に、判定部34は、放電が発生したと判定してもよい。
【0111】
また、上記実施の形態では、電圧生成回路2が直流電圧を生成し、試験電圧として外部端子T1と外部端子T2との間に出力する場合を例示したが、これに限られない。例えば、電圧生成回路2は、交流電圧を生成し、試験電圧として外部端子T1と外部端子T2との間に出力してもよい。試験電圧が交流電圧である場合も上記実施の形態と同様の手法で電圧波形および電流波形の変動を検出することにより、放電の有無を判定することが可能である。
【0112】
また、上記実施の形態では、電圧波形または電流波形の変動幅と許容変動範囲Xとを比較することにより異常の有無を判定したが、これに限られない。例えば、電圧波形または電流波形が収まるべき範囲を予め設定しておき、電圧波形または電流波形がその範囲を超えた場合に、判定部34が、異常が発生したと判定してもよい。例えば、電圧波形または電流波形が正弦波状となる場合に、その正弦波状の波形が収まるべき範囲を予め設定しておき、正弦波状の電圧波形または電流波形の少なくとも一部が上記範囲を超えた場合に、判定部34が、異常が発生したと判定してもよい。
【0113】
また、上述のフローチャートは、動作を説明するための一例を示すものであって、これに限定されない。すなわち、フローチャートの各図に示したステップは具体例であって、このフローに限定されるものではない。例えば、一部の処理の順番が変更されてもよいし、各処理間に他の処理が挿入されてもよいし、一部の処理が並列に行われてもよい。
【符号の説明】
【0114】
10…試験装置、1…操作入力部、2…電圧生成回路、3…制御回路、4…電圧測定部、5…電流測定部、6…表示部、7…出力部、11…試験対象物(DUT)、31…指示受付部、32…算出部、33…波形データ生成部、34…判定部、35…表示制御部、36…記憶部、37…時系列データ、38…波形データ、39…試験条件情報、40…許容変動範囲情報、41…絶縁抵抗閾値情報、42…停止条件情報、43…表示条件情報、640…電圧波形、641…電流波形、T1…第1外部端子、T2…第2外部端子。
図1
図2
図3
図4
図5
図6