(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114416
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】ガラス素材の色彩装身具の製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 23/04 20060101AFI20240816BHJP
C03B 33/06 20060101ALI20240816BHJP
A44C 27/00 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
C03B23/04
C03B33/06
A44C27/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020170
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】521257385
【氏名又は名称】倉原 哲郎
(71)【出願人】
【識別番号】521257396
【氏名又は名称】倉原 温子
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】倉原 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】倉原 温子
【テーマコード(参考)】
3B114
4G015
【Fターム(参考)】
3B114AA16
3B114JA00
4G015BA01
4G015BA04
4G015BA13
4G015FA01
4G015FB03
(57)【要約】
【課題】ガラスの特徴である透明感を最大限に生かしつつ、端縁部に淡い色彩を有した従来にないガラス素材の色彩装身具の製造方法を提供する。
【解決手段】ガラス管を溶着長さに切断するガラス管切断工程と、電気炉で切断ガラス管を加熱して溶融状態とする切断ガラス管溶融工程と、溶融状態とした切断ガラス管の切断面に生じた気泡を除去する気泡除去工程と、切断ガラス管中に予め色彩を付した色ガラス棒を挿入する色ガラス棒挿入工程と、切断ガラス管に色ガラス棒を挿入した色彩ガラス稈を内部の色ガラス棒と一体に溶融する挿入ガラス管溶融工程と、一体溶融した色彩ガラス稈を加熱しながら伸長する色彩ガラス稈伸長工程と、伸長した色彩ガラス稈を熱溶融しながらガラス装身具の所定位置に溶着する色彩ガラス稈溶着工程と、必要に応じてガラス装身具本体の表面にガラス押圧体や金属押圧体等の押し型を押圧しながら凹凸模様を形成する模様形成工程と、よりなるガラス素材の色彩装身具の製造方法により課題を解決した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス特有の透明感や成形の容易さを活用し、色彩の付し方の技術に関して工夫を凝らした従来にないガラスの装身具の製造方法であって、
管状のガラスを切断する第1工程であるガラス管切断工程と、
電気炉或いはバーナーを用いて切断ガラス管を加熱して溶融状態とする第2工程である切断ガラス管溶融工程と、
溶融状態とした切断ガラス管の切断面に生じた気泡を除去する第3工程である気泡除去工程と、
切断ガラス管中に予め色彩を付した色ガラス棒を挿入する第4工程である色ガラス棒挿入工程と、
色ガラス棒が挿入された切断ガラス管を内部の色ガラス棒と一体に溶融する第5工程である挿入ガラス管溶融工程と、
切断ガラス管と色ガラス棒とを一体溶融した色彩ガラスを加熱しながら伸長成形する第6工程である色彩ガラス伸長工程と、
伸長した色彩ガラスを熱溶融しながらガラス装身具の所定位置に溶着する第7工程である色彩ガラス溶着工程と、
必要に応じてガラス装身具本体の表面にガラス押圧体や金属押圧体等の押し型を押圧しながら凹凸模様を形成する第8工程である模様形成工程と、
よりなることを特徴とするガラス素材の色彩装身具の製造方法。
【請求項2】
色ガラス棒には、人工オパール粉末により色彩を付したものであることを特徴とする請求項1に記載のガラス素材の色彩装身具の製造方法。
【請求項3】
ガラス特有の透明感や成形の容易さを活用し、色彩の付し方の技術に関して工夫を凝らした従来にないガラスの装身具の製造方法であって、
管状のガラスを切断する第1工程であるガラス管切断工程と、
電気炉或いはバーナーを用いて切断ガラス管を加熱して溶融状態とする第2工程である切断ガラス管溶融工程と、
溶融状態とした切断ガラス管の切断面に生じた気泡を除去する第3工程である気泡除去工程と、
切断ガラス管中に人工オパール粉末を入れて一体に溶融する第4の工程である色彩ガラス管溶融工程と、
人工オパール粉末とガラス管とを一体に溶融した色彩ガラスを加熱しながら伸長成形する第5の工程である色彩ガラス伸長工程と、
伸長した色彩ガラスを熱溶融しながらガラス装身具の所定位置に溶着する第6工程である色彩ガラス溶着工程と、
必要に応じてガラス装身具本体の表面にガラス押圧体や金属押圧体等の押し型を押圧しながら凹凸模様を形成する第7工程である模様形成工程と、
よりなることを特徴とするガラス素材の色彩装身具の製造方法。
【請求項4】
人工オパール粉末としては、膨張率が切断ガラス管と略同等のガラス素材系統のガラス素材粉末であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載のガラス素材の色彩装身具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ガラス特有の透明感や成形の容易さを活用し、色彩の付し方の技術に関して工夫を凝らした従来にないガラスの装身具の製造方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラス素材の特徴である透明感を生かすことで審美性の高いブレスレットやバングル等の装身具を製造することが行われている。
【0003】
装身具に使用されるガラス素材の中には、透明なガラス内部に特徴的な模様を閉じ込めた加工(特許文献1を参照)や着色剤を混ぜて製造される色付きガラスを1色あるいは2色以上溶解する加工(特許文献2を参照)が行われる。
【0004】
具体的に特許文献1に記載の装身具用模様ガラスは、NH3雰囲気ガスにした炉内部にガラスを入れることによりガラス表面に黒い被膜を生起させ、その黒色被膜を溶解させたガラス内部に取り込むことで様々な模様を形成している。すなわち、製造された模様ガラスは、透明なガラス内部に黒色の模様が閉じ込めたような意匠となる。
【0005】
また、特許文献2に記載のガラスを使用した装身具は、装身具の土台となる金属に予め着色剤を混ぜて製造された色付きガラスを1色あるいは2色以上溶解させて凝固させ製造される。すなわち、製造された装身具に付されたガラスは、全体に均一な色彩を1色以上有した意匠となる。
【0006】
特許文献1に記載の模様ガラスは、ガラス特有の透明感生かしたものである。しかしながら、模様はNH3ガスにより生起された黒色被膜により作られるため、黒色を呈しその他の色彩を付すことが難しい。
【0007】
特許文献2に記載のガラスは、全体に均一な色彩を有したガラスである。そのため、装身具としての審美性は高くなるものの、ガラス特有の透明感を最大限に生かしているとは云い難い。
【0008】
また、ガラス特有の透明感を最大限に生かすため、ブレスレットやバングル等に用いる所望の形状に成形したガラスの一部あるいは全体の端縁部にのみ着色したガラスを溶着させる方法も存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2012-76966号公報
【特許文献2】特開2012-71027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、ガラス素材特有の透明感を生かすため、所望の形状に成形したガラスの端縁部に色付きガラスを溶着させる方法は、形成した後の状態で溶着させるため製品本体と溶着箇所とに一体感が出にくく製品本体にいかにも後付けしたような盛り上がり形状となったり、製品本体の延長部として歪な形状となったりして製品価値を減殺する欠点がある。
【0011】
そこで、ガラスの特徴である透明感を最大限に生かしつつ、端縁部に淡い色彩を有した従来にないガラス素材の色彩装身具の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記従来の課題を解決するために、長尺な管ガラスを必要な長さに切断する第1工程であるガラス管切断工程と、電気炉或いはバーナーを用いて切断ガラス管を加熱して溶融状態とする第2工程である切断ガラス管溶融工程と、溶融状態とした切断ガラス管の切断面に生じた気泡を除去する第3工程である気泡除去工程と、切断ガラス管中に予め色彩を付した色ガラス棒を挿入する第4工程である色ガラス棒挿入工程と、色ガラス棒が挿入された切断ガラス管を内部の色ガラス棒と一体に溶融する第5工程である挿入ガラス管溶融工程と、切断ガラス管と色ガラス棒とを一体溶融した色彩ガラスを加熱しながら伸長成形する第6工程である色彩ガラス伸長工程と、伸長した色彩ガラスを熱溶融しながらガラス装身具の所定位置に溶着する第7工程である色彩ガラス溶着工程と、必要に応じてガラス装身具本体の表面にガラス押圧体や金属押圧体等の押し型を押圧しながら凹凸模様を形成する第8工程である模様形成工程と、よりなることに特徴を有する。
【0013】
また、色ガラス棒には、人工オパール粉末により色彩を付したものであることにも特徴を有する。
【0014】
また、長尺な管ガラスを必要な長さに切断する第1工程であるガラス管切断工程と、電気炉或いはバーナーを用いて切断ガラス管を加熱して溶融状態とする第2工程である切断ガラス管溶融工程と、溶融状態とした切断ガラス管の切断面に生じた気泡を除去する第3工程である気泡除去工程と、切断ガラス管中に人工オパール粉末を入れて一体に溶融する第4工程である色彩ガラス管溶融工程と、人工オパール粉末とガラス管とを一体に溶融した色彩ガラスを加熱しながら伸長成形する第5工程である色彩ガラス伸長工程と、伸長した色彩ガラスを熱溶融しながらガラス装身具の所定位置に溶着する第6工程である色彩ガラス溶着工程と、必要に応じてガラス装身具本体の表面にガラス押圧体や金属押圧体等の押し型を押圧しながら凹凸模様を形成する第7工程である模様形成工程と、よりなることにも特徴を有する。
【0015】
また、人工オパール粉末としては、膨張率が切断ガラス管と略同等のガラス素材系統のガラス素材粉末であることにも特徴を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、長尺な管ガラスを必要な長さに切断する第1工程であるガラス管切断工程と、電気炉で切断ガラス管を加熱して溶融状態とする第2工程である切断ガラス管溶融工程と、溶融状態とした切断ガラス管の切断面に生じた気泡を除去する第3工程である気泡除去工程と、切断ガラス管中に予め色彩を付した色ガラス棒を挿入する第4工程である色ガラス棒挿入工程と、切断ガラス管に色ガラス棒を挿入した色彩ガラス稈を溶融する第5工程である挿入ガラス管溶融工程と、一体溶融した色彩ガラス稈を加熱しながら伸長する第6工程である色彩ガラス稈伸長工程と、伸長した色彩ガラス稈を熱溶融しながらガラス装身具の所定位置に溶着する第7工程である色彩ガラス溶着工程と、必要に応じてガラス装身具本体の表面にガラス押圧体や金属押圧体等の押し型を押圧しながら凹凸模様を形成する第8工程である模様形成工程と、より製造されることで、ガラスの特徴である透明感を最大現に生かしつつ、ガラス装身具の端縁部に淡い色彩を呈した審美性が高く従来にないガラス素材の色彩装身具を製造することができる。
【0017】
さらには、色ガラス棒には、人工オパール粉末により色彩を付したものとし、長尺な管ガラスを必要な長さに切断する第1工程であるガラス管切断工程と、電気炉或いはバーナーを用いて切断ガラス管を加熱して溶融状態とする第2工程である切断ガラス管溶融工程と、溶融状態とした切断ガラス管の切断面に生じた気泡を除去する第3工程である気泡除去工程と、切断ガラス管中に人工オパール粉末を入れて一体に溶融する第4工程である色彩ガラス管溶融工程と、人工オパール粉末とガラス管とを一体に溶融した色彩ガラスを加熱しながら伸長成形する第5工程である色彩ガラス伸長工程と、伸長した色彩ガラスを熱溶融しながらガラス装身具の所定位置に溶着する第6工程である色彩ガラス溶着工程と、必要に応じてガラス装身具本体の表面にガラス押圧体や金属押圧体等の押し型を押圧しながら凹凸模様を形成する第7工程である模様形成工程と、よりなり、人工オパール粉末としては、膨張率が切断ガラス管と略同等のガラス素材系統のガラス素材粉末を用いたことにより、人工オパール粉末によるキラキラした微妙な反射色彩を生起する装身具、例えば、指輪やブレスレットやバングル等に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る各工程の流れを説明するフロー図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る色彩装身具を示す模式的斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る色ガラス棒挿入工程を示す模式的説明図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る色彩ガラスを説明する模式的側面図及び断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る色彩ガラス装着工程を示す模式的説明図である。
【
図6】他の実施形態に係る各工程の流れを説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の要旨は、管状のガラスを切断する第1工程であるガラス管切断工程と、電気炉で切断ガラス管を加熱して溶融状態とする第2工程である切断ガラス管溶融工程と、溶融状態とした切断ガラス管の切断面に生じた気泡を除去する第3工程である気泡除去工程と、切断ガラス管中に予め色彩を付した色ガラス棒を挿入する第4工程である色ガラス棒挿入工程と、色ガラス棒が挿入された切断ガラス管を内部の色ガラス棒と一体に溶融する第5工程である挿入ガラス管溶融工程と、切断ガラス管と色ガラス棒とを一体溶融した色彩ガラスを加熱しながら伸長する第6工程である色彩ガラス伸長工程と、伸長した色彩ガラスを熱溶融しながらガラス装身具の所定位置に溶着する第7工程である色彩ガラス溶着工程と、必要に応じてガラス装身具本体の表面にガラス押圧体や金属押圧体等の押し型を押圧しながら凹凸模様を形成する第8工程である模様形成工程と、よりなることにある。
【0020】
色彩を付す前の状態のガラス装身具は、板状のガラス素材に熱を加えて溶融状態とし、一部切欠の筒状に丸めて形成されている。すなわち、以下の実施形態では、図面を参照しながら、腕に装着されるバングルをガラス装身具の例として色彩を付すガラス素材の色彩装身具の製造方法の一実施形態について説明する。なお、ガラス装身具の材料となるガラスは、透明度の高い石英ガラスを使用することが好ましく、以下の製造方法で記載するガラスは石英ガラスのことを指している。
【0021】
図1は、ガラス素材の色彩装身具の製造方法Mの各工程を説明するフロー図である。
図2は、実施形態に係る色彩装身具50を示す模式的斜視図である。
図3は、第4工程である色ガラス棒挿入工程S4での作業の様子を示す模式的斜視図である。
図4は、実施形態に係る色彩ガラスの詳細を説明する図であり、(a)は側面図を(b)は断面図をそれぞれ示している。
図5は、第7工程である色彩ガラス溶着工程S7での溶着作業の様子を示す模式的斜視図である。なお、
図1に二点鎖線で示された部分は、色彩装身具50の端縁部近傍に有する色彩が付された色彩部51との境界線を示している。
【0022】
本発明に係るガラス素材の色彩装身具の製造方法Mは、
図1に示すように、長尺な管ガラスを必要な長さに切断する第1工程であるガラス管切断工程S1と、電気炉で切断ガラス管10を加熱して溶融状態とする第2工程である切断ガラス管溶融工程S2と、溶融状態とした切断ガラス管10の切断面に生じた気泡を除去する第3工程である気泡除去工程S3と、切断ガラス管10中に予め色彩を付した色ガラス棒20を挿入する第4工程である色ガラス棒挿入工程S4と、色ガラス棒20が挿入された切断ガラス管10を内部の色ガラス棒20と一体に溶融する第5工程である色彩ガラス溶融工程S5と、切断ガラス管10と色ガラス棒20とを一体溶融した色彩ガラス30を加熱しながら伸長する第6工程である色彩ガラス伸長工程S6と、伸長した色彩ガラス30を熱溶融しながらガラス装身具40の所定位置に溶着する第7工程である色彩ガラス溶着工程S7と、必要に応じてガラス装身具40本体の表面にガラス押圧体や金属押圧体等の押し型を押圧しながら凹凸模様を形成する第8工程である模様形成工程S8と、よりなる。
【0023】
第1工程であるガラス管切断工程S1は、管ガラスをガラス装身具40への溶着に必要となる長さに切断する工程となる。この工程では、材料の一つである長尺の管ガラスを以降の工程で必要とされる長さに切断し切断ガラス管10を取り出す。この時の切断長さは、色彩を付す対象となるガラス装身具40の大きさや色彩の濃さや加工のしやすさ等を鑑みて決定される。
【0024】
第2の工程である切断ガラス管溶融工程S2は、ガラス管切断工程S1で得た切断ガラス管10を電気炉内で加熱、或いはバーナーで加熱し溶融状態とする工程となる。切断ガラス管10を溶融状態とする理由は、後述する色ガラス棒20を切断ガラス管10の中空内部に挿入する際にスムーズに挿入できると共に挿入後に大気中で冷却されることで一体とするためである。
【0025】
切断ガラス管溶融工程S2により溶融された切断ガラス管10は、切断面に空気が混入し気泡が生じる。この切断ガラス管10の切断面に生じた気泡は、ガラス装身具40と溶着させた際に意図しない模様となり審美性を損なってしまう虞がある。そこで、第3工程である気泡除去工程S3は、切断ガラス管10の切断面に生じた気泡を除去する。
【0026】
気泡の除去方法としては、バーナーで局所的に溶融させた切断ガラス管10に生じた気泡をあえて大きく成長させ、当該気泡をガラスの表面まで浮上させ気泡を含んだガラス素材と部分的に抽出して気泡除去させる方法が考えられる。なお、気泡の除去方法は、切断面に生起した気泡を除去できる方法であればどのような方法であってもよい。
【0027】
第4工程である色ガラス棒挿入工程S4は、
図3に示すように、切断ガラス管溶融工程S2により溶融状態とする切断ガラス管10の中空内部に予め着色剤にて色彩が付されている色ガラス棒20を挿入する工程となる。このとき切断ガラス管10は、溶融状態となっているため、色ガラス棒20の挿入が円滑に行え、さらに挿入時に気泡の混入を抑制することができる。この色ガラス棒挿入工程S4により、切断ガラス管10内に色ガラス棒20を挿入されたガラス装身具40の色彩に用いられる色彩ガラス30を形成する。
【0028】
第5工程である色彩ガラス溶融工程S5は、色ガラス棒挿入工程S4により、形成された色彩ガラス30を再度加熱し、内部にある色ガラス棒20ごと溶融させて切断ガラス管10と一体化させる工程である。すなわち、
図4に示すように、加熱し溶融された切断ガラス管10と色ガラス棒20とが互いに一体となるように溶け合い後の工程でガラス装身具40に色彩を付すための棒状の色彩ガラス30に気泡の混入や作業時の色ガラス棒20の抜け落ち等を防止することができる。
【0029】
第6工程である色彩ガラス伸長工程S6は、棒状の色彩ガラス30を700℃~800℃の温度で加熱しながら伸長する工程となる。このとき最終的な色彩ガラス30の外径を3mm~4mm程になるように伸長させる。この外径は、溶着対象となるガラス装身具40の厚みに殉じた大きさとする。本実施形態では、バングルをガラス装身具40の例としているため3mm~4mmとしているが、ガラス装身具の種類や意匠により伸長時の外径は適宜変更されることが好ましい。
【0030】
また、色彩ガラス30は、色彩ガラス伸長工程S6により引き伸ばされることで、切断ガラス管10の透明感と色ガラス棒20の色合いとがより馴染み一体感が増し全体に特徴的な淡い色彩を有することとなる。
【0031】
る第7工程である色彩ガラス溶着工程S7は、
図5に示すように、伸長した色彩ガラス30を熱溶融しながらガラス装身具40に溶着させる工程としている。具体的には、色彩が付される前のガラス装身具40(本実施形態ではバングル)の色彩を付したい所定の位置にバーナーにより加熱し溶融状態とした色彩ガラス30を溶着させていく。この時のバーナーの温度は2000℃~3000℃としており、色彩ガラス30の温度が700℃~800℃となるようにしている。
【0032】
ガラス装身具40の色彩を付す位置としては、どのような位置でも任意に行うことができるが、
図5に示すように、バングルであれば筒状の端縁部41に溶着されることが好ましい。
【0033】
また、ガラス装身具40の端縁部41に溶着される色彩ガラス30は、
図4(b)に示すように、溶着代31のみが溶融されガラス装身具40と溶着される。すなわち、溶着代31は、色彩ガラス30の外周縁のうち半径ほどの幅で溶融される。さらに、溶融の深度としては、切断ガラス管10の厚みの半分以下ほどであり、内部に一体化されている色ガラス棒20は、溶融されないようになっている。
【0034】
ガラス装身具40は、装身具本体の端縁部41に色彩ガラス30を溶着されることで、全体がガラス素材の特徴である透明感のある意匠でありながら、端縁部近傍に淡い色彩を有した従来のガラスの装身具にない特徴的な色彩を有した審美性の高いガラス素材の色彩装身具50とすることができる。
【0035】
また、色彩ガラス30は、色ガラス棒200により色彩が付された芯部分が溶着時に溶融されないことで、色彩ガラス伸長工程S6で得た本発明の特徴的な淡い色彩を損なうことなくガラス装身具40と一体化させることができる。
【0036】
また、従来までの色彩方法としては、ガラス素材ではない装身具本体に色付きガラスを溶着させてガラス部分を有した装身具とする方法が多く存在している。しかしながら、装身具本体と溶着したガラスとの境界線にどうしても後付けしたような歪な形状となる問題点があった。
【0037】
しかしながら、本発明に係るガラス素材の色彩装身具の製造方法Mでは、色彩を付す装身具がガラス素材で形成されたガラス装身具40としている。そのため、ガラス装身具40の端縁部41と色彩ガラス30の溶着代31とを共に加熱し溶融状態とすることで色彩ガラス30を溶着した際にガラス装身具40と完全に一体化させることができ、仕上がりが自然な外観とすることができる。
【0038】
第8工程である模様形成工程S8は、最終的な意匠として色彩装身具50の表面に凹凸表現を付したい際に行われる。この工程では、熱して柔らかくなった色彩装身具50に岩肌のような凹凸面を有した金属押圧体や模様となる凹凸を有したガラス押圧体を押圧することで表面に様々な模様やテクスチャーを付すことができる。
【0039】
本発明に係るガラス素材の色彩装身具の製造方法Mは、上述したように、透明なガラス装身具40の端縁部41に、透明な切断ガラス管10と色彩を有した色ガラス棒20とを一体にした色彩ガラス30を溶着することで、
図2に示すような、従来のガラス素材を使用した装身具にはない透明感を生かしたガラス素材の色彩装身具50を提供できるものである。
【0040】
具体的には、ガラス装身具40に溶着する色彩ガラス30を切断ガラス管10の内部に色ガラス棒20を挿入することで作成している。さらに溶着される色彩ガラス30は、色彩ガラス伸長工程S6により色彩ガラス30を引き伸ばすことで切断ガラス管10の有する透明感と色ガラス棒20の有する色合いとが一体感を増し全体に特徴的な淡い色彩を有している。
【0041】
また、実際に色彩ガラス30をガラス装身具40へ溶着するときには、色彩ガラス30の溶着代31のみが溶融され、色彩ガラス30の芯部分に位置する淡い色彩を呈する色彩部分を溶かすことなく溶着されることで、ガラス装身具40側へ直接色彩が付されることなく、特徴的な端縁部に淡い色彩を呈する色彩装身具50を製造することができる。
【0042】
さらには、色ガラス棒20を中空部に挿入した切断ガラス管10が、ガラス装身具40の端縁部41に溶着されて一体としている。そのため、色ガラス棒20の色彩は、色彩装身具50を見る角度により色彩部51が屈曲したりストレートに透過したりして色彩ガラス30に微妙な色彩変化を付与させることができる。すなわち、色彩装身具50に従来までにない格別な楽しみを生起することができる。
【0043】
このガラス素材の色彩装身具の製造方法Mにより製造された色彩装身具50は、全体をガラス特有の透明感を有していることと、端縁部近傍に色彩が付された部分である色彩部51を有していることと、に従来にない審美性を有したことを特徴としている。色彩部51の淡い色彩は、ガラス装身具40に単に色付きガラスを溶着するのではなく、透明な切断ガラス管10と色ガラス棒20を混合した色彩ガラス30を用いることで実現することが可能となる。
【0044】
また、他の実施形態としては、色ガラス棒20が人工オパール粉末により色彩を付されることが考えられる。他の実施形態に用いられる人工オパールは、色彩装身具50の材料となるガラスと膨張率が近い素材から作られたものを使用する。例えば、ガラス素材系統のガラス素材粉末、より詳しくは、石英粉末から製造された人工オパールを使用することが望ましい。石英粉末から製造され且つ特に内水分の少ないガラス封入用の人工オパールを使用することがもっとも望ましい。
図6は、他の実施形態に係るガラス素材の色彩装身具の製造方法Mの各工程を説明するフロー図である。
【0045】
他の実施形態に係るガラス素材の色彩装身具の製造方法Mは、
図6に示すように、長尺な管ガラスを必要な長さに切断する第1工程であるガラス管切断工程S1と、電気炉或いはバーナーを用いて切断ガラス管10を加熱して溶融状態とする第2工程である切断ガラス管溶融工程S2と、溶融状態とした切断ガラス管10の切断面に生じた気泡を除去する第3工程である気泡除去工程S3と、切断ガラス管10中に人工オパール粉末を入れて一体に溶融する第4工程である色彩ガラス管溶融工程S5´と、人工オパール粉末とガラス管10とを一体に溶融した色彩ガラス30を加熱しながら伸長成形する第5工程である色彩ガラス伸長工程S6´と、伸長した色彩ガラス30を熱溶融しながらガラス装身具40の所定位置に溶着する第6工程である色彩ガラス溶着工程S7と、必要に応じてガラス装身具40本体の表面にガラス押圧体や金属押圧体等の押し型を押圧しながら凹凸模様を形成する第7工程である模様形成工程S8と、よりなる。
【0046】
上記の工程のガラス管切断工程S1~気泡除去工程S3は、上述した第一の実施形態と同様の工程である。具体的には、材料となる長尺の管ガラスを任意の長さで切断するガラス管切断工程S1と切断ガラス管10を電気炉或いはバーナーを用いて溶融する切断ガラス管溶融工程S2と切断ガラス10内に生じた気泡を除去する気泡除去工程S3とを行う。
【0047】
他の実施形態に係る第4工程である色彩ガラス管溶融工程S5´は、溶融し気泡の除去までされたガラス管10中に人工オパール粉末を入れて形成された色彩ガラス30を再度加熱し、内部にある人工オパール粉末ごと溶融させて切断ガラス管10と一体化させる工程である。すなわち、加熱し溶融された切断ガラス管10と人工オパール粉末とが互いに一体となるように溶け合い後の工程でガラス装身具40に色彩を付すための棒状の色彩ガラス30に気泡の混入や作業時の人工オパール粉末が零れ落ちる等を防止することができる。
【0048】
このとき、封入される人工オパールは、上述したように、色彩装身具50の素材となる石英ガラスの原料と同じく石英から作られた人工オパール粉末を使用することで、ガラス素材と略同等の膨張率となっているため、溶融させる際に人工オパールを切断ガラス管10と同時に溶融させることができる。
【0049】
第5工程である色彩ガラス伸長工程S6´は、人工オパール粉末とガラス管10とを一体に溶融した棒状の色彩ガラス30を700℃~800℃の温度で加熱しながら伸長する工程となる。このとき最終的な色彩ガラス30の外径を3mm~4mm程になるように伸長させる。この外径は、溶着対象となるガラス装身具40の厚みに殉じた大きさとする。本実施形態では、バングルをガラス装身具40の例としているため3mm~4mmとしているが、ガラス装身具の種類や意匠により伸長時の外径は適宜変更されることが好ましい。
【0050】
また、色彩ガラス30は、色彩ガラス伸長工程S6により引き伸ばされることで、切断ガラス管10の透明感と人工オパール粉末のキラキラした反射色彩とがより馴染み一体感が増し全体に特徴的な淡くキラキラとした色彩を有することとなる。
【0051】
以降の第6工程及び第7工程は、上述した第一の実施形態の色彩ガラス溶着工程S7及び模様形成工程S8と同様の工程である。具体的には、色彩が付される前のガラス装身具40(本実施形態ではバングル)の色彩を付したい所定の位置にバーナーにより加熱し溶融状態とした色彩ガラス30を溶着させていく色彩ガラス溶着工程S7と熱して柔らかくなった色彩装身具50に岩肌のような凹凸面を有した金属押圧体や模様となる凹凸を有したガラス押圧体を押圧することで表面に様々な模様やテクスチャーを任意で付す模様形成工程S8とを行う。
【0052】
上述したように、切断ガラス管10中に人工オパール粉末を入れることにより、ガラス装身具40に色彩を付す色彩ガラス30が光の反射により複雑且つ微妙な色彩をキラキラと放つものとすることができる。そのような色彩ガラス30によりガラス装身具40に色彩を付すことで、従来にないキラキラとした反射色彩を有した独特な審美性を備えた色彩装身具50を製造することができる。
【0053】
また、人工オパール粉末は、切断ガラス10中に第一の実施形態にある色ガラス棒200として、直接封入するようにしてもよいし、予め色彩を有した色ガラス棒200と一体に溶融し切断ガラス管10中に挿入される方法としてもよい。なお、この際の製造方法は、予め色ガラス棒200と人工オパール粉末を一体にしておけば、第一の実施形態と同様の手順となる。
【0054】
色ガラス棒200と人工オパール粉末を一体として用いることで、第一の実施形態により製造される淡い色彩に付随してキラキラとした反射色彩を備えた色彩装身具50とすることができる。
【0055】
上述した実施形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施形態に限定されることはない。このため、上述した実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。また、上述した各種効果は、本発明から生じる好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本実施形態記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0056】
M ガラス素材の色彩装身具の製造方法
10 切断ガラス管
20 色ガラス棒
30 色彩ガラス
31 31 溶着代
40 ガラス装身具
41 端縁部
50 色彩装身具
51 色彩部