(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114417
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
E05B 49/00 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
E05B49/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020171
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須澤 翔太
(72)【発明者】
【氏名】富松 一樹
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250BB08
2E250BB36
2E250CC20
2E250DD02
2E250FF27
2E250FF36
2E250HH02
2E250JJ03
2E250JJ44
2E250KK02
2E250LL01
(57)【要約】
【課題】本発明は、消費電力を抑制する新たな車両制御装置等を得ることを課題とする。
【解決手段】本発明の車両制御装置は、所定時間ごとに周辺の携帯端末を検出する検出電波を発信する端末通信部と、周辺に存在する他車両と車車間通信する車車間通信部と、を備え、前記端末通信部は、前記車車間通信部の車車間通信により、携帯端末が所定距離以内に存在しないと判定した場合、前記検出電波を停止し、前記検出電波を停止した後に、前記車車間通信部の車車間通信により、携帯端末が所定距離以内に存在すると判定した場合、前記検出電波を発信する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定時間ごとに周辺の携帯端末を検出する検出電波を発信する端末通信部と、
周辺に存在する他車両と車車間通信する車車間通信部と、を備え、
前記端末通信部は、
前記車車間通信部の車車間通信により、携帯端末が所定距離以内に存在しないと判定した場合、前記検出電波を停止し、
前記検出電波を停止した後に、前記車車間通信部の車車間通信により、携帯端末が所定距離以内に存在すると判定した場合、前記検出電波を発信する、
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
解錠操作を検知する解錠操作部と、をさらに備え、
前記端末通信部は、前記解錠操作部により解錠操作が検知された場合、前記検出電波を発信する、
ことを特徴とする請求項1に記載された車両制御装置。
【請求項3】
前記車車間通信部の車車間通信により、携帯端末を検出した他車両が所定距離以内に存在しなくなったと判定した場合、前記検出電波を停止し、
前記検出電波を停止した後に、前記車車間通信部の車車間通信により、携帯端末を検出した他車両が所定距離以内に存在すると判定した場合、前記検出電波を発信する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載された車両制御装置。
【請求項4】
携帯端末との間で車端末通信を行わず、携帯端末を検出した他車両が所定距離以内に存在しない状態の直前が、携帯端末との間で車端末通信を行い、携帯端末を検出した他車両が所定距離以内に存在しない状態である場合には、前記検出電波を停止しない、
ことを特徴とする請求項3に記載された車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定時間ごとに周辺の携帯端末を検出する検出電波を発信する車両制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルキーシステムでは、車両のロック状態においてユーザーがデジタルキーを所持して車両に近づくと、車両が準備状態となる。準備状態では、例えば、車内灯が点灯し、車両のドアノブセンサで接触を検出すると、即座にドアロックを解除する。これによりドアノブセンサの接触から速やかにドアロックの解除が行われる。デジタルキーシステムでは、車両が一定間隔で電波を出力するポーリング通信を行い、デジタルキーの検出を待っている。そして、駐車時に一定間隔で検出電波を発信するため、車両に設けられているバッテリーの残量不足が生じる虞がある。
【0003】
次世代スマートエントリーシステムとして、スマートフォンを車両のキーとして用いるデジタルキーシステムがある。このデジタルキーシステムでは、BLE等を使用して検出電波を発信し、デジタルキーであるスマートフォンと車両との間で電波通信を行う。
【0004】
特許文献1の車両制御システムでは、狭域無線通信と公共回線を介した広域無線通信を用いてスマートフォン等の利用者端末の位置情報を取得する。そして、車両と利用者端末との相対距離が狭域無線通信の通信可能距離に基づいて設定された距離以上である場合に、狭域無線通信の実施を制限することにより、消費電力を抑制する。しかし、公共回線を介した広域無線通信を用いているため、公共回線の電波が届かない駐車場等では機能しない。
【0005】
一方、一部の車両は車車間通信部を備えており、近傍の他車両と情報交換を行っている。そして、駐車場に車両が駐車している場合にも車車間通信V2V行って種々の情報交換をすることが想定される。また、特許文献2では、BLE/UWBを用いることにより携帯端末と車両の距離を判定する車両制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-23633号公報
【特許文献2】特開2021-96144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
デジタルキーシステムでは、車両からポーリング通信を行う。その為、駐車している状態で車両の電力を消費してしまい、バッテリー上がりに繋がる可能性がある。本発明は、消費電力を抑制してバッテリー上がりが生じにくい新たな車両制御装置等を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態における車両制御装置は、所定時間ごとに周辺の携帯端末を検出する検出電波を発信する端末通信部と、周辺に存在する他車両と車車間通信する車車間通信部と、を備え、前記端末通信部は、前記車車間通信部の車車間通信により、携帯端末が所定距離以内に存在しないと判定した場合、前記検出電波を停止し、前記検出電波を停止した後に、前記車車間通信部の車車間通信により、携帯端末が所定距離以内に存在すると判定した場合、前記検出電波を発信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、周辺に存在する他車両と車車間通信する車車間通信を用いて、車両からの検出電波を停止する期間を設けることができ、駐車している車両の消費電力を低減することができる。また、周辺の携帯端末を検出する検出電波を出力する端末通信部と、周辺に存在する他車両と車車間通信する車車間通信部とを用いることから、公共通信が圏外となる環境でも通信が可能である。そのため、公共回線の電波が届かない駐車場等、より多くの状況で消費電力対策が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】携帯端末と自車両および他車両との通信を示す図。
【
図3】携帯端末と自車両および他車両の構成を示す図。
【
図4】携帯端末が自車両から離れる際の通信シーケンスを示す図。
【
図5】携帯端末が自車両に近づく際の通信シーケンスを示す図。
【
図7】携帯端末の位置による各車両のフラグと検出電波の停止を示す図。
【
図8】携帯端末位置aでの検出電波の停止状況を示す図。
【
図9】携帯端末位置bでの検出電波の停止状況を示す図。
【
図10】携帯端末位置gでの検出電波の停止状況を示す図。
【
図11】携帯端末位置fでの検出電波の停止状況を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、携帯端末2を検出する自車両1からの電波の範囲を示す。携帯端末2はスマートフォンであり、ユーザーUが所持している。携帯端末2は、自車両1に関係づけて設定している。自車両1は、周囲に斜線で示すように、携帯端末2を検出する検出電波を所定時間ごとに発信している。実施形態において、検出電波はBLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)によるものである。
【0012】
図1では携帯端末2が、自車両1が発信する検出電波によるデバイス検出領域R外の状態であるが、ユーザーUが自車両1に近づいて携帯端末2がデバイス検出領域R内に入ると、自車両1は携帯端末2を検出する。そして、自車両1は、関係づけられた携帯端末2がさらに接近して予め定めた準備距離以内に近づいたと判定すると、準備状態となる。準備状態の自車両1では室内灯を点灯すると共に、ドアノブで接触を検出すると即座にドアロックを解除する。ドアノブ(図示せず)には解錠操作を検知する解錠操作部(図示せず)が設けられている。
【0013】
本実施形態では、
図2に示すように、携帯端末2は、関係づけている自車両1だけでなく、関係づけていない他車両3ともBLEにより、車両と携帯端末間の直接の通信である車端末通信を行う。しかし、関係づけていない他車両3に携帯端末2が準備距離以内に近づいても、他車両3は準備状態とはならない。この状態では他車両3の室内灯が点灯することはなく、他車両3がドアノブの接触を検出しても、ドアロックは解除しない。
【0014】
携帯端末2と自車両1や他車両3はBLEにより直接に車端末通信を行うが、車両同士は車車間通信V2Vで直接に通信を行う。そのため、自車両1は、
図2に示すように他車両3との間で車車間通信V2Vにより通信する。
【0015】
図3は、携帯端末2と自車両1および他車両3の構成を示す。携帯端末2と自車両1および他車両3は、車両の消費電力を抑制する電力抑制システムを形成する。
図3に示すように、自車両1は、制御部11、端末通信部12、車車間通信部13、バッテリー14を備えている。自車両1が端末通信部12や車車間通信部13により通信する際には、バッテリー14から電力を得る。また、他車両3は、制御部31、端末通信部32、車車間通信部33、バッテリー34を備え、端末通信部32や車車間通信部33により通信する際には、バッテリー34から電力を得る。携帯端末2は、制御部21、通信部22、バッテリー23を有する。
【0016】
自車両1の制御部11、携帯端末2の制御部21、他車両3の制御部31は、CPUとメモリを備えている。携帯端末2は、その携帯端末に固有な端末コードを有する。携帯端末2の制御部21は、その携帯端末の端末コードと、この電力抑制システムに固有な電力抑制システムコードを記憶している。また、自車両1の制御部11と他車両3の制御部31は、電力抑制システムコードと、その車両に対応する携帯端末2の端末コードを記憶している。
【0017】
図3に示すように、自車両1の端末通信部12と他車両3の端末通信部32は、携帯端末2の通信部22との間でBLEによる車端末通信を行う。端末通信部12は、
図1で示した検出電波を所定時間毎に発信して、ポーリング動作によってアドバータイズする。検出電波には電力抑制システムコードが含まれている。このようにして、端末通信部12、32は、所定時間ごとに周辺の携帯端末2を検出する検出電波を発信する。
【0018】
携帯端末2が自車両1に近づいてデバイス検出領域R内に入り、通信部22を介して電力抑制システムコードを含んだ検出電波を検出すると、携帯端末2は自車両1に接続要求を行う。そして、接続が確立すると、携帯端末2の通信部22から自車両1の端末通信部12へ端末コードを送信する。
【0019】
自車両1の端末通信部12と車車間通信部13による通信は制御部11により制御され、他車両3の端末通信部32と車車間通信部33による通信は制御部31により制御される。また、携帯端末2の通信部22による通信は、制御部21により制御される。車車間通信部13、33は、周辺に存在する車両と車車間通信V2Vを行い、データを送受する。
【0020】
他車両3も端末通信部32により、電力抑制システムコードを含んだ検出電波を発信してアドバータイズし、デバイス検出領域Rに入った携帯端末2の通信部22から端末コードを受信する。端末コードは各携帯端末2に固有なコードであり、端末コードを照合することにより、自車両1や他車両3に関係づけられた携帯端末2であるか判定することができる。
【0021】
ユーザーUが自車両1を駐車場等に駐車し、自車両1から出てドアロックすると、自車両1に近く、同様に消費電力軽減を行う車両制御装置を備えた他車両3との間で、車車間通信V2Vにより間欠的に情報交換が行われる。この情報交換は、防犯や当て逃げに対するドライブレコーダーの記憶等のために行うものであり、防犯センサーの作動や衝突の検出により、各車両の相対位置を記憶すると共に、ドライブレコーダーの映像を保護モードにして、自動的に消去されないようにする。これにより、車両窃盗や衝突の前後の映像が各車両の中に記憶されると共に、映像を記憶した車両の特定を行い易くする。
【0022】
ドアロックして駐車している時の車車間通信V2Vは、防犯等のためだけでなく、他の用途でも行いうるものであり、本発明は、このような駐車時に行われる車車間通信V2Vを利用する。駐車時の車車間通信V2Vによる電力消費は、本発明により新たに生じるものではないため、本発明による車車間通信V2Vにより、消費電力の増加はほとんどない。
【0023】
<自車両から離れる場合>
図4に、携帯端末2が自車両1から離れる際の通信等のシーケンスを示す。駐車した自車両1は、電力抑制システムコードを含んだ検出電波を発信する(ステップS11)。自車両1をロックした直後は、携帯端末2は自車両1のデバイス検出領域R内にあり、検出電波を受信する(ステップS12)。そして、携帯端末2は、検出電波の電力抑制システムコードを認識すると、自車両1に端末コードを返信する(ステップS13)。この端末コードは、自車両1に関係づけて自車両1が記憶しているものである。自車両1は端末コードを判定し、自車両1に関連づけられた端末コードであり、携帯端末2が自車両1の近傍に位置することから自車両1を準備状態とする(ステップS14)。携帯端末2が自車両1の近傍に位置するかは、特許文献2に示すBLE/UWBを用いて距離を測り、準備距離以内に携帯端末2が位置するかにより判定する。
【0024】
準備状態の自車両1では、室内灯が点灯すると共に、解錠操作を検知する解錠操作部(図示せず)が設けられているドアノブで接触を検出すると、即座にドアロックを解除する。そのため、駐車して外からドアロックした後に、自車両1から離れずに自車両1のドアノブに接触を検出した場合には、即座にドアロックが解除する。なお、自車両1が検出電波を発信していない状態では、携帯端末2が自車両1に接近しても端末コードが検出されず、自車両1は準備状態にはならない。準備状態になっていないときにドアノブで接触を検出すると、自車両1は、接触を検出してから検出電波を発信して車端末通信を行い、送られた端末コードの判定を行うため、反応が少し遅延する。
【0025】
自車両1は、携帯端末2との間で車端末通信が行われると、自車フラグを「1」とする(ステップS15)。なお、自車フラグの「1」は、携帯端末2と自車両1が車端末通信を行った結果であり、車端末通信を行って関連した端末コードではない端末コードが送られた場合にも自車フラグは「1」となる。自車フラグを「1」とすると、車車間通信V2Vにより自車両1の自車フラグが「1」になったことを他車両3に送信する(ステップS16)。他車両3は、車車間通信V2Vにより自車両1との距離を検出し、所定距離以内であると距離内他車フラグを「1」とし、検出電波を発信する(ステップS17)。
【0026】
自車両1は、携帯端末2が準備距離より遠くなると準備状態を解除する。さらに、自車両1は、携帯端末2がデバイス検出領域Rから出て車端末通信が途絶えると、自車フラグを「0」とする。自車両1は、自車フラグと距離内他車フラグのいずれか一方が「1」であるとき、検出電波を発信する。したがって、携帯端末2が自車両1の検出電波によるデバイス検出領域Rから出ても、他車両3により自車両1の距離内他車フラグが「1」となっていれば、自車両1は検出電波を発信し続ける。
【0027】
携帯端末2は、他車両3のデバイス検出領域R内に入ると、検出電波を受信する(ステップS18)。そして、携帯端末2は、検出電波の電力抑制システムコードを認識すると、他車両3に端末コードを返信する(ステップS19)。他車両3は端末コードを判定し、この例では端末コードが他車両3に対応していないことから、準備距離以内であっても準備状態とならない(ステップS20)。しかし、端末コードを受信したことから、準備距離以内であるか否かに関わらず自車フラグを「1」とする(ステップS21)。
【0028】
他車両3も、携帯端末2がデバイス検出領域Rから出て車端末通信が途絶えると、自車フラグを「0」とする。他車両3は、自車フラグが「1」となったことを車車間通信V2Vにより他の車両へ送信する(ステップS22)。他車両3の自車フラグが「1」となったことを受信した自車両1は、他車両3が所定距離以内か判定し、所定距離以内の場合は距離内他車フラグを「1」とし、検出電波を発信する(ステップS23)。
【0029】
<自車両へ近づく場合>
図5に、携帯端末2が自車両1へ近づく際の通信等のシーケンスを示す。ユーザーUが駐車場等に戻って、携帯端末2が、他車両3が発信する検出電波によるデバイス検出領域R内に入ると、携帯端末2は検出電波を受信する(ステップS31)。携帯端末2は、検出電波の電力抑制システムコードを認識すると、他車両3に端末コードを返信する(ステップS32)。他車両3は端末コードを判定するが、この例では端末コードが他車両3に関係づけられていないため、携帯端末2が準備距離以内になっても他車両3は準備状態とならない(ステップS33)。一方、携帯端末2が他車両3からの電力抑制システムコードを含んだ検出電波に対して返信した端末コードを受信したことから、携帯端末2が準備距離以内であるか否かに関わらず他車両3は自車フラグを「1」とする(ステップS34)。他車両3は、自車フラグが「1」であることから、距離内他車フラグが「0」になっても検出電波を発信し続ける。
【0030】
また、他車両3は自車フラグを「1」とすると、車車間通信V2Vにより他車両3の自車フラグが「1」になったことを自車両1等の周囲の車両に送信する(ステップS35)。自車両1は、車車間通信V2Vにより他車両3との距離を検出し、所定距離以内であると距離内他車フラグを「1」とし、検出電波を発信する(ステップS36)。
【0031】
さらにユーザーUが自車両1に近づいて、携帯端末2が自車両1から発信する検出電波のデバイス検出領域R内に入ると、携帯端末2は自車両1の検出電波を受信する(ステップS37)。携帯端末2は、自車両1に接近して自車両1から発信する検出電波の電力抑制システムコードを認識すると、自車両1に端末コードを返信する(ステップS38)。自車両1は端末コードを判定し、この例では端末コードが自車両1に関係づけられているため、携帯端末2が自車両1の準備距離以内に位置すると自車両1は準備状態となる(ステップS39)。そして、準備状態の自車両1では、室内灯が点灯すると共に、解錠操作を検知する解錠操作部が設けられているドアノブセンサで接触を検出すると即座にドアロックを解除する。
【0032】
また、自車両1は、ステップS38で携帯端末2から端末コードを受信したため、自車フラグを「1」にする(ステップS40)。そして、自車両1は自車フラグが「1」となったことを車車間通信V2Vにより他の車両へ送信する(ステップS41)。自車両1の自車フラグが「1」となったことを受信した他車両3は、車車間通信V2Vにより自車両1が所定距離以内か判定し、所定距離以内の場合は距離内他車フラグを「1」として、検出電波を発信する(ステップS42)。
【0033】
<駐車場における通信状況>
次に、具体的に、複数の車両が駐車する駐車場で、携帯端末2を所持するユーザーUが移動した際の状況について説明する。例として、
図6に、ショッピングモールの駐車場における自車両1、他車両3、携帯端末2の位置関係を示す。他車両3は、自車両1と同様の消費電力軽減を行う車両制御装置を備えている。駐車場の他車両3は、個々を識別するために他車両3A~3Fで示す。自車両1や他車両3A~3Fを中心とした円の内側は、検出電波によるデバイス検出領域Rである。自車両1、他車両3、携帯端末2は、電力抑制システムを形成する。一方、自車両1、他車両3以外の駐車している車両である他車両4は、自車両1と同様の消費電力軽減を行う車両制御装置を備えておらず、電力抑制システムの構成ではない車両である。
【0034】
駐車場を示す
図6には、ショッピングモール入口ENTを示している。駐車して自車両1から降りたユーザーUは、他車両3、4の間を通ってショッピングモール入口ENTへ向かう可能性が高い。そこで、ユーザーUが保持する携帯端末2が、
図6の携帯端末位置aから携帯端末位置gへ移動する際の、検出電波の停止による消費電力の抑制状況を、
図7に示す表を用いて説明する。
【0035】
図7に示す表の左側には、行見出しとして
図6に示した電力抑制システムの構成となる自車両1、他車両3A~3Fを示す。また、表の上側には、列見出しとして
図6に示した携帯端末位置a~gを示す。表の行列によるセルは、白地に黒文字の白セルと、黒地に白文字の黒セルに分かれている。白セルは検出電波を発信することを示し、黒セルは、検出電波を停止することを示す。
図7に示すように、自車両1は、携帯端末位置a~cで検出電波を発信するが、携帯端末位置d~gでは検出電波を停止する。他車両3Aも同様である。他車両3Cでは、携帯端末位置b~fで検出電波を発信するが、携帯端末位置a,gでは検出電波を停止する。
【0036】
図7の表において、各セルの上側に示す自車フラグ「0」,「1」は、車両から発信する検出電波のデバイス検出領域R内に携帯端末2があるか否かを示している。例えば、
図6に示すように、携帯端末位置aは、自車両1のデバイス検出領域R内である。そのため、a列における自車両1の自車フラグは「1」となっている。
【0037】
携帯端末位置aでは、自車両1に対して、他車両3A、3B、3Fは所定距離以内であるため、他車両3A、3B、3Fからみて、自車両1は「距離内他車」である。そのため、自車両1の自車フラグが「1」であることにより、
図7に矢印で示すように、他車両3A、3B、3Fの距離内他車フラグが「1」となる。自車両1や他車両3の間の距離は、車車間通信V2Vにより検出される。そして、「距離内他車」で自車フラグが「1」であることは、車車間通信V2Vにより他の車両に送信される。「距離内他車」で自車フラグが「1」である場合は、距離内他車フラグを「1」とする。
【0038】
また、携帯端末2が
図6に示す携帯端末位置bにある場合、携帯端末2は、他車両3Bが発信する検出電波によるデバイス検出領域R内に位置する。そのため、他車両3Bの自車フラグは「1」となる。そして、他車両3Bは自車両1の「距離内他車」である。そのため、他車両3Bの自車フラグが「1」であることにより、
図7における自車両1の行のb列に示すように、自車両1の距離内他車フラグが「1」となる。他車両3A、3C、3Fの距離内他車フラグも同様である。
【0039】
<自車両1からショッピングモール入口ENTへの移動>
次に、
図6において、ユーザーUが自車両1から降りてショッピングモール入口ENTへ向かう際に、検出電波の停止が生じる状況を
図7、8を用いて説明する。
図8において、自車両1、他車両3A~3Fの近傍に示す括弧は、上側が自車フラグを、下側が距離内他車フラグを示す。また、円の中心に位置する斜線がかかる車両は、検出電波を発信している。円がなく黒い車両は検出電波が発信していない。携帯端末2は、その携帯端末に固有な端末コードを有する。携帯端末2はその携帯端末の端末コードを記憶し、自車両1、他車両3は、その車両に対応する端末コードと、電力抑制システムコードを記憶している。また、
図8に示す点線の大円の内側は、自車両1から所定距離以内である。
【0040】
図8に示すように、ユーザーUが自車両1から降りて携帯端末位置aとなると、携帯端末2の位置は自車両1が発信する検出電波によるデバイス検出領域Rの範囲内である。そのため、検出電波を受けた携帯端末2は、端末コードを返信する。自車両1は、自車の検出電波に端末コードの返信があるため、
図7、8に示すように自車フラグを「1」にする。そして他車両3と車車間通信V2Vを行う。車車間通信V2Vでは、自車両1の自車フラグが「1」であることが送信されると共に、他車両3との距離が測定される。そして、
図7、8において、点線の大円で示す所定距離以内にある他車両3A、3B、3Fでは、距離内他車フラグが「1」となる。
【0041】
自車フラグと距離内他車フラグのいずれか一方が「1」であると検出電波を発信する。
図7では、検出電波を発信する車両を白セルで示す。携帯端末2が携帯端末位置aに位置する場合において、自車フラグと距離内他車フラグのいずれか一方が「1」である自車両1および他車両3A、3B、3Fは、
図7のa列の白セルや
図8の斜線車両と円で示すように、検出電波を発信する。一方、自車フラグと距離内他車フラグが共に「0」である他車両3C~3Eは、
図7に黒セルで、
図8に黒車両で示すように検出電波を停止する。
【0042】
携帯端末位置aにおいて、検出電波の制御は上記のように行われるが、準備状態の制御は、次のように行われる。携帯端末位置aの
図8において、自車両1は、受信した端末コードがその車両に対応する端末コードであると判定し、自車フラグを「1」とする。受信した端末コードがその車両に対応する端末コードであると判定した自車両1は、携帯端末2が自車両1の準備距離以内に位置すると準備状態となる。準備状態の自車両1では、解錠操作を検知する解錠操作部が設けられているドアノブで接触を検出すると、即座にドアロックを解除する。そのため、駐車してから自車両1から離れずに自車両1のドアノブに接触を検出した場合には、即座にドアロックが解除する。一方、他車両3A~3Fは、その車両に対応する端末コードであると判定することはなく、準備状態ではない。
【0043】
ユーザーUが移動して、携帯端末2が
図6に示す携帯端末位置bに位置すると、自車両1のデバイス検出領域Rの外になるため、携帯端末2は自車両1からの電力抑制システムコードを検出しない。そして、携帯端末2は端末コードを返信しないため、
図7に示すようにb列の自車両1では自車フラグが「0」となる。一方、携帯端末位置bでは他車両3Bはデバイス検出領域R内であり、携帯端末2は他車両3Bからの電力抑制システムコードを検出して端末コードを返信し、b列の自車フラグが「1」となる。他車両3Bは、自車両1や複数の他車両3と車車間通信V2Vを行い、
図9に示すように、点線の大円で示す所定距離以内にある自車両1、他車両3A、3C、3Fでは距離内他車フラグが「1」となる。その結果、自車フラグと距離内他車フラグのいずれか一方が「1」である自車両1および他車両3A~3C、3Fは、
図7で白セル、
図9で斜線の車両と円で示すように、検出電波を発信する。
【0044】
一方、他車両3D、3Eについては、携帯端末位置bは、デバイス検出領域R内ではないから自車フラグは「0」である。また、自車フラグが「1」である他車両3Bから点線の大円で示す所定距離以内になく、所定距離内他車フラグも「0」である。そのため、自車フラグと距離内他車フラグの両方が「0」となるため、他車両3D、3Eは、検出電波を停止する。
図7では、検出電波を停止する車両として、携帯端末位置bの他車両3D、3Eを黒セルで示す。また、
図9で黒い車両として示した他車両3D、3Eは、検出電波を停止しており、検出電波によるデバイス検出領域Rを示す円がない。
【0045】
図7は、以上のようにして携帯端末位置aから携帯端末位置gまで移動した際の、自車両1および他車両3A~3Fの自車フラグと距離内他車フラグ、検出電波の停止状況を示す。この例では、ユーザーUはショッピングモール入口ENTへ向かい、他車両3Dのデバイス検出領域Rの領域から出て、どの車両のデバイス検出領域Rにも入らない携帯端末位置gへ移動する。携帯端末位置gでは、他車両3Dの自車フラグと距離内他車フラグは共に「0」であるが、検出電波を停止すると、戻ってきて他車両3Dのデバイス検出領域Rに入っても携帯端末2は検出されない。そのため、他車両3Dは検出電波の発信を続け、携帯端末位置gでは
図7に示すように白セルとなる。この状態を
図10に示す。自車フラグが「1」の状態から自車フラグと距離内他車フラグが共に「0」の状態に遷移した場合は、検出電波を停止しない。
【0046】
この点をもう少し詳しく説明する。携帯端末2は、
図10に示す携帯端末位置gの少し前には、
図11に示す携帯端末位置fにある。この時に他車両3Dは、自車フラグが「1」で距離内他車フラグが「0」となっている。そして、携帯端末2が携帯端末位置gへ移動すると、他車両3Dは自車フラグが「0」、距離内他車フラグが「0」となる。このように、携帯端末2との間で車端末通信を行わず、携帯端末2を検出した車両が所定距離以内に存在しない状態の直前が、携帯端末2との間で車端末通信を行い、携帯端末2を検出した車両が所定距離以内に存在しない状態である場合には、検出電波を停止しない。
【0047】
他車両3Cのように、自車フラグが「0」、距離内他車フラグが「0」の状態になる前に自車フラグが「0」、距離内他車フラグが「1」の状態であった場合には、検出電波を停止する。このように、携帯端末2との間で車端末通信を行わず、携帯端末2を検出した車両が所定距離以内に存在しない状態の直前が、携帯端末2との間で車端末通信を行わず、携帯端末2を検出した車両が所定距離以内に存在する状態である場合には、検出電波を停止する。
【0048】
検出電波の停止フローを
図12に示す。このフローは、検出電波を発信している状態から、フラグが変更した場合を示す。検出電波を発信しているため、初期状態は自車フラグと距離内他車フラグのいずれかが「1」となっている。フラグの変更により、自車フラグ「0」、距離内他車フラグ「0」になったかを判定する(ステップS51)。YESの場合は次のステップに進み、NOの場合は戻る。次に、フラグ変更の直前が自車フラグ「0」、距離内他車フラグ「1」であったかを判定する(ステップS52)。YESの場合は検出電波を停止する(ステップS53)。また、NOの場合は終了する。フラグ変更の直前が自車フラグ「1」、距離内他車フラグ「0」の場合には、ステップS52でNOとなるため、検出電波は停止しない。
【0049】
また、
図7等にはないが、
図12のフローでは、自車フラグが「0」、距離内他車フラグが「0」の状態になる直前に自車フラグが「1」、距離内他車フラグが「1」の状態であった場合には、検出電波を停止しない。なお、この状態遷移はあまり生じないため、検出電波を停止してもよい。
【0050】
他車両3Dを自車両1に置き換えて、自車両1が他車両3Dの位置に駐車し、携帯端末2が携帯端末位置fから携帯端末位置gへ移動したとする。そうすると、携帯端末2との間で車端末通信を行わず、携帯端末2を検出した他車両が所定距離以内に存在しない状態の直前が、携帯端末2との間で車端末通信を行い、携帯端末2を検出した他車両が所定距離以内に存在しない状態である場合には、検出電波を停止しないこととなる。
【0051】
<ショッピングモール入口ENTから自車両1への移動>
ユーザーUがショッピングモールから戻って、ショッピングモール入口ENTから駐車場へ入り、所持する携帯端末2が携帯端末位置gに位置するときには、上記に示した理由により、
図10に示すように他車両3Dから検出電波が発信されている。しかし、他車両3Dの自車フラグは「0」であるから、他車両3E等の距離内他車フラグは「1」にならず「0」であり、他車両3E等からの検出電波は停止している。そして、携帯端末位置fに移動すると、他車両3Dが携帯端末2を検出し、
図7のf列及び
図11に示すように自車フラグを「1」とし、車車間通信V2Vにより、点線の大円で示す所定距離以内にある他車両3C、3Eの距離内他車フラグを「1」にする。そうすると、
図7、
図11に示すように、携帯端末位置fの他車両3Dは自車フラグが「1」、距離内他車フラグが「0」となる。また、他車両3Dの所定距離以内に位置する他車両3C、3Eは、自車フラグが「0」、距離内他車フラグが「1」となる。そして、携帯端末位置fの他車両3C~3Eは検出電波を発信する。
図7では他車両3C~3Eのf列は白セルとなる。また、自車両1、他車両3A、3B、3Fは自車フラグ、距離内他車フラグが共に「0」であり、検出電波は停止したままであり、
図7では黒セルとなる。携帯端末位置fの
図11では検出電波円で囲まれた斜線の車両から発信し、黒い車両からは発信しない。
【0052】
図7は、携帯端末位置gから携帯端末位置aまで移動した際の、自車両1および他車両3A~3Fの自車フラグと距離内他車フラグと検出電波の停止状況を黒セルで示す。そして、携帯端末位置aに戻ると、端末コードの判定とBLE/UWBを用いた近傍との判定により自車両1が準備状態となり、準備状態の自車両1のドアノブで接触を検出すると、自車両1は即座にドアロックを解除する。
【0053】
上記の例では、ユーザーUが戻る際に、携帯端末2は、
図10に示す検出電波を発信し続けている他車両3Dの領域に、
図11に示すように最初に入る。しかし、ユーザーUがショッピングモール入口ENTをと通らずに自車両1へ戻った場合など、携帯端末2がこの領域に入らずに自車両1へ到達する場合もある。そのような場合には、非準備状態の自車両1のドアノブで接触が検出されるため、即座にドアロックが解除されることはない。しかし、自車両1は、解錠操作を検知する解錠操作部が設けられているドアノブでの接触の検出により検出電波を発信し、携帯端末2との間で認証を行い、接触から少し遅延してドアロックの解除が行われる。
【0054】
他車両3が自車両1の所定距離以内にあるか否かは、携帯端末位置が検出された時に車車間通信V2Vを行って判定してもよく、自車両1および他車両3が駐車した時に車車間通信V2Vを行って判定し、結果を記憶してもよく、間欠的で常時に車車間通信V2Vを行って判定してもよい。
【0055】
また、上記の実施形態では、準備状態になったときにも自車両1は他車両3へ車車間通信V2Vにより自車フラグが「1」になったことを送信し、所定距離以内の他車両3において距離内他車フラグを「1」とする。しかし、準備状態になったときには、自車両1は自車フラグが「1」になったことを送信しないようにして、他車両3からの検出電波の発信を抑制してもよい。
【0056】
その他、具体的な構成は実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
U ユーザー
R デバイス検出領域
V2V 車車間通信
ENT ショッピングモール入口
a~g 携帯端末位置
1 自車両
11 制御部
12 端末通信部
13 車車間通信部
14 バッテリー
2 携帯端末
21 制御部
22 通信部
23 バッテリー
3 他車両
31 制御部
32 端末通信部
33 車車間通信部
34 バッテリー
3A~3F 他車両
4 他車両