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特開2024-114425人工ライブロック前駆体、人工ライブロック、海水魚飼育用水槽、および人工ライブロック前駆体の製作方法
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  • 特開-人工ライブロック前駆体、人工ライブロック、海水魚飼育用水槽、および人工ライブロック前駆体の製作方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114425
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】人工ライブロック前駆体、人工ライブロック、海水魚飼育用水槽、および人工ライブロック前駆体の製作方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 63/00 20170101AFI20240816BHJP
【FI】
A01K63/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020184
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】523050830
【氏名又は名称】茂木 正成
(74)【代理人】
【識別番号】100108143
【弁理士】
【氏名又は名称】嶋崎 英一郎
(72)【発明者】
【氏名】茂木 正成
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104AA01
2B104CA03
2B104CB22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】体積が大きく軽量な擬岩を形成可能で、海水魚飼育用水槽内に設置し易い人工ライブロック前駆体の提供、並びに前記の人工ライブロック前駆体の特長を備えた人工ライブロック、海水魚飼育用水槽、および人工ライブロック前駆体の製作方法の提供。
【解決手段】人工ライブロック前駆体100は、所要大きさの体積と浮力を有し海水に浮遊し得る、例えば空気を密閉したプラスチック容器である浮遊体2と、浮遊体2の周囲を取り囲む擬岩1とを含み、擬岩1は、複数の擬岩骨材1aがセメントまたは接着剤で適宜の塊状に固められているとともに、浮遊体2を略隠蔽する状態に積み重ねられ浮遊体2とも接着されてなり、擬岩の総重量が浮遊体の浮力がよりも大きい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面や内部にバクテリア等の微生物や石灰藻等の藻類が付着する前の段階の構造物であって、
複数の擬岩骨材がセメントまたは接着剤で塊状に固められてなる擬岩と、
前記擬岩の内部に埋設された状態に設けられており比重が水よりも極めて小さく所要の体積を有することにより海水浸漬時に所要の浮力を有する浮遊体とを含む構造物であり、
前記擬岩の総重量が前記浮遊体の浮力がよりも大きいことを特徴とする人工ライブロック前駆体。
【請求項2】
前記浮遊体の海水浸漬時の浮力が前記擬岩の重量の40-95%の浮力を有する請求項1に記載の人工ライブロック前駆体。
【請求項3】
前記擬岩骨材の使用重量が前記浮遊体の海水中における浮力よりも5%以上大きい請求項1に記載の人工ライブロック前駆体。
【請求項4】
前記浮遊体は、空気を密閉したプラスチック容器であり、さらに、前記プラスチック容器の周囲を取り巻く前記擬岩間の小空隙に発泡性ウレタン剤が注入され発泡してなる発泡性樹脂を含む請求項1に記載の人工ライブロック前駆体。
【請求項5】
前記浮遊体は、発泡性樹脂よりなる適宜の大きさ・形状のブロックであり、さらに、前記発泡性樹脂のブロックの周囲を取り巻く前記擬岩間の小空隙に発泡性ウレタン剤が注入され発泡してなる発泡性樹脂を含む請求項1に記載の人工ライブロック前駆体。
【請求項6】
前記擬岩が、擬岩骨材が積み重ねて接着されてなり、かつ所要大きさの内部大空隙を有する形状に成形され、
前記浮遊体は、前記内部大空隙および前記擬岩間の小空隙に発泡性ウレタン剤が注入され発泡してなる発泡性樹脂のブロックである請求項1に記載の人工ライブロック前駆体。
【請求項7】
前記擬岩間の小空隙の発泡性樹脂の露出表面が、水槽用セメントで作られた小さな小石や欠片が貼り付けられているか、または水槽用セメントの薄膜が塗布されていることにより、前記浮遊体の表面を擬岩と略同一表面となるよう化粧されている請求項4-6のいずれか1項に記載の人工ライブロック前駆体。
【請求項8】
外面全体に天然ライブロックの表面に近似する色彩を有する塗料が塗布されている請求項7に記載の人工ライブロック前駆体。
【請求項9】
前記擬岩または前記浮遊体に取付側端部を支持された内側磁石であって、海水魚飼育用水槽内に配置した際に鑑賞側と反対側の水槽側面に面密着する状態になり水槽外より宛がう外側磁石と吸引し合うことにより位置固定機能を有する前記内側磁石を備えている請求項7に記載の人工ライブロック前駆体。
【請求項10】
前記擬岩または前記浮遊体に取付側端部を支持された吸盤であって、海水魚飼育用水槽内に配置した際に鑑賞側と反対側の水槽側面または水槽底面に吸引し得る位置固定機能を有する内側磁石を備えている請求項7に記載の人工ライブロック前駆体。
【請求項11】
請求項7に記載の人工ライブロック前駆体を海水中に一定期間浸漬させたことにより表面や内部に微生物や藻類が付着して繁殖しライブロック化している段階の人工ライブロック。
【請求項12】
水槽本体と、前記水槽本体に収容された請求項7に記載の人工ライブロック前駆体とを含む海水魚飼育用水槽。
【請求項13】
水槽本体と、前記水槽本体に収容された請求項12に記載の人工ライブロックを含む海水魚飼育用水槽。
【請求項14】
海水に一定期間浸漬することにより構造物の表面や内部にバクテリア等の微生物や石灰藻等の藻類が付着して人工ライブロック化する前の段階の構造物である人工ライブロック前駆体の製造方法であって、
所要大きさの体積と浮力を有し海水に浮遊し得る浮遊体である空気を密閉したプラスチック容器または発泡性樹脂のブロックの周囲を取り囲むように、擬岩骨材をセメントまたは接着剤で適宜の塊状に固めて擬岩を成形し、さらに、擬岩間の小空隙を発泡性ウレタン剤を注入し発泡する発泡性樹脂で埋めてから水槽用セメントで作られた小さな小石や欠片が貼り付けるか、または水槽用セメントの薄膜を塗布することにより、前記浮遊体の表面を擬岩と略同一表面となるよう化粧を施すことを特徴とする人工ライブロック前駆体の製造方法。
【請求項15】
海水に一定期間浸漬することにより構造物の表面や内部にバクテリア等の微生物や石灰藻等の藻類が付着して人工ライブロック化する前の段階の構造物である人工ライブロック前駆体の製造方法であって、
擬岩骨材を積み重ねて接着しつつ所要の浮力が生じ得る所要大きさの内部大空隙を有する形状にして前記擬岩を成形し、成形の途中および/または成形後に、前記内部大空隙および前記擬岩間の小空隙に発泡性ウレタン剤を注入し発泡してなる発泡性樹脂を前記浮遊体とし、水槽用セメントで作られた小さな小石や欠片が貼り付けるか、または水槽用セメントの薄膜を塗布することにより、前記浮遊体の表面を擬岩と略同一表面となるよう化粧を施すことを特徴とする人工ライブロック前駆体の製造方法。
【請求項16】
外面全体に天然ライブロックの表面に近似する色彩を有する塗料を塗布する
請求項14または15に記載の人工ライブロック前駆体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面や内部にバクテリア等の微生物や石灰藻等の藻類が付着し繁殖している前の段階の人工ライブロック前駆体、微生物や藻類が付着して繁殖している段階の人工ライブロック、人工ライブロック前駆体または人工ライブロックを収容している海水魚飼育用水槽、および人工ライブロック前駆体の製作方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、観賞用海水魚の飼育において、海底から採取された自然石を水槽内に配置することが盛んに行われるようになってきている。この自然石は、一般にライブロック(生きた岩)と呼ばれており、自然石の表面や内部にはバクテリア等の微生物や石灰藻等の藻類が付着して繁殖している。これらの微生物や藻類の中には水質浄化作用を有するものも多く存在するために、ライブロックは、水槽内の水質を良好に保つことが可能なものとして知られている。また、ライブロックによって、海水魚の病気に対する抵抗力が増加したという実験結果も報告されている。さらに、ライブロックにプランクトン等の原生動物や蟹等の小動物等が定棲していると、水槽内の生態系を自然の生態系にさらに近づけて、ライブロックの量や海水魚の種類等によっては、人為的に餌を与えなくとも水槽内の海水魚が自立して生息できるようになることが知られている。
【0003】
ところで、このライブロックは、海底に存在する天然の珊瑚から採取したもの(以下、このライブロックを天然ライブロックと呼ぶことがある。)が一般的に使用されていたが、天然ライブロックは、ワシントン条約によって国際間取引が厳しく規制されていたために、日本国内においては、沖縄県や東京都で採取された天然ライブロックを使用するのが主流となっていた。沖縄県や東京都は、良質な天然ライブロックが採取できる国内でも有数の天然ライブロックの産地として知られている。しかし、近頃、天然ライブロックの採取が環境保全の面から様々な規則に抵触することが広く認識されるようになり、沖縄県や東京都で天然ライブロックを採取するのは実質的に不可能となった。このため、一般のマリンアクアリストが良質の天然ライブロックを入手するのは非常に困難となっている。今現在、ライブロックの需要と供給のバランスは大きく崩れ始めており、天然ライブロックの代替物に対するニーズが急速に高まってきているが、従来は、特許文献1に記載されたアクアリウム用海藻の作成方法や、FRP(繊維強化プラスチック)等の合成樹脂によって成形された擬岩等が使用されるに留まっており、天然ライブロックの代替物として相応しい物が存在しないのが実情であった。
【0004】
【特許文献1】特開平10-098963(特許請求の範囲、実施の形態1、実施の形態3、実施の形態4、発明の効果)
【0005】
即ち、特許文献1のアクアリウム用海藻の作成方法は、海藻繁殖材料を支持体に固定化して生育させることを特徴とするものであり、水槽内での操作性や栽培性が良好な海藻を作成するものとしては一定の効果を奏するものではあったが、微生物や藻類等が付着して繁殖するライブロックを提供するものではなかった。
このことは、特許文献1に、支持体を海水に浸漬することについては記載されているものの、その浸漬期間が1日であることを見ても分かる。支持体に海藻の種子を付着させるだけであるならば、この浸漬期間であっても可能であるが、微生物や藻類を繁殖させるには短すぎるためである。また、支持体に多孔質のセラミックスを使用することについては記載されているものの、支持体の形状は、板状、球状、円柱状等が例示されるに留まっており、複雑な形状を有することが好ましいとされるライブロックを意識したものとは言えない。さらに、支持体の素材の配合や製造方法等が具体的に記載されておらず、天然ライブロックの代替物として相応しい構成が明らかにされていない。
【0006】
一方、FRP等の合成樹脂によって成形された人工擬岩は、その材質や形状から、微生物等の海水生物を付着させることが困難であり、ライブロックの最も基本的な作用である水質浄化作用が殆ど期待できないものである。また、合成樹脂製の人工擬岩は、外観が天然ライブロックから程遠いのが通常である。さらに、仮に合成樹脂製の人工擬岩を海水に浸漬してライブロック化を試みたとしても、海水生物に有害な影響を及ぼす可塑剤が人工擬岩から溶出して、周囲の環境を汚染するおそれがある。さらにまた、仮に合成樹脂製の人工擬岩のライブロック化に成功したとしても、水槽内において、飼育している海水魚等が人工擬岩から溶出した可塑剤によって甚大な被害を受けるおそれがある。これを防ぐためには、長期間に亘る海水浸漬処理や炭酸ナトリウムの投与処理等が必要となる。従って、以上に鑑みると、合成樹脂によって成形された人工擬岩は、専ら水槽内の人工的な景観を楽しむためだけに配置されるものと言っても過言ではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、表面や内部にバクテリア等の微生物や石灰藻等の藻類が付着する前の段階の構造物であって、擬岩骨材が少量で済み、体積が大きく軽量な擬岩を形成可能であり、海水魚飼育用水槽内に設置する際に取り扱いし易く人工ライブロック化が容易である人工ライブロック前駆体を提供するものであり、並びに前記の人工ライブロック前駆体の特長を備えた人工ライブロック、海水魚飼育用水槽、および人工ライブロック前駆体の製作方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の第1の発明態様に係る人工ライブロック前駆体は、複数の擬岩骨材がセメントまたは接着剤で塊状に固められてなる擬岩と、前記擬岩の内部に埋設された状態に設けられており比重が水よりも極めて小さく所要の体積を有することにより海水浸漬時に所要の浮力を有する浮遊体とを含む構造物であり、前記擬岩の総重量が前記浮遊体の浮力がよりも大きい構成である。
【0009】
本願の第2の発明態様に係る人工ライブロック前駆体は、第1の発明態様の構成に加え、前記浮遊体の海水浸漬時の浮力が前記擬岩の重量の40-95%の浮力を有する構成である。
【0010】
本願の第3の発明態様に係る人工ライブロック前駆体は、第1の発明態様の構成に加え、前記擬岩骨材の使用重量が前記浮遊体の海水中における浮力よりも5%以上大きい構成である。
【0011】
本願の第4の発明態様に係る人工ライブロック前駆体は、第1の発明態様の構成に加え、前記浮遊体が、空気を密閉したプラスチック容器であり、さらに、前記プラスチック容器の周囲を取り巻く前記擬岩間の小空隙に発泡性ウレタン剤が注入され発泡してなる発泡性樹脂を含む構成である。
【0012】
本願の第5の発明態様に係る人工ライブロック前駆体は、第1の発明態様の構成に加え、前記浮遊体が、発泡性樹脂よりなる適宜の大きさ・形状のブロックであり、さらに、前記発泡性樹脂のブロックの周囲を取り巻く前記擬岩間の小空隙に発泡性ウレタン剤が注入され発泡してなる発泡性樹脂を含む構成である。
【0013】
本願の第6の発明態様に係る人工ライブロック前駆体は、第1の発明態様の構成に加え、前記擬岩が、擬岩骨材が積み重ねて接着されてなり、かつ所要大きさの内部大空隙を有する形状に成形され、前記浮遊体が、前記内部大空隙および前記擬岩間の小空隙に発泡性ウレタン剤が注入され発泡してなる発泡性樹脂のブロックである構成である。
【0014】
本願の第7の発明態様に係る人工ライブロック前駆体は、第4-6のいずれか1つの発明態様の構成に加え、前記擬岩間の小空隙の発泡性樹脂の露出表面が、水槽用セメントで作られた小さな小石や欠片が貼り付けられているか、または水槽用セメントの薄膜が塗布されていることにより、前記浮遊体の表面を擬岩と略同一表面となるよう化粧されている構成である。
【0015】
本願の第8の発明態様に係る人工ライブロック前駆体は、第7の発明態様の構成に加え、外面全体に天然ライブロックの表面に近似する色彩を有する塗料が塗布されている構成である。
【0016】
本願の第9の発明態様に係る人工ライブロック前駆体は、第1の発明態様の構成に加え、前記擬岩または前記浮遊体に取付側端部を支持された内側磁石であって、海水魚飼育用水槽内に配置した際に鑑賞側と反対側の水槽側面に面密着する状態になり水槽外より宛がう外側磁石と吸引し合うことにより位置固定機能を有する前記内側磁石を備えている構成である。
【0017】
本願の第10の発明態様に係る人工ライブロック前駆体は、第7の発明態様の構成に加え、前記擬岩または前記浮遊体に取付側端部を支持された吸盤であって、海水魚飼育用水槽内に配置した際に鑑賞側と反対側の水槽側面または水槽底面に吸引し得る位置固定機能を有する内側磁石を備えている構成である。
【0018】
本願の第11の発明態様に係る人工ライブロックは、第7の発明態様の人工ライブロック前駆体を海水中に一定期間浸漬させたことにより表面や内部に微生物や藻類が付着して繁殖しライブロック化している段階の構造物である。
【0019】
本願の第12の発明態様に係る海水魚飼育用水槽は、第1の発明態様の構成に加え、水槽本体と、前記水槽本体に収容された人工ライブロック前駆体とを含む構造物である。
【0020】
本願の第13の発明態様に係る海水魚飼育用水槽は、水槽本体と、前記水槽本体に収容された請求項1に記載の人工ライブロックを含む構成である。
【0021】
本願の第14の発明態様に係る人工ライブロック前駆体の製造方法は、海水に一定期間浸漬することにより構造物の表面や内部にバクテリア等の微生物や石灰藻等の藻類が付着して人工ライブロック化する前の段階の構造物の製造方法であって、所要大きさの体積と浮力を有し海水に浮遊し得る浮遊体である空気を密閉したプラスチック容器または発泡性樹脂のブロックの周囲を取り囲むように、擬岩骨材をセメントまたは接着剤で適宜の塊状に固めて擬岩を成形し、さらに、擬岩間の小空隙を発泡性ウレタン剤を注入し発泡する発泡性樹脂で埋めてから水槽用セメントで作られた小さな小石や欠片が貼り付けるか、または水槽用セメントの薄膜を塗布することにより、前記浮遊体の表面を擬岩と略同一表面となるよう化粧を施すことを特徴とする。
【0022】
本願の第15の発明態様に係る人工ライブロック前駆体の製造方法は、海水に一定期間浸漬することにより構造物の表面や内部にバクテリア等の微生物や石灰藻等の藻類が付着して人工ライブロック化する前の段階の構造物の製造方法であって、擬岩骨材を積み重ねて接着しつつ所要の浮力が生じ得る所要大きさの内部大空隙を有する形状にして前記擬岩を成形し、成形の途中および/または成形後に、前記内部大空隙および前記擬岩間の小空隙に発泡性ウレタン剤を注入し発泡してなる発泡性樹脂を前記浮遊体とし、水槽用セメントで作られた小さな小石や欠片が貼り付けるか、または水槽用セメントの薄膜を塗布することにより、前記浮遊体の表面を擬岩と略同一表面となるよう化粧を施すことを特徴とする。
【0023】
本願の第16の発明態様に係る人工ライブロック前駆体の製造方法は、第14または15の発明態様の構成に加え、外面全体に天然ライブロックの表面に近似する色彩を有する塗料を塗布する構成である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、表面や内部にバクテリア等の微生物や石灰藻等の藻類が付着する前の段階の構造物であって、擬岩骨材が少量で済み、体積が大きく軽量な擬岩を形成可能であり、海水魚飼育用水槽内に設置する際に取り扱いし易く人工ライブロック化が容易である人工ライブロック前駆体を提供することができ、並びに前記の人工ライブロック前駆体の特長を備えた人工ライブロック、海水魚飼育用水槽、および人工ライブロック前駆体の製作方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本願発明の第1の実施の形態の人工ライブロック前駆体を水槽内に設置した状態を示す側面図である。
図2】本願発明の第2の実施の形態の人工ライブロック前駆体を水槽内に設置した状態を示す側面図である。
図3】本願発明の第3の実施の形態の人工ライブロック前駆体を水槽内に設置した状態を示す側面図である。
図4】本願発明の第4の実施の形態の人工ライブロック前駆体を水槽内に設置した状態を示す側面図である。
図5】本願発明の第5の実施の形態の人工ライブロック前駆体の正面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明に係る人工ライブロック前駆体、人工ライブロック、海水魚飼育用水槽、および人工ライブロック前駆体の製作方法について図面を参照して説明する。
【0027】
人工ライブロック前駆体は、表面や内部にバクテリア等の微生物や石灰藻等の藻類が付着する前の段階の構造物である。本実施の形態の人工ライブロック前駆体の基本的構成は、擬岩と、擬岩の内部に埋設され外部から見えない状態に設けられる浮遊体とを含む構造物である。
【0028】
人工ライブロック前駆体に関する本願発明の主たる目的は、擬岩のみからなる従来の人工ライブロック前駆体に比し、(1)擬岩骨材の使用量が少なく原料コストを低減できること、(2)体積が同じ大きさでありながら重量を大幅に少なくでき持ち運びが容易であること、(3)海水を容れた水槽内で大きな浮力を生じ移動や固定を容易に行えること、(4)独創的な外観を作り易いことにある。
【0029】
擬岩は、所要量の擬岩骨材を専用セメントおよび/またはエポキシなどの接着剤を用いて適宜の形状・大きさの塊状に固めてなる。擬岩骨材は、無機骨材である小石大の自然石、砕石、砂利または砂と、およびセラミックス多孔質体のうちの1種またか複数種を用いることができる。砂と専用セメントと水とを掻き混ぜた混錬物は、固まる間際に、様々な大きさ・形状の小石サイズの塊状物とすることが容易にできて、この小石サイズの塊状物を自然石、砕石に替えて用いることもできる。
【0030】
浮遊体は、空気を密閉した所望大きさのペットボトル等のプラスチック容器および/または発泡樹脂体であり、擬岩の内部に埋設され外部から見えない状態に設けられる。発泡樹脂体には発泡ウレタンまたは発泡スチロールが含まれる。プラスチック容器にも様々な形状・サイズがあるので人工ライブロック前駆体の形状・サイズに対応して適したものを選択する。プラスチック容器と発泡樹脂体は、どちらか一方を選択して使用することに減退されず、併用した構成であって良い。発泡樹脂体は発泡済みのブロック体を用いても、発泡剤を注入して発泡してなるものであってもどちらでも良い。
【0031】
専用セメントおよび/またはエポキシなどの接着剤は、所要量の擬岩骨材を固まる速度が速く水中でも接着強度が劣化し難い性状の物を用いる。
【0032】
浮遊体は、人工ライブロック前駆体に占める割合が大きいほど擬岩骨材の使用量が少なくて済みコスト低減につながり人工ライブロック前駆体が軽量化され持ち運びが容易になるが、水槽に貯留した海水に浸漬した場合に浮力が大きすぎることにより、海水に浮いた状態になること、および、水槽の底面に不安定な着座状態になること、の回避が要求され、人工ライブロック前駆体に占める割合が大き過ぎないことが肝要である。
【0033】
このため、人工ライブロック前駆体は、浮遊体の海水中における浮力が擬岩の重量の例えば上限95%以下、下限40%であるように設定するのが良い。これには、まず、人工ライブロック前駆体の体積を設定し、これに対応するように、浮遊体の体積、および海水中における浮力の大きさを計量するとともに、擬岩骨材の使用重量を浮遊体の浮力よりも少なくとも5%大きくなるように設定する。これにより、従来の例えば20Kgの人工ライブロック前駆体と同じ体積を有する本願発明の人工ライブロック前駆体を構成するには、擬岩骨材の使用量を例えば5Kg以下に低減することが可能になり、上述した本願発明の目的を達成できる。
【0034】
擬岩骨材の使用重量が上述した浮遊体の海水中における浮力よりも5%大きくなるようにしても、人工ライブロック前駆体が浮遊体の海水中における浮力で浮いたり、横倒し状態や転覆状態になる不具合が生じることがある。不具合が生じる原因の1つは、擬岩骨材の重心が浮遊体の上側に来て浮力によるモーメントが擬岩重量による反対方向のモーメントを上回る場合である。このため、上記不具合が生じることを回避するために、擬岩骨材の使用重量が上述した浮遊体の海水中における浮力よりも5%以上大きくなることに加え、擬岩骨材の重心が浮遊体の下側に来て、さらに浮力によるモーメントが擬岩重量による反対方向のモーメントを下回るように構成する。なお、浮力によるモーメントは浮力の作用中心点から重心までの距離とこの浮力とによる乗算値であり、擬岩重量による反対方向のモーメントは重心から接地面の転倒側の角までの水平距離とこの重心とによる乗算値である。実際の解決手法は、暫定的に出来上がった人工ライブロック前駆体を海水中に浸漬して浮力で浮いたり、横倒し状態や転覆状態になる不具合が生じることがある場合には、擬岩重量による反対方向のモーメントが大きくなるように、浮遊体の下側の位置に必要量の擬岩骨材を接着により増量する。
【0035】
擬岩骨材に小石大の自然石、砕石を用いる場合、エポキシ等の瞬間接着剤を用いて1個ずつ連結していき石と石の隙間がある構造体として擬岩を軽量とするのが良い。さらに、石と石の隙間に発泡樹脂剤を注入し発泡樹脂体とするのが良い。この場合の注入発泡した発泡体も浮力を生成するので、この浮力も加味して擬岩骨材の使用重量を設定する必要がある。この発泡樹脂には発泡ウレタンまたは発泡スチロールが含まれる。石と石の隙間の発泡樹脂の露出部分にはモルタルを塗布することにより擬岩の一部として疑似化することができる。なお、モルタルに替えて、モルタルで作られた小さな小石や欠片が貼り付けても良い。
【0036】
擬岩骨材に砂利を用いる場合、砂利と専用セメントと水とを掻き混ぜた混錬物を普通に打設する形状では隙間が生じる構造体とはならないから、砂利とセメントとの混錬物を浮遊体の下側の位置を占め擬岩の一部となるように設ける。擬岩骨材に砂を用いる場合も同様、擬岩の一部を構成することができる。隙間が生じる構造体とするには、混錬物が固まる寸前で内部に空洞が生じる形状に作り上げれば良い。
【0037】
擬岩骨材に砂を用いる場合には、砂と専用セメントと水とを掻き混ぜた混錬物を浮遊体の外面に例えば2、3mm-10mmの厚さとなるように積層してなる擬岩の一部とすることができ、浮遊体の露出を隠蔽することができる。これには、コテを使って塗布する方法を採用することができ、また容器の混錬物に浮遊体を転がして浮遊体の外面に浮遊体が薄い厚さで付着する方法を採用することができる。さらに、浮遊体ようにも僅かに大きい型を用意しこの型内の底部に薄い厚さで混錬物を充填してから浮遊体を収容し型内の浮遊体の狭い空間である周囲に混錬物を充填する方法を採用することができる。
【0038】
人工ライブロック前駆体は、浮遊体の外面に砂と専用セメントと水とを掻き混ぜた混錬物を2-10mmの厚さに塗布・乾固して擬岩の上側の一部となるように作り、一方、上述した複数の小石大の自然石、砕石を接着剤を用いて1個ずつ連結していき石と石の隙間がある構造体を擬岩の下側の一部として作り、擬岩の下側の一部の上側に擬岩の上側の一部を載置し、さらに両者を接着剤または専用セメントと水とを掻き混ぜたモルタルで一体に連結した構造とすることができる。これによれば、上部に擬岩の薄肉部で覆われた浮遊体が、下部に擬岩の主要部がそれぞれ配置される構成になり、人工ライブロック前駆体が浮遊体の海水中における浮力で浮いたり、横倒し状態や転覆状態になることを回避することができる。なお、適宜の大きさの発泡樹脂体で浮遊体の一部として人工ライブロック前駆体の所要位置に配置する構成とすれば、浮遊体の海水中における浮力の大きさ・作用位置を適切に調整することができる
【0039】
浮遊体を発泡樹脂体で構成する場合、例えば発泡樹脂ブロックから削り出してクジラの立体形状体を作り上げ、外面にモルタルを塗布して擬岩一部として疑似化したものを人工ライブロック前駆体の上側部分として設けることができる。これによれば、人工ライブロック前駆体をさまざまな造形に作りあげることができ、興趣を高めることができる。
【0040】
また浮遊体を発泡樹脂体で構成する場合、複数の板状の発泡樹脂体を筒軸が横方向の角筒となるように接着し、角筒の両開放端を水槽の正面から見て左右配置として正面部に孔を開けた形態とし、外内面にモルタルを塗り付けたものを擬岩一部として疑似化し、人工ライブロック前駆体の上側部分として設けることができる。これによれば、熱帯魚の住処、通路とすることができ、興趣を高めることができる。
【0041】
また、人工ライブロック前駆体の下側部分を占めるよう、擬岩骨材として複数の小石大の自然石、砕石を用い、接着剤により石と石の隙間がある状態の塊状体を形成し、石と石の隙間に発泡樹脂剤を注入し発泡樹脂体とし浮遊体の一部とする構成とすることができ、この場合も石と石の隙間の浮遊体の露出部分にモルタルを塗布し擬岩一部として疑似化することができる。
【0042】
人工ライブロック前駆体は、最後の仕上げとして、外面全体に天然ライブロックの表面に近似する色彩を有する塗料を塗布した構成にすると、天然ライブロックに非常に近似した状態に化粧することができる。
【0043】
人工ライブロック前駆体は、擬岩に磁石を取り付け、この磁石を、水槽の外面に宛がう外部磁石または水槽内面に接着剤を介して添着した磁力吸引性を有する錆びにくい金属プレートと対向させ、外部磁石または金属プレートに磁気吸引させて固定手段とすることができ、あるいはこの磁石に替えて吸盤を設け固定手段とすることができる。これにより、海水魚飼育用水槽内に配置した際に鑑賞側と反対側の水槽側面に人工ライブロック前駆体が密着固定される状態になる。従来の例えば20Kgの人工ライブロック前駆体にあっては、重量が大きすぎて磁石や吸盤による保持はできなかったが、本願発明の人工ライブロック前駆体によれば、従来の例えば20Kgの人工ライブロック前駆体と同じ体積を有する構成としても、浮遊体を設けることで重量を大幅に軽くすることができ、それだけでなく、浮遊体が海水中で浮力を生ずるので、磁石や吸盤による保持が実現できる。
【0044】
本願発明の人工ライブロックは、上述した人工ライブロック前駆体を一定期間、例えば6か月間、海辺で海水に浸漬状態に放置し、もって、人工ライブロック前駆体の表面や内部にバクテリア等の微生物や石灰藻等の藻類が付着したものである。人工ライブロックにあっては、海水中から引き揚げ乾燥してしまうと、バクテリア等の微生物や石灰藻等の藻類が死んでしまうので、海水に浸漬した状態を保持する必要がある。
【0045】
本願発明の海水魚飼育用水槽は、水槽本体と、水槽本体内に上述した人工ライブロック前駆体または人工ライブロックを収容・配置し、海水を容れた構成である。販売のために、熱帯魚が住んでる状態である場合も含む。
【0046】
[第1の実施例]
第1の実施例を図1に示す。第1の実施例は、人工ライブロック前駆体100の後面部をモルタルで平面(立面)を作り密着部3として水槽Kの後面壁に密着させ、かつ密着部3に埋設した磁石5と水槽Kの外面に宛がう磁石6とで相互に磁気吸引させることにより人工ライブロック前駆体100を水槽K内に支持した収容状態を示す。人工ライブロック前駆体100の下側に大きなスペースSが生じる。
【0047】
人工ライブロック前駆体100は、水槽K内に配置する指定と90度異なる状態で作る。まず、離形性のパレット上でモルタルを例えば10mmの厚さに平板状に形成して密着部3を設け、密着部3が固化しないうちに一面に小石大の砕石である擬岩骨材1aを突き刺し、密着部3が固化したら、引き続いて、擬岩骨材1aを接着剤を介して次々に積層していき擬岩1を作り上げるとともに、擬岩1の内部に埋設されるように発泡ウレタンまたは発泡スチロールのブロックからなる浮遊体2を設け、擬岩骨材1a間の隙間に発泡性ウレタン剤を注入し発泡させてなる発泡性樹脂4を形成し、その後、外周面にモルタルを塗布し乾固してからさらに、天然ライブロックの表面に近似する色彩を有する塗料を塗布した構成である。浮遊体2は適宜の大きさ・形状のものを用いることができる。さらに、擬岩1の外観として好みの造形を付与することができる。例えば、擬岩骨材1aを積層してなる擬岩1の外面にセメントにより突起部9が設けられている。この突起部9は、サンゴ様に外観を模したもので、針状、扇状などの適宜形状であって良い。砂と専用セメントと水とを混錬し固まり始める段階で引き上げることを繰り返せば、針状、扇状などの適宜形状が出来上がる。これが固まった後に接着剤で擬岩1の外面に貼着する。突起部9も擬岩骨材で形成されるものであり擬岩1の一部を構成する。
【0048】
人工ライブロック前駆体100Aの後面部が水槽Kの後面壁に密着し密着部3に埋設した磁石5と水槽Kの外面に宛がった磁石6とで人工ライブロック前駆体100が水槽K内に収容保持されている。浮遊体2を擬岩1の中に埋設するので、擬岩骨材1aの使用量が少なくて済み、擬岩1が軽量で持ち運びが容易であり、水槽Kの底面より浮いた状態に磁石5、6による支持が実現でき、水槽Kに海水を容れると浮遊体2の浮力の大きさだけ擬岩1の重量が軽量になり、磁石5、6による支持が一層安定する。
【0049】
発泡性樹脂4の形成は擬岩骨材1a間の隙間を埋めることと浮力を大きくする役目を果たすが、発泡性樹脂4の形成と、その後の露出面へのモルタルの塗布膜形成を設けなくてもよい。この場合には、浮遊体2を埋設する際、浮遊体2の存在が視認できなくするために、前もって浮遊体2の外面にモルタルを塗布して浮遊体2の外面を隠蔽するのが良い。
【0050】
[第2の実施例]
第2の実施例を図2に示す。第2の実施例は、図1に示す実施例と略同様、人工ライブロック前駆体100Aの下側に大きなスペースSが生じる構成であり、相違する点は、空気が密閉された2つのボトルによって浮遊体2Aが作られていることである。人工ライブロック前駆体100Aの後面部が水槽Kの後面壁に密着し密着部3Aに埋設した磁石5と水槽Kの外面に宛がった磁石6とで人工ライブロック前駆体100Aが水槽K内に収容保持されている。擬岩骨材1a間の隙間に発泡性樹脂4Aが充填形成され、発泡性樹脂4Aの露出面にモルタルを塗布し乾固しさらに擬岩1Aの全表面に色彩塗料を塗布した構成である。
【0051】
[第3の実施例]
図3は第3の実施例を示す。第3の実施例は、水槽K内に人工ライブロック前駆体100Bを収容した状態を示す。人工ライブロック前駆体100Bは、図2に示す人工ライブロック前駆体100Aとほぼ同様に構成され、磁石5、6で水槽Kの後面部に保持されており、第2の実施例と相違する点は、人工ライブロック前駆体100Bが水槽Kの底面部に設置していること、モルタルによる密着部3BがL形面に形成され水槽Kの底面部と後面部に密着していること、および、スペースSbが穴状であることである。人工ライブロック前駆体100Bは、密着部3Bと、擬岩1Bと、擬岩1B内に埋設した2つのボトルを前後に並べ接着しボトル周面にモルタルを塗布し乾固した浮遊体2Bと、擬浮遊体2Bの周りの擬岩骨材間の隙間に発泡性ウレタン剤を注入し発泡させてなる発泡性樹脂4Bと、発泡性樹脂4Bの露出面にモルタルを塗布し乾固しさらに擬岩1Bとモルタルの全表面に天然ライブロックの表面に近似する色彩を有する塗料を塗布した塗膜とからなる構成である。
【0052】
[第4の実施例]
図4は第4の実施例を示す。第4の実施例は、水槽K内に人工ライブロック前駆体100Cを収容した状態を示す。人工ライブロック前駆体100Cは、モルタルの略平面板で水槽Kの底面部に密着する密着部3Cと、小石大の砕石を接着して積み重ね隙間を有する擬岩1Cと、2つのボトル2C1、2C2および発泡樹脂板を接着して両端および正面中程が開孔している筒状体(発泡性樹脂)2C3よりなる浮遊体2Cと、擬岩1C内の擬岩骨材間の隙間に発泡性ウレタン剤を注入し発泡させてなる発泡性樹脂4Cと、発泡性樹脂4Cの露出面にモルタルを塗布し乾固しさらに擬岩1Cとモルタルの全表面に天然ライブロックの表面に近似する色彩を有する塗料を塗布した構成である。ボトル2C1、2C2と、発泡性樹脂製の筒状体(発泡性樹脂)2C3は内外面にモルタルの薄膜が設けられた後に擬岩1C中に埋設されるのは良い。筒状体(発泡性樹脂)2C3は熱帯魚の住処、および回遊する通路となる。擬岩1Cの前面上部に凹部Scがあり、この凹部Scも、熱帯魚の住処、および回遊する通路となる。
【0053】
[第5の実施例]
図5は第5の実施例を示す。第5の実施例は、水槽K内に人工ライブロック前駆体100Dを収容した状態を示す。人工ライブロック前駆体100Dは、図5(A)に示すように、まず、モルタルの略平面板で水槽Kの底面部に密着する密着部3Dを形成してから、その上に、擬岩骨材を接着により積み重ね、内部の3つの空洞部C1、C2、C3を有する擬岩1Dが設けられる。そして、3つの空洞部C1、C2、C3に対し、図5(B)に示すように、発泡性ウレタン剤を注入し発泡させてなる発泡性樹脂を備えることにより浮遊体D1、D2、D3が設けられ、さらに、擬岩1D内の擬岩骨材間の隙間に発泡性ウレタン剤を注入し発泡させてなる発泡性樹脂4Dが設けられ、発泡性樹脂4Dの露出面にモルタルを塗布し乾固しさらに擬岩1Dとモルタルの全表面に天然ライブロックの表面に近似する色彩を有する塗料を塗布した構成である。
【0054】
第5の実施例では、擬岩1Dの上に発泡樹脂製の造形物として例えばクジラの形態7が設けられる。クジラの形態7は、発泡樹脂ブロックから削り成形されるか、型に発泡剤を注入して発泡させたもののいずれでもよく、台座8を一体に備え、外面にモルタルの塗膜が設けられさらに着色されて、台座が擬岩1Dに接着されている。水槽Kに海中を容れると、クジラの形態7に浮力が生じる。なお、クジラの形態7は、浮力が生じないレプリカであっても良い。
【0055】
以上説明してきたように、本願発明によれば、表面や内部にバクテリア等の微生物や石灰藻等の藻類が付着する前の段階の構造物であって、擬岩骨材が少量で済みコストを抑えられ、体積が大きく軽量な擬岩を形成可能であり、また擬岩の内部を貫通する孔や外面に凹部を設けることができ、形成海水魚飼育用水槽内に設置する際に取り扱いし易く、擬岩の下側にスペースを設けるように磁石で浮かせた状態に保持することができ、人工ライブロック化が容易である人工ライブロック前駆体の提供することができ、並びに前記の人工ライブロック前駆体の特長を備えた人工ライブロック、海水魚飼育用水槽、および人工ライブロック前駆体の製作方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0056】
100、100A、100B、100C、100D…人工ライブロック前駆体
1、1A、1B、1C、1D…擬岩
1a…擬岩骨材
…浮遊体2、2A、2B、2C
2D1、2D2、2D3…浮遊体(発泡性樹脂)
2C1、2C2…ボトル
2C3…筒状体(発泡性樹脂)
3、3A、3B、3C、3D…密着部
4、4A、4B、4C、4D…
5、6…磁石
7…クジラの形態
8…台座
9…突起部
C1、C2、C3…空洞部
K…水槽
S、Sb…スペース
図1
図2
図3
図4
図5