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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024114428
(43)【公開日】2024-08-23
(54)【発明の名称】検査装置及び検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/956 20060101AFI20240816BHJP
【FI】
G01N21/956 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023020190
(22)【出願日】2023-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301014904
【氏名又は名称】東レエンジニアリング先端半導体MIテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 朋也
(72)【発明者】
【氏名】大▲美▼ 英一
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA51
2G051AB01
2G051AB02
2G051AC21
2G051EC06
(57)【要約】
【課題】検査画像と基準画像との位置ずれに起因する疑似欠陥の検出を抑制する。
【解決手段】検査装置1は、被検査対象Wを撮像して得られる検査画像Jを基準画像Kと比較することによって、被検査対象Wを検査する。基準画像Kでは、被検査対象Wに形成された複数のパターンPの中から登録パターンPkが登録される。検査画像Jでは、被検査対象Wに形成された複数のパターンPの中から登録パターンPkに類似した検出パターンPjが検出される。検査画像Jにおける検出パターンPjの位置Ljと基準画像Kにおける登録パターンPkの位置Lkとに基づいて、検査画像Jを基準画像Kに位置合わせする。検出パターンPj及び登録パターンPkをそれぞれ複数の領域Dに区画して、検出パターンPjと登録パターンPkとを互いに対応する領域D同士で比較することによって、検出パターンPjと登録パターンPkとの一致を判定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査対象を撮像して得られる検査画像を基準画像と比較することにより前記被検査対象を検査する検査装置であって、
前記基準画像では、前記被検査対象に形成された複数のパターンの中から位置合わせ用の前記パターンが登録パターンとして登録されており、
前記検査画像では、前記被検査対象に形成された複数の前記パターンの中から前記登録パターンに類似した前記パターンが検出パターンとして検出されており、
前記検査画像における前記検出パターンの位置と前記基準画像における前記登録パターンの位置とに基づいて、前記検査画像を前記基準画像に位置合わせしており、
前記検出パターン及び前記登録パターンをそれぞれ複数の領域に区画して、前記検出パターンと前記登録パターンとを互いに対応する前記領域同士で比較することによって、前記検出パターンと前記登録パターンとの一致を判定する、検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の検査装置であって、
前記検査画像では、前記被検査対象に形成された複数の前記パターンの中から前記登録パターンに類似した複数の前記パターンが検出パターン候補として検出されており、
各前記検出パターン候補及び前記登録パターンをそれぞれ複数の領域に区画して、各前記検出パターン候補と前記登録パターンとを互いに対応する前記領域同士で比較することによって、複数の前記検出パターン候補のうちの前記登録パターンに対する一致率が最も高い前記検出パターン候補を前記検出パターンであると判定する、検査装置。
【請求項3】
請求項2に記載の検査装置であって、
複数の前記検出パターン候補のうちの前記登録パターンに対する前記領域毎の前記一致率の総和又は平均が最も高い前記検出パターン候補を前記検出パターンであると判定する、検査装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の検査装置であって、
各前記領域は、複数の画素に区画されており、前記検出パターンと前記登録パターンとを互いに対応する前記領域同士で且つ互いに対応する前記画素の光学情報同士で比較することによって、前記検出パターンと前記登録パターンとの一致率を求める、検査装置。
【請求項5】
被検査対象を撮像して得られる検査画像を基準画像と比較することにより前記被検査対象を検査する検査方法であって、
前記基準画像では、前記被検査対象に形成された複数のパターンの中から位置合わせ用の前記パターンを登録パターンとして登録して、
前記検査画像では、前記被検査対象に形成された複数の前記パターンの中から前記登録パターンに類似した前記パターンを検出パターンとして検出して、
前記検査画像における前記検出パターンの位置と前記基準画像における前記登録パターンの位置とに基づいて、前記検査画像を前記基準画像に位置合わせしており、
前記検出パターン及び前記登録パターンをそれぞれ複数の領域に区画して、前記検出パターンと前記登録パターンとを互いに対応する前記領域同士で比較することによって、前記検出パターンと前記登録パターンとの一致を判定する、検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示すように、半導体基板などの被検査対象を撮像して得られる検査画像を基準画像と比較することによって被検査対象を検査する検査方法が、知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-325046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の検査方法では、被検査対象を複数の視野に区画するとともに、カメラなどの撮像手段を被検査対象に対して相対的に移動させながら、被検査対象を撮像手段によって視野毎に順次撮像して、視野毎に撮像画像を得る。
【0005】
視野毎に撮像画像をトリミングして、視野毎に検査画像を得る。視野毎に得られた検査画像を、視野毎に予め作成された基準画像と、比較する。これにより、被検査対象が検査されて、例えば、被検査対象に発生した欠陥の検出などが行われる。
【0006】
ここで、被検査対象を支持するステージや撮像手段などの位置決め精度が悪いと、比較する検査画像と基準画像との間で位置ずれが生じてしまい、位置ずれの生じた部分に疑似欠陥が検出されてしまうことがある。
【0007】
このような疑似欠陥の検出が生じないように、視野毎に基準画像に位置合わせ用のパターンを登録パターンとして登録し、基準画像における登録パターンの位置を基準にして、撮像画像(視野)をトリミングして検査画像を得て、得られた検査画像を、基準画像に位置合わせして基準画像と比較する。
【0008】
位置合わせ用の登録パターンは、被検査対象に形成された複数のパターンの中から、他のパターンとの誤認を避けるために、なるべくユニークなパターンが選ばれる。
【0009】
しかしながら、撮像画像(視野)をトリミングして検査画像を得る際に、被検査対象における登録パターンとは異なるパターンを、登録パターンとして誤認してしまうことが稀にある。この場合、誤った基準に基づいて撮像画像(視野)をトリミングして検査画像を得ることになるので、検査画像を基準画像に位置合わせする際に、検査画像と基準画像との間で位置ずれが生じてしまい、疑似欠陥が検出されてしまう。
【0010】
本開示は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、被検査対象を撮像して得られる検査画像を基準画像と比較することにより被検査対象を検査するにあたって、検査画像と基準画像との位置ずれに起因する疑似欠陥の検出を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示に係る検査装置は、被検査対象を撮像して得られる検査画像を基準画像と比較することにより前記被検査対象を検査する検査装置であって、前記基準画像では、前記被検査対象に形成された複数のパターンの中から位置合わせ用の前記パターンが登録パターンとして登録されており、前記検査画像では、前記被検査対象に形成された複数の前記パターンの中から前記登録パターンに類似した前記パターンが検出パターンとして検出されており、前記検査画像における前記検出パターンの位置と前記基準画像における前記登録パターンの位置とに基づいて、前記検査画像を前記基準画像に位置合わせしており、前記検出パターン及び前記登録パターンをそれぞれ複数の領域に区画して、前記検出パターンと前記登録パターンとを互いに対応する前記領域同士で比較することによって、前記検出パターンと前記登録パターンとの一致を判定する。
【0012】
検出パターンと登録パターンとの一致を判定するにあたって、検出パターンと登録パターンとを単純に比較しただけでは、両者が一致しないにもかかわらず一致すると誤認される可能性がある。
【0013】
そこで、検出パターン及び登録パターンをそれぞれ複数の領域に区画するとともに、検出パターンと登録パターンとの一致を判定するにあたって、検出パターンと登録パターンとを互いに対応する領域同士で比較する。
【0014】
このように、検出パターンと登録パターンとを互いに対応する領域同士で比較することによって、検出パターンと登録パターンとを単純に比較しただけの場合に比べて、検出パターンと登録パターンとを細かく比較することができる。
【0015】
これにより、検出パターンと登録パターンとが一致しないにもかかわらず一致すると誤認されることを抑制することができる。そして、検出パターン及び登録パターンに基づいて検査画像を基準画像に位置合わせする際に、検査画像と基準画像との位置ずれを抑制することができる。
【0016】
以上、被検査対象を撮像して得られる検査画像を基準画像と比較することにより被検査対象を検査するにあたって、検査画像と基準画像との位置ずれに起因する疑似欠陥の検出を抑制することができる。
【0017】
一実施形態では、前記検査画像では、前記被検査対象に形成された複数の前記パターンの中から前記登録パターンに類似した複数の前記パターンが検出パターン候補として検出されており、各前記検出パターン候補及び前記登録パターンをそれぞれ複数の領域に区画して、各前記検出パターン候補と前記登録パターンとを互いに対応する前記領域同士で比較することによって、複数の前記検出パターン候補のうちの前記登録パターンに対する一致率が最も高い前記検出パターン候補を前記検出パターンであると判定する。
【0018】
登録パターンに類似した複数の検出パターン候補の中から、登録パターンに対する一致率が最も高い検出パターン候補を、検出パターンであると判定する。これにより、初めから検出パターンを1つのみ検出する場合に比べて、検出パターンと登録パターンとが一致しないにもかかわらず一致すると誤認されることを抑制する上で有利になる。
【0019】
一実施形態では、複数の前記検出パターン候補のうちの前記登録パターンに対する前記領域毎の前記一致率の総和又は平均が最も高い前記検出パターン候補を前記検出パターンであると判定する。
【0020】
登録パターンに対する領域毎の一致率の総和又は平均を判定基準にすることによって、複数の検出パターン候補の中から1つの検出パターンを容易に選択することができる。
【0021】
一実施形態では、各前記領域は、複数の画素に区画されており、前記検出パターンと前記登録パターンとを互いに対応する前記領域同士で且つ互いに対応する前記画素の光学情報同士で比較することによって、前記検出パターンと前記登録パターンとの一致率を求める。
【0022】
検出パターンと登録パターンとを互いに対応する領域同士でだけでなく互いに対応する画素の光学情報同士でも比較することによって、検出パターンと登録パターンとを、より一層、細かく比較することができる。
【0023】
本開示に係る検査方法は、被検査対象を撮像して得られる検査画像を基準画像と比較することにより前記被検査対象を検査する検査方法であって、前記基準画像では、前記被検査対象に形成された複数のパターンの中から位置合わせ用の前記パターンを登録パターンとして登録して、前記検査画像では、前記被検査対象に形成された複数の前記パターンの中から前記登録パターンに類似した前記パターンを検出パターンとして検出して、前記検査画像における前記検出パターンの位置と前記基準画像における前記登録パターンの位置とに基づいて、前記検査画像を前記基準画像に位置合わせしており、前記検出パターン及び前記登録パターンをそれぞれ複数の領域に区画して、前記検出パターンと前記登録パターンとを互いに対応する前記領域同士で比較することによって、前記検出パターンと前記登録パターンとの一致を判定する。
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、被検査対象を撮像して得られる検査画像を基準画像と比較することにより被検査対象を検査するにあたって、検査画像と基準画像との位置ずれに起因する疑似欠陥の検出を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、被検査対象を撮像して得られる検査画像を基準画像と比較することにより被検査対象を検査する検査装置を示す。
図2図2は、被検査対象での検出パターン候補の検出を示す。
図3図3は、登録パターンと複数の検出パターン候補との比較を示す。
図4図4は、登録パターンと第2検出パターン候補との比較の詳細を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本開示の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物あるいはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0027】
(検査装置)
図1は、検査装置1を示す。検査装置1は、被検査対象Wを撮像して得られる検査画像Jを基準画像Kと比較することによって、被検査対象Wを検査する。検査装置1は、マイコン及びプログラムで構成された制御部を備える。本例では、被検査対象Wは、半導体ウエハ(基板)の表面である。
【0028】
検査装置1は、被検査対象Wに発生した欠陥を検出する。欠陥として、例えば、異物、傷、エッジリンス不良、スルーホール異常、塗膜ムラ、剥がれ、スクラッチ、ボンディングパッド異常、色ムラ、パターン異常、染み、変色、変形、などがある。
【0029】
検査装置1では、被検査対象Wを複数の視野Fjに区画するとともに、カメラを被検査対象Wに対して相対的に移動させながら、被検査対象Wをカメラによって視野Fj毎に順次撮像して、視野Fj毎に撮像画像を得る。
【0030】
視野Fj毎に撮像画像の外周部をトリミングして、視野Fj毎に検査画像Jを得る。視野Fj毎に得られた検査画像Jを、基準画像Kと比較する。
【0031】
基準画像Kは、フィッティング画像や統計的良品画像とも呼ばれる。基準画像Kは、例えば、良品判定された被検査対象Wの画像を平均化することによって、得られる。基準画像Kは、事前に設定されている。基準画像Kは、検査画像Jと同様の方法にて、カメラの視野Fk毎に予め作成されている。
【0032】
検査画像Jを得るための視野Fj(以下「検査視野Fj」という)と基準画像Kを得るための視野Fk(以下「基準視野Fk」という)とは、互いに同じ大きさ且つ同じ形状である(本例では四角形)。
【0033】
検査画像Jを基準画像Kと比較することによって、被検査対象Wが検査されて、被検査対象Wに発生した欠陥の検出が行われる。
【0034】
しかしながら、被検査対象Wを支持するステージやカメラなどの位置決め精度が悪いと、検査視野Fjと基準視野Fkとの位置ずれが生じてしまう。このため、検査画像Jと基準画像Kとの間でも位置ずれが生じてしまい、当該位置ずれの生じた部分に疑似欠陥(過剰欠陥)が検出されてしまうことがある。
【0035】
このような疑似欠陥の検出が生じないように、基準視野Fk毎に基準画像Kでは、被検査対象Wに形成された複数のパターンPの中から、位置合わせ用(アライメント用)のパターンPが、登録パターンPkとして予め登録されている。そして、検査視野Fj毎に検査画像Jでは、被検査対象Wに形成された複数のパターンPの中から、登録パターンPkに類似したパターンPが、検出パターンPjとして検出される。
【0036】
パターンPは、例えば、配線パターンであったり、集積回路の形状パターンであったり、様々である。
【0037】
なお、図1では、検査視野Fj及び基準視野Fkにおいて、白い領域は、被検査対象Wの素地(無地、例えば半導体基板の表面そのまま)であり、グレーの領域は、何かしらのパターンPを含み得る領域である。
【0038】
被検査対象Wでの検出パターンPjの検出は、検査視野Fj及び検査画像Jよりも狭く且つ検出パターンPjよりも広い、パターンマッチング探索範囲Rにて行われる。換言すると、被検査対象Wでは、パターンマッチング探索範囲Rにおいて、検出パターンPjが探索される。
【0039】
検査画像J(検査視野Fj)における検出パターンPjの位置Ljと、基準画像K(基準視野Fk)における登録パターンPkの位置Lkと(の位置ずれ量)に基づいて(基準にして)、検査画像Jを基準画像Kに位置合わせする(平行移動させて重ねる)。換言すると、登録パターンPkに対する検出パターンPjの位置ずれ量に基づいて、検査画像Jを基準画像Kに位置合わせする。このような位置合わせ方法は、テンプレートマッチングと呼ばれる。
【0040】
具体的には、検査視野(撮像画像)Fjの外周部をトリミングして検査画像Jを得て、得られた検査画像Jを、基準画像Kに位置合わせする。そして、検査画像Jを基準画像Kと比較する。これにより、被検査対象Wが検査される。
【0041】
図1では、検査画像J(検査視野Fj)における検出パターンPjの位置Ljの一例として、検査画像J(検査視野Fj)の右下端と検出パターンPjの右下端との距離を、例示する。同様に、基準画像K(基準視野Fk)における登録パターンPkの位置Lkの一例として、基準画像K(基準視野Fk)の右下端と登録パターンPkの右下端との距離を、例示する。
【0042】
位置合わせ用の登録パターンPkは、被検査対象Wに形成された複数のパターンPの中から、他のパターンPとの誤認を避けるために、なるべくユニークなパターンPが選ばれる。
【0043】
しかしながら、検査視野(撮像画像)Fjをトリミングして検査画像Jを得る際に、すなわち、被検査対象Wに形成された複数のパターンPの中から登録パターンPkに類似したパターンPを検出パターンPjとして検出する際に、被検査対象Wにおける登録パターンPkとは異なるパターンPを、登録パターンPkとして誤認してしまうことが稀にある。
【0044】
この場合、誤った基準に基づいて、検査視野(撮像画像)Fjをトリミングして検査画像Jを得ることになるので、検査画像Jを基準画像Kに位置合わせする際に、検査画像Jと基準画像Kとの間で位置ずれが生じてしまい、疑似欠陥が検出されてしまう。
【0045】
本実施形態では、被検査対象Wを撮像して得られる検査画像Jを基準画像Kと比較することにより被検査対象Wを検査するにあたって、検査画像Jと基準画像Kとの位置ずれに起因する疑似欠陥の検出を、以下の工夫を施すことによって、抑制する。
【0046】
(検出パターン候補)
図2は、被検査対象Wでの検出パターン候補Pja,Pjb,Pjcの検出を示す。なお、簡単ため、被検査対象Wの絵を、図1から変更している。検査画像J(検査視野Fj)におけるパターンマッチング探索範囲Rでは、被検査対象Wに形成された複数のパターンPの中から、登録パターンPkに類似した複数のパターンPが、検出パターン候補Pja,Pjb,Pjcとして検出される。
【0047】
複数の検出パターン候補Pja,Pjb,Pjcと登録パターンPkとの類似の判定は、例えば、各検出パターン候補Pja,Pjb,Pjcを区画する複数の画素の輝度と、登録パターンPkを区画する複数の画素の輝度とを、画素同士で比較した際における一致率に基づいて行われてもよい。
【0048】
複数の検出パターン候補Pja,Pjb,Pjcと登録パターンPkとの類似の判定のために画素毎に輝度の一致率を求めるにあたって、登録パターンPk及び各検出パターン候補Pja,Pjb,Pjcそれぞれを、後述する複数の領域Dに区画しない。
【0049】
複数の検出パターン候補Pja,Pjb,Pjcとして、例えば、登録パターンPkとの一致率が高い順に上位数個が選ばれたり、登録パターンPkとの一致率が所定の閾値を越えるものが全て選ばれたりする。
【0050】
本例では、複数の検出パターン候補Pja,Pjb,Pjcとして、第1検出パターン候補Pjaと、第2検出パターン候補Pjbと、第3検出パターン候補Pjcと、の3つがある。
【0051】
図3は、登録パターンPkと複数の検出パターン候補Pja,Pjb,Pjcとの比較を示す。本例では、登録パターンPk及び複数の検出パターン候補Pja,Pjb,Pjcは、四角形である。
【0052】
図3から一見して明らかなように、第1検出パターン候補Pjaは、登録パターンPkと一致しており、正解である。一方、第2検出パターン候補Pjb及び第3検出パターン候補Pjcは、登録パターンPkと一致しておらず、不正解である。人の目で判定すると、第1検出パターン候補Pjaが正解であり且つ第2検出パターン候補Pjb及び第3検出パターン候補Pjcが誤りであることは、明らかである。
【0053】
しかしながら、機械(例えば、AI:Artificial Intelligence)で判定すると、例えば、第1検出パターン候補Pjaを不正解であると誤判定したり、第2検出パターン候補Pjb及び第3検出パターン候補Pjcを正解であると誤判定したりすることがある。誤判定の原因として、パターンPの崩れ、パターンPが異物で隠れること、などが挙げられる。
【0054】
そこで、各検出パターン候補Pja,Pjb,Pjc及び登録パターンPkを、それぞれ、複数の領域Dに区画する。本例では、領域Dとして、左上の第1領域D1と、右上の第2領域D2と、左下の第3領域D3と、右下の第4領域D4と、4つ(4象限)ある。
【0055】
各検出パターン候補Pja,Pjb,Pjcと登録パターンPkとを、互いに対応する領域D同士で比較することによって、複数の検出パターン候補Pja,Pjb,Pjcのうちの登録パターンPkに対する一致率(相関率)Hが最も高い検出パターン候補Pja,Pjb,Pjcを、真の検出パターンPjであると判定する。
【0056】
具体的には、各検出パターン候補Pja,Pjb,Pjcの第1領域D1と、登録パターンPkの第1領域D1とを、比較する。各検出パターン候補Pja,Pjb,Pjcの第2領域D2と、登録パターンPkの第2領域D2とを、比較する。各検出パターン候補Pja,Pjb,Pjcの第3領域D3と、登録パターンPkの第3領域D3とを、比較する。各検出パターン候補Pja,Pjb,Pjcの第4領域D4と、登録パターンPkの第4領域D4とを、比較する。
【0057】
図4は、登録パターンPkと第2検出パターン候補Pjbとの比較の詳細を示す。図4において第2検出パターン候補Pjbを例に説明するが、各検出パターン候補Pja,Pjb,Pjc及び登録パターンPkにおいて、各領域Dは、複数の画素Gにさらに区画されている。
【0058】
図3,4に示すように、各検出パターン候補Pja,Pjb,Pjcと登録パターンPkとを、互いに対応する(互いに同じ位置にある)領域D同士で且つ互いに対応する(互いに同じ位置にある)画素Gにおける光学情報としての輝度E同士で、比較することによって、各検出パターン候補Pja,Pjb,Pjcと登録パターンPkとの一致率Hを求める。
【0059】
例えば、各画素Gには、0~255の輝度Eの数値が与えられている。各検出パターン候補Pja,Pjb,Pjcと登録パターンPkとを、対応する画素Gの輝度E同士で比較するにあたって、比較される画素Gにおける輝度Eの数値の差分(又は割合)が所定の範囲内にある場合を一致と判定するとともに、全ての画素Gに対する一致判定された画素Gの割合を、一致率Hとしてもよい。
【0060】
図3,4に示すように、各検出パターン候補Pja,Pjb,Pjcの第1領域D1と登録パターンPkの第1領域D1とを、互いに対応する画素Gの輝度E同士で比較することによって、各検出パターン候補Pja,Pjb,Pjcの第1領域D1と登録パターンPkの第1領域D1との第1一致率H1を求める。
【0061】
各検出パターン候補Pja,Pjb,Pjcの第2領域D2と登録パターンPkの第2領域D2とを、互いに対応する画素Gの輝度E同士で比較することによって、各検出パターン候補Pja,Pjb,Pjcの第2領域D2と登録パターンPkの第2領域D2との第2一致率H2を求める。
【0062】
各検出パターン候補Pja,Pjb,Pjcの第3領域D3と登録パターンPkの第3領域D3とを、互いに対応する画素Gの輝度E同士で比較することによって、各検出パターン候補Pja,Pjb,Pjcの第3領域D3と登録パターンPkの第3領域D3との第3一致率H3を求める。
【0063】
各検出パターン候補Pja,Pjb,Pjcの第4領域D4と登録パターンPkの第4領域D4とを、互いに対応する画素Gの輝度E同士で比較することによって、各検出パターン候補Pja,Pjb,Pjcの第4領域D4と登録パターンPkの第4領域D4との第4一致率H4を求める。
【0064】
そして、図3,4に示すように、複数の検出パターン候補Pja,Pjb,Pjcのうちの登録パターンPkに対する領域D毎の一致率Hの総和Hs又は平均Haが最も高い検出パターン候補Pja,Pjb,Pjcを、真の検出パターンPjであると判定する(選択される)。
【0065】
領域D毎の一致率Hの総和Hsとは、第1領域D1での第1一致率H1と、第2領域D2での第2一致率H2と、第3領域D3での第3一致率H3と、第4領域D4での第4一致率H4と、の総和である(Hs=H1+H2+H3+H4)。
【0066】
領域D毎の一致率Hの平均Haとは、第1領域D1での第1一致率H1と、第2領域D2での第2一致率H2と、第3領域D3での第3一致率H3と、第4領域D4での第4一致率H4と、の平均である(Ha=(H1+H2+H3+H4)/4)。
【0067】
第1検出パターン候補Pjaと登録パターンPkとを比較すると、図3から、第1一致率H1、第2一致率H2、第3一致率H3及び第4一致率H4のいずれもが、高いことが分かる。したがって、第1検出パターン候補Pjaの登録パターンPkに対する領域D毎の一致率Hの総和Hs及び平均Haは、いずれも、高くなる。
【0068】
第2検出パターン候補Pjbと登録パターンPkとを比較すると、図3から、第1一致率H1及び第3一致率H3が高い一方、第2一致率H2及び第4一致率H4が低いことが分かる。したがって、第2検出パターン候補Pjbの登録パターンPkに対する領域D毎の一致率Hの総和Hs及び平均Haは、第1検出パターン候補Pjaにおけるそれらに比較して、低くなる。
【0069】
第3検出パターン候補Pjcと登録パターンPkとを比較すると、図3から、第2一致率H2及び第4一致率H4が低く、さらに第1一致率H1及び第3一致率H3が著しく低いことが分かる。したがって、第3検出パターン候補Pjcの登録パターンPkに対する領域D毎の一致率Hの総和Hs及び平均Haは、第1検出パターン候補Pja及び第2検出パターン候補Pjbにおけるそれらに比較して、低くなる。
【0070】
このように、複数の検出パターン候補Pja,Pjb,Pjcのうちの登録パターンPkに対する領域D毎の一致率Hの総和Hs及び平均Haが最も高い検出パターン候補Pja,Pjb,Pjcは、第1検出パターン候補Pjaである。第1検出パターン候補Pjaは、真の検出パターンPjであると判定される。
【0071】
検出パターンPj(第1検出パターン候補Pja)及び登録パターンPkは、それぞれ、複数の領域Dに区画されている。検出パターンPj(第1検出パターン候補Pja)と登録パターンPkとを互いに対応する領域D同士で且つ互いに対応する画素Gの輝度E同士で比較することによって、検出パターンPj(第1検出パターン候補Pja)と登録パターンPkとの一致が、判定される。
【0072】
なお、互いに対応する領域D同士での比較により求められた検出パターンPj(第1検出パターン候補Pja)と登録パターンPkとの一致率Hが、仮に所定の閾値よりも低い場合には、検出パターンPj(第1検出パターン候補Pja)と登録パターンPkとが互いに一致しないと、判定してもよい。
【0073】
(作用効果)
検出パターンPj(第1検出パターン候補Pja)と登録パターンPkとの一致を判定するにあたって、検出パターンPj(第1検出パターン候補Pja)と登録パターンPkとを単純に比較しただけでは、両者が一致しないにもかかわらず一致すると誤認される可能性がある。
【0074】
そこで、検出パターンPj(第1検出パターン候補Pja)及び登録パターンPkをそれぞれ複数の領域Dに区画するとともに、検出パターンPj(第1検出パターン候補Pja)と登録パターンPkとの一致を判定するにあたって、検出パターンPj(第1検出パターン候補Pja)と登録パターンPkとを互いに対応する領域D同士で比較する。
【0075】
このように、検出パターンPj(第1検出パターン候補Pja)と登録パターンPkとを互いに対応する領域D同士で比較することによって、検出パターンPj(第1検出パターン候補Pja)と登録パターンPkとを単純に比較しただけの場合に比べて、検出パターンPj(第1検出パターン候補Pja)と登録パターンPkとを細かく比較することができる。
【0076】
これにより、検出パターンPj(第1検出パターン候補Pja)と登録パターンPkとが一致しないにもかかわらず一致すると誤認されることを抑制することができる。そして、検出パターンPj(第1検出パターン候補Pja)及び登録パターンPkに基づいて検査画像Jを基準画像Kに位置合わせする際に、検査画像Jと基準画像Kとの位置ずれを抑制することができる。
【0077】
以上、被検査対象Wを撮像して得られる検査画像Jを基準画像Kと比較することにより被検査対象Wを検査するにあたって、検査画像Jと基準画像Kとの位置ずれに起因する疑似欠陥の検出を抑制することができる。
【0078】
登録パターンPkに類似した複数の検出パターン候補Pja,Pjb,Pjcの中から、登録パターンPkに対する一致率Hが最も高い検出パターン候補Pja,Pjb,Pjc(本例では第1検出パターン候補Pja)を、真の検出パターンPjであると判定する。
【0079】
これにより、初めから検出パターンPjを1つのみ検出(選択)する場合に比べて、検出パターンPjと登録パターンPkとが一致しないにもかかわらず一致すると誤認されることを抑制する上で有利になる。
【0080】
登録パターンPkに対する領域D毎の一致率Hの総和Hs又は平均Haを判定基準にすることによって、複数の検出パターン候補Pja,Pjb,Pjcの中から1つの真の検出パターンPj(第1検出パターン候補Pja)を容易に選択することができる。
【0081】
検出パターンPj(第1検出パターン候補Pja)と登録パターンPkとを互いに対応する領域D同士でだけでなく互いに対応する画素Gの輝度(光学情報)E同士でも比較することによって、検出パターンPj(第1検出パターン候補Pja)と登録パターンPkとを、より一層、細かく比較することができる。
【0082】
(その他の実施形態)
以上、本開示を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。
【0083】
本実施形態では、複数の検出パターン候補Pja,Pjb,Pjcのうちの登録パターンPkに対する領域D毎の一致率Hの総和Hs又は平均Haが最も高い検出パターン候補Pja,Pjb,Pjcを、真の検出パターンPjであると判定したが、これに限定されず、総和Hs及び平均Ha以外の指標が用いられてもよい。
【0084】
本実施形態では、領域Dは、4つであったが、これに限定されず、2つ以上であれば、いくつでもよい。
【0085】
初めから1つの検出パターンPjのみを検出して、検出された1つの検出パターンPjと登録パターンPkとを、互いに対応する領域D同士で比較することによって、検出パターンPjと登録パターンPkとの一致を判定してもよい。
【0086】
図1では、検査画像J(検査視野Fj)における検出パターンPjの位置Lj及び基準画像K(基準視野Fk)における登録パターンPkの位置Lkを、右下端同士の距離で例示したが、これに限定されず、例えば、左上端同士などのその他の端同士の距離や、中央同士の距離などで表してもよい。
【0087】
検査視野Fj(検査画像J)及び基準視野Fk(基準画像K)は、四角形に限定されず、例えば、四角形以外の多角形や、多角形以外の円形などでもよい。同様に、登録パターンPk及び検出パターンPjは、四角形に限定されず、例えば、四角形以外の多角形や、多角形以外の円形でもよい。
【0088】
被検査対象Wは、半導体ウエハに限定されず、種々の対象が考えられ得る。被検査対象Wは、例えば、ガラスや金属や樹脂等でもよい。被検査対象Wは、板材でなくてもよく、例えば電線等でもよい。
【0089】
画素Gにおける光学情報Eとして、輝度のみならず、例えば、色相、明度、暗度、彩度、光度、照度などの種々の指標を、を適用してもよい。
【0090】
本開示に係る検査方法は、被検査対象Wを撮像して得られる検査画像Jを基準画像Kと比較することによって、被検査対象Wを検査する。この検査方法において、基準画像Kでは、被検査対象Wに形成された複数のパターンPの中から位置合わせ用のパターンPを登録パターンPkとして登録して、検査画像Jでは、被検査対象Wに形成された複数のパターンPの中から登録パターンPkに類似したパターンPを検出パターンPjとして検出して、検査画像Jにおける検出パターンPjの位置Ljと基準画像Kにおける登録パターンPkの位置Lkとに基づいて、検査画像Jを基準画像Kに位置合わせしており、検出パターンPj及び登録パターンPkをそれぞれ複数の領域Dに区画して、検出パターンPjと登録パターンPkとを互いに対応する領域D同士で比較することによって、検出パターンPjと登録パターンPkとの一致を判定する。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本開示は、検査装置及び検査方法に適用できるので、極めて有用であり、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0092】
W 被検査対象
J 検査画像
K 基準画像
Fj 検査視野
Fk 基準視野
P パターン
Pj 検出パターン
Pja 第1検出パターン候補(複数の検出パターン候補)
Pjb 第2検出パターン候補(複数の検出パターン候補)
Pjc 第3検出パターン候補(複数の検出パターン候補)
Pk 登録パターン
Lj 位置
Lk 位置
D 領域
D1 第1領域
D2 第2領域
D3 第3領域
D4 第4領域
G 画素
E 輝度(光学情報)
H 一致率
H1 第1一致率
H2 第2一致率
H3 第3一致率
H4 第4一致率
Hs 総和
Ha 平均
R パターンマッチング探索範囲
1 検査装置
図1
図2
図3
図4