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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114423
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】配管点検管理システム
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/04 20060101AFI20240816BHJP
   F17D 5/00 20060101ALI20240816BHJP
【FI】
E04G21/04
F17D5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020181
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】520384987
【氏名又は名称】有限会社ベトンテック
(71)【出願人】
【識別番号】522050952
【氏名又は名称】庄野 和隆
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100140338
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 直樹
(72)【発明者】
【氏名】庄野 和隆
【テーマコード(参考)】
2E172
3J071
【Fターム(参考)】
2E172AA05
2E172CA33
3J071AA21
3J071BB02
3J071CC24
3J071DD26
3J071EE06
3J071EE08
3J071EE18
3J071EE21
3J071EE25
3J071EE35
3J071FF16
(57)【要約】
【課題】コンクリート圧送管路の摩耗管理を効率化する。
【解決手段】本発明の点検管理システムは、直列接続される複数の管11,12,13・・・を含むコンクリート圧送管路10を管理するシステムであって、管11,12,13・・・毎の交換日T11,T12,T13・・・を記憶するステップS10実行手段と、コンクリート圧送管路10を流れる日毎の圧送体積DVa,DVb,DVc・・・を記憶するステップS20実行手段と、交換日T11,T12・・・および日毎圧送体積DVa,DVb,DVc・・・に基づき管11,12,13・・・毎の累積通過量SV11,SV12,SV13・・・を算出するステップS30実行手段と、累積通過量SV11,SV12,SV13・・・のいずれかが所定値PSVに達したときに警告を発するステップS40実行手段と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続される複数の管を含み、ポンプから圧送される未硬化コンクリートが流れるコンクリート圧送管路を管理するシステムであって、
前記管毎の交換日を記憶する手段と、
前記コンクリート圧送管路を流れる日毎の圧送体積を記憶する手段と、
前記管毎交換日および前記日毎圧送体積に基づき前記管毎の累積通過量を算出する手段と、
前記管毎累積通過量のいずれかが所定値に達したときに警告を発する手段と、を備える、点検管理システム。
【請求項2】
前記所定値は、前記管毎に設定される、請求項1に記載の点検管理システム。
【請求項3】
前記日毎圧送体積を記憶する手段は、前記ポンプまたは前記コンクリート圧送管路のうちの少なくとも1つに後付けで附設されて、前記コンクリート圧送管路を流れる日毎圧送体積を検出する流量計を含む、請求項1に記載の点検管理システム。
【請求項4】
前記管毎交換日の後、かつ前記警告を発する前に、圧送管の肉厚を測定する手段と、
前記測定肉厚に基づいて、前記管毎累積通過量あるいは前記所定値を補正する手段をさらに備える、請求項1に記載の点検管理システム。
【請求項5】
前記管毎累積通過量が前記所定値の60~90%の範囲に含まれる数値に達すると予備的な警告を発する手段をさらに備える、請求項1に記載の点検管理システム。
【請求項6】
前記警告を発する手段および/または前記予備的な警告を発する手段は、ネットワークと接続し、前記コンクリート圧送管路および前記ポンプから離れた場所にも警告および/または予備的な警告を発する、請求項1または5に記載の点検管理システム。
【請求項7】
コンクリート圧送管路を構成する複数の管の交換日を前記管毎に記憶する機能と、
前記コンクリート圧送管路を流れる未硬化コンクリートの圧送体積を日毎に記憶する機能と、
前記管毎交換日および前記日毎圧送体積に基づき、前記交換日から現在まで前記管を流れた累積通過量を管毎に算出する機能と、
前記管毎累積通過量が所定値に達したときに警告を発する機能と、をコンピュータに実現させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未硬化コンクリートが流れるコンクリート圧送管路に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート打設としてポンプ打設が知られている。ポンプ打設は、ポンプ装置から打設現場まで延びるコンクリート圧送管路を用いて未硬化コンクリートを圧送する施工工法である。コンクリート圧送管路の管内には、高圧の未硬化コンクリートが流れる。
【0003】
高圧の未硬化コンクリートはコンクリート圧送管路の内壁面に摺接してこれを徐々に摩耗させる。つまりコンクリート圧送管路の使用期間が長くなる程、コンクリート圧送管路を流れる圧送体積の累積通過量が多くなる程、コンクリート圧送管路の肉厚が徐々に薄くなる。このまま放置してコンクリート圧送管路を使用し続けると圧送作業中にコンクリート圧送管路が破裂してしまう懸念がある。
【0004】
そこで従来、特開2007-146530号公報(特許文献1)に記載されるようにコンクリート圧送管路が摩耗したことを知らせる技術が提案されている。特許文献1記載の技術では、直線状の配管ユニットの外周面に有底穴を形成して配管ユニットの肉厚を一部薄肉とし、係る薄肉部分が摩耗して未硬化コンクリートが漏れることにより配管ユニットの肉厚が十分ではなくなったこと、つまり配管ユニットの交換時期、を知らせるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-146530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来にあっては、コンクリート圧送管路の交換時期が到来すると全ての配管ユニットを取り換えることから、コスト上、改善の余地がある。つまりコンクリート圧送管路は、0.5m~2.5m程度の多数の直管および曲管を直列接続したものである。各管は、異なる物性の内管と外管を貼り合わせて耐摩耗性能および強度を高めた二重管とされ、管1本といえども高額であるから、コンクリート圧送管路の全交換はコスト上の負担が大きくなる。コンクリート圧送管路を構成する複数の管の中には管内圧力が低い等の理由により、摩耗の進行が遅く、他の管よりも寿命の長い管もあり得るので、長寿命の管は長期に使い続けることが好ましい。
【0007】
また昨今の建設労働者不足、全産業的な働き方改革の下で、特許文献1に記載されるように作業終了毎にコンクリート圧送管路の全ての管の漏れを1本1本点検することや、漏れ出た未硬化コンクリートを清掃すること等は、作業者の負担が大きくなり、好ましくない。
【0008】
本発明は、上述の実情に鑑み、未硬化コンクリートの漏れを点検する必要のない、従来よりも改善された管路の点検システムおよび管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のため本発明による点検管理システムは、直列接続される複数の管を含み、ポンプから圧送される未硬化コンクリートが流れるコンクリート圧送管路を管理するシステムであって、管毎の交換日を記憶する手段と、コンクリート圧送管路を流れる日毎の圧送体積を記憶する手段と、管毎交換日および日毎圧送体積に基づき管毎の累積通過量を算出する手段と、管毎累積通過量のいずれかが所定値に達したときに警告を発する手段と、を備える。
【0010】
かかる本発明によれば、圧送管路の管一本毎に摩耗等の警告を受け取ることができるので、管毎の耐用%を一本一本使い切って個々に交換することで、圧送管路のメンテナンスコストを低減することができる。また作業者が管を一本一本点検する必要が無くなることから、省力化を図ることができる。また、パッキン、リング等の附属部品の耐用%も管理することができる。なお管毎累積通過量に関する所定値は特に限定されない。かかる所定値は、複数の管に共通な値でもよいし、あるいは管毎に別々に設定されていてもよい。長寿命の管は所定値を大きく設定され、短寿命の管は所定値を小さく設定される。各管の所定値は経験則から求められる。例えばポンプに近い管は所定値を小さく設定され、ポンプから遠い管は所定値を大きく設定される。また曲管は所定値を小さく設定され、直管は所定値を大きく設定される。管毎の交換日とは、管毎の使用開始日と言い換えることができる。新品のコンクリート圧送管路は、全ての管が同日の使用開始日となる。ここでいう耐用%とは新品で100%であり、摩耗や経年劣化により徐々に減少して0%に至ると理解されたい。
【0011】
本発明は、コンクリート圧送管路を有するプラントあるいは車両系建設機械に装備される。例えばコンプリートポンプ車やコンクリートディストリビュータに装備される。本発明の一局面として管が耐用%に達したことの目安になる所定値は、圧送管路の構成要素である管毎に設定される。かかる局面によれば、ポンプに近い側と遠い側、曲管と直管というように、一本ずつきめ細かな管理が可能になる。
【0012】
本発明のコンクリート圧送管路10を流れる日毎の圧送体積を記憶する手段は特に限定されない。一局面として当該手段は、ポンプを取り扱う作業者が入力するものであってもよい。あるいは他の局面として当該手段は、ポンプまたはコンクリート圧送管路のうちの少なくとも1つに後付けで附設されて、コンクリート圧送管路を流れる日毎圧送体積を検出する流量計を含む。かかる局面によれば、作業者の目と手による監視負担が軽減される。また旧式のポンプをIoT化(Internet of Things)することができる。
【0013】
本発明の好ましい局面として、管毎交換日の後かつ上述した警告を発する前に、管の肉厚を測定する手段と、かかる測定肉厚に基づいて、管毎累積通過量あるいは所定値を補正する手段をさらに備える。かかる局面によれば、交換時期の正確な管理が可能になる。かかる補正は1回のみでもよいし、時期を開けて複数回でもよい。
【0014】
本発明のさらに好ましい局面として、管毎累積通過量が所定値の60~90%の範囲含まれる数値に達すると予備的な警告を発する手段をさらに備える。かかる局面によれば、交換時期が近い将来であると予測されることから、交換作業計画の見通しが立ち、交換作業の在庫管理が効率化される。
【0015】
本発明の一局面として、警告を発する手段および/または予備的な警告を発する手段は、ネットワークと接続し、コンクリート圧送管路およびポンプから離れた場所にも警告および/または予備的な警告を発する。かかる局面によれば、コンクリート圧送管路から離れた場所に居る関係者、例えばコンクリート圧送管路やポンプを管理する会社の営繕部門や、コンクリート圧送管路の部品サプライヤーも交換作業時期を知ることができる。また摩耗が進んで耐用%が尽きた管やその他の部品の発注作業との連動が可能になり、煩わしい紙伝票による在庫管理が不要になる。
【0016】
本発明による点検管理プログラムは、コンクリート圧送管路を構成する複数の管の交換日をこれらの管毎に逐次記憶する機能と、コンクリート圧送管路を流れる未硬化コンクリートの圧送体積を日毎に記憶する機能と、管毎の交換日および日毎の圧送体積に基づいて該交換日から現在まで管を流れた累積通過量を管毎に算出する機能と、かかる管毎の累積通過量が所定値に達したときに警告を発する機能と、をコンピュータに実現させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0017】
このように本発明によれば、コンクリート圧送管路の管理が省力化および効率化される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】コンクリート圧送管の管路全体を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態になる点検管理システムを示す模式図である。
図3】同実施形態の点検管理システムが表示する点検管理状況を示す模式図である。
図4】同実施形態の点検管理システムが実行する処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。図1は、コンクリート圧送管路の全体を示す斜視図である。コンクリート圧送管路10は、コンクリートポンプ車100に装備され、コンクリートポンプ車のブーム110に沿って配置される。
【0020】
ブーム110は、旋回部材111に複数本のブーム部材113,115,117を直列接続したものである。これらの部材同士の接続箇所はそれぞれ、角度調整可能な関節112,114,116を構成する。関節112,114,116の角度を調整することによって、折り畳み式のブーム110は、コンクリートポンプ車100の荷台上で折り畳まれたり、コンクリートポンプ車100から遠くへ延びたりすることができる。また旋回部材111が垂直な軸線回りに回動することによって、ブーム110はコンクリートポンプ車100の前後左右の任意方向へ指向する。
【0021】
コンクリート圧送管路10は、複数の管を1本に直列接続したものであり、ブーム110に沿って配列される。複数の管は、長さおよび形状の異なる管を含む。コンクリート圧送管路10は、関節112,114,116に応動して回動可能とされる。
【0022】
コンクリート圧送管路10の一端は、コンクリートポンプ車100の本体に備え付けの受け入れホッパ101を介してポンプ102と接続される。ポンプ102はシリンダ式のポンプ装置である。コンクリート圧送管路10の他端は、ブーム110の先端でホース40に接続される。ホース40はゴム製等であって可撓性を有する。コンクリート圧送管路10は硬質の管(金属管)を継ぎ足したものであるが、途中に可撓性ホースが介在してもよい。
【0023】
具体的にはコンクリート圧送管路10は、多数の鋼管を継ぎ足したものであって、長尺な1本の管路を構成する。より具体的にはコンクリート圧送管路10は、受け入れホッパ101内のS字管11、受け入れホッパ101から外部へ突出するエルボ管12、テーパ管13、複数種類のベンド管14,15、直管16、S字管17、直管18、ベンド管19、エルボ管20、直管21、直管22、エルボ管23、直管24、エルボ管25、直管26、直管27、エルボ管28、直管29、エルボ管30、直管31、直管32を順次、直列接続したものである。なおテーパ管13は、ポンプ102に近い側のエルボ管12を大径とし、ポンプ102から遠い側のベンド管14を小径として、圧送先に向かって縮径する先細形状である。なお全ての管あるいは一部の管は、内管と外管を貼り合わせた二重管である。
【0024】
これらの管同士の接続箇所は、固定である箇所と、スイベル状に回動する箇所がある。スイベル状に回動する箇所は、S字管11とエルボ管12の接続箇所と、関節112,114,116の近傍の接続箇所である。関節114につき代表的に説明すると、エルボ管23と直管24の接続箇所、および/または直管24とエルボ管25の接続箇所、である。
【0025】
生コンプラントで混練されて図示しないアジテータ車からホッパ101に荷下ろしされる未硬化コンクリートは、ポンプ102によってコンクリート圧送管路10の中を圧送され、ホース40の先端から吐出される。コンクリート圧送管路10の長期使用により、コンクリート圧送管路10が摩耗して管の肉厚が薄くなったり、管同士の接続箇所に設けられるパッキンおよび接続用のリングが劣化したりする。そこで適切なタイミングで管、パッキン、リング等の附属部品を交換する必要がある。
【0026】
管11~32は、新品にあっては配管摩耗率0%(耐用%=100%)であるが、経時的に使用されることにより、圧送体積の累積量に比例して摩耗する。管の配管摩耗率が100%ないし100%近くに達すると、管の耐用%は0%ないし0%に近くなる。各管の配管摩耗率の進行はすべて同一ではないため、管11~32は全てではなく1本毎にばらばらで交換される。ホース40も圧送体積の累積量に基づいて耐用%を計算される。
【0027】
次にコンクリート圧送管路10の点検管理システムにつき説明する。
【0028】
図2は、本実施形態の点検管理システムを示すシステム構成図である。点検管理システムは、ホストコンピュータ50と、表示端末61と、以下に述べる幾つかのオプション機器を具備し、両矢印で表されるようにネットワーク接続されて、あるいは個々に1対1接続されて、データを送受信する。ホストコンピュータ50は、各オプション機器からデータを収集し、分析し、結果を各オプション機器へ返すことから、サーバとも呼ばれる。管11等の交換日は管1本毎にホストコンピュータ50に記憶されている。
【0029】
ホストコンピュータ50は任意の場所に設置可能である。例えばインターネットのクラウドシステムのように、コンクリートポンプ車100でもなく、コンクリートポンプ車100の管理会社60でもない別な場所に設置可能である。表示端末61は、コンクリート圧送管路10から離れた場所、例えばコンプリートポンプ車100の管理会社60、に設置され、上述した各管11~32およびホース40毎の管理状況を表示する。なお表示端末61はデスクトップ型のパソコンであってもよいし、あるいは携帯端末であってもよい。
【0030】
本実施形態の点検管理システムは、携帯端末70をさらに具備する。携帯端末70は、建設現場でコンクリート圧送管路10を用いてコンクリート工事を施工する作業者200の手で、本日の圧送体積DV(打設量ともいう)を入力される。この入力と管11~32およびホース40の交換日だけで本実施形態の点検管理システムは管11~32およびホース40を管理することができる。ホストコンピュータ50は個々の施工日の圧送体積DVを記憶し、交換日から現時点までの圧送体積DVの累積量SVも算出する。つまりホストコンピュータ50は、各管11~32およびホース40(以下、管11等ともいう場合がある)における累積通過量SVを算出する。累積通過量SVとは、各管の使用開始日、つまり管11等の交換日、からの累積量である。
【0031】
コンクリートポンプ車100の稼働する日毎の当日に作業者200は、コンクリートポンプ車100の始業前点検(あるいは終業後点検)を行い、点検結果OKを携帯端末70に入力する。
【0032】
図3は、本実施形態のシステムが算出して表示端末61に表示する各管11~32およびホース40毎の配管摩耗率の例示である。図3の表示画面中、左から右に向かって、矩形のセルはコンクリート圧送管路10の一端から他端までを順次表示するものであって、SはS字管11を、ケはホッパ101から外部へ突出する管12を、Tはテーパ管13を、Bはベンド管14,15を、空所のセルは残りの管を表示する。
【0033】
ホストコンピュータ50は、管11~32およびホース40の個々の耐用通過量PSVを分母とし、管11等の交換日からの日々の累積であって日々のコンクリート圧送体積DVの積算になる個々の累積通過量SVを分子とし、配管摩耗率SV/PSVを算出して表示する。セルの着色濃度が薄いものは配管摩耗率SV/PSVが小さく耐用%が大きく交換時期が遠い。セルの着色濃度が濃いものは配管摩耗率SV/PSVが大きく耐用%が小さく交換時期が近い。本実施形態では、セルの着色濃度が4種類に区分される。図3を参照して、最も濃いセルは警告の度合いが最も高く、配管摩耗率が100%を超えている。2番目に濃いセルは予備的な警告を表すものであって、配管摩耗率が80%を超え100%以下である。3番目に濃いセルはやや薄い色であって、使用にあまり問題はないが点検を促し、配管摩耗率が60%を超え80%以下である。4番目に濃いセルは最も薄い色であって、新品を含む等ほぼ問題はなく、配管摩耗率が60%以下である。耐用通過量PSVは経験則から得られる数値であり、例えば数千~数十万立方米の範囲に含まれる。
【0034】
各管11~32およびホース40の許容累積通過量PSVは、共通の値であってもよいし、管毎に異なってもよい。例えば、ポンプ102に近いほど耐用通過量PSVは小さく設定され、ホース40に近いほど耐用通過量PSVは大きく設定されてもよい。また例えば、エルボ管12、エルボ管20、エルボ管23、エルボ管25の耐用通過量PSVは、直管16、直管18、直管21、直管22、直管24、直管26、直管27、直管29、直管31、直管32の耐用通過量PSVよりも相対的に小さく設定されてもよい。
【0035】
また本実施形態の点検管理システムは、各管11等の管同士の繋ぎ目のパッキンおよびリングを個々に管理するものであってよい。個々のパッキンは、図3に示す各管11~32の点検管理状況と同様、別な点検管理状況画面(図略)に表示される。
【0036】
図3に例示される点検管理状況画面を参照して、1号車は、図1のコンクリート圧送管路10を示すものであって、各管11~32およびホース40の管理状況をセルで表示する。始業前点検等の点検結果はすでにOKと入力されていることが表示される。各管のセルおよび「詳細」をクリックすると、各管の配管摩耗率の数値(%)を表示させることができる。
【0037】
図3中、1号車において、セルにSが付されている管11は、その着色濃度から配管摩耗率が60%を超え80%以下の範囲にあることが表示される。また管12~32およびホース40は、その着色濃度から配管摩耗率が60%以下の範囲にあることが表示される。
【0038】
本実施形態の点検管理システムは、複数のコンクリート圧送管路を同時に管理する。各車の稼働の有無は、管理会社60によって表示端末61に入力されるが、作業者200によって携帯端末70に入力されてもよい。図3を参照して、2号車以降は、図示しない他の圧送管路の管理状況を表示する。管理会社60の稼働有および作業者200の点検結果入力によって、2号車にはOKが表示される。2号車のコンクリート圧送管路を表すセルは全て、その着色濃度から配管摩耗率が60%以下の範囲にあることが表示される。3号車のコンクリート圧送管路には、セルの着色濃度から、全ての管の配管摩耗率が60%を越えていることと、配管摩耗率が80%を越えている管が1本あることがその管を特定するように表示される。また3号車は、管理会社60の稼働有が入力されてなく、作業者200の点検結果入力もされてなく、休みである(稼働していない)ことが表示される。
【0039】
4号車に関して、管理会社60の稼働有が入力されているが、作業者200の始業前点検等の点検結果が未だ入力されてなく、点検の欄に「忘れ」と表示される。さらに表示端末61には、三角形で囲まれた!とともに「点検忘れ1件」と警告が表示される。
【0040】
また4号車のコンクリート圧送管路には、セルの着色濃度から、全ての管の配管摩耗率が60%を越えていることと、配管摩耗率が80%を越えている管が2本あることがその管を特定するように表示される。これにより表示端末61が設置される管理会社60に居る管理者300は、4号車に耐用%の少ない管が含まれ、4号車に充分な注意を向けることができる。
【0041】
近い将来に3号車の管1本と、4号車の管2本の交換が見込まれるため、本実施形態の点検管理システムで、管理者300は図2に示すようにホストコンピュータ50と部品サプライヤー80の端末81を通信接続して、上述した交換予定の配管を、表示端末61から容易かつ迅速に注文することができる。新品の管の注文は、表示画面上で管のセルおよび「注文する」のボタンをクリックするとよい。ここで表示端末61は、任意で、管理会社60が保存する管の在庫を表示してもよい。図3では例示的に、ベンド管の在庫が残1、管同士を継ぎ足すリングの在庫が0であることが表示される。管理会社60の管理者300は、在庫と配管摩耗率を突き合わせて、交換予定の管を種別に注文することができる。このように本実施形態によれば、長さおよび形状の異なる各管を、情報共有することができるので、迅速かつ正確かつ省力化された管理が実現する。
【0042】
図3中、ベンド管の在庫が残1であり、ベンド管の交換予定が3であることから、表示端末61には「在庫不足 2件」と警告が表示される。また「ベンド管 残1」の表示の隣に「要注文」と表示される。
【0043】
管理会社60が注文した管を部品サプライヤー80から検収すると、管理会社60の管理者300は図3のディスプレイ画面に表示される「入荷処理」をクリックするとよい。これにより管理会社60は、管11等の点検と注文を1画面で同時に実行することができ、これらに要する手間を少なくすることができる。
【0044】
5号車は、この日において稼働しており、点検結果がOKであることが表示される。また、最も左にあるSが付されているセルの着色濃度から、ポンプに最も近い管の配管摩耗率が60%を超えていることが表示される。また、各管のセルの着色濃度から、残りの管の配管摩耗率60%以下であることが表示される。
【0045】
6号車および8号車は、この日において稼働しており、点検結果がOKであることが表示される。また、各管を表すセルの着色濃度から、全ての管の配管摩耗率60%以下であることが表示される。7号車は、この日において稼働しており、点検結果がOKであることが表示される。また、各管を表すセルの着色濃度から、最も左の管(セルにSが付されている)の配管摩耗率60%以下であり、他の管の配管摩耗率が60%を超えていることが表示される。
【0046】
3号車および4号車に関して上述したように配管摩耗率が80%を超えている管の交換が完了し、該管の配管摩耗率を0にリセットする場合、管理会社60の管理者300は、表示画面上で管のセルおよび「配管交換の入力」のボタンをクリックするとよい。これにより交換日がホストコンピュータ50に記憶される。以降、新品の管に対応するセルの着色濃度が最も薄くなる(配管摩耗率60%以下と表示される)。
【0047】
圧送管路自体の登録および削除や、その他の設定等を変更する場合、管理会社60の管理者300は、表示画面上で管のセルおよび「管理・設定」のボタンをクリックするとよい。
【0048】
日々の始業前点検は、打音検査のような簡易な点検であってもよいが、詳細かつ入念な点検も時々実行するとよい。詳細かつ入念な点検は、管11~32の肉厚を直接計測する点検であるとさらに良い。新品の管の肉厚から、点検時の配管摩耗率を算出することができる。管理者300は「管理・設定」のボタンをクリックして、各管の肉厚の数値および配管摩耗率[%]を表示端末61に入力してもよい。ホストコンピュータ50は、各管の肉厚の数値をその後の点検管理状況に反映させる。ここで管11~32の肉厚を計測する計測装置120とホストコンピュータ50を通信接続してもよい。計測装置120は、図2に二重矢で示すように管11~32に沿って移動し、管11~32の肉厚を順次計測し、計測結果をホストコンピュータ50へ出力する。これにより上述したSV/PSVで算出される配管摩耗率を、計測により得られる配管摩耗率に自動的に補正して、正確な管理が実現する。また管理者300が各管の肉厚の数値および配管摩耗率[%]を入力する工数が軽減される。
【0049】
次に本発明の変形例につき説明する。
【0050】
図2を参照して変形例のシステムでは、上述した作業者200が携帯端末70へ日毎の圧送体積DVを入力することに代えて、コンクリートポンプ車100等に後付け流量計90が設置される。後付け流量計90は、コンクリートポンプ車100自身の装備とは別に、コンクリートポンプ車100に付加的に設定される装置であり、ホストコンピュータ50と通信接続される。かかる後付け流量計として例えば特願2022-017437号明細書に記載のものがある。後付け流量計90は、ポンプ102の運転状況(正転・逆転・停止)およびポンプ102の脈動数を検知し、ポンプ102の1回のストローク体積に基づいて、その日の圧送体積DVを算出してホストコンピュータ50へ出力する。変形例では、作業者200が携帯端末70に日毎の圧送体積DVを入力することを要しない。また旧式のコンクリートポンプ車100をIoT化(Internet of things)して本実施形態の点検管理システムに接続することができる。
【0051】
ところで本実施形態の点検管理システムは、図4に示すフローチャートを参照して、管11,12,13・・・毎の交換日T11,T12,T13・・・を記憶するステップS10と、コンクリート圧送管路10を流れる日毎の圧送体積DVa,DVb,DVc・・・(添え字abc・・・は年月日)を記憶するステップS20と、交換日T11,T12,T13・・・および日毎の圧送体積DVa,DVb,DVc・・・に基づき、交換日T11,T12,T13・・・から現在までの管11,12,13・・・毎の累積通過量SV11,SV12・・・を算出するステップS30と、累積通過量SV11,SV12・・・のいずれかが所定値(耐用通過量PSV)に達したときに警告を発するステップS40を実行する。
【0052】
これにより作業者200は携帯端末70に日毎の圧送体積DVを入力するだけでよく、管理に要する工数が簡素化される。また管理会社60は各管11等の摩耗率を知ることができるので、管11等の1本毎の配管交換時期を知ることができる。
【0053】
また本実施形態の点検管理システムによれば、作業者200が始業前点検の結果を携帯端末70に入力することから、システム上でコンクリート圧送管路10の点検状況が管理され、管理会社60は作業者200の点検忘れをチェックすることができる。
【0054】
つまり管理会社60は、表示端末61を有する限り、いつでもどこでもコンクリート圧送管路10の点検状況と、配管摩耗率と、配管交換時期を確認することができる。
【0055】
また本実施形態によれば、管11~32等の部品注文が電子データ化され、ウェブで管理される。したがって部品サプライヤー80は、管11~32等の受注処理を省力化することができる。
【0056】
また本実施形態によれば、点検管理と交換予定の管11等の注文を1画面で一括できることから、発注忘れを防止することができ、注文処理を省力化することができる。
【0057】
また本実施形態の点検管理システムによれば、コンクリート圧送管路10の点検忘れがある場合に図3の画面に警告を発することができる。
【0058】
また本実施形態の点検管理システムによれば、管理会社60が管11等の配管交換時期を常に把握することができるばかりでなく、発注が省力化され、在庫の有無や発注状況といった在庫管理を図3の画面で行うことができるので、自社在庫を適正管理し得て、発注および管理が省力化される。
【0059】
また変形例の点検管理システムによれば、後付け流量計90をさらに備えることから、作業者は携帯端末70に日毎の圧送体積DVを入力する手間を省くことができる。また旧式のコンクリートポンプ車100をIoT化することができる。
【0060】
また本実施形態のコンピュータ50は、プログラムに基づき、下記の機能を実現する。ステップS10:コンクリート圧送管路10を構成する複数の管11~32およびホース40の交換日を管11~32およびホース40毎に記憶する機能。
ステップS20:コンクリート圧送管路10を流れる未硬化コンクリートの圧送体積DVを日毎に記憶する機能。
ステップS30:管毎の交換日および日毎の圧送体積DVに基づき、交換日から現在まで管11~32およびホース40を流れた累積通過量を管11~32およびホース40毎に算出する機能。
ステップS40:管毎累積通過量SVが所定値である許容累積通過量PSVに達したときに警告を発する機能。
【0061】
なおステップS10~S40の各ステップは、手順であってもよく、あるいは手段であってもよい。そしてホストコンピュータ50は、プログラムに基づき、各手順を実行し、あるいは各手段として機能する。
【0062】
プログラムは、ホストコンピュータ50に格納されてもよいし、あるいはホストコンピュータ50と接続するネットワークに格納されてもよいし、あるいはホストコンピュータ50と接続する他のサーバに格納されていてもよい。例えばプログラムは、表示端末61や、携帯端末70や、図示しない他の端末に格納されてもよい。プログラムは、図2に示すシステムを実施するソフトウェアに含まれるものであってもよい。またプログラムは、図2に示す特定の機材(複数の特定のポンプ車100、特定の携帯端末70、特定の端末81等)のためにカスタマイズされたアプリケーションソフトウェアを構成するものであってもよい。
【0063】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、建設機械において有利に利用される。
【符号の説明】
【0065】
10 コンクリート圧送管路、 11~32 管、 40 ホース、
50 ホストコンピュータ、 60 管理会社、 70 携帯端末、
80 部品サプライヤー、 90 後付け流量計、
100 コンクリートポンプ車、 101 受け入れホッパ、
102 ポンプ、 110 ブーム、 120 計測装置。

図1
図2
図3
図4