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特開2024-114427予測装置、予測方法、および予測プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114427
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】予測装置、予測方法、および予測プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20230101AFI20240816BHJP
   G06Q 40/00 20230101ALI20240816BHJP
【FI】
G06Q10/04
G06Q40/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020186
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】511108138
【氏名又は名称】テンソル・コンサルティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤本 浩司
(72)【発明者】
【氏名】柴原 一友
【テーマコード(参考)】
5L010
5L040
5L049
5L055
【Fターム(参考)】
5L010AA04
5L040BB05
5L049AA04
5L055BB05
(57)【要約】
【課題】行動主体への施策と行動主体からの価値の関係性を良好に予測する。
【解決手段】予測装置は、行動主体の基本属性の情報と、行動主体に対する施策および行動主体から生じた価値を示す施策価値履歴データとを取得し、施策価値履歴データを、中間時点以前の前半データと中間時点より後の後半データとに分割し、前半データを集計して、行動主体の施策属性と、行動主体の価値属性との一方または両方を算出し、基本属性と、施策属性および/または価値属性と、行動主体に対して実施した施策とによって、行動主体から生じる価値を説明する予測モデルを、後半データを学習することによって生成し、予測モデルを用いて、指定された基本属性と施策属性および/または価値属性とを有する行動主体に対して、指定された施策を実施した場合に、行動主体から期待される価値に関する情報を取得する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
行動主体の基本属性の情報と、基準時点より過去の過去時点から前記基準時点まで記録した前記行動主体に対して過去に実施した前記行動主体から価値を生じさせるための施策および前記行動主体から生じた価値を示す施策価値履歴データとを取得するデータ取得部と、
前記施策価値履歴データを、前記過去時点と前記基準時点の間にある中間時点以前の前半データと、前記中間時点より後の後半データとに分割し、前記前半データを集計して、前記行動主体が前記過去時点から前記中間時点までの第1期間に受けた施策に関する施策属性と、前記行動主体から前記第1期間に生じた価値に関する価値属性との一方または両方を算出するデータ前処理部と、
基本属性と、施策属性および/または価値属性と、行動主体に対して実施した施策とによって、行動主体から生じる価値を説明する予測モデルを、前記後半データを学習することによって生成する機械学習部と、
前記予測モデルを用いて、指定された基本属性と施策属性および/または価値属性とを有する行動主体に対して、指定された施策を実施した場合に、前記行動主体から期待される価値に関する情報を取得する予測部と、
を有する予測装置。
【請求項2】
前記データ前処理部は、前記中間時点と前記基準時点の間に仮想現在時点を設定し、前記後半データを前記仮想現在時点以前の仮想過去データと、前記仮想現在時点より後の仮想未来データとに分割し、
前記機械学習部は、前記仮想過去データおよび前記仮想未来データを用いた教師あり学習を行うことにより、過去に実施した施策に基づいて未来に得られる価値を予測する前記予測モデルを生成する、
請求項1に記載の予測装置。
【請求項3】
前記予測部は、前記予測モデルの前記後半データの先頭に相当する時点に現在時点を対応させ、前記仮想現在時点に対応する第1未来時点と前記後半データの終端に対応する第2未来時点を設け、前記現在時点から前記第1未来時点までの第1未来期間に前記指定された施策を実施した場合に、前記第2未来時点までに前記行動主体から期待される価値を予測する、
請求項2に記載の予測装置。
【請求項4】
前記機械学習部は、前記基本属性と前記施策属性および/または前記価値属性と、前記仮想過去データにおける施策とを説明変数とし、前記仮想過去データと前記仮想未来データにおける価値を目的変数として前記予測モデルを生成し、
前記予測部は、前記予測モデルに、前記基本属性と前記施策属性および/または前記価値属性と、前記第1未来期間に実施しうる施策とを入力することにより、前記現在時点から前記第2未来時点までの未来期間に前記行動主体から期待される価値を算出する、
請求項3に記載の予測装置。
【請求項5】
前記行動主体は、商品またはサービスの既存客および見込み客を含む顧客であり、
前記施策には、前記顧客へ前記商品または前記サービスに関する広告のダイレクトメールの発送が含まれ、
前記価値は、前記顧客が商品またはサービスを購入することによる売り上げに関する価値である、
請求項4に記載の予測装置。
【請求項6】
前記行動主体は、債務者であり、
前記施策には、債務者へ返済を要求するための架電が含まれ、
前記価値には、前記債務者から回収される債権に関する価値である、
請求項4に記載の予測装置。
【請求項7】
基本属性、施策属性、および価値属性の1つ以上を含む行動主体の属性と、行動主体に対して実施し得る施策との組み合わせを、前記属性および前記施策の一方または両方を順次変化させて、前記予測部に与える施策案入力部と、
前記予測部より前記属性および前記施策により期待される価値の情報を取得し、前記情報に基づいて、前記行動主体の属性および施策に対する期待される価値に関する情報を提示する予測価値提示部と、を更に有する、
請求項1に記載の予測装置。
【請求項8】
前記予測価値提示部は、前記価値に基づいて推奨する行動主体の属性と施策との組み合わせを提示する、
請求項7に記載の予測装置。
【請求項9】
前記予測価値提示部は、施策の実施に充てられる経費の総額の上限を制約条件とし、前記制約条件の下で前記粗利の総額を目的関数として最適化を行い、推奨する1つ以上の組み合わせを決定する、
請求項8に記載の予測装置。
【請求項10】
行動主体の基本属性の情報と、基準時点より過去の過去時点から前記基準時点まで記録した前記行動主体に対して過去に実施した前記行動主体から価値を生じさせるための施策および前記行動主体から生じた価値を示す施策価値履歴データを取得し、
前記施策価値履歴データを、前記過去時点と前記基準時点の間にある中間時点以前の前半データと、前記中間時点より後の後半データとに分割し、前記前半データを集計して、前記行動主体が前記過去時点から前記中間時点までの第1期間に受けた施策に関する施策属性と、前記行動主体から前記第1期間に生じた価値に関する価値属性との一方または両方を算出し、
基本属性と、施策属性および/または価値属性と、行動主体に対して実施した施策とによって、行動主体から生じる価値を説明する予測モデルを、前記後半データを学習することによって生成し、
前記予測モデルを用いて、指定された基本属性と施策属性および/または価値属性とを有する行動主体に対して、指定された施策を実施した場合に、前記行動主体から期待される価値に関する情報を取得する、
ことをコンピュータが実行する予測方法。
【請求項11】
行動主体の基本属性の情報と、基準時点より過去の過去時点から前記基準時点まで記録した前記行動主体に対して過去に実施した前記行動主体から価値を生じさせるための施策および前記行動主体から生じた価値を示す施策価値履歴データを取得し、
前記施策価値履歴データを、前記過去時点と前記基準時点の間にある中間時点以前の前半データと、前記中間時点より後の後半データとに分割し、前記前半データを集計して、前記行動主体が前記過去時点から前記中間時点までの第1期間に受けた施策に関する施策属性と、前記行動主体から前記第1期間に生じた価値に関する価値属性との一方または両方を算出し、
基本属性と、施策属性および/または価値属性と、行動主体に対して実施した施策とによって、行動主体から生じる価値を説明する予測モデルを、前記後半データを学習することによって生成し、
前記予測モデルを用いて、指定された基本属性と施策属性および/または価値属性とを有する行動主体に対して、指定された施策を実施した場合に、前記行動主体から期待される価値に関する情報を取得する、
ことをコンピュータに実行させるための予測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、行動主体に対して実施する施策から行動主体から得られる価値を予測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な産業分野において、人等の行動主体に対して施策を実施することにより得られる価値を予測し、どのような行動主体にどのような施策を実施することがどれだけ有効かを評価する要求がある。評価結果から有効な施策を実施すればそれだけ高い価値が得られる可能性が高い。
【0003】
例えば、金融の分野では、銀行融資やクレジットカード決済などで債務者から債権者に金銭が期限までに返済されない場合には債権回収が必要となる。債権回収の業務には、債務者に対する架電で支払いを求めることや、債務者を訪問して支払いを求めること等がある。この架電や訪問を債務者に対する施策と考え、回収される債権を債務者から得られる価値と考えることができる。多くの債務者に対する債権を持つ債権者においては、多くの債務者に対する債権回収を行うことが求められる。債権回収業務を行うにも労力等のコストが発生するので、効率よく債権を回収できるように架電や訪問を実施することが望ましい。
【0004】
また、マーケティングの分野において、既存顧客や見込み客を含む顧客に対してダイレクトメールを送って商品の購入を促し、売上を向上させること等がある。この顧客へのダイレクトメールを施策と考え、顧客の購買行動により得られる売上を価値と考えることができる。ダイレクトメールを発送するにもコストが発生するので、売り上げの向上につながるような顧客層を選んでダイレクトメールを発送することが望ましい。
【0005】
債務者や顧客等の行動主体に実施した施策とその影響を受けて行動主体から得られた価値の記録を蓄積したデータを基に、施策から得られる価値を予測する試みがある。特許文献1には、商品の販売において行われる例えば新たな商品バリエーションの市場投入など、種々の販売施策の効果を分析する方法が開示されている。
【0006】
特許文献1の方法では、まず、商品の売上げを時系列的に記録した販売履歴データを一定の傾向を有するトレンドデータと周期的な変動を表す季節変動データと不規則な変動を表すイレギュラー変動データとに分解する。次に、トレンドデータと販売施策を行った時期を記録した販売施策時期データとを重ね合わせ、最初の販売施策時期とその次の販売施策時期の間のトレンドデータに適合するフィット関数を決定する。そして、フィット関数を最初の販売施策時期に行った販売施策の施策効果データとして保存する。そして、販売施策時期データから最初の販売施策時期を除去して新たな販売施策時期データとして保存し、トレンドデータからフィット関数の成分を差し引いたデータを新たなトレンドデータとして保存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003-281342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
行動主体に対して過去に実施された施策や行動主体が過去に行った反応行動によって、その後の行動主体の施策に対する反応行動に変化が生じ、施策によって得られる価値が以前とは違ってしまうことがある。例えば、過去に頻繁に架電を受けた債務者からは架電によって債権を回収することが難しくなったり、過去に商品を購入したことのある顧客はダイレクトメールによって更に商品の購入をする可能性が高くなるといったことが起こりうる。
【0009】
そのような変化する行動主体に関する施策と価値の履歴がデータに混在している場合、そのデータから施策と価値との関係性を良好に抽出することは困難である。
【0010】
本開示のひとつの目的は、行動主体の施策に対する反応行動が変化している可能性のあるデータから施策と価値の関係性を良好に予測することを可能にする技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示に含まれるひとつの態様による予測装置は、行動主体の基本属性の情報と、基準時点より過去の過去時点から前記基準時点まで記録した前記行動主体に対して過去に実施した前記行動主体から価値を生じさせるための施策および前記行動主体から生じた価値を示す施策価値履歴データとを取得するデータ取得部と、前記施策価値履歴データを、前記過去時点と前記基準時点の間にある中間時点以前の前半データと、前記中間時点より後の後半データとに分割し、前記前半データを集計して、前記行動主体が前記過去時点から前記中間時点までの第1期間に受けた施策に関する施策属性と、前記行動主体から前記第1期間に生じた価値に関する価値属性との一方または両方を算出するデータ前処理部と、
基本属性と、施策属性および/または価値属性と、行動主体に対して実施した施策とによって、行動主体から生じる価値を説明する予測モデルを、前記後半データを学習することによって生成する機械学習部と、前記予測モデルを用いて、指定された基本属性と施策属性および/または価値属性とを有する行動主体に対して、指定された施策を実施した場合に、前記行動主体から期待される価値に関する情報を取得する予測部と、を有する。
【発明の効果】
【0012】
本開示に含まれるひとつの態様によれば、行動主体の施策に対する反応行動が変化している可能性のあるデータから施策と価値の関係性を良好に予測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】施策価値予測装置の機能構成を示すブロック図である。
図2】施策価値予測装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】全体処理のフローチャートである。
図4】処理のフローチャートである。
図5】前処理を説明するための概念図である。
図6】施策属性定義テーブルを示す図である。
図7】施策属性定義テーブルを示す図である。
図8】予測モデルの概念図である。
図9】予測処理のフローチャートである。
図10】予測処理の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0015】
債権回収業務において、債務者への架電を施策とし、債務者から回収される債権等の価値を予測する施策価値予測装置を例示する。
【0016】
図1は、本実施形態による予測装置の機能構成を示すブロック図である。
【0017】
予測装置10は、データ取得部11、データ前処理部12、機械学習部13、施策案入力部14、予測部15、および予測価値提示部16を有している。
【0018】
データ取得部11は、過去の債券回収の業務で得られた分析対象データを取得する。分析対象データには、各債務者についての基本属性データと施策価値履歴データとが含まれる。基本属性データとして、債務者の静的な基本属性として、各債務者の年齢、性別、職業等が記録されている。施策価値履歴データとして、債務者に対して施策を実施した日付およびその施策と、債務者から債権が回収された日付およびその債権により得た価値とが記録されている。
【0019】
データ前処理部12は、施策価値履歴データに対して前処理を実行する。前処理は、施策と価値の関係性を良好に予測する予測モデル17を生成可能にするために施策価値履歴データを加工する処理である。前処理の詳細は後述する。
【0020】
機械学習部13は、データ前処理部12により加工された施策価値履歴データと基本属性データとを学習データとして機械学習を行い、予測モデル17を生成する。予測モデル17およびその生成処理の詳細は後述する。
【0021】
施策案入力部14は、オペレータから、効果的な施策を探索するための施策案の入力を受け付ける。施策案には、施策とその対象とする債務者の属性とが指定される。
【0022】
予測部15は、予測モデル17を用いて施策案に対する予測される価値を算出する。
【0023】
予測価値提示部16は、施策案に対する予測される価値を画面に表示することによりオペレータに提示する。
【0024】
図2は、施策価値予測装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0025】
予測装置10は、ハードウェアとして、処理装置21、メインメモリ22、記憶装置23、通信装置24、入力装置25、および表示装置26を有し、それらがバス27に接続されている。
【0026】
記憶装置23は、書込みおよび読み出しが可能にデータを記憶するものである。上述した分析対象データおよび予測モデル17は記憶装置23に格納される。処理装置21は、記憶装置23に記憶されたデータをメインメモリ22に読み出し、メインメモリ22を利用してソフトウェアプログラムの処理を実行するプロセッサである。処理装置21がソフトウェアプログラムを実行することにより、図1に示したデータ取得部11、データ前処理部12、機械学習部13、施策案入力部14、予測部15、および予測価値提示部16が実現される。通信装置24は、処理装置21にて処理された情報を有線または無線あるいはそれら両方を含む通信ネットワーク(不図示)を介して送信し、また通信ネットワークを介して受信した情報を処理装置21に伝達する。受信した情報は処理装置21による処理に利用される。入力装置25は、キーボードやマウスなどオペレータによる操作入力による情報を受け付ける装置である。入力装置25により入力された情報は処理装置21にて処理に利用される。例えば、上述した施策案は入力装置25から入力される。表示装置26は、処理装置21による処理に伴って画像やテキストの情報をディスプレイ画面に表示する装置である。例えば、上述した施策案に対する予測される価値は表示装置26により表示される。
【0027】
以下、各部の処理について詳細に説明する。
【0028】
図3は、全体処理のフローチャートである。
【0029】
ステップS101にて、予測装置10は、データ前処理部12により施策価値履歴データに対して前処理を行う。施策価値履歴データには、過去時点から基準時点までの期間に取得された施策と価値の実績データが含まれている。
【0030】
図4は、前処理のフローチャートである。図5は、前処理を説明するための概念図である。
【0031】
ステップS201にて、データ前処理部12は、施策価値履歴データを、過去時点と基準時点の間にある中間時点以前の前半データと、中間時点より後の後半データとに分割する。図5を参照すると、施策価値履歴データが、中間時点以前の前半データと、中間時点より後の後半データとに分割されている。一例として、中間時点は基準時点の5か月前とする。ここでは、過去時点から中間時点までの期間を第1期間と呼び、中間時点から基準時点までの期間を第2期間と呼ぶことにする。
【0032】
ステップS202にて、データ前処理部12は、所定の施策属性の定義および価値属性の定義に従って前半データを集計して、各債務者が第1期間に受けた施策に関する施策属性と、債務者からの債権が回収されることで第1期間に生じた価値に関する価値属性とを算出する。図6は施策属性を定義した施策属性定義テーブルを示す図である。図6に示すように、施策が1回も実施されていない債務者の施策属性は00であり、施策が1回実施された債務者の施策属性は01であり、施策が2回実施された債務者の施策属性は02であり、施策が3回以上実施された債務者の施策属性は03である。図7は価値属性を定義した施策属性定義テーブルを示す図である。図7に示すように、債権が1回も回収されていない債務者の価値属性は00であり、債権が1回回収された債務者の価値属性は01であり、債権が2回回収された債務者の価値属性は02であり、債権が3回以上回収された債務者の価値属性は03である。各債務者には施策属性および価値属性が付与される。
【0033】
ステップS203にて、データ前処理部12は、図5に示すように、中間時点と基準時点の間に仮想現在時点を設定し、後半データを仮想現在時点以前の仮想過去データと、仮想現在時点より後の仮想未来データとに分割する。
【0034】
図3に戻り、ステップS102にて、予測装置10は、機械学習部13により学習処理を行い、予測モデルを生成する。図8は、予測モデルの概念図である。学習処理において、予測装置10は、債務者の基本属性、施策属性、および価値属性を基にして後半データを学習することにより、図8に示すような、債務者の基本属性と施策属性と価値属性と債務者に対して実施した施策とを入力とし、債務者から生じた価値を説明する予測モデルを生成する。学習処理は、仮想過去データにおける施策から、仮想過去データおよび仮想未来データを含む後半データにおける価値を導き出せるようにする教師あり学習である。説明変数は、基本属性と、施策属性と、価値属性と、仮想過去データにおける施策とであり、目的変数は、仮想過去データおよび仮想未来データを含む後半データにおける価値である。
【0035】
ステップS103にて、予測装置10は、予測部15により予測処理を行う。予測処理は、予測モデルを用いて、例えば、施策案として、ユーザが指定した基本属性と施策属性および/または価値属性とを有する債務者に対して施策を実施した場合に、債務者から期待される価値がどの程度か予測する処理である。
【0036】
図9は、予測処理のフローチャートである。図10は、予測処理の概念図である。
【0037】
ステップS301にて、予測部15は、予測モデルにおいて仮想現在時点に現在時点を対応させる。このとき仮想現在時点に対応する時点を第1未来時点と呼び、終端時点に対応する時点を第2未来時点と呼ぶことにする。また、現在時点から第1未来時点までの期間を第1未来期間と呼び、第1未来時点から第2未来時点までの期間を第2未来期間と呼ぶことにする。
【0038】
ステップS302にて、予測部15は、予測モデルに施策案を入力することにより、得られる価値を算出する。すなわち、予測部15は、第1未来期間に指定された施策を実施した場合に、第2未来時点までに債務者から期待される価値を予測する。
【0039】
以上説明した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【0040】
以上の実施形態では、対象である債権者の属性とその債権者に対する施策とを指定して、回収される債権を予測する例を示したが、これに限定されることはない。債権者の属性と債権者に対する施策との一方あるいは両方を順次変化させ、属性と施策の組み合わせのそれぞれについて期待される価値を算出するものであってもよい。
【0041】
その場合、施策案入力部14は、基本属性、施策属性、および価値属性の1つ以上を含む債権者の属性と、債権者に対して実施し得る施策との組み合わせを、属性および施策の一方または両方を順次変化させて、予測部15に与える。予測部15は、施策案入力部14から与えられた属性と施策の組み合わせのそれぞれに対する価値を算出する。予測価値提示部16は、予測部15により算出される属性の施策の組み合わせに対する期待される価値の情報を取得し、その情報に基づく表示をする。例えば、債権者の属性および施策に対する、回収が期待される債権を三次元縦棒グラフで表示してもよい。
【0042】
あるいは、予測価値提示部16は、債権者の属性と施策の最適な組み合わせを提案する表示をしてもよい。予測価値提示部16は、施策に充てられる経費の総額の上限を制約条件とし、その制約条件の下で、期待される価値を最大化する組み合わせ群を抽出し、表示することにしてもよい。あるいは、予測価値提示部16は、所定の閾値を超える価値が得られる組み合わせ群を抽出し、表示することにしてもよい。
【0043】
また、上述の実施形態において、施策により期待される価値は特に限定されない。例えば、回収が期待される債権の金額を価値としてもよい。また、例えば、施策により回収が期待される債権から、施策を実施するのに要する経費を減算して得られる利益の金額を価値としてもよい。
【0044】
また、上述の実施形態において、機械学習部13にて生成され、予測部15にて用いられる予測モデル17は複数のモデルで構成されていてもよい。例えば、債権回収において、債権が回収される場合に回収される債権の見込み額を予測する債権回収時回収見込み額予測モデルと、債務者のうち債権が回収される債務者の比率を予測する債権回収率予測モデルとを構築し、(回収率)×(見込み額)=(価値)により価値を算出することにしてもよい。
また、他の例として、見込み客にeメール等の施策を実施するマーケティングの例では、施策を実施した見込み客のうち施策に対して反応する見込み客の比率(反応率)を予測する反応率予測モデルと、施策に反応した見込み客から期待される売上額(期待値)を予測する反応時期待収入予測モデルとを構築し、(反応率)×(期待値)=(価値)により価値を算出することにしてもよい。
【0045】
また、上述の実施形態における施策は単一の施策に限定されることはない。例えば、複数の施策の組み合わせであってもよい。例えば、予測モデルにより、特定の複数の施策を実施したときに期待される価値を予測してもよい。
【0046】
例えば、本実施形態として、行動主体およびその行動主体への施策の例として、債務者と債務者への架電を例示したが、これに限定されることはない。他の例として、行動主体への施策は架電と訪問の2つがあるものとしてもよい。また、他の例として、行動主体を既存顧客および見込み客を含む顧客であるとし、顧客への施策をダイレクトメールの発送であるとしてもよい。
【0047】
また、本実施形態には以下に示す事項を含んでいる。ただし、本実施形態に含まれる事項が以下に示すものに限定されることはない。
【0048】
(事項1)
予測装置は、
行動主体の基本属性の情報と、基準時点より過去の過去時点から前記基準時点まで記録した前記行動主体に対して過去に実施した前記行動主体から価値を生じさせるための施策および前記行動主体から生じた価値を示す施策価値履歴データとを取得するデータ取得部と、
前記施策価値履歴データを、前記過去時点と前記基準時点の間にある中間時点以前の前半データと、前記中間時点より後の後半データとに分割し、前記前半データを集計して、前記行動主体が前記過去時点から前記中間時点までの第1期間に受けた施策に関する施策属性と、前記行動主体から前記第1期間に生じた価値に関する価値属性との一方または両方を算出するデータ前処理部と、
基本属性と、施策属性および/または価値属性と、行動主体に対して実施した施策とによって、行動主体から生じる価値を説明する予測モデルを、前記後半データを学習することによって生成する機械学習部と、
前記予測モデルを用いて、指定された基本属性と施策属性および/または価値属性とを有する行動主体に対して、指定された施策を実施した場合に、前記行動主体から期待される価値に関する情報を取得する予測部と、
を有する。
【0049】
施策と価値を記録したデータにおいて、実施された施策が行動主体に影響を与えて変化させてしまい、その影響を受けて生じた可能性のある価値と混ざり合って、行動主体への施策と行動主体から生じる価値とを良好に切り分けて関係性を抽出することが困難な場合であっても、前処理として、施策価値履歴データを中間時点で前半データと後半データに分割し、前半データにおいて実施された施策および生じた価値については集計して行動主体の属性として用い、後半データにおいて実施された施策および生じた価値については行動主体の動的な特徴量として学習を行うので、行動主体の属性と施策と価値とを切り分けることが可能となり、行動主体に対する施策の実施から得られる価値の良好な予測が可能になる。
【0050】
(事項2)
事項1に記載の予測装置において、
前記データ前処理部は、前記中間時点と前記基準時点の間に仮想現在時点を設定し、前記後半データを前記仮想現在時点以前の仮想過去データと、前記仮想現在時点より後の仮想未来データとに分割し、
前記機械学習部は、前記仮想過去データおよび前記仮想未来データを用いた教師あり学習を行うことにより、過去に実施した施策に基づいて未来に得られる価値を予測する前記予測モデルを生成する。
【0051】
(事項3)
事項2に記載の予測装置において、
前記予測部は、前記予測モデルの前記後半データの先頭に相当する時点に現在時点を対応させ、前記仮想現在時点に対応する第1未来時点と前記後半データの終端に対応する第2未来時点を設け、前記現在時点から前記第1未来時点までの第1未来期間に前記指定された施策を実施した場合に、前記第2未来時点までに前記行動主体から期待される価値を予測する。
【0052】
仮現在時点ではなく先頭時点に現在時点を対応させることにより、予測モデルで将来どのような施策を行うとその後どのような価値が得られるのかを予測することができる。
【0053】
(事項4)
事項3に記載の予測装置において、
前記機械学習部は、前記基本属性と前記施策属性および/または前記価値属性と、前記仮想過去データにおける施策とを説明変数とし、前記仮想過去データと前記仮想未来データにおける価値を目的変数として前記予測モデルを生成し、
前記予測部は、前記予測モデルに、前記基本属性と前記施策属性および/または前記価値属性と、前記第1未来期間に実施しうる施策とを入力することにより、前記現在時点から前記第2未来時点までの未来期間に前記行動主体から期待される価値を算出する。
【0054】
仮過去および仮未来での価値を目的変数とすることにより、後半データの先頭時点に現在時点を合わせた場合の現在時点以降に得られる価値を予測する予測モデルが生成でき、現在時点以降に得られる価値の予測が可能となる。
【0055】
(事項5)
事項4に記載の予測装置において、
前記行動主体は、商品またはサービスの既存客および見込み客を含む顧客であり、
前記施策には、前記顧客へ前記商品または前記サービスに関する広告のダイレクトメールの発送が含まれ、
前記価値は、前記顧客が商品またはサービスを購入することによる売り上げに関する価値である。
【0056】
(事項6)
事項4に記載の予測装置において、
前記行動主体は、債務者であり、
前記施策には、債務者へ返済を要求するための架電が含まれ、
前記価値には、前記債務者から回収される債権に関する価値である。
【0057】
(事項7)
事項1に記載の予測装置において、
基本属性、施策属性、および価値属性の1つ以上を含む行動主体の属性と、行動主体に対して実施し得る施策との組み合わせを、前記属性および前記施策の一方または両方を順次変化させて、前記予測部に与える施策案入力部と、
前記予測部より前記属性および前記施策により期待される価値の情報を取得し、前記情報に基づいて、前記行動主体の属性および施策に対する期待される価値に関する情報を提示する予測価値提示部と、を更に有する。
【0058】
(事項8)
事項7に記載の予測装置において、
前記予測価値提示部は、前記価値に基づいて推奨する行動主体の属性と施策との組み合わせを提示する。
【0059】
(事項9)
事項8に記載の予測装置において、
前記予測価値提示部は、施策の実施に充てられる経費の総額の上限を制約条件とし、前記制約条件の下で前記粗利の総額を目的関数として最適化を行い、推奨する1つ以上の組み合わせを決定する。
【符号の説明】
【0060】
10…予測装置、11…データ取得部、12…データ前処理部、13…機械学習部、14…施策案入力部、15…予測部、16…予測価値提示部、17…予測モデル、21…処理装置、22…メインメモリ、23…記憶装置、24…通信装置、25…入力装置、26…表示装置、27…バス
図1
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